ぱすてるいろのたのしみを(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「みなさーん!! ちょっとお時間ありませんかー!!」
 そう言ってA.R.O.A.に報告にきていた貴女方を呼びとめた職員は立ち止まったのを見るとぱんっと手を顔の前で合わせた。
「あのですね、すっごい個人的なお願いがあるんですよー!」
 曰く、その女性職員は常日頃から絵を描くのが好きらしい。
 時々ここでも描いているようで、皆様向けのポスターとか私が描いたりしたのもあるんですよ! と微笑む。
 まぁそういうわけで、今彼女が凝ってるのはクレヨンらしいのだが。
「ほら、お花見の季節でいっぱいポスター描いたんですよ!」
 そして、残ったのは短くなって使えなくなった大量のクレヨン達……というわけだ。
「捨てるのも勿体ないし、かといってこんなに短いのは使いにくいし……で、調べたらどうもマーブルクレヨンとかキャンドルに使ったりするみたいなんですね?
いやぁ私、絵を描くのは好きなんですけど、そういうのはほんっと苦手でして。なので、いっそのこと皆様にお渡しして、皆様に楽しんでいただいたらどうかなぁと」
 なるほど、そういうわけならやってみてもいいかもしれない。
 そう思った貴女は己の精霊へと視線を送る。
 まぁしょうがないなっていう顔をした精霊に頷けば、女性職員がぱっと笑顔を浮かべた。
「場所はもう確保してあって、材料もあるのであとは皆様がいけばOKっていうやつです。蝋を溶かす鍋も、あちらにおいてあるので安心してくださいねー。
あ、後片付けも此方でやるんで、皆様はとにかく作って楽しんでください!」
 材料には限りがあるから、出来ればマーブルクレヨンかキャンドルのどちらか、片方にしたほうが沢山の人が楽しめるだろうとのことだった。
 まぁ、人数が集まらなければどっちも作っても大丈夫かもしれない。
「あと、マーブルクレヨンもキャンドルも、どっちかっていうとお部屋に飾っておく感じのあまり実用的なものではないです。
なので、可愛い型とかにして飾ることを意識したほうがいいかもしれません。
ただ、マーブルクレヨンに関しては細長い型とかにすれば少しは使いやすいかもしれませんね」
 そこはお任せ致しますと女性職員が笑う。
「あ、そうでした、お茶はあちらにありますので、此方は私の差し入れです! 楽しい時間をお過ごしくださいっ!!」
 そう言って差し出されたのは、ジューシーな苺が入った苺大福だった。

解説

 小さくなったクレヨンを発見した如月修羅です、今回はちょっとした工作の時間をお届けに参りました。
 個別描写予定ですが、全員同じ部屋で作っている感じですので、そこは皆様のプレイングに合わせます。


・共通
 簡易台所がついた和室。(机、座布団、お茶セット、電子レンジ、オーブン、そして鍋完備)
 蝋やナイフや割り箸や凧糸、耐久グラスや紙コップやシリコンの型など、必要なものはすべてそろっています。
 よほどマニアックなものでなければプレイングに書いていただけましたら採用致しますのでご安心ください。


・マーブルクレヨン
 クレヨン(適量)をシリコン型(なかったらアルミカップ)にいれて、150度のオーブンで液体になるまで溶かす。
 冷やしたら完成。


・キャンドル
 蝋を溶かし蝋に色付けしたあと、芯をいれた耐熱グラスに注いで固める


 ここにくるまでの交通費として300ジェール使いました。

ゲームマスターより

春の大掃除もそろそろ終わりそうです……!
そういうわけで、宜しくお願い致します。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)

  提案に頷く
花束…素敵ですね
マーブルクレヨンに挑戦

オレンジや黄色の暖色系の色合いを花型に入れていく
オーブンに入れしばし眺める
彼のお顔が近くてドキドキ
恥かしくて
出来上がりが楽しみでございますね
と次の作業に戻る

型を見て
素敵です!
欠かせないと言われ
…!(畏れ多く恥ずかしく言葉が出てこない
お言葉が嬉しくてコクリ頷く
はい、光栄です
2人で色を相談してピンク系の色合い

ボックスへの配置を任され
ハートを中心に白花でライン取り赤系の薔薇を飾り周囲は暖色系の花
幻想的な色合いが楽しくて ふふ
差し色に青や紫系の星を散してリボンがあれば添えて花束ぽく
いいね! と褒めて頂いて嬉しい

大福を頂く時は煎茶を参加者の皆さんにお入れします


ひろの(ケネス・リード)
  マーブルクレヨン

飾る用……。(考える
「わかった」(チラ見して頷く
色んなのがある。……星にしようかな。
色は、混ぜるんだよね。一色じゃなくて。
……。赤と、橙と、黄色にする。
あんまり細かくしない方がいいのかな。(大きめにクレヨンを砕く

「あ、その……」(肯定も否定もできず口を噤む
なんでわかったんだろ。
「狙って……?」(首を傾ぐ
なんか、ダメだったのかな。(首を傾ぐ

型に入れて。オーブン、だっけ?(やり方を確認
過熱して、冷ましてる間。手を拭いて、お茶と苺大福を食べる。
お茶はお礼をいって受け取る。

「今日は、いい」(首を小さく横に振る
また今度、時間があったら。
飾るとこないし。できたクレヨン、机の中に入れとこう。



 どこか温かみを感じる和室、そこには既にさまざまなものが用意されていた。
 靴を脱いで一歩足を踏み入れれば、畳特有の香りが鼻につく。
 ケネス・リードは口元に指先をあて、ふっと瞳を細めた後、共に来ていたひろのを誘い座布団を敷いて座る。
「ふかふか……」
 紺色の座布団は、少々ふかふかしていて座り心地もなかなかだ。
 ひろのが瞳を細める隣で、改めて材料へと視線を向けるケネス。
「へえ、クレヨンで色付け」
 その瞳には、小さくなった色とりどりのクレヨンが映る。
 キャンドルをクレヨンで色付けする……職員の言葉がよみがえる。
 赤、青、黄色、緑、橙、紫……そんな色をなんとなしに眺めた彼が次に視線を移したのは、なにやら考え込んでいるひろのだった。
 彼女の黒い髪にとめられたヘアピンが彼女がわずかに首をひねるたびに、蛍光灯によって光を放っている。
「飾る用……」
 さて、彼女はどうするのかと思っていたけれど、なかなか決まらないようだ。
 ふっと口元を緩めて微笑み、そんなひろのへと声を掛ける。
「じゃ、あたしはあたしでやるから。ひろのも進めてていいわよ」
 さくっと決まったケネスはクレヨンや紙コップがおかれた場所へ手を伸ばす……。
「わかった」
 そんな彼をちらりと見て頷いたひろのは、改めて小さくなったクレヨンたちを見つめる。
 持つのも辛そうな小さなものや、まだ使えそうな大きさなもの。
 途中で折れてしまったのだろうか、鋭利にとがったものもあった。
 クレヨンから視線を外して今度は型の方へ。
(色んなのがある……)
 そこにはオーソドックスな丸や四角や三角から、ハートや犬や猫、他にも色んな形があった。
「……星にしようかな」
 作るのを決めたひろのが呟けば、青を選び終え、次は水色のクレヨンを探すケネスが視線を向ける。
 なにを作るの? というひろのの問いかけに、青系のキャンドルだとケネスが答えを返す。
 集め終えた青色クレヨン。
 その次に今から集める水色クレヨン、そして、最後に白色クレヨン。
 それらを層にわけてつくれば、グラデーションになるだろう。
「蝋を3分割して、鍋も3つ?」
 って所かしら……。と視線をそちらへ向ける。
 そこにはまだ使われていない紙コップや手鍋が出番をいまかいまかと待っているようだ。
 とはいえ、まだクレヨンを探してるから待ってね、と視線は大量に置かれたクレヨンの元へ。
 さっそく手にとった水色のクレヨンは、いっぱい使われたのだろうまぁるくなっていた。
 一個一個大きさが違うそれは、一体なんのイラストに使われたのだろう……。
「……そっか」
 頷いたひろのも、大量に置かれたクレヨンへと視線を向ける。
「色は、混ぜるんだよね。一色じゃなくて」
 かたん、からん。
 指先で赤いクレヨンをとれば、折り重なったクレヨンが缶の中で音を立てる。
 転がっていった灰色を視線で追いつつ、ふっ、と息を吐く。
「……。赤と、橙と、黄色にする」
 その囁きにケネスが視線をクレヨンからあげてひろのへとむけて……何も言わずに再びクレヨンへと戻す。
 どこか真剣な表情をする彼女に声をかけて、その集中力を途切れさせてしまうのも、とも思ったからだ。
 尖がった赤、丸い赤、小さな赤……。
 それらを集めて、次は橙と、黄色も同じように集めていく。
(あんまり細かくしない方がいいのかな)
 型の中に入れやすいように砕きはじめたひろの。
 ガタガタとなる音に、蝋を溶かしクレヨンを入れていたケネスが視線を向けた。
 とても真剣なその様子。
 けれど、その動きは見ていて心配になる。
(危なっかしい手つきね)
「これあいつの色?」
 これ、と言われてひろのが砕くを手を止めた。
 視線はクレヨンとケネスの方を交互に見詰めて……。
「あ、その……」
 それ以上は口の中に言葉が溶けて消えていく。
(なんでわかったんだろ)
 そんな様子をみて、ケネスはふぅっと溜息つく。
 女郎花色の瞳はあいつしか連想できないけど。と詭弁に伝えているのだが、ひろのはクレヨンに視線を落としていて気がつかないようだ。
「狙ってる訳じゃ、……なさそうね」
 ぽそりと呟かれた言葉に顔をあげたひろのは、首をゆっくりと傾げた。
「狙って……?」
 動きに合わせてさらりと揺れる髪をみるともなしにみたケネスは、肩を軽くすくめるのみだ。
 それ以上なにも言ってくれなさそうなその様子に、それなりな大きさに砕けたクレヨンに視線を落としそっとつまみあげて星型へ。
 少しずつ埋めていくそれは、今日ここには来ていない精霊の色。
 欠片を星型に詰めて行くたびに、彼のことを思う。
(なんか、ダメだったのかな)
 どこかしょぼんとしている彼女をみつつ、ケネスももう一人の精霊のことを思い浮かべる。
(これが素かあ、あいつも大変だ)
 主に理性的な意味で。
 まぁ、それをひろのに教えてやるつもりはない。
 指先は芯が割り箸で固定されているコップを抑えて、そっと青の蝋を注いでいた。
 二人が気になるものの、積極的にどうこうするつもりではないのだ。
 そんなケネスに、ひろのが星型にいれたクレヨンを手に問いかける。
「型に入れて、オーブンだっけ?」
「そうよ」
 あとは待つだけと青色の蝋を型へ流し終え、道具を一旦片付けるケネスの手元を見つめる。
「固まったら次の色ね」
 そう言って暫し休憩タイムとするのだった。


 じゃぁ、折角だしお茶でも飲みましょ、そう語り合う二人へと声をかけた人物がいた。
「もしよろしければ、どうぞ」
 同じ時間を過ごしていた二人がお茶を差し出してくれる。
 ひろのと顔を見合わせたケネスは微笑んでその申し出をありがたく受け取った。
「あら、ありがとう」
 いい香りね、と言えば微笑み、ありがとうございますと逆にお礼を言われて。
「……ありがと」
 貰った緑茶を手にケネスがふぅっと息を吐きだす隣で、ひろのもお礼を言っている。
 受け取ったお茶を飲みつつ、貰った苺大福に視線を落とすひろのにケネスが瞳を細めた。
 今日は、こうやって物を作るだけじゃなかったはず。
「そういえば、話があるんじゃなかった?」
 何か、言いたいことがあったはずでしょ。
 そう問いかけるけれど、ひろのは苺大福を手にとり、首を小さく振る。
「今日は、いい」
 ぽつりと囁かれたその言葉をちゃんと聞いて、ケネスがん? と声をあげる。
 重要な事柄ではないだろうか。
 彼の視線の先のひろのといえば、苺大福をパクリと食べていて。
「そう?」
 不思議そうな彼に、ひろのが苺大福を美味しそうに食べながら小さく頷く。
 そして、ふっと口元に小さな笑みを浮かべる。
「また今度、時間があったら」
 そう続けられて、ケネスは躑躅色の髪をさらりと揺らしながら首を傾げた後、なら、いいかと合点して。
 手に持った苺大福を自分もぱくりと口へ。
 甘くジューシーな味を楽しめば、隣でぱくりと同じように食べていたひろのが満足そうに瞳を細めている。
「美味しいわね」
「……うん」
 しばしのんびりしていれば、そろそろクレヨンが固まってきて。
「そういえば、ひろのはそれ、どうするの?」
 取り出した星型のクレヨンを冷ましているひろのに声を掛ける。
 赤と黄色と橙がマーブル模様に美しく混ざり合っている星型のクレヨン。
 じっといつまでも飽きることのないその模様を見つめつつ、置く場所もないから……と机の中にでも、と呟くひろのにケネスが瞳を細めた。
 大切に仕舞われるもう一人のひろのの精霊の色。
 世界でたったひとつだけの、ひろのが作り出した星の形のマーブルクレヨン。
 彼女は机の中を開けるたびにそれをみるのだろうか。
 その時に何を思うのか……。
 なんだか笑いたいような、あいつも大変だろうなと改めて同情してしまうような。
 そんな気持ちになりつつ、さぁて自分のつくっているキャンドルはどこに飾ろうかとケネスは思いを巡らす。
 固まった青色の蝋をつんつん触って確かめて、手早く溶かした水色の蝋を流し入れて。
「……凄いね」
 白色入れたら、どうなるのかな。
 興味深そうにひろのが覗きこみながら呟く。
「出来あがるまでのお楽しみね」
 やっぱり上から覗きこむだけじゃわからないだろうから。
 そんなことを言いながら、再び固まるまで待つことに。
「……楽しみ」
 ひろのが微笑む様子を見ながらケネスは思う。
 どこに飾ったとしても、きっと今日という日の出来事を色鮮やかに思い出せるのだろう。
 そう思うと、なんだかふわりと暖かな気持になるのだった。



 襖の向こうにあったのは、既に材料が用意された和室。
 ユリシアン・クロスタッドは先程の説明通り、置かれた材料を改めてみて特に難しい手順を踏むものはないようだと小さく頷く。
 オーブンと、片手鍋。
 この二つを使う際に、慣れない人なら少々手こづるかもしれない……その程度のようだ。
 マーベリィ・ハートベルはどこか穏やかな時間が流れる和室を目にして、大き目な丸眼鏡の下で愛らしい灰色の瞳を瞬いた。
 これから共に過ごすその場所は、二人を優しく迎え入れる。
「型に入れるだけならぼくでもできそうだ」
 これからの時間が楽しみなのだろう、そわそわしている愛らしいマーベリィを見ながらいうユリシアンに、マーベリィがしっかりと視線を向ければ二人の視線が絡みあう。
 ふわりと笑んだ彼にマーベリィが僅かに首を傾げれば、ふふっととっておきの秘密を言うように花型に種類があるねと囁く。
 彼の優しい声音が耳をくすぐるのに、マーベリィが僅かに頬を染める。
「花束をイメージして作ってみないか?」
「花束……素敵ですね」
 その素敵な提案にこくりと頷いたマーベリィの瞳がきらきらと輝いた。
 マーブルクレヨンで花束を。
 マーベリィはさっと紺の座布団を引くと、ユリシアンと共に座りクレヨンへと視線を落とす。
 赤、青、黒、白、茶色、桃色……沢山の色があるクレヨンの中から二人だけの花束に相応しい色を。
 暫し迷った後、どの色を使うか決めたマーベリィは濃茶のおさげとアホ毛をふわりと揺らし、オレンジや黄色の暖色系の色合いのクレヨンを真剣に取りはじめる。
 その指先は仕事をしている時のように真剣そのものだ。
 手にとった小さなクレヨンたちを花形に入れていく姿を見つつ、ユリシアンも赤やピンクの赤系のクレヨンを取って行く。
 彼は薔薇の型にそれを詰めていき、世界で一つだけの薔薇を自ら作り出す。
 綺麗に型に収まったクレヨンを、マーベリィがオーブンへと入れて加熱しはじめる。
 じぃっと見詰める先ではオレンジ色を放つ熱がクレヨンを溶かしていく。
 そんな彼女の背後。
 そっと近寄ったユリシアンは、彼女の後ろから顔を出す。
 やわらかな香りが、二人を包みこむ。
 傍から見たら、まるで後ろから抱きしめているような、そんな距離。
 頬と頬が触れ合いそうで触れ合わない、そんな距離に、マーベリィの頬が赤く染まっていく。
 声をあげなかったのが、不思議なぐらいだ。
 ドキドキと高鳴る胸のまえでぎゅっと手を握りこんで、一度大きく息を吸えば、ユリシアンの優しい香りが胸一杯に広がって行く。
 このままではドキドキも、頬の熱もきっとユリシアンに伝わってしまうに違いない。
「どんなマーブルになるかな」
 ユリシアンはそんなマーベリィの様子を知っていながら、あえてそれに触れずにそう問いかける。
 確信犯な彼に気がつかない様子にふふっと微笑んでしまうのは、マーベリィが愛らしすぎるからだ。
 そんなこととは露知らず、マーベリィはこの距離をどうにかしようと唇を開いた。
「出来上がりが楽しみでございますね」
 あまりにも近い距離、感じる温もりに吐息。
 マーベリィはそう言って、さっとユリシアンから離れ……次の作業へ。
 そんな彼女にふふっと再度笑みを浮かべ、ユリシアンはさて、次はどうしようかと視線を走らせる。
 型が置かれた場所で、何個か手にとってみていれば、ぱっちりとした瞳を瞬かせ、ユリシアンが興奮気味に声をあげた。
「マリィ! これを見てくれ!」
 見つけたのは唐草模様が小さなハートにも見える、大きめのハートの型だった。
 繊細な模様のそれを手にとり、マーベリィが見やすいようにそちらへ向ける。
「素敵です!」
 ぱっと笑顔で同意されて、大きく頷く。
「ぼく等が作る花束にハートは欠かせないね これを飾ろう」
「……っ」
 ユリシアンのその言葉に、何か伝えたいのに何も、出てこない。
 畏れ多い、という気持ちとなによりも恥ずかしくて。
 唇をあけて、閉じて……そんなマーベリィの葛藤は、ユリシアンにはよく分かっていた。
 だから、そんな彼女を見ながら、ユリシアンは微笑むのだ。
「きみの日々の献身には真心があるし そんなきみにぼくは親愛を感じる」
 ゆっくりと唇を開き、諭していく。
 マーベリィへ、自分の気持ちが届くように。
「お互い心に愛がある。問題ないだろう? マリィ」
 その、言葉が嬉しかった。
 マーベリィは言葉なくただただ静かに、でもユリシアンへの思いを込めてこくりと頷く。
 彼になら言葉なきこの想いも届いてくれるだろう。
 でも、なにか伝えるとしたら。
「はい、光栄です」
 この言葉に全てをのせて。
 マーベリィのはにかんだ笑みに瞳を和ませて、ユリシアンはことんとハート型を目の前に置く。
「……さて、マリィ。これはどんな色が似合うかな」
「そうですね……」
 何個かクレヨンを手にとって、二人で頭を悩ませる。
 そうして選んだのはピンク系の色合いだった。
 二人の思いが籠った、ピンク色。
 そんなピンクを二人で型に入れていく。
「共同作業だね」
 ユリシアンのその言葉にぱっと耳まで赤く染めたマーベリィをみて、また微笑むのだった。


 出来あがったマーブルクレヨンを取り出し、冷ましている間にユリシアンはガラスコレクションボックスを取り出した。
 配置はマーベリィに是非して欲しいとお願いすれば、マーベリィがこくんと頷く。
 気合をいれる彼女は、まずは二人で作りあげたハートをそっと中心に添える。
 その後、暫し考えた後……よどみなく指先を動かしていく。
 白花でラインを取りはじめた彼女の指先から真剣な表情を浮かべる横顔へ視線を動かし、ユリシアンはほぅっと溜息ついた。
 彼女の作業をする手が好きだ。
 よどみなく動く白い指先。
 今、彼女は何を思ってその指先を動かしているのだろうか。
 勿論、指先だけじゃなくて、彼女の横顔も好きだ。
 何を言うでもなく、眺めるだけで心が満たされていくのは、やはり彼女が愛おしくてたまらないからだろう。
 今度は赤系の薔薇を飾り、そして暖色系の花を選び始めたマーベリィは真剣そのもの。
(……可愛い)
 どうやら満足いく出来栄えになったらしい。
 口元に浮かぶ笑みが、愛らしい。
 いろんな角度から確認したあと、次は差し色の青や紫の星を散らしている様子を見守る。
 ふっと緩んでしまう口元を押さえれば、ふふっと声が聴こえた。
 マーベリィが笑っていて、その瞳は幻想的な色合いがとても楽しいと詭弁だった。
(楽しそうだ……)
 だけれど、ふっと首を傾げる様子に、おや? とユリシアンも首を傾げる。
 どうしたの? と声を掛けようかと思った所で、資材が置かれた場所を見ていたマーベリィが瞳をきらきらと輝かせる。
 まるで星のきらめきの様な、そんな美しい輝き。
「これ……」
 どうやらリボンを見つけたようだ。
 生き生きとしたその様子に、ユリシアンは瞳を和ませた。
「……できました」
 紫色のリボンをきっちりと結び終え、そっとマーベリィがユリシアンを見つめる。
「如何でしょう?」
 その問いかけはほんの少し、不安げだ。
「いいね、綺麗だ」
 出来あがった花束に笑みを浮かべれば、マーベリィが美しく愛らしい笑みを浮かべる。
 その笑みからは、褒められて嬉しいと言葉よりも詭弁にユリシアンへと教えてくれた。 
「いい時間を貰えたね」
「はい!」
 こくりと頷いた後、マーベリィはお茶とお茶菓子へと視線を移す。
 そろそろお茶の時間にしてもいい頃合いだろう。
 折角だからとお茶を……と、共に作っていた二人へとマーベリィが差し出せば、二人が微笑み受け取る。
「もしよろしければ、どうぞ」 
「あら、ありがとう。いい香りね」
「……ありがと」
 そう微笑えまれれば、此方もお礼を言って。
 戻ってきたマーベリィを、ユリシアンが優しく向かえ入れてくれる。
 優しい眼差しの彼に笑みを浮かべ、お茶と苺大福でお茶の時間を。
 ことんと置いたお茶からはいい香りがするのに瞳を細めつつ、ユリシアンは改めてマーベリィが丹精込めて整えた花束に視線を落とす。
(ぼくの執務室に飾るとしよう)
 これを見るたび、今日マーベリィと共に過ごした時間を色鮮やかに思い出すことが出来るだろう。
 こんなに楽しく幸せな時間を過ごせたこの日のことを、きっと。
 そしてマーベリィも、執務室に飾られた花束を見て、この時間のことを思い出すに違いなかった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月25日
出発日 05月01日 00:00
予定納品日 05月11日

参加者

会議室

  • [3]ひろの

    2017/04/30-16:20 

    >煎茶
    あ……、はい。
    ありがとうございます。


  • ユリシアン:
    マーベリィと参加させて貰うよ。
    よろしく。

    所で、マーベリィが煎茶を入れたらそちらにも用意していいだろうか?
    同部屋にいるようだしね。

  • [1]ひろの

    2017/04/29-19:32 

    ひろの、です。
    よろしくお願いします。

    ろうそくって、自分で作れるんです、ね。
    クレヨンとどっちに、しよう。(考え込む


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