【堕騎士】騎士、2人(木口アキノ マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 バレンタイン地方にあるとある集落。
 そこに、馬の蹄の音が響いた。
 集落の小人や妖精たちは瞬時に顔色を変え、家の中に飛び込んだ。
 今日もまた、あの騎士たちがやって来る。
 堕騎士となった、2人の騎士が。

 集落の西側から、槍を携えた赤い甲胄の騎士が。東側から、斧を担いだ黒い甲胄の騎士が馬に跨り砂塵を散らしてやって来る。
 2人の騎士はやがて対面し、一陣の風を合図に、互いの得物を振りかざす。
 激しい衝突音。
 赤騎士の槍を盾で往なした黒騎士は、傍から間合いを詰めて横薙ぎに斧を払う。
 赤騎士はくるりと槍を反転させ、その柄で黒騎士の脇腹を突き飛ばし、斧から逃れる。
 黒騎士はすぐにまた間合いを詰め、真上から斧を振り下ろす。赤騎士の盾がそれを防ぐ。
 ギリギリとせめぎ合う盾と斧。次第に斧が盾を沈め始める。
 赤騎士は槍を突き出す。黒騎士の鎧を貫くことは出来なかったが、虚をつくことは出来た。
 一瞬の隙に、赤騎士は後退し間合いを取る。
戦いに決着はつかない。
 2人の騎士は集落を駆け巡りながら、日没まで攻防を続けるのだった。

 そんなことがもう数日も行われている。
 赤騎士と黒騎士が戦っている間、住民たちは家の扉を固く閉ざしてじっと息を潜め、彼らが去るのを待っている。
 畑は踏み荒らされ、門扉は破壊されるが、修理してもまた彼らに滅茶苦茶にされるのだ。   
 人々には最早、修繕する気力もない。
 いつになったら、2人の騎士は気が済むのだろう。
 きっと、2人の決着がつくまで。しかし、その日が訪れるより先に、集落が消失してしまうだろう。すでに家屋を破壊され転居を余儀なくされた住民もいる。
 誰か、あの騎士たちをなんとかしてくれないものだろうか……。

解説

A.R.O.A.の調査によると、赤騎士と黒騎士は元々仲が悪く互いをライバル視していたそうです。
出身地である集落に現れて、自分のほうがより強い騎士であると、出身地の人々に見せつけたいようです。
昼下がりに現れ、互角の戦いで決着がつかぬまま、日没と共に立ち去るそうです。
今回ウィンクルムの皆さんには、この2人の堕騎士を戦闘不能にするか、武器・甲胄を破壊して戦意を喪失させていただきます。
騎士はどちらもCスケールオーガ相当の力量を持っているようです。

赤騎士……元は妖精の騎士ですが、甲胄が重くて飛べません。体は小柄ですが、2メートルの大槍と盾を装備しています。長いリーチを利用して攻撃してきます。
黒騎士……同じく妖精の騎士ですが飛べません。斧と盾を装備しています。斧の破壊力は抜群です。

ゲームマスターより

こんにちは!
魂となっても尚決闘を続ける2人の騎士。このままでは集落が潰れてしまいますので、その前になんとかしてあげてください!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  故郷の人に良いところを見せたいのはわかるけれど
迷惑をかけては駄目よね
落ち着いて話をしたら わかってもらえるかしら?

事前に周辺情報わかれば 戦闘に支障の無さそうな場所を教えてもらう
騎士が現れたら トランス
騎士様が全力で戦ったらこの集落が壊れてしまうの
もっと広い場所に移りませんか と声をかける

ショコランドを守ってくれた騎士様
堕騎士 なんて呼ばれるのは悲しい
わたしたちが勝ったら 元の騎士様に戻ってくれませんか?

>戦闘
赤騎士担当
ガルヴァンさんやシリウスが引きつけている間に 死角から
ロスト・マシナリーソードで攻撃 
シリウスの体力が3割を切ったらk1

ここは大事な場所なんですね
喧嘩しないで 大事にしましょう?


かのん(天藍)
  事前に堕騎士出現時間帯と場所確認
集落の人に戦闘の場として使える場所がないか聞き取り

騎士達へ声かけ
お二方はこの集落の出身ですよね
お二方の戦いで住民の皆さんの家屋や畑が痛んでしまっています
出身地の住民の皆様が悲しみに沈むのは本意ではありませんでしょう?
戦いは壊す物が無い所で行いませんか?

戦闘
堕騎士出現の頃合いにトランスして待つ
出現確認後kl2
黒騎士の間合いから離れ、札を飛ばし攻撃
騎士の視界を遮るように攻撃し天藍が接近するのを援護
馬の視界を塞ぐように札を飛ばし、驚いた馬から堕騎士が落馬しないか試みる

戦闘後
畑の復旧のお手伝い
この時期なら生育の遅れは取り返せます
今年の作柄に影響が無いように頑張りましょう


瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  2騎士が出現する時間、場所は事前に把握。
今までの被害状況を聞き、両騎士の村内での今まで移動ルート表を作成、皆と情報共有。今回も似たルートを通る?騎士達の動きが予測できるかも。
村外辺で野原など戦闘しても問題無さそうな場所を調べておく。
騎士達が戦い始めたらそこへ誘導し畑・家屋の被害を減らしたい。

騎士が出現したらトランス。
「せめて村人の財産に被害の出ない所でして」と騎士達へ主張。
私達は黒騎士担当。
戦闘時は杖でフェルンさんの攻撃力加算。
神符で馬の動きを束縛し動きを止め落馬を誘発。
ダメなら騎士を束縛、他の人が攻撃しやすくする。
敵の動きを良く見て、攻撃をうけないようにする。
フェルンさんのMP低下時はDI。


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  現れて対面する場所が決まっている場合そこでトランスし待機
将を射んと欲すれば先ず馬を射よの精神でいきましょう

目標
武器防具破壊し戦意喪失させる
難しいなら戦闘不能に切り替える

話が通じる場合
私達と戦って下さいと提案

通じず決闘する場合
馬に呪符を投げ付け決闘出来ないようにしこちらに注意を向けさせつつ誘導

戦闘
赤騎士対応
HTG
呪符で攻撃し注意を逸らしたり
外套の閃光効果で目眩ませしたり
神符で拘束できるか試したり精霊の狙い通りになるようサポート

終了後
話を聞いてもらって村の人達に謝らせる
それでも仲悪そうなら
それなら殴り合いで決着付けたらどうですか?と提案
こう拳で語り合ったら仲良くは出来なくても認める事はできるかなと


 本来なら作物が元気に成長する季節である。
 しかし、畑には蹄の跡が無数に刻まれており、畑の主も収穫を諦めたのであろう、折れた苗がまばらにあるだけだった。
「予想以上にひどいな」
 被害確認のため集落を巡回していた天藍がため息を吐きくしゃくしゃと頭を掻く。
「なんとかしてあげたいですね。……あ、こんにちは」
 かのんは道行く住人に声をかける。
 堕騎士についての情報を集めるためだ。
 ウィンクルムたちは、朝のうちから集落に入り、情報収集に奔走していた。
 アラノアは、ガルヴァン・ヴァールンガルドと共に門扉が破壊された家を訪ねていた。
「騎士たちが現れる場所は決まっているんですか?」
 住人たちは協力的であった。小人の女性が答えてくれる。
「毎回同じ場所ではないけれど、概ね集落の中心付近、って感じかしら」
 アラノアは、なるほど、と頷いた。騎士が現れる場所を特定できれば、予めトランスして待機しておける。
 リチェルカーレとシリウスは、集落及びその周辺の地形を把握するために辺りを眺め景色を記憶しながら歩いていた。
「故郷の人に良いところを見せたいのはわかるけれど、迷惑をかけては駄目よね」
 リチェルカーレが、まるで教師のような口調で言う。
「落ち着いて話をしたら、わかってもらえるかしら?」
 指先に髪を一房絡ませて言うリチェルカーレ。
「……とりあえず 住人を襲う気はなさそうだが……」
 返すシリウスは、僅かに眉を顰める。
 そんなに上手くいくだろうか。とは口に出さないものの、リチェルカーレの、優しいというか平和というか、そんな思考がシリウスには理解しかねた。
 一通り情報を集め終えた瀬谷 瑞希は、集落の集会所を借り、ホワイトボードにばーんと大きな紙を広げた。
 集落とその付近の地図である。住人から譲ってもらったのだ。
 ボード横からペンを取り出すと、瑞希はサラサラと地図に書き込んでいく。
「情報を集約すると。騎士が現れるのは午後2時前後。場所は集落の中心付近。この集会所の近辺がそれに当たりますね。西側から黒騎士、東側から赤騎士がどこからともなく現れるそうですね。そこから、大きく円を描いて旋回するように、集落内を暴れ回る、と。ルートを決めて戦っているというより、これは、戦い方のクセのようなものではないでしょうか」
 テキパキした口調の瑞希に、フェルン・ミュラーは一つ一つ頷く。
 こういう時の瑞希は凛々しく美しい。戦闘前であるにも関わらず、フェルンは彼女に見入ってしまう。
 情報収集を終えた皆が次々とやってきて、自分たちが得た情報を報告し合う。
 それに合わせて、地図の書き込みも増えていく。
「集落の西外れに、採石場だった山があるそうです。そこなら、資材置き場だった広い場所があるそうです」
 かのんが地図を指差しながら言う。
 リチェルカーレは集落を散策した時の記憶を探りながら口を開く。
「でも、そこに続く道は長年手を入れられていない林でした。馬に乗った騎士たちは入りにくいかもしれません」
 そうなると、うまくこちらの誘導にのってくれない可能性もある。
「そうか……」
 何か良い方法はないものかと考え込んだガルヴァンは、アラノアの視線に気付き顔を上げる。アラノアは、ガルヴァンを、というよりガルヴァンの武器を見ていた。
 ガルヴァンの武器、すなわち斧。
「……これで木を切り開けと?」
「あ、いや、それは大変だよね、流石に」
 アラノアは慌てて両手を体の前で振る。
「俺も手伝おうか」
 フェルンが片手斧の柄を叩き微笑む。
「元々道があった場所なんだから、皆で手分けすれば、騎士が現れるまでに馬一頭が通るくらいはなんとかなるんじゃないか。日曜大工の延長だと思えばなんてことない」
 天藍がにっと笑って片目を閉じた。
 シリウスが、はっと顔を上げる。
「むしろ、馬一頭ずつ通ってくれた方が都合が良いな」
「確かに。できるだけ2人の騎士を引き離したい」
 ガルヴァンも頷いた。

「ここは枝同士絡まってしまっていますから、切った方が良いですね。こちらの木はもう朽ちてしまっているので、切り倒してあげましょう」
 かのんのアドバイスのもと、精霊たちが採石場への道を開いていく。
 流石に戦大斧双龍や片手斧アーススパイク・アックスなどの武器は使わず、付近住人から鉈や鋸を借りている。住人たちも快く貸してくれた。
 1時間程度で、作業は完了した。
 50メートルほど続く幅の狭い道の向こうに簡素な策で囲われた資材置き場、さらにその奥には切り立った氷砂糖の崖が見えた。
 天藍は、複雑な表情でかのんを見やる。植物を愛する彼女が、樹木を傷つけたことに心を痛めているのではないかと心配しているのだ。
 が、出来上がった道を見たリチェルカーレの
「さすがかのんさんですね。樹々の剪定も兼ねた仕上がりになっています」
 という感嘆の声を聞き、ほっと胸を撫で下ろした。

 一同は集会所の前に戻り、その時を待った。
 かのんと天藍は黒騎士の現れる西側に、アラノアとガルヴァンは赤騎士の現れる東側に向かい、トランスして待つ。
 一陣の風が吹き抜け砂塵に目を瞑る。
 風の音に紛れ蹄の音が聞こえたような気がして、かのんは手で庇を作り目を守りつつ、瞼を開く。
 ゆったりと、騎士の影が近づいてきていた。
「来ました」
 かのんが小声で皆に知らせる。
 風が止み、皆の瞳が騎士の姿を捉えた。
 かのんたちの後ろで、瑞希とフェルンもトランスに移行する。
 アラノアとガルヴァンの目前にも、赤い甲胄の騎士が姿を現した。
 騎士たちはウィンクルムの姿など意に介さぬ様子で前進を続ける。
 アラノアとガルヴァンが赤騎士の前に立ちはだかってようやく、馬が脚を止めた。
 アラノアたちと赤騎士が見つめ合う。その間に、リチェルカーレとシリウスがトランスを済ませる。
「我らはこの集落の者達の依頼により参った」
 ガルヴァンが口を開くと、赤騎士は僅かに顔を上げる。こちらの言葉は届いているようだ。
「聞けば勝負付かぬ決闘を繰り返しているとの事」
 やや騎士を意識した古めかしい口調でガルヴァンが言葉を続ける。
「そこで提案だが我らと戦い、より多くの戦果を収めた者を勝者とするのはどうだろうか」
「私達と戦って下さい」
 アラノアも提言するが、赤騎士はふいと顎を上げ西側にいる黒騎士を指す。
 黒騎士は、かのんたちが説得しているも、馬がしきりに足踏みを繰り返しており、すぐにでも走り出したいという雰囲気であった。
 それを受けて、赤騎士も馬の腹を蹴る。
 すかさずリチェルカーレが赤騎士の前に出て、声をあげた。
「騎士様が全力で戦ったらこの集落が壊れてしまうの。もっと広い場所に移りませんか」
 だが戦いを前に高揚した赤騎士は、リチェルカーレに避けろと言わんばかりに彼女の眼前で槍を横薙ぐ。
 おそらく、リチェルカーレには当たらない。だが、それでも。
 アラノアは呪符五行連環に手をかける。しかし、アラノアがそれを繰り出すよりも早くシリウスが前に出て、槍の穂を魂剣ソウルダンサーで弾いた。
「一騎士なら、敵を前にして逃げるなんてしないだろうな?」
 シリウスが薄く笑い挑発する。
 赤騎士は馬の脚を止め、槍を構えなおした。
 視線の先は、黒騎士ではなくシリウスたち。
 リチェルカーレが胸に手を当て訴える。
「わたしたちが勝ったら、元の騎士様に戻ってくれませんか?」
 ショコランドを守ってくれた騎士が、堕騎士などと呼ばれるのは悲しかった。
 しかし赤騎士はそれには答えず、槍を引き盾を構える。
 盾で防御をしつつ、得物の軌道を隠し攻撃を仕掛けるつもりであろう。
「その気になったのなら、戦いに相応しい場所に案内しないとな」
 ガルヴァンも戦大斧を掲げ好戦的な視線を向ける。
 シリウスは洗練されたステップを踏み始め、本格的な戦闘態勢に入る。
 剣舞のような攻撃で、赤騎士に斬りかかる。
 魂剣は盾で防がれ、赤騎士は槍を突き出した。
 そこへガルヴァンが攻撃を仕掛ける。赤騎士は回避し、シリウスへの攻撃は失敗した。
 シリウスは赤騎士を引き寄せるように、2、3度軽く斬りつけては、素早く後退する。
 それを追う赤騎士がシリウスに攻撃しようとすれば、ガルヴァンがそれを阻止する。
 その動きで、徐々に採石場跡へと誘っていく。
 騎士たちは大きく旋回しつつ攻撃するクセがある、と瑞希が予想していたことを思い出す。騎士の動き易いようにしてやれば、よりこちらの誘導に乗りやすくなるのではないだろうか。
 シリウスとガルヴァンは、集会所から採石場跡への道まで円を描くような道筋を辿ることにした。
 一方、黒騎士と対峙したかのんは、トランスからさらにハイトランス・ジェミニへと移行し、黒騎士の動きを警戒しながらも訴えかける。
「お二方の戦いで住民の皆さんの家屋や畑が痛んでしまっています。出身地の住民の皆様が悲しみに沈むのは本意ではありませんでしょう?戦いは壊す物が無い所で行いませんか?」
「せめて村人の財産に被害の出ない所でしてください」
 瑞希も声をあげるが、黒騎士は今にも赤騎士へと向かって飛びかかっていきそうである。
 フェルンは万が一を予想してプロテクションを発動させた。
 黒騎士の様子に、天藍はわざと嫌みたらしく鼻で笑う。
「今を生きる住民は守る対象じゃないって事か騎士道ってのはたいした物だな」
 ぎろり、と冑の奥の目が光ったように見えた。
 天藍の挑発の意を読み取り、フェルンは気合のオーラを放つと、黒騎士の意識を赤騎士から自分へと向けさせた。
 黒騎士は猛然とフェルンに斧を振るう。闇と風のオーラが黒騎士の体力を削るが、それすらも気に留めず。
 だがここで戦闘を繰り広げてはいけない。
 フェルンと天藍は目の端でシリウスたちが赤騎士を誘導していったのを確認すると、自分たちも移動を始める。
 フェルンのアプローチⅡだけではなく、天藍も剣舞のような動きで黒騎士の気を引き、採石場跡へと誘導を始めた。

 一番最初に採石場跡に駆け込んで来たのはシリウスだった。
 軽々と腰の高さまである柵を飛び越え、ステップを踏みつつ後方に体を向ける。
 そのすぐ後に、赤騎士を乗せた馬が、シリウスを追うように柵を飛び越えてきた。
 シリウスと赤騎士がじりじりと睨み合うところへ、ガルヴァンがやって来る。
「ここからが本気だ」
 誘導が完了するまでは集落への影響を考え大きな立ち回りを控えていたガルヴァンが、戦大斧をひと振りする。
 遅れて到着したのは、アラノアとリチェルカーレ。
 アラノアは素早くガルヴァンの隣に並ぶと、ハイトランス・ジェミニへと移行する。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、だね」
 アラノアが言えば、ガルヴァンは頷き戦大斧に闇と土のエネルギーを注ぎ込み始める。
 シリウスが、赤騎士の意識をガルヴァンから逸らすため、高度に洗練されたステップを踏みつつ赤騎士へ連撃を繰り出した。
 リーチの長い槍の攻撃を鼻先で躱し、懐に飛び込んで剣を打ち付ける。
 盾で防がれはするが、間合いに入りこみエトワールを発動させたシリウスの連撃を全て防ぐことは不可能だった。
 赤騎士は槍をぐるんと回すと、柄の持ち手の後ろでシリウスの腹を突く。シリウスは後方へ跳躍し、そのダメージを軽減させた。
 シリウスと赤騎士の間合いが空いたところで、アラノアが呪符を掲げ赤騎士の動きを鈍らせガルヴァンがコスモ・ノバを放つ。
 ぐらり、赤騎士の体躯が揺れる。
 バランスを崩しながらも赤騎士は槍を薙ぎ払い、ガルヴァンに反撃を試みる。
「ガルヴァンさん!」
 アラノアが思わず前に出る。
 風に翻った閃光ノ白外套が眩い光を放ち、赤騎士の視界を奪う。
 空振りした槍の遠心力で、赤騎士はさらに重心を崩し、そこへすかさずシリウスが舞うように飛び掛かって切りつける。
 赤騎士は馬上での姿勢を保っていられず、地面に杖のように槍を突くと、それを支えに馬から飛び降りた。

 赤騎士との戦闘が繰り広げられている中、天藍とフェルンに誘導されて黒騎士も採石場跡に姿を見せる。
 採石場跡に着くと即座に天藍は、積極的な攻撃を始める。
 黒騎士の武器破壊を試み、アレグロを用いフェイントや緩急をつけた動きで死角に回り込んでは斧の柄を切りつける。
 天藍の攻撃を振り払っていた黒騎士の視界に、シリウスたちによって馬から降りざるを得ないまでに追い詰められた赤騎士が映り、黒騎士はしばし気を取られた。
 それを見て、天藍とフェルンは頷き合う。自分たちも黒騎士の落馬を狙おうという意思確認。
 天藍とフェルンはそれから、自分の神人へと目配せし、かのんと瑞希もしっかりと頷きを返す。
 かのんが呪符を黒騎士の眼前に向けて投げつける。
 黒騎士が呪符を振り払おうとしているところへ、天藍が黒騎士に接近し、鞍を固定する腹帯を素早く切り裂いた。
 かのんと天藍はそれぞれの役目を終えると素早く退く。
 瑞希の神符詠鬼零称が光を放つと、黒騎士ではなく、黒騎士の馬を拘束した。
 そこへ、フェルンがチャージフィールドで展開したバリアを黒騎士にぶつけるように突進させる。
 黒騎士はバリアに向かって斧を振り下ろすが、あえなくバリアに弾き飛ばされ、背を地に打ち付けた。
 黒騎士の馬は、ぶるると鳴いて頭を振る。
 神符の拘束が効いているうちに、と天藍は馬に近づき、首を撫でて落ち着かせると、その手綱を柵に括り付けた。
「戦えない民を護るのが騎士の務め、武力を誇示するだけでは駄目だ」
 動けずにいる黒騎士にフェルンが騎士の在り方を説きながら近付く。
 黒騎士はなんとか立ち上がり、フェルンに斧を振るった。
 フェルンの眼光が光る。
 黒騎士の攻撃に合わせて、自らの片手斧を振り上げた。
 瑞希の持つ片手杖ジェンマにより強化されたフェルンの力。そこから放たれるソードブレイク。
 それまで天藍によって細かな傷を付けられていた黒騎士の斧が、ついに破壊された。

 馬から降りた赤騎士は、閃光ノ白外套の影響が残りつつも、がむしゃらに槍を突き出す。
 それはガルヴァンにとって好機であった。
戦大斧の刃と刃の間に槍の柄を巻き込み、その動きを封じる。
 シリウスがアレグロで急接近し、赤騎士に切りかかる。
 それを盾で防いでいた赤騎士だが、ふいに、胴に衝撃が走った。
 赤騎士が視線を動かすと、そこには、ロスト・マシナリーソードを構えたリチェルカーレがいた。
 赤騎士がリチェルカーレに気を取られた隙に、ガルヴァンは赤騎士の槍を捕らえていた戦大斧をぐるりと捻る。槍の柄がみしみしと音を立てた。
 あともう少し、のところで、赤騎士の馬が主人を守るためガルヴァンに突進しようとする。
「わ、待って!」
 アラノアが馬の手綱を掴む。
 そのため、馬の体当たりはさほどガルヴァンにダメージを与えず、むしろ、その勢いで槍の柄を折る。
 折れた槍は、赤騎士の手からからりと落ちた。

「ここは大事な場所なんですね。喧嘩しないで 大事にしましょう?」
 戦意を失った2人の騎士に、リチェルカーレが優しく語りかける。
「そうです。2人とも、ちゃんと話しあって」
 アラノアも、騎士たちに言い聞かせる。
「それでもダメなら殴り合いで決着付けたらどうですか?あ、でもその前に、ちゃんと村の人達に謝ってくださいね!」
 そんなわけで、アラノアは騎士たちを連れて集落中を謝罪行脚させている。
 中には当然騎士たちを恐れる住人もいたが、リチェルカーレが騎士たちはもう戦意を失っていること、心を入れ替え謝りたいのだということを説明して取り持ってあげた。
 かのんは畑を荒らされ気落ちしている住人たちに声をかける。
「この時期なら生育の遅れは取り返せます」
 そして、時間の許す限り畑の復旧作業を手伝った。
「今年の作柄に影響が無いように頑張りましょう」
 天藍も、
「大工仕事なら少しはできる、家屋の修繕の手伝いをさせてくれ」
 と申し出る。
 瑞希とフェルンは集落中に散らばった瓦礫などを、住人と手分けして片付ける。
 そうして、静けさが戻った集落の日は暮れていく。
 住人たちに謝罪を終えた黒騎士と赤騎士は、行脚中になんだか意気投合した様子で、夕闇の中に溶けるように、2人仲良く消えていった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 04月23日
出発日 05月01日 00:00
予定納品日 05月11日

参加者

会議室

  • [13]瀬谷 瑞希

    2017/04/30-23:22 

    プランは提出しました。

    フェルンさんがr3で防御をあげ、r4で黒騎士の気を引きます。
    r11で黒騎士を落馬させるか、r9で武器が破壊を試みています。

    私は神符「詠鬼零称」で黒騎士の馬か騎士本人を束縛し動きを阻害出来ればと。
     

  • [12]瀬谷 瑞希

    2017/04/30-20:52 

    こんばんは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはロイヤルナイトのフェルンさんです。
    挨拶が遅れまして、申し訳ございません。
    皆さま、ご指導の程、よろしくお願いします。

    会議内容は把握しました。
    2人の騎士は騎乗を想定。
    担当を分担、私達の担当は黒騎士で了解です。
    村人の迷惑にならないよう場所を変えるように話す(説得)
    出来れば武器破壊、無理なら戦闘不能を目指し、両騎士が戦闘を継続出来ないようにする
    という認識でよろしいでしょうか。
    認識違いあるようでしたら、ご指摘ください。

  • [11]リチェルカーレ

    2017/04/28-22:19 

    >分担
    えと、瑞希さんたちの希望がまだですが現時点ので分担を

    赤騎士:アラノア、ガルヴァン、リチェ、シリウス
    黒騎士:かのん、天藍、瑞希、フェルン

    としておきますね。

    わたしはロスト・マシナリーソードを持っていくつもりですので、当たれば回避を下げられるかなと。
    ガルヴァンさんが槍を止めてくれて、わたしが回避をうまく下げられたらその後槍を狙えないかしら…?
    上手くいけば良し、無理なら戦闘不能を狙う感じで。

  • [10]かのん

    2017/04/28-19:56 

    >分担
    じゃ、俺とかのんは黒騎士に向かうな
    かのんが黒騎士の間合いの外から、呪符で攻撃している間の隙を狙って俺が黒騎士に接近できれば良いと思っている
    ひとまずは[4]で言った落馬を狙うのと、ジョブスキルのアレグロ使って防御力の低下を狙う感じになるかな

  • [9]アラノア

    2017/04/27-23:49 

    赤騎士の槍
    無理に武器に絡めなくても突いて来たところをs7で防御上げ&反撃で受けて立ちつつ槍を掴むとかやりようはあると思い至りました。(この場合パワー勝負になりますが)
    リーチが長いのは確かに脅威ですが、その長さの分だけ一旦封じられた際のリカバリーがし辛いと推測しました。以前ご一緒した依頼でもリチェさん槍掴まれてましたし。
    (ガルヴァンさんが槍を止めた隙を狙って味方が槍破壊、とか綺麗に決まったら気持ちよさそうだなって何となく思ってみたり)

  • [8]リチェルカーレ

    2017/04/27-22:55 

    >分担
    はい、じゃあ天藍さんたちとは別れる感じで担当ですね。
    うーんと…じゃあ、赤騎士さんに行こうかしら…?
    リーチが長くて怖いですけど、拘束とか目眩しで動き止めている間に懐に入れたらなと。
    あ、でもこだわりないので、天藍さんたちがそちらなら黒に。

  • [7]かのん

    2017/04/27-22:43 

    >赤騎士の槍破壊
    [3]でアラノアが言ってる双龍(両手斧)使って破壊を狙うなら、赤騎士の注意を他に引く、拘束する、目を眩ませる、とか何らかの手段で動き止めている時に使ってみる手はあると思う

    1度試して無理そうなら、防具破壊するか戦闘不能に追い込むかに方向変えても良いだろうし

    >騎士分担
    確かに俺とシリウスは違う騎士についた方が良いかもな
    シリウス達は赤騎士と黒騎士どちらに行く?
    俺はどちらかって希望がないから、好きな方をあたってもらって構わないが

  • [6]アラノア

    2017/04/27-21:53 

    >落馬狙い
    ガルヴァンさんのs8で纏めて吹き飛ばして落馬させるとかもアリかなと思ってたりしてました。

    >命中
    …確かにそれがネックなんですよね…(頭抱え)
    適正レベルでない双龍だと命中が28で、現在の適正レベル武器であるエビルゴートアックスだと命中が48になるので幾分マシになるのですが…うーん…これでも似たような事出来るかな…
    武器破壊が無理なら防具の破壊か、戦闘不能にする方向に変える感じになるでしょうか…

    >分担
    現在は丁度TDの方が二人いるのでそれぞれ分かれてもらうとかどうでしょう。
    今の私達の希望では赤騎士対応で行こうかなと思ってます。

  • [5]リチェルカーレ

    2017/04/27-21:48 

    甲冑を着た騎士さんということで、わたしも騎乗イメージでした。

    >誘導
    地元の人に良い所(強い所)を見せたいということなので、ここで戦うとなんて酷い騎士様だろうと思われちゃうから場所変えましょうとか…そんな風に持っていけないかなとなんとなく思っていました。
    天藍さんの言うように、無理ならなんとか引きつける感じでしょうか?

    >戦闘
    担当を分けるの、良いですね。今の人数だと2:2になるのかしら。

  • [4]かのん

    2017/04/27-21:05 

    騎士で甲冑装備、しかも装備が重くて飛べないって話なんで、2人の決闘も馬に乗って行っているが前提がいたが、どうなんだろうな
    (接近して、鞍固定している腹帯切って落馬させられないか考えてた)

    >誘導
    出てくる時間と場所があらかじめ分かっていて、会話が成り立つなら、住民の迷惑だから場所を変えないか声をかけるのもアリかと思う
    聞く耳持たなさそうなら、挑発するなり攻撃しかけて引きつけるとか
    何人かでいくつかの手法を用意しておいたら、どれかには引っかかるんじゃないか

    >戦闘不能か武器防具破壊か
    範囲の狭い場所(堕騎士の武器だけとか)狙いで行くと、命中判定がシビアだった場合辛くなるんじゃないかと危惧してる
    とはいえ、あんまり攻撃対象をざっくりにしておくと、破壊までいけるか疑問だな

    赤と黒と2人いるが、攻撃の連携の兼ね合いもあるだろうから、戦闘の際どっちに張り付くか分担決めた方が良くないか?

  • [3]アラノア

    2017/04/27-20:10 

    アラノアとSSのガルヴァンさんです。
    よろしくお願いします。

    プロローグを見ると、騎士達って最初は馬に騎乗した状態で現れるんですよね。
    この二人の戦いは騎馬戦なのでしょうか?
    それとも馬は移動用で、決闘の際は馬から降りて戦ってるんでしょうか?

    >誘導
    二人が現れて対面する地点が決まっていればそこで待機して、二人がやって来た時に前に出て自分達と戦えと申し出るか、いきなり不意打ちしてターゲットをこちらに寄せるかとかでしょうか…?
    どちらにせよ決闘の邪魔をする者には容赦なさそうですよね。

    >戦闘不能か武器防具破壊か
    真正面から戦うか武器防具破壊に注力するかで戦闘難易度が変わりそうですね…
    ちょっと試したいんですけど、双龍という両手斧で赤騎士の槍を巻き込んで絡めとれないかなと思ってたりします。(扱うのにレベル足りてませんが…)
    こう、巻き込んでそう簡単に抜けないようになったら槍を足で押さえてベキッとか他の方に壊してもらうか出来る気がするので。

  • [2]リチェルカーレ

    2017/04/26-21:56 

    リチェルカーレです。パートナーはTDのシリウス。
    皆さん、よろしくお願いします。

    元々はショコランドを守ってくれた英雄さんですし…自分たちの行動が集落の皆さんの迷惑になっていること、気づいてほしいですね。
    戦闘不能とか戦意消失させた後でお話したらわかってもらえるでしょうか。

    被害が出なさそうな場所へということ、賛成です。
    事前に周りの情報を教えてもらって、そちらに誘導できるといいですね。

  • [1]かのん

    2017/04/26-21:09 

    かのんとTDの天藍だ、よろしく
    ……案件いくつか見てきたが、堕騎士にもいろんなタイプがいるんだな
    今回の2人は傍迷惑以外の何者でない気がするが

    とりあえず、戦闘不能か、武器・甲胄の破壊をするかにしても、2人が出てくる時間帯と場所は、事前に確認しておいた方が良さげか?

    できれば戦闘に入る前に、集落にこれ以上被害が広がらなさそうな場所へ誘導できたら良いなと思う


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