プロローグ
タブロス近郊の町にある小さな図書館。
図書館としての規模は小さく、蔵書も多いとは言えないが、ここには根強いファンのいる2つの理由がある。
まず1つ目は、なんといっても名物司書だ。
キングズリイ・ベディングフィールド。長々しい名を持つ彼は、推定5歳のメインクーン。
つやつやしたきじとらの毛皮と、ピンと凛々しい耳、ふさふさの尻尾。
厳めしく見える顔の柄がイケメンと噂の牡猫だ
普段は貸出カウンターの上で来館者をむかえているが、館内を巡回して利用者サービスも行う。仲がよさそうな2人がいると、その間におしりを割り込ませたりもするが、まぁそれも愛嬌だ。
2つ目は閲覧席のヴァリエーションだ。
庭園が見える閲覧席は、季節を感じながらの読書をするのに最適だ。今の季節は晴れていれば、春の花とその上を飛び回る蝶々が見られるだろう。
奥にある区切られた閲覧室は、通路側にボードの仕切りがあるため他人の目を気にせず本に集中できる。2人まで座れるから、勉強する際に使用されることも多い。
そしてドアを1つくぐったところにある閲覧席には毛足の長いじゅうたんが敷かれ、ごろごろと寝ころんだりクッションによりかかったりしながら本が読める。堅苦しいのが苦手な人でもここならくつろいで本が楽しめるだろう。ただし、くつろぎすぎてうたた寝していると、ベディングフィールド司書の枕にされることもあるらしい。
図書館の扉は今日も開け放たれている。
貴方たちの訪れを歓迎するように。
解説
猫のいる図書館で春のひとときを過ごしてみませんか。
お好みの閲覧室を1つ選び、思い思いにお過ごしください。ベディングフィールド司書は、御呼びとあらばどの閲覧室にも出没します。
著作権などの問題もあるので、本を登場させるときは架空のものにしてくださいね~。
どんな本をどんな風に読むか、というのは個性が出るところだと思います。
学術書をすらすらと。絵本を宝物のように。恋愛小説にどきどきと。
好きな本を勧めあったり、本を読む相手にちょっかいをかけたり、
本からよからぬ知識を得たり、飽きて庭で遊んだり、ついうたた寝したり。
そんなみなさまの様子を描かせていただければと思います。
交通費として300Jrいただきます。
ベディングフィールド司書への小さなおやつは館内販売されていて20Jrです。
ゲームマスターより
みなさまはじめまして。ねこの珠水と申します。
猫大好き、本大好き。
そんなわたしの≪大好き≫をエピソードにしてみました。
……はい、ごろごろするのも大好きですっ。
本好きさんも、好きじゃないけど連れてこられた方も、ゆっくりとお過ごしくださいね。
みなさまのご来館をお待ちしております★
リザルトノベル
◆アクション・プラン
信城いつき(レーゲン)
回覧席:じゅうたん 本:宝石関連 うん、アクセサリーで知らない事いっぱいあるから 俺の野望のためにはもっとべんきょ…(しまった言っちゃった…) 野望…えっと、まだ内緒 レーゲンが聞いたらきっと笑っちゃうぐらい小さな事だけど 俺にとっては大事な野望なんだ 懸命に読んで勉強しようと思うけど、やっぱり覚えることいっぱいだな レーゲンは何読んでるの? おいしそう!がっつりベーコン挟むのもいいし、厚焼き卵のやつもいいな これ綺麗!シュープリーズっていうの あれもこれも食べたいのが一杯あるな ピクニックに行く為に作るんじゃなくて、サンドイッチ食べる為にでかける事になりそうだね…うん、行こう一緒に。 俺もお返しに作るから |
セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
そんなに都合よく――あ。一風変わった所なら知ってる ■餌購入。司書と戯れたい キングズリイ・ベディングフィールド司書だよ。はじめまして僕はセラ。彼はタイガだよ 猫っていいよね・・・ そうだよ。猫に興味もちだしたのはタイガに出会ってからなんだ (尻尾や耳で機嫌がわかるんだもん。興味持たないほうが難しくて) 機嫌直して。せっかくだから楽しもうよ いってらっしゃい 僕も音楽関連を探してくるね ■熱心なタイガの横で (タイガは静かな場所は縁がないかと思ったから不思議な感じ。・・・僕も頑張らなきゃ) あ。本当に一人前の大工さんを目指してるんだなって へぇ・・・やんちゃなタイガが目をキラキラさせて見入ってる姿が目に浮かぶよ |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
普段あまり図書館とか来ないけどさ。 猫の名物司書って話に目が眩んで来ちやったんだぜ。 でも、先日スポーツジムのインストラクターとなった身としては。 ストレッチの本とか凄く気になるからさ。 何冊か選んで、絨毯の閲覧室で読んでみよう。 ここなら書いてあるストレッチ試せるじゃん? 実際に体動かして見ないと、よしあしが判らないよな。 絨毯の上で寝転んで、軽く腹筋。 は。 にゃんこ司書が不思議そうな顔してこっち見てる気がする。 うつぶせに四つ這いになって、右手と左脚にょいーんと伸ばす。次は逆の手足。 うは。 背中に司書が乗ったのか、加重負荷がきたー!(悦 このオレのバランス感覚を見るがいい! 司書にオヤツ買ってあげよう。お礼だ。 |
鳥飼(隼)
「庭園が見えるところでいいですか?」 寝転がれるところと悩みましたけど、せっかくの晴れた模様ですし。 春の陽気を感じながらもいいかな、と。(柔らかく微笑む 日差しが気持ちよさそうですね。 「隼さんは何を読んでいるんですか?」(視線を本の背表紙へ 「カクテルの本」 「お酒が好き、であってます?」(本を覗き込んで、視線を向ける お酒が好きなんですね。 僕はあまり飲みませんけど。今度バーに誘ってみようかな。 「隼さん?」 「? あ、ここの司書さんですね」(持っていた詩集を机に置く 「聞いていた通りの凛々しさですね。撫でさせていただいてもいいですか?」(ベディングフィールド司書にお伺い 撫でれたら: うん。ふわふわです。(微笑む |
●日差し溢れる閲覧席で
両側に緑の大木がある門をくぐり石畳の道を進むと、年代物のレンガ造りの建物に突き当たる。
図書館にしてはこぢんまりとした建物の扉は今日も、大きく開け放たれていた。
「セラー、ここがその一風変わった図書館っていうやつなのか?」
どんな図書館なのだろうと、火山 タイガは期待に満ちたまなざしでセラフィム・ロイスを見た。近場の図書館の本は調べつくしてしまったから、どこか――それも、堅苦しくなくて楽しい図書館なら万歳なのだと無茶ぶりをしてみたら、ここに連れてきてくれたのだ。
楽しいと言われたから、アトラクションや食べ放題を想像していたのだが、どうもこの雰囲気からして違うらしい。どう見ても普通の図書館だが、なにがあるというのだろう。
「すぐに会えると思うよ。――あ、おやつを1つ下さい」
セラフィムはそう言いながら、入り口でおやつを購入した。
「それがおやつ? ちっせえ袋だな」
「タイガのおやつじゃないけどね」
「なんだよ、ひとりじめか?」
抗議の声をあげるタイガに笑いかけると、セラフィムは貸出カウンターへと向かった。
カウンターの上、ふっさりとしたキジトラの猫がででんと鎮座している。
「タイガ、この図書館の名物と言われているキングズリイ・ベディングフィールド司書だよ。はじめまして僕はセラ。彼はタイガだよ」
お近づきのしるしにとセラフィムはおやつを手に載せて差し出した。司書はカリカリと良い音を立て、セラフィムの手からおやつを食べた。
「猫がいるから楽しい所……? 名物料理とかじゃなくて?」
拍子抜けしながらタイガは司書に顔を近づける。
「何だっけ、キングスリィ……ベテグ? 言いづれええ-、わっ!」
はずれ、とでも言いたげに司書の尻尾がタイガの顔をぽふっと叩いた。そのまま2人の間に割り込んで、すりすりとセラフィムの手に体をこすりつける。
「猫っていいよね」
「そーかー?」
「そうだよ。猫に興味もちだしたのはタイガに出会ってからなんだ」
尻尾の動き、敏感に動く耳。何も言わなくても機嫌が分かるから、目をやらないほうが難しくて。
「それなら俺も嬉しいけど」
口ではそう言うけれど、セラフィムにすり寄る司書を見るタイガの耳は不機嫌に倒れ気味のままだ。
「機嫌直して。せっかくだから楽しもうよ」
「別に機嫌悪くねーって!」
タイガが手を伸ばして頭を撫でると、司書の尻尾がお返しとばかりにタイガの手を2回撫でた。
いろいろある閲覧室からタイガが選んだのは、庭園が見える席だった。
窓からは明るい日差しが差し込み、外には春の花々が咲いている。
さっそく大工や建築関連の本を探してきて熱心に読みだすタイガを、音楽関連の本のページをめくりながらセラフィムは眺める。
静かな場所には縁がないかと思っていたけれど、本を読むタイガは黙々と真剣で。そんな様子は見慣れないから不思議な感じだ。気になる箇所があったのか、ん、と口唇を引き結び、納得したように表情を緩め。静かだけれど耳はタイガの内心を表して、忙しく動き続けている。
「どうした?」
視線に気づいたタイガが顔をあげる。
「あ。ごめん。邪魔したかな」
「違うけど何か用か?」
「ううん。ただあんまりタイガが真剣だから、本当に一人前の大工さんを目指してるんだなって思ってみてた」
「照れるだろ」
そう言いながらもタイガは話してくれる。
「バイト、いくつかしてみたんだけどさ。そういや幼い頃に大工のおっちゃんの仕事場に潜りこんで作業みてた。その時から憧れがあったんだろうな」
「へぇ……やんちゃなタイガが目をキラキラさせて見入ってる姿が目に浮かぶよ」
「実際そうだったと思うぞ」
おっちゃんのやっていることが、凄くて恰好良くて、まばたきをするのも惜しいぐらい見ていた。そしていつか、タイガは自分もそうなりたいと願うようになっていた。
知識としても奥が深く、それを形にするには技術も必要で。勉強することは山ほどあるけれど、それさえも楽しいのだと、タイガは生き生きと話した。
勉強を再開したタイガを見やると、セラフィムは手元の本に意識を戻す。
(僕も頑張らなきゃ)
そんな風に思わせてくれる相手が近くにいてくれるのは、きっととても貴重なことだから。
●はじまりの春
うららかな春の日。
鳥飼と隼は連れ立って図書館へとやってきた。
「よく晴れましたね」
鳥飼の薄青の瞳が、春の日差しに柔らかな光を帯びる。
向けられた笑顔に頷くだけで応え、隼は考えた。なぜ鳥飼は図書館に自分を誘ったのだろう。こういう場所こそ、自分ではなく鴉と来るべきではないのだろうか。
(いや、あいつが明るい場所を好むとも思えないか)
だからなのか、別の理由があるのか。隼はぼんやりとそんなことを考えながら歩いた。
図書館に到着すると、2人はゆったりと配置された本棚からそれぞれ本を選んだ。
どこで読もうか。
閲覧席の種類の多さに、鳥飼は少し迷って隼に尋ねた。
「席はここでいいですか?」
鳥飼が示したのは、窓から庭園が見える閲覧席だった。
寝転がれるようになっている閲覧席もくつろげるかと思ったが、今日は抜けるような晴天。こんな日には、春の陽気を感じられる席に惹かれる。
聞かれた隼は鳥飼を一瞥し、
「ああ」
とだけ答えて目を伏せた。
そんな反応も気にせず、鳥飼は隼の向かいの席につき、ガラス越しの庭園に目をやった。
白、黄色、ピンク、オレンジ。
明るい色彩の春の花々の間を、白い蝶がひらひらと飛び交っている。
穏やかであたたかな世界が窓の外に広がっている。
春らしい景色をしばらく楽しんだあと、鳥飼は手元の本を開いて読み始めた。
それを眺めたあと、隼も本を開いた。
温かな日差し。
木のテーブルの感触。
ガラスの向こうから、時折小鳥のさえずりが聞こえてくる。
本を読んでいた隼は、ふと違和感をおぼえて手を止めた。
何が……ああそうか。さっきまで聞こえていた鳥飼が本を捲る音が途絶えたままなのが、意識に引っかかったのだ。
顔をあげると、こちらを見ていた鳥飼と目が合った。
「隼さんは何を読んでいるんですか?」
鳥飼の視線が興味ありげに向けられる。隠す必要もないから、隼は本を傾け、中のページが鳥飼に見えるようにした。
グラスの中の鮮やかな色彩。添えられたフルーツ。
その横に配合の割合や注意点、歴史などが書かれた文章。
「カクテルの本?」
鳥飼の問いかけに、隼は頷いた。
身を乗り出して本を覗き込んでいた鳥飼は、その体勢のまま視線だけをあげて隼を見る。
「お酒が好き、であってます?」
自然、上目遣いとなった鳥飼に、隼はどきりとした。
「違ってました?」
答えられずにいる隼に、鳥飼は重ねて尋ねる。その瞳から逃げるように、隼は視線を外へとそらした。
「……いや」
そんな隼の心も知らず、
「隼さんはお酒が好きなんですね」
何か楽しそうに、鳥飼は何度も頷いた。
鳥飼が本に意識を戻したので、隼もまた本のページを捲ったが、まったく内容が頭に入ってこない。
(何故……俺は視線を逸らしたのか)
あの、どきんと打った鼓動は何だろう。
これまでには、そんなことはなかったはずだ。
(以前なら……)
そう考える隼は、うつむき加減に本を読む鳥飼の編んだ髪から目が離せなくなる。
「隼さん?」
視線を感じた鳥飼に呼びかけられ、隼は口を開きかけ……何かの気配に、途中でやめてそちらに顔を向けた。
「?」
その視線の先には、
「あ、ここの司書さんですね」
館内を練り歩くキングズリイ・ベディングフィールド司書がいた。
「名物、だったか」
貫禄は十分だなと、隼はふさふさした尻尾を揺らして館内巡回する司書を見やった。すると司書は進路を変えて2人のほうへやってきた。
鳥飼は手にもって読んでいた本をテーブルに置くと、床にしゃがみこむ。
ベディングフィールド司書と目を合わせ、話しかけた。
「聞いていた通りの凛々しさですね。撫でさせていただいてもいいですか?」
丁寧にお伺いを立てると、司書はさあさあと促すように目を閉じた。
「うん、ふわふわです」
柔らかな毛皮の感触に、鳥飼はほほ笑む。
隼は鳥飼が置いた本を一瞥し、それが自然を愛した詩人の詩集なのを確認する。そして自分も読んでいたカクテルの本を閉じ、その後はただベディングフィールド司書と鳥飼の様子を眺めやるのだった。
●野望を胸に
じゅうたんの上にぺたんと座り込み、クッションを載せた膝の上に本を置いて。信城いつきは本に夢中になっていた。
その様子を眺めつつ、レーゲンはおやつの袋を開けて、キングズリイ・ベディングフィールドにあげていた。
細い棒状になっているおやつをはむはむと食べる司書を撫でようとレーゲンが手を伸ばすと、敏感にそれを察した司書がふいっとそっぽを向いて避けた。
けれどまたおやつを出すと、ぱくりと食べる。
食べ終わるとふさふさ尻尾を揺らしながら去ってゆく。実にちゃっかりしている司書だ。
司書に置き去りにされたレーゲンは、いつきの読んでいる本の表紙を眺めた。
「宝石……ということは、アクセサリー関連かな?」
「うん」
本を開いたままいつきはレーゲンに顔を向けた。
「アクセサリーで知らない事いっぱいあるから。俺の野望のためにはもっとべんきょ……あっ」
いつきは慌てて口を押さえたが、もう遅い。しっかりとレーゲンには聞こえてしまっていた。
「野望? 何なのか聞いてもいい?」
「えっと……まだ内緒」
いつきはその願望を大切に胸に納める。
「レーゲンが聞いたらきっと笑っちゃうぐらい小さな事だけど、俺にとっては大事な野望なんだ」
再び熱心に宝石の本を読みだすいつきに、レーゲンは思う。
(いつきが真面目に望むのなら、何を言ったって笑わないのに)
でもおそらく、いつきが隠すのはそういう意味ではないのだろう。それが分かるから、レーゲンはそれ以上は追及せず、自分も本を取りにいった。
それからしばらくの間、それぞれが本に集中する静かな時間が流れた。
「ふぅ……」
きりが良いところでいつきは本を読む手を止め、のびをした。
懸命に読んで勉強しようと思うけれど、覚えることはいっぱいで、終わりが見えない。
気分転換しようかと、いつきはレーゲンの手元をのぞいてみた。
「レーゲンは何読んでるの?」
「これはね、私の小さな野望だよ」
そう笑うレーゲンが読んでいるのは、サンドイッチのレシピ本だった。
「いつかいつきに美味しいお弁当を作ってあげるのが、私の野望なんだ。まずはサンドイッチから始めようかと思って」
レーゲンがレシピのページをめくって見せると、いつきは目を輝かせる。
「おいしそう!」
定番のたまごサンド。ツナと野菜、オリーブをたっぷり挟んだイタリアンツナサンド。
サーモンとカマンベールのアボカドタルタルサンド。くるくる巻いたロールサンド。
具材がたっぷりはさまったクラブハウスサンドイッチ。桃とヨーグルトのフルーツサンド。
「サンドイッチって、思ったより種類あるよね」
「うん。どれもおいしそう。がっつりベーコン挟むのもいいし、厚焼き卵のやつもいいな」
おいしそうなサンドイッチの写真を眺めていたいつきは、あるページで手を止めた。
「これ綺麗! シュープリーズっていうの」
いつきが示したページには、パンをくりぬいた中にサンドイッチが入っているシュープリーズが載っていた。様々な具材のサンドイッチは色とりどりで、パンのサイズぴったりに詰められている様子は、それだけでパーティセットのようだ。
こんなサンドイッチを持って出かけたら、それだけで気分が浮き立つだろう。
「パンの中をくりぬくのか……大変そうだね」
難易度が高そうだけれど、これも野望達成のため。がんばろうとレーゲンは心に決めた。
これもいい、こっちもおいしそうと2人は顔を寄せ合ってサンドイッチの写真に見入った。
「あれもこれも食べたいのが一杯あるな」
「うん。具とかも色々あった方が楽しいよね」
どれもいつきに食べて欲しくて、レーゲンはどれを作ろうか迷う。けれどそうして迷うこともまた楽しい。
「ね、レーゲン。色々な種類のサンドイッチを持ってピクニックに行ったらきっと楽しいよね」
良く晴れた空の下、緑いっぱいの外に出かけて。お昼には種々のサンドイッチを広げて、といつきは笑う。
「でもこれって、ピクニックに行く為に作るんじゃなくて、サンドイッチ食べる為にでかけるみたいだねー」
「いいね、それ。何度でも行こうよピクニック。その度にサンドイッチ持って」
「うん、行こう一緒に。俺もお返しにお弁当を作るから」
ちょうどこれからは、ピクニックに最適の季節。
何度も何度でも出かけよう。
――2人一緒に。
●図書館でストレッチ
図書館に行こう。
そう言い出したセイリュー・グラシアに連れられて、ラキア・ジェイドバインはタブロス近郊の町にある図書館にやってきた。
「セイリューが図書館に来たがるなんて珍しいね」
「ああそれか。この図書館、猫の名物司書がいるんだってさ」
その話を聞いて足が向いたのだというセイリューに、ラキアはクロウリー、トラヴァース、バロンの顔を順に浮かべ、納得した。
けれど意気込んで訪れた貸出カウンターに、キングズリイ・ベディングフィールド司書の姿はなかった。
「司書は巡回中ですので、そのうち戻ってくると思います」
貸出係の女性に言われ、司書に会うのは後回しに、2人は書棚を回って本を探した。
セイリューはスポーツ関係の本が置かれている位置を調べると、書棚をなめるように端から端まで眺めた。
先日、スポーツジムのインストラクターとなったこともあり、ストレッチに関する本がとても気になる。ストレッチの理論、より効果的な組み合わせや押さえておきたいポイントなど、今後のためにも勉強しておきたい。
あまりに真剣な様子なので、ラキアはセイリューをそっとしておくことにして、自分は医療関連の書棚へと向かった。
本を選び終えると、セイリューは迷わずじゅうたんの敷いてある閲覧席を選んだ。
どうしてこの席なのかは、セイリューの様子を見れば明らかで。
「図書館でストレッチなんて、セイリューの発想って時々予想を越えてくるよね」
「ここなら書いてあるストレッチ試せるじゃん? 実際に身体動かしてみないと、よしあしが判らないよな」
ラキアに答えながら、セイリューは本を開いて確認し、ストレッチを試してゆく。
「確かに、本で理屈も一緒に覚えながら身につけるのは良いかも」
何よりセイリューらしいと思いながら、ラキアは自分はクッションに寄りかかって、選んだ本を読み始めた。
かなり分厚く、図解の多い本だ。
「ラキアは何を読んでるんだ?」
ストレッチはやめないまま、セイリューは尋ねた。
「俺? 戦線医療の本だよ。要するに戦闘時の応急手当の本だね」
任務中に負傷した場合、機器や道具、設備が万全でない状態に置かれることがほとんどだ。
器具もない、薬も道具も不十分、だからと言って、負傷者を前に無いものをただ嘆いているわけにもいかない。そんな際だからこそ、負傷への対応が大事なのだから。
「この手の本はお値段高くて手が出ないから、こうして閲覧できるのは助かるよ。それに本を持つよりも、覚えて実践できるようにすることが重要だしね」
ラキアは時折メモを取りながら、熱心に本の知識を吸収することにつとめた。
いざというとき、後悔せずに済むように。
自分の手で、守りたいものの生命をつなぎとめることができるように。
誰かを守るため身を挺することをいとわない、そんな相手と共にあるのなら、これは必須の知識だと思うから。
セイリューはじゅうたんの上に寝転んで、軽く腹筋をする。
ストレッチで身体が温まっている所為もあるのか、動きはスムーズだ。
「ん?」
起き上がった瞬間、何かが見えた気がした。
次に起き上がったときに止まってみると、正面にふさふさ毛皮のメインクーンがどっしりと座り、セイリューのほうを眺めていた。
ごろごろできる閲覧室であっても、運動をする人はまれなのだろう。ベディングフィールド司書は首を傾げて不思議そうにしている。
腹筋途中で停止したセイリューの視線を辿って、ラキアも司書に気づいた。
「噂の司書さんの登場だね。とても可愛くてりりしいねえ」
「よ、にゃんこ司書。はじめまして、だな」
手をひらひらとさせたが、司書はまばたきだけで答えた。
セイリューは気にせず、ストレッチを再開する。
うつ伏せに四つ這いになって、右手と左脚を思いっきり伸ばす。伸ばした手足がぷるぷるっと震え、まるで猫が伸びをしているような恰好だ。
「セイリューは身体柔らかいね。関節の稼働範囲が広いのかな?」
ラキアは本を読む手を止めて、ストレッチをするセイリューに感心した。
十分伸ばしたら、逆の手足に変えて同様にストレッチ。
……と。
「うは」
突然背中に加重負荷がやってきて、セイリューは息を吐いた。
ずしりとした重みには温かさも伴っている。
「お手伝いしてくれるの? 賢いねぇ」
ラキアは立って行って、セイリューの背中に鎮座するベディングフィールド司書の頭を撫でた。
「このオレのバランス感覚を見るがいい!」
背中に10キロ近い重みを乗せたまま、セイリューは一層ぐっと身体を伸ばす。
ぐらっともしないセイリューのバランス感覚もさすがだが、その背中にぐぐっとふんばって乗り続ける司書もなかなかのつわものだ。
ストレッチが終わると、セイリューとラキアは司書へのお礼として、おやつをプレゼントし、ベディングフィールド司書はそれをおもむろにカリカリと、品よく食したのであった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:セイリュー・グラシア 呼び名:セイリュー |
名前:ラキア・ジェイドバイン 呼び名:ラキア |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | ねこの珠水 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 3 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 04月21日 |
出発日 | 04月28日 00:00 |
予定納品日 | 05月08日 |
参加者
- 信城いつき(レーゲン)
- セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 鳥飼(隼)
会議室
-
2017/04/27-20:22
セイリュー・グラシアと精霊ラキアだ。
今回も、皆、ヨロシク。
名物司書にゃん。にゃんこ。超楽しみだぜ。
何を読むかも迷うところ。 -
2017/04/26-23:23
ふふ、鳥飼と隼さんです。よろしくお願いしますね。
イケメンな猫さんがいると聞いたので楽しみです。
今回は何の本を読みましょうか。 -
2017/04/26-00:30
猫の司書がいる図書館たのしみだなぁ・・・
どうも。僕セラフィムと相棒のタイガだよ。どうぞよろしく
今日はタイガの要望ではじめてきてみたんだけど
・・・よい一時が過ごせるといいな。皆のお話も楽しみにしてる