クリスマスは君と一緒に(梅都鈴里 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

「世間はクリスマス一色だなぁ」
「そうだな。早いなー」

 きらびやかな電灯が魔法のようにあかりを灯す外出先からの帰り道。
 街中の至る所ではイルミネーションが飾り付けられ、ツリーを模したビル群のプロジェクションマッピングに、浮足立つ市民たち。
 空気は身を切る様に冷たいけれど、この季節の夜は訪れも早く長い。
 身体の冷えに反して、クリスマスのデートや友人たちとのパーティ、観光施設でのイベントごとなどに、何かと心が暖かく騒ぎ立てる季節でもある。

「先に言っておくけど。クリスマスイブは予定があるんだ」
「えっ」

 てっきりすっかり、自分と過ごすものだと思っていた神人から聞かされたまさかの防衛線。
 束縛するつもりはないし、友人たちとクリパ、なんてのもこの時期にしか開けないイベントだろう。
 でも、正直に言えば、一緒にクリスマスを過ごしたいのが精霊の本音だ。

「……誰と過ごすと思う?」
「だ、誰かひとりの人が居るのか……?」
「そうだよ。まだわからない?」
「わ、わからない……」
「鈍いなぁ、もう!」

 ちゅっと音を立てて、神人は精霊の頰に口付けて。
 耳元に寄せた唇で、音楽のような声音に乗せて囁いた。

「イブはお前と過ごすんだよ。今年も、もちろん来年も!」

解説

クリスマスっぽいデートをしましょう!
以下行き先一覧

1.一日中遊べるショッピングモール
 出来たばかりの大型商業施設。ショッピング、ゲーセン、映画館、飲食施設、何でも揃っています。
 モール内はクリスマス一色! パーティグッズを買ったり、服を買ったりケーキを買ったりして盛り上がりましょう。

2.オシャレなカフェと観光スポット巡り
 SNS映えする料理を撮ったり、オタクな街を巡ったり、おでんたべたり、新しい店を開拓したり。
 街中もクリスマスムード一色です。駅前や街中の川沿いなど、イルミネーションスポットを巡るのもいいですね。

3.ホテルでディナー
 有名なホテルを予約してクリスマスディナー、ケーキも出ます。
 夜景の美しいスイートルームにお泊りして、ロマンチックな夜を過ごしましょう。

4.水族館『アクアパレス』
 園内の巨大クリスマスツリーが夕方になると点灯し、クリスマスムードを盛り上げてくれます。
 遊園地に行って遊ぶのもOK! 観覧車やメリーゴーランド、フードコードにゲームセンターなど一通り揃っています。

5. おうちでゆっくりホームパーティー!
 外は寒いので、大きなホールのケーキやシャンパンを買って、二人でゆっくりお話しましょう。
 直前まで隠しておいて、プレゼント交換もいいですね。


▼個別描写です。
 行き先は一覧です、番号表記で大丈夫です。ちょっと豪華なお出かけ代として500jr。
 秋に出したデートイベントと似た感じです。


ゲームマスターより

外が寒過ぎるので、クリスマスシーズンにかこつけてイチャイチャしてほしいです。
よければお気軽にご参加ください。
また、相談期間が短いのでご留意ください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)

  5.ホームパーティする!
今年のクリスマスは家族みんなで過ごすんだ。
買い物は前日までに済ませてる。

ツリーは猫達が面白がってじゃれついてきて。
倒れないよう土台部分に板を張り付けて倒れないように改造。
ますます張りきる猫達。存分に上るがいいぞ!
オレの背中をツリ―へのジャンプ台にするとは、クロ、やるな!

料理はラキアが主導、オレも手伝うぜ。
サラダに使う野菜ちぎったり。ローストビーフも旨そうだな~。
猫達にはササミのスープを作ってやろう。ユキシロはもも肉も混ぜて。

夜には皆で一緒に食事。ケーキも美味いじゃん。
ラキアの作る料理は全部ウマい。オレの好みだ。幸せをかみしめるぜ。
プレゼントは青宝石製、花のイヤリング。


ユズリノ(シャーマイン)
 

数日前
やったよ遅番回避! イヴ出掛けられるよ!

イヴ16時過ぎ
手を繋ぎ歩きクリスマスツリー眺め心が弾む

さっきお店に迎えに来てくれた時もそうだけど
道行く人が 精霊様よ~ 素敵~ なんて彼を振り返る
モテモテだねシャミィ(拗ね
ん?て顔で 俺がモテたいのはリノだけだから目に入らない 何て僕をコロしにきた(うわバカ― 赤面

居酒屋
彼が選んだのはチョーカーにもなる作りで
リノの細い首に付けたら…エロそうだと思ってな 何て言われた(だからうわー

バー
シャミィのおかげだよ
メリークリスマス シャミィ

そして彼のサプライズ
ホテル取ってる…て?
でもお酒でふわふわな僕は寝落ちて
早朝仕事に行った

笑顔で送ってくれた彼に申し訳なくも感謝
行ってくるね


テオドア・バークリー(ハルト)
  4
デートしたい!ってハルに言われるがままに連れ出された。
いつもみたいに部屋で祝えばいいじゃんって提案したらハルが妙に浮き足立ってたけど、
どうせ外は混んでるしって付け足したら何故か肩を落としてた気がした。
何だったんだ。

渋々の外出だったけど、思ったより色々遊べて楽しめた。
歩いている間、ちょくちょく視線を感じてハルの方を見る度に、これ以上ないくらい幸せって顔で微笑まれる。
それが何だか落ち着かなくて目が合うたびについ顔を逸らしてしまう。
駄目だ、ハルのこんな行動は慣れてるはずなのにちっとも落ち着かない。

かわ…?心当たりないんだけど!
でもなんかその…ごめん

さっきの?
驚きはしたけど嫌って訳じゃ…今度は何!


柳 恭樹(ハーランド)
 
仕事の息抜きに一人で来たはず。(米神に指を当てる
映画を見て、ゲーセン寄って適当に見て帰ろうとだな。(眉間に盛大に皺

「誰の所為だと……」(横目で睨む
「余計なお世話だ」男二人で並ぶ方が俺へのダメージがでかい。
「お前がいても俺は予定を変える気は無い」というか評判? 調べたのか?
「シアターだ」

モール内喫茶:ゲーセンは止めた
「……まさか、お前と話が合うとは」(ブラック珈琲を飲む
いけ好かないとしか思ってない。「やらないが、見る分には好きだ」
「見た。経験者を使ってるだけあって――」(つらつら感想を言い始める

長居し過ぎた。「おい、自分で払う」
「その日は仕事だ」誰がお前と過ごすか。
……。(次の休みを伝えるか悩む


歩隆 翠雨(王生 那音)
  5
部屋の掃除をして、折角のクリスマスだし…と、ツリーなんて飾ったりして…年甲斐もなくはしゃぎすぎてるかもと、少し後悔して
でも、特別なクリスマスなんて初めてなんだから、多少浮き立つくらいは許して欲しい
呼び鈴が鳴ると駆け足で玄関へ
深呼吸して、出来るだけ自然に…
よ、よう。早かったな
思わず声が上擦るのは、那音が悪いと思う…何だ、その笑顔

二人で買い出しに行ってから、料理を作る
ローストビーフにマカロニグラタン
クリームシチュー
カプレーゼとピンチョス
どれも美味く出来た

来年…そ、そうだな
いや、その…誰かとこんな風に約束をするの初めてで…

那音がこの家に?
それは…凄く嬉しいが…
一つ心配があって
俺の心臓がもつだろうか



「よっしゃ、出来たー!」
 場所はセイリュー・グラシアと、ラキア・ジェイドバインの暮らす家の一室。
 日曜大工さながら、工具を手に汗を拭って見上げるセイリューの視線の先には、土台部分に板を貼り付け倒れないよう強化されたクリスマスツリーがある。
 存分に登るがいいぞ! と言う呼び声に答え、二人と暮らす『家族』の一匹が部屋の隅っこから飛び出して来た。
「うおっと! オレの背中をジャンプ台にするとは、やるなぁクロ!」
 セイリューの背を駆け上って、てっぺんの一等星を目掛け飛んだ猫の一匹に、セイリューが感心したように笑う。
 それを皮切りに次々と猫が飛び付いていき、クリスマスの支度をしていたラキアが足を止めた。
「見事なキャットタワーになったね。セイリューが改造してくれてよかったよ」
「おう! ますます張り切ってるなーみんな」
「キラキラしてるもんね。飾りも沢山ついてるし、出してる間はみんな退屈しなさそうだ」
 今年のクリスマスは家族みんなで過ごすと決めた二人。
 買い物は前日までに済ませ、今日は一日ホームパーティーだ。
 飾り付けを終えたセイリューがキッチンに向かえば、ラキアが主導し、聖夜に相応しい料理を仕上げていた。
「オレも手伝うぜ」
「つまみ食いはダメだよ?」
「バレたか」
「ふふ。だってもう目線がローストビーフに釘付けだし。鶏もも肉の香草焼きも作ってるから、楽しみにしててね」
 大好きなお肉の知らせに、やったぜ! とはしゃぐセイリューへレタスを渡す。
 めくって全部ちぎってね、と渡されたそれを受け取り、水の入ったボールへ浮かべていく。
 そうしてサラダの用意を終えた次には、小鍋に湯を沸かし始めた。
 猫用のディナーに、ササミのスープを作っているのだ。ユキシロにはもも肉も混ぜて。
「メリークリスマース! いただきます!」
 夜にはシャンパンを景気良く開けて、手を合わせてディナーをいただく。
「んんーっ、鶏肉めちゃめちゃ美味しい!」
「うん。気合い入れて作ったんだ、自画自賛のようだけど、ローストビーフも美味しいね」
「ああ、ラキアの作るものは全部美味いぜ。オレの好みだ」
 幸せを噛み締める様にご機嫌に平らげて、お楽しみのデザートには、ラキアが昨夜まで頑張って用意してくれたクリスマスケーキがお目見えだ。
 ケーキも美味いじゃん! と幸せそうに頬張るセイリューを見ているだけで、ラキアの胸の内も暖かくなる。
 彼は食べる姿が本当に幸せそうで――それが自分の作った料理でもたらされている光景なのだと思うと、この時間が本当に幸せだと思える。
 傍らで、豪勢なスープにありついている猫たちが、満足そうにニャーンと鳴いた。

 デザートまで終えて、最後はプレゼント交換だ。
 開けていいか? とワクワクしているセイリューにどうぞと言って、ラキアも可愛くラッピングされた小袋を紐解く。
「――お、ブレスレットだ!」
 ラキアがセイリューに贈ったものはミサンガタイプのブレスレットだ。
「セイリュー、よくそういうものに願掛けするから、いいかなって」
「ああ、嬉しい。ありがとな!」
「セイリューもありがと、プレゼント」
 似合うかな? と、早速、受け取ったプレゼントのアクセサリーを耳に当ててみる。
 セイリューが贈ったものは花をあしらったシンプルなイヤリングだ。光の角度によって青色にキラキラと輝く高貴な宝石で出来ている。
「ラキアに合うかなと思って買ったんだ。うん、よく似合ってるぜ!」
「良かった、嬉しい」
 てらいなく褒めてくれるから少しだけ照れ臭そうに、ラキアがはにかむ。
 大事そうに小箱にしまって、部屋の隅で瞬く、キャットタワー兼クリスマスツリーを見つめた。
「メリークリスマス。来年もまた、一緒に過ごせるといいね」
「ああ、こいつらともな」
 お腹が膨れて眠くなったのか、膝に乗って来た猫たちをひと撫でして。
 ゆったりと流れる聖夜の夜を、思い思いに過ごした。


「色々揃っててすげーな、ここ!」
 クリスマスムード一色に飾り付けられた水族館を見回してはしゃぐのは精霊ハルト。
 子供じゃないんだから、と苦笑しつつ後ろを歩くパートナー、テオドア・バークリーを振り返り、彼は朗らかに笑って見せた。
「やっぱテオ君と一緒だと楽しいよ」
「なら、例年通りウチでパーティでも良かったじゃないか」
 デートしたい! と言う彼に連れ出されたテオドアが、人ごみに眉を顰めつつ白い息を吐き出す。
 こういう場所はあまり得意じゃない。パーティならウチでも別に、と最初に提案した時、妙に浮き足立っていたハルトに、どうせ外は混んでるし、と付け足した途端肩を落としていたのは何だったんだろうと思うわけだが――ともあれ、予想通りの混み具合にそれだけで疲弊してしまいそうだ。
「んん、いつも通りってのも悪くはないんだけどさぁ……」
 折角だから、両想いならではのクリスマスっつーのも体験したい訳よ、と言う気持ちは、横目でちらちらと彼の表情を伺うに留めるが、ハルトの気持ちなどそ知らぬ瞳で「なんかついてるか?」と首を傾げていた。

「渋々の外出だったけど、思ったより楽しめたな」
 園内を一通り見てまわり、日が落ちるにつれイルミネーションがライトアップされていく。
「ちぇ、俺とのデートが渋々だったわけ?」
「……そういうわけじゃ」
 ハルトと過ごすのは楽しいよ、と直に告げるのがなんだか照れ臭い。
 こんな賑やかしい居場所では互いの会話だって聞き取りづらいことが多くて――そういうのも思い出作りの一環なのだろうけれど「家でゆっくり二人で過ごしたかった」と僅かにでも思ってしまった事も、照れの一因になっていて。
 最近どうにも思考と心の機微が制御出来ない。
 視線を感じて隣を見る度に、この世の幸せを凝縮したような笑顔で微笑まれるのも心臓に悪い。
(駄目だ、ハルのこんな行動は慣れてるはずなのに)
 どうしてこんなに落ち着かないんだろう。
 そわそわと、本人は無自覚な表情を浮かべてテオドアは瞳を逸らすから(辛抱たまらん)と心中でぼやいたハルトが、不意に。

「テオ、ちょっとこっち」
「……えっ」

 不意打ちのように手を引かれて、なすがままに暗がりへと引っ張り込まれる。
「……あんまり可愛いことばっかしてるとさ、襲っちゃうよ?」
「か、かわ……?」
「耐えたり待つのは得意だけど、ずっと待っていられるって訳でもないし」
 何か返そうと開いた唇は、彼のそれに吸い込まれて音を紡げなかった。
 もっとも、キスされた、とテオドアが気付いたのだって、ハルトが珍しく照れ臭そうな顔をして離れてくれた時だったけれど。
「……今回はこれくらいで勘弁してやろう」
 苦笑するハルトに、ぼっ! と一瞬でテオドアの頬が茹蛸になる。
「テオくんがあんまりかわいーからさ」
「心当たりないんだけど! で、でもなんかその……」
 ごめん、と言うか細い謝罪は、自分が色恋に疎いせいで色々と我慢させているんだろう、と言うのが何となく、ハルトの顔色から伺えたから出た言葉なのだけれど。
 このシーンで謝られるとちょっと傷付くなぁ、なんて。さして傷心してもないような顔をして、彼は頬を掻く。
「嫌だった?」
「え?」
「さっきの」
 キスの事だと思い立って、また頬がのぼせ上がりそうになる。
 瞳を泳がせつつ、ぽつぽつと蚊の鳴くような言葉が、小さく落とされていく。
「……お、驚きはしたけど。嫌ってわけじゃ……わ!」
「あーごめんやっぱ無理ですテオくんかわいいが過ぎる」
 強く抱き締めて頬ずりするハルトに、苦しい苦しいとテオドアがもがくが、少しでも落ち着くと思ってしまった事は内緒である。
「今度は何っ……ていうかここ公衆の場だから!」
「さっきみたいな暗がりならオッケー?」
「あーもう、そういうのずるいだろーっ!」
「あはははっ! たーのしいなぁ、テオ!」
 電飾の輝きに包まれる中、二人の賑やかな声が、空高く響き続けていた。


 綺麗に部屋を掃除して、折角のクリスマスだしと、張り切ってツリーなんか飾り付けてみたりして。
(……歳甲斐もなく、はしゃぎ過ぎてるかも)
 ピカピカと虹色に光る電飾を見上げ、神人、歩隆 翠雨は、一人照れ臭そうに頬を掻いた。

『二人で料理を作って食べて、クリスマスはのんびり過ごそう』

 そう提案してくれたのはパートナーの王生 那音だ。
 何処かに出かけるのも良いんじゃないか? という、軽い気持ちでかけた言葉には「初めて二人で過ごす聖夜なんだから、翠雨さんを独占したいよ」と端正な微笑みで返されてしまい、のぼせ上がったことは記憶に新しい。
 けれども、彼の言うとおり……今年は特別なクリスマスなのだから、多少浮き足立つくらいは許して欲しい。
 今日は何しようかとか、甘い雰囲気になったらどうしようとか。一人物思いにふけっていると呼び鈴が聞こえて心臓が跳ね上がり、慌てて玄関へと走った。

(平常心、平常心……)
 扉の前で一度立ち止まり、深呼吸して、出来るだけ自然な表情を取り繕う。
「……よ、よう。早かったな」
 散々格好つけたのに思わず声が上擦ってしまい、那音が目を丸くして、次にはぷっと吹き出した。
「……何だよその笑顔」
「翠雨さんが可愛いだけだよ。買出しに行こうか」
 くすくすとおかしそうな那音に唇を尖らせつつも、互いに食べたいものを話し合って外出した。
 風が冷たいな、と。那音の手が余りにも自然に翠雨の手を絡め取るからぎょっとして、けれどもその温かさはじんわりと心にまで沁み込むようだった。

 帰宅後は手を洗ってエプロンを着用し、二人でキッチンに立った。
 ローストビーフにマカロニグラタン、メインは旬の野菜と鶏肉をふんだんに使った、ちょっと豪勢なクリームシチューだ。
 前菜にはカプレーゼとピンチョス。手の掛かるものも多かったけれど、二人でやれば楽しいもので、どれも美味しく仕上がった。
「ああ、美味しいな。シャンパンもよく合う」
「那音は味のセンスが良いよなー。美味いもん食ってきたんだろうなって感じがする」
「そんな事は。翠雨さんの腕も大したものだ。来年はケーキも一緒に作ってみようか」
「来年……」
 そうだな……、翠雨の語尾が徐々に小さくなる。
 何か悪い事でも言っただろうかと、那音が不安げな表情を浮かべたことに気付き、慌てて翠雨は顔を上げ首を横にぶんぶんと振る。
「いやっ、その……誰かとこんな風に約束をするのが初めてで」
 言葉を濁した理由が、大切な相手との初めての約束に動揺しているだけなのだと分かって、那音は表情をふっと綻ばせ、ツリーを見上げた。
「翠雨さん、俺はここに住みたい」
「え?」
「翠雨さんの傍に居たい。……駄目かな」
「――……」
 那音が、この家に?
 問われた言葉を胸中で反芻する間にも、那音は言葉を続ける。
「再会するまで随分時間が掛かっただろう? だから――」
 もう、片時も離れて居たくない。
 幼少の出会いから長い年月を経てやっと巡り合えた運命の相手。
 そんな想いが、那音の決心を強く後押ししていた。
 それでもなお、翠雨は浮かない顔だ。
「勿論、義父さんと義母さんにはきちんと話すよ。仕事に支障がなければ分かってくれる人たちだ。……まだ何か、不安があるのだろうか」
「い、いや! 申し出はすごく嬉しいっ。嬉しいんだけど……一つ心配があって」
「……?」
 やや考え込んで――那音が回答待ちの体勢に入ってしまった事で、余計言いづらくなったその言葉を「笑うなよ」と最初に付け足し、何とか搾り出した。
「……俺の心臓が持つだろうか」
 一緒に過ごすという事は、那音の望んだとおり、常に存在を傍らに感じている、ということ。
 ずっとドキドキしっぱなしで、心臓がもたないかも、だなんて。
「……っまったく、翠雨さんは本当に……!」
 きゅうううんん、と心臓をわしづかみにされた様な思いの那音が、慌てふためく翠雨を強く抱き締めた事は言うまでもない。


(……仕事の息抜きに、俺は一人で来たはずだ)
 街中の中心地に位置し、クリスマスに沸き立つ人々で賑わう、某巨大商業施設。
 雑踏の片隅で、神人の柳 恭樹はこめかみに指を当て、現状を整理する。
 だが、いくらぱちぱちと瞬きを繰り返しても、目の前で楽しそうな精霊の姿は消えない。
 そう、今ここに居る筈のない存在――恭樹の精霊、ハーランドである。

「映画を見て、ゲーセン寄って、あとは適当に見て帰ろうとだな……」
「どうした恭樹、何かあったか?」
 ぶつぶつと呟きながら、わかりやすく盛大に眉間へ皺を寄せた恭樹に、ハーランドは白々と問いかける。
 無論、パートナーが釈然としない表情を浮かべる理由など分かりきっていての、この台詞だ。
 誰のせいだと、と。横目で睨みつけ吐き捨てる恭樹に「やれやれ」と肩を竦めた。
「そう邪険にするな。一人寂しくクリスマス一色の街中を歩くのはつらいかと思ってな」
「余計なお世話だ」
 ピシャリとふざけた台詞を一蹴する。
 クリスマスムード真っ盛りの街中を男二人で並び歩く方が、よっぽど精神的ダメージがでかいと思う。
「何処へ向かう? 評判の飲食店か? ショッピングか?」
 恭樹の心中はさておき、ハーランドはきょろきょろと街中を見渡している――というか、評判? まさか事前にチェックして来たのだろうか。
「お前がいても俺は予定を変える気は無い」
「構わんよ。して、何処に向かうつもりだったのだ?」
「……シアターだ」
 渋々、今日の予定を答えた恭樹にハーランドは少しだけ表情を解く。
 てっきり追い返されるかと思っていたのだけれど。来てみるものだな、と小さく呟いた。

「……まさか、お前と話が合うとは」
 モール内の喫茶店でブラックコーヒーをすすりながら、恭樹は若干、バツの悪そうな顔をしてぼやいた。
 非常に認め難い事実だが、映画を一緒に見た事により、趣味趣向が意外な所でマッチングしたのだ。
 元々寄ろうかと思っていたゲーセンを取りやめて、感想を言い合う為にカフェへ入ろうと思う程度には。
「貴殿は私をなんだと思っている。こちらも思いの外、格闘技に詳しくて驚いている」
「やらないが、見る分には好きだ」
 ハーランドの事はいけ好かないとしか思っていないが、格闘技は好きだ。
「ほう。ならば、――という映画は見た事があるか?」
「見た。経験者を使ってるだけあって――」
 つらつらと、ハーランドの形のいい唇からは、恭樹がよく知るタイトルや選手名が出てきて、思いの他饒舌に感想を語り始めた。
 そんな神人との会話を楽しみつつ、ハーランドは冷静に彼を分析する。
(興味事であれば、水を向ければそれなりに話す、か……)
 恭樹が自分の事をいけ好かないと、あえて距離を取っている事は、元よりよく理解している。
 だからこそ、この変化には少しだけ驚きつつ、悪くないな、とも思った。

「……長居し過ぎた」
 気付けばいい時間になっていて、恭樹は席を立つ。
 が、支払おうと見遣った先の伝票は、ハーランドがひょいと取り上げてしまった。
「おい、自分で払う」
「何、映画はともかく。此処で時間を使わせたのは私だ」
 しれっと言い放ち、恭樹の言葉を右から左へ流しつつ、彼はさっさと精算を済ませてしまった。
 気を遣わせたとかでなく、単純に借りを作りたくない。そんな恭樹の性格を、ハーランドはよく知っている。
「気になるならば、クリスマスの予定を貰うが?」
「その日は仕事だ」
 誰がお前と過ごすか、と言わんばかりのしかめっ面に「それは残念だ」等と軽口を叩くも、恭樹のスケジュールも最初から知っていて、ハーランドは言葉をかけた――のだが。
 ああでも、と続けられた接続詞に首を傾げる。
「どうした。まだ悪態をつき足りないのか?」
「……」
 次の休みを伝えるか悩む、とは素直に言いづらい恭樹が、次に二人で過ごす予定を立てられたのかどうかは、神のみぞ知るところである。


「やったよ遅番回避! イヴ、出掛けられるよ!」
「そうか! でかしたリノ!」
 とあるウィンクルムの、そんな微笑ましいやりとりがあったのはつい数日前のこと。
 ケーキ屋でバイトをしている神人ユズリノは、必然的にこのクリスマスシーズンが繁忙期となる。
 執念でイヴのデート時間を勝ち取ったのは一重にパートナーのシャーマインと過ごしたいからだ。
 代わりに翌日は一日職場に拘束されてしまうとの事で、二人は24日の16時から翌朝6時までの聖夜に、クリスマスデートを敢行することにした。

「ツリー綺麗だねぇ」
「そうだな」
 24日の16時過ぎ、手を繋ぎ街中を歩いて、キラキラと輝くクリスマスツリーを眺め心が弾む。
 そんな中道往く人々が「精霊様よ」「素敵ねぇ」なんて、皆一様にシャーマインを振り返る。
 先ほどユズリノのバイト先へ彼が迎えに来てくれた時もそうだった。
「ユズリノさんのパートナー、とってもかっこいいのね!」なんて言われては鼻が高い反面、少しやきもきしてしまう。
「……モテモテだねシャミィ」
 拗ねたような声色で唇を尖らせて、分かりやすい嫉妬を見せるユズリノに、ん? とシャーマインは首を傾げる。
 そんな仕草すらかっこいいと思ってしまうのは惚れた弱みだろうか。
「シャミィだって気付いてるくせに」
「さあ。俺がモテたいのはリノだけだから目に入らないな」
 ぼん、と一瞬で赤く染まったユズリノの額にちゅっと音を立ててキスを落とせば、黄色い悲鳴が周りから聞こえて、うわぁばかー! と真っ赤な顔で、当のユズリノは小動物のように悶えていた。

 ジュエリー店で互いにプレゼントを購入したあと、場所を居酒屋に移し、プレゼント交換も兼ねて夕食にありついた。
 シャーマインが選んだものはチョーカーにもなる作りで、うわぁきれい! と感動するユズリノに、瞳を泳がせつつ一つ咳払いなんてして、
「リノの細い首に付けたら……エロそうだと思ってな」
 なんて気障ったらしく言うものだから、またユズリノの表情は茹蛸のようにのぼせあがった。
「ぼ、僕からはっ……これ」
「ん、ネックレスか」
 仕事中は外さざるを得ない指輪を、肌身離さず繋いでおくための首飾り。
 高貴な輝きを放つ、決して安価ではないそれは、ユズリノが頑張って働いた給料で購入したものなのだと思うと、じぃんと胸を打たれて「大事にする、ありがとう」と真摯に告げた。

 ぶらぶらと街中の景観を楽しみつつ、夜はバーに席を移したところで、ケーキ屋で働くユズリノからとあるサプライズがあった。
「じゃーん! クリスマスケーキ!」
「これは……! すごいな、プロが作ったのか?」
「まさか! 僕がデザインしたんだよ」
 華やかに着飾られたクリスマスケーキからは、ユズリノがスキルアップしている事が伺える。
「着実に進んでるな。誇らしくて嬉しいよ」
「へへ。シャミィのおかげだよ」
 メリークリスマス、と二人言葉をかけ合って、かろやかにグラスを打ち鳴らした。

 二人で聖夜を祝した後は、シャーマインからのサプライズが待っていた。
「ホテルを取ってるんだ」という言葉に、特別な夜ならではの何かを、ユズリノが予感しなかったわけはない。
 ――が、アルコールが回ってふわふわな彼は、上質でふかふかのベッドに感動し頬ずりするなり、そのまま寝落ちてしまって。
「……今夜はイケる思惑があったんだがな」
 苦笑しつつ、今日の休みをもぎとるため必至に働いたのであろうユズリノに感謝と労わりを込めて「おやすみ、良い夢を」と頬に口付け、温かな体をぎゅっと抱き締めて眠った。

「ああっ、もうこんな時間……! 行って来るね!」
 早朝、慌てて服を着込み仕事着を抱えて、職場の前で振り返るユズリノ。
 バイト先まで送り届け、笑顔で「いっておいで」と見送ってくれたシャーマインに申し訳なく思いつつも、深く感謝して。
 また次のデートの連絡するね! と大きく手を振り、二人のクリスマスデートは幕を下ろした。



依頼結果:成功
MVP
名前:ユズリノ
呼び名:リノ
  名前:シャーマイン
呼び名:シャミィ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 梅都鈴里
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月15日
出発日 12月20日 00:00
予定納品日 12月30日

参加者

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