プロローグ
太陽がその色を濃くしながら西の山へと下りていく頃になると、あちらこちらから夕食のいい匂いが漂い始める。赤とんぼを追いかけていた子供たちが、母親の声に呼ばれて家へと入っていけば、後はただただ虫の声が聞こえてくるだけ。
それが首都タブロス市から少し離れたこの村の日常。
しかし、その夜は違っていた。
「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「美味しい芋煮はいかが~!」
しめ縄と紙垂で囲われた広場には提灯が点り、人々の活気のある声が村の入り口まで聞こえてくる。そして、その中心にはススキと里芋、栗や米、そして白い団子が置かれた大きな台が鎮座している。
「思ったよりにぎやかだね。小さい村っていうから町内のお祭りみたいな感じかと思ってた」
「ああ。俺も少し驚いている。……はぐれるなよ?」
今にも走り出しそうな程はしゃぐ神人の横でパートナーの精霊が祭りのチラシを受け取っている。
「ねーねー。最近の屋台は芋煮が流行りなの?」
屋台の中でも特に目立つ『芋煮』の文字に女性が首を傾げる。
「いや、芋煮はこの村の名物の様だ。大昔は神への献上品になっていた時期もある。とここにはあるな」
「え!!ジェンマ様に?!」
「いや、この紙には『神への献上品』と書いてあるだけでジェンマ様の名前はない。大方この地方で信仰されている土地神だろう」
「びっくりした~。あ……驚かせたお詫びにあの屋台の芋煮奢ってよ~」
「お前、ただ食べたいだけだろ?……少し離れた場所に休憩所もあるのか。ある程度買ったらそっちに移動するぞ」
「はーい」
空に浮かぶ満月を見やってから、二人は祭りの喧騒の中へと入っていった。
今日は祭り。
今夜は満月。
屋台を楽しむも良し。
満月を楽しむも良し。
秋の一夜をどう楽しもうか。
解説
・概要
パートナー様と祭りをお楽しみください。
芋煮の屋台が多くある以外はいたって普通のお祭りです。食べ物飲み物に限らず大体の屋台はあるものとお考え下さい。
この村の芋煮は里芋を煮込んだものを指します。購入した場合、屋台で売っている豚汁の様な器に里芋の煮物が入って渡されます。
お祭り会場から少し離れた野原にビニールシートがひかれ、休憩所になっています。
天候は快晴。風は微風程度で、暑くもなく寒くもないお月見に最適の天気です。
エピソードの性質上完全個別描写になります。
・プランについて
屋台を見て回るか、月を眺めるか主に楽しむ方をお選びください。
そちらの描写がメインになります。
・ジェールについて
お祭りを楽しんだので、お一人300Jr消費致しました。
ゲームマスターより
お久しぶりです。または初めまして。龍川那月と申します。
月見とお祭りを一度に楽しもうというエピソードになります。
お祭りの楽しみ方は人それぞれ。屋台巡りを楽しまれるもよし、屋台で買ったものを片手に月見を楽しまれるもよし、最初から月見だけを楽しむのもいいと思います。
皆様の素敵なプランお待ちしております。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
シルキア・スー(クラウス)
【祭りメイン希望】 芋煮~! 漂う匂いにキラキラうきうき 芋煮の屋台沢山あるのね 味付けが違ったりするのかな? あ、あそこ並んでるね あの人たちすごく美味しそうに食べてる 人々の様子観察しほっこり ※良ければ人々や祭りの雰囲気に溶け込む感じ希望です 屋台見て回り 迷っちゃうな シェアね! その手があった 屋台の売り子さんに いいお祭りですね~ と声掛けたり 冒険しようか これでいい? と彼に了承取ったして購入 そして選んだのが 伝統的な味付け(味お任せします) 甘辛の味付け チーズ乗ってる創作味付け みたらし団子 以上一人前づつとお茶だけ二つ おっとっと 落さない様に慎重に持ち運ぶ シートに座り空を見上げ ルーメン…良く見えるね うん いただきます |
アデリア・ルーツ(シギ)
「予定が合わなくて日にち開いちゃったけど」 「埋め合わせになるかしら?」(シギを見てにっこり笑顔 そんな顔しなくたっていいじゃない。(ちょっとむくれる ま、いいわ。(気を取り直す 「何か食べましょ? お姉さんが奢るわよ」 じゃあ、まずはあの屋台で芋煮2つね! 「うん、ほくほくしておいしい」 でも、箸だとちょっと滑るわね。シギは、そんなこと無さそうだけど。 「ううん。箸の使い方上手いなあって思って」 「そうなんだ」あんまり気にしてなかったけど、今度練習しとこうかしら。 空を見上げ、シギを見る。「芋煮ばっかりで飽きない?」 「お腹いっぱいになっちゃうわ」(ぱたぱた手を振って否定 「私、甘酒飲むけど。シギもいる?」おっけー。 |
立花 満(エピヌ・ロジェ)
●月見メイン え、お祭りですか?行きたいです! あの、其なら折角なのでお揃いの浴衣を着たいです、なんて…えっ良いんですかっ そういえば、プライベートで二人でお出掛けするの初めて、かも?ああ、何だかドキドキします。 屋体で冷たいお茶と串団子買いませんか? えっ、持ってくれるんですか。有難うございます(照れ 手?あ、繋ぐんですかっ あ、じゃあ、休憩所の方に行きましょうか どうしよう、ドキドキが治まらない。どうしたのかな? 変に思われて無いかな…… ああ、いけない。見惚れて固まってしまいました。何か言わないと。 あの、今日は誘ってくれて有難うございました……茨の君。 (会話内容等、詳細お任せします。) |
●埋め合わせ→←むずむず( アデリア・ルーツ&シギ 編)
「へえ、芋煮が名物」
一枚のチラシを見ながらシギがそう言って視線を上げる。
「予定が合わなくて日にち開いちゃったけど、埋め合わせになるかしら?」
そんなシギを見て、にっこりと笑顔を浮かべるのは、彼の神人、アデリア・ルーツ。
アデリアが言っている埋め合わせとはこの間二人でした疑似結婚式のことだ。あの時のことを考えると、未だにシギのしっぽは無意識に揺れてしまう。
「だから埋め合わせとか。そんなのいいって言っただろ」
「そんな顔しなくたっていいじゃない」
顔をしかめる精霊にアデリアの顔が少しだけむくれる。両者、一歩も引かないまま、視線を交えていたが、埒が明かないと思ったのかシギが大きく息を吐いた。
「……わかった」
「本当に芋煮の屋台が多いな……」
屋台の半分近くから見える『芋煮』の文字にシギから感嘆の声が上がる。チラシを見て芋煮が名物だとは分かっていたが、ここまでとは思っていなかった。
「にしても……大体、気にし過ぎなんだよ」
視線を逸らして漏らす言葉に、何よぅ。と返すアデリア。
「ま、いいわ。何か食べましょ? お姉さんが奢るわよ」
折角来たんだから目一杯楽しみたいじゃない。と気を取り直して明るい声を出すアデリア。
あの時、隣にいたのが彼でよかったと心から思っているからこそ、あの時、強引に付き合わせたことには申し訳ないと感じているようだった。
「……これだけあるなら、芋煮を食べ比べるのもいいかもな」
少し考えてシギがそう提案する。
「じゃあ、最初にどこがいい?」
良いわね。と同意したアデリア。
「なら、あの屋台の芋煮がいい」
「じゃあ、まずはあの屋台で芋煮2つね!」
すん。と鼻を鳴らしシギが一つを指定した。いい匂いがする。その言葉に、翡翠色の瞳が微笑みで細められる。その瞳に一瞬、指輪眺めていた時の儚い微笑みが重なって、無意識にシギのしっぽが揺れた。
栄えある食べ比べ一つめに選ばれた里芋を口に運ぶと二人の表情が綻んだ。
「うん、ほくほくしておいしい」
「里芋だからか、若干甘いな。これは……醤油味か?」
味を吟味するようにしながらも二人の箸は進んでいく。
「あっちの屋台からは味噌の匂いがする」
黒猫のテイルスだからだろうか、多くの屋台からする色々な匂いの中から美味しそうな匂いだけをかぎ分け、次はあれがいい。と味噌の香りのする屋台を指定した。
「ん。分かったわ。でも、箸だとちょっと滑るわね。シギは……そんなこと無さそうだけど」
つるっと逃げようとする里芋を何とか捕まえながら、そんな気配のない彼がどうやって食べているのか見てみようと視線を向ける。
彼の箸は、同じものを食べているとは思えないほど的確に、里芋を掴んでは口へと運んでいた。
「なんだ?」
注がれる視線にシギの視線がアデリアへと向く。
「ううん。箸の使い方上手いなあって思って」
「まあ、その辺は躾けられたから」
なんだ、そんな事。とでも言いたげな声で、事も無げに言うと、シギの視線は芋煮へと戻っていく。
「そうなんだ」
そう返してから、真似るように里芋を掴んでみる。掴んだと思ったのも一瞬、芋はすぐに逃げてしまった。
(あんまり気にしてなかったけど、今度練習しとこうかしら)
綺麗ではないが、特に変でもない、ごく普通の自分の箸の動きと、隣にいる精霊の箸の動きを見比べ、なんとなくそんなことをアデリアは思った。
空を見上げ、息を吐いてからアデリアはシギを見る。
「芋煮ばっかりで飽きない?」
「別に? 味付けが違う」
三件目の屋台を指定したシギに彼女が問いかけると何でだ?という様な顔と共に、少し不思議そうな声が返ってきた。
「あんたはもう食べないのか」
箸を動かしながら今度は逆にシギが尋ねる。
三件目と言っても一件で、何種類か食べ比べているし、その一種類だって勿論数個入っている。もうお腹の中は芋煮だらけだ。ぱたぱたと手を振って否定するその顔は、もう暫く芋煮はいらない。と書いてあるようだった。
「お腹いっぱいになっちゃうわ」
そうか。そう言いながらも、シギの箸は口の中へと芋を運んでいく。
「何か飲み物は……あ、私、甘酒飲むけど。シギもいる?」
芋煮以外、というよりも食べ物以外の出店を探して辺りを見回すアデリア。甘酒の文字を発見し、彼にも声をかける。
「ん」
丁度芋を口に入れたところだったので、頷いて返すと、『オッケー』というハンドサインが返ってくる。
彼女が屋台の方に消えるのを確認してシギから出たのは大きな溜息。
(隣にいるのが落ち着かなくて食べ比べに走るとか)
あの疑似結婚式以来、彼女といるとむずむずする自分に彼は気が付いていた。いつもではない。だが、彼女のことを考えるだけでしっぽが予期せぬ動きをしていないか心配になってしまうのだ。
落ち着かない心と、それに連動するように動いてしまうしっぽは、パートナーの様子を見るにどうやら誤魔化せているようだった。
(俺何してんだ)
理由が分からないこのむずむず感を早くどうにかしなければ。シギはもう一度深く溜息をついた。
●笑顔と感謝(シルキア・スー&クラウス 編)
「芋煮~!」
祭り会場の入り口。瞳をキラキラ輝かせながら、シルキア・スーが弾む声で屋台群を見渡す。
「ああ 食欲を誘うな」
穏やかな声で同意しながら、人にぶつかりそうになる彼女をさっとかばい回避してやるのは彼女の精霊、クラウスだ。
「ありがとう」
彼の動きの意図を理解したのか、てへ。と、はにかみ笑う彼女にクラウスも優しい笑顔で微笑み返す。二人はどちらからともなく自然に手を繋ぎ、祭りの中に入っていった。
「芋煮の屋台沢山あるのね。味付けが違ったりするのかな?」
「あ、あそこ並んでるね」
「あの人たちすごく美味しそうに食べてる」
祭りを楽しみながら、安堵したような嬉しいような、ほっこりした表情で人々の様子を見る二人。そんな二人の耳に入ってくるのは笛や太鼓の音だった。その音に誘われる様にそちらへ向かうと、お供え台の前に出た。そこで行われている演舞にシルキアの足が止まる。特に急ぐ用があるわけでもない。クラウスも足を止め好きな和文化を堪能することにした。
「神酒をどうぞ」
見事な舞に歓声を上げ、拍手をしていると、近くでたる酒を振舞っていた村人が御猪口を差し出しながら話しかけてきた。
いや、酒は。と断ろうとすると、違う村人がやってきて口を開いた。
「子供も多く来ていますからね。これは神酒っていうジュースなんですよ。気に入ったら買っていってください」
それなら。と受け取るシルキアとクラウス。
「いいお祭りですね~」
「嬢ちゃん、若いのによくわかってるじゃねーか」
シルキアが感想を述べると、少し年のいった男性が上機嫌で村の伝説を話し始めた。
その話によると、先程の演舞は昔、神おろしの際行われていたもので、豊穣の礼と来年の豊作を祈って今でも行われているのだという。
そうなんですか。と相槌を打ちながら、村人と共に笑いあう二人の姿は、いつの間にか馴染み、今夜初めてやってきたとは思えない程溶け込んでいた。
楽しんでってください。そんな言葉に見送られながら屋台回りに戻った二人。
「迷っちゃうな」
「そこまで迷うならば何種類か買うのはどうだ?2人で分ければ量も問題ないだろう」
屋台の間で目移りしながら悩む彼女にクラウスが提案する。
「シェアね! その手があった」
ポンと手を打ち、どうして気が付かなかったんだろう。と続ける彼女の瞳は輝いている。彼の手を引き、気になっていたのだろう一つの屋台へと近づいていく。
屋台の売り子に声掛け、おススメを聞いたりしながら、そこでも悩むシルキア。彼女の探求心がそうさせるのかその表情は真剣そのものだ。
隣にいるパートナーの手には伝統的でオーソドックスな味噌味。甘辛の醤油味が乗っている。
「……冒険しようか。これでいい?」
と指をさすのはチーズが乗ってる創作味付けの芋煮だった。
シルキアは先ほど買った味噌味と醤油味の芋煮の他にみたらし団子が、クラウスはお茶が2つと先ほど冒険したチーズの乗った創作芋煮をそれぞれトレイに乗せ休憩所へと移動することにした。見た目だけではクラウスにもどんな味か想像もつかない。それが逆に和食好きのクラウスの興味をひいたのだ。
薄暗い足元に気を付けながら慎重に歩く二人。シルキアの方が足がおぼつかないところを見て、手分けの仕方はこれで正解だったとクラウスは感じていた。彼自体はお茶が零れることに何か感じるわけではないが、あまり零すとシルキアが責任を感じかねない。
「おっとっと」
助け合いながらシートにゆっくりと座り空を見上げると、南で青白く輝くルーメンと対比するように北で暗く輝くテネブラ。明と暗二つの満月が二人を見下ろしていた。
「ルーメン……良く見えるね」
「テネブラは夜空に溶け込んでいるようだ」
趣を感じさせる対比だと純粋にクラウスは感じた。契約を行った神人と精霊以外には見えないテネブラではあるが、見上げればこうして静かに人々を見守っている。普段はそんなに気にしないことだが、今夜の人々の笑顔を思い返しそのことに心から感謝したい気持ちになった。
視界の隅で彼女が祈りの構えを取るのが見えた。シルキアも同じ気持ちだったのかと、クラウスもそれに倣った。
「私達を見守ってくださりありがとうございます」
囁くような祈りの言葉が聞こえる。穏やかな声が鼓膜を揺らすのを聞きながら、彼は心の中で同じことを祈った。
瞳を開いたのは、同じタイミングだった。顔を見合わせると互いの言いたいことが通じ合った気がして二人は微笑む。
「では感謝を込めて頂くとしよう」
「うん。いただきます」
やはり同じことを考えていたんだな。そんなことを言いあいながら、月とぼんやりと灯る提灯の下、二人は手を合わせ神への献上品を頂くことにした。
●初めてのお出かけ(立花 満&エピヌ・ロジェ 編)
「ミツ、お祭り行かない?」
エピヌ・ロジェがパートナーの立花 満にそう声をかけたのは、暑さもひと段落したある日のことだった。
「え、お祭りですか?行きたいです」
一瞬の驚き。その後の声だけでなく表情や仕草からも心から喜んでいるのが分かる。
「あの、其なら折角なのでお揃いの浴衣を着たいです、なんて……」
いつか着れたらいいなぁとしまってあったウサギ柄の浴衣。でも、流石にお揃いで着るのはダメかなと思いながら、おずおずと満は提案する。
「浴衣……お揃いの?良いよ。着ていこう」
「えっ、良いんですかっ」
予想外の答えに彼女の声が裏返る。今日はどうしたんだろう。そんな気持ちと純粋な喜びで満の胸はいっぱいになる。
(そういえば、プライベートで二人でお出掛けするの初めて、かも?)
出かける準備をしながら、ふと重大なことに満は気が付いた。初めてのお出掛けがお祭り。しかもエピヌさんから誘ってくれた。
「ああ、何だかドキドキします」
薄く染まる頬を押さえながら満はそう呟いた。
「屋台で冷たいお茶と串団子買いませんか?」
せっかくお祭りに来たのだし何か食べたいです、と提案した満。エピヌが頷けば早速、近くの屋台へ。
「ああ、それは僕が持つからミツは良いよ」
「えっ、持ってくれるんですか。有難うございます」
屋台の人がサービスだからとたっぷりたれをかけてくれた串だんごのお皿とお茶のカップが二つ。浴衣を汚さずにどう持つべきか考える満の手からお皿とカップが一つ精霊の手に渡る。
照れた表情ではにかむ彼女の前に細くすらりとした手が差し出された。
「其より、手貸して」
手?と少しだけ首を傾げながらも掌を彼の方へ出す満の手にエピヌの手が重ねられる。
「はぐれない様に繋いどこ」
「あ、繋ぐんですかっ」
予想外の展開に動揺する彼女。
「ふふ、顔真っ赤だね」
優しい声ながらも少しだけ揶揄う様な口調に、どんな表情をしたらいいのか分からない満は辺りに視線を巡らせる。
「あ、じゃあ、休憩所の方に行きましょうか」
満が見つけたのは『休憩所はこちら』の看板。その先は野原になっているようで月明かりにススキが揺れるのが見える。
(どうしよう、ドキドキが治まらない。どうしたのかな?)
ビニールシートの上に腰を下ろし、離れた手。それでも落ち着かない鼓動にびっくりしたのかもしれないと何度かお茶を口にしたが、心臓はちっとも静かになってくれない。それどころか早くなっているような気もする。
(変に思われて無いかな……)
そっとうかがう様にカップから移した視線の先にはっと息をのむ。
エピヌはいつもの儚げな雰囲気はそのままに、銀糸の髪と、同色の瞳が青白い月明かりに照らされ煌めいていた。その姿は月の精霊か何かと見紛う程神秘的だった。見惚れるという言葉はこういう時の為にあるんだろう。呼吸すら忘れそうになる程、綺麗な自分の精霊に満の体は固まっていた。
「どうしたの?」
視線に気が付いたエピヌが満に微笑みを向ける。芸術的に綺麗な笑顔だった。
(ああ、いけない。何か言わないと)
「あの、今日は誘ってくれて有難うございました……茨の君」
あまり見ているのは変に思われるかもしれない。ともう空になってしまったお茶のカップに視線を戻し、何とか言葉を紡いだ。いつもと同じ声音になるように、言葉遣いが変にならないように。
『茨の君』いつもは『エピヌさん』と呼ぶ満が時々使うその呼び方。そこには強い憧れが込められている。
「ん?うん。どういたしまして」
エピヌの表情を見るに変に思われてはいないようだった。そして、二人の間に静寂が戻る。
あまり無言でいるのも変かもしれないと、高まる心臓の音を誤魔化すように再び満は口を開いた。それは、ウィンクルムとしての活動以外の時間何をしているのか。であったり、好きな食べ物であったり、俗に雑談と言われるそれだったが、エピヌも存外楽しそうに口を開き、二人は多くの言葉を交わした。
「こうしてプライベートで出掛けるのも良いね」
さて帰ろうという段になってエピヌがしみじみとした声で言った。
「沢山話が出来る」
楽しかったよ。そんな言葉に満は頷いた。最初こそ誤魔化すために口にした話題ではあったが、話す度に今まで知らなかった相手のことを知ることが出来たし、純粋に会話を交わすのは楽しかった。
また一緒にどこかへ行きたい。そんなことを考えながらも歩く道は、あっという間に過ぎてしまった。
もうお別れか。もう会えないわけではない、それは分かっているのにすこし寂しい気持ちになる自分を感じながら、おやすみなさい。そう言って頭を下げる満。頷きと共に同じ言葉を返し、小さく手を振るエピヌ。いつもはこれでそれぞれの家に戻るのだが、今日はそうならなかった。
「また、何処か行こうか?」
お休みのあいさつの代わりに聞こえたのは、次を暗示させる言葉。
一瞬、驚いた満だったが、その顔にはすぐに嬉しさが溢れた。そしてそのまま首を縦に振った。
次のお出かけはどこなんだろう。そんな事を考えながら家路を一人歩く満の寂しい気持ちはどこかへ消えていた。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | 龍川 那月 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 09月03日 |
出発日 | 09月11日 00:00 |
予定納品日 | 09月21日 |
参加者
会議室
-
2017/09/10-12:26
シルキアとクラウスです。
よろしくお願いします。 -
2017/09/08-21:28
アデリア・ルーツよ。
よろしくね。
月見もいいけど、屋台巡りも楽しそう。
どうしよっかなー。 -
2017/09/06-12:49
エピヌさんに誘って貰いました。二人で行きます。