プロローグ
紅月祭り(あかつきまつり)、て知っているだろうか?
タブロス周辺にある謎スポットの一つで、異空間にある「紅月ノ神社」にて行われるお祭りだ。
祭りの期間は、ゲートである鳥居が出現し、入ることができるようになる。
「このお祭、今年は少し困った事態が起きてるんです」
A.R.O.A.職員が説明を始める。
「元々この祭は赤い月テネブラの女神ムスビヨミへの信仰からきており、降臨したムスビヨミ様がお祭りの熱気と幸福なエネルギーを吸収して、次の一年間の力にするという大事な行事でもあるわけです」
それが今年は屋台が壊されたり、売り子が怪我をするなど、ムスビヨミや人間、精霊に悪意を持つ妖怪が大々的に妨害工作を行っているようなのだ。
「ムスビヨミはウィンクルムの友情や愛情に関わる女神とされ、ムスビヨミが弱るとウィンクルムは、運気などの面で悪い影響が出ると予想されています」
お祭りの妨害工作によって、このままだとムスビヨミは月に帰れないほど弱ってしまう。流星融合の時ムスビヨミがウィンクルムに警告してくれたように、この女神は人類に進んで味方してくれていると言ってもいい。ムスビヨミの危機は、A.R.O.A.にとっても看過できない。
「悪さをする妖怪や、祭の運営に関する依頼を今後、A.R.O.A.から受けることもあるでしょう。今回はそれとは関係なく、紅月祭りに行くことを皆様に奨励するお知らせです」
妨害工作により、例年に比べ紅月祭りへの来場者数は減少傾向にある。
妨害への対策も重要だが、なにより祭を盛り上げることがムスビヨミにとって最も良いことだ。
そのためには多くの人が来場し、楽しむことが重要――良ければ是非、足を運んで楽しんでほしい。
職員はそう言うと、祭のパンフレットを見せるのだった。
解説
紅月ノ神社でデートしよう! というモノです。
事前にA.R.O.A.から、紅月祭りで使える引換券を割引で購入することになります。
引換券10枚分ワンセット:400Jr(このエピソードのみ有効)
(パートナーと5回、食べたり遊ぶことができる、という感覚です)
●当日できること
・出店を利用(各店引換券一人1枚必要。100Jr相当のサービスが受けられます)
かき氷
射的(1ゲーム5発)
たこ焼き
綿菓子
金魚すくい
お面屋(狐のお面など各種)
水風船
やきそば
りんご飴
・紅月ノ神社で祈願
ウィンクルムの友情や愛情祈願など、仲を深める為に訪れる人が多い場所です。
・1ジェールくじ
二人の仲を小吉、中吉、大吉から運だめし。
(ハードモード選択時は並み、凶、大凶、世界凶慌が加わるよ!)
引換券ご購入者は1回無料で引けます。
なお、出店などでムスビヨミと共にやってきた眷属神と会うかもしれません。
・ワタガシニコ・ハイテル姫:ふわふわした雲のような砂糖菓子の神
・リンゴアメノ・サカサの尊:童子の姿をした真っ赤な顔の、りんご飴の神様
・クジノアタリ・ソウナ姫:1ジェールくじの神様。色白美人。二次元。見た目は清楚、性格いい加減。
好奇心旺盛なため、ちょくちょく姿を見せる。
直接話せないが、付近の壁や髪に文字が浮き出て意志の疎通は可能。
・その他(要望)
こんな店があったらいいなとか
ゲームマスターより
こんにちは、叶エイジャです。
えっと……
解説までで全部書いちゃったから
何か言うことあったかな……
あ、くじ確率ははハードモードで
大吉10%、中吉・小吉15%、並30%、凶15%、大凶10%、世界凶慌5%です。
指定がなければ、かなりランダム要素アリで判定させてもらいます。
多分妖怪に混じって
「クソウ、ウィンクルムドモメ、イチャイチャシオッテカラニィ……」
と草葉の陰から見守っております。
そう思うくらい楽しげな皆様のプラン、お待ちしております!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)
紅月祭りのこととお祭りが行われる場所を知り、わくわくする。 故郷ではこんなにすごそうなお祭りなんてなかったし、思い切り楽しみたいと思った。 人がたくさんいて、はぐれたら大変と思い、とっさにジャスティの服の裾のとこをつかんでしまう。 手を握られ照れるがそのままにする。 ◆行く屋台 かき氷 射的 綿菓子 水風船 りんご飴 彼は暑いのがあまり得意じゃないので、最初にかき氷で涼しくなってもらえたらと思う。 射的は可愛いぬいぐるみとかがあったらそれを狙いたい。 自分の分の弾でとれなくてしょんぼりしたら、彼があとからそれを狙ってくれて嬉しく感じた。 神社での祈願は、自分も少しでもジャスティとの喧嘩が減り、仲良くなれるように願う。 |
アリシエンテ(エスト)
初めて浴衣を着たから落ち着かないわね でもこういう祭りなのだから全力で楽しみたくっ 引換券で早速目に付いた射撃! 「やったわっ、エスト!貯金箱が当たったわっ!」 目に付いた金魚掬いに突入してに熱中していたら、エストがいない… しばらく何か落ち着かないとその場を動かずきょろきょろしてしばし エストの方から迎えに来た 金魚すくいに声を掛けずに行ってしまった為はぐれてしまったらしい 心配を掛けてしまったのだろう、こちらの背中に手を当てて軽く注意された その手が暖かくて、少し安心する お面屋さんで色違いでお揃いの狐のお面をつけて歩く。きっとこれではぐれないわねっ(幸せそうに笑って) 2人で静かなところを探してりんご飴食べる |
八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
二人でお祭りなんて初めてですね いっぱい楽しみましょう 浴衣 白地に紫の蝶柄 髪はアップ 券 かき氷射的金魚すくい綿菓子くじ、各1 アスカ君、はぐれないように手をつなぎませんか? かき氷、アスカ君のは苺ですね、私はメロンです 射的は苦手ですが金魚すくいなら負けません!(スキル:計算) にしても、今日はやけに名前をたくさん呼んでくれますね…? でもおかげで慣れてきました くじは…小吉ですか 「災い転じて福と為す」ってどういうことでしょう …あっ!?下駄の鼻緒が… ごめんなさい、アスカ君、その…重くないですか? 境内の裏手なら落ち着いて直せそうです わ、分かりま…分かった アスカ君の体ごつごつしてて 男の子…ううん、男の人なんだなぁ… |
シャルル・アンデルセン(ノグリエ・オルト)
紅月ノ神社…不思議な場所ですね。そんな場所でのお祭り…楽しみです。 ムスビヨミ様の為にもいっぱい楽しまなきゃですね。 ふふ、でも、そんな事を意識しなくてもきっと楽しいです。だってノグリエさんと一緒だから。 はぐれないようにってノグリエさんは手を差し出してくれる…なんだか少し照れます。 でも…ノグリエさんと手を繋ぐのは好きです。 綿あめ、ふわふわで不思議。りんご飴はなんだか可愛いです。あ、あの狐さんのお面ノグリエさんに似てるような…。 金魚さんは赤い子も黒い子も可愛いです。 上手にすくえたら金魚さんは連れて帰ることができるのですか?む、難しそうですが…頑張ってみます。 えへへ、お家に連れて帰れるといいなぁ…。 |
ライラ・フレニア(クラエス・エストリッジ)
お祭り、少し行ってみたかったんだよね 割引で引換券も買えたし今日は楽しみだな 引換券は5枚だから大事に使おうね 食べ物だったら…私は綿菓子とりんご飴が食べたいなって い、いいじゃない甘いものばっかりでも 少し赤くなって反論 あとは金魚すくいがやってみたいな 私こういうのやった事ないけど金魚可愛いし…頑張る! 失敗しても笑わないでね 気合充分で挑むがすくえず落ち込む 1ジェールくじもやってみたいな ハードモードがいいの?不安だけど…いいよ、引いても いい結果ならほっとし悪い結果なら少し落ち込む どちらとも言えないならこんなものだよねと頷く 今日は一緒にお祭りまわってくれてありがとう 金魚すごく嬉しかったよ、大事に育てるね |
●
鳥居を抜けると、そこはちょっぴり薄暗い。
急激に変わった雰囲気に、シャルル・アンデルセンは目を瞬かせた。
「ここが紅月ノ神社……不思議な場所ですね」
ほんのり赤い、吊り下げられた提灯の群れ。薄闇の中に屋台が輝いて見えた。風に乗ってくるのは食べ物の香ばしい匂いと、熱気。鉄板を使った屋台からじゅうっ、と湯気が立つ。太鼓や笛の音が聞こえた。それは喧騒の中にあって、心に湧き立つものを与えてくれる。
「こういうお祭りはボクも初めてです」
彼女の精霊、ノグリエ・オルトは異空間の状況に驚きつつも、予想通り人が多いことにふむ、と考える。何かの拍子に見失っては大変と、傍らに立つ愛しい少女に手を差し出す。
「手は繋ぎましょうね。はぐれたら大変ですから」
「もう……私は子供じゃありませんよ?」
(――おや?)
少し照れた様子で手を握ってくるシャルル。その、一瞬見せた戸惑いにノグリエの心が揺らめく。
距離を置かれた? いや――
(恥じらってくれている、のですかね)
思えば以前に比べ、最近は今のような感覚を覚えることが多くなった。自分を意識してくれているのなら、それは素直に嬉しいことだった。
彼女の保護者でいたいわけでは、ないのだから。
「あ、ノグリエさん綿飴ですよ……食べませんか?」
手を引き、金の瞳を輝かせるシャルル。その輝きを護らんと、ノグリエも進め始めた。
「これが、紅月祭り」
リーリア=エスペリットは胸の高鳴りを抑えきれない。異空間で行われる、月の女神のお祭り――故郷の田舎は自然こそ豊かだが、こんなにすごそうなお祭りはなかった。一年でこの時期しか来れないとなれば、思い切り楽しむしかない。
(でも、やっぱり人が多いかな……)
なにしろタブロス市内だけでかなりの人数が訪れている。本当に来客数って減少傾向なの? というくらい、祭りを楽しみに来た人々でいっぱいだった。
足元を子供が駆けていく。かと思えば団体の動きに巻き込まれ、あらぬ方向へ行きかける。
「ジャ、ジャスティ」
おぼれかけた人波から抜け出て、藁をもつかむ気持ちでジャスティ=カレックの裾をつかんだ。
「すごい人混みね。いつもこうなの?」
「休日や時間帯の都合もあると聞きましたが、確かに多いですね」
平板な彼の顔。しかしその声音が疲れをにじませていることに、リーリアは気づいた。
(暑いの、苦手だったよね)
これだけの人数、熱気も相当だ。リーリアは目を走らせ、その場所を見つける。
「ねぇ、かき氷食べにいかない?」
「……別に構いませんが、その前に」
ジャスティは裾をつかむ彼女の手をとると、自らの手で握る。
「ジャスティ?」
「そこだと疲れるでしょう」
「――あ、うん。そうよね」
ありがとう、と平静のまま返し……その実リーリアは照れていた。
(手、暖かい)
そんなことを感じながら、歩き出した。
「二人でお祭りなんて初めてですね」
いっぱい楽しみましょう、と言う八神・伊万里の出で立ちは、白地に紫の蝶柄の浴衣。結い上げた髪が細く長い首と、綺麗なうなじを見せる。
「下駄は少し歩きづらいな、伊万里」
対するアスカ・ベルウィレッジは黒地に紅の差した浴衣だ。
「そうだね。そうだアスカ君、はぐれないように手をつなぎませんか?」
「……ああ」
手を伸ばす伊万里。アスカの反応に一拍の間があったのは、恥ずかしいから――ではない。
(伊万里のやつ、最近は名前呼んでも動揺しなくなってきたな)
先程のやり取りも、軽く流された。思えば当初ではありえなかった反応だ。
(くそっ、何なんだよ!)
その軽さが気に入らない。つい先日はトランス状態になるため互いの唇を――完全な事故とはいえ――重ねた。戦いの末、悔しい思いをしたこともあるが、あの時のことは今でも覚えている。感触が残っている。忘れるはずがない。
だから彼女も忘れずにいて、少し反応が変わると――
(ッ! これじゃまるで俺の方があいつのことを……)
気に入らない。気に喰わない。伊万里の態度も、それに苛立つ自分にも。見えない何かに翻弄されているようで。
(確かめてやる!)
決意するアスカ。
ただ何に対してどう確かめるのか。彼にもよく分かっていなかった。
「初めて浴衣を着たから……なんだか落ち着かないわね」
白地の麻に朝顔の花が咲く。金の髪を纏めたアリシエンテの浴衣姿は、いつもとは違う華があった。
「エスト。おかしなところはない?」
「いいえ、どこも。良くお似合いですよ」
率直かつ実直な声音でエストは応える。主の姿は見た瞬間、彼が目を細めるほどだったが……もとより気軽に褒めるような立場ではない。求められた時に示し、それにも私情は挟まない。虚飾のない事実のみを伝える。非がない事実にこそ、価値はある。
「紅月祭り、全力で楽しみましょうっ」
――二人は射的屋に来ていた。
「やったわっ、エスト! 貯金箱が当たったわっ!」
「お見事……こちらは当たらないようです」
戦利品を店主から頂戴するアリシエンテに対し、エストの戦果はふるわない。実銃に馴染んだ分、勝手が違ったようだ。
「この分だと射撃の腕、追い抜いてしまうわよ?」
「精進します」
修行の一環、とアリシエンテの渡した貯金箱を恭しく賜るエスト。そんな軽いやり取りを交わしながら、二人は祭りの中を練り歩いていく。
「アリシエンテ、人が多いので気をつけ――」
「大丈夫よ。あら……?」
エストの言葉を遮ったアリシエンテは、人波の向こうに見えた「金魚すくい」に破顔する。
(次はあれにしましょう!)
決めたら全速前進。人混みもなんのその。あっという間に辿り着き、水槽の中をのぞき見る。
「綺麗……」
水の中を泳ぐ金魚たちは裸電球の暖かな光を浴び、煌びやかな光沢を纏って見えた。
「神人の方ですね」店番の若い妖孤が彼女の手の甲を見て、声を掛けてきた。「引換券をお持ちのようですが、やりますか? すくえば持ち帰れますよ」
「ええ、是非」三つの「ぽい」を受け取るアリシエンテ。目を丸くする。
(これ、大丈夫かしら)
張られた紙は薄い。濡れれば脆そうだ。慎重に水に入れるが、
「あっ」
金魚を追おうとしてすぐ破れてしまう。二つ目も。
(やり方が悪いのね)
横を見れば、手慣れた様子の客がすくった所だった。寸前まで浸けず、金魚の進行方向から水の抵抗を受けない角度で入れている。
「なるほど、それなら」視線を走らせる。いた。前方から近づき、最適の角度で入れ――捕らえた!
「あ!」直後金魚が跳ね、僅かに出来た裂け目から逃れてしまった。
「悔しいわ。でも、最後は惜しかったわよね、エスト」返事はない。「……エスト?」
振り返った先、そこにいるはずの存在は影も形もなかった。
「お祭り、行ってみたかったんだよね」
そわそわした様子のライラ・フレニア。楽しみにしていたことがよく分かる。
(割引で券がもらえたのも大きそうだけど)
真剣なまなざしで店を吟味する彼女に、クラエス・エストリッジは内心で苦笑する。
「券、油断したらすぐなくなりそうだね。とりあえず何か食べておく?」
「食べ物なら」考えるライラ。「私は、綿菓子とりんご飴が食べたいなって……なに?」
「いや」クラエスがくすりと、笑った。「見事に甘いやつばかりだと思って」
ライラの顔が紅くなった。
「い、いいじゃない甘いものばっかりでも」
「うんうん、そうだね」
相槌を打ちつつ、その恥ずかしがる様が微笑ましく感じるクラエスだった。
互いに食べ物をつまみつつ、歩いていく。ふとクラエスがライラを見れば、美味しそうにリンゴ飴をかじっていた。
「ライラ、一口いいかな」
「え。あ――」
ライラの飴を、クラエスがかじる。
「甘くて、いいね」
「もう、食べたかったら買えばいいのに」
そう言う彼女の顔は、さっきよりずっと赤い。
●
「本当にすぐなくなったね」
ライラとクラエスの手には、引換券が残り一枚ずつ。
「あとは……金魚すくいがやってみたいな」
ライラの視線の先には、沢山の金魚が泳ぐ水槽が。
「こういうの好きだった?」
「ううん、やった事ないけど。金魚可愛いし」
気合充分のライラがポイを手に取り、金魚を目で追う。
「失敗しても笑わないでね」
「笑わないよ」見守るクラエス。
……。
「お姉さん残念!」
「うぅ……」
落ち込むライラ。その横で券が差し出される。
見ると、クラエスがポイを受け取ったところだった。
「クラエス?」
「失敗しても笑わないで」
しゃがみ、じっと水を見つめるクラエス。
その手が、水面近くを泳いでいた一匹にそっと、近付く。
「すごい!」
椀に入った金魚。ライラの声を背に、クラエスはゆっくりと息を吐くのだった。
袋の中で泳ぐ、赤。
「でもいいの? 私がもらって」
「プレゼントだよ。帰ったら金魚鉢探さないとね」
「ありがとう。大事に育てるね」
金魚を見て微笑む彼女。クラエスも胸をなでおろす。
(失敗しなくて、良かった)
「今日は一緒に回ってくれてありがとう、クラエス」
「こちらこそ……ここかな」
二人の最後は、一ジェールくじ。
『は~い、ようこそー』
「……え?」
くじ売りの建物の壁。そこに突如文字が現れ、描かれた絵が動き出す。
『こんにちは~。私、クジノアタリ・ソウナ姫よ~』
「月の女神の眷属神……」
「本当に二次元なんだ……」
壁の上で上品に笑う姫神に、それしか言えない。
『お二人は~、引換券の購入者ですねー』
「わかるんですか?」
『神様ですものー。さあ、引いて下さい』
姫神はくじの箱を示す。箱は幾つかあり、一つだけ「上級者向け」……多分、ハードモードだ。クラエスがその箱の前に立つ。
「これは、引くしかないね。面白そうだし」
「本当に? 不安だけど……いいよ」
頷いたクラエスがくじを引――
『あ』
「……あ?」
『いえ~』
背を向けた姫からカラコロ、サイコロを振るような音。『あー、そういう判定~』と文字が漏れ出てくる。
『続きをどうぞ~』
「……」
クラエスがくじを開く。ライラが読み上げた。
「えっと、『近くて遠い二人は、家族のような特別な関係――だから何? 一寸先は闇。二度ある不幸は三度以上。四は死の暗示。希望は五里霧中。ロクでもない事七転八倒。苦しみ抜いてとうとう……。僅かな希望は小さな命。やったね世界凶慌』!?」
「小さな命、ね」
へなへなと落ち込むライラを支え、クラエスは金魚を見る。
「最後がこんなのって……」
「落ち着いてライラ」
二人が帰っていく。姫神は小首を傾げた。
『あらー? ふたりは大吉だったのにー』
箱の中を見て、納得。
『世界凶慌しか入れてなかったわ~……ま、いっかー』
クジノアタリ・ソウナ姫。性格はかなりいい加減ともっぱらの噂である。
さて一方のジャスティは。
(冷たい)
かき氷が身体を冷やしていくのを感じながら、リーリアの態度を思い返す。
(海での事、か)
先月のビーチでのこと。日中の暑さに彼は酷い目に合った。彼女に悪意があったわけではないが、互いに気まずい思いをした。最後は帳消しになったが。
そのことで気遣ってくれたのだと分かる。実際嬉しい。
せっかくの祭。普段こういう場所には来ないが、彼女が楽しもうとしているのはよく分かる。
(なにか僕も……)
そこまで考えた時、リーリアが止まった。視線の先に射的屋。武器が好きだから銃かと思い、景品のぬいぐるみを見て納得する。好きそうなやつだ。
「ちょっと待ってて」
案の定、リーリアが向かう。渡された銃を操作して、小気味良い音が鳴り響く。
しかし、
「当てるとこ、駄目だったかな」
結局落ちないぬいぐるみに、リーリアが肩を落とした。
(あれは、数発では無理か)
だが、もう一度同じ所に当てれば――そう思った時には、ジャスティは動いていた。
「ジャスティ?」
リーリアは彼が狙っている物を知り、徐々に顔が明るくなった。ジャスティが引き金を引く。
一発、二発、三発。そして――
「弾が変な所に飛びました」
「詰め方が変だったから」
失敗を零すジャスティに、リーリアが苦笑する。
「でも、取ってくれてありがとう」
二人で手にした景品は、リーリアに抱かれていた。
そして今目指している場所は――
「神社の周りは、少し雰囲気が違いますね」
「この紋様はテネブラね」
紅月ノ神社へと祈願しに来ていた。手順に沿い、リーリアは願う。
(ジャスティとの喧嘩が減り、仲良くなれますように)
――最近なぜかキミを目が追ってしまい……
ふと、先日の「爆弾発言」が頭を掠めた。「あの子」はともかく、あの言葉が本心であることは違いなく。
(何を願ってるんだろ)リーリアがこっそりと精霊を見やる。
そんなことを露知らぬジャスティ。
(仲良くなれるきっかけを得られますように)
彼女との交流を楽しんでいる自分がいる。今日みたく楽しむリーリアを見れて良いと思っている。それは、嫌なことではない。
「終わった?」
「はい」
同じことを願った二人。聞いた者がいれば微笑ましいようなもどかしいような……だからだろうか。
――がんばって!
「リーリア、なにか言いました?」
「え、ジャスティじゃないの、今の」
どこからか聞こえてきた不思議な声に、二人は首を傾げるのだった。
(ムスビヨミ様の為にも、いっぱい楽しまなきゃですね)
来る前にそう意識していたこともとうに忘れて、シャルルは祭りを楽しんでいた。ふわっとした綿飴の、口の中で溶けゆく甘く儚い食感を楽しんだ後は、硝子細工のように煌めくつぶやかなリンゴ飴を、髪が触れないようそっと齧っていく。つないだ手から感じる温もりは心地良かった。最初は気恥かしさもあったが、
(ノグリエさんと手を繋ぐのは、やっぱり好き)
今楽しいのは彼といるから――そう思ったシャルルが、ふと彼によく似た顔を見つける。
「あの狐さんのお面、ノグリエさんに似てるような」
「あれですか? ……似てますかね?」
「似てますよ。特に目元とか。すみませーん」
購入したお面を見せ、「これでお揃いですね」と笑うシャルル。ノグリエは他の面とどう違うのか不思議そうに見比べ……やがて楽しげに揺れる青い羽根飾りに苦笑するのだった。
そんな二人が最後に訪れた店が、
「おや、金魚ですか?」
「はい。赤い子も黒い子も可愛いです♪」
水の中を泳ぐ宝石のような生き物たち……それに目を奪われているシャルルの表情が可愛いとは思いつつ、一度つないだ手を離してまで水槽をじっと見つめる彼女に、ノグリエは金魚が少し嫌いになった気がした。
しかしそんな思惑も、次の出来事に消えてしまう。
「上手にすくえたら連れて帰ることができるのですか!?」
店員の説明を聞き、やがてシャルルは決心したようにノグリエの方を向いた。
「えへへ、お家に連れて帰れるといいなぁ」
「――」
その笑顔に、ノグリエはしばし言葉を失い――やがてにこやかな笑みを浮かべた。
「なら、得意ではありませんが、ボクも頑張ってみましょう」
この笑顔の対価に、小さな同居人が増えるくらい安いものと、彼もまたポイを受け取る。
勝算がないわけではない
二人で頑張ればきっと、できるはずだから。
「伊万里伊万里、かき氷一口くれよ。かわりに俺のもやるから」
アスカの苺味と、伊万里のメロン味が交換される。
「伊万里、射的で変な人形当たったぞ! 伊万里にやるよ」
変な人形が伊万里に渡される。
「伊万里、って金魚多!?」
「射的は苦手ですが金魚すくいなら負けません!」
計算スキルで店番の妖孤を泣かしかける。
(……にしても、今日はやけに名前を呼びますね?)
伊万里は綿菓子を口にしながら、考える。
これがアスカの考えた方法だった。普通に呼んでダメなら、倍プッシュ。力押しである。
とはいえ、
(おかげで慣れてきました)
作戦が裏目であることを、教えてあげられないものか?
――そうこうしているうち、二人はくじ引きの店に来た。
「『悩んだ時は素直が一番。言葉でしか伝わらないものもある。災いこそ転じて福と為らん』……どういうことでしょう?」
「……よし」
「?」
何かを得たらしい精霊の顔を、伊万里は不思議そうに見つめる。
(アスカ君、なにか悩んでたのかな)
一瞬よぎるのは先日の橋での戦い。彼が負傷した戦い。
(でもあれは、私のせいで怪我させたから)
戦場ナビゲーターを目指しながら、招いたのは情けない結果だ。
今も、気まずい。原因となった事故も含めて。
今日は楽しもうと、気にしないフリをしてたけど。
もし、彼の信頼を損ねていたら――
「あっ!?」
思考に捕らわれた瞬間、視界がぶれる。
「伊万里、大丈夫か!?」
「痛……」下駄の鼻緒が切れていた。アスカがおぶろうとしゃがむ。
「ほら、つかまれ」
「ごめんなさい、アスカ君」
「気にするな。それよりどこかで直そう」
「では、境内の裏手に」
「ああ」
アスカに体重を預ける伊万里。揺れる背の感触と体温を感じる。
(体、ごつごつしてる)
男の子。いや、男の人なんだと、思ってしまう。
その時だった。
「いい加減、敬語は使うなよ」
「――え?」
「俺達は対等だろ」
建物の縁側に彼女を降ろし、アスカが鼻緒に応急処置をしていく。
「嫌か?」
真顔で見つめられ、伊万里が息を呑んだ。
最も近くにいる「男性」。それもキスをした――
鼓動が、跳ねる。
「わ、分かりま……分かった」
ぎこちなく返した神人に、精霊は付け加える。
「あと、浴衣似合ってる、すげー可愛い」
「……!」
不意打ち受けた彼女の表情に、アスカは満足そうに笑った。
(なんだ、普通にうろたえてるじゃないか)
名前を呼ばれるのも慣れただけのようだ。それはそれで構わないが……
もう少し、今みたいな顔を見たいと思うのだった。
「まさか本当に迷子になるとは」
エストは気が気でなかった。落ち着けと自制し、道を少し戻る。彼女の気を引きそうな場所に心当たりはあった。
(やはり……)
金魚掬いの店。見間違えるはずもない姿が不安そうに視線を彷徨わせていた。
「エスト!」アリシエンテの顔が輝く。「ごめんなさい。私ったら声を掛けずに……」
その表情と声に、エストは身体から力が抜けるのを感じた。彼女の背中にそっと、手を当てる。
「もう、はぐれたりしないでくださいね」
何気なく置いた手の先は、背中。
「ええ、もうしないわ」
なぜ、触れた手に安堵する彼女がこうも儚く、小さく感じてしまうのだろう?
戦場の苛烈な姿とは、まるで違う。
(――いや)
今の彼女もまた、偽りのない姿なのだ。年頃の少女らしい姿だ。
なら戦場でない時、自らがすべきことは――決まっている。
「ねぇ、エスト」
アリシエンテがお面の屋台を指差す。
「狐、お揃いのをつけましょう? これではぐれないわっ」
幸せそうに笑う彼女に、エストは頷く。
――不安を感じさせないよう、護ればいい。
「静かな場所も、あるのね」
月に照らされた広場は会場から離れ、祭りの喧騒も小さい。
「エスト、今日はありがとう。また来ましょうね」
りんご飴を手に微笑むアリシエンテ。二人きりで過ごす、この大事な時間とその存在を想い、エストは頷く。
二つの月が、見つめ合う二人を照らしていた。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 叶エイジャ |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 08月05日 |
出発日 | 08月11日 00:00 |
予定納品日 | 08月21日 |
参加者
- リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)
- アリシエンテ(エスト)
- 八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
- シャルル・アンデルセン(ノグリエ・オルト)
- ライラ・フレニア(クラエス・エストリッジ)
会議室
-
2014/08/10-03:17
気が付けば一番最後……!
お邪魔するわっ。アリシエンテと言うわ、どうぞ宜しくお願いするわねっ。
こんなお祭り初めてなのっ。目移りしてしまいそう!
皆さんにも、是非楽しい時間を過ごせますようにっ。 -
2014/08/09-05:18
はじめまして、シャルル・アンデルセンです。
パートナーはノグリエさんです。
よろしくお願いします(ぺこり)
お祭りとっても楽しみです。
皆さんも素敵な時間が過ごせますように。 -
2014/08/08-18:20
初めまして、ライラです。
パートナーはクラエス様です。
今回はよろしくお願いしますね。
色々と自分達で選べるのは嬉しいです。
各自素敵な時間を過ごしましょうね。 -
2014/08/08-16:27
こんにちは。
私はリーリア。パートナーはジャスティよ。
アリシエンテと伊万里、ひさしぶり!
みんな、よろしくね。
食べ歩きとかできて楽しそうね。
射的、頑張ろうっと! -
2014/08/08-09:27
八神伊万里と、パートナーのアスカ君です。
シャルルさんとノグリエさん、ライラさんとクラエスさんは初めましてですね。
リーリアさんとジャスティさん、アリシエンテさんとエストさんはお久しぶりです。
よろしくお願いしますね。
夏祭り、楽しみです…!
めいっぱい満喫しましょうね。