【愛慕】ウェディングはあなた流(木口アキノ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 イベリンで結婚式をしませんか。

 そんな誘いがあったのは、タブロスにあるウェディングプランニングの会社から。

 いえ、実際の結婚式を挙げる訳ではないんです。
 ウィンクルムの皆様なら、どんな結婚式を挙げたいか、それをお聞きしたくて。
 男性同士の結婚となると、世間ではまだ挙式に及び腰になるカップルも多くてですね。
 1番の理由は、どんな風に結婚式を執り行っていいのかわからない、というものなんです。
 2人ともタキシード?どちらかがドレス?それとも両方がドレス?
 なんて疑問から始まって。
 バージンロードはどちらがどうやって歩こうか。
 キスは、ファーストバイトはどちらから。
 なんて疑問ばかりで、結局挙式はせずに、というカップルも多いんです。
 ですから、ウィンクルムの皆様からご意見を頂きたいと思いまして。
 そして、今年のウェディングフェアで、男性同士の挙式のモデルとして、擬似結婚式を執り行って頂けたら、と思っているのです。
 多くのカップルに、男性同士ならではの挙式の素晴らしさを知って貰える機会にしたいのです。

 と、いう話であった。
 ウィンクルムの2人に理想の結婚式を計画してもらい、さらに、その結婚式を実演してもらおうという企画なのだ。

 使用できる施設は以下の4つ。さて、どんな結婚式を計画する?

①イベリンのとある教会
 花壇に囲まれた教会。
 鴇色の壁面に設置された、それぞれ違った音階の8つのベルが挙式時には華やかな音楽のように鳴る。

②薔薇の庭園
 ガーデンウェディングにぴったりな庭園。
 薔薇のアーチが美しい。
 少人数の楽団を呼んで演奏をお願いすることも可能。

③イベリン郊外の神社
 神前式を行いたい人に。背の高い木々に囲まれた静かな神社。
 雅楽隊の演奏もある。

④イベリン内の某ホテル
 披露宴会場に適した広間がある。
 ゴンドラやドライアイス、ミラーボールも使用できるので、派手な披露宴を希望するカップルに。

解説

 衣服はレンタルとなります。デザイン等希望があれば教えてください。
 ①②では馬車が使用できます。
 ②④ではケーキ、お料理も提供されます。
 希望があれば、ケーキのデザインなどもプランに記載してください。
 指輪交換は、手持ちの指輪が無いウィンクルムにはレンタルの指輪がありますので、ご利用ください。

 諸費用として一組500ジェールいただきます。

 自由に結婚式をプランニングしていただいて結構ですが、あまりにも予算がかかりそうだったり、実現が困難なものは叶えられない可能性があります。
 例えば、国宝級のティアラを着けるとか、祝砲として本物の大砲を鳴らすなど……。

ゲームマスターより

多くのカップルに、結婚式って素敵だなぁ!と思わせてくださるようなプランをお待ちしています。
個別描写となりますので、よろしくお願いします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)

  オレは白いタキシードにするぜ。ラキアはどーする?
うん、ラキアはローブ似合うから、それで良いぜ。
場所はラキアの希望のトコにしよ。
薔薇の庭園だと花びら舞ったりで何か凄くいい雰囲気になりそうじゃん?
参加人数は少なくて良いんだ。
というか自分達と立会人だけでも良いぐらいだぜ。
披露宴はまた別にすればいいし?

「これからをずっと一緒に過ごしていく」と誓うのは
むしろ自分達だけの方が落ちつくっていうか。
オレ達、今まで任務で生命の預け合いもしてお違い背中護って。
でもそれだけじゃなくて色々な事を一緒に体験していこうぜって改めて誓う!
それでラキアをギュッと抱きしめて。はー、幸せ(にっこり。
生命続く限り一緒だな、オレ達!


ルゥ・ラーン(コーディ)
  衣装
白のシンプルなドレス(露出少
白薔薇のレイ
レースのローブを纏い被るフードがマリアベール的

ドレス姿美しいです
踊り子さんの意匠が入っていてらしいですね

少人数オリジナル挙式
施設②
参列者役に見学者

司会進行の元 開始
軽やかな楽団演奏の中二人で一つのブーケを持ちアーチ潜り手を振り入場

誓いの言葉が記されたボードが設置されており
参列者に向い二人で読み上げる

指輪交換からキスを経て星の形のケーキ入刀
ファーストバイトは同時にあーん
この後は皆さんと料理を楽しみ挨拶に周る
皆さんのお式の参考になれば幸いです ニッコリ

曲調が変わり彼がソロダンス披露
その後加わり一緒に踊る

ええ 夢見ています
目を閉じもたれる

〆は二人でブーケトス


●ルゥプロデュースの結婚式
 自分たちらしい結婚式を、自分たちらしいドレスで。
 ルゥ・ラーンとコーディの衣装には、2人のそんな意志が込められているかのようであった。
 ふわりとした感触の芝を踏みしめるウェディングシューズはレースがあしらわれた白いパンプス。
 一歩歩くごとに、シンプルな純白のドレスの裾からつま先がちらりと見え隠れする。
 手の甲までを覆う袖に、ハイネックという露出を抑えたドレス。その上に、とろりとした光沢がある生地でできた白いフード付きローブ。 マリアベールを彷彿させる、レースがあしらわれたフードの下からは、上質な糸のような紫色の髪がひと束溢れ出ていた。
 首にかけられた白薔薇のレイが、ほのかに香る。
 その装いは清く美しく、更にはミステリアスな雰囲気をも纏っている。
 赤いカーペットが敷かれたバージンロードに辿り着き、ルゥはすっと顔をあげる。
 フードのレース越しに、ルゥの金の瞳はバージンロードの始まりで待っていたコーディを捉える。
 目が合うと、2人は表情を和らげた。
 ルゥはコーディの衣装に目を向けると、その美しさに唇を綻ばせる。
「踊り子さんの意匠が入っていてらしいですね」
 コーディが身に付けているのは、白のワンピース型パンツドレス。
 生地の上にレースを二重に重ねたフレアパンツの裾は後ろが長めでトレーン風。白い薔薇のコサージュが胸元を飾り、肘まである袖はふわりと軽やかなレース。
 腕輪とベルトは揃いのデザインで、銀のプレートとパールを繋ぎ合わせた飾りがいくつも垂れ下がりコーディが動くたびにしゃらしゃらと美しい音を立てる。
 パンツの裾から覗くのは、白の編み上げパンプスで、踝にも白薔薇のコサージュ。
 コーディは褒められたことにはにかみながら、ルゥのドレスも褒める。
「君も占い師チックな印象でまとめたね。らしくていいよ」
 ルゥは照れたように、でも嬉しそうに両目を細めた。
 スタッフが、白薔薇をメインとしたブーケを持ってやってくる。
 ルゥとコーディがブーケを2人で持つと、それを見計らったように、楽団が演奏を始める。
 小鳥が舞うような、軽やかなアレンジのウェディングマーチ。思わず踊りだしたくなりそうだ。
 司会が2人の入場を告げる。
 ルゥとコーディは微笑み合ってから前を向き、バージンロードを歩き始める。ひとつのブーケを2人で持って。花に隠れてこっそりと互いの人差し指をからめ合わせる。
 薔薇のアーチを潜ると、拍手が2人を包み込んだ。
 ドレス姿の美しさに、感嘆の声も聞こえる。
 会場の規模の都合上、見学を兼ねた参列者の数は多くはない。
 だが今日ここにいる参列者は皆、結婚を見据えたカップルばかりである。それぞれが自分たちの姿を思い浮かべながら、想いを込めた拍手を送ったことだろう。
 ルゥは笑顔で手を振り拍手に応えた。拍手が一層大きくなる。
 庭園の奥には色とりどりの薔薇で飾られた小さなステージがあり、その横に、同じく薔薇で飾られたボードが設置されていた。
 ルゥとコーディがステージに立ち参列者に向き直る。
 音楽が止むと拍手が一際大きくなり、やがてそれも徐々に静かになっていく。
 司会がボードを2人の前に移動させる。
 ボードには、2人の誓いの言葉が記されていた。
 拍手が完全に止み、参列者たちはルゥとコーディが次に何をするのか、期待を込めて見守る。
 「せーの」の代わりに、コーディが絡めた人差し指に少しだけ力を込める。
 ルゥはコーディに合わせて息を吸う。
 そして。
「人生に待ち受ける困難にも二人協力し乗り越えていく事を誓います」
 ぴったり揃った誓いの言葉が響く。遠くから、祝福するかのような鳥の囀りが聞こえてきた。
 参列者たちから、わっと歓声があがる。
「それでは、指輪の交換です」
 司会の声に合わせ、楽団が穏やかな音楽を演奏し始め、スタッフが純白のリングピローに乗った指輪を運んできた。
 2人はブーケを一旦、ボードの横にそっと置く。
 コーディが先にレンタルしたシンプルな指輪を持ち上げる。
 指輪交換はどちらからしようか、と打ち合わせた時、ルゥが「精神的にリードしている方が先で良いのでは?」と申し立て、コーディから行うようにと提案したのだ。
「僕は導きの星なんだっけね」
 いつの日かルゥに言われた言葉を思い返し、コーディは、ふふ、と唇の端をあげる。
 ルゥも微笑んで、しなやかな指先をコーディに向ける。
 するり、銀の指輪がルゥの指に収まると、ルゥも優雅な動きでコーディの薬指に揃いの指輪を嵌める。
 参列者の拍手の中、コーディはそっと、レースで飾られたルゥのフードを下ろす。
 レース越しではなく、直にルゥの金の瞳とコーディの紫の瞳が視線を合わせる。
 ルゥがそっと瞼を下ろし僅かにコーディに身を寄せると、コーディも瞳を閉じて、静かにルゥと唇を合わせた。
 そよ風が吹き2人の美しい髪をふわりと躍らせる。
 瞳を開けて参列者の方を見れば、皆の見惚れた視線が自分たちに向けられていて、ルゥは少しだけ頰を染めた。
 キスの余韻が残る中、カラカラとケーキを乗せたワゴンが運ばれてくる。
 ケーキを覗き込んだ参列者から、またも、ほう、と感嘆の声。
 なぜなら、そのケーキにもまた「自分たちらしさ」が現れていたから。
 それは、一般的な丸型ウェディングケーキではなかった。
 ルゥとコーディの目の前に運ばれてきたのは、個性的な星型のウェディングケーキ。
「それでは、ケーキ入刀でございます!」
 司会が場を盛り上げ、楽団も一際大きく音楽を奏でる。
 2人で1つのナイフに手を添えて。
 ナイフはゆっくりとケーキのスポンジに沈んでいく。「共同作業」は無事完遂。またもや会場は拍手に包まれる。
 拍手を送る参列者たちは皆、自然と笑顔が溢れ出る。星型のケーキも素敵だね。そんな会話があちこちで囁かれていた。
 スタッフにナイフを渡すと、スタッフはケーキを切り分けて、ルゥとコーディ、それぞれの前に一皿ずつ差し出した。
 ルゥがフォークで上手に一口分掬うと、コーディの口元に近付ける。
 コーディもケーキをルゥの口元に。
 2人で同時に、あーん、とファーストバイト。
 ケーキの程良い甘さにルゥは双眸を三日月のように細めた。
 スタッフが切り分けたケーキは、参列者のテーブルにも配られる。
「それでは皆様、お料理をお楽しみください」
 と告げて、司会は一旦マイクの電源を切った。
 料理は立食形式で、手軽に摘めるものが多かった。
 ルゥとコーディはステージを降り、参列者の皆に混じって料理を楽しむ。
「あの……っ、素敵なドレスですね」
「誓いの言葉に感動しました」
「ケーキのアイディアはどちらが?」
 あっという間にルゥとコーディは参列者たちに取り囲まれて、質問責めに遭う。
 2人はそれに丁寧に答えていった。
 この模擬結婚式が皆の幸せな結婚式に繋がることを願いながら。
 ふと、緩やかな音楽を演奏していた楽団の曲調が変わった。
 打楽器がアップテンポを刻み始める。フルートが旋律を奏でると、それを追うように管楽器も音を紡ぐ。
 心がうきうきふわふわとするような音楽。
「失礼します」
 コーディが人々の間を縫って、開けた場所へと移動する。
 参列者たちもコーディに注目する。
 コーディは片手を挙げてから一礼すると、音楽に合わせてステップを踏み始める。
 タタン、タタタン……
 ステップは徐々に激しくなり、コーディはひらりひらりと舞う。
 パンツドレスの裾も合わせて踊っているかのよう。身に付けたアクセサリーは陽光をきらきらと反射し、コーディの踊りを一層魅力的に見せていた。
 ルゥはそれを笑みを湛えて見つめていた。
 一曲踊ると、コーディはルゥに向けて手を差し出す。
「おいで、ルゥ」
 ルゥは満面の笑みで「はい」と頷くと、足早にコーディの元へ。
 コーディはルゥの手をしっかりと取ると、再び踊り出す。
 コーディのリードでルゥも踊る。2人のドレスがふわひらと舞う。
 その楽しげな様子に、参列者たちの体も自然とリズムを刻む。
「皆さんもご一緒に」
 コーディが声をかければ、1組、また1組とダンスに加わり、やがて皆が思い思いに踊りを楽しんだ。
「堅苦しくないのはいいね」
 踊りながらコーディが言えば、ルゥも「そうですね」と答える。
 コーディは何の気なしに、軽く問いかけてみた。
「僕との本番夢見てたりするの?」
 するとルゥは踊る足を止め、熱のこもった目でコーディを見つめる。
「ええ、夢見ています」
 真剣な答えに、コーディは思わず息を飲む。
 ルゥは目を閉じると、ふわ、とコーディにもたれかかった。全てを、彼に預けるかのように。
「……っ」
 コーディはルゥの体を受け止める。
(君を信じたら僕の心は決まるのかな……)
 コーディは自分の胸に体を預けるルゥの頭を戸惑いながらそっと撫でた。
 ルゥはコーディのそんな戸惑いを知っているのだろうか。
 それは、ダンスを終え最後にブーケトスで花束を投げるルゥの曇りない笑顔からは、計り知ることはできなかった。

●セイリュープロデュースの結婚式
 ずらりと衣装が並ぶ衣装室で、セイリュー・グラシアは迷わず白のタキシードを選び取る。
「ラキアはどーする?」
 タキシードを体に当ててサイズを確かめながら、パートナーのラキア・ジェイドバインに問いかける。
 ラキアは顎に手を当て思案中。
「うーん、タキシードも捨て難いけど」
 と、ハンガーにかけられた衣装をいくつか手に取り見比べる。
「やっぱり聖職者風ローブが良いかな」
 ラキアはローブタイプの衣装を何着か選出する。
「足元にひらひらしたものがあると落ち着くから」
 やはり着慣れているものが一番である。
「うん、ラキアはローブ似合うから、それで良いぜ」
 セイリューに「ローブが似合う」と言われ、ラキアは少し照れたように微笑んだ。
 それから2人はさらに衣装を吟味して、デザインが似ているタキシードとローブを探し出し、模擬結婚式に着る衣装を決定した。
「場所はどうなさいますか」
 スタッフに問われると、セイリューはすかさずラキアを見て言う。
「場所はラキアの希望のトコにしよ」
 水を向けられたラキアは、いいの?と目線でセイリューに問いかける。セイリューが「もちろん」と言うように頷いたので、ラキアは自分の希望を述べる。
「式はね、薔薇の庭園にしようよ」
 植物を愛するラキアらしい答えである。
「薔薇達に祝福されている感じがあって良いかなって」
「薔薇の庭園だと花びら舞ったりで何か凄くいい雰囲気になりそうじゃん?」
 セイリューも、花の中の結婚式を思い浮かべて目を輝かせる。
 薔薇の花びらの中に立つラキアはさぞ美しいことだろう。
 セイリューとラキアの頭の中で、だんだんと自分たちの考える結婚式の形が明確になってきた。
「参加人数は少なくて良いんだよ。身内だけで十分。誓いの言葉は立会人と、花達に聞いてもらえれば」
 ラキアは理想の結婚式に想いを馳せる。
 花咲き誇る庭園で、お互いの親族が見守る中、牧師の前でセイリューと誓いの言葉を交わす。そんな結婚式を。
「薔薇達は何処にでも居るから、誓ったように暮らしているっていつでも見て貰える感じがするし」
 もちろん、セイリューと暮らす家の庭にも薔薇は咲き誇っている。セイリューとの今までを見守っていてくれた薔薇達が、これからの2人をも見ていてくれる。そう思うと、薔薇達を一層愛おしく感じる。
 セイリューもラキアに賛同するようにこくこくと頷いた。
「参加人数は少なくて良いんだ。というか自分達と立会人だけでも良いぐらいだぜ。披露宴はまた別にすればいいし?」
 きっとセイリューのことだから、たくさんの人々を楽しませるような披露宴を計画するのだろうな、とラキアは思う。
「『これからをずっと一緒に過ごしていく』と誓うのはむしろ自分達だけの方が落ちつくっていうか」
 セイリューが照れたように頰を掻きながらそう付け足すのを聞いて、ラキアはふふっと笑った。
 2人だけの結婚式というのもまた、良いかもしれない。
「でも今回は、見学の人たちがいるみたいだよ?」
 ラキアが悪戯っぽく言う。
「今回は本番じゃないからいいんだ。ちょっと照れるかもしれないけど……」
 などと言っているセイリューだが、実際その時になればきっと堂々とやってのけるだろう。それがセイリューなのである。

 庭園には燦々と陽光が降り注ぎ、光を受けた花々が咲き誇り香り立つ。
 薔薇のアーチの向こうには、薔薇の生垣で囲われた庭園が見える。
 今は参列者用のテーブル等も取り払われ、牧師の待つ祭壇までただまっすぐにバージンロードが伸びている。
 張りのあるサテン生地でかっちりしたデザインのオーソドックスなタキシードはセイリューを一層凛々しく見せた。
 ラキアが着ているのは、同じ生地で作られた足元まですっぽり隠れるローブ風ドレス。首からかけた飾り帯は白地に金糸で薔薇と蔦が刺繍されている。
「やっぱり、よく似合ってるぜ、ラキア」
「セイリューも」
 2人笑みを交わすと腕を組んでアーチを潜り、両脇を花とリボンで飾られたバージンロードを踏みしめ祭壇へとゆっくりとしかし確実な足取りで歩みを進める。
 風にそよぐ葉擦れの音が、花々からの祝福の拍手のようだった。
 しゃんと伸ばした背中に見学客の視線を感じる。
 もし、本当にセイリューと結婚式を挙げるなら。と、ラキアは考えた。
 セイリューと2人きりの結婚式。今回のように見学客の視線もなくて。
 他の誰かのためではない、互いのパートナーに聞かせるためだけの誓いの言葉を交わす、その場面を想像する。
 それはきっと、幸せな瞬間だと思う。だから。
 ラキアは見学客たちのことを思う。
 皆にも、そんな幸せな瞬間が訪れますように、と。
 牧師の前まで来ると、2人は歩みを止め、凛とした目で牧師を見つめる。
「誓いの言葉を」
 穏やかな微笑みを湛えた牧師が促すと、セイリューはくいと顔をあげ、自信に満ちた表情で口を開く。
 一般的な牧師との問答式ではなく、セイリューは自分の言葉で誓いの言葉を紡ぐことを選んだ。
「オレ達、今まで任務で生命の預け合いもしてお違い背中護って。でもそれだけじゃなくて色々な事を一緒に体験していこうぜって改めて誓う!」
 朗々とした声が庭園に響く。
 セイリューの誓いの言葉に、ラキアは彼と出会ってから今までを思い出す。
 数多の戦闘を共に切り抜けて。そうして培われていった信頼。今では誰よりも強い絆で繋がっていると自信を持って言える。
 誓いの言葉を終えたセイリューはラキアに晴れ晴れとした顔を見せる。
「うん、これからをずっと一緒に過ごしていこう、と誓うよ」
 ラキアが笑顔で返せば、セイリューは両腕を広げてラキアを抱き締めた。ぎゅうっと、力強く。全身でラキアを感じられるように。
「はー、幸せ」
 ラキアの感触を体全体で堪能し、セイリューは幸せの息をつき笑顔になる。
 それから、ラキアの新緑のような瞳を見上げ、
「生命続く限り一緒だな、オレ達!」
 と、笑みを深める。
 生命続く限り。
 神人とはいえセイリューは人間で。ラキアは精霊で。
 お互い違う生物種だから寿命も差はあるだろう。
 けれど、それを解った上で尚、2人は共にいることを選んだのだ。
 もしかしたら、ウィンクルムとして経験を積めば何か特殊な事情も出てくるかもしれない。神人の寿命が延びるといった類の。けれど、現時点ではそういった可能性は無い。
 いつか、抗えない生命の終焉というものが2人の前に立ちはだかることだろう。その事実から目を背けることは、できない。でも。それでも。
「セイリューとずっと一緒に居たいよ」
 ラキアも、セイリューの体を包み込み返した。
 温かい、体温。
 2つの鼓動が共鳴する。
 ずっと、ずっと一緒にいることを、君に誓う。薔薇たちに誓う。
 誓いを聞き届けたと言わんばかりに、風に乗った薔薇の花弁が舞い降りて、2人の髪を飾った。

 セイリューとラキアの姿は、多くの見学客に勇気を与えた。なぜなら、彼らの中にも少なからず精霊と人とのカップルがいたからだ。
 遠い未来を憂えるよりも、今、共にいたいという気持ちを大切にしよう。
 セイリューたちの模擬結婚式は、皆にそんなメッセージを送っているかのようであった。

 模擬結婚式を終えた数日後。
 熱いくらいの強い陽射しの下、ラキアは自宅の庭で薔薇の選定に勤しんでいた。
 にゃーん、と背中から鳴き声が聞こえる。
 そろそろ可愛い子たちのご飯の時間だったかな?と振り返れば、そこには猫のバロンを抱きかかえたセイリューがいた。
「今日も熱心だな」
 セイリューは笑顔で庭の花々に視線を遣って言う。腕の中のバロンがぱたんぱたんと尻尾を振る。
 ラキアはくすっと笑った。
「だって、この子たちには、俺たちが誓い通りに暮らしていくところを見ていてもらわなきゃいけないからね」
 ラキアの言う「この子たち」は薔薇の花のことだ。手元に咲いていた薄紅の薔薇の花を愛しそうに、そっと撫でる。
 模擬結婚式だったとは言え、あの時の誓いの言葉は本当の気持ちだ。
「だな」
 そう言うとセイリューはラキアに歩み寄り、ラキアの頰に付いていた土を指先で優しく払ってあげた。
 ラキアは擽ったそうに片目を細めた。
 いつもそばにいて、大切な恋人。
 誓いの言葉を口にしたことで、改めて想いを強くできた。そんな気がする。
 緊迫した戦場の中であっても。
 穏やかな日常の中でも。
 度々起こるちょっと不思議な体験の中でも、もちろん。
 ずっと一緒に時を刻もう。ずっと一緒に歩いて行こう。
 ずっと、ずっと一緒に……。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月06日
出発日 06月12日 00:00
予定納品日 06月22日

参加者

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