みんなで! ハロウィンホームパーティ!(紬ゆら マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 十月ももう中頃。見渡せば橙に紫、お化けのオブジェ。ハロウィン一色に彩られた町並みを二人して歩いていた。
「もうすぐハロウィン。楽しいハロウィン。ハロウィン当日には何しようか?」
「……。ご機嫌だね」
 精霊にもれないイケメン顔で、歌うように踊るように後ろの私を振り返って歩くもんだから。子供みたい、て言ったら怒るかな。そんなことを思いつつタイヤキを頬張る。
「そりゃ年に一度のハロウィンだし!」
 残ったクレープをごっくんと飲み込み、きらりんと星を出しそうなウィンク。本当アイドルみたい。……今に始まったことじゃないけど。
「なあなあ、どうする?」
「どうするって……。特に予定はないけど」
「えー! 何かやろう」
「何かって、例えば?」
 そこまで言うならアイディアがあるんでしょ? ……とふくれっ面で聞いてみる。何もなかったらどうしてくれよう。
「仮装で町を練り歩く? 家でパーティ? どこかのパーティイベントに行ってみる? それとも遊園地にいって遊び明かす?」
「それもいいけど……」
「何? なんで乗り気じゃないかな」
「人混み」
「ああ……」
 この季節はどこも混むか。ハロウィンが根付いてきたのもあって、大勢が集まれば絡む奴やおかしな輩がでる確率も上がるだろう。
 もちろん大勢だからこそ盛大に楽しめるイベントもある。だけど私には少しハードルが高くて。
「でも何もしないなんてもったいないだろー!」
「ううん……」
「じゃあ。こうしませんか?」
「え?」
 第三者の声。透き通った聞き覚えのある声に顔を上げる。そこには微笑をむける白い兎耳テイルスの先輩が。
「丁度、僕らも同じこと思っていたんです。ウィンクルム同士仲良くホームパーティしません?」
「「「ホームパーティ!?」」」
 ニコリと微笑む先輩を前に、重なる三人の声。私と精霊ともう一人。もう一人は兎先輩の神人だ。どうやら初耳だったらしい「どういうこと」と内緒話をしだした。
 顔を見合わせる。知った顔同士、気兼ねなく喋れるし悪い話ではなかった。
「ともかくです。こちらで用意しますから当日は気軽に来てくださいね」
 どうやら決行に決まったらしい。彼の神人も「やれやれ、しょうがない」という顔をしている。
「ウィンクルムの後輩にも声かけてきましょう」我ながらナイスアイディアと手を叩くと、先輩は兎のようにぴょんぴょんと弾む足取りで行ってしまった。
「都合がよかったらでいいから」とポニーテールの神人は一礼して、後を追う。
(……兎のテイルスっぽい姿はじめてみた)
「行くんだろ?」
「そうだね。誘われちゃったし」
 一度やると決めてしまえば不思議なもので、仮装はどうしよう、何を持っていこうと考えることは多い。
 今度詳しい日程を聞かなくては。そう思うのだった。

解説

※パーティの準備に500Jr消費しました。

【主催がNPC】か【主催がPC】か選べます。PCがやる場合、主催を決めてその家で皆さんでホームパーティしましょう!
主催は【主催】とプランに一言お願いします。個別ではなく全体描写です。ご注意。
詳しいことは会議室で話し合って下さい。
※特にない場合、プロローグのNPC宅になります。知り合いという形で。

「会話や交流楽しみたいんだ」「ラブラブしたいんだ」「仮装みてみてみて」等あれば、それも一つです。NPCに任せて楽しみましょう!
「家の飾りつけ見せたい」「脅かしてやろう」「ゲームのアイディア」があるなら主催向きです。個性的なの待ってます!
尚、このエピソードに参加された限り交流や挨拶はあります。ご容赦ください。程度はプラン次第。
挨拶したあと、二人で料理に堪能しつつずっとラブラブしていてもいいでしょう。


●誰でも●できること
1.仮装
2.食事
3.持ち寄るお菓子
4.イタズラ(する方、された方の反応)
5.交流。近状報告などおしゃべり
6.精霊とラブラブor友情

●主催●できること
7.家でおもてなし
8.ゲーム企画


■NPCが主催になる場合
豪邸でハロウィンパーティ。立食ですが、椅子もお酒も料理も自由にどうぞ。兎先輩が腕を奮ってくれたよ!
「ビンゴ★ゲーム」会議室でダイスロールしましょう。6面ダイスを同時に二つふってゾロ目が出たら大当たり。ハロウィン限定スイーツの詰め合わせプレゼント!
片方でも「6」が出たら好きなお菓子一つ当たります! 
カップケーキ、クッキー、プリン、パイ、ティラミス、シュークリームなどなど味を含め指定して下さい。
※【3回まで振れるよ!】
よければ、ゾロ目が出た場合だけ【当】とプランに記載をお願いします。PC主催、NPC主催問わず何か用意させて頂きます。

それ以外は主催者さまの判断でお願いします。上記はゲームの例としてもお使い下さい。そのまま利用もOK。

ゲームマスターより

ハロウィンパーティしたい! と出させて頂きました。はい!
「トリック オア トリート」して、されちゃいしましょう。皆さんの仮装や演技も楽しみにしてます。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

シルキア・スー(クラウス)

  交流 絡み歓迎
悪戯 ドジ 不運OK

ハッピーハロウィン! 先輩ご招待ありがとうございます
イザベラさん達とも「こんばんは~ パーティ楽しみましょうね」と挨拶

仮装してる人には「気合入ってますね~」「似合ってます!」等声をかけたい
彼の仮装は暖色を着てるのが新鮮で「可愛い」て言ったら困った笑顔になった
慣れない色で落ち着かないらしい
皆と一緒なら気にならないよきっと

お料理やお菓子を彼と楽しく頂きます
お酒もおいしー

お菓子の差し入れは
ロシアンシュークリーム!じゃじゃーん
プチシューの中はカスタードクリーム
だけど何個か「からし」入りが混じってまーす! お気をつけて☆
蝙蝠の飾りのフードピックで飾り付け

何でも参加して彼と楽しみたい


イザベラ(ディノ)
  【当】

王道に沿って吸血鬼の仮装にて参加。
まずは主催やシルキア・クラウスペアに挨拶回り。
「トリックオアトリート」(マントの中から特大バズーカ型水鉄砲)
トリート用に気合い入れて作った(大部分は邸の料理人作の)フィンガークッキーと目玉チョコを持参。
見た目の怖さ特化だが味は悪くない。

ロシアンシューは戸惑う事なく口へ。
イマイチ味覚が鈍いのか、当たっても外れても真顔で真剣に吟味。
「…ふむ。…甘い(辛い)、と思う……?」


人を喜ばせるのは難しい。自分では特に。
パーティ中、時々精霊の表情を伺い。
「…楽しいか」
「そうか。……否、違う。…良い事だ。お前に喜んで欲しい。…から。お前が楽しい、のは……私は安心する」



 月夜の晩に闇に紛れてつどう豪邸。「いらっしゃいませ」と兎の魔王はマントを広げ大きな身振りで会釈する。
「今宵は一夜限りのパーティ。是非とも楽しんで行って頂戴」 
 隣の青白い顔のお姫さまがドレスの裾をわずかに上げて犬歯をみせてはにかんだ。
 薄暗い廊下をぬけ扉を開ける。
 広がるは、南瓜の燭台に照らされた貴族邸宅を思わせる部屋。
 頭上には蜘蛛の巣や蝙蝠のオブジェ。テーブルには食欲をそそる香りを放ちつつも、世に言うトカゲの丸焼きに、緑や紫というありえない色をしたご馳走たちが「食べて食べて」と瞳を輝かす。
 お化けが苦手な人への配慮だろうか、難易度が低い可愛らしいお化けや南瓜がのったケーキもあるので安心してほしい。
 それを食すのは、あちらを見てもこちらを見ても人ならざるもの達。
 ミイラ男に海賊、バンパイアに妖精に赤ずきん、本物の南瓜を被った強者(つわもの)までいる。
 古今東西のお化けたちがお喋りに花を咲かせ、乾杯と祝杯をあげる。
 さあ今宵はハロウィンパーティ。皆で楽しもう。


●始まりの挨拶
 目の当たりにした初めて見る光景に、『ディノ』はほおおと口を開き見入ってしまう。
 熊のテイルスなのに狼男に扮したこの姿は、正直恥ずかしいと思っていたが、場の高揚感が気分をあげるのかわくわくが止まらない。どうにか平常を装おうと顔を引き締める。
 ふと横切る目線の先は、ボディペイントだろう半魚人に、大鎌をもつ骸骨の仮面を被った死神。
 傍から見れば狼男が都会に目を輝かせているように見えてなんとも微笑ましい。
 吸血鬼に扮した『イザベラ』が口の端を上げる。彼女らしくて格好よさに拍車がかかる、それを目にしたディノはぎこちなく視線をそらした。まだどうしていいかわからなくて。
 
 ホームパーティとは名ばかりの広い部屋に何十人も、しかも仮装をしていて一見誰が誰だか判断できない。
 その一角。
「ううん……」 
「どうしたの?」 
「いや、浮いてないだろうかと」  
「可愛いよ」 
「かわ……」 
 困惑しならがらも何とか笑顔を浮かべる。本心から良いと思っての言葉なのはわかるから。
 内心それは男としてどうだろうか……と『クラウス』は複雑な心境にかられる。
 クラウスが着るのはジャックオーランタンのプリントのあるフードつきのローブだ。暖色を着ること自体慣れないことなのでどうにも落ち着かない。
 新鮮でいいと思う、と『シルキア・スー』は勇気づける。
「皆と一緒なら気にならないよきっと」 
「そうだな」 
 そう信じようと目線を上げるクラウス。
 ええっと……と視線をさ迷わせシルキアは先ほど見失ってしまった魔王とお姫様のペアを見つけて声をかける。
 シルキアはとんがり帽子の魔女の仮装だ。濃い紫基調で内側の生地や差し色がオレンジに縞々タイツ。南瓜パンツに黒猫ウエストポーチを身に着け、髪をおろしている。
 シルキアに似合う可愛らしい魔女だ。
「ハッピーハロウィン! 先輩ご招待ありがとうございます」 
「感謝します」 
 お辞儀をするシルキアの隣に並びクラウスも頭を下げた。お姫様が「ご丁寧にどうも」と合言葉を返す。
「ハッピーハロウィン。ようこそ、可愛い魔女さんと南瓜さん」 
「シルキアさんにクラウスさん。先ほどはご挨拶できずにすみませんでした。ごゆるりとパーティを楽しんで行って下さいね」 
「後半にビンゴ★ゲームもやるの。この箱から一人一枚選んでね。開始はアナウンスするわ」 
 それは楽しそうと期待に胸を膨らませ、箱の穴に手を入れるとそれぞれ「これだ」とシートを選ぶ。
「今日は腕によりをかけて魔界のご馳走を作ったんですよ」 
「ワインもシャンパンもとっておきなの」 
 ウィンクしてあれこれ進めてくる兎先輩を「ほら料理が切れてる」と姫が引っ張っていく。
「やはり主催は忙しいんだな」 
「ご苦労様です、と言いそびれちゃったね。あと挨拶してないのは……」 
「急ぐ必要もない。食べながらでもいいんじゃないか」 
「そうだね」 
 早速おすすめされた芋虫いりのババロアを口にすると、とろんと甘さが口の中で解けた。芋虫は食感のあるグミだ。

 挨拶にまわり時に料理を楽しんでいると、特徴的ながたいのよいディノを見つけた。次いでイザベラを見つけ走り寄る。
「こんばんは~。パーティ楽しみましょうね」 
「こんばんわ。シルキアは魔女で、クラウスはジャックオーランタンの仮装か」 
「はい。こだわってみました。そういうイザベラさんは吸血鬼なんですね。ディノさんは狼男ですか。お二人ともよく似合ってます」 
 どうでしょうとはにかむシルキアに、隣のクラウスはくすぐったそうな顔をしている。
 仮装のことを褒められてイザベラもまた頬に熱が上がるのを感じた。
 ディノといえば最初は何を言われているのかわからなくて、徐々に実感してきたのだろう。満面の笑みで照れている。
「ありがとうございます。お二人もよくお似合いですよ」 
(そんな風に笑うのか)
 前は頻繁にこの顔をみていた気がする。ふとイザベラはそんなことを思った。
「そうだ。ビンゴ★ゲームをやるんですって。先輩がシート配っていたけどもらいました?」 
「まだだな。挨拶も済ませてないし行ってくる」 
「……そうですね」 
 漆黒のマントを翻し、後に続く狼男の足取りはどこかぎこちない。どうしたんだろうとシルキアとクラウスは顔を見合わせた。


●イタズラにはイタズラを!
「トリックオアトリート」 
 戻ってきた早々に発せられたイザベラの言葉に一瞬なにかわからなくなる。
「あ! え、持ってきたお菓子どこにやったっけ!? クラウス」 
「さっきまで持っていたろう」 
「ああ。ババロア取るときテーブルの上に置いて……!」 
「……くれないのでイタズラをさせてもらう」 
 イザベラはおもむろにマントに手をいれるとスチャリと特大バズーカを肩に担ぐと狙いを定める。引き金を引いた。
「シルキア!」 
 思わず身をすくめるシルキアを庇いクラウスが前に出る。
 命中した。勢いのよい水が頭を濡らす。
「水鉄砲だ」 
「いや、それ寧ろ強盗ですから」 
 緊張の糸が切れて呆れた声をだすディノ。
「そうか……?」 
 頭の中で反復して考えてみる。合言葉をいい、動揺する皆、渡さないとバズーカ発射。チーン。
 強盗だった。
「そうだな。しかし好評なのでよしとしよう」 
「確かにそうですね」 
 一瞬ざわついた会場は落ち着きを取り戻し、野次馬が散って行く。一部の面白い物好きはなんだ、なんだとバズーカ型水鉄砲に興味津々だ。
「トリックオアトリート」 
 目の合った人にまたバズーカ型水鉄砲を構えると、お菓子をくれるもの、あえてイタズラを受けるもの様々だ。
 蜘蛛の子のように散っていく。

「もう怒りました。お返しですよ」 
 テーブルから取りに戻ってきたシルキアは包みを開ける。
「ロシアンシュークリーム! じゃじゃーん」 
 弾む声でシルキアが笑顔で取り出したるは、ころんとした可愛いシュークリームの山が入った器だ。
 蝙蝠の飾りのフードピックで飾り付けが何ともハロウィンらしい。
「プチシューの中はカスタードクリーム。だけど何個か「からし」入りが混じってまーす! お気をつけて☆」
 しかし当たらなければお返しになっていないんじゃないか、とも思うが。ノリだ、パーティはノリである。元々差し入れのつもりで持ってきたのだ。
 そういう方向もありである。
 慄くディノを横目に、イザベラはロシアンシューは戸惑う事なく口へ入れる。
 漢らしいねえ、勇気あると声が飛ぶ。それが短所で長所なんですよね、とディノは密かに思う。
「……ふむ。……甘い、と思う……?」 
 真顔で真剣に吟味する姿に。負けてはいられないと勇気が湧いてきたディノも口へ放り込む。
 甘いまろやかなクリームが口に広がる。
「美味いです!」 
「俺も」「私も」周りにいた数人がゲームに乗った。美味い、おいしいと次々に声は上がる。3周はできそうか。
「私たちも食べようよ。うん、美味しい」 
「そうだな。……っ!?」 
 含んだとたんにクラウスは口元を手で多い眉間に皺をよせる。
「もしかして当たっちゃった?」 
 青い顔で何度も頷くクラウス。
「ごめんね。クラウス!」 
 慌てて水を差し出すシルキアだった。勢いよく喉に流し込み事なきをえた。
 暫くして全てのシュークリームがなくなり、「あれ」とシルキアは首を傾げる。
「からし入りは2ついれてたんだけど、皆さん平気ですか?」 
 挙手される手が。イザベラだ。
「どうやら最初に食べたのがそうらしい。その後は甘かった」 
 一瞬の沈黙の後、どっと会場が湧いた。


●ビンゴゲーム開始!
 マイク音が聞こえる。「ハッピーハロウィン」と飾りで彩られたホワイトボードの方をみる。
『皆さま、本日はお越しいただきありがとうございました。これよりビンゴ★ゲームを開催いたします。シートは全員手元に届きましたか? まだの方は居ませんね』 
 姫が高らかに声を張り上げ周りを見渡す。特に声を上げる者はいない。
 台車のテーブルを押してきた魔王が布で隠された景品を見せる。
 目を引くのは、大型テレビ並の大きさのお菓子の詰め合わせ。包みはビニール袋のため中が透けて見える。小袋にリボンでおめかしした手作り感あふれるカップケーキやお菓子たち。
 この会場にあるものと類似してるものもあるがどれも人気のお菓子だ。職人(兎魔王)の拘りが見て取れる。
 横にはまたディテールが細かい飴細工がのったパフェや、クッキーは質より量なのかお得なものまで、様々なお菓子が並ぶ。
『ビンゴの景品はこちら。陶器に入った手作りお菓子の数々。ハロウィンらしいホラーちっくなのから愛らしいものまで様々揃えています。最初に上がった方にはお菓子の詰め合わせを差し上げます。次点はこの中から選んでください』 
『ちょっと愛らしいおまけもありますよ』 
 姫のマイクを取って兎魔王が引き継ぐ。
『今おもてなししている料理やお菓子とは食材や手間暇が違います。味もきっと格段に上だと思いますよ』 
『確かにこいつの手料理はおいしいのよね。はーい、いきますよ。最初の番号は25番……11番……』 
 扇を仰いで一涼みすると箱の中から番号が書かれたボールを取り出し読み上げていった。

「リーチ」 
「俺もリーチ!」 
「ダブルリーチなのにこないのよね」 
「全然うまらない」 
「3番はさっき言われたよ。抜けてる」 
「あ。そっかありがとう」 
 番号が進むにつれて息を吞む音がし、静まり返る。残りの番号が呼ばれないか今か今かと待ちわびる。
「え……」 
「どうした? ディノ」 
「いや嘘、待って下さい……」 
 見間違いじゃないかともう一度シートに目線を走らせる。3つ、4つ、5つ……。
「ビンゴ! です」 
「おお」 
『ディノさん、おめでとうございます!』 
 シートと交換してお菓子詰め合わせセットを両手に抱え興奮で頬を染めるディノ。
 その変化を感じイザベラは何とも言えない気持ちになる。
『はーい! 続いていきますよ。38番』 
 何度目かの番号が呼ばれ終盤の頃。
「はい! ビンゴです!」 
「当たってよかったな」 
「うん」 
 その顔に釣られてクラウスも笑みが綻ぶ。
 シルキアはほくほく顔で受け取ったお菓子を眺める。リボンで結んだ包みの中にある南瓜プリン。
 プリンの上はハロウィンの舞台。可愛らしい魔女と南瓜がのったクッキーがまるで自分たちのように思えた。


●終わりの宴は
(人を喜ばせるのは難しい。自分では特に)
 パーティ中、時々精霊の表情を伺い。ぱちりと目があった。他の人は料理を取りに今は離れている。
 今なら話せる、気がした。
「……楽しいか」 
「……楽しい、です」 
 ぎこちなくはあるけれど返すディノ。
「そうか。……否、違う。……良い事だ。お前に喜んで欲しい。……から。お前が楽しい、のは……私は安心する」 
 つい出てしまいそうになる悪癖を戒め、考える。一度考えればすとんと答えが出てくる。
 そのまま口にした。
 伝え方は及第点にも満たないかもしれないが、自分の中から出た気持ちは噓偽りはなかったから。
 沈黙が流れる。
 受け取ったディノは胸が詰まるような感覚をうけていた。
 あの人が、あのイザベラさんがと改めて目を見張る。
 二人きりになるとギクシャクするが、この人なりに自分や相手の気持ちに向かい合おうとしている。
 俺のためか、貴方自身のためか、それはわからない。
 けれどこうして示してもらえた。そのことを噛みしめる。
「そう、……ですか」 
「ああ。……そうなんだ」 
 ディノは泣きそうになるのを堪えてやっとそう口にする。イザベラも未だ不器用で素っ気ないかもしれない。しかし嫌な空気ではなかった。
 ビンゴ★ゲームで当たった詰め合わせのお菓子を抱え込む。可愛らしいカップケーキに狼男と吸血鬼がのるそれをみつけて、重なった姿は手を繋いでいるように見えた。
 どこか肩の力が抜けた気がした。
「まだパーティは終わってません。一緒に楽しみましょう」 
 勢いのようなものだった。今ならと。
 顔は見ずにイザベラの手を引いてリードする。ディノの手から伝わる汗とその横顔を目にしてイザベラは表情を緩ませた。


 三度みつけたシルキアとクラウスペアを呼び止めて。
 お詫びだとイザベラが取り出したのは、トリート用に気合い入れて作った(大部分は邸の料理人作の)フィンガークッキーと目玉チョコだ。
 みんなで摘まもうと場を囲む。
「うまいです」 
「そうか。料理人も喜ぶだろう」 
 今度はいつものディノらしく素直に美味しさを全身で表す。イザベラも口に含み共有した味を吟味して楽しむ。
 二人の様子を見てシルキアとクラウスもほっと気がかりがなくなった。
「本当。フィンガークッキーも、お酒もおいしー」 
「どちらも料理の腕は確かだな。シルキア大丈夫か? 欲しい料理があるなら取ってくるぞ」 
「ううん。大丈夫、行ってくるよ」 
 赤い顔でいつも以上にふにゃりと微笑み、テーブルへ向かう。
「そうか。……」 
「行ってきてください」 
「うむ。私たちは問題ない」 
「すまない」 
 気になるんだろう、とディノとイザベラの言葉に背を押されクラウスは後を追った。
 後姿を見送り、ふとイザベラが思いつく。
「……そういえばおまけとは何だったんだ?」 
「え? ああ詰め合わせのことですか」 
 美味しそうだけど普通のお菓子みたいですけどね……と大袋のリボンを解いてみる。一つ二つと取って、イザベラも手伝う。
「あ」 
「クマ、か」 
「ぬいぐるみですね」 
「何だか、……色味がよく似ている」 
 手の平に収まる茶色いぬいぐるみとディノを並べて。熊でお揃いか、良いものが見れたとイザベラは思った。


 ほろ酔いで足元がおぼつかないシルキアをみつけ、クラウスは自然と隣に寄り添う。
 丁度、大柄のミイラ男と蛇女のペアが開けたところだ。
 シルキアがどれにしようかと身を乗り出す。残り少ない紫芋を使ったパスタにしようか。藻の色をしたモンブランお化けも気になる。
 はらりと髪が揺れる。
「ん……」 
 髪が邪魔とかきあげて、こちらを見ているクラウスに気づいた。「どうしたの」と視線で訴える。
「……その髪型良いと思っていた」 
「え」 
 頬に熱が上がるのがわかる。こんなタイミングで褒められるとは思わず頭が追いつかない。
 クラウスの方も驚いた顔をみて咄嗟に手近にあったお菓子を差し出す。
「これも食べないか」 
 でろんとしたゼリー状の目玉は充血していて睫毛がはえてる。グロいのか愛らしさを狙っているのか分からない一品。
 吹き替えるなら「何の用?」と喋りそうだ。その珍客をみて。
 見合って笑いが漏れる。
「あ。クラウスまって」 
「なんだ?」 
「まだ少し濡れてる。今日は楽しかったけど、クラウスにとっては散々だったよね」 
「いや、色々あったが悪くなかった」 
 今こうして彼女にやさしく労いをかけてもらえるのは散々だったからこそだ、と。パーティでの交流も楽しめたのも一緒だったからだ。
 より近づいたシルキアの頬を見て、脈が速くなる。
(彼女の頬が赤いのは酒のせいかそれとも……)
 知りたいと思った。だが、今は身を任せて熱心にハンカチで拭うシルキアの笑顔を間近で見ていたかった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 紬ゆら
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月11日
出発日 10月20日 00:00
予定納品日 10月30日

参加者

会議室

  • [8]シルキア・スー

    2017/10/19-14:11 

    何とか6が出た~
    [5]はダイス振り忘れたので削除してしまったけど
    不正がない証拠に残しておけば良かった、失敗。

  • [7]シルキア・スー

    2017/10/19-14:07 

    ダイス3回目! どうなる!?

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):6】

  • [6]シルキア・スー

    2017/10/19-14:06 

    ダイス2回目!

    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):5】

  • [4]シルキア・スー

    2017/10/19-14:04 

    ダイス1回目!

    【ダイスA(6面):5】【ダイスB(6面):3】

  • [3]イザベラ

    2017/10/19-06:26 

    (何かちょっと良い予感がする)

  • [2]イザベラ

    2017/10/19-06:24 

    遅れて申し訳ない。イザベラだ、ディノを連れて行く。
    出発が確定して良かったものだ。
    こういった催しへの参加は慣れていないが、やるからには全力でやらねばな。
    どうか宜しく頼む。

    主催はNPCで良いだろう。
    後続で希望する者が居れば、勿論歓迎する。

    ロシアンシュークリームとは面白そうだ、我々も頂こう。
    此方は、そうだな…ハロウィンらしく見た目の怖い菓子を何か持って来よう。
    例えばアレだ、あー…フィンガークッキー?とかだな。
    ハロウィンは、確かこう、罰則(トリック)か貢物(トリート)かを強要出来るんだったか?
    少し勉強して来よう。
    仮装とやらはどうするかな…。


    【ダイスA(6面):2】【ダイスB(6面):2】

  • [1]シルキア・スー

    2017/10/19-00:34 

    挨拶遅くなりました。
    シルキアとクラウスです。
    イザベラさん達とはアドエピでもご一緒した事ありますし、面識のある知り合いで大丈夫かなと思っています。
    よろしくお願いしますね。

    えっと、主催に関しては【主催がNPC】【主催がPC】どちらでもOKです。
    私達は主催の希望しません。

    できれば皆さんと交流したいので、
    ロシアンルーレットシュークリームを持参しようかと思っています。
    たくさんのシュークリームの中に「からし」の入ったものが何個か紛れています。
    食べるかはお任せします。
    からしに当るかはGM様にダイスを振って貰えたらなと思っています。
    もちろん当りたい方は当りを引くとプランに入れて頂いてもいいと思います。

    あとは、イタズラ仕掛けて頂いてもこちら大丈夫です。
    交流、絡み、イタズラ歓迎です。
    楽しみたいですね。


PAGE TOP