聖夜は貴方と一緒に(梅都鈴里 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

「世間はクリスマス一色ねえ」
「そうだな。早いなー」

 きらびやかな電灯が魔法のようにあかりを灯す外出先からの帰り道。
 街中の至る所ではイルミネーションが飾り付けられ、ツリーを模したビル群のプロジェクションマッピングに、浮足立つ市民たち。
 空気は身を切る様に冷たいけれど、この季節の夜は訪れも早く長い。
 身体の冷えに反して、クリスマスのデートや友人たちとのパーティ、観光施設でのイベントごとなどに、何かと心が暖かく騒ぎ立てる季節でもある。

「先に言っておくわね。クリスマスイブは予定があるの」
「えっ」

 てっきりすっかり、自分と過ごすものだと思っていた神人から聞かされたまさかの防衛線。
 束縛するつもりはないし、友人たちとクリパ、なんてのもこの時期にしか開けないイベントだろう。
 でも、正直に言えば、一緒にクリスマスを過ごしたいのが精霊の本音だ。

「……ふふっ、誰と過ごすと思う?」
「だ、誰かひとりの人が居るのか……?」
「そうよ。まだわからない?」
「わ、わからない……」
「もう、鈍いわね!」

 ちゅっと音を立てて、神人は精霊の頰に口付けて。
 耳元に寄せた唇で、音楽のような声音に乗せて囁いた。

「イブはあなたと過ごすの。今年も、もちろん来年もね!」

解説

クリスマスっぽいデートをしましょう!
以下行き先一覧

1.一日中遊べるショッピングモール
 出来たばかりの大型商業施設。ショッピング、ゲーセン、映画館、飲食施設、何でも揃っています。
 モール内はクリスマス一色! パーティグッズを買ったり、服を買ったりケーキを買ったりして盛り上がりましょう。

2.オシャレなカフェと観光スポット巡り
 SNS映えする料理を撮ったり、オタクな街を巡ったり、おでんたべたり、新しい店を開拓したり。
 街中もクリスマスムード一色です。駅前や街中の川沿いなど、イルミネーションスポットを巡るのもいいですね。

3.ホテルでディナー
 有名なホテルを予約してクリスマスディナー、ケーキも出ます。
 夜景の美しいスイートルームにお泊りして、ロマンチックな夜を過ごしましょう。

4.水族館『アクアパレス』
 園内の巨大クリスマスツリーが夕方になると点灯し、クリスマスムードを盛り上げてくれます。
 遊園地に行って遊ぶのもOK! 観覧車やメリーゴーランド、フードコードにゲームセンターなど一通り揃っています。

5. おうちでゆっくりホームパーティー!
 外は寒いので、大きなホールのケーキやシャンパンを買って、二人でゆっくりお話しましょう。
 直前まで隠しておいて、プレゼント交換もいいですね。


▼個別描写です。
 行き先は一覧です、番号表記で大丈夫です。ちょっと豪華なお出かけ代として500jr。
 秋に出したデートイベントと似た感じです。


ゲームマスターより

外が寒過ぎるので、クリスマスシーズンにかこつけてイチャイチャしてほしいです。
よければお気軽にご参加ください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)

  5

これ、とーっても甘くて美味しいですねぇー!
あぁっ、まだ飲みかけなのにぃー!

むぅ…だってぇ今年はカイ君来てくれなかったんですもの…
2人きりもとーっても嬉しいんですけど…
そうですよね、また別の日に会いに行けばいいですよねー!
お部屋暖かくしてますけど、それでもグレンにぎゅむーっとくっついておきます。
えへへ、しあわせー…

少しづつ酔いが醒めてきたような…えっ、もうそんな時間ですか?
自分達の部屋に帰るだけですけど…酔ったフリ続ければこのまま一緒にいられるでしょうか…
嫌です、離れませんこのままでいます。

ううう嘘じゃないです!ちゃんと酔ってま…ごめんなさい酔ってません…
だって、離れたくなかったから…


出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
 

同棲を始めてひと月
今年のクリスマスは家で過ごそうと二人で決めた
あたしは料理の準備担当
クリスマスだけど相手の好みも考え和洋折衷

隣の部屋にレムの気配がある
自分以外の人が同じ家にいるのってなんて幸せなことなんだろう
噛み締めながら料理を運んでいく

というわけでメリークリスマス!
どうぞ召し上がれ
乾杯して二人で食事、最後にケーキ
和菓子好きのレムに合わせて抹茶のブッシュドノエル
他に特別なことはないけど、穏やかな空気がとても心地良い
家族になるって、こういうことかしら

…?どうしたのレム?
それは…確かにレムって亭主関白っぽいものね…
あたし、仕事辞めるの嫌だわ…え、いいの?本当に?
ありがとうレム!大好き!(抱きつく


シャルティ(グルナ・カリエンテ)
 
立ったまま、二人で窓の外を見て
……もうすっかり冬ね
良いのよ。家で過ごすのも素敵じゃない
ケーキも買えたし
あんたが食べないせいよ、バカ
相方と飾ったツリーを見て
……飾って良かったわ。キレイ
 飾る時の相方を思い出してクスッ

何でもない。……部屋に忘れもの。取ってくるわ
戻ってきて、渡された包みに首傾げ
……私に?
えっ、私以外にって……
(居るでしょ、私以外に渡さなきゃいけない人が)
……ブレスレット……
素直に嬉しいが、好きな人に渡さないのか疑問
そうだ。……私からも
まさか、互いに送ったのが同じものなんてね
大事にするからあんたも大事にしてよ?
バ、バカ……そこまでしなくて良いわよ……
そんなに優しいと、照れてしまう


鬼灯・千翡露(スマラグド)
  4

(館内一通り見て回って)
はー、水の中とその生き物って癒されるねえ
水族館って去年の今頃ぶりかな(SP1)
あはは、最初はラグ君そういうの興味なさそうだったもんね
少しずつ、私の好きなものに興味持ってくれて嬉しいな

おー、あれが噂の……綺麗だね!

最近美術の先生にね、絵を褒められたの
前までの私の絵は『見たものをそのまま写した』
『上手く描けてるけど訴えてくるものに欠けてた』んだって
でも、最近は其処に私の想いが籠められてきてるように感じる
ラグ君と行った場所の絵が特にそうだって
先生はそれ知らないけど、やっぱり解るんだね

つまりね、私幸せなの
目の前の景色が当たり前に素敵に見えるのはラグ君のお陰
これからもよろしくね


イザベラ(ディノ)
  2

鋭い爪で数多の悪の肉を裂き、その返り血は服を真紅に染めあげる。
その名は英雄サンタ・クロウス、
クリスマスとは血で血を洗う年末悪党大殲滅戦のコードネームだ。

と今迄思っていたのだが、どうも違うらしい。
あれと共に街中のイルミネーションを巡る。
美しいとか綺麗とかは未だよく分からないが、多分これがそういう事なのだろう。
夢中であちこちへ視線を向けるあれが可愛い。
くるくる変わる表情にキラキラと輝く目。
色鮮やかに点滅する光は、何だかあれに良く似ている。

感想ーー可愛かった。
駄目らしいので考え直す。
この感覚を楽しいと言って良いのだろうか。
鍛錬時の様な激しい興奮は無いが。
…ただ。
あれと一緒ならば、また来たいと思う。




「……もうすっかり冬ね」
 二人で窓の傍に立ち、しん、と静まり返る夜空に呟きを向けたのは神人、シャルティ。
「だな。……見てるだけで無理だ。さみぃ」
 隣でぶるりと肩を震わせて、我先にと窓から離れたのは精霊グルナ・カリエンテだ。
 暖かな室内で腰を落ち着けて、ふと思い立った疑問を口にする。
「けど、良いのか。お前、外出したがってたろ」
「良いのよ。家で過ごすのも素敵じゃない」
 ケーキも買えたし、と付け足して。
 ふわふわとツインテールを揺らし、グルナの正面に座ると、卓上に鎮座する華やかなホールケーキを見遣る。
「まあ。殆どお前の胃袋に入るけどな、ケーキ」
「あんたが食べないせいよ、バカ」
 唇を尖らせたパートナーからは予想された反論が返って来て、グルナは肩を竦めて見せる。
 シャルティとてグルナが甘味を苦手とする事も知っているから、他愛ない掛け合い以上の言及はせず、ツリーを見上げた。
「……飾って良かったわ。キレイ」
「ん、悪くねぇ」
 面倒だったがな、と小さく、仏頂面のまま補足された台詞に、二人でツリーを着飾っていた時の事を思い出したシャルティはくすりと笑う。
 こういう細かい作業は苦手だぜ、と、無骨な男がてっぺんに星を飾りつける光景は、中々に微笑ましいものだった。
「なに笑ってんだよ」
「何でもない。……部屋に忘れもの、取ってくるわ」
 床に手を付き行儀よく立ち上がると、ぱたぱたと一度部屋に引っ込んで。
 ややあってシャルティが戻って来たときには、やけにそわそわするグルナが居て。
「やるよ」と、目の前に突きつけられたのは、小さくも高級感のある紙袋。
 一応受け取ってみて――その見た目からクリスマスプレゼントだ、という所までは察しがついても、その理由まで思い至らず、小首を傾げる。
「……私に?」
「なんだ、その反応」
「えっ、私以外に、って……」
「お前以外に渡すヤツなんていねぇ」
「……」
 居るでしょ、私以外に渡さなきゃいけない人が。
 そんな台詞はどうにも出てこなくて――もしかしたら万が一にも「間違えた」と否定される事に、どこかで怯えたせいもあるかもしれないけれど。
 ともあれ、ひとまずは素直に「あ、りがと」と、ぎこちなく返事をして。
 一方のグルナとしては、これがもう、不器用な自分なりの精一杯のアピールだった。
 あけてもいい? と問われ、好きにしろよ、とぶっきらぼうに返すも、内心はどきどきしっぱなしだ。
「ブレスレット……」
 アクセサリーを取り出したシャルティの瞳が、宝石を映しキラキラと瞬く。
 素直に、この贈り物は嬉しい。でもやっぱり、好きな人に渡さないのか疑問だ。
「そうだ。……私からも」
 思い出した様に、背中の後ろに隠していた小箱をグルナに差し出す。
 まさか貰えるとは思ってなかったのか、一度ぱちくりと目を丸くして。
「お、おう。サンキュな。開けるぜ」
「どうぞ」
 こちらもぎこちなく礼を告げてから、中身を取り出して、驚いた。
「……なんだ、お前もか」
「ふふ。まさか、互いに送ったプレゼントが同じものなんてね」
「ぷっ……そうだな。はは」
 シャルティがグルナに贈ったクリスマスプレゼントも、ブレスレットだったのだ。
 形状は似ているけれど、色合いが違っていて、まるでペアにも見える作りに、それまでの緊張が解けてどちらともなく笑い出す。
「大事にするから、あんたも大事にしてよ?」
「当たり前だろ。お前がくれたんだ、これ、宝モンにする」
 シャルティが思った以上に、グルナは喜んでくれたようだ。
 いつになく上機嫌に微笑んで、シャルティの頭をわしゃわしゃと撫でて。
「バ、バカ……そこまでしなくて良いわよ……」
 思った以上の優しさが返って来たことですっかり照れてしまって、やり場のない視線の先に、暫く困り果ててしまった。


 ――鋭い爪で数多の悪の肉を裂き、その返り血は服を真紅に染めあげる。
 その名は英雄、サンタ・クロウス。
 クリスマスとは血で血を洗う、年末悪党大殲滅戦のコードネームだ――!

「そんな物騒なサンタが居てたまるか」
 半眼を浮かべ呆れた様な精霊ディノの突込みが本日も冴え渡る。
 冒頭のやたら仰々しいモノローグは、神人、イザベラによるクリスマスというイベントの、寸分狂わぬ認識であった。

「今迄ずっとそう思っていたのだが、どうも違うらしい」
 ふむ……と、真剣に考え込んでしまったイザベラには、ディノも呆れを通り越して心配になる。
 前々から思ってはいたことだが、彼女の家の情操教育はどうもおかしい。
 クリスマスとはもっとこう、華やかで楽しくてロマンチックであるべきだとディノは思う。
 もっとも同年代の友人にそれを告げれば夢見がち過ぎだと返される事もあるが、彼女のそれに比べればよっぽど庶民的な思考だろう。
(……この人に、一般的なクリスマスを過ごさせてあげたい)
 一重にそんな思いで、彼女をクリスマスムード一色の街へと引っ張り出した。

「すごいですねー! どこもかしこも、イルミネーションでいっぱいだ!」
 どこを見てもきらきらと色鮮やかで、競い合うように趣向の凝らされた煌びやかな電飾の数々に。
 年甲斐ないと分かっていても自然と浮き足立ってしまう。
 人目憚らずはしゃぐディノとは裏腹に、イザベラはいたって冷静に街中を観察している。
 サンタのコスチュームに身を包んだ人々は、ずっと思い描いていた血塗れの英雄とは程遠い。
「あ! 大きなツリーですよイザベラさん! すごく綺麗だ……!」
「む……?」
 同じ方向を見れば確かに巨大なもみの木があるが、電飾や飾りに塗れて、なんだかゴテゴテとやかましい。
 美しいとか綺麗だとか、そんな浮付いた感情は未だによく理解出来ない。興味もなかったし、理解しようともしなかった。
 けれども隣を歩きながら、夢中であちこちへ視線を向けるディノのことは可愛いと思う。
 くるくる変わる表情にキラキラと輝く瞳。色鮮やかに点滅する電飾は、なんだか――。
「……お前に良く似ているな」
「ん? なにがでふか?」
「いや……」
 クリスマスマーケットで見つけたワインを片手に、クッキーを頬張るディノにそれ以上を言うのはなんとなく気が引けて、僅かに口の端を解く。
 多分、この気持ちが、そういうことなんだろう、と。

「イザベラさん、今日一日どうでした?」
「可愛かった」
 一度は意味を把握しかねて首を傾げれば「ん」と自分の顔を指差されて「ディノが可愛かった」と言う意味だと理解し、雪道でもないのに「ずこーっ!」と滑って転びそうになった。
 質問の意図とはずれまくりの回答に、当の本人は顔を真っ赤にして言い募る。
「お、俺じゃなくてですね! こう、全体的に! 楽しかったかって意味でですね!?」
「だめなのか」
「どっちかっていうとだめですね!」
「ふむ……」
 もうなんか泣き出しそうなディノを余所目に、この感覚を楽しいと言って良いのかわからず、言いよどむ。
 鍛錬時の様な激しい興奮はない。楽しさや興奮の対象は、当たり前の様に人によって違うものだろうが――ただ。
「……お前と一緒ならば、また来たいと思う」
 瞳を伏せて、少しだけ形の良い唇を緩めて告げられた台詞に、今度はディノが言葉を返せなくなった。
「どうした。まだ不満か」
「い、いえ! なんでもない、です……」
 彼女の言葉は良くも悪くも歯に衣着せずストレートだ。とても心臓に悪い。
 最近は色々と考えてくれて――もっと言うと今浮かべたような、落ち着いた年上の表情を見せられると、余計に響く。
 体が冷える前に帰るぞ、と言うイザベラに、ワインの効果もありすっかり体の芯までポカポカと温まってしまったディノはかろうじて「ふぁい……!」と返し、よたよたとついていくのが精一杯であった。


(自分以外の人が同じ家にいるのって、なんて幸せなことなんだろう!)
 この家の主である神人、出石 香奈は。
 隣の部屋から時折聞こえてくる声や物音から、精霊、レムレース・エーヴィヒカイトの気配を感じて。
 料理を落としてしまわないよう注意しつつ、幸せを噛み締めるように天を仰いだ。

 同棲を始めてひと月ほど。
 今年のクリスマスは家でゆっくり過ごそうと二人で話し合って決めた。
 ホームパーティーがしたい! と言う香奈の言葉に、レムレースは当然二つ返事で快諾してくれた。
 元々クリスマスは家で家族と過ごすものだと思っていたし――と、当たり前の様に彼女を家族として扱っていた事に気付いて。
 まだそう呼ぶには気が早いか、と誰にともなく呟いて、一人苦笑していたレムレースであった。

 香奈は料理の準備担当、一方のレムレースはリビングで飾り付けを担当した。
 小ぶりでも電飾の華やかなツリーを傍らに。ドアにはリースを飾り、ノンアルコールのシャンパンを用意して、テーブルのセッティングも順調に完了。
 一息ついたころ、キッチンから包丁の音や鍋を煮込む音、そして肉の焼ける匂いが漂ってくる。
 些か古風な考えだけれども、帰宅した時こういうもので出迎えられたら、きっと幸せなのだろうとレムレースは思う。
(だが……)
 自身の理想と、描く未来の展望に思うところがあり、神妙な面持ちで思考にふけった。

「メリークリスマス! どうぞ召し上がれ!」
 しゅわしゅわと泡立つシャンパンで軽く乾杯して、二人で食事にありつく。
 クリスマスだけれど、相手の好みも考えて和洋折衷でまとめられた香奈の料理はどれも絶品だった。
「む、この魚にクリームがかかったやつ美味いな。どうやって作ってるんだ」
「ふふー。隠し味にわさびが入ってるのよ。辛くはないでしょ?」
「ああ。程よくコクが効いている。流石香奈だ」
「もう、褒め過ぎよ。うれしい!」
 笑顔の絶えないディナーを平らげたあとは、食後にお待ちかねのデザート。
 切り株をかたどった聖夜にふさわしいケーキに、レムレースは感嘆の声をあげる。
「これは……! すごいな。香奈が自分で?」
「当然よぉ。レムは和菓子が好きだったなと思って」
 彼の好みに合わせた抹茶のブッシュ・ド・ノエルを、二人で切り分けて美味しくいただく。
 他に特別なことはないけど、穏やかな空気がこれ以上なく心地良いと感じて。
(……家族になるって、こういうことかしら)
 じんわりと、思い描く将来の二人に思いをはせた。

「香奈……話したいと思っていたことが有る」
「? どうしたの、レム?」
 食後、紅茶を傾けながら。
 改まって会話を切り出したレムレースに、香奈は首を傾げる。
「俺は、妻となる相手には家庭に入って欲しいと思っていた。今日のように、家で食事を作ってくれたり…そういう夫婦に憧れていた」
「……確かにレムって、亭主関白っぽいものね。古風男子っていうか……」
 そう言うと思った、と若干バツが悪そうに、レムレースは頬を掻く。
 結婚しても仕事は辞めたくないけれど、レムレースが望むなら考え方を改めなければならないだろうか……胸の内で不安に駆られていた香奈へと、更にレムレースは言葉を続けた。
「だが……最近気がついたんだ。俺は働いている香奈を見るのも好きだ」
「……え、それって」
「ああ。家庭に入っても……い、いや! まだ家族と呼ぶには早いかもしれないがその、もちろん、いいと――」
 言葉を聞き終わる前に「ありがとうレム! 大好き!」と叫んだ香奈が抱きついたから、受け止めきれずに二人でリビングに倒れこんで。
「あたしも辞めたくないなって、思ってたの」
「ああ、そうだとも思った」
「そういう優しいところも全部大好きよ。メリークリスマス、レム!」
「メリークリスマス、香奈」
 満面で笑い、明るい家庭への展望を胸に抱き合い、二人のクリスマスは幸せの内に幕を閉じた。


「これ、とーっても甘くて美味しいですねぇー!」
「ほら、そこまでだ」
「あぁっ、まだ飲みかけなのにぃー!」
「酔い潰れても知らねーぞ」
 いいんですぅー! と、既にキャパオーバーしたような赤い顔でグラスに口をつけるのは神人、ニーナ・ルアルディだ。
 どうどうと彼女を宥めるも途中から諦めて自分の杯を煽るのは精霊、グレン・カーヴェル。
 二人でアルコールを飲み交わすとニーナがこうなって世話を焼くまでがセットだが、今日の彼女は不満があるらしい。
「むぅ……だってぇ、今年はカイ君来てくれなかったんですもの……」
 二人きりもとーっても嬉しいんですけど、と付け足し、弟が不在の寂しさを紛らわせるようにグレンに擦り寄るニーナを見遣って(こなくて正解だっただろうな)と冷静に思う。
 思い返せばものすごく嫌そうな顔をして「新手のイジメか」と言っていた。
 とはいえそんな軽口は建前で、本当に今日だけはどうしても外せない用事があるんだ、とフォローを入れに来たあたり、彼の律儀さが伺えた。
「また今度、顔見せてやればいいだろ。いつでも会えるんだし」
「そうですよね、また別の日に会いに行けばいいですよねー!」
「何なら黙って会いに行ってみたらどうだ? ……その方が面白そうだし」
 大概グレンも酒が入っているので、若干意地悪なニュアンスで告げた言葉にも「おもしろそうですねぇー!」とニーナは笑う。
 部屋は暖かくしているし寒いなんてことはないけれど、体がぽかぽかと火照るほど、彼女はご機嫌にグレンにくっついて。
「えへへ、しあわせぇ……」
 と、まどろむような顔をするから、しかたねーなと言いつつ引き剥がす事もせず、柔らかな金髪を手持ち無沙汰になでていた。

「ほら、寝落ちる前に部屋行くぞ」
「……えっ、もうそんな時間ですか?」
 少しずつ酔いが醒めてきたような心地で、こしこしと瞳をこすって時計を見遣る。
 自分達の寝室に戻るだけだけれど――この時間を終わらせてしまうには、なんだか勿体無いし、まだ物足りない。
(酔ったフリを続ければ、このまま一緒にいられるでしょうか……)
 そんな思いで、ぎゅう、とグレンの服を掴んで、離れようとしない。
「おい、動けん」
「やです、離れませんこのままでいまぁす」
「……」
 こいつ、酔ったフリしてやがる。
 そうと気付くも口には出さない。本当に酔っている時は雰囲気が変わるから、演技と本気との見分けがつきやすいのだ。
 ともあれ甘えられる分には悪い気はしないので、ひとまずそういう事にしてやって。
 少しだけ、この可愛い我侭に付き合ってから、部屋まで連れて行ってやろうかとグレンも決めた。

 やがて寝室に連れ込んでもニーナは相変わらずグレンにくっついたままで――カイが来なかった寂しさもあったのかもしれないが、今日の彼女は本当に甘えん坊だ。
 流石に参ってしまったように、子供を寝付かせるような仕草でニーナの背中を擦る。
「いい子だからもう寝てろ」
「まだ、寝たくない……」
 すり、と胸板に寄せられる頭はともかく、密着した柔らかな体は色々とまずい。
 かすかに残るアルコールであるとか、体全体で直に触れる体温は、嫌が応にも気持ちを高揚させてしまうから。
「本当に嘘が下手なヤツだな。寝ないなら誘って貰ってるって勝手に解釈するぞー」
「ううううそじゃないです! ちゃんと酔って」
「ニーナ」
「……ま、せん、ごめんなさい酔ってないです……だって」
 離れるの、寂しかった、から……。
 か細く消えていく語尾は聞こえていたけれど、見上げてくる潤んだ瞳だとか、不安そうに抱き締めてくる腕だとか。
 そういう諸々を全部受け止めたら、彼女の行動に自分が答えてやる方法はひとつしかない。
「……本当にそう解釈するからな」
 窓辺から差し込む月明かりの下、ゆっくりと二人の影が重なって。
 聖夜の夜空が、愛し合う二人を祝福するかのようにいつまでも瞬いていた。


「はー! 水の中とその生き物って癒されるねえ」
 去年の今頃ぶり以来かな? と。
 水族館内を一通り見回って、ご機嫌に隣の相方へと語り掛ける神人、鬼灯・千翡露に、精霊、スマラグドも穏やかな表情で頷いた。

「俺もこういうのは落ち着く気がする。青って色の効果かな」
 こういうのは俺じゃなくてちひろのが言いそうだけど、と補足するスマラグドへころころと千翡露が笑う。
「あはは、最初はラグ君そういうの興味なさそうだったもんね」
「……そりゃあ、ちひろに共感出来るなら、したいし」
 照れ隠しのように頬をかきつつ視線を泳がせるスマラグドに、覗き込むような姿勢でにこりと微笑んで。
「少しずつ、私の好きなものに興味持ってくれて嬉しいな」
 そんな風に、何事も前向きに千翡露が返してくれるから、こんな変化も悪くないな、と素直に思えるのだ。

「あっほら! クリスマスツリーだ!」
「おー、あれが噂の……綺麗だね!」
 イルミネーションに彩られていく色彩を二人で見上げて、感嘆の声をあげる。
 色とりどりの景色を眺めているうち、ふと思い出した様に、白い息を吐き出しながら、千翡露がぽつぽつと語り始めた。
「……最近、美術の先生にね、絵を褒められたの」
「最近?」
「うん。前までの私の絵は『見たものをそのまま写した』みたいで『上手く描けてるけど訴えてくるものに欠けてた』んだって」
 技術や目は肥えているはずなのに、何か足りてない、という風に、顧問は感じていたのだろうと。
 ちひろの絵は素晴らしいよ、とスマラグドがフォローする前に、でもね、と彼女は言葉を続ける。
「最近は、其処に私の想いが籠められてきてるように感じる。ラグ君と行った場所の絵が特にそうだ、って……」
「……俺と行った場所?」
「そう。先生はそのことを知らないけど。やっぱり、解るんだね」
 なんだかうれしいなぁ。
 目を細めて、冷たい空気に負けないくらい暖かな幸せを浮かべた彼女に。
 スマラグドは同じ方向を見つめて、神妙な面持ちでぽつりと呟く。
「そういうの、変わるものなんだ……」
 ……変えられる、ものなんだ。
 自分という存在が、彼女の中で何かを変えるほどに、大きく響いてくれているということ。
 噛み締めるようにきゅっと唇を引き結んだら、なんだか胸の内が熱く、むずむずした。
「少しでも、良い方向に影響出来てるなら、俺も嬉しいよ」
 その変化を、他の誰でもない千翡露自身が喜んでくれるなら、猶更だ。
 気持ちを共有出来る幸せに、また彼女は重ねて微笑む。
「つまりね、私幸せなの。目の前の景色が当たり前に素敵に見えるのは、ラグ君のお陰」
 今、目の前に広がるこの光景だって、一年前に見た水族館とはまったく違う。
 場所が違うのだから当たり前だろう。でも、同じ空だって空気だって、これまでよりもずっと色彩豊かに色付いて見える。
 そういった変化が、千翡露の描く絵にも現れ始めているのかもしれない。
「そりゃあ、ちひろには幸せになって貰わないと。俺が、そうするって決めたんだ」
 その決心は、変わらないから。意思の強い瞳で、千翡露をまっすぐに見据えたスマラグドが、ふわりと微笑んだ。
「ありがとう。これからもよろしくね、ラグ君」
「うん、改めて、よろしく。ちひろ」
 クリスマスツリーの下、決意を新たに固めながら、スマラグドは千翡露の、筆とキャンバスを持つ両手を大事そうに握って、誓うように告げる。
「きっとちひろの描く絵はいつか、大勢の人の心を打つよ。俺が保証する」
 一人のファンとして、パートナーとして、ずっと応援してるから。
 大きな勇気と優しさを与えてもらって、ラグ君は私を甘やかし過ぎだよ、なんて。
 少しの気恥ずかしさと、胸いっぱいの愛情を受けて――その気持ちに精一杯報いようと、胸に誓った。



依頼結果:成功
MVP
名前:シャルティ
呼び名:お前、シャルティ
  名前:グルナ・カリエンテ
呼び名:あんた、グルナ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 梅都鈴里
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月15日
出発日 12月26日 00:00
予定納品日 01月05日

参加者

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