10㎝のキミ(森静流 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 そろそろ桜の季節です。
 ぽかぽかの春の陽気。朝もそんなに寒くなくて、ほどよい温かさで心地よい……。


「おい……おい……」
 朝のベッドの中で、声をかけられて、あなたは布団を被って寝返りをうちました。
 相手は精霊の声だったと思います。あなたはとにかく眠いのです。布団引っ張って無理に寝ちゃう。

「うわあああッ!!」
 すると、凄く焦って必死な叫びが聞こえ、あなたの首元に何か大きな虫のようなものがへばりつきました。
「!?」
 びっくりしてあなたは首に手をやります。
「ぐげ! 痛い痛い! 無茶すんなよーっ!」
「な、何だ……?」
 あなたは、首元の大きな虫をつまんで目の前に持って来ました。
 ぽかんしてしまうあなた。
 それは、10㎝になった精霊の姿をしていました……。



 とりあえず、10㎝精霊にハンカチで作った仮の服を着せ、説明を聞いたところ、A.R.O.A.の研究系の職員に強引に頼まれて研究所に連れて行かれ、色々実験につきあったところ、こんな姿になってしまったとのことです。10㎝精霊にさらに様々な実験をしようとしてきたので、無茶だと思ってそのミクロさを生かして何とか自分のところまで逃げてきたとのこと。
「精霊を小さくしてどうするんだ……」
「何でも、オーガを10㎝にして倒したり、捕獲したりしようと、……最初はそういう研究だったらしい」
 なるほど。確かに10㎝のオーガなら、倒しやすそうです。

「それでどうすんだよ、お前……」
 あなたは10㎝の相方を見て困ってしまいます。
「んー、何でも、効果は丸一日っていう話だから……。今夜寝れば、治っているんじゃないかなあ」
「本当か?」
「うん。……だからその、頼むよ。一日だけ、俺につきあってくれ」
「うーん、そりゃ仕方ないけどさ……」

 なんといっても、相手は10㎝です。
 ご飯どうするの?
 トイレどうするの?
 お風呂どうするの??
 そもそも洋服だって、10㎝じゃ、ハンカチをぐるりと体に巻いているだけじゃないか。めっちゃひきずっているじゃないか!
 本当に桜の季節でよかったよ! 冬だったら凍死していた!

 かといって、10㎝の相方を表に放り出す訳にもいかない……。
 さあ。今日一日、どうやってやり過ごせばいいのだろうと、悩むあなたでした。

解説

 10㎝になった精霊と、一日を過ごしてください!
(神人が10㎝になっても構いません。その場合は精霊が人間サイズでいてください)

 プランには例として以下のような事を書いてください。
・10㎝の精霊(神人)の面倒を見ますか?
・10㎝の精霊(神人)がご飯を欲しがったらどうしますか?
・10㎝の精霊(神人)がトイレに行きたがったらどうしますか?
・10㎝の精霊(神人)がお風呂に入りたがったらどうしますか?
・10㎝の精霊(神人)と一日過ごした感想は?
・10㎝の精霊(神人)が元に戻ったときにどんなやりとりをしますか?

 全てを書かなくてもOKです。お好きな質問に答えてください。
 また、「こんなことをやりそう」と思った事はなんでも書いてくださってOKです。

※10㎝の精霊(神人)の面倒を見るためのあれこれで300Jr消費しました。



ゲームマスターより

目が覚めたら布団の中にすっぽんぽんの相方がいました。(10㎝です)

リザルトノベル

◆アクション・プラン

信城いつき(レーゲン)

  縮んだ!これなら夢にまでみた特大プリンが食べられる!

本を重ねて階段、すくうのはアイスの木のスプーン
食べても食べてもまだいっぱいあるよ!
でもスプーンですくって自分で食べるの結構むずか…あっ
(プリンの中に頭からドボン)

……ありがとレーゲン、危うく「死因:プリン」になるとこだったよ
プリンまみれだ、お風呂入りたいな

しがみついても、レーゲンの指先ぐらいしか触れられない
小さいのも楽しいけど、レーゲンが遠いなぁ…

眠る時、ベッドだとレーゲンが寝返りうったら危険だし
床にかご置いてタオルでも敷いて…あ、あれ!(アイテム:レーゲンのパペット人形)
これなら柔らかいし、レーゲンをぎゅっとできる……な、なんでもない!


瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  「きつくないか?」
テンションの高い精霊を他所に、
ハンカチで服を模り、フードが付いたローブに似た服を作り、着せようとする。
(裁縫スキル使用)

醤油を入れる小皿に、ご飯をスプーン一杯よそう。
つまようじ2本をお箸代わりに、食べられるのか様子を見た。
味噌汁は別の小皿によそう。
おかずである梅干やハンバーグは、肉眼で見える程に小さく切り、
珊瑚の口元に持っていった。
「その体がこの先、ウィンクルムの任務に役に立てばいいな」

だども、その夜。
独りぼっちにするのも気がひけるので、自分の枕元にベッドを作った。
敷布団にミニタオル、毛布にハンカチを2枚重ね、
枕にも突発的に買った化粧用コットンを重ねて用意。
「おやすみ、珊瑚」


歩隆 翠雨(王生 那音)
  10㎝になる方
咄嗟に頼る人が那音しかいなかったから…仕方ないだろ?
諦めて俺の世話を頼むぜ
元に戻ったらお礼もするから!(必死で頼み込む)
サンキュー那音!
で、早速だけど…腹減った…
(丁寧に細かく切ってくれてる…紅茶もいい温度
意外と優しいかも…)
美味い、ありがとな!

外出?勿論、付いていくぜ
(一人じゃ不安だし…那音の仕事ぶりも気になる)
着替えるのか?(いつものかっちりスーツじゃなくて作業着な服装に驚き)
畑仕事?
泥まみれになっても穏やかな顔
手元にカメラが無いのが残念

寝顔まで見るなんて、こんな機会でもないと無かっただろうな

怪我の功名って言うと那音は怒るかもだけど
那音の日常が見れてよかった
お前、いい奴だよな


●歩隆 翠雨(王生 那音)編
 ある朝、王生 那音の枕元には10㎝になった歩隆 翠雨がいました。
 翠雨はA.R.O.A.の実験台になって小さくなってしまい、びっくりして那音の家まで逃げてきたのです。
「そんな怪しげな実験に協力するからだ。貴方の事だから、タダ飯に釣られたとか? ……図星か」
 那音の鋭い指摘に対して、翠雨はへらりと笑って返事をしませんでした。そうして、こう言いました。
「咄嗟に頼る人が那音しかいなかったから……仕方ないだろ? 諦めて俺の世話を頼むぜ。元に戻ったらお礼もするから!」
 10㎝になった翠雨は両手を合わせて那音を拝んで必死に頼み込みました。
 ふう、と那音はため息をついてしまいます。
「仕方ない。私も貴方のパートナーだからな。面倒を見よう。父と母が外出中で良かった」
「サンキュー那音!」
 翠雨は那音が承諾してくれて、満面の笑みです。
「で、早速だけど……腹減った……」
 本当に早速、正直にそう言ったので、那音はこめかみを押さえましたが、すぐに翠雨の食事の準備をすることにしました。

 那音は自室に自分の朝食を持ってこさせました。
 それから、テーブルにつくと、皿の脇にちょこんと10㎝の翠雨を置いておきます。
 そうして、小皿に食事をひとかけらずつ取り分け、ナイフとフォークで出来る限り細かく切って、それを翠雨に与えました。
「おっ、これ、なかなかいけるな!」
 翠雨は那音の食事のかけらを口いっぱいに頬張ってあぐあぐしています。
 普段なら行儀が悪いと顔をしかめるところですが、今はそういう状態ではありません。
 那音は、ティースプーンに紅茶を入れて、翠雨の口元に持って行きました。
 那音も翠雨も、こぼしてしまわないように細心の注意を払いながら、なんとか翠雨が紅茶を飲みました。
(丁寧に細かく切ってくれてる……紅茶もいい温度。意外と優しいかも……)
 翠雨はクールな那音の一面を見て嬉しくなってきます。
「美味い、ありがとな!」
 翠雨は顔いっぱいに感謝を表して那音に笑顔を見せましたが、那音は何故かむっとした顔をしています。
(何故に、あなたはそう無防備なんだ……)
 那音はそんな苛立ちを感じていたのでした。
 那音は翠雨の怪訝そうな顔を無視して、食事を終えるとテキパキと出かける準備を始めました。
「仕事で外に行くが……」
 那音は翠雨にそう切り出します。
「外出? 勿論、ついていくぜ!」
 翠雨はすかさずそう言いました。
(一人じゃ不安だし……那音の仕事ぶりも気になる)
 翠雨はパートナーの那音が、普段、どんな仕事をしているのか知りたかったのです。
「なら、胸ポケットに。落ちないように気をつけて」
 那音はそう言って自室のクローゼットを開き、衣服を取り出しました。
「着替えるのか?」
 翠雨は、彼の取り出した服がスーツではなくて、作業着っぽい事に驚きを隠しません。
「……畑仕事?」
 そういえば、那音の家は農園を経営している地主で、彼は今その家業を継ぐために勉強中だった事を思い出し、翠雨はそう尋ねました。
 那音は何事もなく頷いています。
 その後、那音は農園の様子を見て周り、使用人達の作業も手伝いました。
 翠雨は那音の泥まみれになっても穏やかな顔を見守ります。
 手元にカメラがないのが残念でした。
 翠雨は『人』を撮影するのは何故か苦手なのですが、パートナーの那音に対しては違うようです。
 帰宅後、那音はシャワーを浴びました。
「翠雨さんも汚れただろう?」
 那音は洗面器にお湯を張って翠雨を風呂に入れてくれました。
 その後、ハンカチとアイピローで簡易ベッドを作り、那音と翠雨は一日を終えて一緒に眠りました。
 夜中に、那音はふと目を覚まし、枕の隣でアイピローのベッドに眠っている翠雨を見守りました。
(寝顔は可愛らしいのに……)
 でも、時々、那音は翠雨に対して無性に腹立たしくなるのです。それは、彼があんまり無邪気で無防備過ぎるから。でも、それは、腹立たしいだけではない、自分にも説明のつかない感情がある事を、那音は自覚していました。
 翌日、翠雨は10㎝から元の体に戻りました。
「寝顔まで見るなんて、こんな機会でもないと無かっただろうな。怪我の功名って言うと那音は怒るかもだけど、那音の日常が見れてよかった。お前、いい奴だよな」
 中性的な顔立ちなのに、歯を見せて男っぽく笑いながら翠雨が言います。
「は?」
 那音は思わず問い直しました。
(何を馬鹿な事を……)
 思わず不機嫌になってしまいます。
「なんだよ、褒めているのに、何怒っているんだよ」
「まず、服を着てから言え」
 ……そうです。朝起きたら元に戻った翠雨は、那音のベッドの中で素っ裸なのでした。那音が怒るのも致し方ないかも……しれません。翠雨は頭をかいて笑い、その日は那音に服を貸してもらって自分の家に帰ったのでした。
(無防備とか、そんな問題なんだろうか……)
 そんな翠雨を意識してしまいながら、那音は、自分にため息をつきます。
(とにかく、放っておけないんだ。俺が見ていなきゃ、あの人は、何をやらかすか分からない)
 那音はつくづくそう思います。それは翠雨が10㎝でも、本来の姿でも、どうやら変わらないようですね。

●信城いつき(レーゲン)編
 その日、信城いつきは、A.R.O.A.の実験により、10㎝になってしまいました。早速精霊のレーゲンのところにやってきて報告します。
「縮んだ!」
「小さくなった!?」
 レーゲンは驚いて、慌てふためきます。
「10センチでもかわいいけど、まずは安全確保しないと。テーブルの片付、ご飯や水分補給、そうだ服も用意しな……」
 レーゲンは至極常識的な事を考えていましたが、いつきは違いました。
「これなら夢にまでみた特大プリンが食べられる!」
「……え? プリン……」
 いつきは目をキラキラさせながらレーゲンを見上げています。
「いつもポジティブだね」
 レーゲンは苦笑して、いつきのために大きなプリンを用意してあげました。
 いつきは本を重ねて階段を作り、プリンのところまで登っていきます。
 すくうのはアイスの木のスプーンです。
「食べても食べてもまだいっぱいあるよ!」
 大喜びするいつきでした。
 が。
 木のスプーンですくって自分で食べるのは結構難しかったようです。
「……あっ」
 いつきはバランスを崩してよろめいて、プリンの中に頭からドボン……。
 半ば予測していたレーゲンは、冷静にプリンからいつきを救助しました。
「……ありがとレーゲン。危うく、『死因:プリン』になるとこだったよ。プリンまみれだ、お風呂入りたいな」
「はいはい」
 レーゲンは小さな器に適温のお湯を張りました。
 せっかくですので、小さいお風呂を桜が見える窓際へ持って行き、いつきを中に入れてあげます。
 お風呂で桜を見られていつきはまたはしゃいでいます。
 その間にレーゲンはハンカチをTの字型に切って縫い合わせました。
「真っ裸よりはいいよね」
 レーゲンはお風呂から上がったいつきにハンカチの服を着せてあげました。
「全く、いつきにはいつだって驚かせられるよ」
「むう。レーゲン、俺を子供っぽいと思ったんだろ」
「いつきは年より純粋なんだよね」
 レーゲンは穏やかに頷いています。
 いつきの方は少し膨れてしまったようです。
「俺だって、レーゲンに驚かされる事あるよ」
「そう? 例えばどんな」
「そ、それは……去年のハロウィーンとか!」
「ああ」
 レーゲンは笑いました。
 テーマパークで仮装した二人は、お互いに悪戯して驚かしあいながら、観覧車で頂上まで登っていったのです。
 そしてレーゲンはキスするふりをしてパチパチキャンディをいつきの口に放り込んだのでした。
「レーゲンだって俺に悪戯して……。幼いところがあるじゃないか」
「そうかな。いつき相手だと特別にそうなるかもね」
 レーゲンはくすくすと笑っています。
「そりゃ、不意に……10㎝になっちゃうなんて、ドジするのは、俺だけかもしれないけどさ」
 拗ねたようないつきの顔。
 それを見て、レーゲンは、不意に真顔になりました。
「どんないつきだって、私は守るし、気持ちは変わらないんだから」
「えっ」
 二人のオリジナルパペットを持って来て操りながらレーゲンは言いました。

「愛してるよ、いつき。病める時も 健やかなる時も、そして普通の時も、ね」

 そしてつけくわえます。
「そして10㎝の時も、たとえ10mの時も……ね」

 去年の夏、不意に、いつきが「好き」と言った時の言葉です。レーゲンはずっと、いつきの「好き」「愛してます」という言葉を覚えていて、自分が彼に告げた言葉も覚えていて、ずっと大事にしていたのでしょう。
 そのことに気がついて、いつきは思わずレーゲンにしがみつきました。

 10㎝になったいつきはしがみついても、レーゲンの指先ぐらいしか触れられません。
(小さいのも楽しいけど、レーゲンが遠いなぁ……)
 一方、レーゲンも似たような事を考えています。
(力を入れると壊れそうで、抱きしめる事もできない少し寂しいね)
 そんな事を考えているうちに夜になりました。
(眠る時、ベッドだとレーゲンが寝返りうったら危険だし。床にかご置いてタオルでも敷いて……あ、あれ!)
 いつきは、レーゲンの持っているパペット人形に気がつきました。
「これなら柔らかいし、レーゲンをぎゅっとできる……な、なんでもない!」
 勿論、レーゲンはそんないつきの様子に気がついていたのでした。
 眠る時は何があるのか分かりませんから、同じ部屋にいつきを連れて行きます。
 それから、パペット人形の両手を、いつきを抱き締めるように交差させ、タオルを入れたかごの中にそっと横たえました。
「『私』、私の代わりにいつきを頼んだよ」
 レーゲンは優しい声でそう言いました。
 明け方、目が覚めると、いつきは元に戻っていました。レーゲンはそっといつきを自分のベッドに連れて行き、今度は自分の両手で抱き締めたのでした。
「私のいつき。ずっと守って行くからね」

●瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)編
 その日、瑪瑙珊瑚は、A.R.O.A.の実験により10㎝になりました。
 そして早速パートナーの瑠璃のところにやってきて報告しました。

「瑠璃、すげぇ! すげぇぞ! 何もかもがデカく! 広く! 見えるやさあああ!」

 床の上に大文字になって寝転がり、あまりの広さに大声を上げる珊瑚でした。
(あれ? この声って、どこまで届くんやさ?)

 一方、瑠璃は黙々と針仕事をしています。テンションの高い精霊を余所に、彼はしっかりとハンカチでなんとかフードがついたローブに似た服を作っているのでした。彼は裁縫スキルを持っているので、意外にすぐに縫い上げる事が出来ました。
 完成すると、早速、すっぽんぽんの珊瑚に着せようとします。
「きつくないか?」
「おおー!」
 珊瑚はハンカチローブを身に纏って、運動したり歩き回ったりしています。
「おおー! おおー!」
 何やら感動しているようですが、何をやりたいのか、瑠璃にはいまいち分かりません。

「瑠璃ー! 腹が減ったんやさー!」
 しばらくテンション高く走り回ったり運動したりしていた珊瑚ですが、やがてそう叫びました。
「……」
 とりあえず、瑠璃は、醤油を入れる小皿に、ご飯をスプーン一杯よそいました。
 つまようじ二本をお箸がわりに、食べられるのか様子を見ました。
 味噌汁は別の小皿によそいました。
 おかずである梅干しやハンバーグは、肉眼で見える程度に小さく切り、珊瑚の口元に持っていきました。
 瑠璃は料理スキルを持っていますので、そういう事も苦にしません。
「瑠璃ー! 味が濃いー!」
 しかし、珊瑚は、瑠璃の努力も意に介さずに言いたい事を言います。
 体が小さくなると、許容出来る塩分も違ってくるのでしょうか?
 珊瑚は、その小皿の味噌汁に水を足していいものかどうか困惑……。

「その体がこの先、ウィンクルムの任務に役に立てばいいな」
 生来真面目な性格なのでしょうか?
 この状況で、瑠璃は珊瑚に任務の話をしています。
「オウ! 俺は、オーガの体の中に飛び込んで、腹の中から攻撃してやるんやさ!」
「……一寸法師か?」
 瑠璃はそう言って首を傾げると、珊瑚の方は至って元気に、戦隊アクションのようなポーズを取っていました。

 その夜。
 瑠璃は珊瑚をひとりぼっちにするのも気が引けますので、自分の枕元にベッドを作りました。敷き布団にはミニタオル、毛布にはハンカチを二枚重ね、枕には突発的に買った化粧用コットンを重ねて用意しました。
 珊瑚は面白がってミニベッドをバンバン叩いた後に、潜り込んで気持ち良さそうな顔をしています。
「おやすみ、珊瑚」
「おう、おやすみ!」
 ですがその後、珊瑚は何故かミニタオルの上でゴソゴソしていて落ち着きがありません。
 瑠璃はその音で眠れずに振り返りました。
「どうしたんだべさ、珊瑚」
「うー……瑠璃」
 珊瑚は、ハンカチの毛布から出て来ました。
「アイピローのベッドで寝てみたいんやさ」
「アイピロー??」
「瑠璃と交換したアイピローやさ、こんな機会だし、普段しない事をしてみたい」
 確かに、去年の春、二人は競争しながらアイピローを作っています。
 瑠璃はジャーマンカモミール、珊瑚はラベンダーの香りのするアイピローで、二人で使ってお互いの距離を確かめたのでした。
 確かに、10㎝状態の珊瑚ならば、アイピローをベッドにしてもちょうどよさそうです。

 瑠璃は起き上がると珊瑚のアイピローを探してきて、ラベンダーの香りのするそれに珊瑚を寝かせ、ハンカチ毛布をかけてあげました。

「へへっ、特製のベッドやさー!」
 珊瑚は大喜びです。
 瑠璃もじっと珊瑚を見ています。もしかして羨ましいのかもしれません。

「いい匂いがする……」
 瑠璃も自分のアイピローを持って来て、目の上に乗せてベッドに寝転がりました。
「そういえば去年はいい匂いのする事件がたくさんあった……」
 そこで珊瑚は嬉しそうににやにや笑いながら瑠璃を見ました。
「何?」
「瑠璃からオレンジの匂いのする手紙を貰ったこと、思い出した」
「……ああ」
 んふふ、と本当に嬉しそうに笑って、珊瑚はアイピローの上を転げ回っています。

「瑠璃の匂いが不思議な事もあったやさ」
「……俺が、親父の部屋の知らない女性と……同じ匂いだったんだべ?」
 香りの記憶は、他の五感に比べて強烈だと言います。
 瑠璃自身、珊瑚からは過去にまつわるような不思議な匂いを感じ取っています。自分達はきっと、深い運命によって寄り添わされているのでは--瑠璃は本当にそう思うのでした。
「……思い出の匂いなんやさ」
 珊瑚もまた、じっと瑠璃の方を見ていました。

 二人とも口には出しません。
 ですが、考えるのは記憶のアロマポットの事です。
 瑠璃は不安さに沈黙しました。かつて、アロマポットで目にした珊瑚の生い立ちを興味本意で覗いた好奇心と、珊瑚を傷つけた罪悪感を彼は持っているのです。珊瑚は10㎝の体のまま、瑠璃の方を見上げて、笑っていました。
「瑠璃。……どうなっても、こんなんなっても、俺はウィンクルムで瑠璃の精霊やさ。何も、心配するな」
 その声を聞いて、瑠璃も、ふと笑顔を浮かべました。
 そう、この絆があるのなら、どんな明日が来ても決して怖くはないのです。



依頼結果:成功
MVP
名前:信城いつき
呼び名:いつき
  名前:レーゲン
呼び名:レーゲン

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: シオヤアブちゃん  )


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月28日
出発日 04月05日 00:00
予定納品日 04月15日

参加者

会議室

  • [3]瑪瑙 瑠璃

    2017/04/04-23:43 

    ギリギリの参加になりますが、瑪瑙瑠璃(めのう るり)です。よろしくお願いします。
    翠雨さんは初めまして、いつきは久しぶり、だな。

    A.R.O.Aの研究……かどうかはわかりませんが、
    こういった類は後々続く……開き直るしかない(悟りを開いたように)。

    珊瑚
    「すげぇぞ!瑠璃! わん、一生このままでいるやさー! やりたい放題ぃ!」

    ……あれは、悪い開き直りですが、
    いつきの言うように、1日限りの事がほとんどですので、翠雨さんも心配しなくて良いと思います。

    お互い、無事に過ごしましょう。

  • [2]信城いつき

    2017/04/02-23:52 

    翠雨、うん確かにA.R.O.A.って色々……(あれやらこれやら頭の中に思い出がよぎる)
    で、でも大丈夫だよ。だいたい1日で終わるし、とくに死ぬほどの事もないし!

    レーゲン:
    それあんまりフォローになってない気がするんだけど……(苦笑)

    おっと挨拶が遅れてしまったね、信城いつきとその相棒のレーゲンだよ
    大変な出来事ではあるけど、無事に1日を過ごせるようお互いがんばろうね

  • [1]歩隆 翠雨

    2017/04/01-00:22 

    歩隆翠雨だ。
    相棒は那音。

    …それにしても、A.R.O.A.って色々ヤバくないか?(汗)

    兎にも角にも、お互い無事に乗り切ろうぜ!
    よろしくな。


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