淡く色づく恋の花(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 精霊と共にやってきた花畑。
 そこには沢山の花々が咲き誇っていた。
 そんな中で、透明な花があることに気がつく。
 落ちてきた星がそこに咲いたような、そんな花だ。
「これって……?」
 不思議な花もあるものだと首を傾げていれば、たまたまのんびりと日向ぼっこしていた老人が、そんな貴方に気が付いて声を掛けてくる。
 曰く、その花に名はない。
 いや、名はあるのだろうが、“恋の花”という名ばかり有名で、少なくとも老人は名を知らぬのだという。
「恋の花?」
 比喩とかではなく? と問いかければ、老人が頷く。
「この花はな、二人以上の吐息を吹きかけると色を付けるんだ」
 それが本当に、“恋の色”かは分からないけれど、それぞれ違う色を示すことから“恋の花”と呼ばれるようになったのだという。
 ただの反射らしいから、例えば友達同士や相棒同士、さらには家族などでやっても同じような結果になるらしい。
「詳しいことはそりゃ色々あるんだろうが、こういうのはそういう無粋なことをいわぬほうがいいだろうな」
「そうかもしれませんね」
「あぁ、あと、色がついたら持って帰って押し花にしたりしてるみたいだぞ」
 他の花と一緒に持って帰って、ドライフラワーにしても綺麗だという。
 勿論、花を摘むには限度というものがあるけれど、少なくとも片手で摘める程度には持って帰っても大丈夫。
 精霊と顔を見合わせた貴方は、さて、どうしようかと話合うのだった。

解説

●恋の花
 星のような形をした透明な花。
 二人以上の吐息をかけると、花の色が変わります。
 何の色になるかは吹きかけるまで分かりません。
 指定していただいても大丈夫ですし、私の方で決めさせていただくも大丈夫です!


●花畑
 色々な花が咲いています。
 この季節に咲く花ならばなんでも!
 ピクニックも気持ちいいとおもいますので、ごゆっくりとお過ごしください!


花畑に来るまでに、300ジェール使いました。

ゲームマスターより

のんびりとした時間をお過ごしください!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)

  花畑でゆっくり過ごすのも、悪くないじゃん。
ラキアは花好きだし。ラキアから花の話聞くの好きだ。
花の話してる時のラキアは凄くいい表情してるからな。

お、ホントだ。ひまわりに似てる。オレこの花、好きだな。
手のひらサイズのひまわりみたいじゃん?元気が出る感じ。
お日様ダイスキーって色だな。黄色とかオレンジとか。赤いのもあるのか。
ラキアの庭でも見かけるよな。

でも透明な花スゲー。初めて見た!
早速2人で息吹きかけてみよーぜ。どんな色になるかな?
幾つかの花に息吹きかけて、どんな色になるのか比べてみよーぜ。
沢山の色が出ると面白いな。
うん、スマフォで撮影だけして花は残しておこう。
また来年花を咲かせてくれた方が良いし!


鳥飼(隼)
  なるべく踏まないように、膝をついて花を見る。
「二人以上……」(呟く
試しに息を吹きかけても、色は変わらない。なら。(頷き、息をかけた一輪をそっと手折る
「隼さん、息を吹きかけて貰ってもいいですか?」(笑みを浮かべ、隼に花を差し出す

「わあ、本当に色が」
そうだ。もう一輪ぐらい、いいでしょうか。(近くの恋の花を手折り、息を吹きかけて隼に渡す
「押し花にする人もいるって話してたので。一輪ずつ、それぞれ押し花のしおりにするのも素敵かなって、思ったんです」

勝手に思い込んじゃっていました。
「だめ、だったでしょうか」(浮かれてたと、罰が悪そうに窺う
「よかったです」(息を吐いて微笑む

もう少し、のんびりしていこうかな。


ルゥ・ラーン(コーディ)
  花の噂を聞き見に来た
花畑を楽しげに歩く
見つけて これですね
私達の恋の色確かめてみましょうか
浮き上がった色合いに素直な感想を述べうっとり※色お任せ
2輪摘む

花を愛でつつ徐に彼をしっかり見据え
近い内『彼』との対話を再度試みたいと思っています

教えてあげたいんです
望みを叶える方法を
対話を許して頂けますか?

許しと取れる答え聞き嬉しそうに
私これを押し花にしてお守りを作ります
1つを持っていて欲しいんです
あなたの愛がきっと私を守ってくれる

ふふ
まだ気が付いていないだけなのでは?
私は感じてますよあなたの愛…
花に触れ

はい
よろしくお願いします ふふ

そっと花を物に挟み仕舞う
さぁ 頂きましょうか
来る途中に購入したランチ広げる


歩隆 翠雨(王生 那音)
  珍しい花、これは写真に撮らずには居られない
透明な状態の花を写真に収めて
これが色づく所が見たいけど…視線を上げれば、那音と目が合って

…うん、完全に見透かされてる
俺が分かりやす過ぎるのは自覚がある

…サンキュ
目を合わせられず礼を言って
二本の花に那音と一緒にそっと息を吹きかける

色が変わった…綺麗だな(色お任せ)
早速カメラを構えて、色んな角度で写真を撮る

花も景色も…人も
同じ色はなくて、次に出会った時はもう違う色
その感じた一瞬を撮る事の出来る写真が好きだ
…なんてな
何語ってるんだろうな

そうだな、うん、少し貰っていこう
あのさ、押し花もドライフラワーも作った事なくて
教えてくれないか?
夕飯くらいはご馳走するからさ


紫薇院・世弦(櫻馬・矩親)
  花の色お任せ

へぇ、恋の花
珍しい、初めて見ます
しかも息をかけると色が変わる…これは二人でないとダメなんですね

(じっと矩親を見つめ)
……色が変わるところがみたいんですが、やりませんか?
もちろん僕の個人的興味に、矩親さんを巻き込むのは気が咎めますが…

ふふ、たしかに
意地悪な言い方でしたね
では、チカ。命じます
花に一緒に息を吹きかけてください

…興味深い
チカと僕の関係性もそうですが、色づく瞬間も非常に興味深い
ああ、他の人でも試してみたいですね
真に信頼する相手とはどういう色に色づくんでしょうか
姉とか妹とか
…ああ、チカのことを信頼してないわけじゃないですから、そんな顔をしないでください
信頼しているし、好きですよ


●翠雨と那音の恋の花
 その花畑に咲くのは恋の花と呼ばれる、ちょっと珍しい花。
 星型の形に咲くというその花は、二人以上の吐息をかければ色んな色合いへ変化するのだと言う。
 歩隆 翠雨は持って来ていたカメラを、何気なく見ていては気がつくこともできないだろう透明な花弁へと向ける。
 この花を写真に撮りたい。
 そういう目的でやってきたのだ。
 カシャリと撮られた一枚。
(これが色づく所が見たいけど……)
 透明な花もいいけれど、次の一枚は、色づく所を。
 視線をあげた先にはそんな翠雨を青い瞳を細め、優しい笑みを浮かべ見詰めている王生 那音が居て。
 翠雨が唇を開く前に、那音がゆっくりと唇を開いた。
「じゃあ、息を吹きかけようか」
 まるで自分の思考を読まれたかのようなタイミングでのその言葉に、水色の瞳を軽く見開く。
(……うん、完全に見透かされてる)
 自分がとても分かりやすいという自覚はあるのだけれど。
「……サンキュ」
 目を合わさずそうお礼を言った翠雨は、那音がどこか嬉しそうに瞳を細めたのには気がつかなかった。
 それでも、二本の花の前に居る翠雨の隣に感じる気配は、優しい。
 そっと吹きかけた二人の吐息に、ふるりと花弁を震わせた恋の花は、薄い空色の青と、暖かな日の光のような淡い黄色だった。
「色が変わった……綺麗だな」
 翠雨の言葉に那音も綺麗だと頷く。
「花も景色も……人も、同じ色はなくて」
 カシャリ、カシャリ。
 翠雨は色づいた恋の花を映し撮りながら、ぽつり、ぽつりと語っていく。
「次に出会った時はもう違う色」
 カシャリ、カシャリ。
 とまることないその音を聞き……そして、熱心な翠雨の背中を見詰め、那音は静かに独り言に聞き入る。
「その感じた一瞬を撮る事の出来る写真が好きだ」
 ……なんてな。
 そう呟いた翠雨に、優しい声音がかえる。
「……翠雨さんの撮る写真が、私は好きだよ」
 それはとても優しい声音で、それでいてどこか僅かな驚きも含んでいた。
(そうか、当たり前の事だが……今改めて気付いた)
 何を語ってるんだろうなと再びカメラを構えた翠雨を見やりながら、那音は心の中で呟く。 
(翠雨さんの写真は、翠雨さんの見えている、感じている景色なんだな)
 写真を撮る背中を見詰め、きっと、と思う。
 きっと、今日出来る写真も翠雨の感じた心を映し撮ってくれるのだろう。


 それからしばらくして。
 撮り終え手にしたのは二人の恋の花。
 どうしたの? と問うような那音の視線に気がついた翠雨が、あのさ、と唇を開く。
「押し花もドライフラワーも作った事なくて、教えてくれないか?」
 老人から聞いた、恋の花の“思い出作り”。
 それらの作り方を知らないから。
 掌で青と黄色の恋の花を遊ばせながらのお願いに、瞳を笑みの形に細め、那音が頷く。
「ああ、押し花もドライフラワーも、どちらも教えよう」
 翠雨がほっとしたのか、ふっと息を吐きだし、口元に笑みを浮かべる。
「夕飯くらいはご馳走するからさ」
 けれど、その言葉に那音は頷くことはせず、ふるりと小さく首を振った。
「私の写真を撮ってくれた事があっただろう? その写真を見せて欲しい」
 それが私へのお礼ということで。
 そう言われ、翠雨の瞳が僅かに開かれる。
(翠雨さんの視界に映る俺を知りたい)
 二人の視線が絡みあう。
 そんな彼から視線を逸らさず、そう那音は強く想うのだった。



●ルゥとコーディの恋の花
 暖かな日差しの中、甘い花々の香りに包まれて。
 さらりと美しい紫の髪を風に靡かせ、ゆるりと花畑を歩くのはルゥ・ラーン。
 しゃらりと音を立てるのは星や月の装飾品だ。
 そんな彼と精霊のコーディは、恋の花という不思議な花があるという噂を聞きつけてこの花畑へやってきていた。
 どこか楽しげに花畑を歩いていたルゥが、立ち止まれば微笑ましく見つめていたコーディも立ち止まる。
「……これですね?」
 彼の視線の先。
 そこには透明な星型の花が咲いていて。
 小さくひっそりと隠れるように咲いているその恋の花は、ルゥとコーディに見つけられてどこかほら、試してみて? というように花を揺らしていた。
「私達の恋の色、確かめてみましょうか」
 ちらりと見詰めた先のコーディはしゃがみこんだルゥに、しゃがむの? と問いかけつつも同じように隣に寄り添って。
 その瞳は恋というワードに僅かな戸惑いを滲ませていた。
 吹きかけた二人の吐息は蜂蜜のような月の色。仄かに黄色いその花にルゥが嬉しそうに微笑む。
「凄く綺麗ですね、月の光みたいです」
「ふーん……」
 うっとりと眺めるルゥとは裏腹に、色が変わるの不思議だなぁぐらいの感想を持つコーディ。
 二輪摘んだ彼を誘い、置かれたベンチへと座れば暖かな風が花の甘い香りも運んでくれるのだった。


 指先でくるりと回した花から視線をあげ、ルゥはしっかりとコーディを見る。
「近いうちに彼との対話を再度試みたいと思っています」
 そう言われ、コーディはゆるりと首を傾げた。
「何話そうっての?」
「教えてあげたいんです。望みを叶える方法を」
 ルゥ曰く、彼の望みは運命の神人に会うことだと言う。
 現世に留まっていては巡り逢えない、前世の愛を抱いて生まれ巡りあう存在。
 それを説いて成仏へと導いてあげたいという自らの神人の願いに、コーディが瞳を伏せる。
「対話を許して頂けますか?」
(ヴァルハラ・ヒエラティックか……)
「……僕は何をすればいい?」
 コーディが出した答えは、そんな答えだった。
 その答えを聞き、ルゥが微笑む。
「私これを押し花にしてお守りを作ります」
 そして、もうひとつを貴方に。
 手に持った恋の花を見せれば、コーディが瞳を瞬いた。
「あなたの愛がきっと私を守ってくれる」
 だから持って居てほしいと言われ、コーディは首を傾げる。
「……僕の愛はあてになるかな?」
「ふふ、まだ気が付いていないだけなのでは? 私は感じていますよ」
 貴方の愛を。
 淡い黄色の花弁に触れながらそう言えば、コーディが微笑む。
「君を可愛いと思う事はあるけど」
 でも、と思う。
(正直、愛してるかはわからない)
 それがコーディの正直な気持ちだった。
 だからこそ、唇から出た言葉は、こんな言葉で。
「……自信家だね、君」
 そう言ったあと、コーディが瞳を心配の色に染め上げ、お守りだけじゃ心許ないと主張する。
 だから、何かあったら駆けつけられるように。
 守れるように……。
「僕も同席するからな!」
「はい。よろしくお願いします」
 ルゥはそれを拒否することなく受け入れる。
 ふふっと微笑みを浮かべつつ、さっと花を挟み込み仕舞えば、ルゥが取り出したのはランチだった。
 それはとても美味しそうな香りを振りまいていて。
「さぁ、頂きましょうか」
 来る途中で買って来ていたランチを広げれば、コーディがぱっと笑顔を浮かべる。
「いただきます!」
「どうぞ、召し上がれ?」
「おいしい……!!」
 そんな風に和気あいあいとベンチで寄り添い、二人仲良く食べ始めるのを、風に揺れる花々がそっと見守るのだった……。


●世弦と矩親の恋の花
 暖かな日差しの下、花々の香りに包まれやってきた者達がいた。
「へぇ、恋の花」
 紫薇院・世弦はそう呟き、改めて注意深く花々を見詰めて行くその隣では、櫻馬・矩親が首を傾げていた。
「恋の花?」
 一体どういうものなのかと疑問に思っていれば、見つけたのか世弦が矩親へと指し示す。
 そこには普通にみていれば見落としてしまいそうな程、透きとおった星のような形をした花があった。
「珍しい、初めて見ます」
「ただの透明な珍しい花じゃないか」
 どこか感心したようにいう世弦とは違い、矩親は憮然と見詰めるのみだ。
 いいえ、違いますよ? と世弦が首を振る。
 恋の花はただの透明な珍しい花、というわけではなく、吐息を吹きかければ色が変わると言うのだ。
 ただし、注意点が一つあるのだと矩親へと語りかける。
「これは二人でないとダメなんですね」
 二人以上の吐息じゃないとと言われれば、わずかに眉を寄せる矩親。
「二人以上で息を吹きかけると色が変わる、だと?」
(そんな摩訶不思議なことがあってたまるか)
 なぜか恋の花と睨みあうように見詰めていれば、感じるのは背中への視線。
 そちらへ視線をやれば、金の瞳が恋の花ではなく矩親を見詰めていた。
「色が変わるところがみたいんですが、やりませんか?」
「む……」
 難色を示すその声音に、神妙な表情で世弦が言葉を紡ぐ。
「もちろん僕の個人的興味に、矩親さんを巻き込むのは気が咎めますが……」
「そういわれては、しかし男二人で息を吹きかけるなど、そんな不埒な……」
 表情は変わっていないけれど、戸惑っているのが十分に伝わる声音に、ふふっ確かにと世弦が笑みを浮かべた。
「わ、笑うな!」
「意地悪な言い方でしたね」
「意地が悪いとわかっているなら改心しろ」
 そう優しい声音で言う世弦に矩親が僅かに不満を滲ませそういえば、すぐに凛とした声音で世弦がその先を続ける。
「では、チカ。命じます。花に一緒に息を吹きかけてください」
「チ、チカと呼ぶな」
 動揺する姿を瞳を細めて見守っていれば、くっと声をあげる。
「命じられては仕方あるまい」
 そう言って、地面にと膝をつくのだった。

 二人で肩を寄せ合い、透明な花弁へそっと吐息を吹きかける。
 ふるりと震えた花弁は、透明から赤黒い色合いへと変わっていく。
 赤を濃くして黒へと変わる、そんな赤黒い色。
 けれどそれはまだ綺麗に混ざり合ってはおらず、まだ少々距離があるような、そんな色合いだ。
「おお、本当に色が変わっている、美しいな」
「興味深い」
 じっと見つめていた世弦がぽつりと呟く。
「チカと僕の関係性もそうですが、色づく瞬間も非常に興味深い。……ああ、他の人でも試してみたいですね」
 真に信頼する相手とはどういう色に色づくのか、それは例えば、姉や妹だとしたら?
 独り言を呟きはじめた世弦をちらりと見た後、矩親も隣に聴こえるか、聴こえないかぐらいの声音で囁く。 
「本当に、世弦のそういうところは尊敬に値するのだがな」
(年頃の少年であるし、見ていてこちらも気分が良い)
 そう思う矩親ではあったけれど、その表情はどこか浮かないようにも見える。
 恋の花から視線をあげた世弦は、隣の精霊を見詰めて。
「ああ、チカのことを信頼してないわけじゃないですから、そんな顔をしないでください」
 浮かない顔に気がついた世弦はそう言って、安心させるように微笑む。
「どんな顔をしていたというのだ?!」
 それに驚いたように僅かに瞳を見開いた矩親は、動揺が残る声音でそう問いかけるけれど。
 瞳を笑みの形にした世弦はそれに具体的に答えることはせず。
「信頼しているし、好きですよ」
「す、すき? ふ、不埒だぞ!」
 どこか慌てたようなそんな彼に、世弦は微笑みを浮かべるのだった。



●鳥飼と隼の恋の花
 やってきた花畑は花々が咲き乱れ、その間を人々が楽しげに過ごしていた。
 そんな中を出来るだけ、花を踏まぬように。
 そう、心がけてゆっくりと美しい花々の間に膝をつく鳥飼。
 茶色の髪が風に揺れ花々にとさらりと掛れば、そっと指先で花が散らぬよう避けて。
 そうして見つけたのは、透明な花だった。
 普通にみていたのでは見落としていただろう。
 見つかってよかったと安堵する鳥飼は、1人で来ていたわけではなかった。
 そんな彼より少しうしろではふ、と花をみて弛緩した空気を感じ取りながら、隼は思う。
 ここに自分と来る意味はあったのだろうかと。
 けれどその疑問に答えてくれるであろう己の神人は、やけに熱心に恋の花に夢中で答えをくれそうにない。
「二人以上……」
 そんな疑問を胸に抱いている隼に背を向けたまま、鳥飼はそう呟くと息を吹きかけてみる。
 なるほど色が変わることはないようだと納得する鳥飼を見つめながら、隼は思いを巡らせていく。
 ここに来た意味、共に居る理由。
 それは一体なんだというのか。
(いや、ウィンクルムは絆が重視される)
 色々な方向へ思考が飛びそうになったのを引きもどし、絆が重視される……だからなのだろうと息を吹きかける鳥飼を見詰めながら隼は思う。
 どこかあどけなくも見えるその様子からは、経験を積んだウィンクルムだとは思えないのだが。
「なら……」
 1人では無理なのだと理解して軽く頷いた後、一輪をそっと手折る。
 それを鳥飼は自分を見つめていた精霊へと差し出す。
「隼さん、息を吹きかけて貰ってもいいですか?」
 微笑み、差し出された花を見つめ……暫し後。
 手に取った一輪へ、そっと吐息を吹きかける……。

 それは、じんわりと色付いて行く。
「わあ、本当に色が」
 ゆらりと揺れる星型は、青の濃淡が美しい色だった。
 青色の瞳を瞬かせ、そうだ、と鳥飼はもう一輪、花を手折る。
 ふるりと震える花弁は、今はまだ透明で。
「押し花にする人もいるって話してたので」
 息を吹きかけ、隼に渡しながらそう言えば、先程と同じように息を吹きかけた隼の視線が向けられる。
「押し花は圧迫し水分を出せば良いとは思うが、しおりの作り方は知らない」
 そう言いながら、もう一輪……其方は白いような、でも灰色のような……淡く色づいた花へと視線を落としていた隼。
 続けられての言葉に、視線を再び鳥飼へ。
「一輪ずつ、それぞれ押し花のしおりにするのも素敵かなって、思ったんです」
 俺が持つ意味はないが、望むのなら。
 そう隼に言われ、鳥飼は瞳を軽く見開く。
「だめ、だったでしょうか」
 勝手に大丈夫だと、浮かれていたと罰が悪そうに言う鳥飼に、隼はわずかに首を振る。
「いや、悪くはない」
 だから、大丈夫なのだと言外に伝えれば、良かったですとほっとしたように鳥飼が微笑む。
 そんな様子にふっと肩から力が抜けるような、そんな息を吐き、隼は少しのんびり見て行きますね、と再び背を向けた鳥飼を見つめる。
 彼はまた、のんびりと花を見つめて楽しんでいるようで……。
 さらりと揺れる茶色の髪を見るともなしにみつめ自分は一体何をしているかと、自問自答を繰り返す。
(神人の役にたつというのは……)
 隼は濃い灰色の瞳を細め、想う。
(息抜きも含むのかも知れない)
 穏やかな笑みを浮かべる鳥飼を見れば、この答えは間違えていないのだろう。
 この穏やかな時間が少しでも長く続けばいいと、隼は思うのだった。


●セイリューとラキアの恋の花
 色々な花々が咲くその場所では、沢山の人々が花々をみて楽しんでいた。
 そんな場所にやってきた二人の青年。
 花畑でゆっくり過ごすのも、悪くないじゃん。
 セイリュー・グラシアはそんな心意気で今日、花香るこの花畑にやってきていた。
 勿論、それだけではない。
 赤色の髪を揺らし、緑色の瞳を嬉しそうに笑みの形に細めたラキア・ジェイドバインが花が好きだと言うこともある。
 目の前に広がる花畑はそんなラキアにとって、とても興味深いものだろう。
「座ろうか」
 誘った先は、花が咲き乱れるそんな一等席。
 その誘いを断るわけもなく、セイリューはラキアと共に花畑に腰をおろし、のんびりと過ごすのもいいでしょ? と微笑むラキアに満面の笑みで頷いた。
「色々な喧騒を一時忘れて、気分もリセットされるでしょ」
「そうだな!」
 こくりと頷くセイリューの目の前には、夏に咲く花々が誇らしげに咲いていて。
「初夏も様々な花が咲いているからね。春先から秋の初めまで長期間咲く花も多いよ」
 そうなんだ? とラキアへ視線をやれば、きらきらとラキアの瞳が輝いていて。
(花の話してる時のラキアは凄くいい表情してるからな)
 だからこそ、彼から花の話を聞くのが大好きなのだ。
「そこに沢山咲いている日々草やマリーゴールドとかね」
 そこ、と言われそちらをみれば、セイリューの瞳も輝く。
 彼の言葉はまるで魔法だ。
 きらきら花々も輝いているように見える。
「そのガザニアは花色も多いし、黄色はひまわりっぽいよ」
「お、ホントだ。ひまわりに似てる。オレこの花、好きだな」
 ふふっとそんなセイリューの言葉に、ラキアが瞳を細める。
「手のひらサイズのひまわりみたいじゃん? 元気が出る感じ」
 その言葉を受けて、ラキアが頷く。
「実はガザニアってお日様が大好きでね。晴れた日の日中だけ花が咲くんだよ」
「お日様ダイスキーって色だな。黄色とかオレンジとか。赤いのもあるのか」
 ラキアの庭でも見かけるよなって微笑むセイリューにラキアがふわりと笑んだ。
「セイリューみたいな花だから。ガザニア俺も好きだよ」
 ふふっと微笑むその姿は、この花々の中のなによりも美しかった。


 暖かな日差しの下、のんびりと寄り添いあい、花々をみ……そして、見つけたのは星型の小さな透明な花だった。
 それらはじっくりと見ないと分からない程とてもひっそりと咲いていて。
「あ、本当に透明なんだな!」
 初めて見た! と花々の間に見つけた恋の花に、セイリューが声をあげる。
 息を吹きかけてみようぜ! とお伺いを立てれば、ラキアはセイリューの隣で膝を折った。
「どんな色になるかな?」
 じゃぁ、やってみよう。
 顔を寄せ合い、息をふきかければだんだんと色付いたのは淡い赤色だった。
 まるでラキアの髪みたいだと微笑めば、ラキアが瞳を細める。
「折角だし、どんな色になるか比べてみよーぜ」
 沢山の色が出ると面白いな、と笑えばやってみようとラキアが頷いて。
 赤、青、翠、黄色……それらはどれもとても美しかった。
 しかし二人はそれを摘んで帰ることはせず、スマフォに撮るだけに留めることに。
 摘まずに帰れば種がまた、来年へと残るから。
 そうすれば、来年もこの美しい花々が咲き誇ってくれるだろう。
 スマフォで撮影していけば、ラキアがセイリューへと声を掛ける。
 また来年も探しにこようね?
 そんなラキアのお誘いに、セイリューは嬉しそうに微笑むのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月24日
出発日 06月30日 00:00
予定納品日 07月10日

参加者

会議室


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