シチューが食べたい!(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 その日、目を覚ました貴方に突然の衝動が襲った。
 それは、“シチューが食べたい!!!!!!”そんな衝動だ。
 とろっとろなシチュー、ごろごろした人参や大きなお肉、じゃがいも、あぁブロッコリーで緑な彩りも忘れちゃいけない。
 拘って人参を星型にしても面白いかもしれない。
 いやいやまて、シチューじゃなくてもいい、カレーでもスープでもなんでもかまわない。
 とにかく暖かくて心までほかほかできる、そんな物が食べたい!!
 そう思った貴方は、早速キッチンへと向かい……そして、何もなかったことにはたっと気が付いた。
 そう言えば昨日全て使い切ってしまっていたのだ。
「しょうがない、買いに行くか……」
 こんな寒い日に出かけたくもないけれど、何もないのだからしょうがない。
 何か暖かな服はあったっけ……。
 そう思う貴方に、精霊がひょっこりと顔をだした。
 そんな精霊をみた貴方は、にやりと笑う。
 そうだ、精霊には風よけになってもらおう。いや、荷物持ちだろうか。
 とにもかくも貴方は精霊を捕まえると、さっそく市場へと向かうのだった……。


 ちらちらと小雪が舞う中、市場は活気あふれていた。
 安いよ安いよ! という声が飛び交い野菜以外にも肉や魚や日用雑貨も売っている。
 お腹を刺激するいい香りもするし、ガラクタとしかいえないような物まであった。
 びゅうっと吹いた風に肩を震わせつつ、貴方達は辺りを見渡す。
 さて、何を見ようか……。
 シチューの具材を買う予定だったけれど、欲しかったあれやこれも買っていいかもしれない。

解説

 市場へ向かうのに300jr使ったよ!
 完全個別エピソードです。


 市場は食べ物中心になんでも売ってます。
 一応シチューとしましたが、何買ってもOKです。
 寒い日のデート、如何でしょうか! 


ゲームマスターより

 お久しぶりです、寒波到来で凄くなってきましたね。
 のんびりと市場デート、楽しんでいただけたら幸いです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)

  賑わってるな
寒いけど俺もワクワクしてきた
…子供じゃないんだぞ、逸れたりなんか…
でも一理ある
確かにフィンの手は温かいから、寒さ対策という事で

シチューの材料、だったよな
ああ、聞いただけでお腹が空いてきた…
白菜なんてどうだ?
小麦粉が安いみたいだけど…うどん?
シチューにうどん…何だそれ、食べてみたい!
小麦粉からうどんを作るのも面白そうだし

フィンと荷物を分け合って持ち、さて帰ろうとして
良い香りに足が止まる
中華まんだ…
これから家に帰って、シチューうどんを作るまで時間が掛かるよな…なあ、フィン
提案の声が重なって思わず笑う
豚まん…でもピザまんも捨て難い
その案乗った!
半分こして食べる中華まんは美味しくて頬が緩む


瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  ストゥー……ああ、シチューの事か。
似せて作ってみるか? 食材は一通り揃ってるぞ。

買った食材は、羊肉、じゃが芋、紫玉葱、白菜、鱈、茸、牛乳。
これでホワイトシチューを作る。
その前に、珊瑚の買った紫芋を見て、交換を持ちかける。
「お互いの料理が見映えすると思った。出来上がれば食べ比べも出来る。

珊瑚の隣で食材を一口サイズに切り、鍋へ。
野菜を煮込んではルーを少しずつ入れ、小皿で味見をして調整。
(調理スキル使用)

「いいぞ、おれの分もついでくれ」
作ったシチューを装うとする前に、掬われて食べられたが。
こういう味なのかと問うが、
「あの味、そんなに食べたかったんだな」
そうか。
いや。
「楽しみにしてる。お前の、故郷の味」


柳 大樹(アルベリヒ・V・エーベルハルト)
  「先生、何作んの? 俺、温かいのがいい」(両手を上着のポケットに突っ込む
「か……? なにそれ」全然わかんないんだけど。

「あー、しないねえ。なんてーか、色々やるのめんどうでさ」
「第一、料理するなら一人で来てるよ」
「……あいつがくそ真面目過ぎるんだよ」(むすっと

嫌って言うか、「あいつが、自分の為に動かないから」(もごもご
「いい子じゃないって」(頭を振って逃れる
いい子っていうのは、自分の都合優先して相手を拒絶したりしない。
……たぶん。

「それより、スープ以外に腹に溜まるもんも欲しい」
「よっしゃ。で、他に何が必要?」
「あ、知ってる。ソーセージだよね。あっちで見たよ」(指を差す

やっぱ先生といると気が楽だなあ。



 冷たい風がびゅうびゅうと市場を駆け巡る。
 身を縮めるような寒さの中、それでも人々の声は活気にあふれていた。
「安いよー! お兄さん、ちょっと見て行ってよ!」
 そんな声をあげるおばちゃんの頬は寒さから真っ赤に染まっている。
 けれどそんな寒さなどなんのその、と自らの手で作り出した商品を差し出す姿はたくましくもあり……。
 蒼崎 海十はそんなおばちゃんに軽く応答しつつその場を離れ、そっと黒い瞳を細めた。
「賑わってるな」
 その声音には、どこかわくわくと楽しんでる音色も混ざっていて。
 それを感じ取ったのか、隣で寒さに白い息を吐いていたフィン・ブラーシュも金の髪をさらりと揺らし頷く。
 市場って無性にワクワクするよね、というその言葉は海十のそれとは違い、わくわくと楽しいリズムを刻んでいるようで。
「……寒いけど、俺もワクワクしてきた」
 それは周りのどこか楽しげにも聴こえる喧騒から……というわけではなく、隣のフィンも楽しそうだからだろう。
 幾ら歩いていても頬を撫でて行く風は冷たい。
 そんな寒さもこのワクワク感があれば楽しむことが出来そうだ。
「海十」
 フィンに名を呼ばれ、そちらを見ればフィンが手を差し出してきて。
 なぜ? という表情が顔に出ていたのだろう、フィンが唇を開く。
「逸れないようにちゃんと俺の手を握っててね」
「……子供じゃないんだぞ」
 逸れたりなんか……と不満げな海十に、フィンがそっと指先を海十の指先へ絡める。
 絡んだ指先は暖かく、ほわりと熱を持つ。
「でもほら、こうして手を重ねると温かいでしょ?」
 指先から伝わる熱に負けないぐらいに、暖かな笑みを浮かべたフィンを見れば海十は一理ある、と小さく頷いた。
「確かにフィンの手は温かいから、寒さ対策という事で」
「うん、寒さ対策の一環って事で」
 そんな言葉と共に、きゅっと握られた指先はほんのりと暖かく。
 自然と2人の口元に笑みが浮かぶ。

 暫しあちこちを見て歩きながら、海十が野菜がてんこ盛りの屋台をみて進める足をゆっくりとさせる。
「シチューの材料、だったよな」
 隣の海十がゆっくりになるのに合わせ、同じように歩幅を狭めていたフィンはゆるりと頷いた。
「豚肉と野菜のクリームシチューなんてどうかな?」
「クリームシチュー……」
 視線は屋台の方へ。
 フィンも同じように視線を其方へと向けて、朝採れたてだという、野菜達を見る。
 艶のある茶色の皮を見せる玉ねぎに、オレンジがまぶしい人参。
 少し土がついたごろんと大きなジャガイモ達。
 そして青々しく大きなキャベツ。
「豚肉、玉葱、人参、ジャガイモ……キャベツ」
 寒さに晒されながらも、どこまでも瑞々しい野菜達は、誇らしげに私達を食べて! と誘う。
 あぁ、とそんな野菜達を見ながら耳を傾けていた海十は悩ましげに吐息をつく。
「聞いただけでお腹が空いてきた……」
 なんだか今にもお腹がなってしまいそうだ。
 そんな海十に視線をやり、フィンが唇を開いた。
「海十は何をいれたい?」
「白菜なんてどうだ?」
 なるほど、白菜か、いいねとフィンは頷く。
 今が旬の白菜はきっと甘みがたっぷりとあるだろう。
「旬だし口当たりがあっさりしそう」
 なら買いだな、と言いつつその隣の屋台へ視線を移せば、山のような小麦粉が。
 どうやら売り出し中らしく、安いよ安いよ! と景気のいい声が飛んでいる。
「小麦粉が安いみたいだけど……」
 それにつられてみたフィンは何度か小麦粉と口の中で呟いた後、視線を海十の方へ。
「うどんなんてどうだろう?」
 うどん? と首を傾げる海十にこくりと頷く。
「カレーうどんってあるじゃない? それのシチューバージョン」
 シチューにうどん……と呟いた海十の瞳がきらきらと輝きはじめる。
「何だそれ、食べてみたい!」
 小麦粉からうどんを作るのも面白そうだと息を弾ませる海十に微笑みを浮かべる。
 きゅっと握った指先。
 海十が愛らしいがゆえだ。
「手打ちうどんって、結構簡単に出来るんだよ」
 だから、一緒にやろうね。
 そう言うフィンへと海十がほわりと微笑んだ。

 2人で材料を手分けして買いそろえ、帰路へとつく道すがら。
 フィンの視線が白くてまぁるいほっかほかの塊へと注がれた。
 白い湯気がほっかほかとあがるそれは、肉汁のいい香りもさせていて。
(中華まんだ……)
 これから家に帰ってシチューうどんを作るまでは結構な時間が掛ってしまうだろう。 
 そう思えば、自然と海十の足がとまり、無意識にフィンを見上げてしまう。
「なぁ、フィン」
 かちあった視線にフィンは意を得たりとばかりに頷いた。
「食べて行こうか?」
 食べて行こう、その声がハモった。
 ふふっと笑い合うフィンと海十。どうやら気持ちは一緒だったらしい。
「よし、じゃぁ買うか」
「そうだね、買おう」
 そうと決まれば話しは早いとばかりに、早速吟味し始める。
「豚まん……でもピザまんも捨て難い」
 真剣に悩む海十に素敵な提案が。
「じゃぁ、両方買って半分こにするのはどうかな?」
「その案乗った!」
 瞳を輝かせて海十は同意を示す。
 早速二つ買い求め、半分こにすれば、暖かな中華まんにかぶりつく。
 2人で分かち合ったおかげか、美味しさは普通に食べるより倍美味しくて。
 ついつい頬が緩んでいる海十をみて微笑むフィン。
「頬っぺた、ついてるよ?」
 え? と瞳を瞬く海十に落ちたのは愛おしい人の影。
 触れる頬への温もりが、フィンの唇だと気がつくのと同時に、頬が赤く染まった。
 そんな海十を見つめ、美味しいね、とフィンは笑みを深くする。
 きっと、家に帰って作るシチューうどんもこれに負けない美味しさになることだろう。
 さぁ、帰ろうか。
 2人、ゆっくりと帰路へとつくのだった。
   


 ざわざわと活気溢れる市場。
 辺りを見渡せば野菜や果物や日常の雑貨品が目につく。
 他には目に入るものと言えば布や洋服や、アクセサリー品だろうか。
 ちょっと見て行ってよー! なんて声に数人が立ち止まる。
 びゅぅっと吹く風にぶるりと肩を震わせつつ、そんな様子を見渡していた瑪瑙 珊瑚は、隣で同じように身を竦ませている瑪瑙 瑠璃を見た。
「なぁ、瑠璃」
 問いかけられ、視線だけ其方に向けば珊瑚がこてんと首を傾げる。
 あちらこちらと見てみたけれど、探し求めるものがどこにもなさそうなのだ。
「ここ、ストゥーの缶詰無ぇの?」
「ストゥー……?」
 そう問われ、首を傾げた瑠璃は、あぁ、シチューのことか、と合点し改めて辺りを見渡してみる。
 あるのは生の野菜や、あったとしてもジャムなどのシチューとは違う加工品。
 他には燻製などはあるのだけれど……。
 少なくとも見える範囲内では売ってるお店はなさそうだ。
「やさやさ! アレあったらさぁ、野菜込みのビーフストゥー作れんだぜ!」
 ストゥーの缶詰は、その言葉通り出来たビーフシチューが入った缶なのだが、お店の人にきいても首を傾げられるばかり。
 どうやら一部の地域だけの特産品らしく、見たこともきいたこともないという。
 缶詰さえあれば、あとはお好みで色々物を足すだけでいいのだけれど。
 そうであれば、と瑠璃は珊瑚に提案を。
「似せて作ってみるか? 食材は一通り揃ってるぞ」
 言われて辺りを見渡せば、ストゥー缶こそないものの、それ以外はなんでも揃いそうだ。
「まぁ……ねぇなら……」
 材料でも買って帰るか、と頷く。
 あちらこちらと動きまわって買ったのは、瑠璃は羊肉にじゃが芋に、紫玉葱。
 そして白菜、鱈、茸に牛乳というラインナップだった。
 肉と魚、どちらも楽しめるシチューになるだろう。
 隣の珊瑚といえば、瑠璃とはまた違うラインナップだ。
 牛肉に豚肉、鶏肉……、そして紫芋に人参、ゴーヤ。
 ストゥーのようなもの、というわけで、ビーフシチューの素もばっちり買ってある。
 ビーフシチューではあるが、お肉たっぷりのシチューになりそうだ。
「よし、こんなもんか!」
「そうだな」
 買い忘れがないか確認しあったあと食材を抱え、2人はゆっくりと市場を後にする。
 さぁ、家に帰ったらシチューを作らなければ!

「なぁ、珊瑚」
 買ってきた材料を並べ、これからシチューを。
 手も洗いおえ、さぁいざ! というその時に、紫芋から珊瑚へと視線を移した瑠璃は、自分のじゃが芋と紫芋を指先で示す。
 それにつられて珊瑚も同じように視線を動かして。
「これとこれ、交換しないか?」
 こてんと首を傾げる様子に、瑠璃がほら……と紫芋を示す。
 これが、白いシチューの中に入れば見映えするだろう、と。
「お互いの料理に見映えすると思った」
 それに、と視線を合わせ。
「出来上がれば、食べ比べも出来る」
 こちらの白いじゃが芋は、きっとビーフシチューを美しく彩るに違いない。
 そう言われれば瞳を輝かせる珊瑚。
「食べ比べか! おーっし!」
 早速交換すれば、食材を洗いはじめる珊瑚。
 その隣では洗い終わったじゃが芋や白菜を一口サイズに切りはじめる瑠璃。
「なぁ、そっちの肉とってさー」
「これか?」
 問われれば、自分の近くにあった牛肉をとりあげ珊瑚のほうへ。
 お礼を言って受け取りつつ、逆もまたしかり。 
 2人の息は合っていて、ちゃくちゃくと料理は進んでいく。
 刻む音や煮込む音がまるで音楽のよう。
 野菜をいれてはルーを少しずついれていた瑠璃は、時折、小皿にいれて味を確認しては整えていく。
「うん……」
 これなら、大丈夫。
 そう、視線をあげた時。
 珊瑚ができたさー! と瞳を輝かせるのだった。


 さぁ、食べよう! と2人仲良くテーブルへ。
 それぞれ作ったシチューをゆっくりと食べはじめる。
 ジューシーな肉汁がぶわっと口の中に広がって行くのに、ぱっと瞳を輝かせる珊瑚。
 その隣では、白菜と鱈を一緒に食べて、ほんのりとした甘みを味わう瑠璃が、瞳を細めていた。
 寒さに耐えて、そして空腹に耐えてのシチューは、胃や心をじんわりと暖かくさせてくれる。
 一息ついて、珊瑚は感慨深げに呟く。
「やべぇ、美味ぇ……手作りも悪くねぇぞ!」
 自ら作ったビーフシチュー、ストゥー缶と違いどうなのだろうとちょっと心配だったけれど。
 とても美味しくて、珊瑚はきらきらと瞳を輝かせたままだ。
 そうとなれば、勿論、瑠璃のだって食べたい。
 だってとても美味しそうな香りが此方も食べて! と誘ってくるのだから!
「なぁ! 瑠璃のも食べていいか?」
「いいぞ、おれの分もついでくれ」
 自分が装ってあげようとおもっていたのだけれど、それよりも珊瑚の方が早く。
 ぱくりと一口掬って食べた珊瑚は、こちらも美味しいと瞳を輝かせる。
「……こういう味なのか?」
 珊瑚のビーフシチューを貰い、食べればそう問いかける。
「あの味、そんなに食べたかったんだな」
「故郷の味ってヤツやさ! 知らねぇ奴はいねぇ!」
 盛大に頷かれれば、そうか、とひとつ笑みを浮かべて。
 だからタブロスにもあるとおもっていたのだけれど……と珊瑚は眉を下げる。
「世界は狭ぇよ」
 もしも、その味が食べれる、その時は。
「楽しみにしてる。お前の、故郷の味」
 瑠璃はしっかりと珊瑚を見つめそう言う。
 その視線を受け止めて、珊瑚は大きく頷いた。
「ゆたしく! その時はバンバン振る舞うからな!? 約束!」
 約束、その言葉に、瑠璃が瞳を細めて頷く。
「あぁ、約束だ」
 珊瑚はその言葉に嬉しそうに笑って。
 2人の気持ちは一緒のようだ。
 次への約束はさらに心までほかほかにしてくれるのだった。



 がやがやとした喧騒。
 老若男女、さまざまな人々が楽しそうに、忙しそうに、のんびりと……時に一人で、友達や家族や、仲間と一緒に。
 それぞれのペースで足を止めては店主たちと会話をしながら目的の物を買っている。
 そんな活気溢れる市場へ、また、新たな2人組がやってきた。
 そのうちの一人……。
「先生、何作んの?」
 柳 大樹はふわりと冷たい風に茶色の髪を靡かせながら、隣を歩くアルベリヒ・V・エーベルハルトへと視線を移す。
 寒い、と両手を上着のポケットに突っ込みながらそう問う大樹は、アルベリヒが唇を開く前にさらに言葉を紡ぐ。
 曰く、こんな寒い日なのだから。
「俺、温かいのがいい」
 当然といえば当然の言葉だったかもしれない。
 その言葉に、ふむ……と一度視線を周りの店へと向けた後、アルべリヒは一つの答えを出す。
「カートッフェルズッペなどはどうかね」
 アルベリヒのその言葉に、蜂蜜色の瞳を細める。
「か……? なにそれ」
 まず、言葉すら覚えられない。
 そういうものがなんなのかというのは想像すらできなくて。
 全然わかんないんだけど、と続ければアルべリヒが視線をあげ大樹を見つめる。
「じゃがいものスープだよ。じゃがいもの他にも色々入っている」
 ベーコンや人参、玉ねぎにネギ……ブロッコリーも入ったりする、結構具だくさんのスープなのだと言えば、なるほど、と大樹は合点したのか頷いた。
 
 まずはメインのじゃがいもを。
 見てってよー! と威勢のいいおばちゃんに頷きつつ、大樹は見るともなしに山盛りになっているじゃがいもへと視線をやっている。
 そんな彼の隣でひとつひとつスープにあうじゃが芋を吟味しながら、大樹へと視線をやるアルべリヒ。
 やけに熱心に見ているから、というわけではないのだけれど。
「自分で料理はしないのかね?」
 そんな疑問の言葉に蜂蜜色の瞳を瞬き、大樹は僅かに首を傾げる。
「あー、しないねえ」
 その視線はお店に並ぶじゃがいもを見つめている。
 ごろんと大きなじゃがいもは美味しそうに見えるのだけれど……これを料理しろと言われたら。
「なんてーか、色々やるのめんどうでさ」
 そもそも、とさらに言葉を紡ぐ。
「第一、料理するなら1人で来てるよ」
 でしょ? と隣に立つ先生のピジョンブラッドの瞳を見ながらいえば、彼は軽く眉を下げた。
 彼が契約する、もう一人の精霊……青年の姿が脳裏へと浮かんで。
「それは、クラウディオ君が気を揉みそうだ」
 その名を聴いた瞬間、大樹の表情が目に見えて不機嫌になる。
「……あいつがくそ真面目過ぎるんだよ」
 真面目である意味、頑固でもある己のもう一人の相棒を想い浮かべつつそう言葉を紡ぐ。
「嫌かい?」
 それを聞けば、アルべリヒは彼から視線を元のじゃがいもへと移しながらそう問う。
 嫌って言うか、と大樹は言葉を紡ぐが、その先がなかなか出てこない。
 それを背にしながら、アルべリヒはごろりと大きく使い勝手のいいじゃがいもを数個手早く店主へと示した。
「……ん、このじゃがいもにしよう」
 ついで、会計もすませてしまえばその様子を見守っていた大樹が視線を彷徨わせながら小さく呟く。
「あいつが、自分の為に動かないから」
 それはとても小さな声で、そして言いづらそうな声音。
 されどちゃんとそれを聴いたアルべリヒはじゃがいもの入った袋を持ちながら振り返る。
 自然と人々の流れに乗って歩きはじめれば、素直に大樹もついてきて。
「彼の事を考えてなのだね。良い子だ」
 ふわふわの薄茶色の髪をそっと撫でてやれば、大樹は頭を軽く振りその手から逃れる。
「いい子じゃないって」
 先生はいい子だというけれど、と瞳を伏せる。
「いい子っていうのは、自分の都合を優先して、相手を拒絶したりしない」
 ……たぶん、と続いて紡がれた声音は、とても弱弱しかった。
 自信を持って言えることでもないからだろうけれど。
 そんな大樹を見ながら、ふむ。とアルべリヒは軽く頷く。
「クラウディオ君が考えを変えるのは無理だろう」
 もう、彼はあれで定まってしまっている。
 その言葉に視線をあげる大樹と、視線を合わせればけれど、と助言を、ひとつ。
「ただ、新しく学ばせる事は可能だろう」
 変われなくても、新しいことを覚えることは出来るから。
 新しいものを積み上げて、組み込んで、馴染ませて。
 そういうことは、きっとできるだろうから。
 アルべリヒの視線に小さく笑みを浮かべると、大樹はふいっと顔を逸らす。
「それより、スープ以外に腹に溜まるもんも欲しい」
 流石にそれだけじゃお腹が空く、との言葉にそれ以上アルべリヒも話題を続けることはせず辺りを見渡した。
「他の材料も見ながら、良い物があれば何か作るとしようか」
「よっしゃ。で、他に何が必要?」
 そもそもの必要な物が分からない、そういう大樹にくすくすと笑い、改めてゆっくりと辺りを見渡す。
 どうやら食材を売ってる所が多いエリアに丁度、足を踏み入れていたようで。
 これならすぐに欲しい食材も集まりそうだ。
「クローブとか、ベーコン。ブルストがあればなお良いね」
 呪文のようなその名称を一度復唱したあと、大樹の瞳が軽く輝く。
「あ、知ってる。ソーセージだよね。あっちでみたよ」
 今いる場所よりちょっと戻ったところ。
 そちらを指させば、あってるよ、とアルべリヒが頷く。
「あちらかね」
 意外と品揃えが豊富だね、と笑うアルべリヒに同意を示しながら、大樹は思う。
(やっぱり先生といると気が楽だなぁ)
 もう一人の精霊とはまた違う穏やかな時間。
 こんな時間を過ごすのも、また楽しいとそう思うのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 3
報酬 なし
リリース日 12月15日
出発日 12月21日 00:00
予定納品日 12月31日

参加者

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