ベルガモ団がやってきた(木口アキノ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 タブロスの皆さんこんにちは~。
 旅のサーカス、ベルガモ団でっす!
 アタシは団長のシロー・ベルガモ。シローちゃんって呼んでね。
 今回は、ハト公園にテントを設け、1週間滞在する予定よ。
 はい、あそこに大きくて、カラフルなテントがあるでしょう。あれがウチのテントなの。みんな、見に来てね。

 そうそう、ウチではね、希望のお客様にサーカス体験もさせてあげちゃいまっす!
 もちろん、初心者向けの簡単なものよ。
 本格的な技は、毎日の鍛錬が必要だもの。ほら、アタシの美しい筋肉を見ればわかるでしょ?大胸筋と上腕筋が特に自慢なんだけど、このくらい鍛えてないとダメなのよ。
 じゃ、具体的にどんなことを体験できるかと言うとね。

 まず、王道の綱渡り。
 高さ1メートルくらいの綱を、両側に補助付きで挑んでもらうわ。補助付きと言えど舞台の端から端まで、そうね、30メートルはあるかしら。慎重にいかないと足を滑らせちゃうわよ。

 そして、玉乗り。
 これも補助付きね。直径1メートルの玉に乗って、舞台を歩くの。バランス感覚が試されるわね。

 ウチの団員と一緒に馬に乗ってもらう、馬の曲乗りもあるわ。
 参加してくれるお客様は、ただ乗ってるだけでいいの。でも、激しく揺れるから乗り物酔いする人は注意してね。

 ネコちゃんみたいに愛らしいライオン君に芸をさせる猛獣使いにも挑戦できるわよ。
 エサをあげて仲良くなったら、上手に二足歩行や火の輪くぐりなどの芸をさせてあげてね。

 そして最後に、1番難易度が高い空中ブランコなんだけど、これは2人での参加が必須よ。
 高さ5メートルのところに設置されたブランコに、命綱付きで挑戦してね。
 左右にぶら下がってるブランコにそれぞれが膝をかけて乗って、舞台中央でお互いの手にタッチするだけでいいわ。それ以上の高度な技は危険だから挑戦させてあげられないの。ごめんね。

 さぁ、あなたがやってみたい演目はあったかしら?
 練習時間もちゃんとあるから安心してね。団員が丁寧に教えてあげるわ。サーカス用の衣装もお貸ししまっす。
 もちろん、参加せずに観覧するだけでもオーケーよ~。
 入場料はおひとり様150Jrでっす、よろしくね!
 ではでは、団長シロー・ベルガモ以下団員皆でお待ちしていまっす!

解説

 サーカスの入場料は、1人150jrなので、精霊と一緒の場合300jrになります。
 サーカス体験希望の方は、どの演目に挑戦したいのかプランに記載してください。
 空中ブランコ以外は、1人でも2人でも挑戦できます。神人だけでも精霊だけでも良いですし、2人一緒でも構いません。
 曲乗りは2人一緒の参加でも、別々の馬に乗ります。
 衣装も用意しているとのことですが、サーカス用の衣装ですから、ちょっと派手かもしれません。苦手な方は借りなくても大丈夫です。
 挑戦した演目が成功するか否かは、各ステータスに依ります。
 綱渡り、玉乗り、猛獣使いは段取り力、空中ブランコは素早さを必要とします。
 精霊と2人で参加する場合は、親密度もカギとなります。
 動物学、騎乗、スポーツなどのスキルも力を発揮しそうですね。
 けれど、失敗しても成功しても、楽しい思い出になることでしょう。皆さまの参加をお待ちしています。



ゲームマスターより

 余談ですが、団長は男性です。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ファリエリータ・ディアル(ヴァルフレード・ソルジェ)

  サーカス体験、楽しそうー! 勿論参加するわっ♪

演目はどれにしようかしらっ、
どれも面白そうだけど……えーと、
猛獣使い! 怖そうなライオンに芸をさせるなんて楽しそうっ。
エサのあげ方とか良く聞いて、仲良くなれる様頑張るわっ。
撫でたりしても、嫌がられないかしら……?
嫌じゃないなら頭とか撫でてみたいんだけど。
芸をさせる前に、「よろしくねっ」って挨拶しておきたいもの。

あとは空中ブランコに挑戦してみる!
難しそうだけど、その分出来たらきっと嬉しいし気持ちいいと思うものっ。
ヴァルは運動神経いいし、きっと大丈夫っ。
衣装は、ビジューがいっぱいついた華やかなのがいいなあ。
せっかくだし綺麗な衣装着たいものっ♪



リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
  目的:サーカス体験を楽しむ
心情:滅多に出来ない体験だ、楽しもう
手段:
馬の曲乗りに挑戦
衣装は特に気にせず着るが、私の背丈(185cm)に合う衣装って男物なんじゃないか? 別に私はそれでも構わないけど。しかし、派手だな
馬にはまず、乗せてもらうので挨拶しておこう
楽しませてもらうよ、と言っておかないと
ほう、結構揺れるんだな、でも馬上から見える高さもいいと思わないか、銀雪と笑っておこう
終わったら、そうだな、2人で記念写真でも撮ろうか
…? 何故、そこでお前が紅くなるんだ? はぁ、照れてる……お前は、時々可愛いことを言うね。ああ、悪い意味じゃないよ、いい意味だが、男に可愛いはないか、悪いな(クスクス)


●サーカスに参加しよう!
「あら?あれ、なにかしら」
 ハト公園を散歩中のファリエリータ・ディアルは、ジャグリング中のピエロを見つける。ピエロの隣では、派手な衣装の筋肉質な男性がビラ配りをしている。
「ちょっと、行ってみようよ」
 好奇心に目を輝かせ、ヴァルフレード・ソルジェと一緒にピエロのそばへ。
「こんにちは~。ベルガモ団でっす。よろしく!」
 もらったビラを見て、ファリエリータはさらに目を輝かせる。
「サーカス体験だって!楽しそう~!」
「そうかぁ?」
 ヴァルフレードはあまり乗り気ではない様子。
「参加しますっ」
 速攻で参加を申し込むファリエリータ。くるりとヴァルフレードを振り返る。
「ヴァルもやろうよ」
「見てる方が楽しいだろ」
 難色を示すヴァルフレードだったが。
「一緒に参加したいんだけど……だめ?」
 ほんの少し悲しそうに眉を寄せ、ヴァルフレードの瞳をのぞき込む。
「……う……っ」
 普段はファリエリータをからかって楽しんでいるヴァルフレードだが、彼女のこんな表情には弱いらしい。
「ファリエ1人じゃどんな失敗やらかすかわかったもんじゃないからな」
 と、もっともらしい理由をつけて結局ファリエリータのおねがいを聞くのだった。

「え?サーカスをやってみないか?」
 銀雪・レクアイアは面食らう。
「そうだ。今朝、家の郵便受けにこんなものが入っていてね」
 リーヴェ・アレクシアは銀雪にベルガモ団のビラを手渡す。
「サーカス体験……」
 ビラに目を通した銀雪が呟くと、リーヴェは悠然と笑って頷く。
「どうだい、楽しそうじゃないか」
 体を動かしたり、滅多にできないことを経験したりするのはリーヴェが好みそうだ、と銀雪は納得した。
「もちろん、銀雪もやるだろう?」
「えー……と、うまくやれる自信はないけど……」
「初めてやることがうまくできる者なんていないよ」
 と、リーヴェは笑い飛ばす。
 リーヴェは「うまくできない」ということすら楽しんで自分の糧にしてしまえる人なのだ。そんな彼女にこう言われれば、一緒になんでも挑戦できそうな気がするから不思議だ。
「じゃあ、一緒に参加することに決定だな」
「頑張ってみるよ」

●リハーサル
 当日は、開園より2時間ほど前からリハーサルを行った。
「演目はどれにしようかしらっ。どれも面白そうだけど……えーと、猛獣使い! 怖そうなライオンに芸をさせるなんて楽しそうっ」
 瞳をきらきらさせるファリエリータ。
「あとは空中ブランコに挑戦してみる!」
「そんな難易度の高いもの……大丈夫か?」
 心配そうなヴァルフレード。
「難しそうだけど、その分出来たらきっと嬉しいし気持ちいいと思うものっ。ヴァルは運動神経いいし、きっと大丈夫っ」
「……へ?俺も?」
「空中ブランコは2人参加が必須だから、よろしくねっ」
 にっこり笑顔のファリエリータに押し切られ、ヴァルフレードも空中ブランコに挑戦することになった。
「リーヴェは、何をするの?」
 銀雪はサーカス団のテント内を見渡しリーヴェに訊く。
 床には玉乗りの玉が転がり、天井からはブランコがぶら下がり、端の方には動物たちがいる。リーヴェはどの演目を選ぶのだろう?
「そうだな。とりあえず、全部……」
「ええっ」
「……は無理だから、ひとつに絞ろう。馬の曲乗りなんて気持ち良さそうだ」
 銀雪はほっと胸を撫で下ろす。リーヴェなら本当に全部やってしまいかねないから恐ろしい。

「動物と一緒に演るなら、まずは動物と仲良くならないとね」
 と、団長のシロー・ベルガモ。
 ファリエリータはライオンの檻の前に案内される。
「この子がミケちゃんよ」
「ミケ?」
 もちろん、目の前にいるのは三毛猫などではない。茶色一色の立派なオスライオンである。
「そうよ。名前はミケランジェロ。通称ミケちゃん。仲良くしてあげてね」
 調教師がミケを檻から出し、
「ミケに餌をあげて、挨拶してみてください」
と、ファリエリータにキャットフードを手渡す。
「あの……これは?」
「あ、ミケが大好きなおやつなんです。食事はちゃんとお肉を食べてますよ」
 調教師はにっこり笑う。
 ファリエリータは餌の皿にキャットフードを移す。
「餌と間違えられて食べられるなよ~」
 楽しそうにヴァルフレードが言う。
「ヴァル!こっちは真剣なんだからねっ」
 ファリエリータはヴァルフレードをひと睨みしてから、ミケの前にしゃがみ、そっと餌の皿を置く。
「こんにちは、ミケちゃん。今日はよろしくね」
 すると、ミケは大きく咆える。
「きゃっ」
 ファリエリータは一瞬びくっとする。しかし、勢いよくキャットフードを食べ始めるミケに、笑みがこぼれる。
「喜んでくれたみたい。撫でたりしても、嫌がられないかしら……?」
「そっと鼻筋を撫でてみてください」
 調教師に言われ、ファリエリータはミケに手を伸ばす。
 ファリエリータの手が触れると、ミケはぶるるっと顔を振る。
「ご、ごめんなさいっ」
 ファリエリータは少し手をひっこめる。が、今度はミケが自ら近寄ってきて、ファリエリータの手に顔を擦りつけ始めた。
「ミケは、ファリエリータさんが気に入ったみたいですね」
「本当?嬉しい!」
 その後、あちこち撫でたりブラッシングしたりするうちに、ミケもファリエリータもお互いに慣れてきて、最後には頬を寄せ合うまでになった。
 そんな様子を見てシロー・ベルガモはうっとり。
「ミケちゃん気持ちよさそうね。アタシもファリエリータちゃんにほっぺたすりすりしてもらいたくなっちゃう~」
「ダメです」
 笑顔で即答するヴァルフレードであった。

 リーヴェと銀雪は、馬が繋がれている厩舎へ。
「乗せてもらうのだから、ちゃんと挨拶しないとね」
 と、リーヴェ。
「おとなしい馬だといいなぁ」
 2人の前に連れてこられた2頭は、黒毛に一筋の白毛が走るライトニング号と、栗毛にまだらの白毛が混じるサンダーボルト号。
「近くで見ると、意外と大きいんだね」
 飼いならされた安全な馬だとわかっていつつも緊張してしまう銀雪。
 リーヴェは早速ライトニング号を撫でつつ
「今日は楽しませてもらうよ、よろしく」
と挨拶をしている。
 銀雪は、よし、自分も、と思いサンダーボルト号に手を伸ばすが……。
 べろりっ。
「うわっ」
 先にサンダーボルト号から手を舐められて驚いてしまう。
 それを見てリーヴェが楽しそうに笑う。
「随分その子に気に入られたみたいだね」
「あ、はは、そうみたいだ」
 銀雪もつられて笑うが、背中には冷や汗が伝うのだった。
「本番は団員と一緒に乗りますが、まず、おひとりでも並足で乗れるようにしておきましょう」
 と調教師に言われ、2人は馬に乗ることに。
 調教師の指導をひととおり最後まで聞いてから慎重に挑戦する銀雪。
一方、リーヴェは指導されたそばから実践し、すでに馬上の人となっている。
「結構揺れるんだな」
 時折バランスを崩しながら、それでも楽しそうに馬を歩かせる。
 銀雪も馬に乗り、リーヴェの隣に並んだ。
「いつもより目線が高いと視界が全然違うんだね」
「でも馬上から見える高さもいいと思わないか」
「そうだね」
 銀雪はリーヴェの横顔を見る。
 まだ少々危なっかしいが、騎乗するリーヴェは凛々しく魅力的だ。
 こんな風に、ふたり並んでの乗馬も悪くないな、と銀雪が思っていると……。
 急にサンダーボルト号がぶるるっと体を震わせ、バランスを崩す。
「うわっ」
 調教師が
「サンダーボルト号は女の子ですから、乗り手が他の女性に見惚れていると怒るんですよ~」
と笑った。

 リーヴェと銀雪が馬に慣れたころ、ファリエリータとヴァルフレードは空中ブランコの練習を始めていた。
「きゃー、高いっ。5メートルってこんなに高いの?」
 ブランコに乗って下を見たファリエリータは驚愕する。
「落ちるなよ~」
 反対側のブランコに乗るヴァルフレードが楽しそうに言う。
「お、落ちないもんっ」
 2人が挑戦する技は、ブランコに膝をかけた状態で乗り、真ん中でお互いの手にタッチするというもの。
 しかし、何度やってもファリエリータのブランコの勢いが足りず、手はヴァルフレードに届かない。
「やっぱりダメかも~」
 何度目かの失敗の後、気分を入れ替えるために休憩をとるが、ファリエリータの口からは珍しく弱音が出る。
「もう一回やろう、ファリエ。お前が頑張って、それでも届かない分は俺がなんとかするから」
「う……うん」
 ヴァルフレードに励まされ、再び練習に戻る。
 言葉通り、ヴァルフレードは今までよりもぐんと手を伸ばしてくれる。これ以上伸ばしたら落ちてしまうんじゃないかと思うくらい。
(私も、ヴァルに応えなきゃ!)
 ファリエリータのブランコが大きくスイングする。肩から指先まで、思いきり伸ばす。
 掌が一瞬、ヴァルフレードの大きくて暖かい手に触れた。
「やった!届いた!できたよヴァル!!」
 ブランコから降りた2人は互いに駆け寄りハイタッチ。
 そこで、
「そろそろリハーサルは終わりよ~」
とシロー・ベルガモの声がかかった。

●サーカス開演
 いよいよサーカスが始まった。
 前半は、団員たちによるサーカス。ファリエリータたちも観客として演目を鑑賞する。4人には一番見晴らしのいい特別席が用意された。
「すご~い、玉乗りって、どうやってやるのかしら!」「あっ、あんな細い綱を渡るの?落ちちゃうよ、落ちちゃうよ~!」
 演目を見るたび素直に反応するファリエリータ。他の3人はそんな彼女をまるで親のように温かい目で見るのだった。
 前半の演目が終わり、インターバルとしてピエロが手品を始めると、4人は出演準備のため楽屋に移動した。
「じゃじゃーん!いくつか衣装を用意したわ。好きなのを着てちょうだい」
 シロー・ベルガモがクローゼットを開ける。煌びやかな衣装の数々が目に飛び込んできた。
「私は華やかなのがいいなぁ。せっかくだから綺麗な衣装が着たいもの」
 ファリエリータが言うと、
「これなんかどうかしら」
と、シロー・ベルガモは何着か衣装をピックアップする。
「あ、これ!この、ビジューがたくさんついたのがいいな」
 ファリエリータは、ブルーの生地に色とりどりのビジューが着いた衣装を手にとる。
「じゃあ、ペアになるあなたはこれがいいわね」
と、シロー・ベルガモは手早くヴァルフレードの衣装も選ぶ。
「私の背丈に合う衣装って男物なんじゃないか?別に私はそれでも構わないけど。」
 185センチメートルの高身長であるリーヴェが、いくつかの衣装を体に合わせながら言う。
「しかし、派手だな」
「やめておこうか?」
 実は派手な衣装に若干抵抗がある銀雪が訊くが、
「いや、せっかくだから着てみよう。サーカスは見た目の華やかさも重要だろう」
と、リーヴェは衣装に抵抗がない様子で、サーカス団の衣装担当者から勧められたライトグリーンのタキシードを着ることに決めた。
「どう?着替えてきたよ」
 ファリエリータとヴァルフレードの着替えが終わったようだ。
「キラキラしてて素敵でしょ」
 くるりと回ってみせるファリエリータ。ミニスカートがふわりと浮く。
「ファリエ……スカート短すぎないか」
 思わず年頃の娘を持つ中年男性のようなことを言うヴァルフレード。
「大丈夫、タイツ穿いてるし、寒くないよ?」
 実際スパッツ素材の厚手のタイツを穿いているのだが、ヴァルフレードの言いたいことは熱いか寒いかということではない。
「ヴァルもかっこいいね」
 ヴァルフレードはファリエリータと同じブルーの生地にビジュー付きで、まるでフィギュアスケート選手のような衣装。
「日常生活じゃ絶対に着ないよなぁ、こんなの」
「だから良いんじゃない!」
 リーヴェと銀雪も着替えを終える。リーヴェはライトグリーン、銀雪はライトブルーの色違いのタキシード。大きく花の刺繍が施されている。タキシードとはいえ、動きやすい素材で作られているので馬に乗るのに支障はない。
 派手な衣装に気後れしている銀雪だが、リーヴェの方は堂々としており、まるで舞台俳優のような貫禄すらある。
(リーヴェは本当に、なんでも似合うなぁ)
「そんな風に見惚れていると、またサンダーボルト号に怒られますよ」
 いつの間にか楽屋に来ていた馬の調教師にからかわれ、
「い、いや見惚れているとか、そんな」
と慌てる銀雪であった。

 さあ、体験サーカスが始まった。
 一番目は、ファリエリータの猛獣使い。
「本番もよろしくね、ミケ」
 ファリエリータが手を差し出すと、握手するかのようにミケも前足を挙げファリエリータの手に乗せる。
 ミケと共に会場に足を踏み入れると、眩しく熱いスポットライトがファリエリータを照らし、渦巻くような歓声と拍手。
(すごい……飲み込まれそう!)
 不安になって後ろを振り返ると、小さく手を振るヴァルフレードが目に入った。
(よし、ヴァルにいいところを見せちゃうんだからっ)
 ファリエリータは気合いを入れ直し、ミケを撫でながら会場の中央へ。
『みなさん!この可憐な少女が見事狂暴な猛獣を従わせることができるでしょうか!』
 司会者の声が響く。
(本当は狂暴なんかじゃないけどね)
 ファリエリータは思わず笑ってしまう。
 ミケは、ファリエリータの命令で二足歩行、平均台を難なくクリア。そのたびに、ご褒美のキャットフードを与える。
『最後は大技!火の輪くぐりです!』
 会場に燃え盛る火の輪が運び込まれる。
 火の輪を間にはさんで向かい合うミケとファリエリータ。
「おいで、ミケ!上手にできたらぎゅーってしてすりすりしてあげる!」
 ファリエリータがそう声をかけると、ミケが走り出す。
 そして颯爽と火の輪をくぐり抜けた!
 ひときわ大きな歓声があがる中、ミケがファリエリータの胸に飛び込んでくる。
「よしよし、良い子良い子!」
 ファリエリータは約束どおり、ミケをぎゅっと抱きしめ、ほおずりをした。
「気持ちよさそう~。やっぱりアタシもすりすりして欲しい~」
「だからダメですってば」
 会場袖ではシロー・ベルガモとヴァルフレードが再度そんなやりとりをしていた。

 ファリエリータとミケが退場すると、入れ違いに出て来たのはリーヴェと銀雪。
 団員と一緒に馬に乗り、優雅に観客に向かって手をふる。
「え、あの人、もしかして女の人じゃない?」
「うそっ、すごくカッコ良くない?」
「素敵~~~っ!!」
 リーヴェの姿は、一部の女性客の心を鷲掴みにしたようだ。
 存在感が薄れてしまった銀雪だが、そんなことは全く意に介していない。むしろ、観客の視線を一身に浴びるリーヴェを誇らしくすら感じていた。
 スポットライトを浴びるとリーヴェの金色の髪がますます輝く。
(綺麗だなぁ)
「ぶるるるるっ」
 サンダーボルト号が激しく首を振る。どうやら機嫌を損ねたようだ。
「ご、ごめんね、サンダーボルト号」
 銀雪は慌ててサンダーボルト号の首を撫でた。
 軽快な音楽に合わせて曲乗りがスタートする。
 リーヴェと銀雪は手綱を持って座っているだけだが、後ろに乗っているサーカス団員は立ち上がって両手離しや片足乗りなどのパフォーマンスを繰り広げる。
 サーカス団員がジャンプして互いの馬に乗り換えるという大技を披露し観客が盛り上がったところで、団員は銀雪に声をかける。
「最後の挨拶です。2頭が並ぶので、銀雪さんも、ちょっとした技に挑戦してください」
「えっ?」
 突然話をふられて驚く銀雪。何か技をやれだなんて、心の準備が出来ていない。
「右手を離して、リーヴェさんの方に伸ばして」
 見ると、リーヴェもこちらに手を伸ばしている。
「2人で手を繋いだまま走りますよ」
「は、はいっ」
 リーヴェが笑顔で銀雪を見ている。銀雪の胸から、不安や迷いが消えていく。リーヴェの存在は銀雪にとって、何にでも効く薬のようだ。
 しっかりと手を繋ぐと、会場からは歓声があがり、リーヴェの顔に会心の笑みが浮かぶ。
 そのまま場内を一周して、リーヴェたちは退場した。

 そして会場には空中ブランコが準備され、再びファリエリータの出番。
 今度はヴァルフレードも一緒だ。
「う……なんだか緊張してきちゃった」
「大丈夫かファリエ。まじないで、掌にヒトデって書いて飲み込むと良いらしいぞ」
「それ多分ヒトデじゃなくて人……」
「なんだ、知ってたか」
「ヴァル~」
 恨みがましい目でヴァルフレードを見るファリエリータ。だけど、ヴァルフレードなりにファリエリータの緊張をほぐしてくれているのだとわかる。
 会場に出て観客に挨拶を済ませると、2人は別々の方向にある台を登る。
 高さ5メートルの空中ブランコ。観客からはそんなに高くなく見えるだろうが、実際にやるとなると、地面がとても遠く思える。
(大丈夫。だって、ヴァルがいるもん)
 ファリエリータはえいっとブランコを漕ぎだす。
 一回目のスイングが終わると、体勢を入れ替えてブランコに膝をかける。
 顔をあげると、向こう側から、同じようにブランコに膝をかけてスイングするヴァルフレードが見える。
(ヴァル、いくよっ)
 ファリエリータは手を伸ばす。ヴァルフレードの手に、届け……!
 ファリエリータは掌にヴァルフレードの手の温かさを感じた。そして一瞬、ファリエリータの手が力強く握られる。
(成功したわ!)
 2人はすぐに離れていくけれど、力強い手のぬくもりはしばらくファリエリータの手に残っていた。

●公演を終えて
「あなたたちのおかげで今日のサーカスは大成功よ!」
 楽屋で、シロー・ベルガモが笑顔で4人をたたえる。
「私、この衣装気に入っちゃった。もうちょっとカジュアルダウンして、普段にも着られるデザインだと良いなぁ。ね?ヴァル?」
「ん、そうだな」
「もー、ちゃんと見て言ってよっ」
 ファリエリータがふくれるが、ヴァルフレードは不覚にもファリエリータの脚線が気になってしまい直視できなかったりするのだ。
 と、そこへ、遠くから女性の歓声が響く。その声はだんだん近づいてきて……。
 ばぁんっと楽屋のドアが開け放たれ、女性たちがなだれ込んできた。
「きゃー、いたわ!」
「本物よ!」
「近くで見ても素敵~!」
 彼女たちの視線の先にいるのは、リーヴェであった。
「サインください!」
「一緒に写真撮ってくださ~い!!」
 きゃあきゃあと黄色い声が飛び交う。
「すごいな……」
 茫然とするヴァルフレードに、なぜか自慢げに「でしょう」と頷く銀雪。
 ライトニング号の前に立ち、次々と女性客との記念撮影に応じるリーヴェ。
「なるほど……この方向で売る団員がいてもいいわね。勉強になるわ~」
 と感心するシロー・ベルガモ。
 記念撮影の女性客が帰ると、リーヴェが銀雪に向かってほほ笑む。
「私たちも、一緒に記念撮影しようか?」
「えっ。写真?一緒に?」
 しどろもどろになってしまう銀雪。
「何故、そこでお前が紅くなるんだ?」
 リーヴェが怪訝そうな顔をする。
「だって、こういうのは、その……」
「こういうのは、なんだ?」
「だから……ちょっと照れるというか……」
 すると、リーヴェがくすくす笑い出す。
「……お前は、時々可愛いことを言うね」
「か、可愛い……?」
 男性にとっては、あまり褒め言葉ではない。
「ああ、悪い意味じゃないよ、いい意味だが、男に可愛いはないか、悪いな」
「いや、いいけど……可愛い……」
 銀雪にとっては少なからずショックだったようだ。
 リーヴェから見たら、銀雪は可愛い子供と変わらないのかもしれない。
「じゃあ、記念撮影はやめておくかい?」
「いや、やるよ!写真くらい受けて立つよ!」
「受けて立つって……戦いじゃないんだから」
 そう言われてますます頬が熱くなる銀雪。
「はーい、じゃあ写真撮るわよ~」
 シロー・ベルガモがリーヴェと銀雪の写真を撮ってくれたが、きっと少女のように紅潮した頬の銀雪が写っていることだろう。


 楽しい興行は幕を閉じた。
 次はどの街へ行くのかベルガモ団。
 またタブロスに来たときには、どうぞよろしくお願いします……。



依頼結果:成功
MVP
名前:リーヴェ・アレクシア
呼び名:リーヴェ
  名前:銀雪・レクアイア
呼び名:銀雪

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月03日
出発日 06月11日 00:00
予定納品日 06月21日

参加者

会議室

  • お久しぶり、ファリエリータ。
    こちらこそ、よろしく。

    私達は馬の曲乗りをする予定だ。
    振り落とされないようにしないと(笑)

  • リーヴェ、久しぶりねっ。よろしくね!

  • リーヴェだ、よろしく。
    さて、上手くやれないなりに何かやってみようかな。

  • 私はファリエリータ・ディアル! よろしくねっ。

    サーカス体験、面白そうー! もちろん参加するわっ。
    演目はまだ考え中!


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