あなたとのキス(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「大丈夫?」
 神人がベッドに横たわる精霊の額を、固く絞った冷たい清潔なタオルで拭う。
 精霊はオーガとの戦闘で傷を負い、自宅療養をしているところであった。

「今日から、食べられるはずだったよね。何が食べたい? なんでも言って」
 神人は精霊の布団を横にどかして、上衣を脱がせ、包帯を取った。傷口に消毒薬を丁寧に塗り、それからざっと彼の全身の汗や汚れをタオルで清拭していく。
 精霊は特に何を言う様子もない。神人に安心して身を任せている。

「だるいの? 熱はない?」
 神人は精霊をまたベッドに静かに横たえると、そっと額に額をあわせた。
 傷のせいで、発熱することもあるから――。

 すると、精霊はそのまま顔を上げて、さっと神人の唇に唇を重ねた。
 神人は、びっくりするが、精霊はたちまち神人の頭を抱き締めて固定してしまって、離れない。
 強く唇を吸われて息も出来ず、神人はその場でじたばた布団を叩いた。

「全くもう! いつも突然なんだから!!」
「これぐらいには元気になったよ。そうだな、腹が減っているから、何か作ってくれ」

「何がいいの?」
 照れくささに顔を背けてベッドから降りながら神人が尋ねる。
「お前が作るものなら、なんでもいいよ」

 そんなことを言ったって誤魔化されないんだから。
 そう思いつつもキスに浮かれて、神人は足取り軽くキッチンに向かった。

解説

※ 必ずしもシチュエーション通りでなくとも構いません。
※ 治療代やら食費やら、なんやかやで300jr消費しました。
 ウィンクルムがキスをするエピソードです。
 
 キスならばどんなものでも構いません。
・常日頃からチュッチュチュッチュしているウィンクルム
・反対に、ケンカップルで仲直りのためにキスをするウィンクルム
・ラッキースケベのごとく事故でキスをしてしまうウィンクルム
・一方的に強引にキスをするウィンクルム
・罰ゲームで偶然にもキスをすることになるウィンクルム
etc、etc……。
 様々なバージョンのキスがあると思います。
 思いのままのウィンクルムのキスを描いてください!


ゲームマスターより

ウィンクルムの数だけ、相応しいキスの形があると思います。
色々な甘いシーンを見せてください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  彼の職場から連絡をもらい 慌てて病院へ

シリウス!
いつもの顔で椅子に座っている彼を見て ほっと息を
足を怪我したって聞いたけれど 大丈夫なの?
返ってきた返事に口を尖らせる
怖いこと言わないで
怪我したのにお仕事続けようとしたから わたしに連絡がきたんじゃない
彼の頬を両手で挟んで
シリウスに何かあったら連絡してくださいって伝えてありますからね
隠せないわよ

わたしがちょっとでも怪我をすると すごく心配するくせに
視線を落とした彼の呟きが聴こえず 首を傾げる
なあに?
キスに一拍遅れて真っ赤
ーそんなので 誤魔化されないんだから
ほんの少し熱を孕んだような 翡翠の目
…いや じゃ ないけど…
小さな謝罪の声に ぎゅっと抱きつく
本当によ 反省してね


かのん(天藍)
  おはよう
優しい声と大きな手の感触に開けた目をもう一度閉じたくなる
額に触れる感触にもう一度目を開けると
いつの間にか着替え終わった天藍が先に寝室から出て行くのが見えた
一緒に暮らし始めても天藍が居る所で着替えるのは躊躇してしまう私に対して、いつの頃からか天藍は自然に気を使ってくれている



ただいま
天藍が帰ってきたので玄関へ行ったら、靴を脱いだばかりの彼に抱きしめられる
まだ寒いので生姜をきかせた肉団子のお鍋にしました
お夕飯のメニューや今日あったことを話している間
ふと言葉が途切れた時に不意打ちのようなキス
びっくりして見上げたら嬉しそう+満足そうな笑顔
いつも私ばかりどきどきさせられるのは少しずるいと思うんです


シャルティ(グルナ・カリエンテ)
  ったく。だからいつも言ってるじゃない。『周りをちゃんと見て動け』って
最大限優しくしてるじゃない
ぎゅっと、包帯を引っ張る
うるさいわね

っ……!?
手を重ねられて肩を震わす
そしていつもと様子のおかしい精霊を凝視
そう。……ええと、
続けて、なによ? と、言おうとしたが、精霊に唇を重ねられて、声に出せなかった
解放され、精霊を睨む
あんた……! なに、すんのよ……?

この件で精霊の想いを知る
……なにも言わないのは、変よね
気持ちは伝わったわ、あんたのその言葉は受け取れないけれど……
やっぱりあんた、バカじゃないのね(クスと笑って
はいはい

……あんなことまでしておいて、よく言うわね……(キスのこと
流石に恥ずかしくて顔を背ける


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  誕生日祝いにとお店に連れられ服を見立てられ贈られ
精霊宅にて早速着飾られて更にはいつの間にか買ってたらしいワインを頂く事になってしまった
戸惑いもしたものの、見立て通りだったらしく私の姿を見て嬉しそうにしていた精霊の顔を見たらこちらも嬉しい気持ちになれた
初めての大人な祝われ方が新鮮で楽しくてワインも進み、ほんのり良い気分になり…

…ねえガルヴァンさん…私のこと…好き?
返答に不満
は…はっきり、言ってよ…

急に抱きしめられての言葉に怯むも
そ、そうじゃなくて…ね?

~っ?!
突然のキスに大混乱

ぅ…も、それでいい、です…(赤面白旗


最近、抱き締められる頻度が多い気がする
もしかしてこれが精霊なりの愛情表現なのかな…?


●シャルティ(グルナ・カリエンテ)編

 その日、シャルティは部屋で精霊のグルナ・カリエンテの手当をしていました。
 グルナはオーガに不意をつかれて負傷していたのです。
「ったく。だからいつも言ってるじゃない。『周りをちゃんと見て動け』って」
「分かってるっての! 今回は、油断しただけだ! つーか、もっと優しくできねえのかよ!」
「最大限優しくしてるじゃない」
 シャルティはクールに言い放つと、グルナの包帯をぎゅっと引っ張り上げました。
「いっ……!? ど、どこがだよッ!」
「うるさいわね」
 冷たい口ぶりですが、シャルティは手を止めません。
 グルナは黙々と治療を続ける彼女を見て、愛しさがこみあがってきました。
「……なあ」
「っ……!?」
 彼は彼女の包帯を持つ手の上に自らの手をそっと置きました。
 シャルティは手を重ねられて肩を震わしました。
 そして、いつもと様子の違う――何かおかしい――グルナの事をじっと見つめます。
「もし万が一、好きなヤツに近々告るっつったら、どうする?」
「そう。……ええと、……っ」
 なによ?
 シャルティがそう言おうとした時でした。
 グルナがそっと、シャルティの唇に自分の唇を重ねました。
 シャルティは声を出す事が出来ませんでした。
 ただ、触れるだけのキスでした。
 グルナの手がシャルティの手に重ねられています。
 ただ、重ねられているだけでした。
 それなのに、シャルティはふりほどくことが出来ませんでした。
 グルナを突き飛ばす事だって出来たのに。ひっぱたく事だって出来たのに。シャルティはそうはしませんでした。
 それはグルナが負傷していたからでしょうか。
 きっと、そうではありません。
 シャルティはそう出来なかったから、そうしなかったのでした。
 やがてグルナに解放されて、シャルティは彼の事を睨み付けました。
「あんた……! なに、すんのよ……?」
「シャルティ。お前が、すき、だ……」
 このとき、シャルティはグルナの想いを知ったのでした。
 グルナの真剣な瞳と男くさい笑みを見つめて、シャルティは普段の自分を取り繕いました。
「……なにも言わないのは、変よね。気持ちは伝わったわ、あんたのその言葉は受け取れないけれど……」
「……そうか。前から思ってた。俺に気持ちとかねえだろーなー、とか。けど、今言っとかねえとって思った」
 グルナは自嘲するように笑い、軽いため息をつきました。
「やっぱりあんた、バカじゃないのね」
 シャルティはくすりと笑いました。
「……何もしねえで後悔とか、性にあわねえんだよ」
 悔しげに顔を歪める彼。
「はいはい」
 シャルティはまるで相手にしていないようにそう言いました。
「チッ、うるせえな。おら、手、止まってんぞ」
 やがてシャルティは包帯を巻き終えて、他の傷も全部看終わり、薬品などの後片付けを始めました。
 そのまま部屋から立ち去ろうとするシャルティの手首を、グルナが掴みました。
「何よ」
 シャルティはグルナを振り返りました。
「お前の気持ち動かすまでこの話、終わらす気ねえからな」
 グルナはにやりと笑いました。一回、失敗したぐらいで、彼は心を折られる事などないのです。
「……あんなことまでしておいて、よく言うわね……」
 それはキスの事です。
 シャルティはさすがに恥ずかしくて顔を背けました。その拍子に自分の腕のブレスレットに気がつきました。そっと盗み見るとグルナの腕にも、聖夜にシャルティがプレゼントしたブレスレット。
 まるで色違いのペアのようにも見えるブレスレットを嵌めているウィンクルム。
 傍目から見たらもう、恋人同士のようにも見えるかもしれない--。そう気がついて、シャルティは誰にともなく言いました。
「バカ」

●リチェルカーレ(シリウス)編

 その日、リチェルカーレは精霊のシリウスのために大急ぎで病院へ駆けつけました。
 彼の職場から連絡を貰ったのです。
「シリウス!」
 部屋に駆け込むと、いつもの顔で平然と彼は椅子に座っていました。
 リチェルカーレはほっと息をつきました。
「足を怪我したって聞いたけれど 大丈夫なの?」
「大袈裟だな」
 シリウスはわずかに困った顔です。
「足を捻っただけだ。折れたわけでも切れたわけでもない」
 リチェルカーレは、返ってきた答えに口を尖らせます。
「怖いこと言わないで。怪我したのにお仕事続けようとしたから わたしに連絡がきたんじゃない」
 シリウスを見るリチェルカーレのきっとした表情。
 シリウスは困惑してしまいます。
 怒っているような、泣きそうな顔。
 この顔を見たくないから、黙っていようとしたのに。
「……そもそも、なんでお前に連絡……」
 何か言おうとしたシリウスの頬を両手に挟んで、リチェルカーレは彼の目をのぞき込みました。
「シリウスに何かあったら連絡してくださいって伝えてありますからね。隠せないわよ」
 シリウスはお節介な同僚の顔が目に浮かび、軽く眉を寄せます。
 そして真っ直ぐにのぞきこんでくる二色の瞳に言葉を詰まらせるのでした。
「わたしがちょっとでも怪我をすると、すごく心配するくせに」
 リチェルカーレはやっぱり少し怒っているのかもしれません。でもそれはシリウスへの愛情から。彼の事がとても大事で、心配しているからなのです。

――ただそばで笑ってくれる。それだけでいい――
 それは間違いなく本音なのに、こんなふうに案じてもらえるのを嬉しく思う自分も確かにいる……シリウスはそれを認めました。

「……馬鹿みたいだ」
 シリウスは小さくそう呟きました。
「なあに?」
 聞き取れないので小首を傾げるリチェルカーレにかすかに笑うと、シリウスはそのまま彼女に軽く口づけました。
 突然のキスにリチェルカーレは一拍遅れて真っ赤になってしまいます。
「――そ、そんなので誤魔化されないんだから」
 ほんの少し熱を孕んだような翡翠の目が彼女を見つめています。
「……嫌なら、しない」
 寂しげに低くシリウスはそう言いました。
「……いや じゃ ないけど……」
 小さな声で素直な返事をするリチェルカーレ。
 その頬に手を添えて、シリウスはもう一度キスをします。今度は深いキス。
「心配かけて悪かった」
 シリウスはようやくそう言って、リチェルカーレを抱き締めました。
 リチェルカーレは小さな謝罪の声に、ぎゅっとその身体に抱きつきました。
「本当によ。反省してね」
 シリウスの腕、彼の匂いに包まれながら、リチェルカーレは思いを馳せます。
(いつの間に、こんなに大好きになっていたんだろう……)
 この間のインタビューの時から考えているのでした。
『……覚えていない。いつの間にかとしか、言えない』

『大好きなのは最初から……だけど

私も……気が付いたら特別になってた』

 そんなふうに答えたけれど、具体的に彼の事がいつ好きになったのか、どうしてこんなに好きになってしまったのか、リチェルカーレ自身にも分からないのです。そしてそれはきっと、シリウスもそうなのだと思うと、なんだかおかしくて笑ってしまいました。
「?」
 シリウスは不思議そうにリチェルカーレの事を見下ろします。
「ううん。なんでもないの。もう危ない事はしないでね」
 リチェルカーレは囁くように言いました。

……あなたはいつでもわたしを護ってくれるけど、お願い。ひとりで耐えて進もうとしないで。苦しみも悲しみも 支えられるようになりたいの。
……無邪気で、無防備で、危なっかしくて。それでもいつだって 自分を救ってくれる暖かな存在。まっすぐに向けられる笑顔と好意のおかげで、息ができる。

 彼らは本当に優しくあたたかなウィンクルムです。

●アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)

 二月にはアラノアの誕生日があります。
 そのため、ガルヴァンは彼女の誕生祝いに店に連れて行き、洋服を見立てて自宅で着飾り、密かに買っていたワインで乾杯するという、即席の二人だけの誕生会を開きました。
 アラノアは勢いに押されてすっかり流されてしまいました。

(恋人とは何をするのか、正直よく分からない。だが、俺の手で着飾られた恋人が俺の隣で微笑んでいるというのは中々どうしてこう気分が高揚するのだろうか)

 ガルヴァンは傍らのアラノアを見つめながらそう思います。
 浮ついた心のままついついワインが進みました。
 アラノアも、戸惑いはしたものの、見立て通りだったらしく、自分の姿を見て嬉しそうにしているガルヴァンの顔を見ていたら、自然と自分も嬉しい気持ちになれました。
 初めての大人の祝われ方が新鮮で楽しくて、アラノアもワインが進み、ほんのりと良い気持ちになり……。

 ずっと、いつも、聞きたかった事を聞きました。

「……ねえガルヴァンさん……私のこと……好き?」
 ガルヴァンは急な質問に目を瞬きます。

「……ん? ……んー……そう、だな。お前と同じ気持ちだ」
「は……はっきり、言ってよ……」
 歯切れ悪く言うガルヴァンに、アラノアは強いて尋ねました。
 彼女はいつも、それぐらい不安なのです。
 初恋が失恋したという苦い経験がある上に、元々自己評価が低めなのですから。だからガルヴァンのしっかりした言葉が欲しいのです。

 ガルヴァンは思わずアラノアを抱き締めささやきました。
「……可愛いと思っている」

 アラノアは急に抱きしめられてその言葉に怯みます。
 そんなことを言ってくれるのはガルヴァンだけだと思います。とても嬉しいです。
 それでも、やっぱり愛していると言って欲しくて言葉を重ねました。

「そ、そうじゃなくて……ね?」

 アラノアの困ったような上目遣い。おねだりするのもろくに慣れていない不器用で清純な表情に、たまらなくなり、ガルヴァンはアラノアに思い切りキスをしました。
 唇を強く吸い上げて、唇でなぞり、舌でなぞり、角度を変えて深く吸い--まるでそのままアラノアを食べてしまうとでもいうように。激しいキス。

「~~っ!?」

 アラノアはもう、突然のキスに大混乱です。
 すっかり固まってしまって何も出来ません。
 脳の思考がすっかり停止して、身体は感覚だけになっていきます。間近にあるガルヴァンの存在、ガルヴァンの唇の感覚だけがアラノアを支配しました。
 やがてガルヴァンが唇を離してくれました。真摯な瞳で彼女の事をのぞきこみ、少し焦がれたような声で言いました。
「……これでは……だめか?」
「ぅ…も、それでいい、です……」
 アラノアはすっかり赤面して白旗をかかげました。

 ガルヴァンは、赤くなってすっかり大人しくなったアラノアをまた腕に引き寄せながら酔った頭で考えました。
「大事な言葉ほど心の奥に仕舞いたい。そして……大切なものほど閉じ込めたくなるのは何故だろう」
 腕の中の大切な人が逃げないように、ガルヴァンは強く優しく抱き締めました。
(最近、抱き締められる頻度が多い気がする。もしかしてこれが精霊なりの愛情表現なのかな……?)
 まだキスの興奮がさめやらず、身体がぎごちなく固まっているアラノアは、ガルヴァンの腕の中でそう感じていました。
 ガルヴァンの腕の中はあたたかくてとても安心出来て、酷いぐらいに心地よいのです。そこから離れたくないと思います。このまま閉じ込められてしまってもいいかも――そんな錯覚が起こるほどに。

 二人とも、器用に心を表現出来るタイプではありません。
 だけど、だからこそ。
 二人は心の繫がりを大切に感じて、そっと育てていきたいと思っているのでした。

●かのん(天藍)編

 毎日。
 かのんは精霊の天藍の傍らで目を覚まします。

 朝、天藍は目が覚めて身を起こします。
 隣で寝ていたかのんも、天藍の動きでそっと目を開きます。
 天藍はまだ覚醒しきらない彼女の頭を撫でます。
「おはよう」
 ぼんやりとかのんは笑っています。
 優しい声と大きな手の感触。思わず、一度開いた目を閉じたくなってしまいます。
 そのあと、天藍は身支度を整えます。
「ゆっくり支度してくると良い」
 名残惜しいのですが、もう一度、かのんの頭を撫でて、額にキスをします。
 その感触にもう一度目を開けるかのん。
 いつの間にか着替え終わった天藍が先に寝室から出て行くのが見えます。
(実際の所、かのんの方が身支度に時間がかかるから、その間に自分が朝食の支度をしておく方が効率が良いよな)
 天藍はそう思います。
 そして、かのんは、一緒に暮らし始めてからも、天藍の居るところで着替えるのは躊躇してしまうのでした。だから、いつの頃からか、天藍が自然に気を遣ってくれていると思うのでした。
 それはやはり、気恥ずかしいほどに嬉しいのでした。

「ただいま」
「おかえりなさい」
 夕方。
 天藍が帰ってきたので、かのんが玄関に行くと、靴を脱いだばかりの彼に抱き締められました。
 冬の間は、外の庭仕事が減る分、かのんの仕事の方が終わるのが早いのです。だから最近は、家に帰るとエプロン姿でかのんが出迎えてくれるのでした。
「まだ寒いので生姜をきかせた肉団子のお鍋にしました」
 家の中に入りながら、夕飯の献立と今日の出来事を楽しそうに教えてくれる唇。
 お喋りの合間のほんの少しの隙をついて、天藍は触れるだけの優しいキスをします。
 びっくりしてかのんが天藍を見上げると、そこには嬉しそうで満足そうな笑顔がありました。
「いつも私ばかりどきどきさせられるのは、少しずるいと思うんです。今度は私が、天藍を驚かすんですから」
 天藍はびっくりする様子も、その後、頬を染める様子も、可愛くて仕方在りません。
 かのんの宣言については、楽しみにしてみようかと思います。

 和やかな食事を取りながら、ふと、かのんは昔の事を思い出しました。
 三年前の今頃、バザー・イドラの「家族の買える家」。
 あのとき買った幻想は、本当に手に入るのだろうか……。
 そんなことを思ってかのんはくすりと笑う。
「どうした?」
 怪訝に思った天藍が、箸を止めて彼女の方を見た。
「なんでもないんです。ただ、懐かしいなと思って……」
「何が?」
「バザー・イドラ。そんなこともありましたね」

……緑あふれる穏やかな場所。かのんの自宅の庭。庭に置かれたテーブルセット。空のカップ。
 腕に抱いた幼子を懸命にあやしているかのん。
 慈しみの微笑。惜しみない愛情。
 それでも少し疲れている彼女のために、カフェインレスのお茶を持ってくる天藍。
「命ってすごいな。まだこんなに小さいのに、心臓の鼓動をハッキリ感じる」
 かのんから自分の息子を抱き取って、感激の声をあげる天藍。
 天藍の喜びの表情にかのんもまたあふれる想いをかんじている。

 息子は少し大きくなると、イタズラばかりするようになる。
 庭でガーデニングの作業をするかのんの脇をリスのように走り抜けていく少年――我が息子。
 その後を天藍が大声をあげながら追いかけていって。

 大きくなった息子は、時には父親と大喧嘩するような事もある。
 そんなときはかのんは、バケツで水をぶっかけて止めるのだ。
「家で一番強いのは母さんだよな」……

 夢に見た家庭は現実にかなえられる事があるのでしょうか。
 天藍と二人で優しい時間に生きながら、かのんはそう思います。
 目の前で、かのんへと愛情の眼差しを見せてくれる天藍を見ていると、その夢は、かなってもかなわなくても構わないと思えてくるのでした。

 二人ならば、どんな未来も乗り越えられる。その自信があるのですから……。



依頼結果:大成功
MVP
名前:アラノア
呼び名:アラノア
  名前:ガルヴァン・ヴァールンガルド
呼び名:ガルヴァンさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月17日
出発日 02月24日 00:00
予定納品日 03月06日

参加者

会議室


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