ウィンクルムの夢の家(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 イベリンで数々のエピソードを乗り越えた翌月――。

 あなたの友達の神人が結婚する事になった。
 同じ神人として、A.R.O.A.を通じて親しかったあなたは、女友達を心から祝福し、カフェで会う機会を設けた。
 テーブルで会って向かい合って、友達の幸せそうなのろけ話を聞く。

「それでね、精霊ったら、もう赤ちゃんの話なんかするのよ。新居も決まっていないのに」
 友達がアイスコーヒーを片手にそう言った。
「新居?」
 そういえば、結婚するなら新居が必要だ。あなたは友達の話に興味を持つ。
「私は、3LDKぐらいのマンションがいいって言ってるんだけど、彼は絶対一戸建てって言うのよね。貸家でもいいからって。あと、私は、とにかくA.R.O.A.に近いところがいいの。だって通勤時間がかかり過ぎたら家事との両立が大変でしょう。でも、精霊は、郊外で緑の多い落ち着くところがいいって。なんかもう、色々、食い違っちゃってるのよね」
「えー、ぶつかりあってるの?」
「ぶつかるってほどじゃないけど、お互いに理想としているところが違うから、今、話し合いの段階なのよねー。やっぱり、二人で一から生活を作る訳なんだからさ、相手の話をよく聞いてみるって大事よ」
「そうだね。あんなにラブラブで、好きで結婚する相手なんだもんね!」
 あなたは友達神人と精霊の仲むつまじさを知っているために励ます。
「うん。精霊の夢の話、私も聞くの好きだし。でも、私の夢の家は、また違うのよね-。二人で話し合いながら、新しい夢の家を作るんだ!」

 友達神人とお茶をした後、あなたは家に帰り、ついつい机の上に画用紙を広げて色鉛筆を取り出した。
 夢の家。
 自分が将来住みたい家。
 もしかしたら、精霊と一緒に住むかも知れない家――。
 あなたは誰も見ていないのをいい事に、それを自由自在に画用紙に描いて、ちょっとうっとりしていた。
 新しい家で、精霊がいて、自分がいて、キッチンは広くて、居間には二人で選んだソファがあって――などなど。

「何してるんだ?」
 そのとき、あなたの背後から、精霊が声をかけた。
「ぎゃわあ!」
 思わず素っ頓狂な声をあげ、慌てて画用紙を腕で隠そうとする貴方。
 既に、あなたと精霊は、合い鍵を交換しあう仲だった。
「玄関で呼び鈴鳴らしても出ないから……。何? 何を描いていたんだ?」
 自分が絵と妄想に没頭していたために気がつかず、それで精霊は勝手に入ってきてのぞき込んでいるらしい。
 精霊は首を伸ばしてあなたの絵を見ようとする。あなたはあたふたとしながら考える。自分の夢の家、精霊に見せてもいい? 精霊に語ってもいい?
 二人だけのドリームハウス、話し合ってみても……精霊にヒかれないかな……。

解説

※状況は必ずしもプロローグ通りでなくても構いません。
※お茶に行ったり画用紙や色鉛筆買ったりで、300Jrかかりました。

神人と精霊が、新居について絵を描いたり語り合ったりするエピソードです。
ウィンクルム二人で住むならこんな家! というものが望ましいですが、神人や精霊が、今後自分がこんな家に住んでこんな生活がしたい! と語り、それを相方が聞くようなエピソードもOKです。
魔法でもありえないような素っ頓狂なものから、ごく平凡なアパートの一室まで何でも受け付けます。


ゲームマスターより

ウィンクルムが住むならこんな家。結婚を意識していてもいなくても、二人で新しい生活をするならどんな事をしたいか、素敵な夢がいっぱい詰まったエピソードをお待ちします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  一緒に住む家、というフレーズにどきどき
今はまだ 夢の話でしかないけれど
考えるだけくらい、いいよね?

いつもの無表情で画用紙を見つめる彼が困惑しているのに気付き、くすりと笑う
とりあえず自分の思いついたことを

ええとね、小さくてもいいからお庭が欲しいな
季節の花を植えて 鳥の巣箱をつけて
居間には暖炉があって 一緒に座れるソファを置くの
あ、星が見えるような天窓のある部屋とか 本が沢山ある部屋も素敵ね?
一緒に夜更かしができるもの!
彼に柔らかい表情に ぱっと顔を輝かせ
でしょう?…あ、ひどい!
私だって起きていられるものと膨れ顔
だけど ほんの少し意地悪をいう彼が 照れているのが分かったから
一瞬後には 顔を見合わせて一緒に笑う


瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  新居の話を聞いた時に、考えを巡らせてみたのですが。
フェルンさんはどうなのかしら、と思って。
新しく出来たカフェに誘われたので、聞いてみました。
パンケーキと紅茶を待つ間に、ノートを出して。
先日聞いた結婚するって友人の話をして。
「フェルンさんならどんなお家が良いですか?」

私達がウィンクルムなのはずっと変わらない事実なので。
すると任務に使う装備品が増えます。
紙媒体の資料も増えて行くのでそれ専用の部屋をひとつ用意したいです。
フェルンさんのアクセサリ工房も1部屋欲しいですし、私も書庫が1部屋は必要。この時点で戸建てですよね。
収納多くしなきゃ物が溢れちゃう。
家具は機能重視。スッキリした印象で好きです。




八神 伊万里(蒼龍・シンフェーア)
  そーちゃんの家に来るのは久しぶり
こんにちは、面白いものを見せてあげるって何?
この雑誌のこと?
あ、違うんだ…でもシェアハウスなんてびっくり
それに何だか楽しそう
誰と暮らすんだろう?
同学部の友達とかかな?
もしかして私…なんてことはないよね

ああ、こっちがその『面白いもの』ね?
私達三人の新しい家…言ってみればこれもシェアハウスってやつかな
話を聞いてる途中で楽しくなってきて自分でも夢中で書き加える
私は広い書斎が欲しいなあ
ほら、本の奥のボタンを押すと隠し部屋が出てくるやつ!
それからいつでもバーベキューできる大きいベランダと
…異次元空間?(よく見直してみて
あ…好き勝手に書きすぎてぐちゃぐちゃになっちゃったね


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  最早日常的になってしまった精霊宅訪問

…そういえばこの家って一人暮らしにしては大きい気がするけど、どうしてこの家に?
へー太っ腹だね

け、契約…
割とシビアな話だった

私の?
…何の変哲もない普通のアパートだよ、家賃安めの

うーん…実を言うとあの部屋、一人はいいけど、ここよりずっと狭いから誰かを招いて寛げないのがちょっと…
あ、あと、壁が少し薄いのか隣が騒ぐと割と…ね

住みたい、家…(周りを見ながら
…広くて、品があって、落ち着きがあって…この家みたいな家、かな…

うん…いっそ住みたいくらい…
ハッとして精霊を見
言葉に慌て
ご、ごめんっ今のは例えというか何というかっ…!

…住んでみたいのは本当だけど
言ったら引かれる…よね


●アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)編

 その日、アラノアは精霊のガルヴァン・ヴァールンガルドの自宅を訪問しました。それは最早日常的な出来事です。
 ガルヴァンの家は、閑静な住宅街にある二階建ての家です。ただし、生活区域として使っているのは一階のみで、二階は空き部屋か物置になっていました。
 アラノアはガルヴァンの家のリビングに通されて紅茶を出されました。ティーカップを受け取って、ふと周囲を巡らし、アラノアはずっと思っていた事を尋ねました。
「……そういえばこの家って一人暮らしにしては大きい気がするけど、どうしてこの家に?」
「ああ……この家は故郷を出る際、両親が知り合いの不動産屋に掛け合って俺好みの立地条件の物件を格安で買い取ったものらしい。餞別代りだとな」
 ガルヴァンはテーブルの向かいで自分も紅茶の準備をしながら言いました。
「へー太っ腹だね」
「そうでもない。この家の購入額に達するまで毎月一定額を仕送りする契約でな。一種のローンだな」
 ガルヴァンがクールに答えるとアラノアは頬を引きつらせました。
「け、契約……割とシビアな話だった」
 そこでガルヴァンはカップから顔を上げてアラノアを見ました。
「……お前の住んでいる家はどんな所だ?」
「私の? ……何の変哲もない普通のアパートだよ、家賃安めの」
 話題が変わりました。
 アラノアは何気なくそう答えました。
「成程……今の家に不満は無いのか?」
 ガルヴァンがこういう問いかけをしたのは、単なる世間話でしょうか。それとも、何か無意識のうちに計算があったのでしょうか。
「うーん……実を言うとあの部屋、一人はいいけど、ここよりずっと狭いから誰かを招いて寛げないのがちょっと……あ、あと、壁が少し薄いのか隣が騒ぐと割と……ね」
 アラノアはごく普通に自分のアパートの話をしました。何もガルヴァンに隠すような事はないと思ったのです。
「そうか……なら、将来住みたい家とか……あるのか?」
 ガルヴァンは何気ない会話を続けました。
「住みたい、家……」
 アラノアは、辺りを見回しました。
「……広くて、品があって、落ち着きがあって……この家みたいな家、かな……」
 ふっとアラノアの本音が漏れました。
「この家のような?」
 アラノアは微笑みながら答え、はっと気づいて精霊を見ました。
 自分の言葉に慌ててしまいます。
 ガルヴァンの方は彼女の言葉を聞いてじっとその顔を見つめています。
(……本気で言っているのか?)
 まずはそれを確かめたいのでした。本気だったら嬉しいのです。本当に嬉しいのです。
「ご、ごめんっ今のは例えというか何というかっ……!」
 慌てて舌を噛みそうになりながらアラノアはそう答えていました。
「……そう、か……」
 ガルヴァンはかなりはっきりとがっかりした様子でしたが、それ以上は何も言いませんでした。
(一緒に住んでみないかと言ってみたら……どんな顔をするのだろう?)
 何やらまだ慌てた様子であたふたしながら俯いているアラノアを見つめながら、ガルヴァンは考え込みます。
(……住んでみたいのは本当だけど、言ったら引かれる……よね)
 アラノアはその事が気になってまともにガルヴァンの顔を見ることも出来ません。
(でも……この間は……結婚式を挙げたんだった……真似だけど)
 イベリンでの出来事を思い出してアラノアは赤面します。ウェディングドレスを着て、彼に抱き締められたあの瞬間を思い出し、照れのあまりますます下を向いてしまいました。
(あの夢の続きはいつか見られるのかな……それとも、現実になることが、あるのかな……)
 不安な想いを抱えながら、アラノアはその先の事を想像しました。そしてそれは、恐らく、ガルヴァンも一緒なのです。ガルヴァンもまた、彼女と一生、幸せに暮らす夢が、現実になる事があるだろうかと、自分の家を眺め回しているのでした。

●八神 伊万里(蒼龍・シンフェーア)編

 その日、八神 伊万里は、精霊の蒼龍・シンフェーアの家を久しぶりに訪問しました。彼から呼ばれていたのです。
「やあ、いらっしゃい」
 招かれて部屋に入ってみると、テーブルの上にはスケッチブックと画材、それから住宅情報誌が置かれていました。
「こんにちは、面白いものを見せてあげるって何? この雑誌のこと?」
 伊万里は住宅情報誌をのぞき込んでそう言いました。
「これ? 実はシェアハウスの誘いがきててね。このアパートも手狭だし、財政的にも苦しいし乗るつもりだよ」
 蒼龍はタブロスの安宿に下宿中の大学生です。家賃をさらにコストダウンするために、シェアハウスに移るのでしょう。
「あ、違うんだ……でもシェアハウスなんてびっくり。それに何だか楽しそう。誰と?」
「相手? まだ内緒」
 蒼龍はにっこり笑ってそう言いました。
 伊万里は首を傾げます。
(誰と暮らすんだろう? 同学部の友達とかかな? もしかして私……なんてことはないよね)
 やはり蒼龍のことですから、伊万里も気にしてしまうのでした。ですが、相手が内緒にしているのでそれ以上は聞きませんでした。
「で、こっちはもう少し先の話だけど僕達の理想の家を考えようと思って。僕とイマちゃんと……それからアスカ君との。抜け駆け禁止って意味もあるけど、僕の理性を保つためには彼にもいてもらわないと困るというか……やっぱり僕達三人揃ってこそじゃない?」
 そう言って蒼龍はスケッチブックに画材を走らせ始めました。スケブで適当な間取りを描いています。
 手先が器用なのか、かなり正確で綺麗な絵でした。
「ああ、こっちがその『面白いもの』ね? 私達三人の新しい家……言ってみればこれもシェアハウスってやつかな」
 伊万里は話を聞いているうちに途中で楽しくなってきました。それで、夢中で自分も画材で絵を描き始めます。
「それぞれの部屋と、皆が集まれる部屋と……それから屋根に上がれるようにして、でっかい望遠鏡置きたいなあ」
 そんな事を言いながら蒼龍はつい空想に耽ってスケッチブックから視線をずらし、空中を見ていました。自分がいて、伊万里がいて、アスカがいて……どんな生活になるでしょうか。
「私は広い書斎が欲しいなあ。ほら、本の奥のボタンを押すと隠し部屋が出てくるやつ! それからいつでもバーベキューできる大きいベランダと」
「イマちゃんはどんな部屋が……って、なんか異次元空間みたいになってる!?」
 空想の世界から戻って来た蒼龍は、スケッチブックを見て思わず叫んでしまいました。
「……異次元空間?」
 伊万里は自分の手元をよく見直してみました。
「あ……好き勝手に書きすぎてぐちゃぐちゃになっちゃったね」
 自分の描いた絵なのにびっくりしてしまう伊万里。
 蒼龍も苦笑いです。
「ね、面白いでしょ? 僕達の未来を想像するのって凄く楽しいんだよ。僕達は三人であってこそなんだよ。だから将来の家の事もみんなで考えなきゃ」
「うん、そうかも」
 伊万里はなんだか笑ってしまいました。確かに、三人で暮らす家の事を考えると、わくわくして色々な夢が広がるのです。
(三人のシェアハウス、いいわね。でも、そーちゃんは一体誰とシェアハウスで暮らすんだろう。大学のお友達かな。そうじゃないなら、誰かな。私……っていうことも考えられるけど……もしかしてアスカくん? 男二人で暮らすって事もありかな)
 新しいページにまた間取りを描いて、夢の家をかきつけ始める蒼龍の横顔を見つめながら伊万里は考え込みます。
(内緒って、なんだろう。私の知らないそーちゃんの部分って……ちょっとだけ気になるよ)
 気になるけれど、今は言わない。彼には彼の世界があるんだから--生真面目に尊重する伊万里でした。

●リチェルカーレ(シリウス)

 今日、リチェルカーレと精霊のシリウスは、カフェでデートです。
 涼しい店内で爽やかな冷菓を食べながら、話し続けるリチェルカーレ。
 A.R.O.A.で知り合いになった職員が、結婚相手との夢の家について話していたのだと、自分本人が一番楽しそうに話しているのでした。
(一緒に住む家、というフレーズにどきどきする……。今はまだ 夢の話でしかないけれど、考えるだけくらい、いいよね?)
 リチェルカーレはそういう気持ちでいます。
「そうだ。私達もやってみましょうよ!」
 リチェルカーレが手を打ち合わせてそう言いました。
 シリウスは瞬きをひとつします。
 何しろ、彼は致命的にこの方面に疎いのです。
(「家」とか「居場所」という概念が薄いのだとは思うのだが……)
 困惑してしまうシリウスでした。
 彼がいつもの無表情で画用紙を見つめている事に気がつき、リチェルカーレはくすりと笑います。
 そしてとりあえず、自分の思いついたことを描き始めました。
「ええとね、小さくてもいいからお庭が欲しいな。季節の花を植えて 鳥の巣箱をつけて、居間には暖炉があって、一緒に座れるソファを置くの。あ、星が見えるような天窓のある部屋とか、本が沢山ある部屋も素敵ね? 一緒に夜更かしができるもの!」
 歌うように呟きながら、リチェルカーレが家の絵を描いていきます。
 シリウスは小さく相づちを打ちながらそれを聞いています。
 そして、一緒に夜更かしという言葉に動きを止めて、目元をすがめました。
「……いいな、それ」
 こんな風に自分のことを思ってくれるのは、面映ゆくて、とても嬉しいのでした。
 リチェルカーレは、彼の柔らかい表情に、ぱっと顔を輝かせます。
「でしょう?」
 ですが嬉しいとか、そんな事を言うのは流石に悔しくて、シリウスは憎まれ口をききました。
「……その部屋を使うのは俺だけになりそうだけどな。お前は絶対、すぐに寝る」
「私だって起きていられるもの!」
 リチェルカーレはふくれっ面になってしまいました。
 その表情にシリウスは息だけで笑います。
「一緒にいてくれるだけで、それだけでいい」
 リチェルカーレはほんの少し意地悪を言う彼が、照れているのが分かります。そして一瞬の後には、顔を見合わせて一緒に笑うのでした。
 夢の家。
 シリウスを繰り返し襲う悪夢。
 眠れない夜を過ごす彼。その彼とともに、一緒に起きていたいのだと告げるリチェルカーレ。天窓のある部屋、本がぎっしり詰まった部屋。そこで悪夢から逃れようと起きている彼と、優しい時間を過ごすのです。
 ただ、彼と楽しい時間を過ごして、彼が安らかに眠られる日が来るまで。いつまでも、いつまでも、一緒に。
 彼が辛い過去を浄化し終える日が来るまで。否、その日が超えた後も、永久に、ウィンクルムとして。
 リチェルカーレのそんな想いが言外に伝わって、シリウスはまた、ふと口元だけで笑いました。
 まるで泣いているような綺麗な笑い方でした。
「これは想像なんだから、どんな部屋を描いてもいいのよ。魔法のような部屋とか、正に夢の部屋みたいなのとか。シリウスは、本当に、何もいらないの?」
 画用紙を指差しながらリチェルカーレが言いました。
「リチェがいるなら何もいらない。……あ」
 言いかけてシリウスは口を閉ざしました。
「何?」
「防音の部屋。……」
「防音?」
「……夜中でもリチェが、好きなだけ歌っていられる部屋」
 リチェルカーレは歌が好きです。そして、シリウスはリチェルカーレが好き。……多分、彼女の歌う子守歌も好きなのでしょう。
 もしも望んでいいのならば、眠れない夜、彼女に歌っていて欲しい。ただ自分のためだけに。そんな言葉に、リチェルカーレも、淡く笑って頷いたのでした。

●瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)編

 その日、瀬谷 瑞希は、精霊のフェルン・ミュラーにカフェに誘われていました。
 元からコーヒー・紅茶が美味しい事で有名でしたが、最近始めたパンケーキも人気なのです。
 メニューを見てパンケーキを選ぶ瑞希が本当に嬉しそうで、フェルンは可愛くてたまりません。
 頼んだパンケーキが来るまでに、二人は会話をかわしました。
 瑞希はその前日も、A.R.O.A.を通じて知り合いの神人が結婚するというので喫茶店で会い、新居の話などを聞いてきていました。
「フェルンさんはどうなのかしら、と思って」
 ノートを出して質問する瑞希です。
「フェルンさんならどんなお家が良いですか?」
「一緒に暮らすなら、どんな家が良いかってコトだね」
 フェルンは以外に大胆な事を聞かれたと思いました。
(でもミズキは結構現実的な所を考えていそう……)
 その一方でそうも思います。
「ミズキはどうなの? 先に聞かせて貰おうかな」
 瑞希は一つ頷きました。
 そしてノートに逐一メモを取りながら語り始めます。
「私達がウィンクルムなのはずっと変わらない事実なので。すると任務に使う装備品が増えます。紙媒体の資料も増えて行くのでそれ専用の部屋をひとつ用意したいです。フェルンさんのアクセサリ工房も1部屋欲しいですし、私も書庫が1部屋は必要。この時点で戸建てですよね。収納多くしなきゃ物が溢れちゃう」
 冷静、冷徹に現実を直視して次々に条件を挙げていく瑞希でした。
「その3部屋以外にもキッチンとリビングと寝室と応接、来客用の部屋もあると良いよね。確かに戸建でないと部屋数厳しいかな。蔵書や装備品が重いから床も頑丈な所がいいし。マンションだとオーガに狙われたときに周りに迷惑かけるよね。家具はシンプルなデザインがいいかい? 色々と合わせやすいよね」
「家具は機能重視。スッキリした印象で好きです」
 フェルンの言葉に瑞希は強く頷きました。
 フェルンは考え込みます。
 瑞希はかなり具体的なところまで新居の想像をしているようなのです。
(ミズキはどういう意味で言っているのかな……)
 フェルンは複雑な気持ちで悩んでしまいます。
 瑞希は歳の割りにはしっかりした娘で、任務の際には時として冷徹とすら言えるシビアな判断も示す事があります。
 そういう面を見ると実利的な大人なのかとも思えますが、パンケーキが大好きな17歳の娘という側面も持っているのです。
(俺との新居の話とか……恋に恋する女の子の夢のような話なのかな。それとも、本当に俺と一緒に暮らしたくて言っているんだろうか。それとも……? どこまで本気に取っていいんだろう)
 フェルンは激しく悩みます。彼だって、瑞希と一緒に暮らしたいのです。
「あ、フェルンさん。パンケーキが来ましたよ」
 そのとき、店員がタイミングよくパンケーキを運んで来ました。
 瑞希は人気のキャラメルバナナ。フェルンはリコッタチーズです。
 たちまち目を輝かせてパンケーキに夢中になる瑞希です。
(そうだよね。まだまだ甘い物に夢中な女の子さ)
 そんな表情を見てフェルンは苦笑い。実際に瑞希が何を考えているかは分かりません。
「フェルンさん、半分こでシェアしましょう!」
「ああ、そうだね」
 瑞希がパンケーキを二つに切って、一切れをフェルンの皿に置きました。フェルンも半分に切ってパンケーキを瑞希の皿に置いて取り替えっこです。
 これって間接キスになるかな? とちょっと得したような気分になりながらフェルンは甘いケーキを一口。目の前には極上の幸せ気分の瑞希。つられて自分も幸せになりながら、フェルンは考えるのでした。
(君はすぐに20歳になって、大人になるよ。ミズキ。そのとき俺達は、何をしているんだろうね。一緒にいる事は、変わらないだろうけど)  



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月07日
出発日 07月18日 00:00
予定納品日 07月28日

参加者

会議室


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