川辺の長い午後(椎田 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 じわじわとセミの鳴く声とせせらぎの音が聞こえる山中、水面のぴかぴかした反射をカワセミの青い体が掬い取って飛んで行きます。そのほっそりと長いくちばしには小さな川魚。清流に負けず劣らず美しく光るふくよかな腹をうねらせ抵抗しますが、カワセミは気にすること無く白い斑の目立つ乾いた岩に降り立ちました。
くるんとその獲物を飲み込もうとした刹那。

 ぽちゃん、と水が跳ねました。
驚いたカワセミは勢い良く飛び立った拍子にごちそうを取り落とし、しかしそれどころではないと言わんばかりの勢いでそのまま青々とした木立の中へ逃げ込みます。
解放された小魚はと言うと重力が引き合せるまま、水流の間隙に音もなく入り込んでいました。彼もまた、食事時だったのでしょう。水中に戻ることが出来た事を喜ぶかのよう数度その場で回ると、素早く岩陰へ。折よく、目の前には受難の対価とでも言わんばかりに餌が流れてきます。絶えず変化する水の流れで不安定な、しかしそこに生きる者にとっては何でもない浮遊感。先程のカワセミを思わせる滑らかさでふらつく餌に迫り、そして違わず口にし飲み込みます。途端、グッと近くなる水面の天井。そして――。


「あっ! 見て見て、魚釣れたよー!」

「おお、旨そうだなー!」

 タブロス周辺でも有数の大きな湖に注ぎ込む川のうちの一本、その源流に程近い山の中。首都タブロスから車で一時間半程の所に、そのキャンプ場は有りました。

 夏休みだからでしょう、平日にも関わらず人の姿がそこかしこに散見されます。木陰の滑らかな岩に座り足先を水に遊ばせる女性もいれば、川岸にそってゆっくり歩く老翁も見られます。つい今しがたまで二人して釣りに勤しんでいた父子は、早速中洲に設えられたバーベキューセットで採りたての魚を焼くようです。

「へへ、初めて釣った!」

「そうか……よくやったな」

 身が詰まっているとは言え、子どもにとっても小さな魚はバケツの中でおろおろと泳ぎ回ります。彼らはそれを見て活きが良いなぁ等と談笑しながら、ついでに野菜や肉も焼いてもらおうと保冷かばんに向かうのでした。

 この小さなキャンプ場には、特に何か有名なものが有ると言うわけではありません。なので連日連夜大盛況等ということは無く、時折少しばかりの賑やかさを感じる程度なのです。しかし首都からの適度なアクセスしやすさや過不足のない施設の充実具合、そして何より綺麗な水に棲む川魚の美味しさで客足が遠のききってしまう事はありません。

 夏真っ盛り。
あなたも涼みに来てはみませんか?

解説

参加費用(交通費、食費込み)
お一人様250Jr(お二人で500Jr)
食事の内容は、肉や魚貝類が少しと野菜のバーベキューセットにおにぎりと飲み物。また、釣具がレンタルされており、それを使って釣った魚を焼いて食べることも出来ます。

釣具貸出(竿二本、餌、代えの釣り針二つ、バケツ一つ)
150Jr
釣ったお魚にはお金がかかりませんが、必ずしも釣れるとは限りません。
また、衛生的な観点からお持ち帰りは禁止されています。食べ切れない程釣れた場合は、勿体無いかも知れませんが川に返してやって下さるようお願い致します。

広い中洲にはバーベキューセット。その近くに簡易のテントが有り、そこにはベンチやテーブル、保冷かばんが置いてあります。表面が滑らかになった岩場は木陰になっており、釣りを楽しむにも向いています。
また、中洲から対岸へ渡る橋の先にはキャンプ場直営のお店が有ります。キャンプ場使用料の支払いや釣具の貸出は此処で済ませておきます。バーベキューは基本的にそこのスタッフがやってくれますが、希望すれば全て(或いは一部)自分たちで作業することも出来ます。

ゲームマスターより

初めましての方は初めまして、そうでない方はごきげんよう。椎田です。

夏といえば川辺でバーベキューですよね。海? わたしは泳げないので海は見るだけがいいです。
今回は、本当に何でもないようなちょっとしたお出かけを楽しんで頂けるエピソード……のつもりです。バーベキューに舌鼓を打つもよし、釣りに勤しむも良し、清流で良し、です。あ、くれぐれも他のお客様に御迷惑はかけないよう、宜しくお願い致しますね。

それでは皆様のご参加、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

シルヴァ・アルネヴ(マギウス・マグス)

  目的
この夏最後の川遊びを楽しむ。

キャンプ場についてすぐテントを立て
少しバーベキューの下ごしらえをしてから、川遊びにGO!

きらきらの水滴と一緒にマギがきらめいて見えて満足。

遊んでいた子供たちと一緒になって、川岸を掘って小さな水たまりを作り
川をざぶざぶ歩いてそこに川魚を追い込むという遊びや

岩陰に木の枝が垂れたあたりを網で探って川エビを捕まえたり
きれいな水がある場所にしか生息しない、めずらしいトンボを追いかけたりと

川遊びではしゃぎ過ぎたのか、テントの中で少し休憩。


うつらうつら、青い鳥の羽と水面の煌き

「なんか、変な夢見た気がする……」

ぼーっと呟くものの、マギの誘いに少しおぼつかない足元で急いで歩き出す


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  よし、バーベキューだ。肉食べよう!
と喜んで肉や野菜をたっぷり焼いて食べる。
オレはまだ食べざかりだから!
シュラスコとかいいじゃん。ここは牛肉で!
タンドリーチキンも美味い。
下準備はスタッフの準備してくれた物を使用。
焼くのはぜひとも自分達で!
好みの焼き加減で食べたいからな。
肉の種類によって焼き加減違うし。
食べるペースを一定にするため肉をどのタイミングで乗せるのかは重要なんだ!
むむっ。イカや帆立もウマそうだ。大ぶりの海老も。海鮮も焼こう。
イカとアスパラをホイル焼きにして「野菜だ!」と言い張る。ピーマン肉詰めとか。
おにぎりも醤油を軽く塗って焼き、香ばしくする。
食べるのに夢中で魚釣りの事は忘れていたぜ。



鹿鳴館・リュウ・凛玖義(琥珀・アンブラー)
  バーベキュー、美味しそうだよねぇ
普段は木の実や食べられる野草ばっか食べてるし、
今日は楽しむよ!ねっ?琥珀ちゃん
ついでにスタッフさん呼んで焼いてもらおうかな

さーて野菜とお肉、もっと食べたいけど今回は我慢しようか
なんてたって本日のメインは魚を釣って食べることだからね!
僕、釣りは下手の横好きなだけに今日は張り切って釣るよ!
(フィッシングスキル使用)

しっかし、もしかしたら知らない魚まで釣れちゃうかもなぁ
(海鮮知識スキル使用)

まぁ自分達が食べられる分だけ釣りあげられればいいんだけど
もし大量に釣れちゃったら、お魚を逃がす前に
他のウィンクルムやお客さんにも声をかけて、その場で食べられるかどうか聞いてみようか



ウィーテス=アカーテース(パラサ=パック)
  パラサと一緒にキャンプ場へ行きます
わあ……見て見てパラサ
本当に水が綺麗だねぇ
覗きこんで自分達の顔が川に映るのを眺めます

あ、釣りも出来るんだね
パラサも釣りをした事あるだね
僕も弟や妹達と一緒に良く川に遊びに行ったんだよ

せっかくなので釣具を借りて釣りをしよう
食べる分だけ1匹ずつ釣れると良いな
支払いを済ませたら荷物をテントに置いて川へ

川に糸を垂らしてのんびりまとう
時々川に足をいれて涼んでみたり
こういう静かな時間は落ち着くなぁ

お腹が空いたらバーベキュー
せっかくだから自分達で焼こうかな
パラサ、どれが食べたい?と焼く側に回ります

食べた後は涼しい場所に寝転がってのんびりしよう
うーん、何だかうとうとしてきたなぁ


シルヴィオ(ジークベルト)
  釣りに挑戦してみよう
ほとんど経験はないが、運動よりは向いていそうだ

ジークは釣りをしたことがあるのか?初耳だな
契約してから随分経つが知らないことばかりだ
なら今日は教わるとしようか
バーベキューのメニューが豪華になるようにしっかり頼むぞ?

それにしても静かだな
魚が掛かる気配もない
なあ、何か話をしないか?
静かにしろって?
全く。釣れないな、いろんな意味で

バーベキューは任せてくれ
料理は嫌いじゃないからな
差して焼くだけ?甘いぞジーク
こいつは意外と奥深い料理だ
それはまだ生…好みを尊重するのも大事…か?

それはさっき俺が釣った魚だな。目の形でわかる
いいよ、それはお前が食ってくれ
お前が釣った分…責任をもって食うさ


●食べる前に遊ぶ
 穴場のキャンプ場。そう呼ぶほどではないのだが、好アクセスのわりに人は少なく、施設も川を十分楽しむだけのものが用意されていた。戦いに疲れたウィンクルム達がのんびりとレジャーを楽しむにはうってつけの場所だった。
 さて、川でのレジャーの昼食といえば、バーベキューである。
「……つきましたね。あとは」
 精霊マギウス・マグスはバーベキューの下準備をすませ、神人であるシルヴァ・アルネヴにうなずく。
「もう扇がなくてもいいのか?」
「ええ。もう十分燃えているので、あとは火が落ち着くのを待てばいいのです」
 火起こしでやりがちな失敗だが、炭が燃え始めてからすぐに焼いてしまうと火力が高すぎてしまい焦げやすくなってしまう。炭が十分に燃えてから落ち着くまで時間を空けたほうがバーベキューはやりやすくなる(炭の種類や焼くものにもよるが)。
「よっしゃ! じゃあ、川へ行こう!」
 うちわを置いて川向かうシルヴァ。マギウスはうちわが飛んでいかないように上に石を置いた。
 川にいったシルヴァはそこで遊んでいた子供達に混ざり、遊び始めた。マギウスはその様子を眺めながらさて水をかけられるだろうからよけやすい足場の場所にでも行きましょうかなどと考えていた。
 そうしていると、他のウィンクルムも川を見に来ていることに気づいた。
「わあ……見て見てパラサ。本当に水が綺麗だねぇ」
「なんだ、となりの? あ、本当だね。ここの川の水はとても綺麗だねぇ」
 ウィーテス=アカーテースが精霊のパラサ=パックと川を覗いていた。
「あ、ほらほら魚だよ」
「え? あ、本当だ、魚ぎゃー」
 ウィーテスのさした指の先には手で捕まえられそうなほどに水の中で止まっている魚が見えた。パラサは魚を見た後、屈んで魚を見続けるウィーテスの背中に注目した。
 押したい。
 パラサは着替えがないことを知っていたため、眺めるだけで我慢をした。
「となりの。せっかくだから、釣りでもしようか」
「そうだねとなりの。じゃ、借りてくるぎゃー」
 二人は釣具を借りに川を離れた。
 一足先に、釣りを楽しんでいる(?)ウィンクルムもいた。
「釣りの経験があるなんて、知らなかった。ご教授願いたいものだ」
 シルヴィオが隣でてきぱきと餌をつける精霊 ジークベルトを見て言った。シルヴィオはまだ餌を付けれていない。餌は人口のイクラを針にさして使うのだが、慣れないと餌を潰してしまう。
「子供の頃にやっていたんだ。教えられるほど得意というわけではないぞ」
 言いつつ、ジークベルトはシルヴィオに餌の付け方を教えてあげていた。シルヴィオはようやく糸を川に落とす。
「教えれてるじゃないか。バーベキューのメニューが豪華になるようにしっかりと頼むぞ」
「それは重要な役割だ」
「初めてでも釣れるものか?」
「安心しろ。お前が連れなくてもその分俺が釣るさ」
 糸を垂らす二人。遠くには網を持って走るシルヴァと虫かごを持ってついていくマギウスの姿が見えた。ウィーテスとパラサも釣竿を持って川に戻ってきていた。

●食べてから遊ぶ
 油断。精霊であるラキア・ジェイドバインはそう思った。バーベキューの最中の油断は焼いているものを焦がす要因となりえる。バーベキューとは楽しく食事を取りながらも決して気の抜けないものであるといえるだろう。
 しかし、ラキアが油断したのは肉や野菜を焼く事についてではない。彼は見事に野菜類を焼き上げている。
 油断したのは、彼の神人セイリュー・グラシアについてである。
「やっぱ肉はうめぇな!」
「……野菜は?」
 セイリューの皿が茶色で埋め尽くされていることについてであった。
「そのシュラスコがもう少しで焼きあがるよなぁ……ちょっと時間の掛かる肉を焼いて調整するか」
「いやセイリュー、肉ばっかりはよくないよ。だから野菜――」
「おおそうだな! 魚介に手を付けてなかった。ホタテをじっくりと――あぁ!」
 ラキアは焼きあがった野菜を手早くセイリューの皿に載せていく。
「わかったわかった。野菜も食うよ。ほら」
 そういってセイリューはピーマンに肉をつめ始める。
「いや、それは俺的に肉だから!」
「いいんだよ、食べ盛りなんだから」
「まったく……君はいつまで食べ盛りなのさ」
 彼らのように自ら調理するのを楽しむこともあれば、目の前で調理してもらう事と食べることを楽しむペアもいた。
 スタッフが焼きあがった串を鹿鳴館・リュウ・凛玖義に渡す。鹿鳴館の精霊である琥珀・アンブラーはスタッフや鹿鳴館よりも身長が低いため、その様子をわくわくしながらみていた。
「ほぅら琥珀ちゃん、お兄さんたちが焼いてくれたよ」
「わーい!」
 琥珀は鹿鳴館から串を受け取る。刺さっている具は鶏肉とたまねぎ、とうきびだった。ピーマンは鹿鳴館から「抜いてくれ」といわれ、何本かピーマン抜きのものが準備されていた。食べれる食べれないは別に、苦いと感じるものは抜くことにしたようであった。
「おいしいねぇ、りくっ!」
「そうだねぇ。さて、迷うなぁ。次はどれを焼いてもらおうかな」
 二人は焼く事自体はスタッフにしてもらうことにした。しかし、普段は洞窟暮らしで木の実や野草ばかり食べている為こうも色々用意されるとなかなか食べたいものが決まらないらしい。
 二人はトレーに並べられた肉や野菜、魚介類をじっくりと見る。
「お肉、美味しそ……あ、でもお野菜も……あ、でもでもやっぱりお魚が。ふえぇ~、はく、迷っちゃうよぅ~!」
「琥珀ちゃん、全部食べてもいいんだよぉ」
「ぜんぶ食べられるの? やったぁ~!食べる食べるぅ~!」
 二人は全部の種類を食べることにした。
「あとで魚も釣って食べるから、色々楽しめるように小さめのものをお願いしてもいいかな?」
 鹿鳴館は琥珀と魚を釣って食べることも楽しみにしているため、食べ過ぎないようにスタッフに注文した。
「いっぱい食べたら、お魚釣りに行こうねぇ」
「うん、りくっ!」
 二人はゆっくりと食事を楽しんでいた。

●川
 ウィーテスとパラサは、川に糸を垂らしてのんびりとした時間をすごしていた。川辺というのはけっして静かな場所ではない。激しく主張する虫たちの音や風に揺られる木々のざわめきなど音に溢れている。しかし、平和な空間がどんなに静かな場所よりもゆったりとした時間を感じさせてくれる。
「こういう静かな時間は落ち着くなぁ」
 ウィーテスは思わずつぶやいた。幸せな時間は誰かと共感したくなる。だから思わず漏れてしまったのかもしれない。
「弟妹とも釣りをしてただね」
「そうだねぇ。よく行ってたよ」
「オイラは兄弟いないけど、弟みたいな奴と釣りしてるぎゃー」
「お兄さんが増えると、弟と妹も喜ぶねぇ」
 竿をあげるウィーテス。本日二匹目の釣果だった。
「おぉー。よし、オイラも大きいのを釣ってやるんだぎゃー」
 下流のほうからは笑い声が聞こえていた。
「ひゃぁ~つめてぇ~マギ!」
「川の水というのは溜まっている水とちがって流れ続けているので水温は低いんですよ」
 シルヴァとマギウスは川に足を入れて魚を追いかけていた。
「しっかし綺麗だなぁ。太陽の光で水がきらきらしてて。マギまできらめいてて、綺麗だ」
「正直なあなたにほめられると、悪い気はしませんね」
「俺は美味いもんは美味い、綺麗なもんは綺麗だって言うのさ」
 マギウスの表情に変化はないが、どう感じたかは彼だけにしかわからなかった。
「マギー、ちょっと疲れた。昼寝してもいい?」
「いいですよ。食事の準備ができたら起こしますから」
 さらに下流にいくと、シルヴィオとジークベルトが糸を垂らしていた。
「……それにしても静かだな。魚が掛かる気配もない」
「静かなのは当然だ。騒いでいると魚が寄ってこない」
 シルヴィオはあまり釣れないままジークベルトの隣にいた。ジークベルトはというと、大量というわけではないが釣れていないわけではなかった。
「なあ、何か話をしないか?」
「お前は仕事の時以外は本当におしゃべりだな」
「全く……つれないな。いろんな意味で」
 ジークベルトはシルヴィオの言葉を聞いて小さく笑った。竿を上げる。
「それが悪いとは……言ってないさ」
 竿には魚が一匹、釣れていた。
 二人は静かに語らいながら、釣りを楽しんだ。
 みんなよりも上流の方には、鹿鳴館と琥珀が釣りをしていた。まだ釣り始めて間もないが、すでにバケツには何匹かの魚が泳いでいる。
「りくぅ、見てみてー! はくも釣れたー!」
「おお、すごいぞ琥珀ちゃん!」
 琥珀は魚をバケツに入れる。数は多いものの、多くは小さな魚だった。鹿鳴館は琥珀に釣りを楽しんでもらうために、リリース前提のなんでもよいから釣れる仕掛けの竿を渡していた。食に適さない魚も、小さすぎて逃がしてしまう魚もとりあえずバケツに入れている。鹿鳴館の仕掛けは大物狙いのものであった。
 琥珀も食べないことはわかっていても、とりあえず釣りを楽しんでいた。
「しかし琥珀ちゃんは大量だなぁ。もしかしたらこのまま知らない魚まで釣れちゃうかもなぁ」
「り、りくぅ!」
「どうした琥珀ちゃん」
「わからないお魚も釣れちゃった……どうしよ」
「…………」
 琥珀の竿に、見かけない魚(?)が引っかかっていた。
 この世界は複数の世界が混在しているため、すべての種を把握するのはとても難しい。しかし、これはなんだろう?
「あっ」
 鹿鳴館も同じものが釣れてしまった。さてどうしよう。
「……ねぇ、一匹食べてみよ? はく、おさかな捌いてみるから」
「そ、そうだね」
 二人は、その魚の正体が地元の人間だけが知る珍しい魚だとは、気づかなかった。

●一日の終わり
 青い鳥の羽と水面の煌き。それは一瞬で、どんな鳥かも彼にはわからなかった。今はただ、青い鳥の羽が煌く水面で、ゆらゆらと――
「シルヴァ、バーベキューの準備できましたよ」
「…………マギ?」
 シルヴァは自分が昼寝をしていたことを思い出した。じゃああれは、ただの夢か。シルヴァは起こしかけた身体を再び倒した。
「うー……あと5分」
「肉や魚が、炭になってもいいのなら」
「それはやばい」
 シルヴァはすばやく身体を起こした。
「うー。変な夢を見た。こう、青い鳥の羽が水面に浮かんでゆらゆらきらきらと綺麗な夢」
 マギウスは寝癖をつけてそう語るシルヴァを見て小さく笑った。
「それは、枕もなしで寝てたからじゃないですか? 早く行かないと、炭に火を起こすの最初からしなくちゃいけなくなりますよ」
「マジか。オレ、あれ苦手なんだよなー」
 シルヴァは立ち上がり、身体を鳴らした。もううちわを振るのは勘弁だった。
 夕暮れも近づき、みな夕食をとり始めていた。
「パラサ、どれが食べたい?」
「となりのが焼いてくれるのかい?」
 ウィーテスとパラサも、既に火を起こし終えて何を焼こうかと話していた。焼き台の傍には釣った魚が入れられているバケツも置いてある。
「んーこれとこれとこれ、串に刺したらおいしそうぎゃー」
「わかったよ」
 パラサの指差した食材を串にさしていくウィーテス。焼ける時間に差が出るものだったが、焼けやすいものと焼けづらいものを端と端にさして時間を調整することにした。焼けてから刺しても良かったのだが、せっかくのバーベキューなのでバーベキューらしく焼きたい(食べさせたい)という気持ちもあった。
「それじゃあ代わりに、となりのの魚はオイラが焼いてあげるよ」
 パラサは魚を取り出し、内臓を取り出し始めた。パラサはパラサで、バーベキューらしい魚の焼き方を考えていた。
「炭、ちょっともらうぎゃー」
「塩焼きかな? 豪快だね」
「網で焼くよりこっちのほうが食べやすくなるんだよ」
 二人はお互いに、相方の分の調理をして食べあった。
 シルヴィオとジークベルトも、釣った魚を焼いていた。魚は時間がかかるため、その間にバーベキューを楽しんでいた。
「ジーク、バーベキューは任せてくれ。料理は嫌いじゃないからな」
 シルヴィオは食材ののったトレーに笑顔で向かった。
「料理らしい料理はしないが。差して焼くだけなら俺でもできるぞ」
「差して焼くだけ? 甘いぞジーク。こいつは意外と奥深い料理だ」
 見ていろと言われ、言われたままにシルヴィオを見守る。観察しているとなるほど、頻繁に返す串もあれば、なかなか返さない串もある。かと思えば焼く場所を変える串もある。焼き台の炭を見ると、炭の多いところと少ないところがあった。火力を調節しているのだろう。
「なるほど、勉強になる」
「そうだろう……ん? それはまだ生だぞ」
「俺は生に近いくらいの焼き加減の方が好ましいんだが、駄目か?」
「好みを尊重するのも大事……だが。体調を崩さないか?」
「大丈夫だろう」
「そうか。ともかく、好みは覚えた。今日はジークのことを良く知る日だな」
「お互いにな」
 やがて、魚も焼きあがる。ジークベルトが魚を口に運んだところで、シルヴィオが気づいた。
「それはさっき俺が釣った魚だな。目の形でわかる」
 ジークベルトはかじった魚の目を見て、シルヴィオに見せる。シルヴィオはやはりなとうなずいた。
「魚の目の形をわざわざ覚えていたのか? 呆れた奴だ。よほど嬉しかったのか」
「まあな」
「良ければこれはお前が食うか? 記念、というのではないが」
「いいよ、それはお前が食ってくれ」
 ジークベルトは微笑み、焼きあがった別の魚を差し出した。
「そうか。じゃあ遠慮無くいただこう。では俺が釣ったのをお前が食え。お前の分の倍はあるがな」
 シルヴィオはバケツを見た。笑顔で大げさに魚を受け取る。
「あぁ。お前が釣った分……責任をもって食うさ」
 二人は日が沈むかだ、時間をかけてバーベキューを楽しんだ。
 セイリューとラキアは、結局一日中焼き台の前にいた。ずっと食べていたというわけではない。お互い話すいい機会だった。火自体は炭を足しながらだったので弱まることはない。
「あそこの花も、育てるのはなかなかの苦労なんだよ。自然に咲いている分にはあんなに咲き誇ってくれるのにねぇ」
「そうなのか」
 ラキアはガーデニングで花を育てているので、目に付く花についてセイリューに説明していた。自身の得意なこと、好きなことを話すのは苦ではない。
「本当、花が好きなんだな」
「世話をするほど応じてくれて、美しい花を咲かせてくれるのがいいよね」
「肉を焼くのと似ているな。世話(ひっくり返したり味付けしたり)をするほど応じてくれる(美味くなる)」
 ラキアはずっこけそうになった。
「まあ、料理はそうかもだけれどね」
 料理の話になったからか、周りが食事をとりはじめているからか、二人はバーベキューを再開した。
「トウモロコシやシイタケもそのまま焼いて。キャベツとしめじをサツマイモと一緒にホイル焼きする。美味しいよね。」
「ホイルの端っこ貸してくれ。イカは網で焼くとスルメみたいになっちまう」
「いいよ」
「おにぎりも焼ききっちまうか。しかしこう、焼きおにぎりのしょうゆと米の焼ける匂いってのは食欲そそるよな」
「ふふ。あとでリンゴもホイルで包んで焼きリンゴにしよう。デザートも必要だろう?」
「わかってるじゃねぇか」
 今日は楽しかったね、セイリュー。
 ああ。いい一日だった。
 一日が楽しかったと思い返しているのは、鹿鳴館と琥珀も同じだった。
 一番の収穫はやはり、自分たちで釣った魚だった。
「りくぅ、このお魚おいしいね!」
「そうだね琥珀ちゃん」
 鹿鳴館ははしゃぐ琥珀を見ながら、疲れている自分にも気づいていた。
「琥珀ちゃんはまだまだ元気だなぁ。僕はもう年かなぁ」
「はく、まだ元気だよ。お日様下がってきてなかったらまだまだお魚釣ってたよ!」
「あははは。楽しかったかい?」
「うん! お肉もお野菜もお魚も食べられて、はく、幸せ! りくっ、また来年も行こ!」
 二人は指きりをした。また来年も来るためにはと思い、鹿鳴館は琥珀に笑顔でうなずいた。
 一番帰り支度が遅くなりそうなのは、シルヴァとマギウスだった。ウィーテスとパラサなどは寝転がってゆったりとしているが、二人はまだまだバーベキューをしていた。
「おにいちゃんおかわり!」
「マギ、そっち焼けてるんじゃない?」
「もう少し火を通したほうがいいですね」
「まだ~?」
「もうちょいで焼けるさ」
 二人だけではない。子供が二人、バーベキューに参加していた。
 というのも、おなか一杯になったシルヴァがもう一眠りと歩いていったところ、とても小さなバケツを蹴飛ばしてしまったのだ。しかし、その小さなバケツにはその子達が始めて釣った小さな魚が入っていた。
 お詫びということだった。
「マギ、この子たちオレたちよりも食うんじゃないのか?」
「育ち盛りというものですよ、シルヴァ」
 二人はまだまだこの子たちのために肉を焼かなければならないようであった。しかし、二人はつらそうではなく、薄く笑っていた。子供が笑顔であったから。言ってしまえばウィンクルムの活動とは、この笑顔につながっている。
 遠目から眺めているほかのウィンクルム達も、その様子を楽しんでいた。
 ゆったりとした一日で、楽しい一日で、パートナーの事を良く知れる、また来たいと思えたいい一日だった。


(このリザルトノベルは、タクジンマスターが代筆いたしました。)



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 椎田
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月21日
出発日 08月27日 00:00
予定納品日 09月06日

参加者

会議室

  • [5]シルヴァ・アルネヴ

    2014/08/26-21:22 

    もうすぐ出発だけど、シルヴァ・アルネヴと精霊のマギだ。
    よろしくなー。

    バーベキューも楽しみだし、まだ暑いけど夏ももう終わりだから
    のんびり川遊びとかもいいな。

  • セイリュー・グラシアだ。
    バーベキューが楽しみだな。
    アウトドア的な事は大好きさ。
    良い一日を過ごそうぜ。

  • [3]シルヴィオ

    2014/08/26-00:22 

    シルヴィオだ。連れはジークベルトという。よろしく。
    釣りはあまりやったことがないんだ。
    今から教本でも読んで備えておくか。
    当日を楽しみにしているよ。

  • 鹿鳴館さんちの凜玖義っていうよ、精霊は琥珀ちゃんね。
    よろしく。

    僕と琥珀ちゃんのメインとしては釣りがしたいかな。
    釣ったばかりのお魚を捌いて食べられるのかと思うと、楽しいからね。

  • えっと、ウィーテス=アカーテースと言います。
    パートナーはファータのパラサと言います。
    えっと、どうぞ、よろしくお願いします。

    釣りに、バーベキュー……ふふ、とてもワクワクするなぁ。
    ここの川の水って凄く綺麗だよって聞いていて。楽しみ、です。


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