お花見日和(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 桜がひらひらと舞っている。
 ひらり、ひらり。
 薄ピンクの花弁が宙を舞い、はらりと地面に落ちる……。
 今年は例年よりも早いというその花は、とても美しく咲き誇っていて。
「綺麗だなぁ……」
 あまりにも早く咲きすぎてしまったためか、普段ならお祭り会場となっていて賑わうそこも今はちらほらとしか人がいない。
 平日ということもあるのだろうけれど!
「……あ!」
 ならば、神人を連れてお花見なんてどうだろうか。
 この公園は湖にボートもあってそこから桜を眺めるのもいいだろう。
 ベンチだってたくさんあるし、ここには小鳥やリスみたいな小動物も遊びに来ている。
 そういう子たちと戯れるのだっていい。
 そうと思えば、居てもたってもいられず走りだす。
 今から2人でくれば、数時間はお花見を楽しめるはず。
 あぁ、そうだ、来る道すがら何か買ってもいいかもしれない……。
 わくわくと楽しい気持ちがあとからあとから湧いてきて、その足取りは軽やかなのを桜は見送るのだった。


「ねぇねぇ、花見、花見いかない?!」
 突然やってきた精霊にそう言われ、驚いた貴方は、それでも話しをきけば大きく頷く。
 今日はぽかぽかと暖かくて確かに外でお花見なんてきっと楽しいに違いない。
 あぁ、どうせなら何かお弁当を作って行っても、買ってもいいだろう。
 今からお弁当を作ったとしても数時間はのんびりできる……。
「そうだね、行こう!」
 さぁ、一体何をしようか?

解説

 公園に来るまでの移動費or買い物代として300jr使ったよ!

・ボート
 ボート代として別途、100jr掛ります。

 基本的に上に書いたとおりのことができますが、お好きなようにお過ごしください。
 ただ、お酒は二十歳になってから、公共の場所だということを弁えて!
 ゴミは持ち帰りましょう。


ゲームマスターより

 今年は桜の花が早めに咲いてしまいましたね……。
 お花見は今年も行けそうにないのがとってもさびしい限りです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

信城いつき(レーゲン)

  サンドイッチ待ってました!うん、おいしいよ。
俺の方はデザートのゼリーはいどうぞ。
桜の塩漬けをもどしたものをのせてるんだ

食べたら寝っ転がって桜を見上げよう
こうやったら桜と青空が一面に見えてきれいだよ

不思議だよね、茶色の木からどうしてこんなに綺麗な色が咲くんだろう?
……やっぱり桜も春になると楽しくなってわーっとしたくなるのかな

やっと暖かくなったし、桜はきれいだし、レーゲンの作ってくれたお弁当はおいしかったし。
もし俺が桜なら花が咲きそうなくらい楽しいよ

咲くまではあともう一押しかな
ちーがーう猫じゃない、桜っ。なんてからかってたら…………何なにっ!

…えっと、ものすごく桜色になった気がする(赤面)



セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
  急だね。でもいいよ。お弁当もって皆でゆっくり過ごそうか
手伝うというタイガにプエのお弁当のフルーツカットを頼み一緒に料理

桜きれいだね……(うっとりと見上げ)
わあっ(突風に髪を押さえ)
うん、お弁当は大丈夫
え!?いいよ。手も痺れてないし遅れないよう頑張るし

……(赤面)
じゃあ、一緒に持とうか
共同作業って、いいよね

どうぞ。今日はおにぎりにしてみました(お重を広げ)
■火山家のお弁当の話が前にでて挑戦。甘い卵焼き、唐揚げ、タコウィンナー、ブロッコリーのポテトサラダ等

練習の成果がでてよかった
写真って!?いいけど、自撮り初めてだ

(桜が散って季節が巡って、何年、何十年が過ぎても)
タイガ、また一緒に桜を見に行こうね


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  今年も桜が満開だ。家族皆で花見もいいんじゃね?
今回は猫達&レカーロのユキシロも一緒に連れて花見に行くぜ。
自分ちの庭では満開の桜並木は見れないからな。
ユキシロとバロン(白黒猫)が仲良しなので、オレはこの2匹のリードを持っていくぜ。
バロンはユキシロに乗っかっているのが好きなんだよなぁ。
ユキシロってふわっふわで、あったかいもんな。

桜が思った以上に満開!桜吹雪がすげーよ。
花びらがすげーな。風でこんなに空中を舞う!
桜吹雪の中に居ると、ラキアは桜に連れて行かれそう。
無意識に、ラキアの手を握る。
「や、攫われそうじゃん?」
舞い散る桜の花って別の世界に繋がってそうだもん。

また来年も、皆で一緒に桜見に来ようぜ。


咲祈(サフィニア)
  桜か
……ああ、うん。久しぶりだ
村にいた時も、サフィニアともほとんど見る機会なかったから
暫く桜を見ていると、相方の声がかかる

……サフィニア。弁当作りすぎだ
僕と、あんたで食べきれないだろ
じゃ、ティミラに持ってくならサフィニアが持っていけばいい
……嫌ってわけじゃないけど
自分が持っていった時の、兄を想像して
……。やっぱり、嫌
サフィニアが持っていって
昔は、苦手だった。なにかと構ってきて、うざかった
今も苦手だけど……昔ほどでもないかもしれない

桜、キレイだ……


ユズリノ(シャーマイン)
  お花見~♪
二人で桜の見事さを眺め歩く
話をしつつなんとなく隣の彼がソワソワしてる?
(前にもあったな…その時はまさかの告白をされたけど(微照)
何か話したい事があるのか怖い気もするけどシャミィを信じよう
ボートに誘われOKする

ボートからの景色楽しみつつ
2人で作ったお弁当を一緒に食べる(内容お任せ)
桜の花びらが舞ってきたから手で受ける
「幸せな時間だね」
僕の後に続いた彼の言葉に驚く え?
見つめ合い答えられないでいたら彼からの告白
そこまで考えてくれていたなんてと嬉しさの反面怖さが湧く
胸が詰まる
彼の真摯な言葉に答えたいのに

「…ごめ…ん(あ ショックを受けた様な顔
懇願する様に彼の首に抱き付いて
「違う…時間を下さい




「セラ! 花見に行こうぜ!」
 そう言って2人の家へ帰ってきた火山 タイガは、少し驚いたように銀の瞳を瞬くセラフィム・ロイスに、ゆるりと尻尾を揺らして微笑んでみせた。
 一拍置いて、それでもふわりと微笑んだセラフィムは急だねと言いながらも頷く。
「お弁当を持って、皆でゆっくりと過ごそうか」
「手伝うぜ!」
「分かった、じゃぁフルーツをカットしてくれる?」
 プエのためにね、と微笑めば任せろ! と力強い返答が。
 さぁ、一緒に作ろうか!


 ひらり、ひらりと舞う桜に興味津々なのか、口をあけては口の中に入る花弁をもしゃもしゃするプエ。
 草食な彼にはお気に召したようで、嬉しそうに鳴き声をあげる。
 頭の上でのはしゃぎように、タイガまで楽しくなってきてしまう。
 隣でゆっくりと足を進めるセラフィムの瞳はきらきらと輝いていた。
「桜綺麗だね……」
 うっとりと見上げるセラフィムに、今年も見事に咲いたなーと返しつつ、その笑顔が一番綺麗だな、と思うタイガは、それでも視線をそこから動かし花見に最適な場所を探し始める。
 彼の美しさは皆でお花見をしながらもっと楽しめばいい……そんな時だった。
「うぉ?!」
「わぁっ?!」
 2人の声が揃い、プエもクァッと声をあげる。
 突然の突風に、目の前が薄ピンク色に染まって。
 ひらひらと舞う花弁に一瞬息がとまる。
「セラ、大丈夫か……?」
 慌ててセラフィムの方を見れば、プエも心配そうに見つめていて。
 そんな2人に、髪を抑えていた手を離し、持っていたお弁当を掲げて見せる。
「うん、お弁当は大丈夫だよ」
「弁当は大事だけど、じゃなくて」
(転んで怪我でもしたら、未来の夫失格っていうか)
 尻尾を一度ゆらりと揺らした後、しっかりと見詰め。
「量が多くて重いだろ、手伝うぞ」
「え?! いいよ、手も痺れてないし」
 おくれないように頑張るし、そういうセラフィムに、また無理をする、とバッグを手にとって。
「俺がセラと共同作業してーんだよ!」
 一緒に運ぼう、そう言われればばっと真っ赤になったセラフィムはそれでも微笑みちゃんと渡して。
「共同作業っていいよね」
 だろ? と微笑み返すタイガと共に、プエもクァァ! と鳴くのだった。

 どどーんとお重の蓋をあければでてきたのはおにぎりだった。
「どうぞ、今日はおにぎりにしてみました」
 火山家のお弁当の話が前にあったのを思い出し、挑戦してみたのだ。
 甘い卵焼きに唐揚げ、どこか楽しげに足を踊らすタコウィンナーにブロッコリーのポテトサラダまで。
 どれをみても美味しそうで、おにぎりと卵焼きに齧りついたタイガの耳と尻尾がぴーんっと立つ。
「うっめー! また開拓したな!」
 あまりの美味しさに瞳を輝かせれば、隣で林檎を食べていたプエもなんだか楽しそう。
 良かった、と微笑むセラフィムも唐揚げを口に運んで。
 そうして見上げる桜は圧巻の一言に尽きる。
 そんな桜をみて……そしてセラフィムの肩に手を伸ばすタイガ。
「記念に一枚」
 お弁当と、プエと桜とセラフィムと。
 自撮りは初めてだと驚いた後はにかむセラフィムと記念の一枚を。
「セラ」
 そうして肩から手を離し、そのまま指先を握りこめばなぁに? と視線をあげる。
「んー、隣にいるんだな、と思って」
(さっきも桜に攫われちまいそうと思ったけど、ここにいる。俺の隣に)
 どこか安堵したように体を預けてくるタイガに、セラフィムも体を預け。
(桜が散って季節が巡って、何年、何十年が過ぎても)
「タイガ、また一緒に桜を見に行こうね」
「ああ、桜と言わず絶景でも何でも、何度でも見に行こう!」
 それは、何年、何十年たっても色あせない約束だ。 




 ひらり、ひらりと舞う薄ピンクの花弁に、ユズリノは垂れ目な瞳をさらに笑みの形にしながら掌を伸ばしそっとその花弁を掬い取る。
 お花見~♪ なんて鼻歌までしちゃいそうなテンションのユズリノとは違い、目を楽しませるはずの見事な桜並木も目に入っているのかいないのか。
 シャーマインはちらちらと桜の花よりも隣を歩くユズリノへと視線をやっては思う。
 最近リノとの結婚を意識している、と。
(近々リノの帰郷に同行するし、ウィンクルムパートナーとして挨拶もするし……)
 これが意識を強めるきっかけになってるのは分かっているのだ。
 問題は、そこじゃない。
 問題は、まだユズリノとその話しをちゃんと出来ていないということなのだ。
 どう切りだすかとそわそわしているのは、ユズリノにもどうしても伝わってしまっていて。
 話しをしながらもどこか上の空な彼に、ユズリノは小さく微笑む。
(前にもあったな……その時はまさかの告白をされたけど)
 僅かに頬を染めつつ思い出したその時の光景。
 でも、と僅かによぎるのは不安だ。
(何か話したい事があるのか怖い気もするけど)
 シャミィを信じよう。
 そう、心に決めたユズリノに、シャーマインがボートに乗ろうと提案して。
 いいよ、と頷くユズリノは、共に足を進めるのだった。


 2人で作ったサンドイッチにポテトサラダに、赤い苺。
 それを誰にも邪魔をされない少し遠くへと来た2人は、風に揺られながら一緒に食べていた。
 水辺から見る桜は、上からも、水面に映る下からも花見が出来る贅沢なもの。
「美味しいね」
 ほら、シャミィが作ってくれたこれ、とポテトサラダを食べながら言えば僅かに頷くシャーマイン。
 そんな様子を小さく笑いみた後、指先を伸ばす。
 ひらり、と舞う花弁との間で遊ばせ……そして、掌で受け止めて。
「幸せな時間だね」
 その言葉を聞けば、決心が付いたのかひたりと視線をユズリノへ向け、シャーマインが唇を開く。
 薄ピンクの花弁と、ユズリノ。
 それ越しに見えるユズリノはとても美しい。
 緊張する体を拳を握ることでどうにか押しとどめて、シャーマインは今日、一番伝えたかったその言葉をユズリノへ。
「家族に……ならないか?」
 その瞬間、時間がとまったかのように感じたのは、ユズリノだけじゃなくシャーマインもだったかもしれない。
 え……、と言葉を詰まらせる彼に、視線を合わせゆっくりと言葉を紡ぐ。
「俺は俺の両親のように深い愛情を築ける相手をずっと求めてた」
 僅かに視線を動かすのみで、何も言わないユズリノに、シャーマインはそれでも視線を外さず聞いて欲しいと言葉を紡いで。
「だが俺の恋愛はいつも短命で仕方ないと割切れてしまえるものだった」
「…………」
 ユズリノの視線が揺れる。
「でもリノは……抱締めて守って側に居たい」
 はっと息を飲んだ彼に微笑みを浮かべる。
 それでも揺れる視線が彼の不安を伝えてきていて。
「生涯かけて愛情を築いていきたいと思える人なんだ」
 そう、言われればユズリノだって、力強く頷きたいと思うのに。
 それでも頷くことは出来なかった。
「……ごめ……ん」
 ぱっと青く顔色を変化させたシャーマインにぎゅっと抱きつく。
 それは言葉にはならない彼への懇願。
「違う……」
 それだけはちゃんと伝えないといけないから。
 その思いを否定したいわけじゃない、だから。
「時間を下さい」
「あぁ」
 強く抱きしめた体は、僅かに震えていて。
 それを宥めるように、慈しむようにゆっくりと背中を撫でるシャーマインと、そして彼の腕の中で瞳を閉じるユズリノを、桜達は静かに見守っているのだった。





 ひらり、ひらりと舞う桜。
 それに掌を向ければ、1枚、2枚と掌に降り積もる。
 ゆっくりと一度閉じた掌をまた向ければ風にのって花弁は舞い飛んでいく。
「久しぶりだよね、桜を見るのは」
 そう言って、ゆらりと紅葉のような尻尾を揺らしたサフィニアは、隣に居る咲祈を見つめる。
(桜か……)
 そう問われれば視線を見事に咲き誇る桜へとやり……そして、サフィニアへ移した咲祈はこくりと頷く。
 それに合わせて淡い髪色が揺れれば、桜の花色と相まってなんだか眩しく美しく見える。
「……あぁ、うん。久しぶりだ」
 村に居た時も、サフィニアともほとんど見る機会がなかった桜。
 今日はゆったりと見ることが出来るだろうか。
 薄ピンクの花弁は、下から見ると可憐な花弁を此方に向けていて。
「去年は見れなかったしね」
 何とも言えないその可憐な美しさを暫し眺めていれば、いつの間にやら着々と食事の準備をしていたサフィニアが咲祈へと声をかける。
 ぽんぽんと示された場所には、大きなお弁当が。
「………」
「どうしたの? ほら食べよう」
 ぽんぽんと再度、示されればゆっくりと座りこむ。
 目の前にすれば、凄く美味しそうな食欲をそそる香り。
 それにしても……明らかにそれは。
「…………サフィニア、弁当作りすぎだ」
 どう考えても2人分というには多すぎだった。
 確かに、場所も変われば多く食べれることもあるだろう、けれど……。
 あんたと僕じゃ、食べきれないだろう?
 と零されたその言葉に、首を傾げたサフィニアは、その後あぁ、と頭に思い浮かんだのは咲祈にどこか似た彼の人だ。
 いや、似ているのは当たり前なのだけれど。
「残ったらティミラさんに持っていこっか、冷蔵しておけばある程度保存は効くし」
 名案でしょう? と言った風情の彼に、咲祈は一瞬だけ言葉を詰まらせたあと、舞う桜を視線でおって……そして。
「じゃぁ、ティミラに持ってくのならサフィニアが持っていけばいい」
 そう言われれば、え、とサフィニアが声をあげる。
 その瞳は心配そうで。
「……ティミラさんと会うの、嫌?」
「……嫌って言うわけじゃないけど」
 それには少しだけ言いよどんだものの否定がかえる。
 でも、と咲祈は桜を見上げながら思う。
 もしも自分が持っていった場合、兄は……。
 大喜びしてくれるだろう、だがしかしそれは。
「……、やっぱり、嫌」
 サフィニアが持って行って、と言われればさらなる困惑がサフィニアを襲う。
「ええ……どっちなの、咲祈……」
 困惑した声音のサフィニアに視線をやりつつそれには答えず、作ってくれたお弁当に手を伸ばす。
 美味しい、と瞳を和ませる咲祈の隣で、同じように唐揚げを口に運んだサフィニアは良かったと微笑んで。
 暫し2人はお弁当と桜を楽しむ。
 2人の間に舞う桜を時折、指先で追いかけてみたりして。
 そうして、どこか和んだ時間が流れた後。
「最近はそういう風には見えないけど、やっぱりティミラさんのことは、苦手?」
 改めてのその言葉に、視線は桜へやったまま咲祈が唇を開く。
「昔は、苦手だった。何かと構ってきてうざかったし……。今も苦手だけど……」
 でも、と視線をサフィニアへ向けて小さく微笑む。
「昔ほどではないかもしれない」
「そうなんだ」
 それを聞けば、サフィニアは優しい笑みを浮かべる。
 その笑みに咲祈は瞳を瞬き……そして彼の上に咲き誇る桜を見上げる。
「桜、キレイだ……」
 それは本当に桜のことなのか、それとも先程浮かべた、サフィニアの笑顔のことなのか。
 桜の花弁はひらり、ひらりとお礼を言うように2人へと舞い降りるのだった。



 ひらりと舞う桜。
 薄ピンクの花弁が風に乗ってひらりひらりと舞い踊る。
 その間をぬって、 信城いつきとレーゲンはお弁当を広げていた。
 ひらり、ひらりと舞う桜がサンドイッチ待ってました! と嬉しそうな笑顔を浮かべるいつき。
 以前話した小さな野望。
 レーゲンはそれを成し遂げるべく今日は腕をふるっていた。
 ちなみにその野望とは、いつきに美味しいお弁当を作ってあげること、である。
 今日と言う日はその野望を叶えるに最適の日だろう。
「俺の方はデザートのゼリーだよ」
 はい、どうぞ。
 と差し出されたのは、桜の塩漬けを戻した物をのせているそうで。
「ふふ、可愛いね」
 今日の舞って居る桜よりは色濃いその桜。
 目でも舌でも味わえるのはとても楽しくて。
「ん……すっごく美味しい!」
 ベーコンと卵、エビとアボガド。
 たいしたものは作れなかったというけれど、口に含めばベーコンと卵のハーモニーが口の中で広がって行く。
 勿論、エビとアボガドのまろやかなうまみだって最高だ。
 どっちも美味しく食べれば、そんないつきを瞳を細めてレーゲンは見守る。
 勿論自分も食べるのを忘れないけれど!
「喜んでくれたのなら良かった」
 そういって微笑みつつ、レーゲンはいつきが持ってきたデザートを口へ運ぶ。
 口の中に広がる少し甘しょっぱい桜の味。
「美味しい……」
「良かった!」
 口の中でも楽しむ桜に、いつきも手を伸ばせば微笑むのだった。

 お腹もいっぱいになれば、あとは、と突然寝っ転がるいつき。
「こうやったら桜と青空が一面に見えて綺麗だよ」
 その言葉に誘われて隣で同じように寝っ転がれば、確かに広がるのは美しい桜と綺麗な青空のコントラスト。
 立ったり座ってみるよりもとても大きく、美しく見えるのはなぜだろう。
「不思議だよね、茶色の木からどうしてこんなに綺麗な色が咲くんだろう?
……やっぱり桜も春になると楽しくなってわーっとしたくなるのかな」
 それを聞き、瞳を瞬いたレーゲンは、桜を見つめ……そして、いつきへと視線を戻す。
「いつきの発想は変わってるけど、可愛くていいね」
 首を傾げるいつきの首元に揺れるシルバーネックレス。
 にゃぁんと今にも鳴きそうな猫のシルエットがそれに合わせて揺れる。
「やっと暖かくなったし、桜はきれいだし、レーゲンの作ってくれたお弁当はおいしかったし」
 そう言ってにこっと微笑むいつきは、レーゲンから視線を逸らさない。
「もし俺が桜なら花が咲きそうなくらい楽しいよ」
「いつき桜が咲くには、もう少し楽しみが必要と……」
「咲くまではあともう一押しかな」
 するり、と伸ばした指先でその首筋を撫で上げる。
 それは胸元で揺れる猫へとやる仕草のような。
 ほんの悪戯心なのだけれど。
「ちーがーう猫じゃない、桜っ」
「もう充分花が咲いたような笑顔をみせてくれてるのにね」
 にこにこと笑むレーゲンに、何を言ってるんだと突っ込めばじゃぁ……と伸ばされた指先が頬を捉える。
 それに瞳を瞬けば、ゆっくりとレーゲンが近づいてきて。
「……っ!」
 触れたのは、頬にだった。
 暖かな温もりは、一瞬のことだったのだろうけれど、長くも感じて。
「……な、なに?!」
「何って、桜に栄養補給」
 咲く気になった? なんて微笑むのに、耳だけじゃなく首筋までほんのり桜色染め上げて、いつきは唇を抑える。
 ふるりと震える彼に、桜の花弁がくすくすと楽しげに舞い降りて。
「……えっと、ものすごく桜色になった気がする」
 あぁ、その姿は桜よりも綺麗だ。
 その瞳を覗きこめば、きっとレーゲンのためだけの美しい、いつき桜が咲いているのだろう。



 暖かな日差しの中、ちらほらと見える人影……。
 人だけじゃなく、そんな人に連れられて犬や猫なんかが一緒に花見を楽しんでいる。
 家族皆で花見なんていいんじゃないか。
 その一言でセイリュー・グラシアとラキア・ジェイドバインは家族総出で花見へと来ていた。
「晴れてよかったな!」
「そうだね、風が気持ちいいよ」
 ふふっと微笑み、青空と桜のコントラストを目で楽しむ。
「去年も綺麗だったけれど……」
「今年も凄く綺麗だ」
 ラキアの言葉に頷き、セイリューはその瞳を瞬く。
 今年も桜は見事に咲いていた。
 ひらりひらりと舞う花弁は、セイリューとラキアだけではなく、家族達の瞳を楽しませてくれて。
 家の庭では流石に満開の桜並木というものは見れないからこそのお花見。
 猫達も色々な花は見なれているものの、沢山の桜と言うものはみたことがない。
 そんな桜並木を思う存分堪能するために、セイリューはユキシロとバロンのリードを。
 ラキアはクロウリーとトラバースのリードを持つ。
「2人とも楽しそうだね」
 ラキアがそう言えば、セイリューも視線を其方に。
 2人は足元で楽しげに花弁を時に嗅いだり、軽く食んでみたり、足元で遊ばせるクロウリーとトラバースを見守って。
「こっちはこっちで楽しそうだ」
 そういうセイリューに合わせて視線を今度はユキシロ達の方へ。
 ぽってりしたユキシロの背にのっかっているバロンは、そんな彼らとは違い、ちょっとあくび混じりに花弁を見つめている。
 なんといってもふっわふわであったかなユキシロの背から見る桜は特等席なのだろう。
 そういうわけで、ユキシロは時折鼻を動かしては花を楽しむ以外は、バロンの好きにさせていた。
「今年は桜の開花が早かったから、淡い桜の綺麗な花達が満開だね」
 とっても綺麗だとそう呟くラキアに、セイリューも思った以上に満開だと同意を示して。
 そんな会話をしながら、セイリューは瞳を細める。
 彼の視界には、風が吹くたびに舞い踊る桜の花びら達。
「桜吹雪がすげーよ」
 ふふ、そうだねと微笑むラキアの赤い髪も宙に舞う。
 桜の花弁と、その赤く美しい髪が絡みあう。
「花弁がすげーな」
 風でこんなに空中に舞うのか、と言えば隣でラキアが頷いて。
 風が吹くと、花びらが風に舞って……と、瞳を細める。
「とっても幻想的だよね」
 クロウリーもトラバースも不思議そうに見ているよと微笑む。
 きょとんと見上げるその様は、とても可愛らしくて。
 和むなぁと微笑むラキアに伸ばされたのはセイリューの指先だった。
 きゅっと握られた指先に視線を落とせば、セイリューが唇を開く。
「や、攫われそうじゃん?」
(舞い散る桜の花って別の世界に繋がってそうだもん) 
 無意識だったのか、自分でも驚いたように瞳を瞬きつつそういうセイリューに、ラキアがん? と首を傾げた。
「攫われそう?」
 こくりと頷かれればくすりと笑みを浮かべるラキア。
「ふふ、花達は悪いことはしないよ」
 その声音は安心させるかのように優しいもので。
 そうかもしれない、けれどどこか不安はぬぐえない。
 きゅっと絡めた指先は解かず、視線を桜へと。
 ひらり、ひらりと舞う桜を暫し2人で見つめ……そして隣に寄り添いラキアが唇を開く。
「今年も綺麗な桜を楽しめて良かったね」
 そうだな、と頷くセイリューは桜から視線を足元で同じように楽しむ家族へ向け……そして、ラキアへと。
「また来年も、皆で桜を見に来ようぜ」
 にっと笑うセイリューにラキアも笑みを返す。
(セイリュー、毎年来年もまた見ようって言ってくれるもんね)
「そうだね、また皆でこよう」
 そう答えれば、家族皆も賛成するかのように鳴くのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月09日
出発日 04月14日 00:00
予定納品日 04月24日

参加者

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