【夏祭り・鎮守の不知火】祭りを襲う不埒者(うち マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

「……何回数え直しても足りない」
 それは紅月ノ神社〈あかつきのじんじゃ〉での夏祭り、所狭しと並んだ出店での事である。
 本日の仕事も終了、リンゴ飴の儲けを数えようと手持ち金庫を開けてみると中から数枚の葉っぱが見つかる。
「……??」
 最初は意味が分からずに放っておいたのだが、今日の売上と金庫に入っている筈のお金〈Jr〉が何度数え直しても足りていない。
 ハッと気付いて葉っぱの枚数を足してみると本日の売上とピッタリ合う。
 金庫は自分の手元で厳重に管理している、会計の際にお金と間違えて葉っぱを受け取ってしまった、としか考えられないのだ。
 しかも、この不可思議な出来事は自分の店だけで起こった事ではないらしい。

 同じく被害に遭った、たこ焼き屋のお爺さんが言うには。
「化け狸じゃ……化け狸に化かされたんじゃ……」
 この珍事件は鎮守の森の妖怪である『化け狸』が原因であるという。
 つまり、夏祭りに人間に化けて忍び込んだ化け狸が葉っぱをお金〈Jr〉に見せて買い物をしているらしい。
 このままではまともに客商売が出来ない、どうにかして化け狸を見つけ出して退治して欲しい。
 化け狸はお尻辺りに丸い尻尾が生えていて、それは化けている状態でも隠せないとの事なので見つける事は容易らしいのだが、化けている事がバレると暴れだすそうなので騙されて葉っぱを掴まされても良いから一般客に迷惑を掛けないように穏便に退治して欲しいとの事である。

解説

 ●目的
 一般客に被害を出さないように化け狸の撃退。

 ●化け狸
 数は確認されていないが葉っぱの枚数から少なくとも4匹以上は居るらしい。
 周囲の人達と同じ格好〈浴衣〉になっている。
 服の上から尻尾が生えている。
 シノビのように素早くトリックスターのように変幻自在。
 主に幻術を使い、煙幕からの攻撃を得意とする、油断をすると痛い目にあうだろう。
 更に不思議な術を使ってこちらの着ている服を「たぬきのきぐるみ」に変えてきます(プランに書いてもらえば「そのきぐるみ」に変えられると思います)。
 勿論人語を喋れるのだが語尾が「たぬ」、しかし化けている状態では語尾はなくなります。
 戦闘中、咄嗟に精霊に化けられた時の為に神人は合言葉なり精霊しか知らない質問をしたりして変化の術を見破れるようにしておくといいかもしれません。

 ●夏祭り
 残念ながら今回は仕事です、出店などには行けません。

ゲームマスターより

毎度プロローグ閲覧ありがとうございます。

化け狸を適当に退治しちゃってください。
こいつらはそんなに強くないので神人さんも戦闘に参加出来るかも?
神人と精霊問わず恥ずかしい格好にされちゃうので必要なのは覚悟だけですよ。
それと撃退なので懲らしめるだけでも大丈夫だと思います。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

シャルル・アンデルセン(ノグリエ・オルト)

  たぬきさんにも困ったものですねぇ。
でもお店の人がとっても困ってるのでちゃんと叱っておかないと。

たぬきさんを探すときはしっぽと幻術を目安に探せれば。
しっぽが生えてて幻術の気配を感じたら確定ですね。
後は見つけたたぬきさん達に「ご馳走があるので後でここに来てください」って伝えておきます。
あらかじめ決めていた場所にたぬきさんを見かけたらお仕置きです。
といっても逃げないようにノグリエさんのタロットダンスで道を塞いで。たぬきさん達を捕縛。
抵抗するようなら少し荒っぽくなっちゃいますが。
ちゃんと「悪い事をしてる」ってわかって反省してもらえればみんなでご褒美を渡そうかなって。お祭りは楽しんで欲しいですから。


クラリス(ソルティ)
  ちょっと悪戯が過ぎた様ね、狸ちゃんたち。しっかりお灸を据えてあげるわ!

>持ち物
・捕縛用の縄、人数分のインカム

事前に、戦闘しても支障がない場所を依頼人に確認。皆に情報共有、インカムと縄を配布

二人で露店の狸捜索。…焼きそばの薫りって凶器よね(じゅる)
接触はソルティに任せ狸の挙動を観察
皆と合流後に狸の情報を共有するわ

私も捕縛重視で参戦。
着ぐるみ?上等よ。狸になって蹴飛ばしてやるわ!
もし狸がソルティに変化したら、殴ってみたいわ…!

>捕縛後
ごめんなさいは?今すぐ狸鍋にして宴会するわよ(脅迫)
経営困難になったらアンタたち一生ここの美味い屋台料理を食べられないのよ?
アンタたちも祭好きなら皆で楽しみましょ?



ミルヒヴァイス=フォルモンテ(ソレイユ=ヴェルミリオン)
  【事前申請】
・インカム

たぬたぬさんがお祭りに徘徊してるそうですわソレイユ様!
それは是非もふりたい…いえ、騙してお金の代わりに葉っぱを掴ませるなんてとっても悪い子です
一度捕まえて悪い事だって判って貰わないといけませんわね

お祭りに紛れてるたぬたぬさんは尻尾が生えてるとのこと
その人物を見つけたらインカムで皆さんと情報を共有してどこにいるのかを把握しましょう

あとは、代金を支払ってる時の動作等に注意を払って見てみますわ

幻術の初動作を見つける事ができるかもしれませんから

捕まえる場所では網に巻き込まれないように少し離れたところで逃げ漏れがないようにたぬたぬさんを見はりましょう

たぬたぬさん…もふりたいですわ


 ●こちら化け狸対策本部

 お祭り期間中は紅月ノ神社〈あかつきのじんじゃ〉の境内で毎晩行われる夏祭り。
 その夏祭りを賑わせる為の出店を狙った不埒者〈化け狸〉の退治を頼まれた3組のウィンクルム達は本殿の前に集まっていた。

「ふふん、ちょっと悪戯が過ぎた様ね、狸ちゃんたち。あたしがしっかりとお灸を据えてあげるわ!」
「(悪戯狸のお仕置きか。クラリスも珍しくやる気だけど、思う存分悪戯している狸が羨ましいだけだよな絶対……)」
 両手をパキポキと鳴らせながら不敵な笑みを浮かべる『クラリス』をチラリと横目で見た『ソルティ』は溜め息を吐きながら頭を抱えた。
「やる気になってるのは良いけどねクラリス、ほらA.R.O.A.に申請したインカム。ちゃんと付けとかないと連絡出来ないでしょ」
「あ、わ、分かってるわよ。ほら寄越しなさい」
 やっぱり忘れてたな、と心の中で思いつつも口には出さず言われた通りにクラリスにインカムを手渡した。

 そんなクラリスとソルティの隣でぴょこぴょこと『ソレイユ=ヴェルミリオン』の周りを飛び跳ねるように『ミルヒヴァイス=フォルモンテ』は楽しそうに報告する。
「たぬたぬさんがお祭りに徘徊してるそうですわソレイユ様!」
「ふふふ、それを言うなら『お祭を徘徊』だよミルヒ」
 そう言ってソレイユは飛び跳ねるミルヒヴァイスの頭をぽんと撫で、言い間違いを優しく諭す。
「これは是非とももふりたい……いえ、騙してお金の代わりに葉っぱを掴ませるなんてとっても悪い子です。一度捕まえて悪い事だって判って貰わないといけませんわね」
「うん、そうだねミルヒ。たぬきさんが悪い事をしてるというのは事実だからね、悪い事をしてる時は悪い事をしてるという自覚を持って貰わなきゃいけないよね」
 ソレイユは包み込むような優しい笑みをミルヒヴァイスへ向け、エスコートするように手を差し出した。
 そんなソレイユの手にミルヒヴァイスはそっと手を添え。
「それじゃあたぬたぬさんを探しに行きましょう!」

 そして最後の一組の『シャルル・アンデルセン』と『ノグリエ・オルト』は依頼人である夏祭りの運営者達から出店の配置図と化け狸捕縛用の縄と網を受け取っていた。
「どうか、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
 ぺこぺこと何度も頭を下げる運営のお兄さんにつられるようにシャルルもぺこぺこと頭を下げる。
「ほらシャルル、そろそろお兄さんを開放してあげないとこのままでは埒が明きませんよ」
 言葉ではやんわりと諭すノグリエだったが内心は自分ではない男にシャルルが頭を下げているのを見ているのが気が気でなくなったようだ。
 気を取り直すように出店の配置図に目を通し、ノグリエは化け狸達を誘き寄せるポイントを夏祭りの場所から少し離れた本殿の裏に設定した。



 ●祭り囃子に紛れる狸達

 夜の帳が下りる頃、作戦を決めたウィンクルム達は3組に別れ、爛々と輝く提灯の明かりの集まる夏祭りの雑踏の中へと消えていく。

 祭りの喧騒と和太鼓の音、鈴虫の声を背景〈BGM〉に祭りを楽しむ客に紛れる化け狸を探し始める、作戦の第一段階始動だ。
「先ずは狸の特徴ですね。人に化ける事が出来るようなのですが、服の上から狸の尻尾が生えているらしいです。ですので先ずはお祭りの中の見回りをして狸の尻尾が生えている人物を探してください」
 作戦会議の時に言っていたノグリエの言葉をミルヒヴァイスは頭の中で反芻する。
「(たぬたぬさんの尻尾……尻尾……もふもふの……)」
 そしてキョロキョロと祭りの中を闊歩しながら通行人のお尻を見て回る。
「ミルヒ、そんなあからさまに他人のお尻を見て回っちゃダメなんじゃないかな? たぬきさんにも気付かれちゃうかもしれないし、他の方にも迷惑になっちゃうよ」
 ミルヒヴァイスの行動がやや行き過ぎたと判断したソレイユはやんわりと告げる。
「あら、私ったら……。そうですわね」
「さり気なく、それとなく確認していけばいいんだよ」
「はいっ」
 ぱぁっと花が咲くような笑顔でそう返し、ソレイユの手をきゅっと握り直して祭りの雑踏の中を再び進み始めた。

「……焼きそばの香りって凶器よね」
 じゅるりと溢れ出しそうな涎を堪えつつ、クラリスはぽつりと呟いた。
「任務中だぞ。帰ったらご飯作ってやるから我慢しなさい、な?」
「う、煩いわねぇ、言われなくても分かってるわよ」
 ならいいけどね、とソルティは小さく付け加えて焼きそば屋を眺めるクラリスの隣を追い抜くようにしてクラリスが歩くのを促す。
 ソルティから急かされるているのは理解しているがそれでも香ばしい焼きそばの香りが尾を引いているようだ。
「……ぁー分かった分かった。この仕事が終わったら俺が作ってやるから! ほら行くぞっ!」
「あっ、ちょっとソル、そんなに引っ張らないでよ!」
 ぐいっと立ち止まるクラリスの手を引いて前へと進む。

「たぬきさんにも困ったものですねぇ。でもお店の人がとっても困ってるのでちゃんと叱っておかないと」
 ノグリエと一緒に祭りの中を練り歩きながらシャルルはそう言って苦笑する。
「叱るだけ、ですか? 少々甘やかし過ぎではないですか? 狸達がしたのは一応詐欺のようなものですし……まぁ、シャルルがそれでいいなら。全てはシャルルの思うままに」
 ノグリエはニコっとシャルルに笑い掛け、視線を前に戻した所で前方の人混みの中に狸の尻尾を見つける。
「シャルル、狸です」
「ど、何処です!?」
「このままでは見失ってしまいます、こっちです」
 ノグリエの狐のような目が一瞬だけ鋭く光ったかと思うと、のんびり歩いていたシャルルの手を引いて人混みの中へと紛れていく狸の尻尾の生えた男性を追う。
「恐らく間違いないと思いますが、一人……ではなく一匹目です。念の為に尾行して様子を見ましょう」
 こくり、とノグリエの言葉に声を出さないように返事をして、静かに狸の尻尾が生えた男性を追い掛けていく。
 狸側に気取られないように付かず離れずの距離を保ちながら追うとその男性はたこ焼き屋でたこ焼きを購入し始めた。
「たこ焼き2つ下さい」
 そう言ってから自分の胸の辺りで人差し指と中指を立てた後、懐からお金を取り出して店主に手渡した。
「……あれが幻術、でしょうね。シャルルはインカムで皆に報告をお願いします」
 ノグリエはそう確信してシャルルに報告を任せてから、たこ焼きを頬張る男性〈狸〉に近付いていく。
 そして。
「もう少ししたらこの神社の本殿の裏にて豪華な御馳走が振る舞われる宴があるらしいですよ」
 と、一言声を掛けてその場を後にした。

「ミルヒ、あそこに居る二人の男の人達、どうやら尻尾が付いているようだよ」
 ソレイユに言われてミルヒヴァイスが前を見ると、茶色くて丸いもこっとした尻尾が生えている二人組の男性が前を歩いている。
「まぁ! 二人も見つけれるなんて! それにあのもふもふの尻尾! あぁ、堪りませんわっ! 今すぐにでももふりたいですが、ここは我慢ですわ」
「それじゃ作戦通り」
「はいですわソレイユ様」
 ミルヒヴァイスは小声で返事をし、ソレイユに手を引かれながら二人組の男性を追う。
 そしてラムネ屋に寄った男達はお金を払う際に指を2本立ててからお金を支払った。
「今のが幻術みたいですわね」
「これで彼らがたぬきさんなのは間違いないようだね」
 ミルヒヴァイスとソレイユはさり気なく男達に近付き。
「この後に御馳走が振る舞われる催しが本殿の裏であるそうなのでお二方とも来てくださいませ」
 純朴そうな笑顔でミルヒヴァイスは男達にそう言って、ぺこりと一礼してその場を後にした。
 一仕事終え、一息吐いたそのタイミングで同じく狸と接触出来たシャルルがインカムで報告をし始めた。
『こちらシャルルです。先程たぬきさんと思わしき人物を発見しました。まだ一人目なので確信は持てませんが幻術の初動作は“指を2本立てる”みたいです』
「はい、了解致しました。幻術の初動作は“指を2本立てる”ですわね。私達の方でも先程二人の方〈狸〉に声を掛ける時に確認済みですので間違いないかと思いますわ」
 シャルル達が声を掛けた男性の特徴を聞いた後、ミルヒヴァイスもソレイユと一緒に声を掛けた二人組の男性〈狸〉の特徴を報告し終える。
「最低でももう一人、たぬきさんは居るらしいからね。頑張って探そう」
「はいっ」
 再びソレイユから差し出された手を握ってミルヒヴァイスは雑踏の中へと入っていった。

「むー、ミルヒちゃんやシャルルちゃんからの報告は来ているのに……なんであたし達の方はぜんっぜん見つからないのよ!」
「まぁまぁ、こういうのは運も絡んでくるから仕方ないだろ? 大事なのは見逃さない事だよ」
 そろそろ焦れて何か言い出すだろうと予測していたソルティは手慣れた感じでクラリスを丸め込む。
「小腹は空いてくるし全然見つからないしで、あーもうイライラするわねぇ!」
 どちらかと言えば前者が本音だろうな、等とソルティが考えていると、ソルティの視界に丸い狸の尻尾を揺らしながらかき氷屋に並ぶ男の子が入った。
「っ! クラリス」
 と、一言だけ言ってソルティはクラリスの動きを手で制し、男の子の方を見ろと目配せする。
 すぐに察したクラリスは報告通りに男の子〈狸〉が指を2本立てるのかを観察する。
 報告通りにお金を払う前に指を2本立ててお金を払ったのを確認して、ソルティがさーっと手際良く雑踏を抜けて男の子〈狸〉に近付き、誘導場所の事を仄めかした。

 その後も祭りの中をある程度見回ったが既に話し掛けた4人以外に狸らしき人物は見つけられなかった。
 そろそろ狸達に言った時間が近くなって来た為、ノグリエの指示でウィンクルム達は待ち伏せの場所〈本殿の裏〉で合流し、作戦の第二段階へと移行。
 神人達はインスパイア・スペルを唱え始める。

「『さぁ、一つの道を切り開こう』」
 そっとインスパイア・スペルを唱えたミルヒヴァイスは詠唱と同じように静かにソレイユの頬へと口付けをする。
 次の瞬間、ソレイユは紅く温かなオーラを身に纏う。
「力が溢れてくるみたいだ」
「ふふ、頑張って下さいませソレイユ様」

「『絆という鎖を繋ぐ』」
 シャルルは詠唱時に閉じていた目を開き、隣に立つノグリエの頬にキスをする。
 瞬時にノグリエの身体から蒼く輝く炎のようなオーラが立ち上る。
「戦闘になったらシャルルはボクの後ろに、シャルルはボクが守りますから」
「それじゃあノグリエさん頑張って下さいね」
「後は任せて下さい」

「『我が信念を以て…全てを破壊する!!』」
 荒々しく詠唱を終えたクラリスはくるりとソルティの方に向き直り、ゆっくりと顔を近付ける。
「……な、何で顔引き攣ってるの?」
 中々キスの感触が来ないのでソルティがそう言うと。
「う、煩いわね! 黙ってなさい!」
 クラリスは頬を赤らめながら少し勢いを付けてソルティの頬に口を付ける。
 途端、電流を帯びた水柱が二人を覆い、ソルティは無事トランス状態になった。

 シャルルとノグリエを奥に、入口付近にミルヒヴァイスとソレイユ、そして本殿側にクラリスとソルティが隠れた。
 時間通りに4人の狸達はそこに現れた。
「いらっしゃいませ~無料の御馳走ですわよね? こちらですわ~」
 愛想良く笑うミルヒヴァイスが4人に挨拶し、奥の小さな提灯の明かりの下で手を振るシャルルとノグリエの方に狸達を通す。
 用意すらされていない御馳走に思いを馳せたのか狸達が化けた男達はワクワクとした面持ちで奥へと進んでいき……。
「ふっふっふ、残念だったわねぇたぬきちゃん達。君達の悪戯はとっくにバレてるのよ! 大人しくお縄に頂戴されちゃいなさい!」
 そう言いながら隠れていたクラリスとソルティが4人の男〈狸〉達に飛び掛かる。
「ば、バレたたぬっ!?」
 男〈狸〉達は一瞬戸惑いを見せたかと思うとボゥンと足元から煙を上げる。
 勢い良く発生した煙幕にクラリスとソルティも巻き込まれる。
「くっ!? 大丈夫かクラリス!」
「大丈夫、あたしはなんともないわ」
 煙幕はすぐに晴れ、クラリスとソルティも無傷、なのだがその煙幕の隙に狸達はクラリスとソルティに化けたらしく、煙幕の中からはたぬきのきぐるみ姿になった3人のクラリスと3人のソルティが現れた。
「むむっ、きぐるみのせいで尻尾の区別がつきません。これでは術を掛けられませんね……」
 詠唱を終えたノグリエは術を発動させないように踏みとどまる。
「ど、どうしましょうか?」
 困惑するシャルルの声に、クラリスはニッと不敵な笑みを浮かべてこう返す。
「分 か ら な い な ら、こうするのよっ!」
 クラリスは右腕を思いっ切り振り被ったかと思うと近くに居たソルティに殴りかかった。
「ぶべらーたぬぅっ!?」
 すっごいコミカルな表情をしたソルティ〈?〉はクラリスに見事に殴り飛ばされ、目元が黒くなったかと思うとボゥンと煙を上げて狸の姿に戻り、その場で気絶した。
「ぁ痛ったぬぅ!」
 ほぼ同時にソルティも握り締めた拳をクラリス〈?〉に軽く振り下ろして叩いており、頭を押さえて涙目になったクラリスは鼻先が黒くなった後、ボゥンと狸の姿に戻った。
「ぶふーっ『ぶべらー』ってどんな断末魔よソルティ!」
「ぅおい! 今のは俺じゃなかったから良かったけど、今本気で殴ってなかった!?」
「ソルの方こそあたしを打つなんて酷いじゃない! 本物だったらどうするつもりだったのよ!」
「俺の方は軽くだっただろ!」
 狸のきぐるみ姿のままクラリスとソルティは言い合いを始め、残ったクラリス〈?〉とソルティ〈?〉と狸は誰からとは言わず、一目散に逃げようと走り始める。
「逃がしませんよっ」
 入り口を塞ぐようにミルヒヴァイスとソレイユが立ち塞がり、ソレイユがマジックワンド〈ダークアイ〉を狸達に突き出す。
「残念だけどここは通行止めだよっ!」
 目の前にバリアを張って狸達の足止めを行う。
 ブゥンと透明なバリアに阻まれ、逃げ出せなくなった狸達はくるりと反転し、シャルルとノグリエの方へ走り出す。
「そちらから来てくれるとは好都合です……『タロットダンス』」
 慌て、怯え、混乱に陥っていた狸達を自分達と同じ大きさのタロットカードの幻影が取り囲む。
「た、たぬぅ!!?」
 四方をタロットカードに取り囲まれた狸達はその場で立ち止まり。
「それっ!」
 最後はソレイユが投げた網に捕まり、3匹とも捕獲に成功したのだった。



 ●悪戯狸達の結末

「それでこの子達、どうするの?」
 手足を縄で縛られて大人しくなった狸達を見下ろしながらクラリスが聞くと。
「自分達のした事を判らせて反省してもらわないといけないですね」
 と、シャルルが答える。
「そうね。……それじゃあ狸ちゃん達」
 クラリスはツカツカと狸達に近付き、ギロリと上から睨み付けながら。
「ごめんなさいは? 今すぐ狸鍋にして宴会するわよ? このお祭りが経営困難になったらアンタ達も一生ここの美味い屋台料理を食べられないのよ? アンタ達も祭好きなら皆で楽しむ方が得じゃない?」
 最初の方は威圧しつつ、そして最後の方は優しく諭すように狸達を叱りつける。
 たぬきのきぐるみ姿なのが少し間抜けだが、服は元に戻せないらしいので仕方がない。
 身近な例えに危機感を覚えたのか心を動かされたのか判らなかったが、狸達はがっくりと項垂れて。
「ごめんなさいたぬ」
 と謝りの言葉を口にした。
「二度と悪戯はしないって約束出来るね?」
 その後はソルティが依頼人に報告し、飴と鞭という事でリンゴ飴を4つ分けてもらい狸達に配ってあげながら二度と悪戯をしないと約束させた。

「あぁ……もう我慢出来ませんわ!」
 リンゴ飴をペロペロと舐める2足歩行の狸達の姿にとうとう我慢出来なくなったミルヒヴァイスが後ろからがばっと抱き着く。
「たぬぅ!?」
「ぁーもふもふ、もふもふですわ~」
 悦に入った顔で丸い尻尾に頬擦りをして我慢に我慢を重ねた至福の時間を過ごす。
 少し驚いた化け狸達もミルヒヴァイスに害意が無い事を察すると尻尾をそのままに預け、再びペロペロとリンゴ飴を舐め始めた。
「しかし……たぬきさんもそうだけどミルヒヴァイスも可愛いなぁ」
 そんな微笑ましい図をソレイユは暫く眺めていた。

「これにて一件落着ですね」
「そうですね。依頼人に報告も済みましたし、ボク達は帰りましょうか」
 シャルルに相槌を打ったノグリエはにこやかに帰路につこうとする。
 しかし。
「あの、ですね……ノグリエさん、折角なのでお祭り、少し見て行きませんか?」
 少しそわそわしながらシャルルがそう提案する。
 シャルルもまた仕事ではなく、客としてお祭りを満喫したかったらしい。
 そんなシャルルにノグリエは。
「えぇ、シャルルが望むなら」
 と、笑い掛けてシャルルの手を引いて夏祭りの雑踏の中へと消えた。



依頼結果:成功
MVP
名前:クラリス
呼び名:クラリス
  名前:ソルティ
呼び名:ソル・ソルティ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター うち
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 日常
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 08月10日
出発日 08月19日 00:00
予定納品日 08月29日

参加者

会議室

  • あわわ;遅くなってしまってすみません;

    クラリスさんまとめありがとうございますわ♪
    では、私はインカムの方申請してみますわ。
    文字数、大事。

  • クラリスさん纏めて頂いてありがとうございます(ぺこり)
    そのような感じで計画をたてます!

    露店の配置図の方はこちらでお願いしてみますね。

  • [13]クラリス

    2014/08/17-14:36 

    ザッと纏めみたわ。違う認識だったーとかこうした方がーとかあれば言ってね。

    >流れ
    ・到着後、それぞれ露店で狸の捜索。発見後インカムで報告。
    ・お祭りの関係者を装って狸に接触し、「豪華な御馳走が振る舞われる宴があるのでぜひ参加してほしい」と伝える。
    ・タイムリミットまで張り込み、時間になったら合流して全員で指定した場所へ移動。
    ・狸が集まった事を確認後、戦闘開始。
    →タロットダンスで逃走経路を遮断後、狸を縄で捕縛。暴れるようなら手加減しながら攻撃し無力化する。
    ・全ての狸を捕縛後、事情聴取し改心させるよう努める。
    ・もう悪戯しないと約束させたら依頼人に報告。ご褒美の食べ物を持ってきてもらう。

    >道具
    ・インカム(A.R.O.Aに申請)
    ・縄(依頼人に準備をお願いする)
    ・露店の配置図もあったら便利かも。

    あたしはこんな認識だけど合ってるかしら?
    化け狸の判断は、シャルルちゃんの言う通り尻尾と幻術を使う行動をしたら確定でいいと思うわ。
    あとは…肝心の狸を呼び出す場所かしら。
    戦闘になっても支障が出ない良い場所がないか事前に依頼人に聞いて、
    ついでに縄の申請もしておくようあたしのプランに書いておくわね。文字数大事!

  • ではたぬきさん達を集めた時はノグリエさんのタロットダンスの幻影を使って道を塞いで。
    驚いてる隙に縄で捕縛。ですね。縄はお借りできると思います!

    葉っぱの幻術がわかりやすいものならそれを目安にして探せばいいかなって思うんですが。
    お店の人が気付かないくらいだから難しいのかも…?
    あ、でも尻尾がたぬきさんな人達がいて幻術を使ってる気配を感じたら確定。かな?

  • ふむふむ、初動作がある可能性ですわね。
    網は…お祭りの方に貰えないか聞いてみましょう。

    なるほど!
    タロットダンスは良い案ですわね♪

    初動作は…タロットダンスをしかけた時にたぬたぬさんが幻術を使わないかな?っていう淡い期待はありますが…。

    あ、でも葉っぱに変えるのは幻術なんですわよね?
    ということは、お店でお金を払う時に幻術を使うのかもしれませんわね!

    もしそうであるなら、さりげなく張り込んでみたいですわ♪

  • [10]クラリス

    2014/08/16-19:41 

    成る程。幻術には幻術を…って事ね!
    狸が集まったらノグリエさんのタロットダンスで道を塞いで一気に袋叩きにしてあげましょ。
    確かにどんな幻術を使うかは情報がないわね…これは警戒するしかないのかも。
    前情報として分かっているのは着ぐるみの術と変幻術、あとは煙幕を使って来るという事くらいかしら。

    着ぐるみは…そうね、体を張るとして…変幻術に関してはパートナーに化ける可能性が
    あるらしいから各自パートナーと対策を練っておきましょうか。
    あとは煙幕攻撃が一番厄介よねぇ。(頭を掻き)
    きっと術を仕掛ける時に初動があるはず…それさえわかればプレストガンナーの早撃ちで術発動前に止められるかもしれないんだけど…

    >捕縛
    あと、狸が4匹だけなら精霊さん方だけでいけそうだけど、
    もし予想以上に数が多かった場合に備えて捕縛用の縄もあった方が良いかしらね。
    狸が怯んでいる時ならあたし達でも縄で縛るくらいは出来そう。

  • こちらこそよろしくお願いします(ぺこぺこ

    食いしん坊なたぬきさん達ならご馳走があるっていったら来てくれそうですね…!
    悪い事をしてるのでちゃんと反省してもらわないとですよね…。
    私もきぐるみ姿になってもがんばっちゃいますよ!
    ふふ、終わったあとはちゃんとご褒美あげたいですね。
    やっぱりお祭りは楽しんでもらわないといけないですから。

    たぬきさん達の幻術はどうなんでしょうね…
    トリックスターさんのタロットダンスは幻術で目の前に等身大のタロットで囲まれたように見えるというのがありますね…。
    この技が幻術が得意なたぬきさん達に通じるなら道を塞ぐのに使えるかなって思うのですが…。

  • シャルル様初めまして~♪
    人数が増えて下さって嬉しいですわ!
    宜しくお願いします♪

    無料で豪華な御馳走!
    確かに無料で食べ物にありつく為に葉っぱを使ってるくらいですもの。
    くいついて下さいそうなネタですわね!

    怒らせちゃうかもしれませんが、これもたぬたぬさんの為ですものね!
    ええ、それはもうたぬきさんきぐるみを着る事になってもたぬたぬさんの陰謀を阻止させて頂きますわ!

    もし集まったら入口さえ押えていれば逃げられない気がしますし…。
    この時一番気をつけなきゃいけないのは幻術になりそうですわね。

    見た目だけにしか幻術が使えない。ならいいのですが…。
    どういった幻術をたぬたぬさんは使うのでしょうかね…。

  • [7]クラリス

    2014/08/15-17:22 

    はじめまして、シャルルちゃんとノグリエさん。
    仲間が増えてくれて嬉しいわね!宜しく。

    捜索中に狸を見つけたらさり気なく接触して「今夜、皆に豪華な御馳走を無料で振る舞う
    宴があるから来てね~」なんてデマを吹き込んでみるのはどうかしら。
    人を騙してまで出店の食べ物を欲しがるんだもの、うまい話には案外簡単に飛び付くかも?
    場所と時間さえ指定しておけば狸たちを一か所に集められて一網打尽に出来る可能性は
    あるんじゃないかしら。

    …そして何より、あたしたちが祭りの出店にも行けず働いている間、
    平気で食い逃げした上に更に良い思いをしようとする化け狸ちゃんたちの
    悔しそうな顔が見れるわ!(グッと拳を握りしめ)

    まぁちょっと怒らせちゃうかもしれないけど、懲らしめた後に何か露店の食べ物を
    少し分けてあげたら御機嫌も取れるんじゃないかしら。
    「穏便に出来るなら騙されて葉っぱを掴まされても良い」って露店のお兄さんも
    言ってくれてる事だし、そこは甘えて協力をお願いしてもいいと思うの。

    飴と鞭って悪ガキ相手には効果的だと思うわ(満面の笑み)

    あ、でもあたし思いついたままに言ってるから他に案があればガシガシ言って頂戴ね?

  • こんにちは、シャルル・アンデルセンです。
    パートナーはディアボロのノグリエさんです。
    よろしくお願いしますね(ぺこり)

    狸さんにも困ったものですねぇ(苦笑い)
    でも悪い事をしてるのは確かなのでちゃんと懲らしめないと、ですね。

    狸さんを一網打尽…彼らを集めるにはなにか彼らの気を引くものが必要でしょうか?

  • >罠
    たぬたぬさんも普通にお祭りの雰囲気を楽しみたいだけなら
    多分普通に接してくるはず…ですものね!

    ふむふむ、インカムを使って情報共有。
    見つけ次第張り込んで挟み打ち…でしょうか。

    この場合、1匹だけ捕まえて他3匹をおびき出すか…。
    もしくは一網打尽にするかが問題でしょうか?

    おびき出すのはちょっとリスキーな賭けになりそうですわよね(頬に手を当て
    かといって4匹が常に一緒に居るとは限らないですものね。

    となると、4匹をできれば一か所に集める策を考える必要があるのかも?

    勿論、他案大募集ですわ~♪(にこり

  • [4]クラリス

    2014/08/14-13:04 

    ミルヒちゃん、初めまして!よろしくね。
    そうね、ミルヒちゃんの言う通り罠を仕掛ける案に賛成。
    んー…素早さと煙幕、そして幻術が厄介よね。

    >罠
    一般客に化けているって事はバレたと気づくまでは
    あたしたちにも普通の人間を装って接してくるのかしら?
    だとしたらバレない限り暴れたりしないって事よね。
    だったら逆に狸を騙す罠、なんてどうかしら。
    人間に化けても尻尾で発見が容易なら、あえて化かされて
    騙されているフリをするのも手だと思うわ。

    インカムで情報共有しながら露店を見張って、化け狸を見つけたら
    騙されたフリをしたまま上手く露店から離れたところに誘導出来ればいいのだけれど。
    狸が素早いなら個々で追い掛け回して捕縛するよりは
    露店から離れた場所に追い込んで挟み打ちする方が確実且つ被害は少ないと思うの。
    縁日の露店の中で暴れられて一般客へ被害が出る事が一番最悪のバッドエンドじゃない?

    ソルティ:
    もし誘導が出来ればライフビショップのソレイユさんにバリアを展開して頂いて、
    バリア内に狸を閉じ込めれば一時的に逃走を防ぐ事も可能かもしれない。
    俺も狸が逃げようとしたら威嚇射撃をして足止め出来るしね。
    多勢の方が狸の戦う気も削げるんじゃないかな。

  • 初めましてこんにちわ~♪
    ミルヒヴァイスと申します~!
    私の事は、どうかミルヒとお呼び下さいな♪
    宜しくお願いします♪
    パートナーはファータでライフビショップのソレイユ様ですわ!
    とはいっても、今回あまりお役に立てるスキルがあるかと言われますと…(困

    クラリス様の言う通りだと思いますわ!
    悪い子にはきちんと悪い事だと教えてあげませんと
    大きくなってもその事を「悪い事」と認識して下さらなくなりますものね!
    お金だって、1jr稼ぐのもとても大変なのに騙して使っちゃいけませんもの!

    ただ、たぬたぬさんはシノビの様に素早いとの事ですし…。
    正攻法で攻めるだけでは捕まえられないのかな?って実はちょっぴり不安でした。

    何か罠を仕掛けて捕まえるか…。
    どちらにしろ、素早い行動をさせる前になんとかできる方法を考えないといけないのかなぁって思ってましたの。

    何はともあれ、もうちょっと人数が集まって下さると助かりますわよね。
    人、来て下さらないでしょうかねぇ(頬に手をあて

  • [1]クラリス

    2014/08/13-09:04 

    こんにちは、あたしはクラリスよ。精霊はポブルスのソルティ。よろしくね。

    化け狸の撃退ねぇ…何か理由があっての事ならまだしも、ただの悪戯心での仕業なら
    しっかりお灸を据えてやりたいわね。

    今回は一般客に危害を加えていないし、狸を退治して他の仲間の狸が逆上しないとも
    限らないからあくまでも「化け狸たちを懲らしめて普通にお祭りを楽しんでもらう事」が
    ベストなのかしら。

    ターゲットもそんなに強くないようだしあたしも力になれると思う。
    …と、言ってもまだあたしたちだけなのね。他の仲間が来るまで待ってるわ。



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