ウィンクルムが作る!美男美女時計(らんちゃむ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ


「へー…初めて入るけどオシャレに作られてるのねぇ」
「アネッタさんキョロキョロしないで下さいよ!…あ、すみませんー!」

 なんとも美人な男女がA.R.O.A.本部にやって来た。
そんなスタッフの声に、休憩を使って数人のスタッフがカウンターへその二人を覗きにやって来た。
男は慎重も高くスタイルも良い…片耳にされたピアスがきらりと光る度に、眩しさを感じる美男子。
隣の女性は男性に寄り添い、受付スタッフに何冊かの資料を提出していた。
「…ねえ、何の依頼かな」
「ここからじゃ聞こえないよね?」

「あら?…そこのお兄さんお姉さんも聞いてくれるのかしらー?」
「ちょ!アネッタさんナチュラルに絡みすぎですってば!相手はA.R.O.A.本部の人ですよ!?」
「同じ人間には変わりないでしょう?」

美男子から発せられた女性らしい言葉に、脳の伝達が追いつかないスタッフ達。
凍りつくように動けなくなった数名スタッフも、受付スタッフと共に彼等の依頼を引き受ける事となったのだった。

「んふふ、あたしにビックリしてるわね~」
「楽しんでないでちゃんと説明して下さい」



 ダブロスの一角に建てられたスタジオ「アネッタ」はその名の通り写真を撮るスタジオだ。
建てられてまだ日も浅いスタジオだが、若者に人気があると雑誌で紹介された程の有名なスタジオらしい。
特に有名なのがオーナーのアネッタだ。
誰にも愛されるような独特な感性を持ち合わせており、来客する人へのおもてなしは徹底的。
撮影スタジオなのを忘れてしまうほど…素敵な時間が提供されると噂されている。
そんなスタジオのオーナーが、従業員を連れてA.R.O.A.本部にやって来た。

「今回はそちらのウィンクルムさんを何人かお借りしたいんだけど…いいかしら?」
 提出された資料の表紙に書かれたのは『A.R.O.A.本部公式:ウィンクルムによる美男美女時計アプリの作成』という文字だった。
本部公式…と書かれた部分に、どういう事かと聞こうとしたスタッフは今朝の会議を思い出す。
宣伝部と広報部による連携で、ウィンクルムやA.R.O.A.本部へのイメージの固さを脱却しようとの計画があった。
何段階かにわけて親しみやすさを定着させようとの事で…今回はその第一段階。
オシャレな衣装と可愛らしい背景にウィンクルム達が移り、手に持つボードに時計が入る仕組みのアプリを作成する事になったのだ。
「頼まれたのがウチなんだけどね?…貸してもらえるかしら?」
 口元に指を添え、ニコニコとする目の前の美男子にスタッフはたじたじ。
こちらの依頼に答えてくれるのだから、ウィンクルムを貸さないわけにはいかない…快く、承諾する事となった。


「撮影・装飾…背景は私達スタジオアネッタが、衣装は別の会社に任せてあるの」
 別の会社…?そう言って出された会社のロゴを見て、一緒に見てたスタッフは大声を上げた。
…オーダーメイドのブランドで有名なファッション店『アネクロア』のロゴマークが表示されていたのだ。
とても有名でセレブからも好評のあるオーダーメイドブランドだが、店舗経営はせずそのお店も入り組んだ路地裏にあるという…まさに、「知る人ぞ知る」有名ファッションブランドなのだとスタッフは興奮気味に語った。

「ちょっとしたツテがあってね…この店にウィンクルムに合わせたサイズで作ってもらうわ」
にっこりと笑ったアネッタに、スタッフは出来上がりが楽しみだとつられて微笑んでしまった。
後日改めて、撮影に参加してくれるウィンクルムを集める約束をした。


「はー…本部って思ったよりお固い人達ばかりじゃなくて安心しました」
「アネクロアを知ってる人もいて驚いたわー…うふふ、久しぶりの大仕事になりそうね?」
「でもアネッタさん…なんでアネクロアと協力出来たんですか?確かあそこってあまり表に出るの嫌がってたんじゃ…」

 帰り道、同行した従業員はアネッタに疑問を投げかけた。
オーダーメイドのブランド『アネクロア』は雑誌の取材やテレビのインタビューを断る徹底ぶりだったのにも関わらず…こうしてアプリ制作には喜んで引き受けましょうという素晴らしいお返事が帰ってきた事に驚きと疑問が隠せない。
取り合ったのはオーナーのアネッタ…一体、どんな話術で商談を成立させたのかと従業員は思った。
足を止めたアネッタは、従業員に向かってぱちりとウィンクをしてみせる。

「言ったでしょ?ちょっとしたツ・テがあるのよ」
「私達にも内緒なんですかー?」
「んふふ…撮影当日には社長を直々にこさせるから、その時まで楽しみにしてなさいな」

意味ありげに微笑んだアネッタは、クレープ屋に寄ろうと従業員の手を取ってA.R.O.A.本部を去っていった。

解説

■A.R.O.A.本部公式アプリの作成に協力しましょう!

今回の目的は本部公式時計アプリの作成です。
スタジオ『アネッタ』とオーダーメイドブランド『アネクロア』との協力で行われます。
いろんな背景にいろんなオシャレをして写真撮影を楽しんできて下さいね。

■撮影と衣装

撮影はスタジオアネッタで行われます。
衣装は当日に社長が直々に持ってきてくれるんだとか…社長がなんで持ってくるんでしょう?
まあ衣装も手作りらしいので、こういう服が着たい!という提案があればリクエストしちゃいましょう!
リクエストした服はアネクロアさんが各自にプレゼントしてくれるそうですよ?
世界でたった一つの貴方だけの衣装…もらってみてはどうでしょうか。

リクエスト代 男女各 600Jr
アプリ用写真のお持ち帰り 1枚 300Jr
ストラップへの加工 1つ 100Jr

アネッタさんとアネクロアさんにお願いしたら安くなった方なんです…!
私達スタッフの交渉術も、もう少し成長させる必要がありますね…!

■アネッタと『アネクロア』

後日従業員さんが言ってましたが…どうやらアネクロアの写真とアネッタさんは交流があるようです。
表舞台の活躍を避けた社長さんと対面できちゃうなんて驚きですよねー…どんな人なんだろう?
衣装合わせの時に挨拶に来るらしいので、お目にかかるの楽しみですね!

■アプリ用の撮影方法

一人ずつの写真と、ペアの写真で数種類撮影するようです。
編集は開発部のスタッフが腕に縒りを掛けて作成しますので、オシャレに楽しく写ってきて下さいね!
緊張する人も顔がこわばっちゃう人も…あのスタジオに行けば気が楽になりますよ。

え?どうして知ってるのかですか?
あの人はうちの部署やウィンクルムにも有名ですからね、「いろんな意味で面白い人」だって

ゲームマスターより

らんちゃむです。

アネッタさん再び登場…今回はアプリの撮影ですね。
アネクロアの社長さんと仲良しのアネッタさん…一体どんな繋がりなのやら。
でも低価格で服を作ってもらえるらしいので、ある意味ラッキーかもしれませんね?

公式アプリですけど…思いっきり楽しんじゃってきて下さい。
それじゃあ、スタジオで待ってますね。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  1つ提案があるんだけど、私『ウエイトレス』の格好をするから、エミリオさんは『ウエイター』のを格好してみない?

いつも見慣れてる格好じゃつまらないかな
でもね、この前みたいに普段着ないようなお洋服を着るのも素敵だなって思ったんだけど、今回は自分らしい格好で撮りたいの

ずっと前に話したよね私の夢
最近その夢が少し変わったの
ねぇ、エミリオさん
夢は、見つかった?
あ、あのね、もしよかったらなんだけど、私が一人前のパティシエ
になって自分の店を持てたら…エミリオさんも一緒に働かない?
私のお父さんとお母さんみたいに、大好きな人と一緒に笑顔を届ける仕事がしたいなって思ったんだ

☆関連エピソード
No.2『願いの森、花の詩』


淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)
  公式アプリだなんて…本当に私なんかでいいんでしょうか?
ずうずうしいとは思うのですが、お洋服の方は中華風の服をお願いしてもいいでしょうか?
イヴェさんがいつも中華風のお洋服をきてらっしゃるので私も着てみたいなと思ってて。色違いでお揃いな感じにしていただければ嬉しいです。
はぁ…緊張しちゃいますね。イヴェさんは緊張していませんか?大丈夫ですよイヴェさんさんはとってもカッコいいです!

そう言えばイヴェさん最近私によく「可愛い」って言うようになったんですが…恥ずかしいというか照れちゃうんですよねー。
でも…私が貴方をカッコいいと思うようにイヴェさんに思われてるならすごく嬉しいなって思います。




手屋 笹(カガヤ・アクショア)
  服はどんなものにしましょう…。

あら?
お願いしてしまったんですか?
少し希望を言いたかったのに…
どんなのですか?

きれかじ?
言葉は聞いた事ありませんが
思ったより派手でなくて良かった気がします…。
髪型も服に合わせてアレンジしましょう。
(肩前でゆるく二つ結びにします)

写真撮影は緊張しますね…
プロの方の指示によく従って…
カガヤが手を振ってくれてます…少し気楽に行きましょうか。

・服リクエスト
キレカジ系かわいい
丈短め前開きデザイン共通水色パーカー
膝上丈の紺色タックフレアスカート
薄いストッキング+黒ヒール(つま先丸い)

・ジェール使用
リクエスト(1200Jr)
アプリ用写真のお持ち帰り ペアの写真1枚(300Jr)


ペシェ(フランペティル)
  アネクロアと聞いてフランが楽しそうなので服選びは任せます
あんまりいやらしいのにはしないでくださいね?
ふぉーくろあ?リクエストの候補ですか?
ん?…フォークロア、アネッタ、アネクロア…まさか、ね…

リクエスト内容は意外です
もっとギラギラなものをリクエストすると思ってたのですが…

フランは楽しそうにしてますねお陰で私も緊張が解けました

■服装
テーマ:シック&スタイリッシュ
敢えて白いシャツと黒のタイトなハイウェストスカートとニーハイ
髪と同じオレンジのタイ
髪型もアレンジ
※アレンジアドリブ歓迎


楓乃(ウォルフ)
  美男美女時計アプリなんて、とても面白そう!美女って所がちょっと心配だけど…大丈夫かしら?

噂のアネッタさんとお会いできるのね!アネクロアの社長さんとお会いするのも楽しみだわ!どんな方かしら。

童話モチーフの衣装をリクエストさせていただいたけれど、どんな衣装になっても嬉しいわ。(アドリブ可)
写真のお持ち帰りとストラップも欲しいな♪

■撮影にて…
あ、この時間がかかれたボードを持つのね。
はい!どうぞお願いします!(上下逆さまに掲げ満面の笑み)
え?あ、やだ…。ちょっとウォルフ笑いすぎよ!
そりゃウォルフはサマになっててカッコいいけど…私はなんだか緊張しちゃって。
ふふ。そうね。いつものままで。ありがとう♪



「ようこそ、スタジオアネッタへ」

 スタジオに入ると、片耳につけたピアスをきらりと揺らせ手を振る男性の姿があった。
だが外見とは裏腹に話す口調は女性らしい…スタッフは彼を「アネッタさん」と呼んでいた。

「オーナーのアネッタです、美人揃いね?本部にチョイスしてもらって正解だったわ」

よろしくお願いしますと頭を下げた一同、着替え終えた一同のチェックをしているアネッタの後ろから
一人の男性がドアを開けてやって来る…背を向けたままのアネッタが、その男の名を呼んだ。
「衣装は…うん、いい感じね…あとは撮影中に手を加えればいいわね…アーノン、ちょっと見てよ」

 黒いロングコートを脱いで椅子にかけたアーノンと呼ばれた男性は、一同の衣装を見て…一瞬 目を輝かせる。
アネッタの隣に立つアーノンは、遠目で見るよりも背が高い。

「わあ!やっぱりイメージ通りだ…っ皆とっても似合ってます!」
「イメージ通り?…あの、失礼ですがどちら様です…?」

「っ!…えっ…と、僕はアネクロア社長の、あ、アーノルドです…今日はよろしく」

耳を赤くしたアーノンは持ってきたファイルで口元を隠す。
よろしくお願いしますと返す前に、アーノンはそそくさと衣装チェックに走ってしまった。
そんな彼を見て、アネッタはため息を吐いた。

「あれが社長さん…結構若いんですね」
「はーあ、これだから人見知りは…さて、それじゃあ始めちゃいましょう!アンタ達持ち場についてー!」
アネッタの言葉にスタッフが持ち場に着くと、一同もいよいよ始まるのかと緊張が走った。
衣装前で、アネクロアの従業員が社長を囲んで何か話しているのが見えたが…今は気にしないでおこう。


「や、やややっぱり人こわい…!」
「社長、しっかりして下さい 胃薬と気付け薬は僕達が所持してますんで」
「いつも通りでいいんですよー…社長なら出来ますよー…!」
「…社長、誰も取って食ったりしませんから、ね」



 楓乃の依頼した服は【オズの魔法使い】のドロシーをイメージしたパフスリーブのワンピースとなってやって来た。
全体カラーを楓乃に合わせたカラーにまとめ、スカートの裾にフリルがあしらわれている。
裾の部分には可愛らしいオズの魔法使いの登場人物が刺繍されてあり、仲良く行進しているふうに描かれていた。
ひらりとスカートが揺れる度に、まるで動いているようにも見える。
ヘアアレンジは、ゆるやかな三つ編みを施してリボンをつけた。
小さめに結ばれたウェストリボンも、チャームポイントの一つだ。
大きな鏡で自分の衣装を見なおした楓乃は、思わず笑みが溢れる。

「ハーイ!まずは普通に立って、ボードをこっちに見せてくださーい」
「わ、わかりました…!」

「…ありゃあ大丈夫か?」
ボードを持つ楓乃の様子が少しだけ違うように見えたウォルフ。
ぐるぐると楓乃の頭の中で不安と困惑が混ざる中、スタッフの声が耳に届いた。

「じゃあいきまーす!」
「はい!どうぞお願いします!」

掲げられたボードと、緊張があったとは思えない可愛らしい笑顔。
カメラのシャッター音が響くものの、ウォルフは思わず吹き出してしまった。
…満面の笑みで持ったボードが、逆さまなのだ。

「ぶっは!」
「おい、楓乃…っくく、すっげーいい顔して笑ってる所悪ィけど、お前そのまま続けて撮る気か?」
「うそ…あ、やだっちょっとウォルフ笑いすぎよ!」

突然すぎたパートナーのうっかりに、ウォルフはケラケラと笑った。

「リラックスリラックス!やっぱ先にカップルから撮っちゃいましょうか」

 そっちのが気が楽になるだろうと言ったアネッタは、隣で待機していたウォルフの背中を押した。
二人でボードを持って、好きなように話していてとリクエストするアネッタに、二人は目をあわせる。

…そんな簡単な事でいいのだろうか?
「ボードは逆さに持つなよ?」
「わ、分かってるわよ!…そりゃウォルフはサマになっててカッコいいけど…私はなんだか緊張しちゃって」

普段着ない洋服に集中する視線は滅多に無い状況だ。
そんな中で空回りする自分にため息をつくと、ウォルフは楓乃の鼻をつまんだ。
…少し、彼の頬が赤くなっている。
「む!?」
「変に緊張しねーで、いつもどーりでいいって言われたろ?」
「…で、でも…」

「折角の記念なんだ。その…楽しもうぜ」

視線を逸しながらも、緊張をほぐす為に言葉をかけるウォルフに、楓乃は目を丸くする。
さっきまでの動揺も困惑も、彼の一言でとても小さな感情に見える…今ならきっと、大丈夫。

「ありがとう ウォルフ」
「…おめーも結構似合ってる…と、思うしよっ…まぁ、服がいいからだな!服が!」


「…照れ隠しですかね?」
「ツッコんじゃダメよ?真っ赤なあの子がアプリになっちゃうかもしれないからね」



「笹ちゃん、がんばー」

 ひらひらと手を振るカガヤ・アクショアは単体撮影の最中であるパートナーを眺めていた。
スタッフの指示に従って、ストリートの背景で仁王立ちしたりボード片手に微笑んでみせる。
カガヤのリクエストで、依頼衣装は【キレ系カジュアル】をベースにした今時に近いファッション。
二人で共通デザインの色違いパーカーに、手屋は紺色のタックフレアスカートに薄いストッキングと丸ヒール。
カガヤは共通デザインの黒に白いTシャツ、ワインレッドのスキニーパンツにショートブーツをオーダーした。
…二人の衣装に合わせ、背景と小道具もストリートを表現している。

カメラを構えたスタッフが、手屋 笹に単体撮影終了を告げた。

「いやぁ~最初とは大分違うね!ノリノリでかっこ良かったよ」
「そ、そうですか…?」
「笹ちゃんお疲れ様、このまま二人で撮り始めるって」

カメラマンはカガヤを背景前に立たせると「さっき通りで頼むよ」と声をかけた。
二人で流し目をしたり、ボードを持って下を出したりといろいろなポーズやアングルで撮影していく。
少しすると、アネッタがやって来て、二人にサングラスを見せた。
黒いサングラスの下部分には「A.R.O.A.」の文字が入った小道具のようだ。

「おぉー!なんかカッコイイ!」
「作ってみたの、お嬢さんは頭にかけて…お兄さんは少しずらして…そう」

アネッタの小物指示をしている間に、スタッフが階段を移動させフェンスを用意した。
二人はそれを片手で掴み、ボードを二人で持ちカメラの方へ視線を向ける。
「挑発的に笑ってみせてー!はーいチーズっ…オッケーイ!」
上出来だ最高だとテンションが上がるカメラマンに、カガヤは手屋にピースして喜んだ。
…うまくいったのなら良かったと言う手屋に、アネッタからの注文が入る。

「クールでカッコイイのが撮れたわね…じゃあ最後に一枚だけ好きなポーズをしたのを撮るわよ」
「好きなポーズ…え、指示は無いんですか?」
「あれだけ出来たんだもの、思い思いになさいな」

急に指示が無くなってしまいどうしようかと悩む手屋に、カガヤは俺に任せて欲しいと言った。
…案が無いから拒否する必要も無いだろう、そう思った手屋は小さく頷いた。

「決まったかなー?それじゃあいきまーす」
「はーい!笹ちゃん、手だして」
「手ですか?…はい」

重ねられた手は、カガヤの方に引き寄せられた。
バランスを崩すように前のめりになる手屋を抱きとめるようにカガヤは受け止める。
何が起きたかわかっていない手屋に、カガヤはカメラマンに向かってVサインを見せた。

「イエーイ!」
「なっ…カガヤっ」

抗議しようとする手屋の声を遮るように、カメラマンからのOKが出た。
悪びれる様子もなく、にこにこと笑うカガヤは手屋にまた手を差し出す。

「今度は騙されませんからね」
「えー…もう撮影は終わったし、後は他の人の見るだけだよ…お疲れ様、可愛かったよ笹ちゃん」

手を握ってもらえなかった手をひらひらと揺らし、頑張ったパートナーを労ったカガヤ。
何をしてくれたんだと怒るつもりだったが…画像をチェックしているアネッタとアーノルドの後ろを通った時 それは帳消しになった。

まるで映画のワンシーンのように、楽しそうに写る自分達に、手屋は頬が緩んだ。



 淡島咲とイヴェリア・ルーツの撮影の準備は進んでいた。
背景をバタバタと変えていくスタッフの後ろで、アネッタは淡島のヘアメイクの調整をしている。
「…随分と手際が良いのですね」
「まあオーナーだからねー…はい出来上がりっと…んじゃ次、座って」

淡島のヘアメイクが終わると、アネッタはイヴェリアに座るよう言った。
「?いや、俺は」
「男の子でもヘアメイクはするのよ!はい座った座った!別にお団子ツインテールにするわけじゃないんだから怯えないの!」
「…怯えてはいませんが…」

ヘアメイクと言っても毛先の跳ねを直したり整えるだけのようだ。
言われたとおりじっとしていると、淡島がじっとイヴェリアを見つめていた。
同じ種類の中華系衣装の色違いをリクエストした淡島は、今イヴェリアと同じ服を着ている。
「サク?」
「えへへ、お揃いですね」
自分の前でくるりと回ってみせる淡島に、イヴェリアは手に力が入る。
袖で手を少し隠してにこにこ笑うパートナーはとても愛らしく視界に飛び込んできていたようで。

「…もしもーし、終わったわよー…もしもーし」
「っ!…ど、どうもありがとう…ございます」

呆然としていたイヴェリアにアネッタは茶化すように笑った。
可愛いから仕方ないけどね、と付け足すと二人を背景前まで連れて行く。
風景をバックにしていたが今回はグリーンスクリーン 撮った写真を加工して、竜虎を描く予定らしい。

「じゃあまずはお嬢さんね?ボードを頭に乗せるように持って…そうそう、ちょっと傾いて…」

「はーい笑って!チーズっ」
 お茶目なポーズからスタートした撮影は、とてもテンポよく進んでいく。
所々、淡島自身が目立たない程度にアレンジを加えた事で、バリエーションと表情も増えたようだ。
次にイヴェリアの撮影が始まる。
「イヴェさん緊張しますけど…頑張って!」
アネッタの隣で手を振る淡島に小さく頷くと、イヴェリアの撮影が始まった。
淡々と進められていく撮影の最中、奥からアーノルドが駆け寄る。
「淡島さんとイヴェリアさんの撮影終わった?」
「まだよ?」
「よ、よかったー…」
「あの、どうかしましたか?」
問いかける淡島に、アーノルドはやっと出来上がったんだと告げ淡島に差し出した。
差し出された代物に、淡島の目が光る

「っ…うわー!見て見てイヴェさん!パンダですよ!」
「カップル撮影で使ってもらえたらいいと思って…どうかなアネッタ」
「お嬢さんがお喜びだしいいなじゃないかしら」

 愛らしい表情をしたパンダは、淡島やイヴェリアと同じ衣装を着せられていた。
にっこりと微笑んだパンダに釣られて微笑む淡島は、イヴェリアの元にパンダを連れて行く。
キラキラと目を輝かせる淡島に、イヴェリアは口元を抑えた。

「…っ、可愛いね」
「はい!私達の間に挟んじゃいましょうか」

ボードをパンダに持たせるようにして、二人の手でパンダを支える。
自然と顔が寄る形になってしまうが、頬を赤らめ写真撮影を終えた。
撮影が終わるまで、パンダを撫でたりつついたりする淡島が可愛いとスタッフの話題になったのは…秘密である。



「まさか憧れのアネクロアにオーダーメイドが出来るとは…!」
 感動だと言うフランペティルは、オーダーした衣装を鏡で見ながら喜んでいた。
振り返り傍にいたアーノルドに視線を向けると、アーノルドは慌てて手を振る。 
「あ、憧れなんて大袈裟だよ…?」
「そんな事はない!繊細且つ優雅な仕上がりはオーダーした者に想定以上の喜びを与えると専ら評判だぞ?」
「ええぇえ…困ったなあ…あ、アネッタ~」

「はいはい後でねー…」
フランペティルの押しに圧倒されるアーノルドそっちのけでアネッタはペシェのヘアメイクを続けていた。
 普段二つに結ばれでいる髪を解き、片側に流すように低い位置でのサイドテールにする。
結った部分を隠すように、白と桃の造花で作られたヘアアクセサリーを飾り終えると、アネッタはにっこりと笑った。

「はい出来た!」
「ありがとうございます…髪飾り可愛いですね」
「ホント?!良かったぁ~っ…お嬢ちゃんに合わせて作ったの!そう言って貰えるとあたし泣けちゃうわっ」

 小物を使用した髪型や服装のアレンジが得意なアネッタはペシェの言葉に大喜びした。
フランペティルに押されていたアーノルドも、アネッタの笑顔に釣られて笑みを浮かべる。
「小さい頃から髪留めとかビーズで作ってたものね アネッタは」
「そうなんですか?」
「まあおこちゃまの作る物なんてたかが知れてるけどね」

思い出し笑いをするアネッタとアーノルドはとても楽しそうだった。
その様子を見て、フランペティルは首を傾げる。
「…アーノルドとアネッタは、幼い頃からの付き合いなのか?」
「え?…僕達は…え、えっと」

目を泳がせるアーノルドに、アネッタは彼の肩を抱いてみせる。

「生まれてからずーっと一緒よ、だってあたしのお兄ちゃんだもの」

「……え、ええ!お兄さん…だったんですか!?」
「なるほど…スタジオアネッタとアネクロアの接点はそこにあったのか…!」
肩を組まれたアーノルドは恥ずかしそうに頷いた。
撮影を始められると連絡しに来たスタッフも、物凄い顔をして驚いている。
…どうやら誰も知らなかったようだ 所々から「まじでか!」と声が聴こえる。

「ハイハイ、あたし達の話はおしまいよ…二人共並んだ並んだ」

 白いシャツに黒のタイトのハイウェストスカートをオーダーしたペシェ。
髪と同じ色オレンジのタイにニーハイソックスを合わせてシックにまとめてある。
ボードを持って微笑む彼女は大人びた雰囲気を醸し出してとても綺麗だとカメラマンは言っていた。
パートナーのフランペティルはスリムなラインの白いYシャツに黒いスーツ…それに合わせハットピンクのネクタイをオーダー。
スーツの裏側に刺繍されたアネクロアのロゴに思わず口元が緩んでしまう。

「…そんなに嬉しかったんですね」
「当たり前だ!…まさかこのような接点で創設者であるアーノルドに出会えるとは思わなかったがな」

満足そうに微笑むフランペティルにポーズを指南してもらい、二人の撮影は進んでいった。
撮影終了と同時に、フランペティルに質問責めにあうアーノルドが目撃されるが、アネッタが止めるなと全員に言った。
ペシェがフランを止めようとするも、アネッタは大丈夫だと引き止める。
「い、いいんですか?フランがいろいろ聞いてますけど…」
「社長の癖に人が怖いのは治してあげなくちゃ、可愛い弟の愛よ、あ・い」
「…な、なるほど…」

「…寧ろあそこまで気に入ってくれてると、あたしが嬉しいわ」



 小道具を持ってきたスタッフは撮影スタジオをアンティークなカフェへと変えていく。
白い縁取られた窓の向こうは美しい青空が広がっているように見える…だが、これも作られたものだ。
細かい所まで行き届かれた背景に、ミサ・フルールは息が漏れる。

「はあー…凄い、本当にカフェがあるみたい」
「喜んでもらえて良かったぁ」
「寝ずに作った甲斐があったぜ…!」
ミサは嬉しそうに微笑むと、自分の傍で涙を浮かべるスタッフに、ちゃんと寝て下さいとツッコミたかった。
ヘアスタイルを整え終えたエミリオ・シュトルツが戻ってくると、スタジオを見て驚く。
後ろから顔を出したアネッタは、驚くエミリオに満足そうに笑ってみせた。

「スタジオアネッタじゃこれくらい当然よ?」
「…ッハハ、恐れ入るよ」

 カフェのテーブルに座ってエミリオを待つミサは、準備を終えたエミリオに手を振った。
二人がオーダーした衣装はカフェのウェイトレスとウェイターをイメージした衣装。
お互いのエプロンにはミサが愛用している髪飾りと同じ花の刺繍がされてある。
撮影を始める前にスタッフに呼ばれたアネッタは少し待ってて欲しいと二人に告げた。
セットで置かれていたソファに腰掛けた二人は、静かに待つことに。

「…ねえ、ずっと前に話した事なんだけど」

そう切り出したミサに視線を向けると、彼女は昔話した将来の夢の事を話した。
 少女を探して入ったあの森で語った、いつか叶えようと願った夢の話。
思い出したエミリオは相槌を打ちながら、懐かしい話をするなあ…と、思っていた。
そんな話を聞いたと答えれば、ミサはエミリオに向き合って問いかける。

「ねえエミリオさん…夢は、見つかった?」
「夢か…」

口から出た夢という言葉に、中身が無いエミリオは彼女の問いには答えられなかった。
いつか見つかると思っていた…いつかもう一度問いかけるミサに答えようと思っていたが、思うようにはいかない。
答えられない自分が情けないと感じるエミリオは、視線を下げる事で精一杯だった。
そんな彼の手を、ミサはそっと包む。

「あ、あのね、もしよかったらなんだけど」
「…?」

「私が一人前のパティシエになって自分の店を持てたら…エミリオさんも一緒に働かない?」

彼女の口から出たのは想像もしなかった言葉。
一緒にと言ったミサは、手をとったまま話を続ける。
陽の光が入る暖かなお店に、美味しいケーキや紅茶を入れてお客さんをもてなす。
頭のなかで想像しているだけでも、すぐに叶えてしまいそうな彼女にエミリオは目を細める。

「私のお父さんとお母さんみたいに、大好きな人と一緒に笑顔を届ける仕事がしたいなって思ったんだ」
「っ、…それはとても素敵な夢だね」

大好きな人と 一緒に。
そう言って微笑むミサの言葉に、目頭が熱くなるのを感じた…溢れそうになる何かを抑えてミサの額に自分の額を重ねる。

「…じゃあ、いつか夢が叶ったその時はこの制服を着て」

店の宣伝をする時はアネッタの所でポスターの写真を撮ってもらおうか。
そう告げれば、ミサは嬉しそうに頷いた。

「あらあら素敵なお話ね…その時はサービスしてもいいわ」
「あ、アネッタさん!」

「んふふ あたし甘いもの大好きなの…頑張ってね」

可愛らしいお店に入ったら、二人で出迎えてくれるのを楽しみにしてるわ。
そう言ったアネッタは二人の肩を叩くと、撮影を始めると告げた。
…視線を合わせ微笑む二人はカメラの前へと足を踏み出す。

いつかまた二人で撮りに来る時の 予行練習も兼ねて。



「はーいお疲れ様ー!今日撮影した画像はA.R.O.A.本部に送っておくから、完成を楽しみにしてて頂戴」
アネッタの言葉にぐったりとするスタッフ達はとてもだらしがない。
…だがそれ以上にウィンクルム達を緊張から解放しようとあれこれ頑張ってくれたのは目に見えていた。
玄関口で注文した写真やストラップを受け取ると、アーノルドは慌てて一同を呼び止める。

「今日は素敵なオーダーをありがとう…君達ウィンクルムの服が作れて、僕はとても幸せだよ」
「何を言うか、有名ブランドの社長がそのような低姿勢で…」
「そんな事ないよ!…だって、頼んでくれる人がいなくちゃ僕はこうしていられないもの」

だから、ありがとう。
深く頭を下げたアーノルドに、一同は同じように頭を下げる。
アネクロアの社員が小さな紙袋を順番に差し出していくと、アーノルドは続けて話した。

「それはうちで作ったハンカチなんだけど…服専門だから、ハンカチは作らないんだけど…その」
「あー!見てイヴェさん、私の名前が入ってます!」

淡島の言葉に中を見ると、手渡されたハンカチの一つ一つに個人名が刺繍されていた。
アネクロアの気品あるマークの傍に、筆記体で記されている。

「お礼がしたかったんだ…よかったら、使ってね」

喜ぶ一同に頬を赤らめて話すアーノルドは、続けて注文された衣装を全員に渡した。
「いつか…いつかでいいんだ、その服を着て街に出たり、散歩したりしてみて欲しい」
「何度も着てもらえる…それは服を作る僕達にとって幸せな事だから」


スタッフに見えなくなるまで手を振ってもらって一同は素敵な衣装と共に本部へと戻っていった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター らんちゃむ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月05日
出発日 09月12日 00:00
予定納品日 09月22日

参加者

会議室

  • [6]手屋 笹

    2014/09/10-20:42 

    手屋 笹と申します。

    ほとんどの方がお会いした事がありますね。
    楓乃さんとウォルフさんは初めまして、
    よろしくお願いします。

    普段の服装が服装なのでリクエスト服がどうなるかとても楽しみです。

    さてどんなものにしましょうか…。

  • [5]楓乃

    2014/09/08-23:39 

    ミサさん、咲さん、お久しぶりです。
    他の皆さんは初めましてですね。
    私、楓乃と申します。皆さんどうぞよろしくお願いいたしますね。(微笑)

    世界でたった一つの衣装…とっても楽しみです♪
    どんな衣装がいいか迷っちゃいますねー…。

    社長さんと会うのもとっても楽しみ!

  • [4]ミサ・フルール

    2014/09/08-23:32 

  • [3]ミサ・フルール

    2014/09/08-23:31 

    こんばんは(微笑みながらお辞儀)
    ミサ・フルールです。
    パートナーのエミリオさんと一緒に参加します。

  • [2]淡島 咲

    2014/09/08-09:44 

    こんにちは、淡島咲です。
    パートナーはマキナのイヴェさんです。
    ペシェさんとフランペティルさんは初めましてですね。
    皆様よろしくお願いします。

    公式アプリ…わ、私なんかでいいのかちょっと心配なのですが…頑張ります。

  • [1]ペシェ

    2014/09/08-09:07 

    笹さんカガヤさんこんにちは!
    他の方は始めまして。
    ペシェと言います。こちらは…

    フラン「
    ふははははは!この度の依頼は美麗にして優美なファッションモンスターである吾輩、フランペティルに相応しいな!


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