【夏の思い出】雨上がり、虹を探して(加持 桜子 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

タブロス市から1日程かけて移動する南国のパシオン・シー、そこは美しい海と景色が広がる人気のリゾート地だ。そのパシオン・シーでは様々な伝説や、人々の口から口へ囁かれ信じられている話がいくつかある。
 たまたま遊びに来ていたウィンクルム達がそのうちのひとつを聞いたのは偶然だったのだろうか。

「このパシオン・シーではね、夏の間に時折物凄いスコールが降るの!」
「バケツをひっくり返したようなって形容詞がピッタリってくらいのスコールだぜ」
「どの時間に降るかは決まってないが、大抵は夕方辺りだな」
「スコールにあたるとシャワーでも浴びたのかってくらいびしょ濡れになるわよ、もしあなたが水着じゃないならどこかに避難するのをお勧めするわね」

 パシオン・シーの人々は口々にスコールの凄さを教えてくれる。話を聞いていると、どこかスコールを楽しみにしているようにも思えた。
 そうして、スコールについて話し終えると、その後は一様に笑顔でこう言うのだ。

「スコールの後に出る虹は、本当に見事だよ」
「それにスコールの後に好きな人や大事な人と虹を見る事ができたら、幸せになれるって言い伝えがあるの」
「他にも、虹に願い事をしたら叶うとも言われているのよ」

 その話を聞いた者が、滞在中に虹を見れたら……そう思うのも無理はない。
 毎日降るわけでもないので、滞在中に見れた観光客はラッキーだとパシオン・シーの人々は笑った。
 
 パシオン・シーのスコールとその後に見れる虹……自分も体験する事ができるだろうか。そう思いながらウィンクルム達は空を見上げた。

解説

●参加費
旅費等含めまして500Jrかかります。

●スコールについて
参加が確定された方は確実にスコールに見舞われます、びしょ濡れになったり、雨宿りをしたり、水着であればスコールを楽しむのもいいかもしれません(水着でなくても楽しいかもしれませんね)

●虹について
スコールの後に空を見上げれば必ず見れます。
パートナーさんに聞こえないようにこっそり心の中で願い事を掛けてもいいですし、口に出してもいいとおもいます。

●スコールが降る時間帯にキャラクターさんがいる場所について
パシオン・シーのお好きな場所に居て頂いて構いません。
お買い物中であればコーラルベイがお勧めですし、海で遊んでいる最中だったらゴールドビーチ等、散歩中であればムーングロウ「月明かりの散歩道」がいいでしょう。
ホテルでゆっくりしている時に降ってくるかもしれませんし、皆様がバカンスを楽しんでいる最中にスコールは突然やってくるものですから。
ただ、エピソードにおいて余りにそぐわない場所であった場合はマスタリングが掛かるかもしれませんのでご了承下さいませ。
パシオン・シーの詳しいロケーションについては
https://lovetimate.com/campaign/vacation.html
こちらを参照されるとわかりやすいと思います。

●スタートについて
スコールが降りはじめた所からとなります。

●その他
パシオン・シーでの服装などありましたらご記入頂けますと参考にさせて頂きます。
お任せも可能ですが、NG等ある場合は記載して下さい。


ゲームマスターより

はじめまして、またはこんにちは。加持桜子です。
二本目は男性用のエピソードとなります。

南国の海、夏の思い出!という事でスコールに打たれたり雨宿りしたり……その後虹を見て何を思い、感じるのかは皆様の自由です。
ご参加、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

栗花落 雨佳(アルヴァード=ヴィスナー)

  時間
夕方
場所
カプカプビーチ(人が少ないようであればゴールドビーチでも可)
服装
ネイビーのクロップドパンツに薄手の長袖白シャツ(シンプル)

・散歩
海に興味津津
サンダルを脱いで波打ち際を歩いている

湖は見たことあるけど海は初めてだな…スケッチブックでも持ってくればよかった
冷たくて気持ちいいから君もやると良いのに

・海に足首が浸かる位の所を歩いているとスコールが降り出す
空を見上げて雨に打たれていると手を引かれて連行される

何だか楽しくてくすくす笑っていると虹が出る

…そう言えば、スコールの後の虹は願い事を叶えてくれるらしいよ
…何かお願いする?
こうやって穏やかな日が続くと良いね

・手をつないで

…君と見られて良かった



セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  黒の水着と水色のパーカーをきて到着
(…本物の海)
(スコールに唖然)本当に突然なんだね


犬みたいだ
僕は…波打ち際を歩きたいな。カキ氷食べて城も作りたい
(泳いで、貝殻に耳当てて生き物も観察して。今までやれなかった事を全部)

(赤面で小突き)…うるさい。初めてだから浸ってもいいだろ
なんでもない!

くしゅっ …夏だし乾くんじゃない?あ、タオルあった(タイガに投げ)
次貸してくれれば平気だって。ふかふかタオル好きだろ

わっ…ありがと(包まれ

ほら、お返し

くる機会なんて無いと思ってた
元気になってもこんな年で、一人で海行く気もなくて(小声)タイガのおかげ(タオルで誤魔化し)

期待しとく(微笑
あ…虹(今が続きますように



俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
  コーラルベイで土産の買い物中、突然のスコール
気がつくと手を引かれてある店の軒先へ避難していた

ネカもだいぶ濡れてるじゃねえか
それにこんな時まで戦闘の話って
ハンカチじゃ無理か…お、俺は平気…っくしょい!

上着持ってくるんだったな…この店にも土産用のだけど置いてるし買ってやるか
それにネカの奴、白い服だったから透けてるし
何か適当に…このコーラルピンクのシャツだな
ん?何だ、お前も買ったのか…俺に?
はは、お互い同じこと考えてたのか
さんきゅーな

シャツを買って着替えてたら雨が上がったみたいだ
虹を見ながら考える
ネカのことをもっと知りたい、これからも相棒としてやっていくためにも
まずは好きなジェラートの種類からかな



市原 明良(シンディ・フィラメント)
  スコールがこんなに激しいものだったとはな…。
南国にくることなんてなかったから知らなかったし。
・・・シンは知ってたみたいだけどな!
「スコールだぜ~」とかのんきにしやがって。風邪でも引いたらどうすんだ!
お前がじゃない・・・僕がだ!
いいたかないが僕は昔から病弱だったんだぞ!
まぁ、そのせいでろくに外にも出れなかったわけだが…。

だから海が見れるのを楽しみにしてたんだ。
好きなものを自分で選んで買うってのもすげー楽しい。
なのにこの雨。
・・・でも嫌いじゃねぇよ。
こういうのも僕の見てこれなかったいろんなもんの一つだからな。
雨やんだらホテルに帰らないとだな…お前しっぽもびちょびちょだし。
風邪ひかれたらやだしな。


ウィーテス=アカーテース(パラサ=パック)
  ○服装
Tシャツ+ズボン+靴

○パシオン・シーでの現在地
コーラルベイ

○行動
行きたい所があるとパラサは言っていたけれど
どこへ行くんだろう?

はぐれないように気を付けて土産物屋を眺めて歩きます
食べ物の香りが漂ってきたら「お腹がすかないかい?」と聞いてみたり
雨が降ってきたら適当な屋根下で上がるまで雨宿り

スコールの後の虹に願い事?
それって今出ている虹の事かい?

ど、どど、どうしよう、願い事なんてそんなにすぐには……あ、そうだ
「美味しいワインが飲みたい」って願ってみよう
ちょうど目の前が酒場だったから、つい……

何だか笑われちゃったけど
パラサが楽しそうだから良いか
パラサの願い事はやっぱり一攫千金絡みなんだろうなぁ


●スコールを待ちわびて

  黒の水着と水色のパーカーを着たセラフィム・ロイスは赤い水着にタンクトップを着用した火山 タイガとゴールド・ビーチへ来ていた。
 生まれて初めて本物の海を目の前にし、セラフィムはただその広さと美しさに目を輝かせている。一方タイガはそんなセラフィムを見て、パシオン・シーを訪れて良かったと思っていた。

「海って本当にどこまでも広がっているんだね」
「そうだな、青い海、青い空……って、あっちの方えらく雲が厚くなってんな」
「本当だ……それにすごい勢いでこっちに雲が来ているような」

 ゴロロロロ……遠くで雷が鳴る。先程まで晴れていたのに、辺りは薄暗くなっていてタイガは一雨くるなと空を見上げた。

「あ、雨が」
「セラ、こっちだ! びしょ濡れになるぞ!」

 星の着いたボードを抱え、こっちだとセラフィムを誘導しながら走る。走っている間にも、雨はポツリと当たったかと思えばまるでシャワーでも浴びているかのように肌を打ち付けた。
 木製の簡易休憩所へ辿り着くと、タイガが身震いして水滴を跳ね飛ばす。

「ふー、気持ちわりっ」
「犬みたいだ」
「ははっ今更!」

 濡れたタンクトップを脱ぐと、水着姿でタイガが椅子に座る。それに倣って、セラフィムも隣へと腰掛けた。

「本当に突然なんだね」
「話には聞いてたけど、確かにこりゃすげぇな」

 突然のスコールに驚いているセラフィムに、タイガが笑いかける。

「まぁすぐに止むさ。止んだら何する?セラ」
「僕は……波打ち際を歩きたいな。カキ氷も食べて、砂の城も作ってみたい」

 泳いで、貝殻に耳を当てて、生き物を観察して……今までやれなかった事を全部したいんだとセラフィムは思う。病弱でどこにも行く事ができなかった自分を嫌悪した日もあった。けれど今、タイガとここに居る。

「オレもやるやる! まずはサーフィンだけど。それにしても意外と子どもみてぇな事言うんだな、セラ」
「……うるさい。初めてなんだからそれくらい、いいだろ」
「初めてって……海が?」

 その言葉にほんのり赤くなったセラフィムがタイガを小突く。

「あたっ! 別に笑ったりしねぇぞ、オレは!」
「うるさい」

 照れ隠しだとわかっているタイガは、セラフィムに怒ったりはしない。そして、それをわかっているセラフィムもまたそれ以上は言わずに激しく降り注ぐスコールを見上げた。

「くしゅっ」
「寒いか? 風邪引いちまうかな」
「夏だし、乾くんじゃない? あ、タオルあった」

 小さいくしゃみをしたセラフィムが鞄の中を探り、タオルを見つけるとタイガへと投げる。

「アホウ! オレはいいって」
「次貸してくれれば平気だって。ふかふかタオル好きだろ」
「後でいい、そもそも滴ってるし透け……てるし落ちつかねぇ」

 タイガはタオルをセラに被せると、ぶつぶつと呟く。その様子に首を傾げながらもセラフィムはタオルで自分を拭いた後、タイガの頭をタオルで拭いてやった。
 二人はスコールが通り過ぎるまで、ここで過ごす事に決めた。


 栗花落 雨佳とアルヴァード=ヴィスナーはカプカプビーチへと来ていた。
 ネイビーのクロップドパンツに薄手の長袖シャツを着た雨佳は、サンダルを抜いて波打ち際を歩く。波打ち際から少し離れた所から、ポロシャツに柄物のショートパンツを穿いたアルヴァードが雨佳の後を歩いていた。
 湖は見た事があったが、海は初めてだと雨佳が楽しそうにアルヴァードへと笑う。

「おい、服が濡れるぞ」
「少しくらい濡れてもいいじゃない。冷たくて気持ちいいから、君もやるといいのに」

 忠告を意に介さずな雨佳をアルヴァードは肩を竦めて諦めた。
 楽しそうに足首まで海に浸けて遊ぶ雨佳を眺め、なんだか消えてしまいそうだとアルヴァードは思う。そして何となく、その姿を留めておきたくて持っていたカメラのシャッターを切った。
 雨佳が気付く前にポケットにカメラを押し込んだその時、ポツリと雨が当たるのを感じる。

「雨佳、スコールがくるぞ」
「そうだね、雨の気配がしてる」

 そう言って、雨佳は空を見上げる。さっきまで晴れていた空は、厚く黒い雲が流れてきていて雨が降る事を告げている。その家柄のせいか、雨には人一倍敏感なのだ。

「走るぞ」

 ポツポツと当たり出した雨を気にしながらアルヴァードは雨佳の前を走る。自分に付いてくる気配がない事に気が付き、後をみると雨佳は気持ち良さそうにスコールを浴びて立ち止まっていた。
 そうしている内に雨足は強くなり、視界が奪われそうになる。雨佳が消えてしまいそうで、アルヴァードは走って雨佳の元へと戻った。

「……早く来い」

 そう言うと返事を待たずにアルヴァートは雨佳の手を掴み、屋根のある場所へと移動する。雨佳はされるがままになってアルヴァードの後を付いて行った。

「まったく……お陰でびしょ濡れだ」
「ふふ、シャワーだと思えば気持ちいいよ」

 肌に張り付いたシャツを手で摘みながら雨佳は笑う。濡れたシャツに透ける肌は白く、雨と共に消えてしまいそうでアルヴァードは眉を顰めて視線を外す。雨が上がれば、そんな事を思ったりしなくて済むのにとアルヴァードは空を見上げた。
 そんなアルヴァードを知ってか知らずか、雨佳は楽しそうに空を見上げる。止まない雨などないと、彼は知っているから。


 コーラルベイで買い物をしていた俊・ブルックスとネカット・グラキエスは、突然のスコールに降られ慌てていた。買った品物が濡れないように俊がしっかりと荷物を持ち抱えると、ネカットは俊の手を掴んで土産物屋へと走った。

「聞いていた通りのスコールですね。シュンを濡らさないように急いだつもりだったのですが、結構濡れてしまいましたね……」
「ネカもだいぶ濡れてるじゃねえか」
「エンドウィザードたるもの、一番必要なのは俊敏性だと思うんです。雨に負けるようでは……悔しいですね……。くしゅんっ」
「こんな時に戦闘の話なんかしなくても……ほら、くしゃみ」

 真面目な顔でそういうネカットを、仕方ないなと言うように見ながら俊がポケットからハンカチを出す。これで雨に濡れたネカットを拭こうとしたが、少々無理な事に気が付く。

「ハンカチじゃ無理か……っくしょい!」
「雨と冷房で少し寒いですね」
「お、俺は平気だ。まぁ仕方ない、雨が止むまでちょっと中を見てくる」
「そうですね、私も見てきます」

 スコールが止むまで大した時間はかからないだろうと判断し、折角なので店内を見て回る事にした。
 店の奥へと向かうネカットの背中を見ると、着ている服が白いせいか、肌が透けて見えている。上着を持ってくればよかったと思いながら俊が店内を見ていると、土産用の物ではあったがネカットに似合いそうな上着を見つける事が出来た。
 俊はネカットに見つからないように会計を済ませると、入り口の近くでまだ止まないスコールを見つめていた。

「おや、もう店内は見て回ったのですか?」
「あぁ、一通りは見て回ったかな」

 ネカットの声に俊が振り向いて答える。そして今まで持っていなかった見慣れない袋に目を留める。

「ふふ、これですか?丁度このお店にシュンに似合いそうなダークレッドの上着があったので……シュン?」
「はは、お互い同じ事考えてたんだな」

 俊がそう言って、隠していた袋からコーラルピンクのシャツを取り出してネカットへと差し出した。

「シュンも私に……? どうして私の好きな色が分かったんです?」
「好きな色だったのか、似合うかなと思ってこれにしたんだ」
「嬉しいです、ふふっいいお土産ができました」

 お互いがお互いを想い合って買った上着を渡し、着替えを済ませる。新しい上着は、お互いとてもよく似合っていて自然と笑みが零れた。

「ネカ」
「なんでしょう?」
「その……さんきゅーな」
「私こそ。ありがとうございます」

 店の軒先から二人は穏やかな気持ちでスコールを見つめていた。


 市原 明良とシンディ・フィラメントも、突然のスコールに降られていた。その姿は対照的で、明良は雨宿りできそうな場所へと避難し、シンディはスコールを楽しむかのようにどしゃ降りの雨の中を飛び跳ねている。
 明良はスコールがこんなに激しく降る物だとは思ってもいなかったので、見る間にずぶ濡れになっていくシンディを見て眉根を寄せる。そんな明良の視線もお構いなしでシンディはスコールを全身で堪能していた。

「スコールすげー!! ほら、アキもスコール浴びてみろよ、楽しいぜ!」
「浴びてみろよ、じゃない! 風邪でも引いたらどうすんだ!」
「風邪なんて引かねーよ! 馬鹿は風邪引かないんだろ?」
「お前がじゃない……僕がだ!」

 馬鹿に付ける薬はないんだっけと思いながら明良が溜息を吐く。言いたくはないが、明良は昔から病弱でろくに外に出た事もなかった。そのせいもあってか、雨の中わざわざ濡れるという行為は自殺行為みたいな物でシンディの真似をする気にはなれない。

「これも南国の醍醐味って奴だ! アキは海をみるのも初めてなんだろう? 海は喜んでたけど、スコールは駄目か?」
「海は、そりゃ楽しかったけど、スコールはまた別だろ! そりゃ、こんなに凄い雨は初めてだけど」

 海は綺麗でとても楽しかったし、買い物も自分が好きな物を選んで買うなんて初めてですごく楽しかった。なのにこの雨で中断されてしまった。残念だと思う気持ちがないと言えば嘘になるけれど、スコールも明良が体験する事がなかった事のひとつでほんの少しワクワクしているのも確かだ。

「買い物も楽しかっただろ! 今日買った服は全部アキが選んだもんだろ、絶対似合うぜ!」
「……楽しかったよ、お前が選んでくれたのも悪くなかったけどな」

 シンディはその声音に嬉しそうな響きを感じて、にんまりと笑う。明良の家は所謂お金持ちで、洋服も高級店のお偉いさんがいくつか持ってきた服を家で選ぶのだ。買い物の楽しさなど無いに等しい。
 だからこの南の島で、明良がやった事がないような事を出来る限り体験させたいと思っていたのだ。スコールは予定外だったけれど、これもいい体験だ。

「雨が止んだら、ホテルに帰らないとだな……お前尻尾もびちょびちょだし。風邪引かれるのもやだしな」
「ん? ホテル帰ったらアキが拭いてくれんの? じゃ、アキの事は俺が拭いてやるな!」

 子どもじゃあるまいし……と明良がシンディを見るけれど、スコールの中をはしゃぐシンディは子どもみたいで明良は仕方ないかと笑った。


  ウィーテス=アカーテースとパラサ=パックはコーラルベイへと来ていた。
 Tシャツとズボンというラフな格好だが、その高身長から人目を引くウィーテスは同じくノースリーブのトップスに緑色のハーフパンツというラフな格好のパラサの後ろを付いて歩いている。
 行きたい所があるとパラサが道案内を買って出たのだ。ウィーテスとは正反対の低身長ではあったが、迷う事無く人と人の間をするりと潜り抜けていく。ウィーテスははぐれないように気をつけながら、お土産物屋を眺めつつ歩いていた。

「ねぇパラサ、お腹が空かないかい? ちょっといい匂いがするよ」
「もうちょっと我慢するんだぎゃー。もう少しで目的地に着くはずだから」
「そ、そっか。所で目的地ってどこなんだい?」
「多分こっちの方だ。ここを左に……あったぎゃー!」

 パラサが来たかった場所、それは酒場『シャーク船長』であった。コーラルベイは昔パイレーツベイと呼ばれた海賊達の根城でもあったのだ。その名残がこの酒場である。

「どうしたの? 中に入らないのかい?」
「いいんだぎゃー、こうやって手を合わせて拝んでおくのさ」

 店の前で手を合わせ、拝んでいるパラサに倣いウィーテスも同じ様にしておく事にした。そんな風に二人がコーラルベイの街並みを楽しんでいると、ポツポツと乾いた地面が水に濡れていく。

「あれ、雨だ」
「む、これはスコールだな……急いで屋根のあるところに走るんだぎゃー」

 慌てて屋根のある場所で雨宿りをする頃には、地面に乾いた場所はなくなって一面が水浸しになっていた。大粒の雨が地面を激しく打ち付けていく。

「すごいね、こんなに雨が一瞬で降るなんて」
「南国では時折ある事だ、そう言えば……となりのは知っているか?」
「ん? 何をだい?」
「このパシオン・シーではスコールの後の虹に願い事をしたら叶うって話があるんだぎゃー」
「へぇ、それは面白そうだね。でも、願い事なんてそんなにすぐには思い浮かばないなぁ」

 虹が出れば、と聞いて雨が降りしきる空をウィーテスが見上げる。

「出るかなぁ、虹」
「雨が上がったら、探してみればいいんだぎゃー」

 早く止めばいいのに、と思いながらウィーテスはもう一度空を見上げた。
 雨雲はその足を速め、空を渡る。いつしか強い雨は弱まって、雲の隙間から光が射していた。 

●虹に願いを

「雨が上がったぞ、セラ!」
「ほんとだ……タイガ、見て! あっちに虹が……」

 セラフィムとタイガは虹を見上げる。その先には大きな虹が掛かっていた。セラフィムは今が続きますようにとそっと願う。

「よし!海満喫スペシャルコースにご案内だ! 教えてやるよ、楽しさをさ」

 タイガはこれからセラフィムに色々な初めてを教えれる事に嬉しさを感じていた。そしてセラフィムを見遣り、笑顔で虹を見上げた。

「幸せになる虹だっけ? それってもう叶ってるよな」
「え?」
「なんでもねぇよ、ほら行くぞ!」

 もう一度言ってと言うセラフィムの手を掴み、タイガは海へと駆け出す。二人の願いは空へと続くかのようだった。


 雨佳は空を見上げながらなんだか楽しくなってくすくすと笑っていた。そうする内に雨雲は遠ざかり、空にはいつの間にか虹が出ていた。

「そういえば、スコールの後の虹は願い事を叶えてくれるらしいよ。……何かお願いする?」
「すればいい」
「そうだね、うーん……こうやって穏やかな日が続くと良いね」

 そう言いながら雨佳はアルヴァードの手をそっと繋ぐ。そして虹を見上げたまま、アルヴァードへ声を掛けた。

「……君と見られて、良かった」

 アルヴァードは無言のまま照れ隠しにそっぽを向いたけれど、その気持ちは雨佳と同じ。繋がれた手に焦ったけれど、そっと雨佳の手を握り返した。願いはきっと二人の胸に。


 土産物屋の軒先で雨宿りをしていた俊とネカットの頭上にも、虹は掛かっていた。
 俊は虹を見上げながら考える、ネカの事をもっと知りたいと。これからも、相棒としてやっていく為にもお互いの事を知るのは大事な事だ。

「綺麗な虹ですね……また一緒に見たいですね、シュン」
「そうだな、願い事はもうしたのか?」
「ん? これがお願い事ですよ。直接本人に言った方が叶う気がしませんか?」
「……仕方ねーな、叶えてやるよ。それじゃまぁ、ジェラートでも食いに行こうぜ。奢ってやるからさ」

 笑顔でそう言われてしまってはネカットの願いを叶えるしかないなと、俊は思う。並んで歩き出した二人の心には優しい虹が掛かっていた。


 雨が上がり、明良とシンディはホテルへと歩きだす。スコールを堪能したシンディは全身がびしょ濡れだったけれど、とても楽しそうだ。

「あ、アキ! 見てみろよ、虹が出てるぞ」
「本当だ、見事な虹だな」

 立ち止まって見上げた空には大きな虹が掛かっていて、知らずの内に明良は笑っていた。その笑顔を見て、シンディは明良がずっと笑っていられればいいと無意識に虹へと願った。それから、ずっと一緒にいられればいいとも。

「ホテルに戻って着替えたら、また出掛けるぞ」
「ん? もちろんいいぜ!」

 一緒に出掛ける、ただそれだけの事が嬉しかった。これからも、ずっと続けばいいと願う。その願いはきっと虹まで届くはず――。


  ウィーテスとパラサは雨の上がった空をじっと眺めていた。やがて空に虹が掛かると、パラサが目を閉じて虹に願いを掛けた。
 ホーキンス船長のお宝を見つけられますように、それがパラサの願い事だ。その隣で、ウィーテスが虹への願い事をポツリと漏らす。

「美味しいワインが飲みたい……」

 その願いを聞いて、パラサは思わず吹き出してしまった。

「わ、笑わないでよ……! 丁度目の前が酒場だったからつい……」
「ワインがあるかはオイラは知らないけれど、ちょうど酒場が目の前だ。中に入ってみたら良いと思うぎゃー」

 まだ笑ったままだったけれど、パラサはウィーテスの願いを叶えるべく酒場へと足を向けた。
 笑われてしまったけれど、パラサが楽しそうだからいいかとウィーテスは思う。そしてパラサの後ろを付いて酒場へと入って行くのだった。
 
 やがてゆっくりと虹は空へと溶けていく。
 パシオン・シーのバカンスはまだまだこれから、ウィンクルム達はそれぞれの願いを胸にそれぞれのバカンスを楽しむのだった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 加持 桜子
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月09日
出発日 07月18日 00:00
予定納品日 07月28日

参加者

会議室

  • あの……えっと、はじめまして。
    ウィーテス=アカーテースとパラサ=パックです。
    ど、どど、どうぞよろしくお願いします。

    虹に願い事をしたら叶うかぁ……面白いねぇ。
    海も綺麗らしいし、楽しみ、ですね。

  • [5]市原 明良

    2014/07/13-17:14 

    ・・・市原明良とシンディ・フィラメントだ。
    海が綺麗だと聞いたからそっちに行くと思う。
    よろしく。

  • [4]栗花落 雨佳

    2014/07/13-11:22 

    こんにちは。
    栗花落雨佳とアルヴァード・ヴィスナーです。

    海と砂浜が凄く綺麗な所らしいですね。楽しみだな。

  • [3]俊・ブルックス

    2014/07/13-09:30 

    俊・ブルックスとネカット・グラキエスだ。

    俺達はぶらぶら買い物してる予定だ。
    どこかで会ったらよろしくな。

  • [1]セラフィム・ロイス

    2014/07/13-00:46 

    あ。いつの間にやら満員になってたか
    どうも、セラフィムとタイガだ。お馴染みの面子も、はじめましてもよろしく頼む

    海だな。バカンスのスコールということで浜辺で些細な日常の1コマという感じかな
    こちらは。楽しく過ごせたらと思う


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