どきどき!ラブトライアングル(巴めろ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●恋に季節は関係ないの
出会いと別れの季節、春がゆるやかに遠ざかっていく、そんな今日この頃。

例えば神人として頑張るあなたを、じっと見つめている人がいるかもしれません。
その人はあなたに一目惚れをしたのかもしれないし、ずっと密かにあなたに恋焦がれていたのかも。
もしそんな彼が、街中で、或いはA.R.O.A.本部で、あなたに声をかけてきたら。
あなたは、何を思い、どう行動するのでしょうか?
あなたのパートナーは、何を感じて、どう行動するのでしょうか?

もしかしたらあなたのパートナー精霊に、恋患っている女性がいるかもしれません。
その人は彼と出会った瞬間恋に落ちたのかもしれないし、想いをずっと温めていたのかも。
もしそんな彼女が、公園で、図書館で、どこかのお店で、彼に声をかけたとしたら。
彼は、どう考え、どう行動するのでしょうか?
そしてあなたは、どんな思いに駆られ、どう行動するのでしょうか?

そんな『もしも』が、実際にあなたたちウィンクルムに振りかかったら。
『もしも』が『もしも』でなくなったら。

これは、あなたと、あなたのパートナーと、恋する誰かさんが織りなす、三角関係のお話です。

いきなり声をかけられておろおろしているところを、颯爽と彼が助けてくれたりとか。
知人男性に声をかけられて楽しく談笑するあなたを見て、何故だかもやっとする彼とか。
逆に、モテる彼を見て、あなたが複雑な気持ちになるとか。
彼に恋する誰かと、熾烈な争いを繰り広げてみたりとか。

――さて、一体どんなラブ・トライアングルが生まれるのでしょうか。

解説

●詳細
1.誰かさんがあなたと彼のどちらに恋をしているか
2.誰かさんとあなた・誰かさんと彼の関係(両方)
3.誰かさんの行動
4.あなたの心情や行動
5.彼の行動
6.誰かさんに対するあなたと彼の口調(敬語か否かと、その他こだわりあれば)
以上6点をプラン内に組み込んでいただけますと幸いです。(明示がなくともそれとわかればOKです)
但し、5は親密度等の関係でそのまま採用できない場合がございますことをご了承くださいませ。

また、
・誰かさんと出会う場所・シチュエーション
・誰かさんの名前、性格、外見、口調、職業等
・誰かさんがあなたまたは彼に恋をした経緯
・彼の心情(※親密度等の関係で採用できない場合アリ)
などその他諸々、文字数の許す限りこだわりを詰め込んでいただければと……!
ご指定がない部分はお任せとなりますこと、ご了承ください。

誰かさんに出会う時にお2人が近くにいる必要がありますので、何らかの理由で一緒に外出中という点のみ共通とさせていただきます。
デート代として便宜上一律100ジェール頂きますことをご了承ください。
リザルト直前までの行動等も指定可能です。

考えていただく要素が多い変則的なエピソードですので、プラン例を掲載させていただきます。
あくまで一例ですので、実際のプランは皆さまの心の赴くままに書いていただければ幸いです。

『○○(精霊名)と買い物に出かけたら
街中で幼なじみの××と偶然再会し声をかけられる

久しぶりに会ったから話が弾むわね、××
○○とは初対面だから、紹介しておくわ

昔話をしているうちに
「俺、子供の頃君が好きだったんだよ」って、ええっ?!
照れで真っ赤になる私に××が何か言いかけて…

って、○○、もう行こうってどういうこと?!
ちょ、そんな引っ張らないでよ!

(以下略)』

●注意点
公序良俗に反するプランは描写いたしかねます。
また、白紙プランは描写が極端に薄くなりますのでお気を付けくださいませ。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!

妄想が好きすぎてこんなプロローグが生まれました。
皆さまとパートナーと誰かさんの三角関係を自由に妄想して楽しもう! がコンセプトです。
妄想スイッチを全開にして、楽しんでいただければと思います。
可能な限り自由に妄想していただこうとふんわりしたプロローグの形を取らせていただきましたが、リザルトの方は皆さまの素敵妄想をしっかりばっちり形にできるよう尽力いたします。
皆さまの素敵な妄想が詰まったプランを、ワクワクしながら待っています!
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!

また、余談ですがGMページにちょっとした近況を載せ始めました。
こちらもよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リーリア=エスペリット(ジャスティ=カレック)

  2人で市場に買い物に来たら、昔よく村に来ていた行商人の息子のアレンと数年ぶりに再会。
(アレンは行商人の親の手伝いをしていて、暇なときはよく一緒に遊んだ友人。片思いされているが、リーリアからは友情止まり)

市場でリーリアの姿を見つけ、声をかけたようだ。

アレンに買い物が終わったらどこかで食事でもと誘われる。
久しぶりだからいろいろ話をしたいし、いいよと言おうとしたら、ジャスティに引っ張られて強制移動。

戸惑うが彼の不機嫌な感情を感知し、一度立ち止まりどうしたのか聞いてみる。
彼の不器用な言葉を聞き、思わず頭を撫でてしまう。
普段なら鉄拳ものだが、なんか怒れない…。
相変わらず、意地っ張りで不器用な相棒だ…。


ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)
  今日はお買い物一気に片付けられてよかったです~、
重たいもの持てる人がいるとやっぱり違いますね。
…あと一件付き合って頂きますからね。
冷蔵庫の苺、楽しみにしてたのにグレンが全部
食べちゃったんですから責任取って下さい!

この道を行けば…え、確かにニーナですけど…?
知らない人に声をかけられてしまいましたけど、
何か見覚えが…

あ、雰囲気違うので気付きませんでしたけど、
毎朝パン屋に来てくれてる方ですよね、
今日はお仕事ですか?

あれ、もしかしてグレンのお友達…?
グレンってばお友達いたんですn
…いひゃい、いひゃいれふ!
頬が伸びたらどうしてくrあああ引っ張らないでー!
お友達がいたのかなんて言いかけてごめ…え、違う?



アリシエンテ(エスト)
  買い物帰りに、死ぬ程会いたくない相手に出会ったわ…!
「ここで、会ったが…っ!社交界にも顔を出さなくなったのは私からエストを取ったからね!この泥棒猫!」
「ナンセンスね、エリゼ。脳のしわが少ないのならば早くツルツルになってしまった方が楽になるわよ」

元からうまが合わなかったのだ
思い切りそういえる相手は貴重だが、当然好きにも好かれる訳もない
そんな普段には無い醜いやり取りをしばし繰り返して、矛先がエストに向いた。

「エストもエストよ!私に仕えると言ってくれたじゃない!
 裏切りも──!」

私はエリゼの頬を思いっ切り引っ叩いていた
「……一発では足りなくて?しばらく社交界に出れない顔にして差し上げても良くてよ?」



油屋。(サマエル)
  カフェでサマエルを待ってたら
女の子が声をかけてきた
『あの、僕 ミユって言います。君のファンで……あ、握手して下さい!』
ビックリした けど、悪い子じゃないみたい
こっちも挨拶して 暫く二人で話をした
昔、ミユが不良に絡まれていたところをアタシが助けたらしい
よく憶えてないけど、そんな事もあったのかな
ケーキを食べたりして、楽しい時間

丁度そこへアイツが来た
ミユが急に怖い顔し始めて
お前 その尻尾!?
コラ!喧嘩はダメだって!!
好き?お、おう……ありがとう

サマエルすげぇ怒ってるし
悪かったよ
ってアタシ別に何もしてないよな?



名前:ミユ 性格:恥ずかしがり屋 一人称:僕
格好:ピンクのロリータ系
口調:~だね、~だよ


高司・珠希(ミース)
  <心情>
 今日は本部に行く日だったよね?
任務用の黒ローブ着てかないと…!

<行動>
 本部に向かう途中、見覚えのある人が声をかけてきた。
この間リンゴを拾ってもらった探偵事務所の所長さんアランさんだった。
「久しぶりだな嬢ちゃん?」と、アランさんは微笑んだ。
アランさんはミースに目線を向けて「この坊やが居ない時にまた会おうな」と、私の耳元でそう囁く。
ふえっ!? 驚き、右耳を抑えた。
ふと、ミースを見るといつも不機嫌そうだがいつもに増して怖い目つきでアランさんを睨んでいた。
アランさんと別れた後、ミースが口を開いた。
さっさと行くぞ。ばぁかって……!
なんかいつもに増して不機嫌なような…?



●君の笑顔に惚れました
「今日はお買い物一気に片付けられてよかったです~。重たい物持てる人がいるとやっぱり違いますね」
にこにこと街を行くのはニーナ・ルアルディ。その後ろにうんざりしきった顔で続くグレン・カーヴェルの両手には、買い物袋がいっぱいだ。
「あと一軒付き合っていただきますからね」
グレンはため息をついた。
「何で俺がこんなことを……」
「何でじゃありません! 冷蔵庫の苺、楽しみにしてたのにグレンが全部食べちゃったんですから責任取ってください!」
そんなことを話しながら、2人は細い路地に入る。目当ての店への近道だ。
「ほら、しゃきしゃき歩いてください! この道を行けば……」
「あれ……? ニーナさん、だよね?」
グレンに気を取られていたニーナに、突然声がかかった。慌てて前を向けば、目が合ったのは配達屋のユニフォームを着た知らない男性で。
「え、確かにニーナですけど……?」
「あぁ、ごめんごめん。ニーナさんは俺のことなんて覚えてないか。びっくりさせちゃったかな、思わず声かけちゃって」
「いやその……あれ? 何か見覚えが……あ!」
配達員の男は、服装のせいで分からなかったが、よくよく見ればニーナの知っている顔だった。赤銅色の髪にも、大型犬を彷彿とさせる懐っこいような灰の瞳にも、覚えがある。
「雰囲気違うので気付きませんでしたけど、毎朝パン屋に来てくれてる方ですよね。今日はお仕事ですか?」
「そう、今この路地の家に荷物届けたとこ。それにしても……俺の顔、覚えててくれたのか。嬉しいな」
爽やかに笑み零す馴染みの客に、ニーナも店で会う時と同じように笑顔で応対する。
「いえ、お顔、すぐに分からなくてごめんなさい。お仕事、お疲れさまです」
ニーナに柔らかな笑みと労いの言葉を向けられると、男の顔がふにゃりととろけた。次いで何か言おうとした男の胸元をぐいとグレンが引っ張る。
「あれ。いたのか、グレン。相変わらず危ない夜遊びやってるの?」
「うるせぇ。『いたのか』じゃねーよ。つーか、運命の人に出会って更生した、とかいうから相手はどんな聖女かと思ってたらこいつかよ、ヘイゼル」
「ニーナさんは聖女だろ。ニーナさんの頑張る姿を見て真人間になったんだよ俺は。笑顔がトドメだったんだよ。ってかお前、何でニーナさんと一緒にいるんだよ羨ましい」
「俺が契約したのは知ってんだろ。察しろ馬鹿」
「はぁ?! じゃあ、お前の契約の相手って……!」
ここまで、実は旧友だったりする男2人の会話(小声)。
「あれ、もしかしてグレンのお友だち……?」
仲睦まじい(?)2人の様子を見て、ニーナが軽く小首を傾げる。その動作に見惚れるヘイゼルと、能天気なニーナの反応に何故だか苛立つグレンである。
「はぁ。グレンってばお友だちが……」
いたんですねと言いかけたニーナの頬を、思いっ切り引っ張るグレン。
「いひゃい! いひゃいれふ~!」
涙目になってニーナが叫ぶ。ヘイゼルがグレンを止めた。
「おい、ニーナさんに何するんだよ?!」
「あ、ありがとうございます。えっと……」
「ん。俺、ヘイゼル」
「ありがとうございます、ヘイゼルさん。……全く、グレンってば頬が伸びたらどうしてくれああああ引っ張らないでー!」
「グレン、やめろって!」
ヘイゼルに腕を強く掴まれて、グレンはチッと舌を打ちニーナの頬から手を離す。
「うう、お友だちがいたのかなんて言いかけてごめんなさい……」
「……違ぇよ、馬鹿」
「え、違う?」
「ああもう! ほら、まだ買う物があるんだろ?!」
ニーナの腕をぐいと引っ張って、路地の出口を目指すグレン。2人の背中に、ヘイゼルの声が降る。
「ニーナさん! またお店でねー!」
振り返り、こいつのパートナーは俺だと目で訴えるグレンだが、対するヘイゼルの笑みを含んだ目も、だからどうしたんだとでも言っているようで。
――その後、グレンがニーナの勤めるパン屋を時折訪れるようになったのは、また別のお話。

●今度は2人きりで
任務用の黒いローブを身に纏って、高司・珠希は街を行く。そんな珠希の黒ローブを見て、ようやっと今日がA.R.O.A.本部へ行く予定の日だったと思い出したミースも一緒だ。
「お?」
雑踏の中を歩く2人を――正確には珠希を、呼び止める声。
「久しぶりだな、嬢ちゃん?」
嬢ちゃんと呼ばれた珠希が振り返れば、そこに立っていたのは紳士然とした年上の男性で。ニヒルな微笑みをその整った顔に浮かべる男性を見て、珠希はぱああと顔を輝かせる。
「わ! アランさん!」
「げ、オッサン……!」
珠希の弾むような声とミースの苦々しい声が重なった。アランと呼ばれた男が、苦笑を漏らす。
「オッサン、か。手厳しいな、坊や。一応、俺はまだ28歳なんだが」
「そんなの、俺から見ればオッサンだ。つーか、俺は坊やじゃねぇ!」
「ちょ、ちょっとミース?! 失礼なこと言わないでよ! すいません、アランさん」
慌ててぺこりと頭を下げる珠希を尻目に、ミースはアランを威嚇するような目で見やった。とある探偵事務所の所長・アラン。ミースにとって、今一番会いたくなかった相手だ。
「この間は本当にありがとうございました! りんご、拾ってもらってしまって……」
「あれくらいはお安い御用だ。買い出しの途中だったんだろう? 大変だったな」
まるでミースのことが見えていないみたいに、彼のことを置き去りにして珠希とアランは会話を弾ませる。そのこともまた、ミースには面白くなかった。
「おい、タマ公。本部、行くんだろ。遅れるぞ」
早くこの場を離れたくて、ミースは珠希の腕を掴む。珠希の表情が、曇った。
「あ、う、うん、そうだけど……でも、折角アランさんに会えたのに……」
目に見えてしょんぼりとする珠希の頭に、アランがそっと触れる。とても自然で、大人な感じに。それは、ミースにはできないことだ。
「嬢ちゃんにそんな顔は似合わないな。坊やの言う通り、どこかに向かう途中だったんだろう? 俺には遠慮しなくていい」
「でも……」
「ほら、俺のせいで遅れたら一大事だ。大丈夫、またすぐに会えるさ」
珠希を優しく諭して、アランはちらとミースのことを見た。その口元に浮かんだ余裕めいた笑みは、どこか勝ち誇っているようにミースの目には映って。
そして――アランはミースに視線を向けたまま、珠希の耳元でそっと囁く。
「この坊やが居ない時に、また会おうな」
「ふえっ!?」
驚き、心地良い声で甘い言葉を囁かれた右の耳を抑える珠希。その囁きは、人間よりも耳のいい精霊であるミースの耳にもばっちり届いていて。
(あの野郎……!)
と、睨み殺さんばかりの目つきでアランに強い眼差しを向けるミース。ふとミースを見た珠希が、その迫力に驚いて目を丸くする。そういう珠希の顔は、先ほどのアランの囁きのせいか真っ赤に染まっていて。
そんな2人の様子をどこか満足げに見やって、「それじゃあ」とアランは人混みの中へと消えていった。
「アランさん……」
どこか切なげな瞳でアランが去っていった方向を見つめる珠希の腕を、ミースは強く引っ張った。
「ちょ、ちょっとミース?! 痛いって!」
珠希が声を上げるも、ミースはその手を離さない。ぐいと彼女の手を掴んだまま、ミースは急ぎA.R.O.A.本部への道を行く。アランはもういなくなったけれど、あの男がいた場所にはもういたくなかった。
「ねぇ、ミースってばどうしたの?!」
「何でもねえ! さっさと行くぞ。ばぁかッ!」
「ば、ばぁかって……」
悪態をつきながらも、ミースは珠希の手を離さない。
(ミース、本当にどうしちゃったんだろ……? なんかいつもに増して不機嫌なような……?)
腕を引かれてA.R.O.A.本部へと向かいながら、首を傾げる珠希だった。

●ずっと前から好きでした
それは、市場での買い物の最中に起こった。
「リーリア、他に買う物は?」
「えーっと、後は……」
市場の賑わいの中、ジャスティ=カレックが尋ねる。問われたリーリア=エスペリットが、手元のメモに視線を落とした。と。
「あれ……? もしかして、リーリアじゃないか?」
その時、リーリアへと声がかかった。リーリアが面を上げれば、懐かしい顔がふわりと笑んで。
「やっぱりリーリアだ。俺のことわかる、かな?」
「……アレン?」
目をぱちくりさせるリーリアを見て、そんなに驚かなくてもとアレンが苦笑する。
「アレンったら最後に会った時と別人みたいだったから」
「何年も会わなかったら、男は変わるよ。でも、俺だってわかってくれたな」
「だって、笑顔は昔のままだし」
リーリアの言葉に、アレンはまた笑み零した。
アレンは、昔よくリーリアの故郷の村に来ていた行商人の息子だ。懸命に親の手伝いをしていた様子や暇な時には何度となく一緒に遊んだことを、リーリアは懐かしく思い出す。
一方、昔話に花を咲かせ始めた2人を眺めるジャスティの目は、柔らかく目を細めて歓談するリーリアたちとは対照的に負の感情を湛えていた。鈍いところのあるリーリアは全く気づいていないようだったが、アレンの表情からは、リーリアに対する恋慕の感情が窺えて。アレンがリーリアをただの友人と思っていないことは明らかだった。
(それに……)
黒く重たい塊がそこに鎮座しているかのように、何故だか胸がもやもやしてジャスティに不快感を与える。
(彼女の昔のことを知る男に、自分の知らない時の彼女、か……)
それはジャスティには関係ないし、どうでもいいことのはずだ。なのに、この感情は何なのだろう。
「なあ、リーリア。買い物が終わったらさ、一緒に食事でも行かないか?」
アレンの言葉が、ジャスティの耳にも届く。ジャスティが自分の気持ちを持て余していることには気づかずに、リーリアは口元を綻ばせた。
「そうね、久しぶりだから色々話をしたいし……」
いいよ、と口にしようとした瞬間、腕をぐいと引っ張られた。ジャスティだ。
「ちょ、ちょっとジャスティ?!」
名を呼ぶも、ジャスティは応じず、ただリーリアの腕を掴んだままどんどんその場から離れていくのだった。
「リーリア?!」
「ご、ごめんね、アレン。また今度ね!」
突然の出来事に呆気に取られるアレンを置き去りに、2人は市場から遠ざかっていく。

アレンの姿が見えなくなり、市場もとうにずっと向こう。
リーリアは戸惑いながらも、足に力を込めてジャスティを一度立ち止まらせた。神人と契約精霊の不思議な絆の力のせいかそれとも他の要因か――ともかくも、ジャスティの感じている不機嫌を、リーリアは察知したから。
「ジャスティ。……どうしたの?」
問われて、ジャスティは自分が酷く混乱していることに気づいた。気が付いたら、リーリアの腕を掴んで市場から出ていたのだ。
(なぜ、自分はこんなことを?)
胸の内に問いかけるも、答えは出ない。今感じているこのもやもやは、ジャスティにとって初めての感情だった。
「わかりません……」
少し俯いて、ジャスティはやっとそう答えた。そうとしか、答えられなかった。
そんなジャスティの頭に、思わずといった調子でリーリアの手が伸びる。優しい手が、ジャスティの頭をよしよしと撫でた。
(普段なら鉄拳ものなんだけど、なんか怒れない……)
それが、ジャスティが零した不器用な言葉を聞いての、リーリアの素直な感想だった。ジャスティは、文句も言わずリーリアにされるがままになっている。どこかしゅんとしているその姿はいじらしくすら感じられた。
(相変わらず、意地っ張りで不器用な相棒……)
そんなことを思いながら、リーリアは僅かその口元に微笑みを乗せたのだった。

●ここで会ったが百年目
「ここで、会ったが……っ! 社交界にも顔を出さなくなったのは私からエストを取ったからね! この泥棒猫!」
エストと出かけた買い物の帰り。突如ビシリッ! と指を差されて暴言を吐かれ、アリシエンテは驚いたというよりは何て運が悪いのだろうと思った。見るからにプライドの高そうな――そして実際、彼女は自尊心の塊のようなところがある――美しい女性は、アリシエンテが死ぬほど会いたくなかった相手・エリゼだった。
「……今日の運勢は最悪ね」
「何ですって?! どういう意味かしらアリシエンテ?!」
痛む頭を抑え深いため息を漏らしたアリシエンテに、エリゼが噛みつく。その大きな怒声に通行人たちが何事かとアリシエンテたちに視線をやるが、女2人と男1人の諍いだとわかると、巻き込まれては大事だと皆足早に通り過ぎていった。
「相変わらずナンセンスね、エリゼ。脳のしわが少ないのならば、早くツルツルになってしまった方が楽になるわよ」
「口の減らない女ね! どれだけこの私を馬鹿にしたら気が済むの?!」
「馬鹿にしてるんじゃなくて、思ったことを口にしただけよ」
後はもう売り言葉に買い言葉だ。激昂するエリゼに冷静に言い返しながら、アリシエンテは思う。元々、馬が合わなかったのだ。思いっ切りそう思える相手がいることを貴重だとは思うものの、当然相手を好きになるわけも、相手に好かれるはずもない。
一方のエストは、女同士の激しい争いを眺めながら、昔のことを思い出していた。ちょうど今目の前で繰り広げられているのと似た出来事が、過去にもあったのだ。

エリゼはエストの幼なじみで――エストの昔の主だった。けれど、エリゼには神人としての適性がなく。当然の流れとしてエストはアリシエンテと契約を交わすこととなったのだが、エリゼは最後までそれを認めなかった。
諍いが起こったのは、アリシエンテが14歳で社交界デビューを果たした時だ。場は、アリシエンテが精霊と契約を交わしたと、その話題で持ち切りになった。エリゼは今と同じように憤慨しアリシエンテを罵り、対するアリシエンテは飲み物の入ったグラスを手に、これもまた今と同じように適当にエリゼをあしらっていた。けれど、エリゼの怒りの矛先がエストへと向いた時――アリシエンテはグラスを大理石の床に投げ捨て、凍てついたような眼差しをエリゼへと向けるや否や、彼女の頬を思いっ切り引っ叩いたのだった。

「――エストもエストよ! 私に仕えると言ってくれたじゃない!」
あの日と同じエリゼの叫びが、エストを『今』へと引き戻す。
「この……」
裏切り者、とエリゼは言おうとしたのだろう。けれど、その言葉が最後まで紡がれることはなく。
パシィン! といっそ清々しいような音が往来に響いた。アリシエンテが、エリゼの頬を思い切りよく引っ叩いた音だ。
「なっ……!」
言葉を失うエリゼに、アリシエンテは冷えた声で告げる。
「一発では足りなくて? しばらく社交界に出られない顔にして差し上げても良くてよ?」
先ほどまで平静を保っていたその顔には、静かな、けれども激しい怒りの色が滲んでいて。
(――まるで、あの日の再現のようですね)
エストの頭に、そんな場違いな感想が過ぎる。けれど、あの日とは違うこともある。
(あの時は何が起こったのかわかりませんでしたが……今ならば、わかる気がします)
再度、アリシエンテの手が静かに上がる。その手がエリゼを痛めつけるのを、エストはそっと止めた。
「貴方が私の為に手を汚す必要はありません。アリシエンテ」
「エスト……」
静かに諭され、アリシエンテの瞳から怒りの色が消える。エリゼが叫んだ。
「何よ! 何なのよ! 何でその女の肩を持つの、エスト!」
エストはエリゼへと、かつての主へと向き直った。そして、言葉を零す。穏やかに、けれどはっきりと。
「アリシエンテが、私の主だからです」
今のエストには、アリシエンテは自分のために怒ってくれたのだと、そのことがはっきりとわかるのだった。

●貴方のことを見つめています
「あの、すみませんっ……!」
カフェでサマエルを待っていた油屋。は、鈴の鳴るような声に呼ばれてはたと顔を上げた。もじもじしながら目の前に立つのは、ピンク色のロリータ系ファッションに身を包んだ愛らしい女の子。悪魔めいた頭の角は、アクセサリーだろうか。
「あの、僕 ミユって言います。君のファンで……あ、握手して下さい!」
内気そうな少女・ミユは、精一杯の勇気を振り絞ってといったふうにそう言って油屋。へと手を差し出す。突然のことに驚く油屋。だったが、悪い子には見えないとミユの手を握った。ミユの顔が輝く。
「わ、あ、ありがとうございます!」
「や、そんなかしこまらなくっても……。敬語じゃなくていいよ、なんか、くすぐったいし」
「ほんとですか?! えっと、じゃなくって、ほんとに?」
「もちろん! アタシは油屋。だ。よろしくな、ミユ。折角だから座っていきなよ」
「わ、ありがとうっ! 僕、すっごく嬉しい!」
無邪気に笑み零し、ミユは油屋。の前の席へと腰を下ろした。にこにことするミユからは、本当に嬉しいという気持ちが伝わってくる。
注文したケーキを食べながら、2人はしばし歓談した。ミユの話によると、何でも昔、ミユが不良に絡まれていたところを油屋。が助けたらしい。
(よく憶えてないけど……そんなこともあったのかな)
喧嘩好きの油屋。にとっては不良との戦いはそう珍しいことでもない。そういうこともあったかもしれないと納得する油屋。だ。
話は弾み、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

一方のサマエルは、新作のジュエリーを手に入れて機嫌よく待ち合わせの場所へと向かっていた。
カフェに着いてみれば、サマエルの入店に気づいた油屋。が「こっちこっち!」と手を振ってサマエルを呼ぶ。その真向かいの席には、見慣れない同席者。こちらを見やる少女の顔が一瞬怖いような無表情になった――気がしたが、次の瞬間には少女はにこにことして油屋。の方へと視線を移す。先ほどの表情は見間違いだったか、それとも……といぶかしみながらも、テーブルへと歩み寄るサマエル。油屋。が、件の少女をサマエルに紹介した。
「この子、ミユ。 アタシのファンなんだって!」
嬉しそうに話す油屋。の向こうで、今度こそミユは冷たい顔だ。その形のいい唇が紡ぐ呟きは。
「……早瀬ちゃん、今日は一人でお買いものじゃなかったんだね。だから今朝、お洋服で1時間も迷ってたんだ」
ごく小さな声で呟かれた言葉は、油屋。の耳には届かずとも、人間より耳のいい精霊たるサマエルにははっきりと聞き取れた。
(コイツ、今妙なことを言わなかったか? 早瀬という名を知っている。それに、まるでずっと観察していたような言い方。乳女は気づいていないようだが……)
思わずミユを睨みつければ、ミユもそれに応じるようにサマエルに氷のような視線を向けて。
「貴様、何者だ?」
「嫌だ、怖いなぁ。何でこんな人が早瀬ちゃんの……」
静かに火花を散らす2人を見て、慌てたのは油屋。だ。
「コラ! 喧嘩はダメだって!!」
油屋。にたしなめられて、ミユは「ごめんね」と言って立ち上がった。ゆらりと揺れるのは――。
「! 尻尾?!」
「ディアボロ? コスプレかと思いきや、その角も本物か」
ちろりと尻尾を揺らして、女の子のような美少年・ミユはそっと油屋。へと顔を寄せる。
「今日はありがとう。ミユの王子様、愛してるよ♡」
「好き? お、おう……ありがとう?」
油屋。が応じるや否や挨拶とばかりに油屋。の頬にキスを零し、ミユはするりと去っていった。
(……何だこの感情は。この女の間抜けさに腹が立っているだけだ。そうに決まっている)
訳の分からぬ苛立ちが、サマエルを苛む。
「あー……悪かったよ」
サマエルの不機嫌に気づき、油屋。はそう言葉を零すも、
「ん? って、アタシ別に何もしてないよな?」
まだあまり状況の分かっていない油屋。なのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 巴めろ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月05日
出発日 06月12日 00:00
予定納品日 06月22日

参加者

会議室

  • こんにちは。私はリーリア。
    初めての人もいるわね。 よろしくね。

    ジャスティと市場に買い物に行く予定よ。
    懐かしい夢を見たから、もしかしたら何か起こる予兆かもしれない…。

    平和に一日が終わりますように…。

  • [4]アリシエンテ

    2014/06/08-23:41 

    アリシエンテと言うわっ。相方はエストよ。
    どうか宜しくお願いするわねっ!

    エストと一緒に街を歩いていたら、いや~な相手と顔があってしまったわ……何たることかしら……!

    問題は文字数が足りるかどうかなのよね……収まりきりますように!

  • [3]ニーナ・ルアルディ

    2014/06/08-21:29 

    ニーナです、よろしくお願いしますね。

    パートナーのグレンとお買い物に行って来ようと思います。
    重たいものは…自分のものしか持ってくれないんでしょうねぇ、はぁ…
    何やら今日は恋愛運が絶好調らしいですけど、
    今まで通り何もないんでしょうね、きっと。

  • [2]油屋。

    2014/06/08-13:16 

    こんちはー!油屋。でーす!!
    初めましての人も居るんだね、宜しく!

    相方はサマエルっていうの。
    カフェでお茶しようって話になったんだけど
    うーん、誰かに見られている気がする……

    サマエル:誰かは兎も角、貴様の無駄に弛んだ乳を見ているんだろう。
         言わせんな恥ずかしい(ゴミを見る目)

    油屋。 : Σ 何だとこの野郎!!

  • [1]高司・珠希

    2014/06/08-00:42 

     ノエル=アットウェルです。
    珠希じゃなくて、できればノエルって呼んでもらえると…嬉しいです。

    ええと…皆さん初めましてですね!
    私の相棒はテイルスのミースです。
    どうぞ宜しくお願いしますっ

    もしかしたら…あの人に会えるのかな…?

    ミース*コイツの相棒、ミース。タマ公、鈍感だから見ててやんねえと…。


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