ホッと一息(うち マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

「最近、とある喫茶店が巷で噂になっているらしい」
 A.R.O.A.勤務の男性職員スギバヤシは部下のナカムラとの世間話の最中、そんな話をし始めた。
「へぇ、どんな噂っすか?」
 ポリポリと堅焼き煎餅を齧りながらナカムラは話に乗る。
「少し前までは凄く美味しいホットケーキが売りの喫茶店だったみたいなんだけど、最近メニューを増やしたらしくて、その増やしたメニューの……確か“二人用のチーズケーキ”が大分評判らしいんだ」
「二人用……つまりカップル向けっすか。って事は私にゃ関係ない話っすねぇ……」
 一瞬で興味をなくしたらしいナカムラはそっぽを向いて次の堅焼き煎餅に手を伸ばす。
「えぇ!? いやいや、ここは『それじゃ次の休みにでも一緒に行ってみないっすか?』って流れだろオイ!」
「そんなの知らないっすよ。それに私、甘いモノはそんなに好きじゃないっす」
「だ、大丈夫だって、甘さ控えめにも出来るらしいって!」

 A.R.O.A.は今日も平和です。



 兎と大地亭。
 少し前まで経営危機にすら陥っていたタブロス市の喫茶店なのだが、運良く居合わせたウィンクルム達の機転によって立て直しに成功したようだ。

 そんな喫茶店『兎と大地亭』は、今ウィンクルム達の中で密かな人気デートスポットとして利用されているらしい。
 なんでも店主のリンが最近カップル向けに追加した『チーズケーキセット』というメニューが評判との事。

 食事やデートの合間の休憩に一度寄ってみませんか?
 忙しい日常に一時の安らぎを求めてみませんか?
 営業時間の午前10時~午後20時ならいつでも歓迎です。

解説

 ●目的
 『兎と大地亭』でまったりと過ごそう。
 食事に寄ったり、デートの合間の休憩に寄ったりしちゃって下さい。

 ●店主リン
 20代の女性店主。
 無愛想な女性店主だが、彼女の淹れる珈琲や紅茶、卵料理に関しては逸品と言わざるを得ない。
 得意なもの 珈琲や紅茶を淹れる事、卵料理。
 苦手なもの 張り詰めた空気。

 ●店員クレア
 10代の女性店員。
 所々危なっかしい給仕をする新人店員、暇になれば店主とまったりした世間話を始める。
 得意なもの お喋り。
 苦手なもの 何もしない事。

 ●メニュー
 珈琲(ブルーマウンテン、モカ、キリマンジャロ、カフェオレ、カフェラテ) 30Jr
 紅茶(アッサム、ダージリン、レモン、ミルクティー) 30Jr
 フレンチトースト 40Jr
 ホットケーキ 40Jr
 カレーライス 50Jr
 オムライス 50Jr
 ナポリタン 50Jr
 カルボナーラ 50Jr
 黒兎のケーキフロッシュ 60Jr
 カスタードクリームのフロッシュラビリット 50Jr
 お二人様用チーズケーキセット 50Jr

ゲームマスターより

プロローグ閲覧ありがとうございます。

このプロローグ書き始めた時は『ぐちょぐちょ』ってキーワードだったんですけど、何故か最終的に兎と大地亭のプロローグになってました。
おまえなにいってだ?って言われるかもしれないですが本当の事なので仕方ないです。
プランに一言だけデート中、デート後、昼食、偶然見つけた等を入れて貰えると上手い事反映されるかもしれません。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リゼット(アンリ)

  さっきのお店のランチ、おいしくってつい食べ過ぎちゃったわね
って、言ってるのにどうしてまた喫茶店に入るのよ
お茶?まあそのくらいならいいけど

ちょっ!?チーズケーキセット5つって!
そんなに頼んでどうするのよ!
これお二人様用って書いてあるわよ!
私はミルクティーだけいただくわ

私はいらないわ…いらないわよ…おいしそうね…
べ、別に欲しくなんて!
あんたがあんまり美味しそうに食べるからそう思っただけよ
食べてる時ほんとに幸せそうよね
おすそ分け?まあ一口くらいなら
ん…おいしい…!

食べてる時?まあ、悪くはない気分ね
あんたほどではないと思うけど
大事な一口、もらっちゃって悪かったわね
一緒に幸せに…そうね、それもいいかも


かのん(天藍)
  兎と大地亭、お邪魔するのは久しぶりですね
リンさん達の迷惑にならなければ、少しお話し出来ると嬉しいのですけど
新メニューもあるんですよね
お二人様用って大きいんでしょうか?
違う種類がセットになっているんでしょうか?楽しみです

来店して、つい、反射的に兎トピアリーと苔玉の状態チェック
綺麗な状態が保持されていてちょっと嬉しい
カウンター越しにリンさんとお喋り
リンさんにクレアさんを紹介して貰って話に花が咲く

あ、ごめんなさい天藍
勿論食べます、いただきます

出てきた料理2人でシェアして食べる
黒兎(以下略)は相変わらず美味しいし、オムライスはふわふわ、とても幸せですね

閉店間際までいたので、迷惑でなければ片付けを手伝う



ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  【ハロルドの注文】
紅茶(ダージリン) 30Jr
ホットケーキ 40Jr
オムライス 50Jr
カルボナーラ 50Jr
黒兎のケーキフロッシュ 60Jr
カスタードクリームのフロッシュラビリット 50Jr

【プラン】
お買い物帰りに小腹がすいたからカフェに寄ったよ
ちょっと疲れてたから、甘いものたくさんあるのは嬉しいな。
ディエゴさんは甘いものあまり得意じゃないから
チーズケーキは多分私がほとんど食べるんじゃないかな。
ケーキのお皿は私のところに寄せて…
…あの、食べたかったらいつでも切って食べさせてあげるから。

それはそうと、ディエゴさんに渡したいものがあるんだ
さっき買ってきたんだけど…
…これ、勿忘草の鉢植え…どうぞ



八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
  注文:
ブルーマウンテン×2
チーズケーキセット
110Jr

夕飯の買い出しの帰りに素敵な喫茶店を発見
アスカ君が気になるメニューを見付けたみたい
まだ晩ご飯まで時間があるし寄って行こうか
うん、いいよ、私もチーズケーキが食べたいな

甘い物は好きだけど
食べる時は一緒にブラックコーヒーが欲しい派
アスカ君を見ながらゆっくり食べる
このコーヒーすごく美味しい…

アスカ君本当に甘い物が好きなんだなぁ…
おいしそうに食べるのを見てるだけでこっちまで幸せな気分
足りなかったら私の残りでよければどうぞ
ふふっ、お礼なんていいのに
それじゃあ今日の夕食当番手伝ってくれる?
私よりアスカ君の方が料理上手だし
それに一緒に作ったらきっと楽しいよ



ジェシカ(ルイス)
  買い物中に偶然発見

あら、ここって噂で聞いた喫茶店じゃない?
いいじゃない、ちょうどお腹もすいてきたし寄っていきましょうよ
ルイスに有無を言わせず入店

注文はチーズケーキセットとミルクティー
噂になるくらいならぜひとも食べてみなくちゃね!
セットだと1人で来た時には頼みにくいことだしいい機会だわ

注文が来るまで会話
やっぱり都会はすごいわね!
品揃えが全然違くてついつい買っちゃうわ
大丈夫よ、斧に比べれば軽いものでしょ?
頼りにしてるんだからね

ケーキも紅茶も美味しかったしまた来たいわね
次はホットケーキが食べてみたいわ

それじゃあお腹も満たされた事だしそろそろいきましょうか
あっちの方はまだ行ってないわね
さ、行きましょ!


 ●お昼の兎と大地亭

「リンさん、オムライスとカレーライス、それとモカとキリマンジャロ1つずつです」
 バイトの女性店員クレアが端のテーブル席の客から受けてきた注文をカウンターのリンに伝える。
「はぃよ~」
 リンはマイペースな感じにそう返し、手際良く注文された品を作っていく。
「次はナポリタンとホットケーキですー」
「ほい、モカとキリマンジャロね。新しいのはもう少し待ってもらって~」

 少し前までは閑古鳥が鳴く程だったこの喫茶店も今ではこの通り、昼食時には混雑するぐらいまでには賑わっているようだ。


 ●昼13時

「さっきのお店のランチ、美味しくってつい食べ過ぎちゃったわね」
 言葉の通り本当に美味しかったようで『リゼット』は一緒に歩く『アンリ』に上機嫌に話し掛ける。
「あぁ確かに美味い昼飯だったな。こうやって、たまには外で食うのも悪くないだろ?」
 アンリはニッと歯を見せてリゼットに笑い掛けた後、視線を前に戻す途中で兎と大地亭の看板が目に入る。
「お、ここって最近評判のいい喫茶店じゃねぇか? なぁリズ、ちょっと休憩してかね?」
「ついさっき昼食摂ったばっかりじゃない!」
「だから休憩、腹ごなしにお茶飲むだけ!」
「お茶……ねぇ。まぁそのぐらいならいいか……」
 パッと見雰囲気は良さそうだし、とリゼットのお眼鏡にも適ったらしい。

「いらっしゃいませー」
「……おーぅ、いらっしゃい」
 期待に胸を膨らませたアンリが元気良くドアを開けると元気の良いクレアとやや気怠そうなリンが出迎える。
 昼食時を過ぎて空いてきている店内を見渡したアンリは窓際に座るなり。
「おーい、注文! お二人様用チーズケーキセット5つな~」
 等と宣った。
「ちょっ!?チーズケーキセット5つって! そんなに頼んでどうするのよ! これお二人様用って書いてあるわよ! 私、もうお腹一杯なのよ!?」
「あ? 10人分ぐらい余裕だろ、食後のデザートなんだからしっかり締めねぇと」
 締めると言うか弛んでる気がするのは気の所為なのだろうか。
「い、良いんですか?」
 不安そうにクレアは聞き返すが。
「大丈夫」
 キリッと一転したイケメン顔で返すアンリ。
「……はぁ、もういいわ。私はミルクティーだけいただくわ」
「は、はい。チーズケーキセット5つとミルクティーですね、畏まりました」

 人気のチーズケーキセットは作り置きされていた為、注文の品はすぐに届いた。
 カチャカチャとテーブルに次々と並べられていく10皿のチーズケーキと最後に自分の目の前に置かれたティーソーサーの上のミルクティーを見比べてしまいリゼットは目眩のようなものを感じた。
「よーし、いただきます」
 アンリは早速と言わんばかりにフォークで切り取って一口目をパクン。
「お、おぉ~うンめぇ! 噂通りだな。こりゃいくらでも食えそうだ」
 ほわぁと幸せそうな顔をしながら感想を口にする。
「食後だっていうのに何処に入っていくのかしら……」
 微妙な顔をしたリゼットは頼んだミルクティーを一口飲む。
「(あら、美味しいわね)」
 予想以上に美味しいミルクティーの味に少し驚かされたようだ。

「ん? なんだリズ、欲しいならやるぞ?」
「べ、別に欲しくなんて……あんたがあんまり美味しそうに食べるから見てただけよっ!」
 幸せそうに食べるアンリを見つめてしまっていたリゼットに、アンリはニッと笑い掛けリゼットの口のサイズに切り分けたケーキを突き出す。
「お裾分け? ま、まぁ一口なら……」
 美味しそうに食べるアンリの姿とケーキの甘い香りが相まった誘惑に勝てず、リゼットは口を開けてアンリのフォークを受け入れる。
「ん……美味しい!」
「なぁ、美味いだろう!」
 幸せを共有出来たアンリも嬉しそうだ。
「それにしても美味しそうに食べるわねぇ」
「食ってる時は最高に幸せだからなぁ、お前は違うのか?」
「食べてる時?まあ、悪くはない気分ね。あんた程ではないと思うけど」
「だから一口と言わずもっと食ったっていいんだぞ? お前も俺と一緒に幸せになっちまえ!」
「一緒に幸せに……そうね、それもいいかも」
「……そう普通に受け取られちまうと調子狂うんだが」
「何よ、素直なのがいけないって言うの?」

 その後、喧嘩になりそうになりながらも二人は幸せそうに店を後にした。



 ●昼14時

 やや涼しくなってきたとはいえ未だ残暑、そんな暑さに負けないような元気な声とそれに付き添う声が聞こえてくる。
「あら、ここって噂で聞いた喫茶店じゃない?」
 買い物の途中、ふと目に入った喫茶店の看板を見て『ジェシカ』は荷物持ちの『ルイス』に話し掛ける。
「うん。僕も聞いた事あるかも、確かチーズケーキセットが評判とか……」
「よーし、入るわよっ!」
 確認が取れるなり、ルイスが着いて来る事を全く疑わず、ジェシカは颯爽と兎と大地亭へと入っていった。
「あ、待ってよジェシカ!」
 実際、荷物持ちとして一人帰る訳にもいかないルイスは着いて行くしか無いのだが、そういった打算などはジェシカの頭には無い事はルイスが一番良く分かっている。

「注文はお決まりですか?」
 手近な所に座った二人の所に店員のクレアが注文を取りに来る。
「注文はチーズケーキセットとミルクティーで」
「えっと……じゃあ僕はモカで」
「畏まりましたーっ! 少々お待ち下さいね」

「噂になるくらいだし是非とも食べてみなくちゃね! セットだと一人で来た時には頼み難い事だしいい機会だわ」
「うん、どんな味か楽しみだね(でもこのチーズケーキセットはカップル向けって話の筈だけど、ジェシカは明らかに色気より食い気タイプだしそこは頭にないんだろうなぁ……)」
 鼻息を荒らげるジェシカにルイスは苦笑で返す。
「やっぱり都会は凄いわね!」
「僕らの村とは全然違うよね、何だか建物ばっかりで」
「それにお店の品揃えが全然違くて、ついつい色々買っちゃうわ」
「それに比例して僕が持つ荷物が順調に増えていくんだけどね」
「大丈夫よ、樵の斧に比べたら全然軽いでしょ?」
「え、うん。それはそうだけど、これらを斧と比べていいものなのかな?」
 あはは、とルイスは再び苦笑する。

 話の区切りがきた所でクレアが注文の品を届ける。
「お待たせ致しました、チーズケーキセットとミルクティー、モカになります」
 テーブルの上に二つ並べられた小振りのチーズケーキの甘い香りにジェシカもルイスも顔が緩む。
「わぁ、美味しそう」
「それじゃいただこうか」
 想像以上に美味しそうな匂いに二人はゴクリと涎を嚥下する。
 フォークで上手に切り分け、二人は同時にケーキを食べる。
「ん、んん~美味し!」
「……ほんと、美味しい」
 パァと花を咲かせるような笑みのジェシカと目を見開くルイス。
 一言感想を言い合った後、二人は黙々と目の前のケーキに集中し、気が付くと全部食べてしまっていた。
 まったりと紅茶と珈琲を飲み終え。
「ご馳走様でした」
 と頭を下げながら二人はリンに勘定を払い、店を後にした。

「ケーキも紅茶も美味しかったしまた来たいわね。次はホットケーキが食べてみたいわ」
「そうだね。また機会があったら行ってみよう」
「さって、それじゃあお腹も満たされた事だしそろそろ次に行くわよ」
「えっ? まだ買い物するの?」
「当たり前じゃない。まだあっちの方に行ってないわね。さ、行きましょ!」
「(これは当分開放されなさそうだ……)場所が変わっても相変わらずだよね、僕らは」
 そう思いつつも満更でもなさそうなルイスは自然な笑みをジェシカに向けていた。



 ●昼15時

「ディエゴさんディエゴさん、ちょっと小腹が空いたし、そこのカフェにでも寄ってかない?」
 買い物を終え、帰路につこうとした『ハロルド』が兎と大地亭の看板を見つけ、『ディエゴ・ルナ・クィンテロ』に寄り道していこうと提案する。
「ん、15時か……時間も丁度いいし行くか」
 同じく小腹が空いていたディエゴに断る理由など無い、二つ返事で了承し、兎と大地亭のドアを開ける。
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃ~い」
 クレアとリンの挨拶を聞きながら、ハロルドは窓際の席に座りに行く。
「ご注文は如何が致しますか?」
「んー、私はダージリン、ホットケーキ、オムライス、カルボナーラ、黒兎のケーキフロッシュ、カスタードクリームのフロッシュラビリット」
「お、お一人でですか!?」
「うん」
「俺はモカ、フレンチトースト、カレーライス、ナポリタン、チーズケーキセット一つは甘さ控えめで頼みたい」
「か、畏まりましたっ!」
 カウンターの方が慌ただしくなり始める。

「ふふ、ちょっと疲れてたから甘い物が沢山あるのは嬉しいね」
「そうだな。チーズケーキも甘さ控えめに出来るらしいから頼んでみたが、それでも甘かったらエクレールが食べてくれ」
 エクレール・マックィーン、それはハロルドの本名だ。
「うん、分かったよ。ぁ、それはそうと、ディエゴさんに渡したい物があるんだ」
「ん?」
「さっき買ってきたんだけど……。これ、勿忘草の鉢植え……小さいけど、育てれば春には可愛い花が咲くんだよ。花言葉は『私を忘れないで』ディエゴさんの過去には驚いたけど、私は軽蔑なんてしてない、する筈がない。いつでもどんな時でも貴方の味方でいる、いさせて欲しい。そんな私の事を忘れないで欲しいなって」
「……ありがとう。大切に育てさせてもらう」
「ふふ……勿忘草にはもう一つ意味があるんだけど、その花が咲いたら教えるよ。あ、絶対に調べないでね」
「わ、分かった」
 ハロルドの得も知れぬ凄味にディエゴはこくりと頷いた。

「お待たせ致しましたー」
 最初に運ばれてきたのはハロルドのダージリンとホットケーキとオムライス、ディエゴのモカとフレンチトーストとカレーライス、そしてチーズケーキセットだ。
 紅茶と珈琲の香りが二人の食欲を更に刺激する。
「良い香り……」
「いただきます」
 我慢が出来なくなったディエゴはパンと合掌して目の前のフレンチトーストにナイフとフォークを突き入れる。
 切り分けた部分からじゅわぁと、とろけるフレンチトーストに齧り付く。
「美味い」
 同じく空腹感を刺激されたハロルドも待ち切れない気持ちで一杯になりながらメイプルシロップを掛け終えたホットケーキを手早く切り分けて口へと持って行きバクンと一口。
「んー♪ 美味しい~。程良く疲れた体に染みるような甘さだよ」
 そんな風に感想を言い合っている内にオムライスもカレーライスもあっという間に食べ終わってしまう。

「次はお待ちかねのチーズケーキだね」
「では……」
 綺麗に切り分け、口へと運ぶ。
「ふあぁ、美味しい」
「ん、こっちの甘さ控えめの方も美味い」
「え、じゃあそっち一口頂戴」
「だったらエクレールの方も一口貰うぞ?」
「うん、いいよ。はい、あーん」
 コクリと頷いたハロルドは一口サイズにしたケーキを突き出す。
「む……あ、あーん」
 やや気恥ずかしいものを感じつつもディエゴは口を開け、ハロルドのケーキを食べる。
「……ん、やはり甘さが違うみたいだな」
「本当に? じゃあ次はディエゴさんだよ、あーん」
 ディエゴの話で期待度が上がったようでワクワクしながらハロルドは口を開けてディエゴを促す。
「分かった分かった。ほら」
 と、先程のハロルドと同じようにケーキをハロルドの口へ。
「うん、甘さ控えめの方も美味しいね」
「お待たせ致しましたーっ! いやぁ、お熱いですねぇ」
 そのタイミングでクレアが残りの品を運んで来てニヤニヤと微笑む。
「ぅ、ぐ……」
 唯でさえ恥ずかしい行為だったのにそれを他人に見られてしまい、ディエゴの恥辱ゲージは一気にMAXだ。
 その後は俯き気味になりながらもディエゴは残りのナポリタンを食べ終えた。
 逆にハロルドはニコニコと機嫌が良さそうにしながらカルボナーラ、黒兎のケーキフロッシュ、カスタードクリームのフロッシュラビリットを完食し、そのまま帰路へと着いたのだった。



 ●夕方17時

 日が沈みかける夕暮れ時、夕飯の買い出しを終えての帰り道に『八神 伊万里』は兎と大地亭の入り口に置いてある兎型のトピアリーを指差しながら、『アスカ・ベルウィレッジ』に笑い掛ける。
「あの兎の型の木、可愛いくない?」
「ん? あの喫茶店の前にあるやつか?」
「うん」
「へぇ、よく出来てるなぁ……ん、んん? なぁ伊万里、小腹が空いてこないか? その喫茶店、二人で食べれるチーズケーキセットってのがあるみたいだ。丁度甘いものが欲しかったし行ってみないか?」
 外に置いてある喫茶店のメニューを目聡く見つけたアスカの尻尾がピコッと立っている。
「でもこれカップル向けみたいだよ?」
「カップル、向け……? ばっ、か、か、勘違いするなよ! 俺はただこのチーズケーキが食べたかっただけなんだからなっ!」
「うん、良いよ、私もチーズケーキが食べたいな」
「お、おう」
 そうして顔を赤らめるアスカとその様子が可笑しいのか笑顔の伊万里は兎と大地亭のドアを開けた。

 特に理由はなかったが空いてるテーブル席に二人が座ると、すぐにクレアが注文を取りに来る。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「チーズケーキセットだ!」
「それと……ブルーマウンテンを二つ」
 最早チーズケーキの事しか頭にないアスカ、甘い物を食べるならとアスカの分まで珈琲を頼む伊万里。
「畏まりましたーっ」

 注文を終え、落ち着いたのかホッと息を吐いたアスカはふと周りを見渡してみると、周りの客は男女が1名ずつ……つまりカップルばかりだ。
「う、本当にカップルばっかりだ……」
 そう呟いて、気恥ずかしそうに身体を縮こまらせる。

「お待たせ致しました」
 それから少しするとクレアが注文の品を運んでくる。
「うお、美味そうな匂いだ!」
「……凄く良い香り」
 テーブルに置かれたチーズケーキの匂いにアスカが、ブルーマウンテンの香りに伊万里がそれぞれハッとした顔になる。
「よし、それじゃ早速」
 クレアが一礼して去るなり、アスカはフォークを手にチーズケーキを切り、口へと運ぶ。
「……っ! う、美味いっ!」
 まろやかな甘さにとろけるような食感にアスカは思わずはふう、と溜め息が出てしまう。
「うんうん、ケーキもそうだけどこのコーヒーも香り高いって言うのかな? すっごく美味しいよ」
「ほんっとに来て良かったな」
 アスカが満面の笑みを浮かべてチーズケーキをモグモグと咀嚼する。
 楽しい時間はすぐに過ぎるというが、本当にあっという間に食べ終えてしまう。
「夢中で食べてたらあっと言う間になくなっちまった」
 言いながらまだ半分ほど残っている伊万里のケーキに視線を移す。
「アスカ君は本当に甘い物が好きなんだなぁ」
 そんなアスカの様子を見てくすくすと伊万里は笑って。
「足りなかったら私の残りでよければどうぞ」
「な、なんで俺の考えてる事が分かったんだ!?」
 どうやら顔に出ていた事には気付いてないらしい。
「サンキューな、今度お礼を返さないとな」
「ふふっ、お礼なんていいのに、それじゃあ今日の夕食当番手伝ってくれる?」
「……お安い御用だ、けどそんなんでいいのか?」
 というかそれだと俺が嬉しいだけで……なんて言い掛けて口を噤む。
「私よりアスカ君の方が料理上手だし、それに一緒に作ったらきっと楽しいよ」
「そ、そうだな。しょうがないから手伝ってやるよ!」
 その後、伊万里から貰った2皿目のケーキもぺろりと完食し、二人は帰路へと着いた。
 気分が良かった所為なのか、二人は自然と手を繋いで帰ったとか帰ってないとか。



 ●夜19時

 日が沈み、あと少しで兎と大地亭も閉店。
「かのん、丁度ここから近いし夕食は兎と大地亭にしないか?」
 そんな時間にデートをしていた『天藍』が近くに兎と大地亭があるのを思い出し食事がてら顔を出す事を『かのん』に提案する。
「良いですね。最近はお二人様用のチーズケーキセットと言うのが新メニューとして増えたみたいですよ。お二人様って大きいんでしょうか? 違う種類がセットになっているんでしょうか?」
「それは楽しみだな。良し、まだ閉店時間じゃない筈だけど急ごうか」
「はい」

 店に着くなり、かのんはついつい入り口に置いてある兎型のトピアリーの状態を見る。
 簡易的な手入れがされているようで綺麗な状態が保持されていてちょっと嬉しく感じつつ、店の中へと入っていった。
「いらっしゃいませー」
「……ぉ、いらっしゃい」
 いつも通り挨拶するクレアとかのん達に気付いたリンが挨拶をする。
「リンさん、お久し振りです」
 ぺこりと礼儀正しく頭を下げるかのんに合わせて天藍も軽く頭を下げ、開いているカウンター席へ。
「注文は決まってるのかい?」
 カウンター越しにリンが注文を受ける。
「オムライスと黒兎のケーキフロッシュ、食後にカフェラテとダージリンとお二人様用のチーズケーキセットを」
 店の外のメニューで既に決めていた為、天藍が全て注文する。
「はぃよ」

「リンさんリンさん、このお客様達はお知り合い何ですか?」
 リンの顔馴染みらしいかのんと天藍に興味津々といった感じでクレアが問う。
「そうだねぇ、一言で言うならこの店を救ってくれた恩人って所かねぇ」
 ふふ、とリンは軽く笑う。
「そうなんですか? じゃあ私がここで働けるのもこの方達のお陰なんですねっ! 私、この店で働かせて貰ってますクレアって言います。宜しくお願いします」
「ご丁寧にどうも。私の名前はかのん、そしてこっちが天藍です。こちらこそ宜しくお願いしますね」
 かのんはニコッと笑い掛ける。
「ふあぁ……よく見たら凄い美人さんだぁ」
「ふふ、ありがとうございます」
「ほらクレア、あんたのお気に入りのこの苔玉を飾るアイディアを出したが、かのん達だったんだよ」
 料理をする手を止めずにリンは自慢気にそう言う。
「えぇ、そうなんですか! これすっごく可愛くて私、とっても気に入ってます」
「ありがとう、気に入って貰えて私も嬉しいです」
 女三人集まれば姦しいとはよく言ったものだ、と天藍は話の盛り上がる女性陣をのんびりと眺める。

 卵料理に掛けては手際の良いリンの料理はすぐに出来た。
「ほらかのん、食べないんなら一人で食べてしまうぞ」
「あぁ、ごめんなさい天藍。勿論食べますよ、いただきます」
 一人で一つの料理を食べるのではなく、二人で二つの別々の料理を食べ合う。
 先ずかのんは黒兎のケーキフロッシュを、天藍はオムライスを一口。
「相変わらず黒兎のケーキフロッシュは美味しいです」
「(この絶妙な半熟加減……)あぁ、美味いな」
 ほっぺが落ちそう、と言いながら今度はオムライスを食べるかのんを見ながら天藍は柔らかく笑う。
 笑顔の二人を眺めるリンも満足気だ。
 食後に頼んでおいたチーズケーキセットとお茶を楽しみながら、再び女性陣が話に花を咲かせている内に時間は20時、閉店時間になった。

「閉店間際までお邪魔しちゃいましたし、迷惑でなければ片付けをお手伝いさせて下さい」
 良くも悪くもお人好しなかのんがそう言うと、天藍は本当にかのんはお人好しだな、と軽く溜め息を吐いて、先の手伝いで知っている掃除用具がある場所へと向かった。
 素早く動いた天藍のお陰もあり、閉店前の片付けはすぐに終わった。
「いやぁ、すまないねぇ。お客なのに手伝って貰っちゃって」
「いえいえ、こちらから言い出した事なのでお気になさらず」

 その後、またその内来店する約束をしてから、二人は兎と大地亭を後にした。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター うち
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月01日
出発日 09月06日 00:00
予定納品日 09月16日

参加者

会議室

  • [5]ジェシカ

    2014/09/04-23:55 

    こんばんは、ジェシカよ。
    みんなよろしくね。
    買い物中なんだけど、お腹がすいちゃったから入ってみる事にしてみたわ。

  • [4]リゼット

    2014/09/04-22:22 

    リゼットよ。よろしくお願いね。
    おかしいわね。今お腹いっぱいなんだけど…

  • [3]八神 伊万里

    2014/09/04-21:20 

    八神伊万里です。
    よろしくお願いします。
    買い出しの帰りに素敵なお店を見つけたので、少し寄って行こうかなと思います。

  • [2]かのん

    2014/09/04-19:05 

    こんばんは、かのんと申します
    皆様よろしくお願いします
    『兎と大地亭』は前のお手伝い以来久しぶりにお邪魔します
    新メニューもあると聞いているので楽しみです

  • [1]ハロルド

    2014/09/04-12:17 

    皆さんこんにちは、ハロルドと申します
    ちょっとお腹がすいたので喫茶店に立ち寄ろうかと思います。


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