【神祭】とりかえっこかき氷!(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ


 女神ジェンマが希望の樹と融合を果たしました。
 それを受けて、愛の力を供給するために、フェスタ・ラ・ジェンマが開催されています。
 首都タブロスでもそれはかわりません。

 あなたたちは夏休みを利用してパシオン・シーに来ています。
 色とりどりの鮮やかな花が咲く南国の海を楽しんで、海の家に戻ってきた神人と精霊。
 その海の家はとても綺麗で新しく、今風で、フードコートのような店構えで外に大きなパラソルを並べ、その下に白いテーブルと椅子を置いています。

 そんな設備の新しい海の家に戻っていったあなたたちは、かき氷の旗に気がつきました。 暑い日射しを受けて、あなたは海の家のかき氷を食べようと思い、カウンタに向かいました。

「いらっしゃい! ここのかき氷は特別だよ!」
 満面の笑みでおじさんの店員がそう答えます。
「特別?」
「自分で好きなものを氷に乗せて、好きなシロップをかけて、大事な相手に渡すんだ! 何か一言添えてな! その一言はお礼でも謝罪でも告白でも、冗談だってOKさ!!」
「どんなものを乗せてもよくて、どんな事を言ってもいいの!?」
 あなたはびっくりです。

 見ると、ガラス戸の下にかき氷の様々な例が食品サンプルで置かれています。
 それに、店員さんの手元には本当に何でもアリと言った感じのフルーツやシロップやお菓子が。

 ふわふわのかき氷の上に様々なフルーツをたっぷりと乗せ、和風の寒天と餡子も麗しく、優しい練乳をかけたしろくま。
 ふわふわかき氷をアイスに見立て、フルーツパフェのようにフルーツをカラフルに飾り付けてチョコやアイスやクリームでボリュームを作った甘く楽しいかき氷。
 宇治金時に抹茶アイスと、黒豆、白玉をトッピングして練乳をかけた宇治時雨。
 その他、氷にミルクときなこをかけたり、アイスコーヒーを凍らせてかき氷にしてみたり、苺羊羹や白小倉餡を使って和風パフェかき氷にしたり、実に様々なサンプルがあります。
 フルーツのシロップも、レモンやメロンや巨峰と言った定番から、京番茶やチョコレートシロップなんてものも。
 まるでパンケーキに盛りつけるようにマンゴーとアップルをてんこもりにしたり、グラスにかっこよくデトックスウォーター風に氷とシロップを盛りつけたり……。
 かと思えばかき氷に苺シロップをかけただけにしか見えないものもあります。
「これは?」
 あなたが尋ねると店員はすぐに教えてくれました。
「超高級ミネラルウォーターに、一箱1000Jrの苺から作った苺シロップをかけたものだ。時間はかかるけれど、そういう要望にもお応えずるぜ!」
 おじさんは自信ありげに親指を立てています。
 本当に何でも、好きな具材を使って自分の思い通りのかき氷を作ってくれるそうです。
「ただし、お代はしっかりしていて、一つ300Jrするけどな!」
 なるほど。しかし、楽しそうです。

「それも自分の大切な相手、恋人や相方を思って、彼が美味しいって楽しんでくれるようなかき氷を作るんだ。そしてメッセージを添えて。メッセージは口で言うのが恥ずかしいなら、そこにメッセージカードがあるぜ。オシャレだろ?」
 メッセージカードは、クリスマスカードのようなカラフルなものでしたが、そこに描かれているのはデフォルメされた女神ジェンマとジュリアーノでした。なかなか可愛いです。


「どうだい、せっかくパシオン・シーまでお祭りで遊びに来たんだ。ちょっと趣向の違ったかき氷を楽しむってのは?」

 なるほど……。
 さあ、あなたと精霊は、とりかえっこかき氷に挑むでしょうか!?

解説

【解説】
※かき氷一個で300Jrです。
※メッセージカードを使っても、アイテムとして増える事はありません。

神人が精霊を、精霊が神人の笑顔を想像しながら、相手の好きそうなかき氷を作ってください。具材やシロップ、氷は何でも好きなものを使って構いません。ただし、魔法効果が追加されるようなものは避けてください。

それを、メッセージを添えながら相手に手渡してください。メッセージの内容は告白やプロポーズ、お礼、謝罪、日頃の感謝や日頃思っている事、なんでもOKです。

かき氷を作って交換し、メッセージを送って、相手がどんなリアクションを返したかまでをプランに書いてください。
場所は海の家から、真夏のパシオン・シーの浜辺周辺などです。

精霊と神人のかき氷交換が望ましいですが、精霊一人、神人一人のプランも受け付けます。
真夏のおいしい思い出をどうぞ!


ゲームマスターより

猛暑の日々が続きます。みなさんお元気ですか?
暑い夏の午後やアイスやかき氷で癒やされたいものですね。
ウィンクルムのみなさんにも、自分の思い通りのかき氷を楽しんでいただきたいものです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  グレープフルーツジュースの氷を削ってシロップ代わりのジンジャエール
カラメル色のシュクル・フィレとミントを添えて

今日みたいな暑い日は炭酸の口当たりがすっきりして喜んでくれるでしょうか

メッセージカード
来月の9日は楽しみにしていてくださいね

天藍のお誕生日でしょう?
腕によりをかけてお祝いのお料理作りますね

一緒に暮らしている今、去年までのように天藍のために料理を作る事は特別ではなく日常になってしまっているけど
1年に1日限りの特別な日だから、天藍が喜んでくれる事が出来たらと思っている

7日?
言われて自分の誕生日を思い出す
特に何もなくてもと思うものの、思っている事は同じと言われて納得
はい、楽しみにしていますね


マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
  かき氷を見てドキリ
赤いシロップに白と赤とピンク色の薔薇が乗っている
※補足 白バニラアイス 赤木苺ジェラート ピンク特製苺アイス

 薔薇…!

 その…花言葉でしょうか
 
 はわわ…あ、ありがとうございます(胸熱)
 …嬉しいです…赤い色が眩しい…ふふ

 特製苺素晴らしいです
 すごい贅沢…(うっとり見惚れ

「きみのは?」と振られ は!

 わ、私からはこちらになります(ススと前に出し)

 はい
 チャイをたっぷりと掛けております
 お好みでシロップを掛けてお召し上がりください! 

 ユリアン様はご自身をクマに見立てる事がありますが
 その…私はキツネのイメージだとつねづね思っておりました

 『賢く気高い美しいキツネ』です
 悪戯は時々(くすっ)

 はい とりかえっこです


●かのん(天藍)編

 フェスタ・ラ・ジェンマ期間のある日、かのんと精霊の天藍は、パシオン・シーの浜辺を訪れました。
 鮮やかな青の海で一泳ぎした二人は、海の家に戻ります。海の家と言ってもオシャレなその建物はとても清潔で、フードコートのような設備を整えています。
 かのんと天藍はその中のかき氷屋へ入り、とりかえっこかき氷を楽しむ事にしました。
 かのんが天藍のために頼んだのは、グレープフルーツジュースの氷を削ったかき氷でした。シロップのかわりにジンジャーエールをかけます。カラメル色のシュクル・フィレとミントを添えて完成です。
(今日みたいな暑い日は炭酸の口当たりがすっきりして喜んでくれるでしょうか)
 そんなことを考えながら、かのんはメッセージカードを選びます。
 デフォルメされたジェンマとジュリアーノの可愛い絵がついたカードに、思っていた事を書いていきます。

――来月の9日は楽しみにしていてくださいね。
天藍のお誕生日でしょう?
腕によりをかけてお祝いのお料理作りますね――

 かき氷とカードを渡しながらかのんはゆっくりと微笑んで、天藍との愛情を噛みしめています。
 一緒に暮らしている今、去年までのように天藍のために料理を作る事は特別ではなく、日常の事になっています。
 けれど、一年に一日限りの特別な日だから、天藍が喜んでくれる事が何か出来たらと思っているのです。

 天藍がかのんのために作ったのはミルク味の氷にヨーグルトソースをかけたものです。それに色とりどりの果物をたっぷりと添えています。
(かき氷本体が甘いからソースと果物で口当たりをさっぱりさせたら喜ぶだろうか)
 天藍の方もかのんを思いやり、色々な事を考えています。
 天藍はカードではなく自分の口で、かのんに思いを伝えました。
「来月の7日は空いているか?」
「7日?」
 かのんは目を瞬いて聞き返します。
「かのんの誕生日だろう? お祝いがしたいから、夜は予定を入れないでもらえると嬉しい」
 天藍に言われて、かのんは自分の誕生日を思い出しました。
「特に何もなくても……私は天藍といられれば」
「かのん、俺も、お前に思っている事は同じなんだ」
 そう言われてかのんは納得しました。
「はい、楽しみにしていますね」
 天藍は苦笑します。
 翌々日の天藍の誕生日の事を考えているからなのでしょうか。
 自分の誕生日を忘れているのは、かのんらしいと思います。
 お祝いをしたいと思う気持ちは同じだと思うから、その日のためにかのんが色々考えてくれる事が嬉しいのです。
「9日の当日は俺も手伝う」
「いえ、天藍は居間でゆっくりしていてください。誕生日ぐらい休んで」
 二人はしばし言い争いました。
 仲の良い痴話げんかです。
 結局、折衷案で、天藍は傍で料理の様子を見ている事になりました。
――それだけで俺は、十二分に幸せだから。
 天藍はそう思うのです。

 二人はしばらくの間、心地よい沈黙を楽しみながらかき氷をすくって食べていました。
 ふと、かのんが笑いをこぼしました。
「かのん?」
「……三年ほど前に、ビーチバレーをしたことがありましたね」
 天藍はびっくりしました。
 確かに、かのんとパシオン・シーのゴールドビーチでバレーをしたことがあります。かのんが思い出したのは不思議ではありません。
「ああ、5兄弟と戦ったな」
 天藍も微笑んで答えました。
「あのときは、天藍があんなに怒るなんて思いませんでした……さらし首なんて」
 かのんはくすくす笑っています。
 本当にさらし首にした訳ではありません。5兄弟の長男レッドを首と右手だけ出して砂に埋めてしまっただけです。
「ああ、人の神人を目の前で口説くなんて……。もっとやってやればよかった」
 かき氷にスプーンを刺しながら天藍は不機嫌な表情。まだ怒りを感じているのでしょうか。
「天藍があんなに怒ったのは……私のためなんですね」
「そうだ」
 あのとき、かのんは、普段と違うキスをしたのです。
 それまではトランスのための頬へのキス。
 けれどあのときは、トランスとは関係なく、ただ天藍の行動への嬉しさでキスをしました。
 そのときの気持ちを思いだし、懐かしさと愛しさで、かのんは胸がいっぱいになります。なんだか暑くなってしまって、かのんは天藍のかき氷を口に含みます。
 ひんやりとした冷たさとともにミルクとフルーツの甘い味が口いっぱいに広がり、それはなんだか、天藍が常に自分に向けてくれる感情を想わせました。
「あのとき、だったな。かのんが俺に、本当のキスをくれたのは……」
 天藍も同じ事を思い出したらしく、懐かしそうに笑いながら甘い眼差しをかのんに見せました。
「はい。天藍からも……」
 かのんは恥じらいながらも落ち着いた様子でそう答えました。
 かのんからのキスの後、天藍が肩を抱いてくれたこと。キスを返してくれたこと。まるで昨日のように思い出します。
「あのとき、本当に私を特別な意味で守ろうとしてくれているんだと分かって……嬉しかったです」
「あのときにならなければ、分からなかったのか?」
 おかしそうに笑いながら天藍が言いました。
「そ、そういう意味では……。からかわないでくださいっ」
 かのんは耳を赤く染めて答えました。
「そういえば、二年前にもパシオン・シーには来たな。テレビの撮影で、カフェ・バーに入って」
「ああ、そんなこともありましたね」
 かのんは天藍が話題を変えてくれたので、ほっとした表情を見せました。
「カップルコーデで選んだ水着で行ったな」
「はい、そうでした……。あのときは、天藍がパーカーで私を包んでくれて」
「かのんが、花のブレスレットを俺につけてくれたんだったな」
 二人は顔を見合わせて、笑顔をかわしました。
 あのときは、かのんは天藍が選んでくれた水着を身につけていました。紺地に花柄の水着。そして白に薄青とピンクの南国の花の髪飾りとブレスレット。
 天藍の方はかのんが選んだ濃紺と黒のサーフパンツに、シンプルな革のブレスレットでした。
 天藍はかのんの水着は嬉しかったのだけれど、やはり他人に見られたくはありませんでした。だから自分のパーカーで体を隠してしまったのです。
 そんな天藍にかのんも独占欲を見せて、ブレスレットをつけました。
 そのあと、二人は、カフェ・バーでぴったりと寄り添っているところを撮影されたのでした。かのんは本当に恥ずかしかったのです。けれど、天藍の反応は違いました。
「おおっぴらに『かのんは俺のものだ』と他の輩に示せる折角の機会だったしな」
 彼にとっては全く問題のない事だったようです。
 その後、熱冷ましに月明かりの海辺を歩きました。
 輝くルーメンとテネブラの下、さざ波の打ち寄せる砂浜の上。二人きりでゆっくりとそぞろ歩き。
 月明かりに照らされて、息を飲むほど美しかった恋人の横顔……。

――かのん、好きだよ。
――私も、貴方が──好きです
――かのんの言葉は……月の光みたいだな

 パシオン・シーには二人はたくさんの甘い思い出を持っています。
 そのことに気がついて、暑さに溶けそうなかき氷を前に、なんとなく苦笑します。
 今年もまた、二人だけの思い出が増えたのですから。
「かのん。来年も再来年も、来ような。パシオン・シー」
「ええ、天藍と一緒ならば」
 お互いの気持ちのこもったかき氷を食べながら、また笑顔。
 冷たく甘いかき氷の味とともに、二人の間に透き通った甘い感情が駆け巡っていきます。
 ずっと、ずっと、彼と一緒。彼女と一緒。
 お互いの気持ちを確かめ合い、交換しあいながら。
 お互いの笑顔を守るために。

●マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)編

 フェスタ・ラ・ジェンマ期間。
 マーベリィ・ハートベルとその精霊のユリシアン・クロスタッドは、パシオン・シーを訪れました。
 おしゃれな海の家では、設備の整ったフードコートさながらの空間があります。そこには大きなかき氷屋があり、好きなかき氷を頼んでプレゼントしあうことが出来ました。
 ユリシアンは浮き輪に乗ったマーベリィとひとしきり泳ぎを楽しんだ後、一休みをしにかき氷屋へやってきました。
 面白そうだと思い、とりかえっこかき氷に挑戦します。
 二人はそれぞれ相手の笑顔を想像しながらかき氷を作ってもらい、テーブルに着いてお互いのかき氷を見せ合いました。
「僕のはこれだよ」
 マーベリィはかき氷を見てどきりとします。
 白い雪のようなかき氷の上には赤いシロップがかけられ、白と赤とピンク色の薔薇が乗っていました。
 白はバニラアイス、赤は木苺ジェラート、ピンクは特製苺アイスです。
「薔薇……!」
「その反応は察してくれたのかな? そう。三つの言葉を繋げるとこう。『尊敬と情熱の愛を捧ぐぼくの可愛い人』」
 ユリシアンはにっこりと笑います。
「シロップ含めて全体的に僕の情熱の色を表してみたよ。シロップも特製苺だよ。苺好きだったよね」
「特製苺、素晴らしいです。すごい贅沢……」
 マーベリィは思わずうっとりと見とれてしまいます。
 実際にマーベリィは苺がお気に入りで、今もイヤリングとして身につけているのです。
「きみのは?」
「は!」
 マーベリィはユリシアンに振られて我に返りました。
「わ、私からはこちらになります」
 マーベリィはスススと自分の作ってもらったかき氷をユリシアンの前に差し出しました。
 ユリシアンはそれを見てピンと来ました。
「紅茶だね?」
 彼は目をきらきらさせています。
 ユリシアンはマーベリィの入れる紅茶が何よりも楽しみなのです。かき氷は彼女が作っている訳ではないのですが、それでも、自分の好みを把握してくれているのが嬉しいのです。
「はい。チャイをたっぷりと掛けております。お好みでシロップを掛けてお召し上がりください!」
 マーベリィは意を決して勢いよく言いました。
「いいね。ん? クッキーが添えてあるね。ウサギはきみだね…もう一つはキツネ?」
 ユリシアンが不思議そうな顔をすると、マーベリィは普段から思っていた事を告白しました。
「ユリアン様はご自身をクマに見立てる事がありますが、その…私はキツネのイメージだとつねづね思っておりました」
「狡賢くて悪戯なキツネ?」
 ユリシアンはちょっと心外そうです。
「『賢く気高い美しいキツネ』です。悪戯は時々」
 マーベリィはくすっと笑いました。
「そういう事ならキツネも悪くないね。可愛いウサギちゃんにはつい構いたくなるのさ」
 ユリシアンもくすっと笑い返しました。
「それじゃとりかえっこだ」
「はいとりかえっこです」
 二人は仲良く、作ってもらった特製のかき氷を取り換えました。
「んーうまい!」
 紅茶の味にユリシアンは満足顔です。
 二人はしばらく、お互いのかき氷へと舌鼓を打ちました。
 ユリシアンは美味しそうにかき氷を食べるマーベリィの小動物のような仕草に、それだけで幸せな気持ちです。
「あ……」
 ですが、ユリシアンはそのとき、彼女の頭に気がかりな事を見つけました。
 青い蝶の髪飾りです。
「どうしました?」
 マーベリィは自分の頭をじっと見つめているユリシアンの視線に気がついて、スプーンを止めました。
「マリィ、その髪飾り、ずっとつけていたんだっけ?」
「え、……はい」
「そういえば出会った時もリボンを身につけていたよね。あのときは君は緊張でとても小さくなっていて……懐かしいな」
「あ、はは、はい」
「僕は、こんな可愛い女の子のナイトになれた事を心から神に感謝したよ。でも……」
 ユリシアンは、マーベリィの頭の髪飾『蒼恋蝶』を見つめました。
「その髪飾りは、実らない恋の象徴だろう。恋愛成就を助けるっていう……。恋がかなうと蝶が飛んでいくっていうよね。僕らは両思いになったのに、その髪飾りの蝶は飛んでいかないんだね」
「そ、そそそそれは、これはこのっ……」
 マーベリィは慌てて頭の髪飾りに手をやり、それからどうしていいか分からずにちょこまかと体ばかりを動かしました。
「慌てなくていい。責めている訳じゃないから。僕らは晴れて両思いなんだから、細かい事は気にしないよ。ただ、あのリボンをつけていた小さい女の子が……僕の愛しい恋人になったんだな、って感慨深かっただけさ」
「は、はい……」
 マーベリィはユリシアンのてらいのない笑顔を見て、やっと落ち着きを取り戻しました。
 ですがまだ赤くなって様子を窺っているようです。
 ユリシアンは思い返します。いつだったか、リボンに合わせて衣装を選んでもらった時……。あのときには、既にユリシアンの心はマーベリィにありました。いつまで主従関係が続くのかと思っていたけれど。
 だけど、今は。
「紅茶と言えば、ハイネ村のハーブティは美味しかったね。カミルレだったか……。マリィとは色々なところへ行ったね。このパシオン・シーは初めてだったかな」
「ああ。ハート型に置かれたカミルレが素敵でした。それに宝石のようなお砂糖やクッキーや……」
 マーベリィはハイネ村でのバレンタインを思い出してうっとりしています。
 ウィンクルムとして向かったハイネ村。
 主従関係ではなかったけれど、それでも、マーベリィは心の中で旦那様と呼んでいました。
「あのカモミールティも美味しかったけれど、家に帰ってからマリィが入れてくれた紅茶が僕には一番だったよ」
 ユリシアンが何の躊躇いもなくそう言うと、マーベリィは嬉しそうでしたが、やはりはにかんで黙り込んでしまいました。
「知っていた? 僕はあのとき、君からのチョコを待ち焦がれていたんだ。マリィは気がつかなかったね」
「ゆ、ユリアン様はたくさん貰っていらしたから……私なんか」
 自信なさそうなマーベリィに、ユリシアンは苦笑いするしかありませんでした。
「私なんか、じゃないだろう。僕達は疑似とはいえ、挙式もすませているんだ。僕が生涯愛する人は君だよ、マリィ。家に帰ったら、また、紅茶を入れてくれるね」
「はい、ユリアン様」
 マーベリィは幸せそうな笑みをこぼします。
 彼に選んでもらった苺の薔薇を頬張りながら。
 思い出すのはバージンロードを踏みしめた時の高揚。
 信じられない言葉を語ってくれたユリシアン。

「かわいい所作で、いつもぼくを和ませてくれるきみ。共に居たいと願った、こんな無茶なお願いも、頑張って聞いてくれようとするきみ。ぼくのために毎朝おいしい紅茶をいれてくれるきみ。こんなにも、ぼくを癒してくれるひとは、マリィ以外に考えられない。ぼくが生涯、愛する人は――マーベリィ・ハートベルだけだと、誓います!」 

――夢みたいだ。夢で、終わらせない。……これからも、よろしく。

 夢で終わらせたくないから、努力するのでしょう。
 マーベリィの好きな苺を忘れず、乙女心をくすぐる薔薇の花で愛を語り。
 マーベリィが紅茶の気遣いを見せてくれる事にすぐに気がついて。
 彼女が自信をもって自分に向かい合ってくれるように、努力を続けるのです。
 そのことに、マーベリィは気がついて、幸せに目を潤ませました。
 ちなみに苺の花言葉は、尊敬と愛、あなたは私を喜ばせる、誘惑、無邪気、清浄、甘い乙女心――幸福な家庭。
 二人の努力の先は、愛する人との幸福な家庭なのかもしれません。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月18日
出発日 08月25日 00:00
予定納品日 09月04日

参加者

会議室


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