秋の何気ない一日(紬ゆら マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 夏の暑さも陰りをみせ、日中も心地いい涼やかな風が吹きぬける、初秋のある日。
 今日も、いつものように起き、いつものように過ごす、そんな自分と相棒の一日がはじまる。
 予定はない。何をするのも自由だ。

 いつの間にか、あの騒がしかった蝉の声は聞こえなくなり、日は早く傾くようになった。
 秋の夜長と聞こえはいいが、その分やれることも限られる。まあ暑さで参ってできないこともあったから場合によっては好都合か。
 「読書の秋」「芸術の秋」「スポーツの秋」としゃれ込むのもよいだろう。「食欲の秋」も忘れてはいけない。
 道端にはススキや曼殊沙華、まだ実ったばかりの緑色のドングリや蕾から花開いたばかりのコスモスなど秋の植物たちが共演をみせる。
 店頭では旬のキノコや丸々と肥えたサンマ、色づいた葡萄や林檎が姿をみせ、栗や芋の和菓子や洋菓子など秋の味覚が目白押しだ。
 そして奇しくも今宵は満月。綺麗なルーメンと、ウィンクルムにしかみえないもう一つの月、デネブラをみることができるだろう。


 例えば、秋の息吹を感じながら林道を走るのもいいだろう。
 例えば、秋の味覚を使った創作料理に勤しむのもいいだろう。
 例えば、秋の夜長の散歩がてら月見をするのもいいだろう。
 例えば、二人ただ静かに家で寛ぐのもいいだろう。

 さあ、今日は何をしよう――

解説

ウィンクルムの秋の一日、日常はどんな感じでしょう。
時間帯は教えて下さい。【朝】【昼】【夕】【日中】【夜】【深夜】など一番最初に記載か、プランでわかるようお願いします。
複数だと内容がうすくなるので一つか二つの時間帯がお勧めです。

やれることは上記以外でも
・図書館や本屋で購入して。家で読書
・スキルアップや常日頃の努力。鍛錬に〇〇をしてる
・ショッピング三昧で連れまわす
・〇〇で幸せを噛みしめる
・旅行の計画を立て準備する(日帰りはNGです。……需要ありそうなら後日、旅行のハピエピ検討)
・別行動で日常。最後に顔を合わせたり、電話する

などやれることは様々です。フラグの一端や息抜きにもどうぞ。

※買い食いをしてうっかり300Jr使っちゃったよ。
※二人が別行動する場合、思いあわないと親密度は上がりません。注意。

ゲームマスターより

いつもは戦い、交流を深めてる皆さんですが、こういう何気ない一日というのも掛け替えのない一コマです。
ぜひ休日の二人を見せてください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

信城いつき(レーゲン)

  【日中】
涼しくなってきたなぁ
そろそろ夏物とか着ないものは片付けよう
天気もいいしベッドのシーツも洗っちゃえ。

衣替えをしつつ、晩ごはんの下準備も。
ご近所さんから秋の味覚もらったから、おいしくいただかないとね。

海の家行った時に引っかけたのかな
…ほんとにレーゲンって器用だよね
畳んだ服も計ったように整ってるし、すごいなぁ
(いつきは正確よりスピード派)

今日の晩ごはんはね
栗とキノコのクリームパスタ、デザートにさつまいものプリンだよ
プリンはご近所さんへのお返し分もあるから、いっぱい作らないと
なめらかになるようちゃんと濾して、プリンの上に甘く煮たさつまいもを刻んでっと

シーツも畳んでくれたの?掃除も、ありがとう!


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  【夜】自宅の猫+レカーロと遊ぶ。ラキアも一緒に遊ぼう!
猫ってさ。やっぱり夜は運動会なんだぜ。
ウチには猫3匹が居るからさ。
レカーロ(エピ141参照:中型犬程のもこもこワンコっぽい生物)のユキシロも最近涼しくなってきたからちやっかりそれに加わったりしてさ。
走り回る猫達見てたらオレもうずうずしてきた―!
この、オレのねこじゃらしの妙技を味わいつくすがいい!
1対4では不利だからな。
ラキアと2人なら、ねこじゃらし4個同時稼働できるじゃん。

猫達の目の前て両手に持ったねこじゃらしを緩急つけて誘うように動かすのだ。
さっそくクロが尻尾ふりふり、飛び付いてこようとするのをさっと避けて!
やっぱ猫は反射神経スゲーよ!



ユズリノ(シャーマイン)
  ペアリングを見にジュエリーショップへ
提案に乗り石探し
見せ合う
僕はこれ ターコイズ
優しい色なんだけどここの模様が稲妻みたいに力強いでしょ シャミィの石だ

え? ああありがと(激照
照れ合う中店員さんがカットイン
完成まで数時間かかる為
彼はそれを見越してたみたいに 行きたい所があるんだ と僕の手を引く

ケーキ屋へ
誕生日! そうだった

カフェへ
ケーキ…見てもいい?
箱を開けてくれて上から覗き込む
すごい 色とりどりの薔薇が綺麗 これケーキなの?
花言葉? (薔薇は愛の花
嬉し恥かしで死にそう
秋風が火照る顔を冷やしてくれる
どうしよう嬉しい…

家で誕生日会
指輪嵌め合い
生まれてくれて有難うと彼が言う
幸せ過ぎて泣いてしまった
僕だって有難うだよ


ルゥ・ラーン(コーディ)
  【深夜】
長屋の私の元の部屋
ここには運命の神人との邂逅の夢破れ病死した精霊の地縛霊が棲みついている

酒と月見団子を供えて
懐のお守りに手を添え虚空に語り掛ける
秋の夜長 じっくり語り合い 今宵こそ その魂を輪廻の輪に還してやりましょう

霊が現れ
渦巻く瘴気から感じ取るのは
神人への妄執や孤独や無念や…

運命の人に出逢う為には成仏し生まれ変わりなさい
それがウィンクルムの摂理であると諭す
これまでも諭してきた 
いつか声は届くと信じて

『オマエガオレノカミウドニナレ』
抱締められ
あなたの求める人は未来にいます
だから私の愛しい人を解放しなさい
お守りをかざし淨霊強行

ええ
最後に『彼』は来世への期待を見出したのでしょう
私達の愛を知って


歩隆 翠雨(王生 那音)
  深夜
満月が撮りたくて自宅の庭に出た
少し冷たい風に、じーさんが育て俺が受け継いだコスモスの花が揺れる
一枚の絵画のような風景を写真に収めながら、一人で見てるのが勿体ないなと思い
浮かんだのは那音の顔
起きてないよな?こんな時間だしなぁ…
メールくらいなら迷惑にはならないかと
携帯で写真を撮り、「綺麗だろ?」と一言添え那音に送る

どうして那音にこの景色を共有したいと思ったのだろう?
綺麗だから?
…それだけではない気がする

携帯の着信音に驚き
…那音?
よ、よう。まだ起きてたんだな
何でもないふりをしようと思うのに、声が震えそうで

え?でもこんな時間だぞ?
俺は…構わないけど

どんな顔で那音を迎えたらいいか
嬉しいの感情に戸惑う


●秋の夜長にみんなで運動会!
 秋の夜長。涼やかな風や静寂を連想させる夜。そんな夜でもお構いなし! そう宣言するかのごとく、夜の大運動会は開催されていた。
 始まりは庭の片隅で拾った猫の兄弟、黒猫のクロウリーと茶虎猫のトラヴァース。今、足元を駆け抜けていった二匹だ。
 子猫の二匹を育てるのは大変だ。「二人で育てよう」とセイリューと共に、このラキア宅で同居することになった。
 今や大きくなり我が物顔で家中を走り抜ける。その後ろを追う2匹も元気よく走り抜けた。
 白いのが中型犬程のもこもこワンコのような生物のレカーロ。ユキシロだ。最近涼しくなってきたからちゃっかりそれに加わっている。
 猫の3匹目、白手袋黒タキシード柄の猫バロンを発見して保護したこともある。
 そんな訳で現在、一人で住んでいたラキア宅は、4匹と一人が増えて計6人(匹)の賑やかな毎日を過ごしている。

 夕食が済んで暫く。寛いで『セイリュー・グラシア』は走り回る猫たちを見ていた。
「オレもうずうずしてきた―!」 
 手を振り上げ、タンスの引き出しから『それ』を取り出す。
 じゃきーん! と効果音の声を出し、戦隊ヒーローの決めポーズさながら、ねこじゃらしを構えるセイリュー。
「この、オレのねこじゃらしの妙技を味わいつくすがいい!」 
 最初は少し動かす。遅く、たまに早く。生き物がごとく!
 すると。次々と4匹の動きがとまる。
 くん、と釣り竿でつられた魚の如く、瞳孔が開きっぱなしの猫夢中。次の瞬間しゅばばっと猫パンチ! 噛みつき攻撃!
 ジャンプに、空振りからのターン! と次々と猫技が繰り出される。いい勝負だ。
「セイリューって、ホント、時々猫との遊びに夢中になるよね」 
 奮闘を見ながら、『ラキア・ジェイドバイン』はお茶で一息つく。
「ユキシロもあまり激しく動くと熱くなってバテちゃうよ」 
 クロとトラに負けず劣らず飛び跳ねて、はっはっ と息をするもふもふのユキシロは暑そうだが楽しそうだ。ついつい笑みが零れてしまう。
(これが俺達の一家団欒なんだ)
「一度に同時攻撃は卑怯だぞ。ラキア!」 
「どうしたの? セイリュー」 
 呼びかけに顔を上げると、セイリューは新たなねこじゃらしを差し出す。
「ラキアも一緒に遊ぼう!」 
 実は少しだけ羨ましいなと思っていたから。返事なんて決まっていて。
「わかった。もちろん一緒に遊ぶよ!」 
「1対4では不利だからな。ラキアと2人なら、ねこじゃらし4個同時稼働できるじゃん」 
 二人で笑い合う。さあ、運動会の本番はこれからだ。
 
 スタンバイオーケー。
 開戦を告げたのはセイリューだ。猫達の目の前で両手に持ったねこじゃらしを緩急つけて誘うように動かす。
 さっそくクロが尻尾ふりふり、飛び付いてこようとするのをさっと避けて!
「やっぱ猫は反射神経スゲーよ!」 
(セイリューのねこじゃらしは動きが面白いからかクロとトラが良く喰いつくんだよね)
 セイリューの反射神経も負けてないと思うな、ラキアはそう内心思いつつ、こちらも相手をしないといけない。
 とは言っても、ラキアの相手は一番幼いバロンと優しいユキシロだ。クロ&トラと比べたら和やかなもので。
 ラキアが動かすねこじゃらしはチロチロと大きな動きではないが、却ってマイペースなバロンの心を掴んだようだ。
 小さな前足でぱしぱしと叩く姿が何とも愛らしい。
 もう片手でぬいぐるみをちょいちょいと動かすとユキシロがぬいぐるみをぱくりと咥えて。ご機嫌な様子。
「ふふ、かわいいなぁ」 
 そこへトラがユキシロを飛び越えてダッシュする。セイリューの持ったもう一つのねこじゃらしにロックオンしたようだ。
 驚いたユキシロが、わふん!? と一回転して頭をぷるぷるさせた後、トラを追っていくし。
 セイリューも増えた敵に「相手になってやる」とクルリとターンし妙技を炸裂させるし。セイリュー、のりのり。
 その間にもバロンは毛づくろいして、またラキアのねこじゃらしで遊びはじめる。
 まだまだ寝れそうにもない。楽しい夜は更けていく。

●君と一緒に過ごす日常
「んー」 
 秋の快晴。窓を開け部屋に新鮮な空気を入れる。太陽が燦々と降りそそぐ澄んだ青空を見上げ『信城いつき』は思わず大きく伸びをする。
「涼しくなってきたなぁ。そろそろ夏物とか着ないものは片付けよう。天気もいいしベッドのシーツも洗っちゃえ」 
「確かに洗濯日和だよね。分かった、手伝うよ」 
 いつきの声を聞きつけ、後ろから顔をだした『レーゲン』も同意する。確かにこんな快晴の日に干さないのはもったいない。
 夏物の半袖をはじめ浴衣に下着、シーツなどなど目につくものを手分けしようと部屋を見回す。
「今年の夏もいろんな所に行ったよね」 
「楽しかったなぁ。綺麗な景色もみれて3人でまた冒険したい」 
「私も。ミカにも言っておくよ」 
「うん、また一緒に出かけよう!」 
 川に森に、海でゴミ拾い、祭りに思えば色々あったと、のんびり片付けながら思い出話に花が咲く。
 いつきは衣替えをしつつ、晩御飯の下準備に冷蔵庫をチェックする。栗にキノコにサツマイモ……何ができるかな、と思案する。
「ご近所さんから秋の味覚もらったから、おいしくいただかないとね」

 ふと、いつきが横切った際に目にはいった。思わず呼び止めるレーゲン。
「いつき、そこの裾がほつれてるからちょっと貸して。修理は慣れてるから」 
「海の家行った時に引っかけたのかな」 
 いつの間に、そう思いつつ上着を脱ぎ、レーゲンに手渡す。手には既に針と糸。さっさっと糸を紡いでいく。
「……ほんとにレーゲンって器用だよね。畳んだ服も計ったように整ってるし、すごいなぁ」 
 余りの整いように、どうやったらこんなに整理整頓できるんだろうといつきは感嘆の声を思わずだした。レーゲンの性格なのかな?
「ふふ、ありがとう」とちょっと照れくさそうにレーゲンが微笑む。
「逆に作るのはいつきの方が得意だよね。こっちは私がやるから、料理、お願いしていいかな」 
「わかった! 張り切って作るね」 
 いつきはエプロンを絞めると「今日の晩ごはんはね……」と、少し上の空で考える。
「栗とキノコのクリームパスタ、デザートにさつまいものプリンだよ。プリンはご近所さんへのお返し分もあるから、いっぱい作らないと」 
「楽しみにしてるよ。パスタもプリンも」 
「任せて!」 
 レーゲンの期待にも応えるべく、いつきはテキパキと下準備に取り掛かった。鍋に水を入れて、カップはどれにしよう、味付けは、とやることは多い。

 レーゲンはいつきが料理をしている間、外に干していた乾いた服やシーツを片付ける。真っ白のよい仕上がり。
 遠くから、トントンと包丁のリズムや鍋の煮立つ音、たまに「わっ」や「できた」など、料理に奮闘するいつきの声が聞こえる。
(なめらかになるようちゃんと濾して、プリンの上に甘く煮たさつまいもを刻んでっと)
(台所から甘い香りがする。プリンも手間かけてるし栗も一つづつ剥いてるのか……)
「私ももう少し頑張らないとね」 
 素晴らしい心意気。
 正確さのレーゲンに、スピード派のいつきに。どちらも家事に困っている老若男女には喉から手が出るほどほしい人材だろう。
 洗濯物を畳み終えて仕舞うと。
 レーゲンは「あと自分にできるのは……」と視線を巡らせ「高い所の掃除もやっておこう」と雑巾とハタキを手にする。上から下へ、が掃除の鉄則だ。

 夕暮れ時に。「できたよ」といつきが声と共に顔を出す。見違えるように綺麗になった部屋を見回し。
「シーツも畳んでくれたの? 掃除も、ありがとう!」 
「私からしたら、いつも美味しいご飯を作ってくれるいつきがすごいよ。だから、このぐらいさせてもらえないかな」 
 そんなことないよ、と本心から思うのに。嬉しいのも助かったのも事実だから。
 いつきの笑顔に、レーゲンも釣られて笑顔になる。幸せの連鎖。
 それは暖かな時間。掛け替えのない日常の一ページ。

●満月照らす、霊の行く末は
 煌々と満月が闇夜に浮かぶ。今は青白く、赤黒く映る月。足音以外、鈴虫の音さえ聞こえない。静寂は嵐の前の静けさか。
 『ルゥ・ラーン』と『コーディ』は連れ立ってここへ来た。ルゥが住んでいた頃の元の部屋に。
 コーディは玄関に控え。ルゥは長屋の最奥の部屋へと入った。
 誰もいないように見える、この部屋には『いる』のだ。
 ここには運命の神人との邂逅の夢破れ病死した精霊の地縛霊が棲みついている。
 ルゥは、神棚に酒と月見団子を供える。片手を懐のお守りに添える。不安がないわけではない。けれど、どれほど心強いことか。
 虚空に向かい語りかける。
「秋の夜長。じっくり語り合い、今宵こそ、その魂を輪廻の輪に還してやりましょう」 

 コーディは扉を隔ててルゥの身を案じていた。
 ルゥは耐性があるらしいがコーディはこの部屋には長くいられない。だから瘴気の薄い玄関に控える。
(やばい時は飛び込んでルゥを退避させるんだ)
 懐にあるルゥとの揃いのお守りを確認する。
 霊との対話に何度か立ち合ってきた。抵抗して、なんて強情な霊だと思うが、それ程に神人との縁に執着しているのかと。
 その気持ちは分らなくもない。
 だから考えはルゥと一緒だ。霊が行く最後まで見届けようと。

 最初は僅かな物音、次第に大きく、反響し大きくなる。ルゥの髪をなびかせる。
 黒い霧のような物が揺らめき、飛散と収縮を繰り返す。眼光を爛々と輝かせルゥを見据えた。
 赤い光が弧を描く。再来を待ちわびた、とでも言いそうにも、見て取れた。
 先日のことが頭によぎる。
 しかし前とは違う。私も霊力を取り戻しつつあり、コーディもいてくれる。
 精神を集中する。声なき雑念は先日よりは明瞭に読み取れた。
 渦巻く瘴気から感じ取るのは神人への妄執や孤独や無念や……幾重にも合わさった狂おしい想い。
 哀れだと思う。
 悲しいと思う。
 どうか、安らかに……と思う。だから。
「運命の人に出逢う為には成仏し生まれ変わりなさい。それがウィンクルムの摂理です」 
 ルゥは切々にそう諭す。
 拒絶するように『それ』は蠢き、強風が渦を巻く、ルゥを捕らえようと黒い手を伸ばす。選んだルゥがほしい、と熱望して。
 これまでも諭してきた。いつか声は届くと信じて。それでも諭し続けた。

「ルゥ!?」 
「コーディ……っ。いけません」 
 倒れた物音に弾かれて、反射的に扉を開け放っていた。コーディはルゥに迫る黒い手から庇おうと立ちふさがる。
 ざわり。
 途端コーディは冷水を浴びせられたかのような悪寒が貫く。
『オマエガオレノカミウドニナレ』 
 焦点があわない。コーディの口から、コーディとはかけ離れた声が発せられる。
 乗っ取られた体がルゥを抱締めた。力強く。
 自分の姿をした霊に。ルゥが――
 早鐘を打つ。思い通りに動かない体を目の当たりにして過るのは、激しい怒りと嫉妬。
(僕の体で勝手にルゥに触れるな!!)
 コーディは声にならぬ声で、力の限り叫んでいた。どこからか光が差し、身が震える。
 ルゥの手がその背に回された。
「あなたの求める人は未来にいます。……だから私の愛しい人を解放しなさい」 
 ルゥは今しかないと霊が怯えてるのをみて懐にあったお守りをかざした。

 部屋は静まり返り、気づけば体の自由が戻っている。
「成仏……したのか?」 
「ええ」 
 淨霊を強行してしまったけれど、と前置きしてルゥは続ける。
「最後に『彼』は来世への期待を見出したのでしょう。私達の愛を知って」 
「愛って……」 
 呼んでいいのか……先ほどの想いに、何も言えなくなる。
 ふと、光の在りかを目で追う。
「僕のお守りが淡く光ってる?」 
 ルゥは嬉しそうに微笑む。その手にもお揃いのお守りが。双方のお守りが、恋の花が光っていた。
 コーディはルゥの向ける笑みが照れ臭くて目を逸らした。今は余韻に浸ろうと瞳を伏せた。

 終わりに、霊を偲んで二人で月見酒をする。
 ルーメンとデネブラはいつもの美しい姿をみせている。ウィンクルムになれたからこの月をみれた。
 あの霊も来世でこの月をみれるように願いながら。

●逢えない夜おもい
 草木も眠る深夜に『歩隆 翠雨』は自宅の庭に出た。窓から見えた満月が撮りたくて。
 どこか神聖な満月の輝き。二つの、月か。
 少し冷たい風が吹く。目をつぶり開くと、じーさんから育て俺が受け継いだコスモスの花が風に揺れていた。
 その光景に引き寄せられるように満月とコスモスのツーショットを一枚。月と月光を受け淡く反射するコスモスの白と桃色とのコントラスト。
 絵画のような風景を写真に収める。なかなか良い出来だ。
 けれど。
(一人で見てるのは勿体ないな。こんな時……)
 傍にいてくれたら――。そこに浮かんだのは那音の顔だった。
「起きてないよな? こんな時間だしなぁ……」 
 それでも一度考えてしまった思いは収まりがつかず、「メールくらいなら迷惑にはならないか」と思い直し操作する。
 満月の写真に「綺麗だろ?」と一言添え那音に送った。
 送り終えて一息つく。
(どうして那音にこの景色を共有したいと思ったのだろう? 綺麗だから?)
 心の声だ。そこにはもちろん返事するものはいない。満月がただ、翠雨を照らしていた。
(……それだけではない気がする)
 理由はわからないけれど。

 就寝前。『王生 那音』はいつものように仕事の整理をしていた。
「遅くなったな」と時計を見る。
(翠雨さんは……今頃はもう寝ているだろうか)
 そんなことを自然に考えるほど、今の翠雨のことが気にかかっていた。ここ立て続けに色々あった。閉じていた記憶を思い出した事はもちろん。先日、風邪を引いた件も気にかかる。
 そう思った時に、携帯のメール音が。
「翠雨さんから?」 
 まだ起きてたのか、そう思うも即座に那音は、翠雨に電話を掛けていた。
 
「っ!? 着信?」 
 翠雨は今来るとは思わなかった携帯の着信音に驚き、慌ててボタンに手を伸ばす。画面で、通話相手を確認する。
 喉が鳴る。表示されている、出る人物なんて一人だ。けれど何を緊張しているのだろう。
「……那音?」 
『ああ』 
 確かに那音本人の声だ。電話越しに微笑む顔が見えた気がする。
「よ、よう。まだ起きてたんだな」 
 何でもないふりをしようと思うのに、声が震えそうで。何だかうまく喋れない。
『翠雨さんこそ、随分夜更かしだな』 
「たまには、そんな日もあるって」 
『写真、綺麗だ。今撮ったのだろう?』 
「え。よくわかったな」 
『今夜は満月だったな』 
「ああ」 
 今夜が満月だからわかったのか、翠雨はそう納得して庭から満月を見上げる。

 那音は窓際に少し腰かけて、よく満月をみれる場所を陣取る。
(ルーメンとデネブラ。翠雨さんも同じ月を見ている)
 声は聞こえる。だけれど。
(声だけでは足りない。今すぐに、翠雨さんに会いたい)
 溢れたのは、まるで渇望ような思い。砂漠に水を求める旅人のような。強く、会いたいと思った。
「翠雨さん、今からそちらに行ってもいいだろうか?」 
『え? でもこんな時間だぞ?』 
「貴方と一緒に、この写真の光景を見たい。直ぐに行くから、待っていて欲しい」 
 ひゅっと一度、電話越しに呼吸音が入った気がした。翠雨の声がする。
『俺は……。構わないけど』 
「有難う。それでは後で」 
 通話を切る。気になることもあったが今は一刻も早く逢いたかった。那音は上着を羽織ると急いで翠雨の自宅へ向かう。

(どうしよう……)
 翠雨は庭中を歩いて回り、どんな顔で那音を迎えたらいいか悩んでいた。嬉しいという感情に戸惑う。
 無意識の内に向けられる愛情に蓋をしてきた、翠雨自身には抱えられない未だわからない感情だったから。
 向き合えるのか、と思う。
 どれほど悩んでも答えはまだでない。
「翠雨さん」 
 庭先に届く声。
「っ! ……那音。早かったな」 
 その姿をみつけ、ぎこちなく微笑む翠雨。那音は笑み返す。
 那音の瞳に映るのは、月光を浴びて立つ翠雨。銀の髪と揺らめく水色の瞳が、彼こそが月のようだと思わせた。
 ああ、こんなことを思っては不謹慎かもしれないけれど――
「綺麗だな」 
 思うだけではわからない、声だけでは伝わらない、見て初めて感じられるあなたを。
 綺麗だ、と思った。

●幸せの詰め合わせ
 秋の澄んだ青空に光が降り注ぐ。まるで自分の心みたい、と『ユズリノ』は軽やかに歩を進めた。
 隣には念願が叶って両想いになれた恋人『シャーマイン』が寄り添う。
 目が合う。それだけでも嬉しくて、愛しくて。今日は待ちに待ったペアリングを見に行く日。浮かれないわけがない。

 ジュエリーショップに入る。ショウウィンドウの倍以上の煌めきに、ユズリノは思わず目を瞬かせた。
「これなんていいんじゃないか? 台座に好きな石を嵌めて完成させるリングだ」 
 シャーマインの声に足を止め、覗き込む。「素敵だね」と快く頷く。
「それで、リノは俺の。俺はリノの。相手の石を選ばないか?」 
「え? シャミィのイメージを。僕が?」 
「そうだ。俺もリノが、……俺に何を選んでくれるか見てみたい」 
「う、うん!」僕もそうしたい、と頷く。素敵が倍になったみたい。シャミィに喜んでもらえる石を選ぶぞ、と胸元で拳を作る。

 石探しを暫くして。石を見せあう二人。
「僕はこれ。ターコイズ」 
 ユズリノから空色の石をみせる。
「優しい色なんだけどここの模様が稲妻みたいに力強いでしょ? シャミィの石だ」 
 稲妻か、とシャーマインはしげしげと石を観察する。ターコイズは力強い石というのは聞いたことがあったが。
 石に走る模様を稲妻とは思ってもみなかった。
「ターコイズは好きな石だ。優しくて力強いか。いいな」 
 何よりリノが選んだ石。さらに好きになれる気がした。
「次は俺の番だな」とシャーマインが石を見せる。
「俺のリノのイメージはこれ。ラピスラズリ。夜空に星が瞬いてるみたいな模様だろ?」 
「わあ……本当だ」 
 深い藍色に無数の粒が入ったその石は、まるで――
「いつかリノと見た星空だ」 
 ユズリノの心の声をそのまま読んだかのようなシャーマインの声に、嬉しさが重なる。瞳で通じ合う。
「この透明感のある青はリノを思わせるし。星はリノの笑顔の輝きみたいだ」 
 すぐには何を言われているかわからなくて、かあああああと頬に熱が上る。
「え? ああありがと」 
「……ちょっと恥しいな」 
 二人して照れあった。そんな間に店員さんがカットインをしてくれる。
 完成まで数時間かかるか。
 それを見越したように「行きたい所があるんだ」とシャーマインはユズリノの手を引く。

「ここだ」 
「わあ、人気のケーキ屋だよね」 
 今度は甘い美味しそうなフルーツが乗ったケーキたちだ。栗や芋のスイーツ、今時期のハロウィン風のオレンジや紫に彩られたものがずらりと並べられている。
 ユズリノがケースのケーキに感嘆してるのを横目にシャーマインは店員から予約ケーキを受け取る。
「予約?」 
 その声を聞きつけユズリノが首を傾げる。
「今日はリノの誕生日だからな」 
「誕生日! そうだった」 
 ああ! とユズリノは自分の誕生日だったことに今気づき、シャミィが知っていたことに驚愕する。微笑むシャーマイン。

 カフェテラスで一旦休憩することにした。でも気になるのは。
「ケーキ……見てもいい?」 
 おずおずと懇願するユズリノに、笑うとシャーマインは箱を開けてくれた。上から覗き込む。
「すごい……! 色とりどりの薔薇が綺麗。これケーキなの?」 
「あそこフラワーケーキが評判でな 食べられる花束なんてのもいいだろ?」 
 それでも信じられない。息を飲むほどの繊細な薔薇に手を触れて確かめたくなる。食べれるのが噓みたいだ。
「花言葉も込めてみた」 
「花言葉?」 
(薔薇って……愛の花、だよね)
 またもや、かあああと頬に熱が上がる。
(嬉し恥かしで死にそう)
 ユズリノは茹で蛸のように真っ赤になって、秋風が火照る顔を冷やしてくれる。

 家に帰って誕生日会。ケーキを広げ指輪を嵌め合う。
「生まれてくれて有難う」 
 あんまり優しい眼差しでシャミィが言うから。一生分じゃないかと思うほど幸せだから。
 一粒、また一粒、涙が零れる。幸せ過ぎて泣いてしまった。
「僕だって有難うだよ」
 いっぱいの『有難う』を込めてリノは満面の笑みを浮かべる。まだ暫く、うれし涙は止まりそうもなかった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 紬ゆら
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月20日
出発日 09月28日 00:00
予定納品日 10月08日

参加者

会議室

  • [7]歩隆 翠雨

    2017/09/27-23:14 

  • [6]信城いつき

    2017/09/27-20:17 

  • [4]ユズリノ

    2017/09/26-13:27 

    ユズリノです。
    パートナーのシャーマインと参加します。
    よろしくお願いします。
    街に買物~♪(浮かれている)

  • [3]歩隆 翠雨

    2017/09/24-00:46 

  • [2]歩隆 翠雨

    2017/09/24-00:46 

    歩隆翠雨だ。相棒は那音。
    よろしく!

    秋はいいな。
    食べ物は美味しいし、紅葉の美しさは撮り甲斐があり過ぎるぜ…!
    ワクワクするな!

  • [1]ルゥ・ラーン

    2017/09/23-01:19 

    ルゥ・ラーンとパートナーのコーディです。
    よろしくお願いします。
    秋になりましたか、さて、何をしましょうかね、ふふ。


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