小熊たちのお宅訪問!!!(草壁楓 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●お宅訪問なのぉ~

 ここはA.R.O.A.本部。
 今日も忙しそうに職員たちは仕事をこなしている。
 そこをポテポテという足音がするような足取りで歩くカラフル小熊が6匹。
「今日もお疲れ様!」
 女性職員が笑顔でそう声を掛ける。
 それを皮切りにすれ違う職員たちやウィンクルムが声を掛けてくれる。
「お疲れ様~なのぉ~」
「はい、チョコレート!!」
 好物を出されては、とニコニコニパニパと小熊たちはきちんとお礼をして受け取る。
 そんな様子を見た1人の職員が声を掛けてきた。
「小熊ちゃん」
 チョコを頬張りながらピンク小熊が彼を見る。
「どうしたのぉ~?みーたん?」
 どうやらこの男性職員余程小熊に好かれているようだ。
「みーたん……」 
 それはあだ名のようで、少々苦笑い。
 紫小熊も嬉しそうに足にスリスリ。
「みーたんなのぉ~」
 みーたん、こと彼の名はミリアルド・ウォルフ……初めて「ウィンクルムになりたい!」という小熊たちに対応した職員。
 今ではすっかり懐かれて……。
「コラ……そこは登っては……」
 ヨジヨジとミリアルドの足から肩へと器用に登っていく赤小熊。
「みーたん♪みーたん♪」
 小熊たちは職員の中で最も信頼しているようだ。
「で、どうしたのぉ~?」
 ピンク小熊はもう一口チョコを頬張ると、見上げつつそう尋ねた。
「あの部屋狭くないかい?」
 あの部屋、と言われ一瞬???な顔をする6匹。
「あの部屋?」
 ミリアルドの手をブンブンと振りながら青小熊も首を傾げている。
「君達の住んでいる部屋だよ」
 あちこち小熊たちに触られ、登られながらもちゃんと応えるミリアルド。
「う~ん」
「うむ」
「う~?」
「あう?」
「あい?」
「はう~~~?」
 6匹は静止するとそのまま考える。
 静止したとしてもミリアルドにくっ付いたまま。
 お、重い……ミリアルドは心でそう思いながらも笑顔。
「そうなの?」
 普段住んでいた家を思い出してもそうでもない、と感じているのか黄色小熊は質問に更に質問で返す。
「そんなに不便じゃないの!!」
 茶色小熊も横に首を振りながら笑顔で「問題ない!」と言っている。
「ウィンクルムのみんなはもっと広いお家に住んでるよ?」
 ほ~ほ!と6匹が同時に頷く。
 するとピンク小熊は、
「ウィンクルムになるためにはまずウィンクルムと同じにしなきゃなのよ!!!」
 ビシっと明後日の方向に指を指して大きな声でそう言った。
 なるほど!と残りの5匹がポンっと手を叩きながら納得。
 そして6匹はミリアルドから離れると自室へと戻っていく。
「あ、ちょっと!!」
 ミリアルドは追いかけるように小熊たちに付いていった。

 
 数時間後……。
「ここでいいかい?」
「OKなのよ!」
 青小熊は数回頷くと親指を立ててOKサインを出す。
 ミリアルドは小熊たちに貼り紙を渡され、それを掲示板にきちんと貼り終える。
 そこにはこう書いてある。

 『おたくをみせてくれるウィンクルムぼしゅうちゅう~~

  ウィンクルムのみなさんが、どんなとこにすんでいて、どんなせいかつをしているのかみせてください。

  おねがいします。

  ※ おかしあるとうれしいな

  詳細やお申し込みはミリアルド・ウォルフまでお申し出ください。』

「ウィンクルムのお姉さん、お兄さんってどんなとこに住んでるのかな!」
「楽しみなのぉ~」
 ワクワク、ドキドキと小熊たちはそれぞれ話しだす。
 最後のお菓子は余計な気がするが、小熊たちの希望らしいとミリアルドも小さいため息を付く。
 ミリアルド自身、ウィンクルムになれずとも触れあいはさせたいという親心みたいなものがある。
(どうかこの小熊たちの訪問を許してくれる優しいウィンクルムのみなさんお願いします)
 張り紙を見て何度も間違いがないか確認するピンク小熊と赤小熊。
「さ、お菓子の時間だよ!」
 ミリアルドはそう声を掛けて小熊たちとその場を離れた。
 ウィンクルムたちにこの貼り紙が目に留まり、快く申し出てくれることを願いながら。

解説

【小熊たちのしたいこと】
 ・小熊たちがウィンクルムのお宅を訪問し、家を案内してもらう。
 
 ・普段の生活や神人と精霊の絆や愛についてのお話しをしつつ、一緒に楽しく食事をする。

【小熊について】
 ・二足歩行し、人語を解します。行動や思考は人と変わりません。
  好奇心旺盛で、フワフワの毛並みで人懐っこいです。優しく思いやりがあります。
  好物ははちみつ、木の実、とうもろこしです。最近はチョコレートも仲間入りしたようです。
  個性を有しておりますが、甘えん坊で抱きつき癖等があります。
  (ミリアルドのようにされるかもしれません)

 ・好奇心旺盛ですので、任務のことやウィンクルムについて質問、神人や精霊との関係も尋ねてきます。
  ウィンクルムの絆や愛を聞き、お節介を焼くこともしばしばあるようです。

【場所や時間】
 ・場所は同棲しているのならそのお宅になります。
  それ以外は神人か精霊のお宅になります。
 
 ・時間帯は自由で問題ありませんが、朝、昼、夕方、夜から選んでいただけますと描写に反映いたします。

 ・滞在時間も自由ですので、見せたい部屋、お菓子、一緒に昼食や夕食も可能です。
  
【その他及び注意・ジェール消費について】
 ・描写は個別描写となります。多くの部屋を紹介すると描写が薄くなる場合がありますので1~2部屋ほどにしてください。
  思い出の部屋、自慢したい部屋、小熊たちに見せたい部屋など自由で問題ないです。
 
 ・小熊に質問して欲しいことがあったらプランにお書きください。ニコニコと質問します。
  逆に質問も受け付け中のようです。
 
 ・アドリブが入る場合がございます。NGの方はプランに「×」とお書きください。
 
 ・過激な発言や行動があった場合描写できかねます。

 ・お菓子代、昼食費、夕食費などで300jrいただきます。

ゲームマスターより

 草壁 楓でございます。
ご閲覧いただきまして誠にありがとうございます。

 小熊たちもそろそろ旅たちかなと最近考えて、まずはとこのエピソードを考えつきました。
言葉が随分とうまくなったようですが、書くのはまだまだのようです。
小熊たちは過去エピソードに出させておりますが、そちらは関連性はありませんので読まなくて問題ございせん。

 今年も半年を過ぎ、小熊のエピソードもこれで7つ目となります。
毎回可愛がってくださる皆様には心より大変感謝しつつ執筆しております。
今後とも小熊たちを宜しくお願いします。

それでは皆様のご参加お待ちしております!!  

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  こぢんまりとしたかなり年季の入った洋風一戸建て、庭付き
お昼過ぎ、門扉の開く音に小熊さん達をお出迎え
お久しぶりです、最近は小熊さん達どんなことをしていますか?

居間に案内
元々両親が住み始めた時から相当古かったと聞いてますし…
最近の家より小さめかもしれないですね
天藍がこの家に来る事を決めてから、痛んだ所の修繕とか2人で色々手を加えました
将来の使い方まで考えて天藍と相談しながらの作業は楽しかったです

木の実のパウンドケーキ、紅茶、蜂蜜たっぷりレモネード

普段はガーデナーとしてお庭のデザインや管理の仕事をしているので、この庭は看板代わりですね
季節の花を絶やさないようにと、季節に合わせて装飾したりしてます


日向 悠夜(降矢 弓弦)
  弓弦さんのお家で小熊ちゃんたちをお招きするよ
いらっしゃい、久しぶりだね

◆書斎
何時みても凄い蔵書量だよね
様々なジャンルが揃っていて、私もよく本を借りていくよ
ふふ、よかったね

◆庭と縁側
次は書斎を出て縁側へ
小熊ちゃんたち、縁側に座ってちょっと待っててくれるかな?
台所へ行って用意しておいた物を取ってくるね
お待たせーおやつの時間だよ!
茹でたとうもろこしとよく冷やした西瓜を用意したんだ
夏も間近だからね、麦茶もあるよ
西瓜の種を飛ばすのを見てくすっと笑って真似するよ
ふふ、お行儀は悪いけれど西瓜はこれが楽しいよね

私達の普段の過ごし方?
こうやって縁側に並んで座ってゆっくりしている…かな?
贅沢な過ごし方なんだよ?


水田 茉莉花(八月一日 智)
  いらっしゃい黄色ちゃ…んだけじゃないんだ、みんな一緒なんだ
だったらかえって良かったかも、とにかく上がって

(リビングへ案内中)うん、ほづみさんと一緒に住んでる…というか
あたしが住んでた家が火事で無くなっちゃって、その時助けてもらったの
その後あたしが顕現して、偶然ほづみさんが適合…
ど、どうしたのほづみさん!

あはは…今日は朝からこんな感じなの
試作品でリビングがみっちりなんだ…みんな、好きなの食べていいわよ

あのねほづみさん、自宅で出来るスイーツなんだから
市販のスイーツみたいな格好良い見た目は要らないの

全く、ほづみさんたらこだわり始めるとアレなんだから
へ?付き合ってるって思うの?
ほ、ほづみさぁん!(赤面


●お菓子のパラダイスのお家!

 ある日の昼下がり。
 水田 茉莉花は机に並ぶ多くのモノを見て少々困り顔をしていた。
 彼女の精霊である八月一日 智はずっとキッチンに篭ったきり。
 ピンポーン
 チャイムが鳴り茉莉花が玄関に行けば何やら外からは賑やかな声が聞こえてくる。
「はーい!」
 ドアを開けると……。
「いらっしゃい黄色ちゃ……んだけじゃないんだ」
 声と同時に目に入ってきたのは黄色いモコモコの黄色小熊、と他カラフル小熊の全員。
「茉莉花ちゃんこんにちはなの!」
 黄色小熊が先にそう言うと後ろに控えている小熊たちも軽く会釈をして挨拶する。
 茉莉花も全員に笑顔を向けて挨拶する。
「みんな一緒なんだ」
 6色小熊が全員揃えば少し圧巻の玄関先、しかし今のリビングの状況を考えれば1匹だけよりはと茉莉花が微笑みを深める。
「だったらかえって良かったかも」
「何が?」
 茉莉花の言葉に黄色小熊は小首を傾げている。
 まぁまぁと茉莉花は笑顔でポンポンと頭を数回優しく叩く。
「とにかく上がって」
 茉莉花が言うと小熊たちは「おじゃましますなの!」と足をタオルで拭いてから家の中へと入った。

 リビングへと案内されながら茉莉花の後を小熊たちは付いていく。
 黄色小熊は茉莉花と智に何度も会っている。すっかり黄色小熊は茉莉花たちに懐いているのだ。
「ほづみくんと一緒に住んでるのぉ?」
「うん、ほづみさんと一緒に住んでる……というか」
 黄色小熊の問いに一度振り向くと茉莉花は苦笑を浮かべつつ続ける。
「あたしが住んでた家が火事で無くなっちゃって、その時助けてもらったの」
 ほーほ!と茶色小熊が頷く。
「その後あたしが顕現して、偶然ほづみさんが適合……」
 リビングに着くと小熊たちを中に通す。と同時に、
「フンガー!」
 キッチンの方から智の雄叫びが聞こえてきた。
「ど、どうしたのほづみさん!」
 茉莉花は驚きと共にキッチンへと駆け込んだ。もちろん小熊たちも一緒。
「また失敗しやがったコンチキショー!」
 智の様子を見れば頭をクシャクシャと掻き毟っているところだった。
「お、おう、クマ達……見ての通り、お菓子の試作品だぞ」
 試作品の言葉の前に小熊たちはキッチンテーブルに並んでいる多くのお菓子に目は釘付け。
「あはは……今日は朝からこんな感じなの」
 茉莉花はキッチンテーブルを見て再び苦笑い。
「試作品って?」
 茶色小熊は智の作業を間近で見ながらそう尋ねる。
 試作品の言葉の意味が分からない小熊たちは全員首を傾げる。
「んあーおれは会社の、動画配信とかやってる部門に居るんだ」
 なるほど!とポンッと手を叩くと小熊たちは身を乗り出す。
「んでそこの企画で、夏向けの家で作るデザートを披露するんだが」
 智は試作品たちを一通り眺めて、大きくため息をついた。
「んまいことアイスが行かなくてよー」
 今行なっているのはアイスの試作品らしい。
「何でアイスの中に蜂蜜が筋になって入らねぇのかなー?」
 アイスを指で円を描くようになぞり智は頭を抱えた。
「試作品でリビングがみっちりなんだ……みんな、好きなの食べていいわよ」
 ここは智に任せてと、小熊たちをリビングへと誘導する。
 軽快に小熊たちはリビングへと戻っていく。
 だが、黄色小熊と茶色小熊は智の下に残った。
「すじではいらなきゃなの?」
 茶色小熊は智が睨めっこをしているアイスを見ながらそう言った。
「はちみつ、まぜまぜで美味しいのよ」
 黄色小熊は笑顔でそう言う。
 そこに茉莉花が「スプーン、スプーン」と言いながら戻ってきた。
「あのねほづみさん、自宅で出来るスイーツなんだから」
 茶色小熊と黄色小熊は数回茉莉花を見て頷く。
「市販のスイーツみたいな格好良い見た目は要らないの」
 自宅で作るのだから、お手軽が当然ではないかと茉莉花は言った。
「おう、そっか……なら、蜂蜜がしっかり混ざった方が楽か」
 智は、なるほど!と冷凍庫からアイスを取り出す。
 アイスをボールに入れ蜂蜜を混ぜて程よい混ざり具合で一旦手を止める。
 それをアイスディッシャーで掬おうとした時、その様子を真剣に見つめる茶色小熊と黄色小熊に目が留まった。
「それとクマ達……よし、こうするか」
 智は小熊を見て優しい笑顔を浮かべて皿を8つ用意する。
 その皿の上に涼しげなピンク色、青色、緑色と様々なクラッシュゼリーを盛っていく。 
「これをクラッシュゼリーの上に置いて……」
 ボールに入っている蜂蜜入りバニラアイスを丁寧にアイスディッシャーで丸く掬うとそれを皿に盛り付ける。
 真剣な智のその眼差しに茶色小熊と黄色小熊も真剣だ。
 丸いクッキーを取り出すと盛り付けたアイスへと2枚乗せる。
 事前に温めておいたチョコペンでアイスに目、鼻、口を描けば!
「デキター!クマ達ありがとー!」
 皿の上にはクラッシュゼリーの上にアイスとクッキーでできた蜂蜜味クマさんアイスの完成である。
「すごいのぉ~」
「クマさん!同じクマさんなのぉ~!」
 茶色小熊は頬を両手で押さえて感動だと叫ぶ!
 黄色小熊は同じ熊だと大喜び。クラッシュゼリーに乗っている様はキラキラ好きには堪らないのかうっとりしている。
「みんなのとこ持っていこうぜ」
 軽くウィンクするとクマアイスをリビングへと持っていく。
 その出来上がりに茉莉花は笑顔を浮かべる。
「まりかもサンキューなー、頼りにしてるぜ」
 智は茉莉花に優しい微笑みを浮かべて感謝を述べた。

「全く、ほづみさんたらこだわり始めるとアレなんだから」
 クマアイスを口に運びながら茉莉花はそう言う。少々呆れているようだ。
 小熊たちは蜂蜜味のアイスを口に入れると、その甘さに酔うように満面の笑み。
 茉莉花の言葉に智がいつもの調子で「そんなこと言ったってよ」と反論していると、黄色小熊がニコニコと茉莉花を覗き込みながら言う。
「2人仲良し、お付き合いしてるのね」
 そのいきなりの言葉に茉莉花のスプーンを持つ手が止まる。
「へ?付き合ってるって思うの?」
 「もちろんなのよ!」とその場にいる小熊全員がアイスやゼリーを食べながら大きく頷いた。
「ふぁ、付き合ってな」
 智も同じく驚きを隠せずに持っていたスプーンを皿に置く。
 茶色小熊は2人の様子に、間違ったというように、
「あ!恋人じゃなくて夫婦なのね!」
 と智の言葉を遮るように言う。
「……夫婦?!」
 しばしの沈黙、小熊たちがお菓子を食べる音だけがリビングに広がる。
「ソコまで言うなクマぁ、まりかが倒れる!」
「ほづみくん、男ならビシっとなのよ」
 ボソっと茶色小熊は言う。
「ほ、ほづみさぁん!」
 時既に遅し、茉莉花は赤面しながら椅子からずり落ちたのだった。

 数時間小熊たちは茉莉花の家に滞在しウィンクルムの日常を学んだ。
 いつの日か2人が手を取り歩いている姿が見たいと思いながら家を去ったのだった。


●お花のあるお家!

 6色の小熊はある昼下がりに庭を綺麗に手入れしてある家の前にいた。
 こぢんまりとしていて落ち着いたどこか温かさのある洋風の一戸建て。
「ここなのよ」
 ピンク小熊はミリアルドから受け取っていた地図を見ながらそう言った。
 門扉に手を掛ける青小熊。この中にいる人物に早く会いたいらしい。
 キーっという音と共に門扉が開く。
 その音が聞こえたのか門扉から少し歩くと、玄関のドアが開いた。
「お久しぶりです」
 そう言いながら笑顔でかのんは小熊たちを迎えいれる。
「元気にしてたか?」
 その後ろにはかのんと同じく優しい笑顔の彼女の精霊の天藍が立っている。
「てん!らーん!!!」
 天藍の姿を見た青小熊はかのんを避けて天藍へと抱き付いた。
「おっと」
 その勢いに一瞬驚く天藍だが笑顔でそれを受け止める。
「かのんちゃん、今日はありがとうなの」
 ピンク小熊は前に進み出るとお辞儀をして言う。
 かのんはその言葉に優しく微笑むと屈みピンク小熊の頭を撫でる。
「最近は小熊さん達どんなことをしていますか?」
 その質問にピンク小熊は、慰問をしたり、A.R.O.A.で雑用や訓練をしていると答えた。
 その後ろでは天藍の体をよじ登る青小熊。
 かのんは、さぁどうぞ、と小熊たちに中に入るように促す。
「お邪魔しますなのぉ~」
 と足をタオルで拭けばかのんと天藍の家へと入っていった。

 居間へと案内された小熊たち。
 彼女たちらしく温かみのある室内で落ち着く場所なのがわかる。
「ふぜい、ってのを感じるのよ」
 ピンク小熊はあちこち見渡しながらかのんにそう言った。
「元々両親が住み始めた時から相当古かったと聞いてますし……」
 この家にはたくさんの思い出がある。
 両親との思い出、そして伴侶となった天藍との……。
「狭くないのぉ~?」
 玄関から肩に抱えられている青小熊は天藍に尋ねるようにそう言った。
「そうか?十分だと思うが」
 そこまで大きくない居間に4匹の小熊が騒がしく歩いているのを見て、天藍は喉で笑いながらそれを見守っている。
「最近の家より小さめかもしれないですね」
「広さどうこうより、ここでかのんも俺も寛げるかどうかの方が重要だな」
 かのんの言葉を否定するわけではなく何が重要かを告げるように言った。
「天藍がこの家に来る事を決めてから、痛んだ所の修繕とか2人で色々手を加えました」
 ホラと天井を指させば数枚新しくなっている箇所が見て取れた。
「将来の使い方まで考えて天藍と相談しながらの作業は楽しかったです」
 天藍と共に修繕をし、住みやすい2人の空間を作ってきたことが脳裏に過ぎる。
「田舎から出てきてずっと仮住まいの感覚で暮らしていたから、こうしてかのんと暮らしてやっと自分があるべき場所に落ち着いた気はしてる」
 かのんの想いと自身の想いが重なりこの場所で同じ時を過ごすことを選んだのだ。

 居間の案内が終った頃。
 小熊たちは居間で遊び始めていた。
「このお家はかのんちゃんと天藍の愛がいっぱいなのよ!」
 ピンク小熊は言いながらくるくると居間を見学している。
 ドタバタと居間で遊びまわる小熊たち。
 そんな様子にかのんは自然と笑顔になる。
 ギュウギュウと青小熊は天藍に未だしがみ付き離れる様子はない。
「みんながごめんなのよ……」
 ドッタンバッタと繰り広げられる小熊のじゃれあい。
 もちろん天藍もそれをみて微笑んではいる。
「とはいえ、この数だと流石にぎゅうぎゅうだな」
 この居間に小熊が6匹、と住人の2人。
 確かに居間は少し窮屈かもしれない。
「天気も良いし庭に出ないか?」
 空をみれば少し日差しが傾いてきていたが、雲一つない晴天。
 かのんが手入れした庭は天藍にとっても自慢の一つ。そこを小熊にも見て欲しかった。
「じゃあ女小熊さんはお茶出すのを手伝っていただけますか?」
「もちろんなのぉ~!」
 ピンク小熊と他女小熊は胸をトンっと叩くとキッチンへと歩き出すかのんに付いていく。
「男小熊は俺の手伝いを頼みたい」
 言いながら天藍は青小熊を床へと下ろすと残った小熊に声を掛けた。
「あい!!」
 良い返事が返って来る。
 それを聞いた天藍は微笑み庭へ出ると庭で使っているテーブル2卓と椅子を8脚出す。
 よいしょっと一生懸命運びながら天藍の指示に従い、綺麗に整列させていく。
 かのんが一番この場所を小熊たちに見せたいだろうという場所に誘導する。
 整列し終わった頃にかのんと女小熊たちがお菓子や飲み物を持って庭へと出てきた。
「さぁどうぞ」
 微笑みながらかのんは一つずつ、木の実のパウンドケーキと蜂蜜たっぷりのレモネードを小熊の席に置いた。
 そして自身と天藍には紅茶を淹れた。
 それぞれ思い思いの場所に腰掛け談笑が始まる。
 結婚してかのんは幸せか、天藍の好きなところ、さまざまな質問にかのんは頬を少し赤らめながらも、
 『心の底から幸せだと、天藍の存在は何にも変えがたいもの』と答えた。
 そんな答えを聞いて僅かに天藍の耳が赤くなる。
 一つ咳払いをすると、天藍は庭を見ながら口を開いた。
「かのんがいつも手入れをしているから、この庭は本当に居心地が良いだろう?」
 小熊たちはそう言われると頬張っていた木の実のパウンドケーキを皿に置いて庭を見る。
「とっても綺麗なの!あれはなんていうお花?」
 ピンク小熊は薄紫色の花にそっと手を伸ばす。
「デュランタと言います。とっても丈夫な花で開花時期が長いんです」
 答えればそっと香りを嗅ぐピンク小熊。
「かのんちゃんみたいな甘い香りするのぉ~」
 まあ~、と口に手を当てて照れたように微笑むかのん。
「天藍もお気に入りのお庭なのね!」
 青小熊は天藍の膝に頬を寄せすりすりしながらそう言う。
「もちろんだ」
 その安心した微笑みに青小熊も満足そうである。
「普段はガーデナーとしてお庭のデザインや管理の仕事をしているので、この庭は看板代わりですね」
 かのんはウィンクルムとして活動しているが、普段はガーデナーをしている。
 この自慢の庭は自身の仕事振りを見せるものでもあった。
「季節の花を絶やさないようにと、季節に合わせて装飾したりしてます」
 かのんは立つと小熊たちに庭の草木や花の説明を始める。
 その様子に天藍の口角が上がる。
 今の彼女はキラキラとしていて、姿に安らぎを感じるから。
「天藍はお庭で何するのぉ~?」
「見てるだけじゃなく一緒に作業できたら楽しいだろうから」
 いつか、少し手入れの仕方を覚えたい――と青小熊の頭を撫ぜながらそう付け加えた。

 そこから数時間夕暮れ時に小熊たちはかのんと天藍の下を去った。
 2人の幸せな笑顔がいつまでもいつまでも続くことを願い、彼女と同じ甘い香りを忘れないようにと。


●図書館みたいな猫のお家!

 夕暮れに近い時間6匹のカラフル小熊は降矢 弓弦の家の前にいた。
 タブロス郊外にある古い日本家屋に住んでいる弓弦。
 今までの家と違い少し懐かしさを感じる趣である。
 少しの緊張を胸に抱きながら赤小熊はチャイムを鳴らす。
 鳴らして数秒もしないうちに「はーい」という声がする。
 ドアが開かれると、
「いらっしゃい、久しぶりだね」
 日向 悠夜が笑顔で出迎えてくれたのである。
「いらっしゃい、小熊さん」
 もちろん家主の弓弦も穏やかに悠夜の後ろに立っている。
「お招きありがとうなの!」
「お久しぶりなのぉ~」
 赤色小熊と紫小熊がほぼ同時にそう言った。
「あんまり片付いているとは言えない家だが、ゆっくりしていってね」
 お邪魔する立場だから問題ない、と小熊たちは首を横に振る。
「どうぞ」
 悠夜は手招きすると弓弦と一緒に奥へと踵を返す。
 小熊たちは足をタオルで拭くとポテポテと中に入った。
 男の一人暮らしにしてはきちんと整理されており、所々に本が置いてある。
 2人の後を付いていくと数匹の猫とすれ違う。
「にゃ~」
 たまに小熊の足に擦り寄ってはいなくなる。
 小熊たちは猫に最初ドキドキしていたが、そのおっとりとした性格に今では安堵の息を漏らしていた。
 歩いては猫、猫……猫。
 弓弦の家は近所から猫屋敷と呼ばれるぐらい猫が多く居る。
 猫も家主に似たのかおっとりとした性格で好奇心旺盛である。
 それもどこかこの小熊とも似ていた。
 
 2人に促されるまま着いたのは弓弦自慢の書斎である。
「僕の趣味の部屋だね」
 弓弦の書斎には所狭しと本が並べられていた。
 蔵書の数は数えきれないほどである。
「何時みても凄い蔵書量だよね」
 悠夜はよくこの書斎を訪れているが、いつ来てもその蔵書の数に驚いてしまう。
「たくさんあるのぉ!」
 赤色小熊は興味を示してその本の数々を見ている。
「図書館みたい!」
 紫小熊もその多くに目を奪われている。
「本の知識がウィンクルム活動に活かされる事が多々あるんだ」
 弓弦はそう言いながら、本を手に取りパラパラとページを捲っていく。
 『精霊とは』と書かれた項目を小熊に「ほら」と見せるが難しい漢字はまだ読めないらしく、小首を傾げる。
「様々なジャンルが揃っていて、私もよく本を借りていくよ」
 知識はもちろん必要だし、好奇心も必要だと悠夜は続けた。
 そのためには本をたくさん読むのが大事だと弓弦は小熊たちが分かるようにおっとりと説明する。
「気になるものはあるかい?よかったら、好きな本を譲るよ」
 さぁどうぞ、と弓弦は小熊たちの視線に合わせるよう屈むと一箇所を指さして言う。
 小熊たちを招くと悠夜と決めた時に彼は彼らの読めそうな本をいくつか見繕い、取り易いところにおいて置いたのだ。
 どれどれと小熊たちは寄るとその本を一冊ずつ丁寧に手に取る。
 どれも児童書で読みやすいものばかり。
 ジャンルも冒険ものから知識書に、タブロスの歴史書などさまざま。
「ふふ、よかったね」
 悠夜は興味津々に本を読んでいる小熊たちを見て微笑みながら赤小熊の頭を撫ぜた。
「遠慮しないで持っていっていいからね」
 弓弦のその優しい言葉に「ありがとうなの!」といくつか本を譲ってもらった小熊たち。
 準備をしてよかったと悠夜と弓弦は顔を見合わせると微笑みあった。

 次に案内されたのは縁側である。
 少し空が茜色に染まりかけていた。
「小熊ちゃんたち、縁側に座ってちょっと待っててくれるかな?」
 6匹の顔をそれぞれ覗き込むように見ると悠夜は微笑みを浮かべて了解を取る。
「もちろんなの!」
 赤小熊は大きく頷くとニパニパ笑顔で答えた。
「台所へ行って用意しておいた物を取ってくるね」
 右手を振りながら縁側からキッチンへと向かう悠夜。
 それを見守りつつ縁側に足を投げ出すように小熊たちと弓弦は座る。
「弓弦さん……」
「どうかしたかい?」
 紫小熊は少し甘えたように弓弦の服を引っ張る。
 その甘えたそうな顔に弓弦は察する。
「どうぞ」
 と太ももを数回叩く。
 その穏やかな微笑みに紫小熊は安心したように弓弦の膝へと座る。
「よしよし」
 弓弦の大きく温かい手が紫小熊の頭を撫でる。
 他の小熊たちといえば……ゆったりと猫たちと戯れている。
 猫たちは好奇心旺盛なため二足歩行している熊が珍しいのだろう。
 しかし、特に警戒してるわけでもなくすりすりしたり、時にはじゃれたりしていた。
 動物同士だからか何か伝わるものがあるのかもしれない。
「お待たせーおやつの時間だよ!」
 お盆に数本のとうもろこしと食べやすいように切ったスイカを載せて悠夜が戻ってきた。
「ああ、ありがとう悠夜さん」
 そのお盆を弓弦が受け取ると小熊たちの中央へとそっと置く。
「茹でたとうもろこしとよく冷やした西瓜を用意したんだ」
 縁側に座りながら悠夜は小熊たちをみる。
 大好物のとうもろこしに小熊全員が瞳を輝かしている。
「夏も間近だからね、麦茶もあるよ」
 悠夜は小熊たちのために多くのものを用意してくれていた。
 シャクシャクとスイカを食べる赤小熊。
 タネをついついフッと口から庭へと飛ばす。
「あ!お行儀悪かったのよ……ごめんなさいなの……」
 反省している赤小熊を悠夜は小さく笑い頭を撫ぜる。そして、
「ふふ、お行儀は悪いけれど西瓜はこれが楽しいよね」
 と言った後に悠夜も口にあった種を庭へと飛ばした。
「楽しいね!」
 悠夜がそう言えば小熊たち全員と、そして弓弦も庭へと種を飛ばし、一番誰が遠くに飛ばしたかを競った。
 次に好物のとうもろこしを食べ始める小熊たち。
 紫小熊といえば弓弦に抱っこしてもらったままで食べている。
「悠夜ちゃんと弓弦さんって普段何してるの?」
 赤小熊はとうもろこしをもぐもぐしながらそう尋ねた。
 悠夜はその質問にふととうもろこしを食べている手を休める。
「私達の普段の過ごし方?」
 そうだな……と瞳を天に上げながら少し考え、直ぐに赤小熊を見て微笑んだ。
「こうやって縁側に並んで座ってゆっくりしている……かな?」
 最後の言葉と同時に弓弦を見る。その視線に弓弦は彼女を見るとゆったりと微笑んだ。
「四季折々の花が咲くこの庭を眺めて、ね」
 視線を庭に移しながら弓弦は紫小熊の頭を数回優しくポンポンする。
「楽しいの?」
 紫小熊は弓弦の顔を見上げる。
「贅沢な過ごし方なんだよ?」
 悠夜は赤小熊に微笑みそう言った。

 これからも2人はこの穏やかな時を共に過ごしていくのだろう。
 本と猫がたくさんいて、そしてその庭を何度も眺めて。
 悠夜と弓弦にはこれからもこのままゆったりと時を過ごし微笑んでいて欲しいと本を大事に持ちながら小熊たちは去っていった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:日向 悠夜
呼び名:悠夜さん
  名前:降矢 弓弦
呼び名:弓弦さん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月25日
出発日 07月01日 00:00
予定納品日 07月11日

参加者

会議室


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