プロローグ
この時期は色々なイベントが増え、A.R.O.A.内のポスターを貼るスペースも自然といっぱいになっていく。
ここにまた一枚、職員男性によってミラクル・トラベル・カンパニーから渡されたポスターが壁にぺたりと貼られた。
その後ろをたまたま通りすがって、ポスターの文字が視界に入るとその足は思わず止まってしまうかもしれない。
『暗闇宝探し』
気配に気付いた男性職員が振り返る。
「あ、これですか。詳細、お聞きになります?」
えーと……、とポケットから折りたたまれた紙を取り出した。
どうやら興味を持ったウィンクルムたちに説明するためのカンペを渡されていたようだ。
「主旨としては、『暑さ厳しいこの時期、視覚と嗅覚から涼しく気分転換になりますように』というものですね。
なになに……、『真っ暗闇の部屋でポプリを探し出す、というミニゲーム』。
ポプリ……って何でしょうか。あ。匂い袋ですか、なるほど。
様々な家具が置かれたその部屋のどこかに、ポプリがあるそうです。
床と各種家具にはクッション材が貼られているようで、転んでもぶつかっても怪我をすることはないと。ふむふむ。」
「制限時間があるようです。30分、と。参加者数人がまとめて部屋に入るようですね。
……大丈夫ですかね。変なハプニングがないといいですが……
あ、ちゃんとスタッフが暗視カメラで見守ってくれてると書いてあった」
ウィンクルムの安全を心配するA.R.O.A.スタッフの鏡。
よかったまともな職員もいるんだね と思ったウィンクルムがいた ……らどうしよう。
「興味がおありですか?ポスターにイベント場所の地図が載ってますよ。ホテルの一室を貸し切ってるみたいです。
あぁ宜しかったら今コピーしてきますね。楽しいイベントを」
細やかな心配り。今後のA.R.O.A.のためにも昇進頑張って、と応援したくなるまっとうさ。
丁寧にお辞儀しあってその場を後にした。
解説
●視界は暗黒。匂いを辿れ宝探しゲーム。
・参加費一組につき<300Jr>
・参加者いっぺんに部屋へ。扉を閉められればそこは真っ暗くら。
手探り、足探りでとにかく歩き回り、椅子やソファ、3段ミニ箪笥や植木鉢、テーブルなど
ありとあらゆる場所を探してみましょう。
ポプリのある場所に近づくと、敏感な人ならハーブの匂いに気付くかも。
とはいえ、すでに部屋全体が色々な匂いがほのかに混ざって満ちているので(匂いで酔う程では無い)、
余程その場所に近づく必要があるかも?
●ポプリの種類は4種類。
見つけたポプリはそのままお持ち帰り出来ます。
(お一人様1つのみ。神人・精霊それぞれが1つOK)
種類は以下。
・グレープフルーツ:落ち込んだ心に活気が戻るような柑橘系代表。
・ペパーミント:興奮や激しく乱れた心を鎮めるハーブ系代表。
・ローズ:心を明るくさせストレスを和らげるフローラル系代表。
・ジンジャー:感覚が鋭くなり集中力・記憶力アップに繋がるスパイス系代表。
どこで、どのポプリを見つけたか、プランにお書き下さい。
(隠し場所は独自に考えて頂いても構いません。部屋にあっておかしくなければ)
参加者様でポプリの種類は被ってもOK(同じのがいくつも隠してありますので☆)
●おや。一般の参加者様もいる様子
・イケメンオーラを感じ取る、害はないが捕まると面倒そうな妹
・美少女オーラを感じ取る、害はないが捕まると鬱陶しそうな兄
この兄妹が暗闇ゲームに参加しているようです。
部屋の中では視界ゼロな分会話は自由です。ので、手探りしてるうちにバッタリするかも?
(登場は最小限。ですが、あえて捕まるプランもあり。声は聞こえるものの姿が見えず、でヤキモキとかげふん)
(「やめて。むしろ本気でやめて知らないヒト怖い」という場合も
プランにその旨(「×」等で)ご記載下さいますと助かります。好き勝手するGMが居ry
「×」があれば、決してNPCとは絡めません)
ゲームマスターより
いつも楽しい時間をありがとうございます!
お世話になっております蒼色クレヨンでございます。
クレヨンは制限時間が好きなのだろうか
ベタなのしか浮かばない脳みそなのだろうか
最近とみに自問自答しております。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
月野 輝(アルベルト)
暗闇って目が慣れればいくらか見えるようになるって聞いた事あるわ だから部屋に入ったらまず目を瞑って10数えて……やっぱり暗いわね とりあえず壁伝いに行けば、人とぶつからないで済むかしら? あ、あら?どなた?知らない声… 一般の方かしら?ぶつかっちゃってごめんなさいね ■ポプリ ジンジャーが欲しいの 集中力・記憶力アップって任務の時に役立ちそうじゃない? 香りをよーく確かめながら探してみようかな 色んな香りが混ざってて判りにくいけど頑張る ソファの隙間とかに入ってないかしらね…あ、何かある! 見つけたしアル捜そうかしら? え!?きゃっ!? やだ、アルってば黙って肩掴まないで、ビックリするじゃない え?ポプリ交換?どうして? |
リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
目的:イベントを楽しむ 心情:銀雪はこういうの、好きだな 手段: 銀雪に誘われてきたが、たまにはいいか。 ポプリを探して歩こう。 サイドテーブルの裏なんかが怪しいかな。 出来れば、ジンジャーの香りがいいかなと思っているよ。 色々な香りがあるので惑わされないように。 何か変な兄妹がいるな。ま、気にしないでおこう。話しかけられたら、適当にあしらおう。面倒だったり、しつこいようなら、それなりの対応をさせてもらうが。悪いが、泣こうが喚こうが私は容赦しないからな? 世話なら、兄にでも焼いてもらえ。 手探りだから、ぶつかってしまわないよう気をつけないとな。ぶつかったら、謝る。 「さて、銀雪。私とのデートは楽しめたかい?」 |
ひろの(ルシエロ=ザガン)
暗い場所も狭い場所も好きだけど。 他にも人が居るのは……。 ……何も見えない。 「ルシェ?」近くにいる? 服の端ぐらいは、握っても良い……よね? 一緒に任務した人多いけど、まだちょっと……。 服より、手の方が離さなくて済むかな。(少し強く握る) 暗いから手の感触がよくわかるような、気が? ……ルシェの手、大きい。(両手で握る。自分が見えない為、多少大胆) 「やっぱり、あったかい」 そうだ、ポプリ。 時間、後どのくらいかな。一個くらい見つけたい。 こういうのって、椅子とか机の裏? ほんとに床柔らかい。 ……こけそう。 植木鉢、かな。後ろに何かある。(ローズ) 「ルシェに、似合いそう」 ルシェ、なんか目立つから。薔薇っぽいと思う。 |
ペシェ(フランペティル)
フラン、今日は香水は無しですよ 匂いがわからなくなりますからね うふふ…暗いと目に頼らないからじっくり色んな匂いが堪能できますね…(匂いフェチ、アロマスキル持ち) 最初は壁伝いに空間の匂いをかぎながら探しましょう あ!ぶつかってしまってすみません… 今の女の子凄くいい匂いでした…きっと美少女ですね くんくん…多分テーブルの裏…ありました。ローズの香りです ひゃっ!?すしゅ、しゅみません! (兄の方にぶつかると過剰反応) はぁ…暗くても男の人だとやっぱりダメですね… フランも見つけまし…きゃっ!? (転びかけてフランに抱きつく) フランの香りはやはり他の男の人とは違います。 心地良い…匂い…今日は何もつけてないのに… |
●只今視界真っ暗なり
「見守る?物は言いようだな。覗いてるのと同義だろうに」
「正直同感ですねぇ。監視されるのはあまり好きではないのですが」
順番が回ってきたと案内を受け、暗闇部屋へと足を踏み入れる。
全員が部屋へ入ったのを確認してからスタッフによりドアが閉められれば、本当に右も左も真横に居るはずのパートナーの姿すら捉えることが出来ない。
参加者への改めて行われた宝探し説明・注意事項等を受けたときの言葉を一部思い出して、
ルシエロ=ザガンは部屋へ入った途端率直に思ったことを述べた。
これでも彼なりにスタッフたちの前では黙っていた気遣いでもある。
真っ暗闇の中呟かれた言葉に、アルベルトが同意を示した。
そんな精霊たちの会話が聞こえ、ふっと息を吐くように笑みを作ったリーヴェ・アレクシアが宥めるように声をかける。
「何事も楽しむのが大事だよ。ほら、輝を見習ってみたまえ」
かくいう私も銀雪に付いてきたわけだが、とまだ隣にいる気配のパートナー方向を見ながら、
部屋へ入る前に輝の取っていた行動が目に入っていたリーヴェの言葉に。
「ポプリを匂いで探す、っていうのが楽しそうだと思って。戦いばかりでも疲れてしまうしね」
銀雪も頷いて答える。
「暗闇って目が慣れればいくらか見えるようになるって聞いた事あるわ。
だから部屋に入ったらまず目を瞑って10数えて……、……やっぱり暗いわね」
リーヴェの言っていた通り、暗闇対策に勤しんで(失敗して)いた輝の、やる気は十分な言葉にアルベルトも肩をすくめ。
「まぁお互い頑張って探しましょうか、輝」
「ええ、頑張りましょう。……とりあえず壁伝いに行けば、人とぶつからないで済むかしら?」
言葉を掛け合いお互いが背中を向ける気配。
背中を叩いて激励をするフリをしながら、アルベルトはこっそりと輝のその位置へと何かを貼り付け満足そうに踵を返した。
「……ルシェ?」
「いるぞ多分正面に」
部屋へ散り始めた数組の気配に、参加したからには仕方ないかと歩みだそうとしていたルシエロは、
パートナーであるひろのの声に答えながら、何か引っ張られる感覚に一度首を傾げる。
(あぁ、服掴んだのか)
大分顔見知りが多いとはいえ、やはりまだ他人とは距離を置きがちになるひろの。
それでも、そばに居てくれると確信の持てる人が出来た。
いつの間にかのそんな気持ちの変化からか、自然と自ら精霊の服を掴んではぐれないようにとする、ひろのの中では積極的ともいえる行動に出られたのだ。
「ほんとに床柔らかい。こけそ……っーー!??」
「のわ!?」
ルシエロにくっついて歩み出そうとしていたひろのが、急にルシエロの服を強く引っ張る。
「なんだっどうしたヒロノ!?」
「なな何かがっ、服の上っ、まさぐ……っっ」
「あ、ら?もしかしてその声、ひろのさん、でしたか?」
声がしないと思っていたもう一組のウィンクルムの片割れ、ペシェの声がきょとりと響いた。
「え?……えと、もしかしてペシェ、さん?」
「はい。ハーブの匂いがしたもので……つい手を伸ばしてしまいました」
日頃から匂いに敏感、趣味や生きがいとすら言えるペシェは早くもポプリ探しに専念していた様子。
申し訳なさそうに手を離す気配。
「ハーブ?そんなもん、ヒロノ持ってるのか?」
「ううん……持ってな……」
「ああっ、ちゃんと嗅いでみたら……私としたことが。ひょっとして虫除けの何かをお持ちではないですか?」
「あ……」
上着の胸ポケットに虫除けハーブの小袋が入れっぱなしであったことをひろのも思い出した。
(ペシェはやたら匂いにうるさかったが、ここまでとは……ちとヒクわー……)
暗闇の向こう、マイペースにポプリ探しを始めていれば一連の会話が耳に入ってきたペシェの相方、
フランペティルは盛大な溜息をついた。
「うちのトリュフ豚、でなくクローブカツ、でなく、ペシェが迷惑をかけたようで失敬したー。
そしてペシェは代わりに謝ってやる寛大な吾輩に感謝するようにー!」
一応暗闇の中へ声をかける。
「なっ、わ、私自分でちゃんと謝ろうとしてました!
そんなことを言ってて、フラン、今日は香水なしって伝えたことちゃんと覚えてますか…!?」
「吾輩を物忘れが激しい年寄りかのように言うなっ。
全く……香気を纏わずにいるとなんだか肌着を着忘れたようで落ち着かんというのに……」
暗闇の中ささやかな応酬後、ひろのさん本当にスイマセンでした、と謝罪を口にしたペシェはポプリ探しに勤しむ旅に出た。
「……ヒロノ、手を貸せ」
「えっ?う、うん……」
(はぐれたらああして声張り上げて探すとなると、面倒この上ないな)
ルシエロは何かをしっかり学習。
ぎゅっと繋がれた手にひろのは一瞬びくりとしながらも、その安心感にすぐ委ね。
「手ぐらい、そろそろ慣れろ」
「な、慣れてる……よっ」
一瞬でもビクついたのがバレていては説得力は無かった。
はいはいと流されてルシエロに引っ張られていくひろのであった。
(……な、なる程……)
ここにも違った方向から学んでいる精霊が一名。
視覚に頼れない分、皆一様に聴覚が過敏になっているようだ。それぞれの会話がとてもよく響いてくる。
「えっとリーヴェ、大丈夫?なんなら手……」
「ああ銀雪。幸い私は、暗所も閉所も問題はないよ。だが、気遣いありがとう」
「……うん、ならいいんだ」
かけた言葉、少々誤解されて伝わった様子。ささやかなる目論見こちらは失敗。
(結構みんな、分かれずにパートナーと一緒に探してるのかしら……?)
会話の様子から壁伝いに進みながら、私……アル探す時どうしようかしら……などとのんびり考えている輝。
「あいたっ」
「きゃっ。あ、あら?どなた?知らない声……ぶつかっちゃってごめんなさいね」
「あぁいや、此方こそ」
輝が誰かとぶつかっている部屋の対角線な位置にアルベルトは居た。
(輝は自分の力でやりたがりますからね。効率もありますし敢えて分かれはしましたが……)
何かあった際に自分が駆けつけられなければパートナーとして、見守り続ける者として面目が立たない。
まして、暗視カメラ先のスタッフに頼るつもりなど毛頭ない。
アルベルトは輝の声に反応すれば足早にそちらへと向かった。
輝の背中にかかる長い黒髪の内側に貼った、蛍光シールのほのかな明かりを頼りに。
●いました。
(おかしいわっ結構声はするのに中々ぶつからない……)
滑り込みで入ったから一瞬しか見えなかったけれど、確かにイケメンばかりだった!
連れがいたようにも見えたけれどこの際気にしないっ
ここにウィンクルムたち以外の一般参加者、兄妹で参加した妹の方が焦れったそうに部屋の中央を右往左往していた。
と、そこへトンと背中に誰かがぶつかった軽い感触。
「おっと……すまなかったね。大丈夫かい?」
(キタわ!!イケメンオーラだわ!!)
妹、心の中でガッツポーズ。そして何でもなかったかのように、声のする方へ振り返る。
「大丈夫です。ただちょっと、ヒールだったもので転んでしまって……宜しければ手を貸してもらえます?」
言いながら妹、ゆっくりと今から倒れる。
「それは本当にすまない。ええと……どの辺にいるかな?手は伸ばしたのだが」
がし!
(あぁっ、少し細いけれど温かな大きい掌。そして紳士!逃さないわ!!)
「助かりました、ありがとうございます。その……また転びそうで……よかったらこのまま手を繋いでご一緒にポプリを探してもらえませんか?」
「それは……」
「リっ、リーヴェ……っうわっと!!」
銀雪の慌てた声。そしてガタガタッと何かにぶつかった音。
「銀雪っ?」
リーヴェは音と声のした方へ歩き出そうとする。それを妹はぎゅっと掴んだ手で引き止めた。
「あ、お待ちにな……」
「離してくれたまえ」
先程までとは一温下がったような声色に、思わず手を離す妹。リーヴェは全く意に介さずパートナーの気配を探るように銀雪へと近寄っていく。
「銀雪?そこかな?怪我は?」
「ご、ごめん。大丈夫だよ。その……ちょっと慌てちゃって……」
探るように伸ばされたリーヴェの手が銀雪の髪に触れる。
自分が出来なかったことをあっさりやろうとした一般の女の子の言葉に慌てた、とはさすがに言えず銀雪は口ごもる。
しかし意外とリーヴェには伝わっているのかもしれない。
ふ、と笑む気配と銀雪の腕を取って立たせようとする手の温もり。
照れくさそうに無言で立ち上がった銀雪へリーヴェは優しく声をかける。
「折角だ。このまま一緒に探そうか銀雪」
「……そうだね、リーヴェ」
(……もしかして……え、でも私が間違えるなんて……っ?)
銀雪との声のトーンで、ようやくリーヴェを男性と勘違いしていたことに気付き勝手にショックを受けている妹。
そこへ再び、強めにぶつかってきた感触。
「きゃっ……」
「あ!ぶつかってしまってすみません……」
「……いいえ」
そそくさと通り過ぎていった気配。と、ぶつかった腕へのぽわんとした感触。
妹、そっと己の胸元を手で押さえて。
「……羨ま、じゃない、(胸の小さい)女の敵だわ……」
そんな呟きが聞こえた。
そんな呟きもとっくに聞こえない距離まですでに歩いていたペシェ。
「今の女の子凄くいい匂いでした……きっと美少女ですね」
妹ではないがこちらも特殊オーラを感じ取る特技持ちのよう。何故か嬉しそうにしながらテーブルの下を覗き込み。
「くんくん……多分この裏……ありました。ローズの香りですね」
無事ポプリGET。して、バックで戻ろうとした所で。
どんっ
「おっとぉ。平気かい?」
輝と話し込もうとしていた一般参加者・兄にぶつかったようで、よろめいたところを腕を掴まれ助けられる。
「ひゃっ!?すしゅ、しゅみません!」
先ほどの妹と接触した時とは打って変わり、即座に謝った途端小走りでペシェは逃げ出した。
暗闇の中で走ればすぐに人にぶつかるのも必然で。
「っと!気を付けんかっ……なんだ、ブタもといペシェではないか。
阿呆め。吾輩が精霊で無ければ共に転んでおったぞ」
「あ。フラン……」
たまたまパートナーへと抱きつく体勢でぶつかった様子に、一気に安堵が広がるのを感じる。
「はぁ……暗くても男の人だとやっぱりダメですね……」
「なんだ。吾輩のことか?」
「違います」
すっぱり否定しては、リラックスムードのペシェ。
(吾輩に触られても気にしない……男と思われて無いのか?)
自らに寄りかかる形でバランスを取っているペシェの体をよろめきながらも支えつつ、
複雑そうな表情を浮かべているフランペティルがいた。
「う~ん……今のコも中々魅力的な雰囲気を……」
「はい??」
「あっいや!こっちの話だよ」
前髪をサラッと指で流して誤魔化す美少女大好き、こちら兄。
闇に溶け込み、輝には全くキメ角度が見えていない。残念。
「ぶつかってしまって本当にごめんなさい。それじゃ、私……」
(おっと。こんな大和撫子的オーラのコ、早々お目にかかれないしな。何とか……)
「何かキミからも良い香りがするね。何かつけてる?」
輝をどうにかして引きとめようとする往生際の悪い兄。
態度と声色からの直感とはいえある意味ウィンクルムよりすごいかもしれない。役に立たない方向で。
「輝、何をしているんですか」
「あ、えっ?アル?」
背後から聞こえてきた真っ黒な視界へ首を傾げて不思議そうにする輝。
(よく私がここにいるって……これも、ウィンクルムのき、絆、っていうものなのかしら……)
考えながらどこか恥ずかしさが湧くのを、思考の隅にすぐに追いやって。
「ポプリはもう見つけたんですか?時間、あまりないようですが」
「あ!大変っ!それじゃあ私行きますね!お互い頑張りましょうねっ」
「ぁ……ぁぁうん、頑張ろうね」
(チッ……保護者連れか……)
輝を暗闇へと見送って、仕方なさそうに歩き出そうとした兄、
ひんやりとした空気を感じた気がして金縛りにあったように足が止まる。
「どうやら輝がご面倒おかけしたようで?すいませんでしたね」
「いやうん!気にしないでくれたまえ!!」
とても丁寧な言葉の中にただならぬ圧力と殺気を感じて、一瞬で身を引く。この兄只者じゃないかもしれない。
(なんだろう……暗いから手の感触がよくわかるような、気が)
時折くいくいっと繋がった手を引いて立ち止まる合図をし、匂いがしたあたりにしゃがみ込んだりしてポプリを探しているひろのとルシエロ。
ふとその自分の手を軽々包み込んでいる手を己の両手で握り締めてみる。
(……ルシェの手、大きい)
精霊といっても自分と、ヒトと同じその温かさ。
戦いに興じる手、自分を守ってくれる手。
強く握りこんだり骨ばったところを触ってみたりとおもむろに観察してみる。
(コイツ何してるか解ってるのか?)
やたら触られる片手に、好きにさせているも半ば呆れているルシエロ。
「やっぱり、あたたかい」
無言でしていたかと思えば、当たり前のこと口にするひろのにややガックリ。
「宝探しするぞ」
まだ両手で握りこまれている手を強引に引いて足を前に……どんっ。
「っと。悪いな」
「いや此方こ、……なんだ(男か)」
「あん?」
「っいや何でもないよ!じゃっ」
別に凄みを効かせたわけではないが、ルシエロの無意識の威圧感に気を取り直して美少女捜索をしていた兄、そそくさと退場。
(やっぱこんな暗闇じゃ普通こうなるよな。まぁ……オレが先に立てば、ヒロノにぶつかることは無いだろう)
「ルシェ?どうかした?」
「いや何でもない」
壁に空いている方の手をついて。ポプリはもうすぐそこであった。
●それぞれの香り
「ん。どうやらこのサイドテーブルの下あたりから、匂いがするようだ」
「あっ、リーヴェ。俺が行くよ」
「なに心配ないよ。身長もさほど変わらないし」
さっくり。事実であるが言葉にされるとやはり男としては切ない。
テーブルの下に潜り込んでいく気配に、せめて頭を打ったりしないように、探しやすいようにと軽くテーブルを持ち上げながら銀雪、どこか目が遠く。
「良かった。ジンジャーの香りのが欲しいと思っていたところだったんだ。……おや?柑橘系の匂いもするような……」
ジンジャーのポプリを手にして、テーブル下から這い出ようとしたリーヴェから発せられた言葉に、テーブルを上げたまま一緒にしゃがみ込む銀雪。
「本当だ。……このへん、違う、こっちかな……あ、見つけた」
「おめでとう銀雪」
ポプリ片手に、揃ってサイドテーブル下から出てくれば微笑み合う二人。見えないけれどきっと見えているのだ。
「なあおいペシェ、吾輩の事をくんくんするのはやめんか?毎日朝晩風呂入ってるし今日は香水もつけてないぞ!」
ぶつかって抱きついた時にふと感じたことを確かめようと、テーブル上の花瓶からまさに今
ミントの香りのポプリを見つけて取り出そうとしているフランに、張り付くように匂いを嗅ぎにかかっているペシェ。
フラン、げんなり気味に止めようとするも言葉では止まらなそうだ。
「フランの香りはやはり他の男の人とは違います」
(心地良い……匂い……今日は何もつけてないのに……)
何故だろう。何が他と違うんだろう。くんくんくんくん……
「やーめーろー」
(他の男とは違う……か。悪い気はせん)
男として意識されていないらしい。しかしそれは別の角度から見れば特別な部分があるように感じて。
満更でもない気持ちにフランペティルは微かに口の端を上げる。
が。さすがに限界。
「これでも嗅いで少し落ち着け、馬鹿者!」
「あ。これも良い匂い」
取り出したばかりのミントのポプリをペシェの鼻先に押し付けた。
ペシェ、止まる。
その様子に、今後のためにも常に持ち歩くか悩み始めたフランペティルがいた。
「色んな香りが混ざっていて判りにくいわね……ソファの隙間とかに入ってないかしらね…あ、何かある!」
それは輝が希望していた、ジンジャーのポプリ。
「うん。集中力アップって聞くし、任務の時とかに役に立ちそう!」
さて見つけたとなると一旦アルベルトと合流するべきか。
思案し始めた矢先にその肩へぽんと手が置かれた。
「え!?きゃっ!?」
「私ですよ輝」
「やだ、アルってば黙って肩掴まないで、ビックリするじゃない」
当の本人が現れたことにドキドキいう心臓を押さえながら深呼吸して。
「アルはもう見つけたの?」
「ええ。スタンドの笠の陰にありました。はい、輝」
「……なに?」
「交換です。グレープフルーツの香りなんですが、落ち込んだ心に活気が戻るそうですよ
あの依頼以降、よく考え込んでるようですから。ジンジャーのはこちらへ」
「え……?」
輝は目を丸くする。
どうして分かったのだろう。
神人なしでトランス状態になると聞いた時の、何も出来ない自分を突きつけられた気がしたあの時の任務のこと。
自分の存在を否定された気持ちがじわじわと胸の内をくすぶっていたのを。
もう気にしてないと、人前でのトランスにむしろ怒っているのだとあの後は誤魔化せたと思っていたのに。
ずっと見守っていてくれたのだという実感が一気に湧いて、輝は僅かに目元を潤ませる。
「ありがとう……アル」
「溜め込まないで下さい。隣に、いつも私がいるんですから」
まぁ我慢強く意地っ張りな輝には難しいかもしれないですが、と軽口を付け足したのは
それすらもアルベルトの、押し付けのない純然たる優しさであることを輝も気付いて。
もう……っ、と返しながらもその表情には微笑みが浮かべられていた。
「壁に貼ってるのか。隠す気無いな」
壁伝いに置いていた手に何かが当たり、ルシエロはグレープフルーツの香りのするそれをぺりっと剥がし手の内へ。
「え、ルシェ見つけたの?……時間、後どのくらいかな。一個くらい見つけたい」
さすがに焦り始めたひろの、今度は自分から引っ張るようにルシエロの手を引いて匂いの元を探る。
「椅子、机の後ろ、は……もう誰かが取っちゃったのかな……。あ。植木鉢、かな。後ろに何かある」
座り込んだひろのに高さを合わせつつ、植木鉢を倒れないようこっそり押さえているルシエロの手助けを受け、ひろのもローズのポプリを見つけた。
「ルシェに、似合いそう」
「なんでだ?」
「ルシェ、なんか目立つから。薔薇っぽいと思う」
「ヒロノにしては珍しく悪くはないたとえだな」
ふふん、と笑う声にひろのもどこか嬉しそうな表情になる。
「なら、オマエにはこれだな」
「グレープフルーツ?どうして?」
「なんだっけか?癒し効果、みたいなものがあるのだろう。子供体温は意外と悪くなかったぞ」
ポプリを交換しながら繋がれた手を指すように軽く上げ。
むぅ、と表情を変化させるも、そういえばずっと離されずにいた温もりに何かが頭をよぎった。
淡く蕾を開き、控えめな光を帯びて夜空へ消えていった煌く粉たち。
まさか、だよね。
願いは深い心の内。無意識だったひろのに心当たりはない。それでもまた繋がった大きな手に顔を綻ばせるのを止めることはしなかった。
●
時間終了のメロディが流れる。
急な光に目をやられないようにと、スタッフにより徐々に明るくなる通路を通され。
各々がポプリ片手に雑談する。
「さて、銀雪。私とのデートは楽しめたかい?」
「デ……っ。……うん、楽しかったよ」
直球に照れさせられながらも、付き合ってくれてありがとうと感謝を伝える声。
「ところでペシェよ。ローズの方は、吾輩に譲ってくれんのか?」
「いやです」
まだ押し付けられたミントの香りを堪能しながら、結局ポプリ二つともを大事そうにしまう姿。
「そういえば……アルはどうしてすぐ私を見つけられたの?」
「ほら。ウィンクルム独特のテレパシーというもので」
しれっと答えながらまた背中をぽんと叩くフリをして蛍光シールを取り外す動作。
「……」
「気に入ったのか?」
「うん」
交換したポプリを時々嗅いで、年相応な柔らかい表情をしているのに自然と目を細める仕草。
「……皆出来上がってたのか……っ」
「ざんねん~~っ」
仲睦まじい先行く組を見つめ、悔しがる二つの声が後方で鳴り響いていた。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 蒼色クレヨン |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | なし |
リリース日 | 07月31日 |
出発日 | 08月06日 00:00 |
予定納品日 | 08月16日 |
参加者
- 月野 輝(アルベルト)
- リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
- ひろの(ルシエロ=ザガン)
- ペシェ(フランペティル)
会議室
-
2014/08/04-00:29
輝達とひろの達は久し振り。
ペシェ達ははじめまして。
リーヴェだ。こっちは銀雪。
よろしくな。
…しかし、ポプリか。色々あるようだな。
(銀雪は本当にこういうものが好きだなと感心している) -
2014/08/03-11:03
ひろのさん、ルシエロさんはお久しぶりです。
月野さんとリーヴェさんははじめまして。ペシェと言います。
こちらは…
フラン
「吾輩は深淵なる光と清流を司りしエンドウィザード!フランペティルなるぞ!ふははははは!」
よろしくお願いしますね。
うふふふふ…暗闇で、色んな香りを楽しめるなんて…うふふ… -
2014/08/03-10:03
こんにちは。
ペシェさん・フランペティルさんには初めまして、
ひろのさん・ルシエロさん、リーヴェさん・銀雪さんはお久しぶりです。
月野輝とパートナーのアルベルトです。
今回はよろしくお願いします。
皆さんどんなポプリ見つけるんでしょうね。
ふふ、楽しみです。 -
2014/08/03-08:33
おはようございます。
皆さん、お久しぶり、です。
今回は、よろしくお願いします。(お辞儀