急流カヌーレース(うち マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 ●ヘヴンリバー

 ここはヘヴンマウンテンから流れる川、ヘヴンリバー。
 澄んだ川の水が流れるこのヘヴンリバーで今、ミラクル・トラベル・カンパニーのツアーコンダクターが今回のイベントについての説明が始まる。

「シュピーゲル財閥の傘下の観光会社、ウィンクルムさん達の愛の架け橋、ミラクル・トラベル・カンパニーが今回貴方達にお届けするのは『ヘヴンリバー急流カヌーレース』ですっ!」
 滑舌の良い女性のツアーコンダクターの元気な声がマイクを通してその場に響き渡る。
「ルールは簡単! 今私が居るヘヴンリバーの上流から下流まで二人乗りのカヌーで川を下っていくだけ! 途中にある3つのチェックポイントでは最初に到着したペアに食べ物が用意されており、足止めと引き換えに完食する事でポイントが加点され、ゴール時にポイントが一番多い方が優勝という形で賞金の1000Jr〈ジュール〉。因みにポイントはゴールに先着されたペアに加算されます。しかし、カヌーが転覆するとポイントが減点されるので安全運転を心掛けたほうが良いかもしれませんね」

 解説をする女性のツアーコンダクターはそこで言葉を止め、口を開くと共に3つのカヌーの紹介を始める。

「そして今回ウィンクルムさん達に乗っていただく二人乗りのカヌーなんですが大、中、小と3つの大きさが用意されているんです。参加するウィンクルムさん達はお好みの大きさを選んで頂き、二人で漕いで漕いで漕ぎまくって下さい」

「申しお遅れましたが、実況をやらせて頂くのは私、つくねちゃんこと、南条つくね。南条つくねです。今後共よろしくお願い致しまーす!」

 そう言ったツーサイドテールのツアーコンダクター、つくねは右手を振ってアピールをする。

解説

 ●参加費用
 300Jr

 ●優勝賞金
 1000Jr

 ●ポイントについて
 チェックポイントはその時点での1位にのみ食べ物が出されます。
 食べ物はそれぞれ素麺、西瓜、かき氷、量は多くはないが下船しないといけない為そこそこのタイムロスとなるだろう。完食する事で10点のポイントを得る。
 ゴールする事で1位が20点、2位が15点と以下5点ずつ減算したポイントが加点されます。

 ●カヌーの種類
 大カヌー 大きいオールのお陰で加速が早いが、方向転換がし難い事とバランスを取るの が難しい。
 小カヌー 小回りが効くが、加速に難あり。
 中カヌー 丁度大小のカヌーの間の性能、クセがなく扱いやすい。
 それぞれ自分にあったカヌーをお選び下さい。(魅力、直感力、段取力等が関係するかも)

 ●大事な事
 精霊と一緒にオールを漕ぐのですが息が合っていないと思ったより速度が出ないかもしれません。
 プランにはカーブに差し掛かった時に内側を攻めるのか外側を攻めるのか、或いは真ん中を攻めるのかを必ずお書き下さい、コースが被るとカヌーがぶつかったり、コース選択でカヌーの速度に関係するかも……。
 精霊さんのやる気の度合いも大事になってきます。

ゲームマスターより

 どうもうちと申します。
 まずはプロローグ閲覧ありがとうございます。

 さてさて今回のエピソードは二人乗りカヌーでのレースです。
 相方の精霊さんとの距離を物理的に縮めて尚且つ賞金を狙って行きましょう。

 意外とコース選択、カヌー選択は大事なのでよく考える事をオススメします。
 ヘヴンリバーは上流から中流に掛けては曲がりくねっていますが、下流付近になるとゆったりとしたカーブになり、直線が増えます。

 つくねちゃんがきっと色々実況してくれるでしょう……。

 会議室ではコース選択などの話で盛り上げつつ、他の参加者の裏をかいて1位を狙いましょう。
 心理戦は既にッ! この時点から始まっているッ!(適当な煽り文句

リザルトノベル

◆アクション・プラン

篠宮潤(ヒュリアス)

  食べ物完食、があるんだ、ね…
……甘いの、無ければいいなぁ…(遠い目)

小ボート・カーブは内側狙い
カーブ時は物凄い慎重にスピード落とす(小回りの意味は…)
「えっと小回りが利く、のでいいかな?ヒューリ」
「だ、だって…っ、前に転覆しかけた、し…っ」
びくびく
直線は漕ぐ 全力で 体力と直感力の赴くまま

かき氷にあたったら、シロップの量によっては凄い時間ロス
(2人共甘いの苦手 キーンはこないのに)
「ヒューリっ?解けたシロップの水っ、なんで僕のとこ入れる…の!?」

小回りがきく分と、完食のダメージ次第で後半酔う 2人して
「つ、着いた…っ? わわわ!(どばしゃーん)」
折角無事到着しても、最後にして水浸しかもしれない


月野 輝(アルベルト)
  カヌー:大
カーブ:外側

楽しそうと思って参加決めたのはいいんだけど、私カヌーって乗った事ないのよね…
公園の貸しボートくらいならあるけど、そんな感じで大丈夫かしら?
何となく大きい方が安定してそうだし、大きいのにしましょ
大きいと小回り効かなさそうだから外側をゆっくり回るといいかしら?
目標は完走ね

参加者もしかして二組だけ?
潤さん達と一緒なら楽しくなりそうね

え?優勝?
無理よ、私、初心者だもの(くすくす笑う

もし1位で通過できた場合は頑張って食べ物食べるわ
でもかき氷…嫌いじゃないんだけど、あれ、キーンってなるのよね…
そしたら漕ぐどころじゃなくなりそう…

あとは、万が一に備えて服の中に水着着て行っちゃおうかしら



 ●カヌー選択

『ミラクルっトラベルっカンパニーっ!』
 ヘヴンリバーの上流、『ヘヴンリバー急流カヌーレース』のスタート地点でツアーコンダクターつくねが滑舌の良い元気な声で会場を盛り上げていく。
『まずはカヌーレースに参加してくださったウィンクルム〈神人と精霊のペア〉の紹介からさせていただきまーすっ!』

『先ずは1組目のウィンクルムの紹介です。神人の篠宮 潤さんと精霊のヒュリアスさんです』
 つくねがそう言うなりつくねに向いていたカメラが一斉に『篠宮 潤』と『ヒュリアス』に向けられる。
「ウル、以前のが余程楽しかったのかね? いや、いいのだがね……」
 カメラを向けられてもヒュリアスは何も問題はない、と堂々とした風である。
「わ、わ……ヒューリ、カメラ、僕ら写ってるよっ!」
 逆にやや浮足立った感じの潤はヒュリアスの袖を引きながらそう口にした。
「そりゃあそういう企画なのだから当たり前じゃないかね?」
 やれやれと小さく頭を振ってヒュリアスは溜め息を吐く。

『続いて2組目のウィンクルム、神人の月野 輝さんと精霊のアルベルトさんです』
 潤達に向けられていたカメラが紹介された『月野 輝』と『アルベルト』に向く。
「えぇ!? これってテレビに映るの!? そんなの私聞いてないわよっ!?」
 小声で隣に居るアルベルトに言いながら、動揺を悟られないように輝はカメラに向かってにこやかに手を振る。
「ミラクル・トラベル・カンパニー主催のイベントですからね、そういうのもあるのでしょう。参加すると決めたのは輝なんですから私に文句を言うのは筋違いですよ」
 アルベルトも輝に小声でそう返す。

『参加者は以上となりまぁぁぁす!』
 ブンブンとマイクを振り回しかねないテンションでつくねの紹介が終わる。
『それでは、肝心要のカヌーの選択に移りたいと思います。参加者の方はカヌーを選択して下さい』
 司会兼実況のつくねの進行で3種類のカヌーにスポットが当てられる。
「えっと小回りが利く、のでいいかな? ヒューリ」
「どれでも構わんよ」
 既に決めていたのか潤、ヒュリアス組は迷いなく小カヌーを選択。

「何となく大きい方が安定してそうだし、大きいのにしましょ。目標は完走ね」
 輝は少し考えて大カヌーを選ぶ。
「カヌーは確か大きいのは安定が悪いはずですし、上流を乗り切るには小さい方が……って、輝? 人の話を聞いてませんでしたね。どうしてよりによって大きいのを選ぶんですか、全く……」
 しかし、決めてしまったものは仕方ないと諦観しつつも輝の選んだ大カヌーの方へと歩いて行く。



 ●カヌーレース開始

『カヌーの選択も無事に終わったと言う事でっ! いよいよ始まります。いえ、始めさせてもらいますっっ! 参加者の2組は選んだカヌーへ乗船してスタート地点に着いて下さーい』
 つくねに促され、潤組も輝組もカヌーに乗る。
 スタート地点ではカヌーが勝手に進み出さないように後部に紐が括られているが、それは前に進まないだけで重心は既に乗船した2人に委ねられている。
 案の定、グラグラと揺れるカヌーの感覚に輝は体を強張らせていた。
「あ、と、と……カヌーって、けっ結構揺れるわね」
「落ち着いて下さい輝。しっかり前を向いて……そう。重心は後ろに掛ける感じです」
 アルベルトはじたばたする輝を落ち着かせてバランスを取ろうとする。
 輝も一応は武術を学んでいる、コツさえ分かれば徐々に安定してくる。

「お、お……」
 一応ラフティングの経験のある潤とヒュリアスは前回の経験を活かしてバランスを安定させる事が出来るのだが、小カヌーの性質上やや密着する形になっている為、どちらかと言うとその距離感に潤がオロオロしている感じである。
「ウル、少し落ち着きたまえ」
「わ、分かってる」

 そうこうしている内にもスタートの時間は迫り。
『大変長らくお待たせいたしました。それでは『ヘヴンリバー急流カヌーレース』いよいよ始めさせていただきますっ!』
 準備が整ったらしいつくねがスタートの合図を始める。
『それでは、スタートですっっ!』
 つくねの合図と共にカヌー後部の紐が切られ、潤組のカヌーも輝組のカヌーも川の流れに乗って、急発進し始める。

「よーし、ヒューリ頑張って漕ぐよ!」
『先ず最初に出たのは潤、ヒュリアス組。ラフティングの経験を活かして小オールを回転良く漕いで加速していくぅー!』
 中継カメラの映像を見ながら実況をするつくね。
『対して輝、アルベルト組は横揺れに対応しながらも緩やかに加速していっているようです!』
「ふふ、潤さん達と一緒なら楽しくなりそうね」
「輝、またお会いできて嬉しいのは判りますが、手を振ってる場合じゃないですよ。オールが止まってカヌーがサッパリ進まないじゃないですか(でもまあ、こんなにはしゃいでる輝は珍しいですし、代わりに私が頑張るとしましょうか)」
 前に乗った輝に見えないように柔らかく笑ったアルベルトは大カヌーの大きなオールを力強く漕いでゆっくりと加速させていく。

『そろそろ最初のカーブが見えてきたようです。序盤のリードを保ったまま潤、ヒュリアス組がカーブに差し掛かるぅぅっ!』
「ヒューリ、内側を行くよ」
「それは分かったのだが、ウルは……泳げない訳でもなかろう。何故そんなにスピードを落とすのかね?」
「だ、だって…っ、前に転覆しかけた、し……っ」
『おおっと、潤、ヒュリアス組は内側〈インコース〉を攻め、距離的には短縮されてはいるのですが、川の流れは外側に強く流れている事と転覆を恐れたのか速度を落としている為、大きく減速することになってしまったー!』

『その間に輝、アルベルト組の大カヌーが追い付いて来ました!』
「大きいと小回り効かなさそうだから外側をゆっくり回るといいかしら?」
 横揺れやバランスの取り方にも慣れてきたのか輝は楽しそうにアルに声を掛ける。
「そうですね。と言ってもこの大カヌーで初心者の私達が方向転換するのは中々難しいので流れに逆らわずに外回りするしかなさそうです。バランスを取る事と岩などにぶつからないようにだけ気を付けましょう」
「分かったわ」
『輝、アルベルト組は流れに逆らわず、外側〈アウトコース〉を選んだようで、あまり減速せずにカーブを攻めていっています! これによって徐々にですが先頭の潤、ヒュリアス組に追い付こうとしています!』

 右へ左へと続く急カーブの連続で徐々に徐々に差が埋まり、最初のチェックポイントが見える頃には輝組が先頭を進むようになっていた。
『上流の連続カーブを制したのはなんと輝、ヒュリアス組! そして先頭の右手の方に見えてきたのが最初のチェックポイントです! しかーし、輝、ヒュリアス組はカヌー初心者との事です。大カヌーで無事にチェックポイントで止まる事が出来るのかーっ!』
「無我夢中で漕いでたらいつの間にか先頭になってたみたいね……」
「そのようですね。輝、チェックポイントのようです。私達が先頭のようなので止まってポイントを貰いましょう。優勝の為の第一歩ですよ」
「え? 優勝? 無理よ、私、初心者だもの」
 アルベルトの言葉にくすくすと笑う輝。
「優勝できる訳がない? やるからには優勝目指しますよ、当然でしょう。ほら、減速しますよ」
 アルベルトの言葉に従って、速度の乗った大カヌーをゆっくり減速させながらチェックポイントの岸まで緩やかに寄せていく。
『輝、アルベルト組。少々危な気でしたが、なんとか最初のチェックポイントに辿り着けたようです』

「ああっ、先を越されてしまった!」
「小カヌーを選んだのにウルが減速を続けるからだろう。……いや、なんでもない。今の内に私達は先に進むとしよう」
 悔しそうな潤を見て微かに笑い、気を取り直したヒュリアスは潤を励まして速度を上げていく。

『最初のチェックポイントでのお題は『素麺』です! 二人分のお椀によそわれた素麺と麺つゆがテーブルの上に用意されていますので急いで食べないと追い抜かれてしまった潤、ヒュリアス組に追い付けません!』
 輝はテーブルの上のお椀と箸を取るなり、麺つゆに麺を絡めながら音を立てて啜る。
「ずぞぞぞぞぞっ」
「輝、もう少し上品に食べられませんか?」
「素麺っていうのはこう食べるのが正解よっ」
 そう言いながらも輝は男前に素麺を啜り、すぐにお椀の素麺を完食。
 アルベルトもすぐに食べ終わり、輝組は急いでカヌーに乗る。

『輝、アルベルト組。無事、第1チェックポイントを通過ですっ! しかーし、その間にも潤、ヒュリアス組はどんどん進んでいるぞー!』
 輝組が第1チェックポイントを通過した頃、潤組は上流から中流に掛けての曲がりくねった道を通過して、次の第2チェックポイントに差し掛かろうとしている所だった。
「ウル、次のチェックポイントが見えてきた」
「う、ん。輝さん達はまだ、来てないみたいっ」
 小さく漕いでチェックポイントに着いた潤達を待ち構えているのは西瓜。
『ここで潤、ヒュリアス組が一気に第2チェックポイントに到着です』
 第1チェックポイントと同じくテーブルの上に1/8ぐらいまで切り取られた西瓜が2つ置いてある。
「西瓜は甘いけど、果物なら……うん、美味しい」
 言って潤はガブリと西瓜に齧り付く。
「ウル、西瓜は果物ではなく野菜だ……」
 やれやれと小さく溜め息を吐いてヒュリアスも西瓜をしゃくしゃくと食べ始める。
 5分程で完食、後続の輝達を気にしてカヌーに乗る。

『さぁ、第2チェックポイントも無事に通過されました。ここで第1チェックポイントで足止めされていた輝、アルベルト組が潤、ヒュリアス組に追い付いてきました!』
「アル、潤さん達に追いつけたわよ!」
「輝、さっきからカーブを曲がり切れずにぶつかりながら進んでますけど……これ、大丈夫なんですかね」
 それでも転覆しないのは武術で鍛えられたバランス感覚のお陰なのだが、カヌーについては初心者の輝もアルベルトもそれに気付くことはなかった。
『第2チェックポイントを通過しての順位を発表しまーすっ! 1位は変わらず潤、ヒュリアス組で、2位は輝、アルベルト組となっておりますが、1位と2位の差は殆どありません! さぁ、この『ヘヴンリバー急流カヌーレース』もいよいよ中流に入り、中盤戦に差し掛かろうとしています。今までの急なカーブとは違い、緩やかなカーブの続く中流から下流のコースでこの順位は入れ替わるのでしょうかーっ! と言った所でCMに続きます! あ、嘘です嘘吐きました』

 等といったつくねのマイクパフォーマンスの中でも輝組、潤組は大小のオールを懸命に漕いで前へ前へとカヌーを進ませる。
 中流に入ったという事で上流の岩や大きな石とは違い、小さな石や荒い砂などが増え、大カヌーへの障害物が少なくなり輝組の大カヌーの速度が上がっていく。
 しかし、息の合ったとは言いづらい輝とアルベルトのオール捌きでは潤とヒュリアスの小カヌーにギリギリ追い付けない、と言った感じで小競り合いを続ける。
『ただ今、第2チェックポイントを超えての小競り合いが白熱しております。直線での加速は大カヌーに乗る輝、アルベルト組が早いのですが、小カヌーの潤、ヒュリアス組、直線では全力で漕ぎ進めている為、中々差が埋まりませーん! そう言っている内に次のカーブに入りましたぁー!』
 作戦通り、潤組は小カヌーの小回りを活かして内側を攻める。
 最初のような減速もあまりせず、内側を攻める事で2位との差を埋めさせないどころか逆に離している。
 その差が埋まらないまま第3チェックポイントが見えてくる。

『いよいよレースも佳境、最後の第3チェックポイントが見えて参りましたァー! 第3チェックポイントの食べ物はかき氷、暖まった体に心地良いのではないでしょうか!』
「ヒューリ、第3チェックポイント、見えて、来たよっ!」
「あぁ、この差であればこのチェックポイントでタイムロスしてもゴールを狙えるだろう……」
 滑るように第3チェックポイントへと着いた潤とヒュリアスはかき氷(いちごミルク)を見て伸ばし掛けた手が止まる。
「うわ、凄く甘そう、だっ」
「む……」
 しかし、急いで食べない事にはチェックポイントを抜け出せない。
 2人は嫌そうな顔をしつつ、匙でかき氷を掬う。
 一口、二口、と口にするがみるみる内に2人の顔色が悪くなっていく。
 別に冷えて頭がキーンとなっている訳ではなく、ただ単純に2人とも甘いモノが苦手なのだ。
 かき氷から顔を背けるようにしていた潤の容器にヒュリアスは自分のかき氷を移す。
「ヒューリっ? 解けたシロップの水っ、なんで僕のとこ入れる……の!?」
「女性は甘いものが好きなのだろう?」
「ち、違う……よっ!」
「なに、違う? それは失敬」
「ううっ……」
 かなりの時間を掛けてなんとか完食したが、潤の顔色はかなり悪い。
「分かった分かった。詫びに目一杯漕がせて頂くよ」

『潤、ヒュリアス組、なんとか第3チェックポイントも通過しました! ですが、大きいタイムロスの所為で輝、アルベルト組がかなり先行してしまったーっ! どうする、どうなる!?』
 第3チェックポイントを超え、残るは長いカーブと最後の直線を残すのみ。
 浅瀬に引っ掛かりつつ進む輝、アルベルト組は丁度カーブを抜けそうな所、まだまだ逆転は出来る……筈だった。
「うぅ……」
「む、ぅ……」
 苦手な食べ物のダメージと小回りの効く小カヌーの小さな揺れが相まって潤とヒュリアスの顔色が一向に回復しない。
 口をへの字にした潤と激しく眉間に皺を寄せているヒュリアス、恐らく酔ってしまったのだろう。
 あまり速度が出せず、1位に中々追い付けない。

 流石にその状態ではその差を埋められず、順位が入れ替わらないまま輝、アルベルト組がそのままゴールしてしまう。
『なーんということでしょう! 1位はまさかの初心者ペア、輝、アルベルト組だぁぁぁぁぁ!』
「え? えぇっ? 私達が1位?」
「どうやらそのようですね」
 運が良かっただけのような気がしますが、と付け加えてカヌーを降りるアルベルト。
「ッ! ……輝、服がずぶ濡れです」
 岩にぶつかったりしながら進んでいた為、川の水を浴びる事が多かった輝は中々にずぶ濡れでやや服が透けている。
 後ろに乗っていたアルベルトは比較的に水を浴びておらず、顔を背けるようにしながら自分の上着を輝に掛ける。
「あ、ありがとう……(本当は下に水着を着てるから問題ないのだけど、まぁいいかな)」

 少し遅れてゴールしたのは顔面蒼白の潤、ヒュリアス組。
「つ、着いた…っ? わわわ!」
 潤はゴールにてカヌーを降りる時に足を引っ掛けてカヌーをひっくり返してしまう。
「やれやれ……っっ! ……普通に終われないものかね、ウルよ……」
 巻き添えを食らいそうになるが、一足先に降りていたヒュリアスは潤を助け起こしながら自分の上着をそっと掛けてやる。
「あ、う……(ヒュリアスの匂いがする……)」

『無事、参加者のゴールを確認した所でっ! ポイント発表です! 輝、アルベルト組は30点、潤、ヒュリアス組は35点と言うことなのでー! 優勝は潤、ヒュリアス組ですっっ! 『ヘヴンリバー急流カヌーレース』を制し、賞金を手にしたのは潤、ヒュリアス組っ! 』



 ●後日談

「あ、アル……おは、よう……」
「……はい、お、おはようございますっ」

 先日のレースで互いの知らない部分を見せ合った輝とアルベルトは元の距離感を掴みきれずに、暫く過ごす事になったらしいがそれはまた別の話。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター うち
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月06日
出発日 06月11日 00:00
予定納品日 06月21日

参加者

会議室

  • [2]篠宮潤

    2014/06/10-08:18 

    やぁ、輝さん…!支援部隊、本当にお疲れ様。
    篠宮潤、と、テイルスのヒュリアス、だよ。宜しくだ。

    〆切、今日、なのだよね…っ
    うっかりすると、初の白紙…になりそうだよ僕;
    カヌーとても楽しそう、だよね。レース、頑張ろう…ね!

  • [1]月野 輝

    2014/06/10-06:40 

    こんにちは、潤さん、支援部隊ではお世話様でした。
    改めまして、月野 輝です。パートナーはマキナのアルベルト。
    共々宜しくお願いしますね。

    今日中にプラン仕上げなきゃだし、お話ししてる暇は無さそうなのが
    ちょっと残念だけど、お互い頑張って楽しみましょうね。


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