3人寄ればなんとやら?(巴めろ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●ウィンクルム+もうひとり=????
「なあ、俺、おかしいところないか? 寝ぐせ、ちゃんと直ってるかな?」
「お前それ、何回聞くんだよ。大丈夫だって」
「だけど、お前の家族に会うのって初めてだし、緊張しちゃって……」
「姉貴、どうせ観光が本当の目的なんだろうしさ。いつも通りでいいよ、ほんと」
 ――それは、2人のうちのどちらかの家族かもしれないし、

「ところで、昨日のあれって誰だったんですか?」
「へ? 昨日の?」
「女性と話していたでしょう。随分と親しげでしたが……」
「ああ、見てたんだ。昔の同僚だよ。今度、君にも会いたいって!」
「そう……そう、でしたか」
「あ、今、ほっとしたでしょ」
「……適当なことを言わないでください」
 ――若しくは、ウィンクルムの片割れの古い知り合いかもしれない。

「さっきのあいつってさあ、お前のことが好きなんじゃねえの?」
「……お前は偶に、突拍子もないことを言うな」
「いやでも、現に、お前の前でだけ態度が違うじゃん?」
「……そう、だろうか」
「お前ってさあ……いや、やっぱいいわ」
「何だ、気になるだろう」
 ――そして、或いは、彼かあなたに想いを寄せる誰か、かもしれない。

 『もうひとり』が加わった時、2人の間にはどんな化学反応が起きるでしょうか。

解説

●詳細
ウィンクルムのお二人+『もうひとり』を交えた3人で時間を過ごすエピソードです。
なお、『もうひとり』に【エピソードに参加していない方の契約精霊さん】をお選びいただくことはできません。
また、特定のエピソード固有のNPCも、『もうひとり』としての指定はご遠慮ください。
プランには、あなたや彼の心情・行動等の他に、

1.『もうひとり』と出会う場所とシチュエーション
2.『もうひとり』とあなた・『もうひとり』と彼の関係(両方)
3.『もうひとり』の言動
4.『もうひとり』に対するあなたと彼の口調(敬語か否かと、その他こだわりあれば)

以上4点をご指定くださいませ。(書き方は自由、明示がなくともそれとわかればOKです)

また、
・『もうひとり』の名前、性格、外見、口調、職業、あなたや彼をどんなふうに呼ぶか
などその他諸々、文字数の許す限りこだわりを詰め込んでいただければと。
1~4以外は必須ではないですが、不明な部分がリザルト執筆に必要になった場合お任せで補完させていただく場合があります。
この点、何卒ご了承くださいませ。

また、その日の移動費や食事代などで、一律300ジェールの消費となります。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!

以前女性側でも出させていただきました、『もうひとり』が登場するハピエピです。
(ちなみに、そちらは『貴方と彼ともうひとり!?』というエピソードになります)
誰かしら『もうひとり』が登場するという以外は、自由度が高めになっております。
3人で過ごすいつもと少し違う時間を、ご自由にお楽しみいただけますと幸いです。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!

また、余談ですがGMページにちょっとした近況を載せております。
こちらもよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)

  場所:ラキア自宅(セイリュー同居)へラキシスが来訪
関係:ラキシスとラキアは双子の兄弟(ラキシスいわく「恋人だ」)
口調:普通男性口調(やや自己中)皆タメ口
最近ラキシスはラキア宅のある街へ引っ越してきた。

筋トレひと段落して、一休みだと思ったら。ラキシスが来た!
一緒にお茶することに。
オレの勤めてるジムに来ることにしたのか?
うん、大歓迎だ。体を鍛えるのはイイ事だからな。オレは嬉しいぜ。
大歓迎だ!ワクワクしてくきたぞ。
武道場もあるから手合わせもしよーぜ。
それなりに体作ってからだけど!
体鍛えるのは自分達が任務で無事に帰るためだし。
誰かを助けるためにも必要だからだよ。
体を自在に動かすのは大事だからさ。


俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
  げげーっ、おかん!?
なんでこんな所に!
デっ…違っ…関係ないだろ!?
っていうか知り合いなのかよ二人

株主(おうむ返し)
もしかしてうちの店がいきなり株式会社になったのって…
って待てよ?
そういえばネカと契約してから見合いの話がぱったりなくなったんだけど、まさかあれも…
お前らグルか!
はあ…ほんっと疲れる…(頭を抱え

新しい母親?そうか、ネカのお袋は…って
おかんはもういいから行けよっ!?

・母
恵理乃
40代
貿易商
見た目は淑女中身はオバチャン
趣味は仲人
街で偶然出会いデートの様子に興味津々
「あら、あらあらっ!デートかしら?」
「ネカットさんがいるなら仲人はもういいかなって」
「あとは若いお二人で…(物陰から覗きつつ)」


信城いつき(ミカ)
  ミカのお父さん?こ、こんにちは

誕生祝いに好きな物買ってあげるって言われた
それならあそこの季節限定のお菓子で。みんなでお茶しよう
おいしい!これ食べたかったんだ、ありがとう!

うん、本当にこれでいいんだ
一番欲しいのは自分で手に入れなきゃいけないものだから

…笑わないでね。名刺が欲しいんだ

ミカのアシスタントしてるけど
仕事の時のミカはいつも真剣な表情で懸命に仕事してるんだ
それこそ名刺渡す時点から、責任もって良い物を作ろうって感じで

だから俺もいつか、名刺を持てるくらいな一人前のミカのアシスタントになりたいんだ

たかがと思うかもしれないけど、俺にとっては大事な事なんだよ
ずっとミカの仕事見てきたんだから


ラティオ・ウィーウェレ(ノクス)
  起き抜けに呼び鈴が聞こえて、予定は特になかったような?と身支度も整えずに玄関へ。
おや。
「エイミーじゃないか。どうしたんだい」
ノクスの言葉を遮ってしまったかな?(気にして無い

『何て格好してるのよ』(呆れられながら
とりあえず、茶の間に通して珈琲を用意。と思ったけど。
「任せるよ」

『相変わらずね』(研究バカっぷりに
うん?「楽しいからね。仕方ないのさ」
「久しぶりに君にも会えたからね。その所為もある」
『本当、相変わらずね』

「思った事を言ってるだけれどもね」
どうにも、僕の言葉は信用されていない気がするね。

エイミー:勝ち気で明るい美女。ラティの元職場の研究員。神人は呼び捨て。ノクスはさんづけ。二人称はあなた。


歩隆 翠雨(王生 那音)
  那音の仕事関係の人か
何だろう…絡みつくような視線が苦手だ
気付けば俺は無言で
最初は美味しいと思ってた食事も味がしない

那音の携帯が鳴って、後で掛け直すと言おうとする那音に、出てこいよとブラムが背中を押し
席を立つ那音に心細い気持ちに
突然「君は那音には相応しくない」と言い放たれ絶句
「経歴を調べたけど、どこの馬の骨とも分からない人間で驚いた。那音に近付くのは止めてくれないか。彼には俺のようなきちんとした家柄の人間が相応しい」
何も言い返せない

那音に手を引かれ店を出るも慌てて
大事な取引相手じゃ…
俺の得体が知れないのは本当の事だし
孤児?那音が…?
それって凄い秘密なんじゃ…大事の言葉も相まって、胸が熱い
…有難う


●俊・ブルックスの母親と
「おや、あれは……」
 買い物へと向かう途中、その相手に、最初に気づいたのはネカット・グラキエスだった。
「ネカ、どうした?」
「いえ、見覚えのある女性の姿を見かけたような気がしたものですから……あ、やっぱり」
 不思議そうに首を傾げる俊・ブルックスへと、ネカットはそんなふうに応じて。ふと前を見遣れば、淑女らしい見目を裏切ってぶんぶんと手を振りながら、40代ほどの女性がこちらへと向かってくるところだった。ネカットがにこにことして小さく手を振り返す中、俊の琥珀色の双眸が、これでもかと見開かれる。
「げげーっ、おかん!? なんでこんな所に!」
「何でって……実の母親に向かってご挨拶ねえ。偶然よ、偶然」
 2人の前までやってきた俊の母親――恵理乃が唇を尖らせた。そんな彼女へと、ネカットがにこやかに紳士的に声を掛ける。
「これはこれは、恵理乃さん、ご無沙汰しております」
「こんにちは、ネカットさん。って、あら、あらあらっ! これってもしかして、デートってやつかしら?」
「デっ……違っ……関係ないだろ!?」
「そちらは商品の買い付けでしょうか。ブルックス商会には普段より大変お世話になって……」
 俊の狼狽を余所に、2人の会話は恙無く、和気藹々と盛り上がる。2人ともがそんな調子なものだから、じきに、俊のツッコミスキルが火を噴くこととなった。
「さりげなくデートだと認めるな、俺を無視して盛り上がるな、っていうか知り合いなのかよ二人!?」
 一気に言い切った俊の方へと瞳をぱちぱちとさせながら向き直って「ああ」とネカットが言う。
「実は私、恵理乃さんの会社の株主をやっておりまして……」
「株主」
 ついついオウム返しに繰り返した後で、俊は、はたとあることに思い当たった。
「もしかしてうちの店がいきなり株式会社になったのって……」
「まあ投資しましたよね」
「って待てよ? そういえばネカと契約してから見合いの話がぱったりなくなったんだけど、まさかあれも……」
 仲人を趣味にしているはずの恵理乃が俊のじとっとした眼差しを避けるように頬に手を宛がい、ネカットはそんな2人の様子を口元に緩く弧を描いて見遣る。やがて、恵理乃が口を開いた。
「だって、ネカットさんがいるなら仲人はもういいかなって」
「まったく、シュンのお話を聞いた時にはこれは運命だと思ったものです」
「やっぱりお前らグルか!」
 叫ぶ俊。ネカットと恵理乃が、顔を見合わせてくすりとした。
「笑ってる場合か! はあ……ほんっと疲れる……」
 頭を抱える俊へと、ネカットが「すみません」と声を投げる。
「秘密にするつもりはなかったんですが……面白くて、つい」
「面白くて、つい。じゃねえよ! 面白がるな!」
 俊の心からの叫び声は、往来に虚しく響き渡ったのだった。

「今日は珍しいものを見られました。シュンはお母様の前だとあんな感じなんですね」
 恵理乃と別れた後。再び連れ立って街を歩きながら、ネカットがどこか楽しげに言った。
「できることなら見られたくなかった……ていうかお前、関係ないだろ」
「関係ならあります。あの方は将来、私の新しい母様になる方ですから」
 ネカットが静かに紡いだ言葉に、俊はハッと目を瞠る。
「新しい母親? そうか、ネカのお袋は……」
 そこまで言った時、ネカットが、不意に後方へと笑顔で手を振った。その深緑色の視線を追い掛ければ――そこには、物影から興味津々といった調子の顔をして2人を覗く恵理乃の姿が!
「あとは若いお二人で……」
「って、おかんはもういいから行けよっ!?」
 そんな親子の微笑ましい(?)やり取りに、ネカットは得心したというふうにうんうんと頷く。
「なるほど……シュンのツッコミスキルはこうやって鍛えられたのですね」
「いやもうなんか……流石にツッコミどころが多すぎるだろ……」
 痛む頭を押さえる俊をネカットは目元を和らげて見つめ、そんな2人を、少し離れたところからは恵理乃がまだ見守っていた。

●ラキア・ジェイドバインの双子の兄弟と
「ラキア、俺に会えない間、寂しかっただろう?」
「って、ラキシス、この間も遊びに来てたじゃない……」
 双子の兄弟であるラキシスによる自宅への来訪と彼の常の通りの恋人気取りっぷりに、ラキア・ジェイドバインはやれやれと息を吐いた。最近、ラキシスはラキアの家がある街へと引っ越してきたのである。筋トレが一段落してラキアと一緒に一休み……と思っていたセイリュー・グラシアも、ラキアが用意してくれたティーカップを手に、突然の来訪者の姿に明るく苦笑を漏らした。
「ラキシス、相変わらずだな」
「おっ、お茶の時間か?」
 とセイリューの手元を見て言ったラキシスは、どうにも、自分も同席する気満々らしい。ラキアはもう一度ため息を零して、
「いいよ、一緒にお茶の時間にしよう」
 と、ラキシスの分のお茶も手際良く準備した。
「ありがとう、ラキア。愛してるぞ」
「……そういう部分は直してくれると、兄弟として嬉しいのだけど」
「今日もつれないな。まあ、元気そうで何よりだ」
 湯気の立つ紅茶を啜ってのラキシスの言葉に、セイリューとラキアは示し合せたように視線を交わす。
(そう、今日も元気にしているかって、様子を見に来てくれてるんだよね)
 ラキシスなりの想いを知っているから、2人は密やかに笑みを零し合った。と、その時。
「ああ、ところで――」
 ラキシスの口から、思いもかけない言葉がとび出した。セイリューとラキアの色の異なる目が、一度にくるりと丸くなる。
「オレの勤めてるジムに来ることにしたのか?」
「セイリューの勤めてるジムにラキシスも通うの?」
 問いが口を突いたのも、殆ど同時。ラキシスが、楽しげにして口元に弧を描いた。
「街住まいは、体が鈍るからな」
「確かに、森の管理で色々な生物相手にする日々のようにはいかないけど……」
「オレは大歓迎だ! 体を鍛えるのはイイ事だからな。嬉しいぜ、ラキシス!」
 ラキアが口元に手を宛がって首を傾げ、セイリューはテーブルに身を乗り出してにっと白い歯を零す。そんなセイリューに向かって、ラキシスは不敵に口の端を上げた。
「覚悟してろよ。セイリュー、お前を鍛えてやる」
「って、ラキシス、彼は先生だよ?」
「オレは望むところだぜ。ワクワクしてきたぞ……あ、武道場もあるから手合わせもしよーぜ」
 それなりに体作ってからだけど! と音を紡ぐセイリューの紫の双眸は、きらきらと煌めいている。ラキアの唇を、3度目のため息が震わせた。
(セイリューと張り合うつもりかな? ラキシス、負けず嫌いだし……)
 自分の方が上と確かめたいのかもしれない、と思う。子供っぽいなぁ、と双子の兄弟のことを胸の内に評する傍ら、ラキアの胸には、ちらりと、別の考えも過ぎった。
(それでますますセイリューと意気投合されると困る、なんて……)
 そこまでで、はたと気付く。
(……ヤキモチだ。自重しよ)
 目の前では、セイリューとラキシスが、賑やかしく言葉を交わしている。
「で、セイリュー。お前は、何だってそんなに体を鍛えてるんだ?」
「え? 体鍛えるのは自分達が任務で無事に帰るため。それに、誰かを助けるためにも必要だからだよ」
 体を自在に動かすのは大事だからさ、と快活に笑うセイリューを興味深げに見遣って、ラキシスはにやりとした。
「だったら、なおのこと俺も頑張らないとだな。恋人としてラキアを護らないとだし」
「いやいやいや! ラキアを護るのはオレだって!」
 段々と白熱し出した2人の会話を耳に、カップの中の紅茶色を見つめるラキア。
(……これは、今日は中々帰りそうにないね)
 苦い微笑を漏らして、ラキアはこれからの日々を思う。果たして、セイリューとラキシスの接触が増えることで、これからの生活はどう変わっていくのか。
(それはまた別のお話、ってやつかな)
 そんなことを胸に呟いて、ラキアはいい香りのする紅茶を口に運んだ。

●ミカの父親と
「ミカのお父さん? こ、こんにちは」
 ミカとの待ち合わせ場所に現れた男性の素性を聞くや、信城いつきは青い瞳をくるりと丸くして、それから慌ててぺこりと頭を下げた。小学校の教師にふさわしく、にっこりと、温厚な笑みを浮かべるミカの父親。
「はじめまして、ミカとレーゲンの大事な人なら家族のようなものだよ。よろしくね」
 ミカがぶすっとしている横で、いつき達の会話は和気藹々と盛り上がる。そのうちに、会話の端っこへと、いつきの誕生日の話題が触れた。
「誕生日が近い? なら、お近づきの印に何か欲しいもの買ってあげるよ」
「わ、ありがとう! それなら、あそこの季節限定のお菓子で。みんなでお茶しよう」
 いいよね? といつきが目で問うのに、ミカは苛立ち紛れに首の後ろを掻く。
(何で、よりにもよって父親に先を越されないといけないんだ……)
 いつきの誕生祝いのことは、ミカだって考えていたのである。息子が中々いつきに会わせてくれないからと強引にくっついてきた父親の無邪気な妨害に、ミカの機嫌は底へ底へと落ちていくばかりだ。
「ミカ、行こう!」
 こちらも一切の邪気なしに、先を行くいつきがぶんぶんと手を振ってくる。ため息を一つ零して、ミカは仕方なしにその後を追い掛けた。

「おいしい! これ食べたかったんだ、ありがとう!」
 季節限定の菓子を心底から美味しそうに頬張って、いつきが向日葵のように笑う。けれど、相変わらず不機嫌を貫くミカが同じものを口に運ぶその隣、ミカの父親は、ちょっぴり眉を下げていた。
「本当にこれでいいのかい? 遠慮しなくていいんだよ」
 いつきのおねだりはごくささやかなものだったから、どうやら、気を使っているのではないかと心配になったらしい様子。けれどいつきは、そんなミカの父親へと屈託のない笑みを向けた。
「うん、本当にこれでいいんだ」
 一番欲しいのは自分で手に入れなきゃいけないものだから、と、いつきは真面目な調子の声で付け足した。その声音に、ミカの父親は瞳を瞬かせ、息子たるミカもまた、菓子の皿から顔を上げていつきを見遣る。
「君の一番欲しいもの、聞いてもいいかい?」
 ミカの父親が優しく尋ねれば、いつきは面映ゆげに頷き一つ。息子と父親の顔を交互に見遣って、「……笑わないでね」といつきは言った。
「人の、それも息子の大切な相手の望みを、笑うなんてことはしないとも。なあ、ミカ」
「俺に振るなよ……」
 父親に不意に水を向けられてミカは渋い顔をしたが、いつきを弄ることこそあれ、彼の本心からの願いを笑うような趣味はミカにだって当然ない。2人の表情を確かめて、いつきは真摯な調子で音を紡いだ。
「――名刺が欲しいんだ」
 名刺? と父親が繰り返す横で、ミカも金の双眸でいつきを捉えて、次の言葉を待つ。
「ミカのアシスタントしてるけど、仕事の時のミカはいつも真剣な表情で懸命に仕事してるんだ」
 それこそ名刺渡す時点から責任もって良い物を作ろうって感じで、と続けるいつきは段々と熱が入ってきた様子で、その瞳はきらきらと輝いていた。誇らしげなその表情に、ミカの父親が柔らかく頷く。
「そうか、ちゃんとミカも一人前にやってるんだね」
「うん、ミカはすごいんだ。だから俺もいつか、名刺を持てるくらいな一人前のミカのアシスタントになりたくて」
 いつきの真っ直ぐな反応に嬉しそうに目を細める父親の横、ミカは顔を覆うように額に手を遣った。褒められるのは、どうにも得意ではないミカである。
「たかがと思うかもしれないけど、俺にとっては大事な事なんだよ。ずっとミカの仕事見てきたんだから」
 いつきが口元を綻ばせる前、ミカはすっくと立ち上がった。
「ミカ?」
「……お茶、おかわり頼んでくる」
 そうは言うもののカップにはまだ少し琥珀色が残っている。あまりに気恥かしかったものだから、席を立つ理由は無理矢理作ったのだ。
(まさかそんな風に見ていてくれてるとは思ってなかった)
 ちゃんと名刺作ってやらないとな、と、ミカは胸の内に誓いのように呟いた。

●ラティオ・ウィーウェレの元同僚と
(……客か? 珍しいな)
 時間は、午前10時頃。場所は、ラティオ・ウィーウェレの自宅。家主たるラティオの暮らしぶりのせいかあまり用を成していない玄関の呼び鈴が久々に鳴った為に、
(あれは、前日まで徹夜続きだったからな……やむをえまい)
 なんて、ラティオを起こさないようにと、同居人たるノクスは仕方なしに玄関へと向かった。ガチャリと、扉を開ける。そこに立っていたのは、鮮やかな赤髪の美女だった。整った眉が、訝しむように僅か上がる。
「あら? ラティオはいるかしら」
「何の――」
 ノクスが言い掛けた台詞は、最後まで紡がれること叶わなかった。そこに、ラティオその人が現れて、
「おや。エイミーじゃないか。どうしたんだい」
 という調子で、ノクスの言葉を遮るようにして美女――エイミーへと問いを零したからである。ノクスのつり目が、益々以ってつり上がる。なお、苛立ちがノクスの胸を引っ掻いたのは、割って入られたことだけが理由ではない。何せラティオは、
「ラティオ、何て格好してるのよ」
 と、客人のエイミーが呆れの色を声に纏わせて指摘せずにはいられなかったように、碌に身支度も整えず、起き出したままの状態だったのだから。起き抜けに呼び鈴の音を耳にして、「予定は特になかったような?」なんて首を傾げながら玄関までやってきたラティオである。服装のことはともかく、
(ノクスの言葉を遮ってしまったかな?)
 とは、ノクスの表情を見て思ったものの、特にそれを気にしないのがラティオという男。
「ノクス、こっちはエイミー。元同僚……で、いいよね?」
「いいわよ、何の確認よ。ちなみに職種は研究員。よろしくね、えっと……ノクスさん」
 掛け合いのようなやり取りに、2人は親しい仲なのだろうとノクスは判断した。ラティオが、顎に手を宛がって言う。
「とりあえず、茶の間へ。珈琲を用意しようか。ええっと、珈琲の場所は……」
「貴様が探せば日が暮れる、座っていろ」
「そうかい? じゃあ、任せるよ」
 ラティオの言葉を背に受けて、ノクスは客人に珈琲を淹れる為、台所へと向かった。

「依頼か。いやあ、わくわくするね」
「なんていうか……あなた、相変わらずね」
 3人分の珈琲を淹れてノクスが茶の間へと姿を見せれば、手渡された分厚い封筒から資料のようなものを取り出しながら、ラティオが穏やかな調子の声を弾ませているところだった。
「随分と楽しそうだな」
 珈琲を出してやりながら、声を投げる。ラティオは「うん?」とノクスの顔を見て、
「楽しいからね。仕方ないのさ」
 と、おおらかに笑った。勝気な色が覗く瞳を、エイミーが柔らかく細める。
「研究馬鹿なところ、変わらないわね」
「久しぶりに君にも会えたからね。その所為もあるよ、楽しいのは」
「……本当、相変わらずね」
 ラティオの言葉に応じる美しい訪問者の顔を、ノクスは見た。華やかなかんばせに、照れたような呆れたような色が乗っている。ラティオが、資料を封筒へと仕舞い、湯気の立ち昇る珈琲をずずと啜った。そうして曰く、
「思った事を言ってるだけれどもね」
 とのこと。どうにも僕の言葉は信用されていない気がする、と続けるラティオを余所に、ノクスは、何とも複雑な表情で淡く笑み零すエイミーへと声を投げた。
「おい。エイミーといったか」
「そうよ」
 ノクスを見上げるエイミーの目が「何?」と雄弁に問うている。顎でラティオを示して、ノクスは再び口を開いた。
「これは、元からか」
「ええ。元からなの」
 エイミーが、肩を竦めて言う。ラティオだけが、そんな2人のやり取りの意味を図りかねるといった不思議そうな顔をしてノクスとエイミーの顔を交互に見つめていて――けれどやがて、喜色を隠すことなく、封筒の中身をもう一度取り出した。

●王生 那音の取引相手と
「ん、これ美味いな」
 喫茶店で、昼食を済ませていた折。運ばれてきた料理を、歩隆 翠雨は胸の芯の所から温まるような思いで食していた……の、だけれど。
「――ああ、那音じゃないか」
 ふと、向かいの席に座る王生 那音へと声が掛けられた。声の主はきちんとした身なりの男で、年はたぶん、翠雨と同じくらい。
「丁度良かった。今度の取引についてだけど……」
「失礼、ブラムさん。食事中なので後にして頂けませんか?」
 表面上はどこまでも丁寧に、笑顔で男――ブラムへと応じる那音。けれど、那音の言葉を受けてなお、ブラムは引く気はないようだった。
「急いでいるんだ、……そちらの彼は?」
 なんて言いながら、ブラムは強引に、那音の傍らの席に腰を下ろしてしまう。声と共に視線を向けられて、翠雨は小さく頭を下げた。それを確かめたきり、那音へと向き直るブラム。
(那音の仕事関係の人か……)
 那音へと親しげな調子で話し掛けながらも、時折、その眼差しはちらと翠雨に向けられている。
(何だろう……絡みつくような視線が、苦手だ)
 気づけば、あんなに美味しかったはずの食事は味がしなくなっていた。ブラムの馴れ馴れしいような声と、それに応じる那音の声だけが辺りに響く。翠雨は、すっかり空気のようになっていた。那音の携帯電話が鳴ったのは、その時だ。ブラムが言う。
「那音、出なくていいのか?」
「ええ。後で掛け直しますよ」
「だけど、大事な要件かもしれないだろう」
 出た方がいいと、ブラムは那音の背中を押した。一応は席を立ちながらも、那音は翠雨へとどこか心配の色が滲むような視線を投げて――けれど翠雨は、それに小さく笑顔を返す。本当は、やたらに心細かったのだけれど、でも。那音の背中が見えなくなる。それを確かめたように、
「君は那音には相応しくない」
 と、ブラムが冷えた声と眼差しをして、突然に言い放った。声を失う翠雨へと、ブラムはなおも言葉を続ける。
「経歴を調べたけど、どこの馬の骨とも分からない人間で驚いた。那音に近付くのは止めてくれないか」
 彼には俺のようなきちんとした家柄の人間が相応しいと、それがブラムの言い分だった。ぎゅっと、膝の上で拳を握る翠雨。
(……何も、言い返せない……)
 翠雨が俯いた、その時。
 ――バシャン!
 喫茶店に似つかわしくないような水音が、間近に響いた。飛沫が、細かに散る。
「那音……!」
 顔を上げれば、そこには、手にしたコップから僅かに残った水を滴らせて那音が立っていた。一旦席を離れるも、出来過ぎたタイミングでの電話を訝しみ、すぐに踵を返した那音である。その涼やかな双眸は、びしょ濡れになって呆然と自分を見上げるブラムを、底冷えのするような眼差しで捉えていた。テーブルの上に置かれる、中々の額の紙幣。
「クリーニング代です。どうぞ、お好きなように」
「那音、何で、俺は……」
「この期に及んでまだ状況がわからないのか。殴られなかっただけでも感謝しろ」
 ぴしゃりと言うや、那音は翠雨の手を取って立ち上がらせると、そのまま店を後にした。ハッと我に返って、翠雨は那音の足を止めようと慌てて声を投げる。
「那音、大事な取引相手じゃ……俺の得体が知れないのは本当の事だし」
「何者か分からないのは俺も一緒だ」
 まだ怒りが冷めやらぬという様子で、那音は言った。翠雨の手を包む手のひらは痛いほどに力強くて、なのに、どこまでも優しい。
「孤児だからな。それに、翠雨さんの方が大事だ」
「孤児? 那音が……?」
 それって凄い秘密なんじゃ……と思うも、それ以上、那音は何も言わなかった。翠雨の胸に、熱いものが満ちる。秘密を打ち明けてくれたことが、それから『取引相手』という立場を纏った男よりも自分のことを大事だと言い、その通りに行動してくれたことが、先ほどブラムに抉られた傷を癒していく。
「……有難う」
 少しだけ震える小さな声で、けれど翠雨は、確かにそう音を紡いだ。



依頼結果:大成功
MVP
名前:信城いつき
呼び名:チビ、いつき
  名前:ミカ
呼び名:ミカ

 

名前:歩隆 翠雨
呼び名:翠雨さん
  名前:王生 那音
呼び名:那音

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 巴めろ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月21日
出発日 06月27日 00:00
予定納品日 07月07日

参加者

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