真夏の海の球技大会!(東雲柚葉 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 夏。
 今年も、この暑い季節がやってきた。
 ここパシオン・シーにもたくさんの海水浴客が賑わい、ウィンクルム達の楽しんでいる姿も見受けられる。
 波の音に、和気藹々とした人々の笑い声、屋台の活気ある呼び込み……。
 そして、バシンバシン、と何かがぶつかる音が聞こえる。
 何事かと、そちらを振り返ると、先にはビーチバレーをしている人々の姿があった。仲良く楽しそうに、キャッキャッとやっているのかと思えば、そのまなざしは真剣そのもの。
 見れば、ビーチの一角で球技大会を行っているようだ。
 種目はビーチバレーに、2on2のストリートバスケ、チャンバラ(頭に付属するカラーボールの形をした水風船が球技として扱われている模様)の3種目となっており、白熱した戦いが繰り広げられている。
 一般人はもちろんのこと、どうやらウィンクルムの参加も受け付けているらしい。身体能力が高い精霊が参加するのはやや気が引けるが、一般参加している者の中にはプロや、プロ顔負けの実力者も混ざっているようで、勝負にまったくならない、というわけではなさそうだ。
 水着での競技ということで、観戦客もかなり多く大盛り上がり。
 試合に勝つと海の家の絶品カキ氷やソフトクリームを半額で提供してもらえるということで、皆試合に熱が入っている。

 さて、球技大会へ参加してみるのも面白そうだ。
 あなたは、そう思って、パートナーと共に受付へと足を運んだ。

解説

◆概要

パシオン・シーで開催している、球技大会へ参加する、というエピソードとなります!


◆種目とルール

・全体のルール
水着の着用をしている状態での参加のみが認められます。
また、水着のため身体接触を強く行うラフプレーなどは一発退場です。

・ビーチバレー
整備された砂浜で、ほぼ無風状態での試合になります。
ビーチバレーのルールに基本的に準じます。
※2対2となることが予想されますが、他のウィンクルムと一緒に参加でも問題ございません。
 その場合は、プランへご記載をお願いします。

・2on2バスケットボール
2対2でのバスケットボールの試合を行います。
地面は弾力性のあるマットですが、水着で転ぶと怪我の原因となるため、
激しいディフェンスはラフプレーとみなされます。
※カット、ブロックはあまりに激しくなければセーフです。
※ウィンクルムで、1on1を行うことも可能です。

・チャンバラ
頭・臍の上、利き手の甲に水の入った水風船をつけ、やわらかいおもちゃの刀でチャンバラをします。
先に3つの風船を割った者が勝者となります。
※ウィンクルムで、1対1の戦いをすることも可能です。


◆参加費

・参加費として、300jrを消費します。


◆その他

・カキ氷、ソフトクリームを食べる描写は希望制です。特に指定がなければ、球技のみの描写となります。


ゲームマスターより

お久しぶりです~~!
東雲柚葉です!

暑い季節ということで、海水浴に行こうとした当日に大雨で電車が止まりました……。
不運の後には幸運があるということで、次の日程調整をしています!

今回は、海水浴で球技大会というエピソードです!
真剣に遊ぶも良し、二人で楽しく遊ぶも良し! 状況に合わせてお楽しみください!!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

水田 茉莉花(八月一日 智)

  …また始まった
食べ物の事になると見境無くなるんだからほづみさんってば
しかも食べ放題じゃなくて半額なんだけど…ま、いいか

本気出すのは良いですけど、作戦はあるんですかほづみさん?
やっぱり…で、これはあたしの提案なんですが
あたしが囮兼盾になって
その後ろからヒット・エンド・ランでほづみさんが攻撃ってのは如何ですか?
ええ、ほづみさんがちびだからできる技ですよ(ニヤリ)
方向はランドマークで指示しますからね

ほづみさん、観客席方向から来ます!…いったっ、頭の風船は無事かしら?
もーほづみさん背中がら空き…えいっ!
次、屋台方向!(死角カバーで動く)

あはは、ほづみさんらしいというかなんというか…(抹茶小豆もぐもぐ)


シルキア・スー(クラウス)
  タンキニ水着
スポーツスキル2
ビーチバレー希望
真剣勝負受けてくれるペア(NPC)希望

いざ試合
「丁度体動かしたかったのよ いざ真剣勝負!」
もやもや吹き飛ばしたい つい力んだプレーに
例→勢い余り顔から砂に突っ込むとかアタックが跳ね返って顎に当ったり
そんな不調に迷いが出て動けない時彼が飛び込みレシーブしてくれた
はっとして 2人で戦ってるんだ 覚醒
「うん クラウス 私やるから!」
声出して気迫のプレー
声例→だああっ はいぃ うりゃっ
好プレイに よっしゃああ! 彼と拳合わせ喜ぶ
プレー内容勝敗お任せ
終って彼と健闘喜びハグ 相手にも挨拶

浜辺で彼とかき氷食べつつ 遠く海見据え
「ごめんね ちゃんと前向くから」
そっと彼に寄り添う
「ありがと」


マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
  わ、私あのその(真赤
あ、ありがとうございます
私じゃ絶対こんな可愛いの選べませんでした
ビキニだけど可愛いフリルが程よく体を隠してくれるデザインなので許容範囲
彼には私の好みがお見通し?

は、はい お供いたします!
いえ、やります!

チャンバラ戦
つい握り拳で彼の応援
行けます!
素敵です!

私の番
遊戯ではあるけど私…勝ちたい
彼の期待に応えられる私になりたい
彼が手を振って応援してくれてる
強く頷いていざ勝負
運動は得意ではないけど相手の剣を避けたり剣で弾いたり見切って当てに行く戦法でいきます
内容勝敗お任せします

抱締められあわわと慌ててしまう
けど今までと違う関係になった事も実感
だって彼が髪やおでこに祝福のキスを降らすから


☆水田 茉莉花 八月一日 智 ペア☆

「うぉっしゃー、アイスかき氷の食べ放題に向けておれ様本気出しちゃうよー♪」
 晴天の空の下、やる気満々に右腕を天高く掲げるのは、八月一日 智。
「チャンバラ1択、まりかもやろうぜ!」
 やる気の炎に身を焦がすのとは対照的に、狙っているのは海の家の絶品アイスとカキ氷だ。そして同じく対照的な温度差なのは彼の神人、水田 茉莉花。
 ……また始まったと、胸中で毒づきながら、シュッシュとエアーチャンバラを繰り広げている智を一瞥する。
(食べ物の事になると見境無くなるんだから、ほづみさんってば)
 智の頭の中が、既にアイスとカキ氷のことで満たされているのだろうということは、想像に難くない。
 それに、彼は勝利すればアイスとカキ氷が半額だ!とやる気満々だが、
(しかも食べ放題じゃなくて半額なんだけど……)
 楽しげな彼の表情に、一息つきながらも「ま、いいか」とチャンバラへの参加を了承する。
「本気出すのは良いですけど、作戦はあるんですかほづみさん?」
 あれだけやる気満々だったのだから、何かとんでもない作戦があるのかもしれない。
「作戦? 無ぇ! ……あ痛っ、無言で殴んなよ!」
 そんなことはなかった。
 智の清清しい返答が発せられると同時に、茉莉花の拳が智のわき腹に突き刺さる。
「やっぱり……で、これはあたしの提案なんですが、あたしが囮兼盾になって、その後ろからヒット・エンド・ランでほづみさんが攻撃ってのは如何ですか?」
 智が勤めるゲーム会社でも、戦闘系のMMORPGをプレイしている社員が居り、ゲーム内でこの戦闘方法を行っていることもある。所謂オンラインゲーマーであれば、よく使う戦法だ。
 ただ、これは当たり判定が味方に当たらないゲームならではな部分もあり、現実でやるにはコンビネーションが優れていなければならない。
 そしてなにより、
「ほほーう、体格差を生かした作戦って訳ですなでかっちょ?」
 ニター、と笑みを浮かべながら、智はわざと下から覗き込むように茉莉花を見やる。
「ええ、ほづみさんがちびだからできる技ですよ」
 そんな智に対抗するように茉莉花は、わざと上から見下ろすようにして智にニヤリと微笑む。
 そう、現実で行うには、身長・体格差があったほうが行動に幅が出来るのだ。
 二人はひとしきり笑みを浮かべあった後、受付から紙を受け取って参加用紙を記入する。
「乗った!」
 ばーん!と参加用紙を机にたたきつけ、智が更衣室に向かう。
「方向はランドマークで指示しますからね」
 茉莉花も参加用紙を受付に手渡して、参加準備を進めるために更衣室へと向かった。



 水着に着替え終わり、智と茉莉花、対戦相手の男性二人が一同に会した。
 審判が双方の武器と風船を確認し――試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
 と同時に、対戦相手二名は一直線に茉莉花へと走り寄る。どうやら、倒せそうな一人を先に潰し、その後に智をじっくりと料理しようという魂胆のようだ。
 しかし、男達は彼女のツッコミによって鍛えられた瞬発力を舐めていた。軽く頭に目掛けて振り下ろされた甘い攻撃は茉莉花の剣に受け止められる。
「いないいない……」
 体勢を立て直し、もう一度茉莉花に攻撃を繰り出そうとしたところで、智が茉莉花の背後から現れる。
「ばぁー! 隙ありぃ!」
「「なあっ!?」」
 強烈な一撃が男達の臍にクリティカルヒットし、体勢を立て直せないまま、もう一度智の攻撃が降りかかる。今度は、一方の男の頭に、もう一方の男の手の甲に攻撃がヒットした。
 水風船は破裂音と共に水を撒き散らし、地面と身体を濡らす。
「おっしゃ、風船ゲットぉ!」
「く、くそっ!」
 一方の男が体勢を立て直し、今度は智へと迫る。
「ほづみさん、観客席方向から来ます!」
「まりか、しゃがめ!」
「しゃがめ!?」
 突然の発言に一瞬戸惑いながらも、茉莉花はしゃがみ込む。
 すると、智が茉莉花に向かって駆け寄り、彼女の背中を踏み台に跳躍する。
「踏み台かーらーのー、脳天幹竹割りぃ!」
 男の水風船が凄まじい破裂音を響かせて水を撒き散らす。
 これで、残るは一人のみだ。
 しかし、一人の男が倒れると同時に、もう一方の男が智に向かって背中から飛び掛る。
 けれども、彼の死角であって、死角ではない。パートナーの視線がしっかりと張り巡らされている。
「もーほづみさん背中がら空き……えいっ!」
 攻撃が加えられると思っていなかった男は、バランスを崩しながらもギリギリで茉莉花の攻撃を回避。転じて、彼女の臍へ向かって剣を振り抜いた。
「片手剣でもテンペストダンサーナメんなオラァ!」
 だが、そこに突如として智がエトワールのような動きで、男の手の甲に攻撃をヒットさせた。
男はばたりと倒れ、この試合の勝者が決定する。
「全てはタダ飯の為に、あと……まりかのへそは誰にも見せねぇぞ」
 ゴゴゴ、と音がつきそうな凄みで男を見下ろした智だったが、勝利宣言を受けると、すぐに表情が一変して、歓喜の色に染まりあがった。
「うっしゃおらー! ターダ飯っターダ飯っ♪」
 勝者に与えられる半額券を持って、智はすぐさま屋台に走り出していった。



「すんませーん♪ ソフトクリーム全種類お願いしまっす♪」
 ばーん! と置かれた半額券を受け取って、屋台のおばちゃんが智ににっこりと「よく食べるねぇ」と言いながら、ソフトクリームを作り始めた。
 智もにっこりと笑顔を浮かべて、作られていくソフトクリームを目を輝かせながら見つめる。
「はい、できたよ!」
 おばちゃんがソフトクリームを完成させ、智に渡すと智は待ってましたとそれぞれのソフトクリームを口に運んだ。
 これぞ至福の時、というように笑みを浮かべながら茉莉花の元へ向かおうとすると、
「御代! 忘れてるよ!」
「へ? 御代?」
「これは半額券! 買った分の半額は払ってもらうからね!」
「え、なに、半額になるだけ? タダじゃねぇの? ウソォン!」
 至福の時から一転、智のお財布に予想外の出費が突きつけられる。

 バンバン! とカウンターを叩きながらおばちゃんに抗議する智を尻目に、茉莉花が近くのビーチパラソルの下で苦笑を浮かべる。
「あはは、ほづみさんらしいというかなんというか……」
 しゃり、という音とともに茉莉花の口の中で抹茶と小豆がはじけた。



☆シルキア・スー クラウス ペア☆

ビーチバレーに参加するべく、タンキニ水着に着替えたシルキア・スーと、サーフパンツに着替えたクラウスが、受付へと足を運んでいた。どちらの水着も、水着が取れるなどのアクシデントが起こりにくい、スポーツのような激しい運動にも安心な水着。
 それもその筈、確かに今回海に来たのは、クラウスは最近塞ぎ込んでいるシルキアが思い詰め過ぎない様にと気晴らしに海へ誘ったことに起因するが、身体を動かそうと球技大会に出場するつもりで来たのだ。
 クラウスはバレーという競技自体が未経験だったため、ビーチバレーに参加すると決めてから、ルールをよく理解するためにシルキアと入念に練習も重ねた。
 対戦相手は、男性と女性のカップルだ。男性はタンクトップとショートパンツのセパレート型ユニフォームを着用し、女性はワンピース型のユニフォームを着用している。これは、公式試合の選手が着るのと同じユニフォーム。相手は本気で試合に臨むつもりのようだ。
 そんな真剣な相手選手を見て、シルキアは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「丁度体動かしたかったのよ。いざ真剣勝負!」
「真剣勝負。心得た」
 各々所定の位置についた。
 相手の女性がサーブを打ち、いよいよ試合が開始する。
 打ち込まれたサーブはネットを越え、クラウスの目の前に落下する。クラウスはそれをアンダーハンドで威力を殺し、上空へとトスを上げる。ここでシルキアがオーバーハンドでもう一度タイミングを合わせれば、一気に攻撃に転じることができる。
 クラウスはシルキアに合わせるべく体勢を作り、シルキアのトスを待った。
(もやもやを吹き飛ばしたい……!)
 しかし、シルキアはクラウスがあげたトスをもう一度トスすることはなく、そのまま攻撃へと転じ、思い切りスパイクを繰り出した。
「うりゃっ!」
 スパイクは当たり所が悪く、威力が出にくいビーチバレーとはいえ、それでも非常に遅い威力の無いスパイクとなって相手へ返って行く。元々、クラウスは次のトスのためにあげたボールのため、スパイクに移りやすいトスではなかったが、それを差し引いても、荒が目立ったスパイクだ。
 相手は強いスパイクを身構えていたのか、一瞬行動が遅れたが、すぐに体勢を立て直し、攻撃に転じてくる。その動きには無駄な要素がなく、打ち損じたスパイクを打ち体勢を崩したシルキア、シルキアのトスに合わせようとスパイクを受ける準備ができていないクラウスへ、強烈なスパイクが打ち付けられた。
(シルキアの動きが、精彩を欠いている)
 クラウスの懸念を体現するように、シルキアはその後も勢い余り顔から砂に突っ込んでしまったり、自分が打ったスパイクがネットから跳ね返って顎に当ったりと、空回りした行動をとり続けてしまう。
 そして、迷いは真剣勝負の中において、致命的な弱点となる。
 相手が打ったスパイクがシルキアの胸部付近に向かって打ち込まれる。練習を長く積み重ねたもので無ければ一瞬で判断できない、アンダーハンドパス、オーバーハンドパスか迷ってしまうコース。
「っ!」
 思惑通り、シルキアはどちらで受け止めるべきか迷ってしまった。辛うじてアンダーハンドパスの体勢でレシーブをあげたが、それはレシーブと言えるようなものではなかった。
 シルキアは、やってしまった、とクラウスの方を振り返ろうと後方を見やったが、そこに彼の姿が無い。怪訝に思い、今度は自分が打ち上げてしまったレシーブの方へ視線を戻す。
「うおおー!」
そこでは、今まさにクラウスがボールを間一髪で拾い上げ、レシーブをあげた瞬間の光景が広がっていた。
 すべりこんだクラウスは完璧な位置にトスをあげ、そしてシルキアを見て、
「シルキア迷うな。思う様にやってみろ」
 自分の動きが精彩を欠いていることなど、シルキアはわかっている。そう考えて、クラウスはしっかりとした口調で彼女を励ました。
 その言葉に、彼女は、はっと気づかされる。今この場で戦っているのは、自分ひとりではない。共に戦い支えてくれるクラウスが居るのだと。
 迷いは吹き飛び、次の行動へ既に身体が動き始めていた。何度も二人で練習した、アタックの練習――それを最大限に活かしてみせる。
「うん。クラウス、私やるから!」
 シルキアの跳躍は、クラウスのトスに完璧なタイミングで行われ、同じく完璧なタイミングで振り下ろされる。
「だああっ!」
 スバン! と正確なポイントで叩かれたボールは、相手のコートへ矢のように繰り出される。相手は真剣勝負として、荒れたプレーのシルキアにも油断することなく、ポジションについていた。しかし、二人は美しく繰り出された二人の攻撃に一瞬目を惹かれ――気がついた時には、ポイントとなってしまっていた。
「よっしゃああ!」
 シルキアがガッツポーズを作り出し、クラウスに満面の笑みを向け、拳を突き出した。
 クラウスもそんな彼女の様子を見て、自然に笑みを零しながら、拳を突き出す。
 拳は、絆を象徴するようにして、合わせられる。
 さぁ、反撃の時間だ。



 波の音が二人の耳を打つ。
 二人は、試合後浜辺でカキ氷を食べている。
 試合は接戦だったが、最後はシルキア達が勝利を収める結果となった。良い試合だったと観客も盛り上がり、二人も嬉しさのあまり固く抱擁して喜び合った。相手にも挨拶をし、また戦いたいと、固い握手を交わしあったところでは、観客の中には昂ぶりすぎて涙を流している者も居たようだ。
 暑く盛り上がった後では、この浜辺の波の音は、静寂に流れる小さな音楽のようにか細く聞こえる気がする。
 そんな中、ぽつりとシルキアが水平線の遥か遠くを見て、呟いた。
「ごめんね。ちゃんと前向くから」
 ぽつりと漏らしたような言葉は、波の音のように弱弱しく、しかしはっきりとクラウスの耳に届く。
 シルキアがそっとクラウスに寄りそって、ごくりとカキ氷を飲み込んだ。
 クラウスも、彼女に習うように視線は水平線に向けたまま、答える。
「いいのだ。俺は本望だ」
 寄り添われたクラウスは、視線を移動させないまま彼女の肩を優しく抱き、二人はしばらくの間そうやって水平線を眺める。
「ありがと」
 水平線では、丁度夕日が沈んでいくところだった。
 けれども、また日は昇る。前を向いていれば、朝は必ず来るのだ。



☆マーベリィ・ハートベル ユリシアン・クロスタッド ペア☆

 照りつける夏の日差し、青い海、青い空。
 そして、ファンシーなフリルとビキニがキュートな水着を着ているマーベリィ・ハートベルの白い肌が眩しい。ほどよく隠された足が、パニエから少しだけ覗いているところも、彼女の精霊ユリシアン・クロスタッドの心を掴む。
「僕のプレゼントした水着着けてくれたんだね。凄く似合ってる、可愛いよ」
 さらりと、かわいいと言われて、マーベリィは「わ、私あのその」とあたふた手を振りながら、顔を紅潮させていく。ぴょっこりと伸びたアホ毛が動くたびにぴょこぴょこと動きまわる姿もまた、彼女の愛らしさを強調している。
「あ、ありがとうございます。私じゃ絶対こんな可愛いの選べませんでした」
 基本はビキニだが、可愛いフリルが程よく体を隠してくれるデザインの水着は、肌の露出が激しい物が多い水着の中でも着やすかった。
(彼には私の好みがお見通し?)
 自分のことを理解してくれている嬉しさ反面、自分の何もかもが知られているような気がして少し恥ずかしい気分になる。
「球技大会か。夏の眩しい思い出になりそうだ。参加、いいよね?」
「は、はい! お供いたします!」
 そうしてマーベリィはユリシアンに手を引かれながら、競技受付へと進んでいった。



 参加する競技は『チャンバラ』。
 マーベリィとユリシアンは別々の対戦相手と競技を行うことになる。試合は男女別で行われ、男性が先に競技を開始することとなった。
「じゃあ、行ってくるよ」
「はい! 応援しています!」
 対戦相手は、ガッチリとした体格の大男だ。ユリシアンの身長でも大きい印象を受ける身長は、まさに大男と呼ぶに相応しい。
 だが、ユリシアンは表情を変えないままに、相手に向き直った。
「悪いけど手加減するつもりないよ」
「はは、その腕で俺の攻撃が受け止められるかな!」
 試合が開始し、先制攻撃は大男が繰り出した。精霊として膂力が高いとはいえ、この体格差ではまともに受けてはダメージに繋がる可能性がある。
 ユリシアンは攻撃を避け、相手の臍に向かって的確な攻撃を繰り出す。
「チッ……!」
 大男が風船のついていない左手で剣を振り払おうとするが、ユリシアンは切っ先を後ろへ引いた。この攻撃は、フェイクだったのだ。
 続けざまにもう一度突きが繰り出され、大男は辛うじてまたその攻撃を回避する。
 だが、大男もバカではない。フェイクの攻撃を見切り、一挙に距離を詰めた。細かい攻撃を封殺するつもりらしい。体格差を利用して、振り下ろす形でユリシアンの頭を狙う。
「まずは一個目だ!」
 振り下ろした攻撃に、しかしてユリシアンはあえて顔をあげて微笑みを浮かべる。
 余裕を感じる笑みに、蛇に睨まれたかのような不安が大男の心の隙間に入り込む。一瞬の怯みに、ユリシアンは後方に飛び退きながら、男の手の甲を叩く。
「な、なにィ!?」
 飛び退いたユリシアンは着地し、バランスを崩して膝をつく大男を微笑みながら射抜く。
 大きな隙――チャンスだ。
「行けます!!」
瞬間、握り拳を作りながらユリシアンへ声援を送るマーベリィの声がはっきりと届いた。
 ユリシアンは敵へ向かって駆け出しながら、マーベリィへウィンクを返す。
 体勢を戻せないまま、臍へ向かって突きを繰り出し、下がった脳天に一撃を与える。その刹那的な攻撃に大男が倒れるのと、ウィンクでマーベリィが赤くのは同時くらいであった。



「素敵でした!」
 戻ってきたユリシアンに、マーベリィが駆け寄りそう称える。
「相手も並大抵じゃなかったけど、マリィの応援で勝てた。ありがとう」
 そう言ってユリシアンは微笑んで、
「次は、マリィの番。応援しているよ」
 送り出してくれたユリシアンに応えるために、マーベリィは毅然とした表情で競技場へ向かった。
(今度は私の番。遊戯ではあるけど私……勝ちたい)
 彼の期待に応えられる私になりたい。そう思いながら、相手と視線を合わせる。相手は、同じく女性で、幸いにも体格は同じくらいだ。
 手を振って応援してくれているユリシアンに強く頷いて――試合が開始する。
 先に動いたのは、相手だ。不恰好ではあるが、的確にマーベリィの風船を狙って攻撃を仕掛け続けてくる。
(運動は得意ではないけど……相手の剣を避けたり剣で弾いたり見切って当てに行く戦法で……)
 攻撃を受けてはいけない箇所は決まっているのだ、そこを守るようにして、マーベリィは相手の攻撃を弾き、回避し、また弾く。一度攻撃を受け、手の甲は割ってしまったが、まだ2個風船が残っている。
そんな攻防が、数分経過した頃。相手の攻撃の手が、緩まってきた。
「いいぞぼくのマリィ!」
 ユリシアンの声援が、耳に届く。相手の攻撃も、はっきりと見えている。
 避け続けることまた数分、ついに相手がふらりと体勢を崩した。
(行けます――!)
「そこだ!」
 マーベリィの胸中と、ユリシアンの声援が合致する。
 そして、数秒後マーベリィの攻撃が相手の頭の風船を叩き割った。
パァン! という音と共に「きゃっ」と短い悲鳴が響く。
 頭の風船を割られ、相手の女性はどうやら目に水が入ってしまったようだ。そのままバランスを崩し、足をもつれさせて転んでしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
 マーベリィが駆け寄ると、女性はしばし転んだ体勢のままでいたが、立ち上がり苦笑を浮かべながら自分の臍と手の甲を見せた。
 水風船は割れていた。どうやら、転んだ拍子に割れてしまったらしい。
 ――勝者、マーベリィ。



 試合が終わり、高揚冷めやらぬ状態のマーベリィに、ユリシアンが駆け寄り、突如として抱きしめた。
「きみは最高だ! 素晴しい闘志だったよ」
「ゆ、ユリアン様っ!?」
 抱きしめられ、あわわと慌ててしまうマーベリィ。
 その表情を見て、ユリシアンは優しい微笑みを浮かべながら――彼女のおでこに祝福のキスを落とした。
「あ……」
 慌てていたマーベリィだったが、ふと今までと違う関係になったことを実感する。
 けれど、またすぐにあたふたとしてしまうマーベリィに、ユリシアンは困らせない内にと、抱擁を解いた。
「さてそれじゃ冷たいもの食べようか」
 そう言いながら、ユリシアンは彼女の肩抱きながら、屋台へ向かう。
「はい!」
 ついていけていなかった心が、少しだけ進んだ気がした。
だって彼が、髪やおでこに祝福のキスを降らすから。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 東雲柚葉
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月18日
出発日 07月29日 00:00
予定納品日 08月08日

参加者

会議室

  • ユリシアン:
    マーベリィと共に参加させてもらうよ、よろしく。

  • [2]水田 茉莉花

    2017/07/25-10:29 

    おれ様こと八月一日智と相棒のまりかだ!宜しくなー♪

    おれ達はチャンバラの方にチャレンジする予定だぜー♪
    本気出しちゃうかんなー、超本気出しちゃうかんなー、うひゃっほう♪

  • [1]シルキア・スー

    2017/07/24-19:18 

    シルキアとクラウスです。
    よろしくお願いします。
    私達は2対2のビーチバレーに参加するつもりです。
    プランは提出しました。
    楽しい一時を過ごせます様に。


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