Re:突撃!ウィンクルムさんの恋愛事情!(龍川 那月 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 徐々に暖かくなり、春の訪れを予感させるそんなある日、神人と精霊はA.R.O.A.の本部に用事を済ませに来ていました。
 用事は滞りなく終わり、帰りにどこか寄っていこうかと話しながらロビーを歩いていると、
「すみません。ちょっといいですか?」
 手にバインダーを持った職員が声をかけてきました。A.R.O.A.広報のホワイトデー企画で、ウィンクルムたちにインタビューをしているというのです。
「バレンタインデー企画が予想以上に反響があったので、ホワイトデーもやろうってことになりまして」
 そう言って差し出される広報誌にはパートナーとの関係について特集が組まれています。
「インタビューって言ってもほとんどアンケートみたいな感じですぐ終わりますから、お願いします」
 と頭を下げる相手に、そんなに時間がかからないならと了承する2人。特集記事の内容も、ところどころコメントが載っているくらいで殆どがアンケートだったことも後押ししたのかもしれません。
「じゃあ、ご本人の前では話しにくい話もあるでしょうし」
 そう言って神人と精霊はそれぞれ別の部屋に通されました。

 精霊が通された部屋にはモニターがあり、画面には神人とインタビュアーの姿が映っています。
 どういうことかと尋ねると、バレンタイン企画の時、神人に精霊の回答をモニタリングしながら答えてもらっていたのだと職員は話し始めました。
「他言無用でやったんですが、どこから漏れたのか、神人ばかりずるい。精霊さん側からもこっちだって相手の気持ちが知りたいと……。それでホワイトデー企画では精霊さんに神人さんの回答をモニタリングしながら回答してもらっているんです。モニタリングしていることは神人さんを含め誰にも口外しませんし、広報誌に使うときも分からないようにします。だますような形になってすみません」
 職員の言葉を聞きながら、『相手の気持ちがわからない』という言葉に、思い当たる節が全くないわけではないなと思った精霊はこのままインタビューを受けることにしました。

解説

・概要
 インタビューに答えてください。
 質問全てに答える必要はありませんし、全てに答えても構いません。
 質問は以下の5つです。番号の後ろに回答を書いていただければと思います。

 1.二人の関係を一言で言うと?
 2.相手を特別だと思ったことはありますか?ある場合、相手を特別だと自覚したのはいつですか?
 3.今、二人でしたいことはありますか?
 4.相手に不満や直してほしいところがあれば
 5.相手への想いを語って下さい

・プランについて
 精霊様のプランには、神人様の回答を見たうえでのリアクションや回答をお書きください。
 回答する様子をモニタリングしていたことを話す、話さないは自由です。話さなかった場合、神人様が知ることはありません。
 
・ジェールについて
 その日の飲食費などで300ジェール消費致しました。

ゲームマスターより

 こんにちは。または初めまして。龍川那月と申します。

 今回は、2月に出させて頂きました「突撃!ウィンクルムさんの恋愛事情!!」の逆バージョンになります。
 神人様には少し申し訳ない気持ちもありますが、精霊様も相手の気持ちがわからず不安になることがあるかと思いますので、この機会により仲良くなるきっかけになれば幸いです。

 ご参加ならびに素敵なプランお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  バレンタインの時もこんな風にアンケートに答えたんです
今回はモニターはないんですね
自分が見られているとは全く気付かず無邪気な笑顔

3 ええと 花も咲き始めるし一緒にお出かけしたいな
お弁当とか持って…
あ、と何かに気づいたように
お昼寝 
芝生の綺麗なところで二人で空を見上げて寝ころんだら、気持ちよさそう

眠る事を極端に嫌う 彼を思う
(ううん 嫌いなんじゃない)
(「嫌い」じゃなくて…怖がってる)
それに気付き 少しだけ目を伏せ
ーいつか、一緒にできたらな

5 満面の笑み
いつもありがとう
一緒にいてくれてありがとうって…そう言いたいです

合流後 彼の長い指をそっと握る
握り返され 向けられた綺麗な翡翠の目に頬を染める
ーいいの?行きたい! 


かのん(天藍)
  先月に似たようなことがあったような…?首傾げ
もし聞かれていてもそれはそれで構わない

もちろん、天藍はたった一人の特別な人です
いつ?ですか
顕現してから…
出会った頃を話している内に思い出す
特別な存在にいつなったのかは解らないけれど、自覚したのはあの時の…

私がオーガとの戦い等のストレス解消にとセラピーを受けて、それまで誰にも言えずにいた、両親と死別後の寂しさや悲しさを吐き出した時に天藍は傍でずっと話を聞いてくれて…
あの時天藍が側にいてくれた事が本当に嬉しかったんです

合流後
やっぱり聞こえていたんですね
あの時は本当に嬉しくて、それから天藍が支えてくれるように私も天藍を支えられたらと思うようになったんです


水田 茉莉花(聖)
 
うーん
家族、かな?家族…ニュアンスとしては微妙に違うんですけど…
自分に子どもがいたらこういう気持ちになるんじゃないかな?って感情があって…


最近です、そう感じるようになったのは
毎日一緒に暮らしていて反応が子どもらしくなってきたのもありますね
お風呂でもう一人の精霊と巣潜り対決したときは説教しました、二人とも!


とにかく『普通の暮らしをすること』
施設の先生から聞いたんです
彼はやっと一人座りができた頃に両親と死に別れたとか
…あたしもウィンクルムやってるとそういう危険性はあるかもしれないけど
だからこそ1日1日を大切にしたいんです


うーん、変な意地張らないで貰えると嬉しいなぁ

あ、ひーくん
…どうしたの?


鬼灯・千翡露(スマラグド)
  マンツーマンってちょっと緊張するね
参考になるかはわかんないけど頑張りまーす(何を?)

1:恋人です! あと同居中~。
ラグ君は単身契約の為に出て来たし
私は……親も育ての親もいなくなっちゃったから

2:んー、具体的に何処でこう、っていうのはないかなあ
どっちかと言うと日々の積み重ねで少しずつ、って感じかな
好きなもの覚えてくれたり、悩みとか聞いてくれたりして
敢えて言うなら今の関係になったのは去年の夏(SP2)です
えへへ

5:この先どうなるかはまだわからないけど
でも、お互いが望む限りずーっと一緒だよね
それで今の毎日がこれからもずっと続けば幸せ
その中で彼に貰ったものを、くれた想いを
少しずつでも返していけたらいいな


●支え(かのん&天藍 編)
 職員から話を聞きながら、内心かのんは首を傾げていた。
(先月に似たようなことがあったような……?)
 最初に声をかけられた時、先月の企画に反響があったからと職員は言っていたし、もしかして、と思う。
 だが、その時見せてもらったページにはかのんや天藍のコメントと思われるものは載っていないように見えた。もちろんちゃんと端々まで見たわけではないので見落としただけかもしれないが。
(もし聞かれていても、それはそれで構わないですが)
 後ろ暗いことがあるわけではないし、聞かれたくない話があるわけでもない。そう思ったかのんは特にその辺りについて追及することもなくインタビューに応じ始めた。

(なる程、こうなっていたのか)
 別室、モニターのある部屋へ案内された天藍は頷く。
 先月同じ企画に参加した後、モニターしていた。とかのんから聞かされてはいたが、実際にモニターを見ると予想以上に綺麗に映っている。これは細かな仕草や表情まで見えるレベルだ。
 ふと、なんとなくだが、彼女は気づいているんじゃ無いかと天藍は思った。彼が知る限りかのんはそういうことに関して鈍い方ではない。が、モニターの向こうを見るに明らかに気が付いているという様子もない。
(しばらく様子を見てみるか)
 折角の機会だしな。そう考えて天藍はモニターから職員へ視線を向けた。

「恋人同士の方に聞くのも変な話だと思うのですが、お相手を特別だと思ったことはありますか?」
「もちろん、天藍はたった一人の特別な人です」
「そうですよね。恋人同士の方にこの質問はどうかと自分でも思います。では、お相手を特別だと自覚したのはいつですか?」
 当然とばかりの声に、苦笑しながら職員はさらに質問を続けた。
「いつ?ですか……。顕現してから……」
 そうかのんは出会った頃の話を始める。
 かのんの話を懐かしそうに聞きながら天藍もインタビューに応じる。
「最初に会った時から好みのタイプではあったんだ」
「ということは、最初から狙っていたということですか?」
「あわよくばウィンクルムのパートナー以上の関係にとも思っていた」
 狙っていた。という程じゃないが。そう言いながら天藍は続ける。
「何度か出かけたり依頼を受けたりして、1人暮らしで自分で働いているせいか、自立してしっかりしているなと思ってたんだよな」

 思い出を口にしながら記憶を手繰り寄せるうちにかのんは思い出した。
(あぁ。そうだ)
「特別な存在にいつなったのかは解らないけれど、自覚したのはあの時の……」
「あの時?伺ってもいいですか?」
 職員の言葉に頷くかのん。
「私がオーガとの戦い等のストレス解消にとセラピーを受けて、それまで誰にも言えずにいた、両親と死別後の寂しさや悲しさを吐き出した時に。天藍は傍でずっと話を聞いてくれて……」
 その話を聞いて、そうだったとばかりに天藍があぁ。と声を漏らす。
「あの時の1人で心の奥底に仕舞い込むしか無かったかのんの話を聞いて、これからはかのんがそんな思いを抱えないようにできたらって思ったんだ」
『あの時天藍が側にいてくれた事が本当に嬉しかったんです』
 モニターの向こう、かのんは穏やかに微笑んでいた。

 すべてのインタビューが終わり、合流後、黙っているのもどうかと思った天藍は話を聞いていたことを打ち明けた。
「やっぱり聞こえていたんですね」
 やっぱり気が付いていたか。と言う彼に、なんとなくですけど。と答えるかのん。
「あの時は本当に嬉しくて、それから天藍が支えてくれるように私も天藍を支えられたらと思うようになったんです」
 懐かしむように嬉しそうにそう言うかのん。
(側にいよう。そしてこれからもずっとかのんの支えになれれば)
 彼女の笑顔を見て天藍はそう改めて思う。そして微笑みながら天藍は頷いた。

●家族(水田 茉莉花&聖 編)
 聖が通された部屋で一番最初に見つけたのは、彼がママと呼ぶ水田 茉莉花の姿が映るモニターだった。
「あ、ママだ……。なんですかこのへやは?」
 訝し気に尋ねる少年に職員は本当の趣旨を説明する。
「シュミ悪っ……」
 普通なら思っても口にしないだろう言葉が口から飛び出す。あははと苦笑いを浮かべながら、モニターを消すよう提案する職員に、
「あ、でも、ママの気もちがわかるなら好つ合ですよね?」
 消してほしいなんて言ってないじゃないですかと、笑顔をごまかしながら聖はそう続けモニターの方へ視線を向ける。モニターの向こうでは二人の関係について職員が質問している。
『うーん家族、かな?』
(家ぞく?)
『家族……。ニュアンスとしては微妙に違うんですけど……』
「ぼく、ウィンクルムだからいっしょに住んでいると思ってましたよ」
 画面を見ながら答える聖の声には少し動揺がにじんでいる。
 見られていることを知らない茉莉花はさらに言葉を重ねる。
『自分に子どもがいたらこういう気持ちになるんじゃないかな?って感情があって……』
「……子どもが、いたら?」
 児童養護施設にいた彼に彼女の言葉は驚きをもたらしているようだった。
「……ぼく、ママの、まりかママの、子ども?」
 どうしてそんなことを言うのかよくわからない。呟くような、漏れるような言葉にはそんな感情が見える。
『いつ頃からそう思うようになったんですか?』
『最近です、そう感じるようになったのは』
 きっかけが何かあったのかと尋ねる職員に茉莉花は首を横に振る。
『毎日一緒に暮らしていて反応が子どもらしくなってきたのもありますね。お風呂でもう一人の精霊と巣潜り対決したときは説教しました、二人とも!』
 茉莉花と相対する職員にも家族があるのか、素潜り対決の下りにひどく共感したようで、うんうんと頷いている。それから2人は少しの間、一般的な家庭あるあるで盛り上がっていた。
『少し脱線してしまいました。えっと、今後何かしたいこと等ありますか?』
『とにかく【普通の暮らしをすること】。施設の先生から聞いたんです。彼はやっと一人座りができた頃に両親と死に別れたとか……あたしもウィンクルムやってるとそういう危険性はあるかもしれないけど、だからこそ1日1日を大切にしたいんです』
「おやつのそうだつせんパパとしかやんないし、おかわりいっぱい食べられるし……ニンジンのこすとおしりペンペンされるし、せっ教されると正ざ長いけど、それって『ふつう』だったの?」
 聖が思い出すのは、いつもの日常。それらの殆どは先ほど茉莉花と職員が話していた一般家庭あるあるに出てきたことだった。どうやら茉莉花の普通がずれているのではなく、本当にこれが普通の家に当たり前の様にあることのようだ。と聖は感じた。
「ぼくね、さいきんママとパパにハグしてもらうことふえたの。これも『ふつう』のお家にあるのかな?……ぼく、うれしいんだ…まりかママも、してもらうとうれしいかな?」
 ハグしてもらった時のぬくもりを思い出したかのように、目を細め嬉しそうな笑みを浮かべる聖に職員は微笑みかけ、答える。
「自分には家族がないので分かりませんが、神人さんも喜ぶと思いますよ」
 モニターの向こうでは直してほしいところを聞かれた茉莉花が少し考えるようにしながら答えていた。
『うーん、変な意地張らないで貰えると嬉しいなぁ』

「あ、ひーくん」
 アンケートが終わり、部屋から出てきた茉莉花が周囲を見渡すとこちらへ向かってくる聖を見つけた。聖はそのまま茉莉花の太もも辺りに抱きつく。
「ママ!」
「……どうしたの?」
 きょとんとした声を上げる茉莉花にぎゅぅと抱きついたまま聖は笑った。
「おむかえに来ました!」

●願い(鬼灯・千翡露&スマラグド 編)
 鬼灯・千翡露と別れたスマラグドに職員が事情を説明し頭を下げた。
「もし、そういった事はしたくない。と仰るならモニターを消して普通に……」
 そういいながらそっと頭を上げる職員の目には真顔で親指を立てる彼の姿が映った。

「よろしくお願いします」
 お茶を出しながら微笑む職員に千翡露は微笑みとともに返事を返す。
「参考になるかはわかんないけど頑張りまーす」
 因みに何を頑張るんだろうと内心首をかしげていたのは内緒である。
「マンツーマンってちょっと緊張するね」
「そう仰る方もいらっしゃいます。アンケートなので気楽にリラックスして答えてくださいね。じゃあ、まず精霊さんとの関係を一言でお願いします」
「恋人です! あと同居中~」
「同居?同棲ではないんですか?」
 恋人同士といいながら『同居』という言葉を使う千翡露に職員が質問を重ねる。
「ラグ君は単身契約の為に出て来たし……」

 恋人になる前から一緒に住んでいたのだと説明する千翡露を見ながらスマラグドは思う。
(思えばこれ子供の特権だよね。早く大人になりたいと思うけど、こういうのは悪くな……)
『私は……親も育ての親もいなくなっちゃったから……』
「いや、ちひろ重い!重いから!」
 雑談をするような調子ですごいことを言い始める千翡露に画面の向こうにいることも忘れてツッコんでしまう。
「あ……。まあ、素直なのはいいとこだけどさあ」
 突然のことに苦笑する職員の前でごまかすようにそう続ける彼の言葉もナチュラルな惚気にしか聞こえない。それほどに彼の表情は愛しさに満ちているように職員には見えた。

「何か言いにくいことまで聞いてしまったようですみません。恋人になる前から一緒に暮らしていたと今仰いましたが、いつから惹かれていたというか、特別に感じるようになりましたか?こう、きっかけなんかがあれば」
 いきなりの重たい話に千翡露側の職員は少し申し訳なさそうにしながら次の質問へと移っていく。当の本人の表情は変わらない。言いにくいこと等なかったかのようだ。実際になかったのかもしれないが。
「んー、具体的に何処でこう、っていうのはないかなあ。うん、どっちかと言うと日々の積み重ねで少しずつ、って感じかな。好きなもの覚えてくれたり、悩みとか聞いてくれたりして……」
「そう……」
 思い出すようにしながら答えていく彼女の姿に、若干口元がもごもごしながらスマラグドはそれだけ言って黙り込んだ。きゅっと口を結び、上がりそうになる口角を必死に抑えているといった感じだ。
「そういう風に思ってたなら、これからも今の俺でいいって……そういう事だよね」
 平静を装うようにしながら答える彼だったが声に嬉しさのようなものがにじみ出ている。
『敢えて言うなら今の関係になったのは去年の夏です』
 えへへと笑う彼女の笑顔を見て、ふふっと笑う彼の口角は最終的に少しだけ上がったところで落ち着いた。

『今日はありがとうございました。答えを聞けば聞くほど本当に精霊様のことがお好きなんだなぁと、こちらまで幸せな気持ちになる気がします。最後にお相手への今の気持ちを教えてください』
 今の気持ち?一度だけそう反芻して言葉を紡ぐ。
『この先どうなるかはまだわからないけど、でも、お互いが望む限りずーっと一緒だよね。それで今の毎日がこれからもずっと続けば幸せ』
 それは今まで恋人からもらったものを慈しむ様な愛おしむ様なそんな声だった。
(そう、だね)
「俺は、ずっと一緒のつもりだから、ちひろもそう思ってくれてるなら、これ以上の事はない」
 モニターの向こうを見るスマラグドの視線も彼女同様ひどく優しい。
『その中で彼に貰ったものを、くれた想いを少しずつでも返していけたらいいな』
 千翡露はそっと自分の両手を何かを掬うように開き、そしてきゅっと重ねるようにして握る。その手の中にはきっと今までもらった大切なものがたくさんあるのだろう。そんな風に職員は思った。
「なら、俺は、ちひろが返すの追いつかないくらいの幸せを。そしたらきっと、俺の願いは叶うから」
 スマラグドは片手を開き、彼の願いを握りこむようにきゅっとその手を握るのだった。

●感謝(リチェルカーレ&シリウス 編)
「バレンタインの時もこんな風にアンケートに答えたんです。今回はモニターはないんですね」
 案内された部屋で飲み物を受け取りながらリチェルカーレはそう微笑んだ。
「あ……。あ、そんなことがあったんですね。別の部署かな?」
 企画の趣旨がばれているのではないかと、職員の動きが一瞬止まる。言葉を濁し苦笑する職員に無邪気な笑顔を浮かべる彼女を見てシリウスはため息をついた。
(……普通、気付かないか?)
 あの笑顔を見るに、どうやらモニターされていることには気が付いていないようにシリウスには見える。
「どうしましょうか?お相手が気が付いていらっしゃるようなら……」
 困惑した様子でシリウスに尋ねる職員にシリウスは首を横に振った。
(相変わらず、人が良いというか抜けているというか)

『ええと、花も咲き始めるし一緒にお出かけしたいな』
「……どの季節でも、どんな花でも好きだが、春は特別好きだと言っていた」 
『お弁当とか持って……』
「世界が少しずつ優しい色に染まるのがいいと……」
 一緒に何かしたいことがあるかという質問に答えるリチェルカーレの言葉に付け加えるように答えていくシリウス。相変わらずの淡々とした口調だが、彼女と歩く春の光景を思い浮かべているのか、その表情は僅かに柔らかい。
『あ、お昼寝……。芝生の綺麗なところで二人で空を見上げて寝ころんだら、気持ちよさそう』
 その光景を想像しているのか穏やかな笑みがリチェルカーレに浮かんだ。
 他方、シリウスは彼女の寝ころんでという言葉に震えが指に走る。目の前の職員は気が付いていない、そのくらい小さな震えではあったが、そっと指を隠しながらじっとモニターの向こうの彼女を見つめ、次の言葉を待つ。
 リチェルカーレは眠ることを極端に嫌う恋人のことを思っていた。眠りを避けるためなら、鎮痛薬さえも拒絶し痛みに耐える彼の姿を思い浮かべると、きゅっと胸が痛くなる。
(……ううん。嫌いなんじゃない)
 リチェルカーレは気づいた。
(「嫌い」じゃなくて……怖がってる)
「……いつか、一緒にできたらな」
 呟くようにリチェルカーレから言葉がこぼれる。
 ただ隣りで笑っていてくれたらそれだけで自分は救われるのに。彼女の呟きにシリウスはそう心から思う。
(心配をかけたくない。悲しませたくない)
 青い瞳を少しだけ伏せ眉の下がった彼女の言葉に、無意識に表情も硬くなったシリウスはそんな言葉を飲み込み代わりに小さく息を吐いた。

 リチェルカーレの表情が曇ったのはその一度きりだった。
「お相手のことが大好きなんだなっていうのが凄く伝わってきました。最後にお相手への思いなんかあれば」
 その言葉に満面の笑みを浮かべリチェルカーレは答える。
「いつもありがとう。一緒にいてくれてありがとうって……そう言いたいです」

「ありがとうございました」
 合流後、職員に見送られながら二人は歩き始めた。
 リチェルカーレはそっと指を伸ばす。その先にあるのはシリウスの指。そっと触れ軽く握ると、指先を絡めるように彼も握り返してくれる。何の言葉もないままに二人の手は自然に恋人繋ぎになった。
 嬉しそうに彼の顔を見れば綺麗な翡翠の瞳が日光を反射してキラキラと輝いている。吸い込まれそうなその瞳に見つめられリチェルカーレの頬は自然と染まる。
「……そこの公園 通っていくか?」
「いいの?行きたい!」
 恥ずかしそうにしていたつぼみがぱっと花開く様な満面の笑顔にシリウスは微笑み頷く。
(季節がひとの姿を取るとしたら、きっとリチェのようになるんだろうな)
 冬の終わり、大地を照らす光は柔らかく、吹く風は優しい。もうすぐそこまで来ている春を感じながらシリウスはそんなことを思った。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 龍川 那月
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月03日
出発日 03月11日 00:00
予定納品日 03月21日

参加者

会議室

  • [6]リチェルカーレ

    2018/03/10-23:34 

  • [5]鬼灯・千翡露

    2018/03/10-22:54 

  • [4]水田 茉莉花

    2018/03/10-22:37 

    ぎりぎりで、えーいっ!
    神人の水田茉莉花と精霊のひーくんです。

    えっとー、ふつうに話せばいいんですよね、これって?

  • [3]リチェルカーレ

    2018/03/10-21:12 

    リチェルカーレです。パートナーはシリウス。
    どうぞよろしくお願いします。

  • [2]かのん

    2018/03/10-00:13 

    最終日に飛び込みました、かのんと天藍です
    よろしくお願いします

    ……先月も似たようなことがあった気がするのですが……
    改めてお話しするのは少し恥ずかしい気がします

  • [1]鬼灯・千翡露

    2018/03/09-07:18 

    鬼灯千翡露とラグ君です。よろしくね。
    やりたいことはもう決まってるから、あとは人が集まるといいなあ。


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