【夏の思い出】神様の御使いへ贈る愛☆(蒼色クレヨン マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

「ウィンクルムって皆様恋人同士なんですよねっ?………え!?違うんですか!??」
 
 南国の海・パシオン・シー。
折角のお休みだもの少しくらい夏を満喫しなきゃ、と遊びにきてから数時間程経った頃だろうか。
あの!ちょっと良いですか!?と、初々しいナンパかと思いそうな声がかかった。
しかし声がした方向を見ればそこに居たのは年の頃40~50代くらいに見える、
こんがり小麦色の肌が健康的だが麦わら帽子もよく似合っている中年男性だった。
 
怪訝そうな視線を受けた中年男性は慌てて自己紹介をしてくる。
パシオン・シーの中でも外れの方にある、ローカルな海岸・カプカプビーチ、そこを地元有志で管理する団体中の代表者の一人だと。
 
「カプカプビーチが一般に開放されてから、大分経ったのでご存知の方もいるとは思いますが。
 あの海岸には『カプカプ』と呼ばれる神様の御使いが、少年の姿で時折現れます。
 
 『カプカプ』を抱きしめると良いことが起こる、そんな一説が地元の間ではずっと有名でして
 開放してから宣伝する際に、我々もしっかりとその説を広めて回ったわけなのですが……」

 中年男性、はきはきと喋っていたのが次第に弱々しくなり、眉はすっかりハの字となる。
 しかし話は途切れることなく続けられた。
 
「広まり過ぎてしまったみたいで……
 その噂目当ての恋人たちがとても増えて……いえ、観光客が増えるのは喜ばしいことなのですが……
 その……『カプカプ』は恋人たち、というか恋人たちが作る雰囲気とか独特の幸せ感とか、
 そういったものに惹かれるようでして……
 恋人たちばかりの観光客が増えて、一時『カプカプ』の目撃証言も一気に増えたのですが……
 
 実はここ数日、めっきり『カプカプ』が姿を見せなくなったんです。
 最後に見たというカップルさんに話を聞いたところでは……
 『カプカプ』と思われる真っ白な肌の少年がすぐ隣に立っていたから、噂を思い出し飛びつくように抱きついたそうなんです。
 そしたら……何だか悲しそうというか寂しそうというか、しょんぼりした空気を纏って逃げていってしまった、と」

 照りつける太陽の下で、中年男性はふぅと息をついて一度持っていた水筒をぐびり。
 
「ぷは……。
 そのカップルさんの話と、我々が毎日カプカプビーチを交代で見回っていたときに感じたことと照らし合わせた、あくまで推測なのですが……
 『カプカプ』は、恋人たちの雰囲気などを堪能するヒマも余裕もなく、姿見せた途端抱きつかれてしまうのが
 不満なのでは、と……」

 ……『カプカプ』よ、良いのか。地元の人間たちに微妙な推測が広まっているようだが……
話を聞いていて、思わずそんな思考したのが顔に出ていたのか、中年男性は慌ててまた口を開く。

「いえおそらく本当なんですって!!
 聖域として地元の人間しか入れなかった時は、希に訪れる恋人たちのそばで静かにその会話に耳を澄ましていたとか
 走り出す恋人たちの後を嬉しそうについてくるとか、そんな証言だったんですよ!
 地元の人間じゃ、おいそれと神様の使いを抱きしめようなんて思わなかったのがほとんどだったので……」
 
 汗を拭いて、今一度こちらをまっすぐ見つめる中年男性。
 
「そこで、ウィンクルムさんたちにお願いがあるんです!……え?だってその手の痣は……そうなんですよねっ?
 人々を守ろうと日夜励んで下さっているアナタ方なら我々も信頼出来ます!

 どうか……『カプカプ』に恋人同士戯れる姿を堪能させてやってくれませんか!?」

 他に違う言い方はなかったのだろうか。
 
「え?恋人、というわけではない?
 ……でもえーと神人?でしたっけ。神人さんと精霊さんとは、絆というもので結ばれているとか……
 あっ、合ってます?ならきっと問題ないですよ!」
 
 真っ白な歯をキラリ☆と光らせて親指を立てる中年男性。

「ほんの2時間程度でいいんです!
 カプカプビーチをウィンクルムさんたちの貸切として、他の一般客は入れないようにしておきますので!
 どうかっ、どうか『カプカプ』に皆様の愛を分け与えてやって下さいませんか……!」
 
 しまいには拝まれ始めてしまった。
 
 カプカプビーチがあるという方向へ視線をやった後、パートナーとを合わせる。
さてどうしたものか……

解説

●カプカプに恋人同士の雰囲気をたっぷり見せつk……、見学してもらおう。
・普段通りでも、頑張って演じるんでも、とにかく「恋人かな」と思ってもらえればOK!
・いちゃいちゃだけが恋人ではないぞよっ。
・喧嘩したりしどろもどろだったり、恋人同士の雰囲気は百人いて百通り☆
 ただ『カプカプ』に、友達……?と思われないよう工夫はしてねっ。
                 <カプカプビーチ管理有志メンバー各々のアドバイス>より
 
●二時間貸切にする間の、本来得る観光収入をちゃっかり要求してきた中年男性。
……お願いしてきた側なのにさすが商売根性旺盛なローカル地の人!
(そういう場所お住まいの皆様ごめんなさい……ッッ)
一組につき<300Jr>

●カプカプビーチ内
・出張屋台(普段は聖域に出店はないが、この時間のみ地元の方々がご協力)
  *イカ焼き 40Jr
  *かき氷 30Jr
  *ジュース 20Jr
  *水風船 10Jr
       ※ゴミは必ずゴミ箱へ、の大きな看板が。

・海岸、砂浜
 静かな澄んだ空気がひっそり人気。緩やかな波が時折キレイな貝殻をつれてくる。

・カプカプロック
 カプカプが住んでいると言われる巨大な岩。
 近くにはいくつもの大小様々な岩が囲んで作った水の溜まり場あり。
 小魚が迷い込んでいるかも。
 足場はでこぼこ、滑ったりもするので要注意。

●戯れる場所は参加者様同士被っても可☆
 その場合、同じ場所で遊ぶウィンクルム様方を絡ませたがるGMがいるので(絶対ではないですが)
 絡みNG・個々の描写でお願いしたい、という場合は「絡×(バツ)」とお手数ですがプランにご明記下さい。
 
 カプカプを抱きしめると良いことがある、という噂試すのもOK。
ですが、できればカプカプが皆様の雰囲気を堪能した後に挑むのが良い、かも?
逃げてしまうか、追いかけっこでカプカプがむしろ楽しむか、は 皆様次第☆

ゲームマスターより

「待てよ~コイツ~~♪」「ウフフ☆捕まえてごらんなさいー♪」

↑幻と言われる海の名物を見たいが為に投下!したわけじゃないですよ。ほんと、ほんとですって。

いつも本当に本当にお世話になっております!
ご拝読いただき誠に恐縮です、蒼色クレヨンでございます。

毎度、本文より解説が長い気がしますぎゃふん。

人助けです!(大義名分と言い張る)めいっぱいほんわか・いちゃらぶして下さい☆

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リゼット(アンリ)

  アンリの台本通りに行動
私の台詞しか書いてないんだけど…
やるしかないわ、仕事だもの

まずイカ焼きを食べさせる
「はい、あ~んっ」
「私も食べるの?じゃあ、あーん」
「やぁん、アンリったらおちゃめなんだからぁ」

うっ吐き気が…

波打ち際を手を繋いで歩きながら
「ねぇアンリぃ、私の事ぉ…好き?」
ハァ?何言わせんのバッカじゃないの!いえバカだったわね!
叫ぶな!
ってつい反射的にビンタが…台本に戻らなきゃ
「私もだぁい好きっ。好き好きっ!」
好き1回ごとにビンタ1回よ!

カプカプを見つけたら
抱きしめさせてくれるかお願いしてみる
逃げられちゃったら少し追いかけてみる
今日は散々だったから
ひとつくらいいいことあってもいいじゃない!


油屋。(サマエル)
  緊張して精霊を見れず、覗きこまれて顔真っ赤
アタシ、男の人と手も繋いだことないし
こういうのよく分からなくて……

サマエルの手 大きいな 
恥ずかしいのでやっぱり直視出来ない

屋台の方をじぃーっと見て あ、バレた?
はい、あーん 美味しい?
アタシにもちょうだい! あーん
あ、ごめんちょっと落としちゃった
んーやっぱ夏はこれだよね~ 
ちょ、何故自分で自分を殴ってるの!?

カプカプ探してみよっか、幸せを呼ぶって噂だし
見つけたら二人で捕まえてみたいよね!

わー!やっぱ綺麗だな~海 え?な、何!?
再び顔真っ赤でパニック
で、でも……やっぱり嫌じゃない 
サマエルと居るとすごく安心する……変なの


水着着用

※アドリブ可



リヴィエラ(ロジェ)
  リヴィエラ:
カプカプ様の為に、愛を贈るお手伝いをしたい…私は『カプカプロック』へ向かいますね。
…きゃっ!?(カプカプロックを散策中、足を滑らせ全身ずぶ濡れ。脚には岩で出来た切り傷)
わ、私なら大丈夫です…ええと、この場合は水で消毒を…(スキル『医療』使用)
きゃっ!? ロジェ様、あ、あの、その…っ(傷口を舐められて真っ赤に)
(姫抱きされてロジェの胸にぎゅっと寄り添う)
ごめんなさい、私、…あなたがいないと何もできない。
だからこそ出来る事を増やしたい。あなたの隣に立てるように凛としていたい。
わ、私は…あなたの事が…っ

(だからお願い…傍にいて下さい。他の精霊様が現れるまでだなんて言わないで…)


ミオン・キャロル(アルヴィン・ブラッドロー)
  赤い水着、日差し避けのパーカ、サンダル

恋人…どうしようどうしよう、仲良くなるチャンス!?
精霊に見えない所であわあわしつつ、くるっと振り向き
「強引な人ね…仕方ないから協力するわよ」

え、腕組むの!?
つめたっ…何するのよっ!
真剣にやり返す

喉が渇いたわ、買ってきてくれるの?じゃ、待ってるわね

…どうしてストローが2本なのかしら(固まりつつ
わ、わかってるわよ!顔が近い…。

目線に合わせてちょこんと座りながら
カプカプ…様?
『カプカプ様に恋人同士が戯れる姿を見てもらうとと幸せになる』って噂を広めなおしてもらったらいいのにね

と、友達じゃないわよ!
ねぇアルヴィン?と腕を組みつつ、接近しすぎて慌てて離れてみたり



ライラ・フレニア(クラエス・エストリッジ)
  服装:白いワンピース

ウィンクルムってこんな事もするんだね…
は、恥ずかしいけど、引き受けたからには頑張る!
ぎくしゃくしててもおかしいよね
あくまで自然でいられるようにできればいいな

でも、恋人といっても何をすればいいんだろう
とりあえず何か食べておく?
私はかき氷にするね
うん、冷たくて美味しい
クラエスも一口食べる?

た、確かに恋人らしくはあるけど…
そうだね、仕事だし…!がんばる
はい、あ、あーん
ああ、恥ずかしかった…えっ、私も!?
お芝居だと分かってても恥ずかしい、恥ずかしいよ!

カプカプを抱きしめたらいい事が起こるのなら試してみたいな
ダメって…どうして?
な、何言ってるの!もう、ばか!
どこまでが演技なのかな…


●顔合わせ

「おーい!ウィンクルムさんたち捕まえて、じゃねーや、見つけてきたぞー!協力してくれるってよ!」

 中年男性の後についてカプカプビーチへとやってきた5組のウィンクルムたち。
顔見知り同士は互いにヒラヒラと手を振り合ったり、恋人設定にすでにどぎまぎしていたり。
ビーチでは管理有志団体のメンバー数名が嬉しそうに出迎えてくれた。
屋台にてカプカプが現れるかどうか、どんな反応だったか等、見守りつつ時間終了後に報告する予定だと話をされる。

「ア、アタシ、男の人と手も繋いだことなくて……こ、こういうのよく分からなくて……」
 油屋。が水着の肩紐を落ち着かなそうに弄りながら呟く。
「フフ、心配するな。悪いようにはしない」
 彼女の隣りに居たサマエルはポニーテールにした髪をさらりと払い、余裕の笑みを浮かべながらも
いつもの態度とうって変わった雰囲気になっている己の神人の顔を、ひょいと覗き込んでみる。
赤い。耳まで真っ赤だ。
「ゴリラの次はタコか。芸達者なヤツめ」
「だっ、そっ、違……!!」
 緊張しっぱなしの口からは噛み文句しか放たれなかったようだ。
「ウィンクルムってこんなこともするんだね……。は、恥ずかしいけど、引き受けたからには頑張るっ」
「そうそう、仕事だし何があっても仕方ないよね」
 素直な気合の台詞の上に不穏な空気をはらんだ台詞が被る。
ライラ・フレニアは え、とばかりにクラエス・エストリッジに視線をやった。
「いやー今日は楽しみだなぁ」
 そこにはあまりお屋敷でも見ることのない、全開に爽やかな笑顔のクラエスが居た。
ライラ、その笑顔を見てほんのりと嬉しさを感じると同時に、先程までと違う緊張感も感じずにはいられなかった。
「リズにイチャつけなんつったって無理に決まってんだから、俺様がばっちりシナリオを用意してやろう」
「ちょっとアンリ。何書き始めてるの?」
「台本!最高にときめく夏をお届けしてやるぜ!」
 いつの間にやら紙とペンを借りてきたアンリは物凄い早さで文字を書きなぐっている。
任せて大丈夫なのかしら……と不安な顔を隠さないリゼット。しかし一理あることも認め、止めることはしなかった。
「わぁ!アンリ様すごいです!な、なる程、台本……」
「待てリヴィー。君の場合棒読みになるだけだ。自然体でいい」
 アンリの横で台本に瞳を輝かせたリヴィエラ。
に気づき、その思考の先を読んで頭を抱えそうに突っ込んだロジェの姿が。
「そ、そんなことないですっ。わ、私だって演技くらい……!」
 否定しようとするリヴィエラに、いや絶対だ、とロジェはキッパリ容赦なく言い放つのだった。
「どうしよう、どうしよう……仲良くなるチャンス!?」
 パートナーに背中を向けた所でミオン・キャロルは内心バクバクな様子。
「ミオン?どうかしたか?」
 中々こちらを向かないミオンに、具合でも悪いのかとアルヴィン・ブラッドローは静かに声をかける。
途端、スイッチでも入ったようにシャキックルリ!とキビキビした動きで振り返ったミオン。
「な、何でもないわ!……全く、あの男性も強引な人ね……仕方ないから協力するわよ」
 心の内を誤魔化すのに必死なミオン。
そんな不自然な態度に微塵も気付くことなく、大丈夫そうなその体にそれでも念のため、と日焼け避けのパーカーをかけるアルヴィン。
 
 ウィンクルムたちの雑談を間近でしみじみと見ていた有志メンバーの一人が素朴な疑問を発する。
「えーと。ウィンクルムの皆さん、は、全員本物の恋人さん同士ですかね?」

「 ち が い ま す 」

 さて何人がハモったでしょう。

●パート1

 サマエルの手、大っきいな……
油屋。はまだ顔を上げられず、掴まれたその手をじっと見つめて思う。
恥ずかしい、暴れ出したい、くすぐったい、そんな気持ちが押し寄せるもののこの温もりは心地いい気もする。
もうちょっと、あとちょっと、とどこかで思う内にどんどん繋がれたままの時間は長くなって。
そんな油屋。の鼻に良い匂いが掠め、視線は繋がれた手から移動した。

緊張からか中々その場を動かなかった油屋。を引っ張るように移動させながら、サマエルは恋人作戦のことも考えそっと油屋。の手を掴んでみた。
一瞬で振り払われることも想定していたのが、大人しく繋がれたままなその横顔をまじまじ。無意識にホッと息が漏れる。
……何を安心したのだ俺は……
振り払うように動かした視界に、油屋。の見つめる物体が映った。屋台だ。
「また食物か」
「あ、バレた?」
「まぁ貴様らしいが」
「だって夏に海っていったらやっぱアレだろっ」
 サマエルの言葉を了承と受け取った油屋。は、俯いていた雰囲気もどこへやら、繋いだ手をグイグイ引っ張るように屋台へと向かう。
ちょっと待ってて!と途中で離された手を一度見つめてから、早くも屋台で何か注文している油屋。の背中を眺めるサマエル。
すぐにその背中は反転した。
「へっへー!かき氷!結構量あるし一緒に食べようぜっ」
「それはいいが、スプーンが一つしか」
「はい、あーん」
 ……素でこうきたか。
少しでも恋人ぶち壊しな態度をしようものならそれなりに考えていたサマエルであったが、
この問題ナシな行動に面白そうに笑みを作り。
ぱくり。シャリショリ
「美味し?」
(……いかん。可愛く見えてしまった……水着補正スゲー)
嬉しそうに聞いてくる油屋。の姿に目眩がしたらしい。サマエル、かき氷のせいにして額を小突く、小突く。
「あたしにもちょうだい!あーん」
「タコって氷食うのだな」
 言いながらも仕方なさそうにその口へと氷を運ぶ。
待ちきれなかったらしい油屋。、自ら食らいつく。
「あ、ごめん。ちょっと落としちゃった」
 食らいついた勢いでスプーンの中の氷が半分程、油屋。のたゆたう胸の上に。
1名の視線がそこ一点に集まる。
白い肌、煌く氷、そこから谷間へと溶けて流れる……、ぼぐふっ!
「ええ!?ちょ、何故自分で自分殴ってるの!?」
「気にするな。暑さで頭が少々やられただけだ」
 頬をさすりながらもしれっと答えるサマエル。心中「消え失せろ男のサガ」。

 屋台から海岸へと移動してきた二人。
「わー!やっぱキレイだなー、海!」
 足元にさざめく波を受けながら伸びっと腕を広げ。
すっかりリラックスした油屋。のその体に、しかして再び緊張いざなう腕が回された。
「えっ、な、何!?」
 抱かれるように置かれた手に動揺する油屋。へ口の端を上げながら、サマエルは普通に答える。
「こうしていた方が寄ってくるんじゃないか?」
「あっ、そ、そうかカプカプ様っ。……二人で捕まえてみたいね!」
(ちょろいにも程があるな。今までよく狼どもから無事だったな)
固くなったままそれでも笑顔を向けられ。触れたままサマエルは思う。
腕からか、それともサマエル自身からか、じわじわと自分も強ばっていくのが感じられた。
(何故……俺まで緊張しているんだ……女なんざこれまで何人も相手してきたはずなのに……)
何故自分は、目の前の女の今までを、無事を、気にしているのか。
否。自分がいなければ無事では無かったかもしれないことはあったか。
男達に囲まれて泣きじゃくった顔。自分の名を必死に呼んだ声。
あの時は面倒をかける相手に苛立っただけのはずだ。なのに何故今無駄に思い出して、またこうもかき乱されそうになるのか。
油屋。の肩に置かれた腕に、僅かに力がこもった。
そんなサマエルに不思議そうな顔を向けながら、油屋。も思う。
(なんでだろう……サマエルといると安心する……変なの)
そんな二人が重なって伸びる影の先に、一人の少年が嬉しそうな顔でひっそりと立っていたのだった。
 
●パート2

 真っ白な肌をした少年は久しぶりに満足そうな笑顔になる。そして駆け出す。
赤い水着、サーフパンツ姿の腕を組んだカップルが来たのに気付き、木陰の下へ身を隠す。
そっと顔を覗かせ新たに来た二人をしばし観察するために。
 
「そ、それでアルヴィン、この後どうするの?」
 腕を組む、と言われた時にすでにいっぱいいっぱいだったミオンは、恋人らしい振る舞いが中々浮かんでこない。
しばし考えるように顎に手をやりながら、アルヴィンは波の音に海の方を向いた。
「そうだな。折角だし、海へ行こうぜ」
「え?ちょ、ちょっとアルヴィンっ?」
 言うが早いか、思わず組んでいた手を解いたミオンを置いて先にバシャバシャと海の中へ入るアルヴィン。
(これが海、か。……冷たくて気持ちいいな)
森育ちであるアルヴィンにとって、川に入ったことはあったが海は聞き知っていただけで初めての体験だった。
膝覆う位置まで歩いたところで嬉しそうな笑みを浮かべる。
そんな笑顔を波打ち際で見つめるミオン。
「……置いてっちゃうくせに、狡い顔……」
 潮風になびく髪を軽く抑えながら、諦めたように苦笑いを作り足元の貝殻に目をやったミオンめがけ……
「……っ!?つめたっ!何するのよ!」
 アルヴィンが、してやったり、といった笑顔を向けていた。
「ちょ、パーカーまで濡らすことないじゃない……!」
 ミオン、ぱさりとパーカーを脱いで干すように置くと、ざばざば海へと歩みを進め。
「お返し!!」
 両手を使って思い切りアルヴィンに向かって水を放つ。
予想以上に勢いがあったらしい放射に、避ける間もなく「ぶっ」とアルヴィンの顔面へ。
その後はカプカプ様大喜びな、完全に仲の良いカップルの水の掛け合い状態と化した。
本人たちはかなり真剣だったようだが。
「ハァッ……ちょ、ちょっとタイム。喉渇いちゃったわ……」
 肩で息をしながら、そういえば何してるのかしら私……と少々我に返り始めたミオンが呟いた。
濡れた髪をかきあげながら、海からざばざばと出るアルヴィン。屋台の方へ歩き出しながら振り返って一言。
「待ってな」
「え?買ってきてくれるの?」
 頷く姿を確認すれば、じゃあ待ってるわねと自然と笑顔で返すミオン。
背中を見送ってから一つ息が漏れた。
(折角のチャンスなのに……もっと素直になれないのかしら私……)
十分素直な笑顔を繰り出していたが、日頃の態度に自覚のあるミオン本人は無意識だったようだ。
砂浜に座ったところでアルヴィンが大きめのグラスに入ったジュースを片手に戻ってきた。
「ありが、……どうしてストローが二つあるのかしら」
 どこから見てもトロピカルなジュースに、ピンクと青のストローが向かい合って入っている。
「いや……ベタな店主が……」
 買った際に、無言で親指を立てて良い笑顔を向けてきた店主を思い出しながら、それでもミオンの横に座ってそれを差し出すアルヴィン。
「…………」
「恋人、だろ?」
「わ、分かってるわよ!っていうかアルヴィンなんでそんなに平気そうなの!?」
 思わず悔しそうに叫ぶミオン。の背後、いつの間にやら間近にカプカプ少年立っていた。
「お」
「えっ?あ!……と、友達、じゃないわよっ?」
 ミオン、突然の出現に動揺し過ぎて墓穴的な発言つるり。いやもはやカプカプ様は疑ってもいなかったわけだが。
咄嗟に、そのミオンの頭を己の胸へと引き寄せるように抱き締めたアルヴィン。
「!??」
 アルヴィンなりに誤魔化そうとしたその行動はミオンにとって完全に不意打ちで。
パニック過ぎて固まってしまったようだ。
カプカプ少年、にこり。アルヴィン、ニコッ。
屈託のない笑顔の会話で、ミオンを置いてしっかりその場は収まっていたのだった。

●パート3

「きゃっ!?」
「リヴィー!?」
 カプカプロックへ行きたいと言うリヴィエラの希望の下、足場を確認しながら岩場を歩いていたロジェの耳に
どことなく予想していた事態がやはり起きたのが確認された。
「おい大丈夫かっ?」
「だ、大丈夫です」
 岩の大きな窪みの中、水の溜まり場に完全につかってビッショリな状態でリヴィエラはそれでも笑顔でロジェを振り返る。
「えぇと……これは、水で消毒を……」
「!?おい切ってるじゃないか!バカっ、ここは海水だっそれで消毒するやつがあるか!」
 医療の知識のあるリヴィエラは、己の切り傷のついた足に気付き冷静に対処しようと。……したが、まだ若干斜めった知識をロジェはすぐさま止めに入った。素早い。慣れている。
すかさずリヴィエラを水のない高めの岩に座らせ。
そして。
「きゃっ!?ロ、ロジェ様!?あ、あのっ、その……っ」
 跪いたかと思えば、リヴィエラの切り傷へと口を付けた。
リヴィエラが足をバタつかせようとするのも予測済でしっかり抑えにかかっている。
「……ん。小石などは入っていないようだ。後はどこか、ちゃんとした場所で……」
 淡々と言われても、もはや顔も上げられず恥ずかしさのあまりプルプル震えているリヴィエラ。
 住処と言われる岩場の奥から、いつの間にか微笑ましそうな視線が飛んでいるのに気付くことのない二人。
しかし、ロジェがこの辺りに医務室はあるのだろうかと立ち上がっては困っているように見えた顔に、おずおずと少年が姿を見せた。
「え?……もしかして、カプカプ様、ですか……?」
 目を丸くしたリヴィエラの問いに答える代わりにニコッと笑顔だけ向け。
少年はロジェの横を軽やかな足取りで通り過ぎてから、くるっと振り返って待つ。
「……案内してくれるのか?すまない」
 同じように察して岩から自力で降りようとするリヴィエラを、すかさず横抱きに抱え上げるロジェ。
驚くもこれ以上手を煩わせたくない一心から、その胸にぎゅっと縋るように大人しくするリヴィエラ。
カプカプの案内ですぐ近くの、休憩所兼医務室小屋へと足を踏み入れれば、去っていく小さな背中に一度お辞儀をし。
ロジェは手当道具を探す為椅子へとリヴィエラを下ろした。
「……ロジェ様。ごめんなさい……私、あなたがいないと何も出来ない」
「そうだな。君のドジに付き合えるのは俺だけだ」
 リヴィエラに背中を向けたままハッキリと応えられた言葉に、リヴィエラは少し意外そうにその瞳にロジェを映す。
「でも、だからこそ出来ることを増やしたい。あなたの隣に立てるように、凛としていたい」
 響く言の葉。受け止めながらそれには答えることなくリヴィエラの足に消毒を施しながら。
(俺の思いを分かっていて……それでもまだお前は……)
頭の中に響く涼やかな風鈴の音が過る。互いの願いを知った時のあの音色が。
何だろうかこの気持ちは……。こいつを、他の男に渡したくないと……
揺れる音色。それを口にすることは無かったが、ロジェの中で確かに一つの思いが芽吹いた。

●パート4

「アンリ、私の台詞しか書いてないんだけど……」
「だって俺アドリブでいけるし☆」
 当然とばかりに瞳を輝かせるアンリにリゼットは溜息をつくも、
まぁ仕事だしと台本を広げたまま二人は「夏のときめき作戦」を開始するべく屋台へと足を向けた。
「はい、あ~ん」
「んー!うめぇ!リズも食ってみろよ。あーん」
「私も食べるの?じゃぁ、あーん。……おいしい!」
「かかったなぁ?イカんせつキッス。なんつってー!」
 ふ、クールだぜ。
イカ焼き一個を仲良く食べさせ合う二人。傍目にはとてもナチュラルである。
しかして、決め台詞だったらしいアンリのドヤ顔に、あくまで笑顔のままリゼット並びに屋台メンバーはとても残念な気持ちだったとか。
イカ焼きを食した後は、手を繋いで波打ち際までやってくると、台本通り律儀にその台詞をリゼットは口にする。
「ねぇアンリぃ。私の事ぉ……好き?」
………
「ああっ、好きだぞぉ。大好きだ。好きだぁぁリズぅぅぅ!!」
「何言わせんのバッカじゃないの!!いえバカだったわねっ叫ぶな……!!」
 耐え切れなかった模様。華麗なビンタが海へ叫んでいたアンリの頬へと炸裂した。
「だぁ!おいリズっ、ここ一番NG出しちゃいけない場面だぞ!」
「ああ……つい手が……」
 そして二人は視線にハッと振り返る。
カプカプ少年、眉がハの字である。
「私もだぁい好き!好き好きっ!」
 リゼット、必死。
(好き一回ごとにビンタ1回よ!)
アンリの尻尾の毛が何か察知したのか、ぞわっと毛羽立った。
笑顔に戻ったカプカプ少年を見て一安心したリゼットは、そっと片膝をつき控えめに両手を差し出して尋ねてみる。
「えーと、カプカプ様?よね?……抱き締めても、いいかしら?」
 実は食べさせ合いから見ていたカプカプ様、大分ご満足していたようで、一度コックリ頷いた。
ホッとしてから優しくカプカプ少年を抱き締めるリゼット。の、背中からリゼットごとそれに便乗するアンリ。
「アンリ!?わ、私も挟まってるわよっ!?」
「一石二鳥だろ。カプカプも抱き締められて、俺とリゼットのときめきオーラを間近でカプカプも見られて」
 そんなバカなことが、と言おうとしたリゼットの視界には二人に仲良く抱き締められて大変嬉しそうなカプカプ様がいた。
うぅ……とさすがに少し顔を赤くしたリゼットの耳に、アンリの言葉が続く。
「今日は可愛かったぜ、お姫様」
 こ……これが良いことだっていうなら、断じて認めないから!カプカプ様っ!
心の中で拒否るも、カプカプを抱き締めるリゼットの両手はあくまでずっと優しかった。
 
●パート5

「あ。カプカプ様抱き締めてる!……いいなぁ。良い事が起こるなら、私も試してみたいな……」
「ダメ」
 屋台から先に海辺へ向かったリゼットたちがカプカプ様と戯れているのを見つけ、ライラは率直に思いを口にした。
が、クラエスの方から即答が。
「だ、ダメってどうして?」
「僕でさえまだ抱きつかれたことないのに、神様とはいえ先越されるは断固拒否」
「なっ、何言ってるの!もう、ばか!」
「あ。僕に抱きついてからなら、カプカプに抱きついてもいいよ」
 真剣な顔で返してくるクラエスからそっぽを向いて。それでも視線をちらり。
(……どこまでが演技、なのかな……)
まだまだたどたどしいライラに比べ、いつも通りにむしろ輪をかけて見えるクラエスにずっと動揺しきりで。
「ほら。食べないと溶けちゃうよ?」
「あ!そ、そうねっ。……うん!冷たくて美味しい!クラエスも、一口食べる?」
 ライラは、レモン味のカキ氷を器ごと差し出そうとして、次に発せられたクラエスの言葉にその動きがピタっと止まる。
「それじゃ、食べさせてくれる?」
「うっ……」
「(ライラ、仕事仕事)」
「(そ、そうよね!頑張る……!)」
 小声で言われたことに、勇気を振り絞るライラ。見えないところでにやりとしたクラエス。
ここもおいしいなぁ☆と屋台メンバーが温かく見守る中、どうにかライラは「あーん」を決行した。
「あぁ、恥ずかしかった……」
「じゃ僕のもあげるね。はい、口開けてー」
「え!?わ、私も……!?」
 あたふたするライラの表情を、クラエスは見逃すまいとずっと見つめている。
(本当にイイ反応するなぁ。見てて飽きない)
頬を赤く染めたまま、仕事!仕事!と唱えながら開いたライラの口へ、メロン味のかき氷を入れながら心から楽しそうなクラエス。
「メイド服も似合ってるけど。うん、今日のその真っ白なワンピース可愛いよ」
「あ、ありがとうクラエス……」
 いい具合に茹だったライラに微笑みを向けながら。
(お屋敷じゃ、こんなふうにライラと接すること出来ないし、ね)
今日のこの日は、二人の胸にしっかりと刻まれたのだった。
それは、二人が座るベンチのすぐ後ろでチョコンと座って見ていたカプカプ様も同じことだろう。
 

 
「皆様本当にありがとうございました!あんなに嬉しそうなカプカプ様、久しぶりに見られました」

有志メンバーから一様に頭を下げられ、ホッとする4組のウィンクルムたち。
「あら。そういえばリヴィエラさんたちは……」
「なに。きっとどこかでまだラブラブしてるんですよ★」
「そっか。らぶらぶ、かぁ……」
「らぶらぶね」

「ちち違うんですーーーー!!!」

 ロジェに支えられながら遅れてやってきたリヴィエラ。
思わぬ言葉が連発されているのが聞こえてしまい、大慌てで合流してきたとか。
 
一行のそれぞれの絆を、その姿が見えなくなるまで最後まで見送っている笑顔のカプカプ少年の姿があったのだった。



依頼結果:成功
MVP
名前:リゼット
呼び名:リズ
  名前:アンリ
呼び名:アンリ

 

名前:ミオン・キャロル
呼び名:ミオン
  名前:アルヴィン・ブラッドロー
呼び名:アルヴィン

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 蒼色クレヨン
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月15日
出発日 07月21日 00:00
予定納品日 07月31日

参加者

会議室

  • [5]ライラ・フレニア

    2014/07/19-00:02 

    こんばんは、ライラ・フレニアです。
    パートナーはクラエス様です。
    よろしくお願いしますね。

    ウィンクルムってこんな仕事もしなくてはいけないんですね…。
    当初想像していたものとはだいぶ違う気がしますが精一杯が、がんばってきます!

    今のところは海岸か屋台で考えています。

  • [4]リゼット

    2014/07/18-23:07 

    リゼットよ。連れはアンリ。よろしくお願いするわね。
    し、仕事はきちんとこなすのが私のポリシーだから。
    それ以上でもそれ以下でもないわ。そうよ、そうよ。

  • [3]ミオン・キャロル

    2014/07/18-11:01 

    恋人のふり…逆にこれはチャンス…!?(ぐっと拳を握りしめ)

    あ、失礼(慌てつつ振り返りながら)
    ミオン・キャロルよ。
    皆さん、よろしくお願いします(にっこり)

    海辺ぶらぶらして疲れた休憩かな…と思うわ。

  • [2]油屋。

    2014/07/18-10:07 


    油屋。:

    恋人……?こ、こいb……!! あうあうあう(故障)


    サマエル:

    リア充爆発しろ!
    あ、皆様こんにちは~サマエルと申します。隣に居る女は油屋といいます。
    私共は海岸や砂浜の近辺に居る予定です。
    うふふ、カプカプに何を見せてやりましょうか……今から楽しみですね♡

  • [1]リヴィエラ

    2014/07/18-07:40 

    リヴィエラ:
    こんにちは。私はリヴィエラと申します。
    カプカプ様に愛を贈るという事で、私は『カプカプロック』を散策してみたいと
    思っています。皆さま宜しくお願い致します(微笑んでお辞儀)

    ロジェ:
    また君は…足を滑らせても知らないからな(頭を抱え)
    おっと、俺はこいつのパートナーのロジェと言う。どうぞ宜しくな。


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