プロローグ
●
「わーっ、待ってくれ!」
あなたと精霊は走って行くバスに向かってダッシュしたのですが、間に合いませんでした。
バスは無情にもあなた達には全く気づかず、走り去ってしまいます。
あなたと精霊はバス停の前でぜいぜいと息を切らしながら立ち止まり、顔を見合わせました。
「任務地に行かなきゃならないのに……。次のバスは、二時間半後か……」
とりあえず、遅刻してしまう事をA.R.O.A.に連絡するあなた達。
それから、バス停の付近を見回すと、こじんまりとした雰囲気の良いカフェがある事に気がつきました。
「入るか……」
あなたと精霊は、どちらからともなくそのカフェに入りました。
「そういえばお前、趣味とかある?」
「はい?」
オーダーが運ばれてきたところで、あなたの方から精霊に話題を振ります。
「……あんまり、そういうこと話した事ないと思ってさ」
実は、あなたと精霊は、任務に向かうのがこれで三回目だったのです。
そのため、お互いの表面的な事しか知りません。
「趣味とか……特技とか……好きなもんのこととか……知れたらいいなと思って……」
ちょっと照れて視線をそらしながらも、あなたは精霊にそう尋ねました。
あるいは――
「そういえば、この間の任務の時に、言っていたアレ、どうなった?」
突然、精霊があなたに深い事を突っ込んで来ました。
コーヒーで咽せそうになるあなた。精霊は、人の悪い笑みを浮かべながら、あなたに迫ってきます。
「うろたえるって事は図星? 誤魔化すなよ。俺はお前の事なら何でも知りたいんだ」
あるいは――
「こうしてゆっくり話すのも久しぶりだな」
「そうだね」
「……お前とも長いつきあいだけど、落ち着いて話せると、本当に気が安らぐよ」
そんな会話もあるかもしれません。
バスに乗り遅れた――列車事故――夕立に降られた――などなど、様々なアクシデントでカフェに入り、二時間ほど過ごす事になったら――あなたと精霊は、どんな会話をするでしょうか?
解説
不意のアクシデントで精霊と二人、カフェで二時間ほど時間を潰さなければならなくなりました。(そのへんの事情は特にプランに書かなくていいです)。精霊とどんな会話をするでしょうか?
※飲食代として300ジェールかかりました。
タイトルはコーヒーとなっておりますが、普通のカフェにあるものでしたら何でも頼んでOKです。また、注文につきましてはプランに書いても書かなくても構いません。
※新人さん向けです。知り合って間もないウィンクルムさんには……
・趣味
・特技
・好きなもの(こと)
・嫌いなもの(こと)
・ウィンクルムとしての目標、意識
※既に慣れてきたウィンクルムさんには……
・近況
・悩み事
・相手に聞いてみたい事
・行きたいところややりたい事
・趣味や好きな事について
この中からお好きなものを選んで自由にウィンクルム同士で話してください。
また、この中から選ばなくても、ウィンクルム同士で話しそうな事でしたら何でも書いて下さって構いません。
神人と精霊でたっぷり二時間話して、お互いに対する理解を深めてください。
ゲームマスターより
新人さん向けですが、勿論、玄人さんでもどなたでも入っていただけると嬉しいです。ウィンクルムはどんな会話を楽しむでしょう。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
偶にはのんびりするのもいいよな フィンとじっくり話す良い機会だ…いや、普段から会話してるけど、改めて…そう、フィンの悩みとか共有したい フィンは何時でも俺の事ばかりだし… けど、何て切り出すか…いきなり聞くと変だよな コーヒー飲みつつ考えていると、フィンに言われて思わず条件反射に フィン、悩み事とかあれば、聞くぞ いや、待て、ちょっと待て 俺はそんなフィン以外の誰かとなんて、絶対ないからな…! 思わず声高に言って、慌てて口元を押さえる …善処する… テーブル越しにフィンの手を握る 俺だって同じだ フィンの仕事関係の人とか…信じてるけど、不安になる だから、時々確認させて欲しい 俺も不安にさせないように頑張る …好きだからな |
歩隆 翠雨(王生 那音)
コーヒーはブラック 那音の奴、すこぶる機嫌悪そう…隠さないっつーのは、気を許してる…と思っておこう しかし気まずい ん?ミルク… ブラック派に見えた…意外 じーさんが、珈琲に不純物を入れるのは好かん!って言ってて、それに合わせてたらな 元の好みは覚えてない 那音はさ、どういうものが好きなんだ? 好みって奴 相棒としては知っておきたい 例えば…(メニュー指し)ケーキとか? 頼もうぜ! 俺も食べてみたい じーさんが甘いもの食べる人じゃなかったからな 苺ショート注文 綺麗で可愛いな 写真撮っていいか? 甘い…ホッとする味 好きかも 那音も嬉しそうでよかった ほら、こっちも一口食べてみろよ 那音のふと笑った顔を反射的に写真に撮る んー何となく? |
●歩隆 翠雨(王生 那音)編
その日、歩隆 翠雨は、精霊の王生 那音とともに、喫茶店で二時間ほど時間を潰す事になってしまいました。
「ブラックで」
翠雨は、オーダーを聞きに来たウエイトレスに頼みました。ウエイトレスは翠雨と那音の注文を両方聞いて、カウンタに戻って行きました。
翠雨は那音に向かい直りました。
(那音の奴、すこぶる機嫌悪そう……隠さないっつーのは、気を許してる…と思っておこう。しかし気まずい)
ちらりと翠雨が那音の顔を盗み見ると、彼はすこぶる不機嫌で、眉間に皺を寄せています。
(私は無駄な時間が嫌いなんだ)
気ぜわしく時計を見ていた那音は、翠雨が黙ってしまった事に気がつきました。
(……何で俺はこんなに苛々しているのだろう)
翠雨の様子を見て、那音はそんな自分を反省しました。
気分を変えてコーヒーでも飲もうと、那音は、ちょうどウエイトレスが運んで来たコーヒーのカップを引き寄せ、ミルクを注ぎました。
「ん? ミルク……。ブラック派に見えた……意外」
それを見て、翠雨が口を開きました。
那音はいつも通りにミルクを入れただけなので、その言葉にため息をついてしまいました。
(……どういう目で俺の事を見ているのか)
金髪碧眼で無駄のない筋肉を持つ痩身、クールな完璧主義者……彼は周囲からそう思われているようです。良家の子息で、それに相応しく何の隙もない男。
だからコーヒーには甘い砂糖もミルクも何も入れないだろうと、そういうことなのでしょうか。
「ミルクで脂肪分を補う事が出来るんだ。糖分や脂肪分のエネルギーが早く回り疲労回復が促される。翠雨さんこそ、ブラック派とは意外だな」
仕方なく那音はそう答えました。
「じーさんが、珈琲に不純物を入れるのは好かん!って言ってて、それに合わせてたらな
元の好みは覚えてない」
翠雨も快活に答えます。
そこが会話の切り口になりました。
「那音はさ、どういうものが好きなんだ? 好みって奴」
翠雨は明るい調子でそう聞きました。
「私の好みを聞いてどうするつもりなのかな?」
「相棒としては知っておきたい」
少し嫌みな那音の調子にも翠雨は揺らぎませんでした。
「例えば……ケーキとか?」
翠雨はそう言って店のメニューを指差しました。
(いいだろう、今日は話を合わせる事にする)
那音は自分の気持ちを持ち直しました。
「甘い食べ物。チョコレートとか」
その返事を聞いて、翠雨は笑います。
「頼もうぜ! 俺も食べてみたい。じーさんが甘いもの食べる人じゃなかったからな」
そして翠雨が通りかかったウエイトレスを呼び止めました。
那音はチョコレートケーキ、翠雨は苺ショートを追加注文します。
ケーキはすぐに二人のテーブルに持って来られました。
「綺麗で可愛いな。写真撮っていいか?」
「別に構わない」
那音の返事を聞いて、翠雨はカメラを取り出すと、二つのケーキを並べたり、一つずつにしてみたりして、一通り撮影しました。
それからおもむろに、ケーキをフォークで切り分けて一口食べます。
「甘い…ホッとする味。好きかも」
翠雨はすぐに感想を言いますが、那音の方は無言で食べています。
ですが、その顔には柔らかな笑みが浮かんでいました。
「那音も嬉しそうでよかった。ほら、こっちも一口食べてみろよ」
そう言うが早いか、翠雨は、自分のケーキを切り分けると那音の口元に差し出しました。
那音は所謂「あーん」に思考が停止してしまいます。
ですが、ここで引いたら負けのような気がしました。
那音は、思い切って翠雨に差し出されたケーキを食べてしまいました。
「こちらもどうぞ」
そういう訳で、那音は自分もチョコレートケーキを切り分けると、翠雨の方にあーんをしました。
すると翠雨の方はあっさりとそれを一口で食べてしまいます。
那音は閉口してしまいました。
ですがなんだかおかしくなって、くすっと笑ってしまいます。
すると、翠雨はその那音の笑った顔を反射的に撮ってしまいました。
「人を撮るのは苦手だったのでは?」
「んー何となく?」
那音は別に怒ってはいないようです。
それはそうと、まだまだ時間はあるようです。
「また何か頼む?」
翠雨が尋ねると那音は呆れました。
「これ以上食べるのか?」
「甘い物は別腹って言うだろ」
「あれは女子の言い訳だ。翠雨さんはいつから女子になった」
「顔だけは女みたいってよく言われるんだけどねえ」
ふざけているのかどうなのかよく分からない調子で翠雨は言い、那音の前に『桜スイーツ』と書いてある特別なメニュー表を広げました。
「だって暇だし、那音はあまり喋り好きじゃあないようだし、それなら喰うしかないじゃないか。ほら、甘いもの好きなんだろ? 今の時期限定の桜スイーツがこんなにあるぞ」
「…………」
本人を目の前に『喋り好きじゃない』とはっきり言ってしまう翠雨。
那音は確かにそういう部分もあるので、否定することが出来ません。ですが、それは、特別な記憶を持っている翠雨が相手だということも随分あるのですが……。
「どんなのがあるんだ」
那音がメニュー表をのぞき込みました。桜マカロン、桜スムージー、桜モンブランなどは勿論、シフォンケーキ、ロールケーキ、シュークリームと、桜を題材にした菓子なら一通り何でもあるようです。恐らくオーナーの趣味なのでしょう。
「ふん……」
甘い物が好きならしい那音は、とりあえず機嫌が直りました。
「たくさん頼めよ。俺、写真に撮りたい」
何かと思ったら、翠雨は、これらの菓子を撮影したかったようなのです。那音は呆れましたが、ウエイトレスを呼び止めて、写真写りがいいのはどの菓子か尋ねました。
「それではこちらなど……」
ウエイトレスのおすすめを注文すると、スイーツはすぐに出て来ました。
苺やブルーベリーなどのベリー類をぎっしり乗せ、桜餡とフランボワーズクリームをたっぷり塗り込めて桜色の生地で包んだ桜のマカロン。
夢のような桜色に真っ白なクリームと赤いチョコを乗せたガラスの器も美しい桜チョコシェイク。
それから、薄桃色の桜の花びらに緑の小さな葉、黒い枝――何から何まで桜そっくりの飴細工。
それらがテーブルに届くと、翠雨は大喜びしてシャッターを切りまくりました。やはり人物も撮りますが、美しいものや珍しいものの方が撮りたくなるようなのです。一番得意なのは景色ですが。
「翠雨さん。あなたも少しは食べてくれ。私だって、チョコケーキを食べたばかりなんだからな」
「んー仕方ないな」
ひとしきり撮影が終わると、翠雨は桜マカロンを一つ受け取りました。
「春が来るな。桜の花が咲いたら、撮影に行きたいな……」
マカロンの味を楽しみながら、陽気に翠雨が言います。
「ああ、そうだな」
那音も桜が嫌いではないようで、素直に相づちを打ちました。
「後はこういうものを作る人達の技術も知りたいな……。人物は苦手だけど、技術の素晴らしさは……」
桜の飴細工を見つめながら翠雨は感嘆のため息をついています。
(何故、人物を嫌う……? いや、嫌っているだけではないようだが……)
陽気に笑っている翠雨の笑顔の影を覗きたくて、那音は何かを問いかけようとして、やめました。
翠雨自身が、失われた記憶に全く興味を示していない事を思い出したのです。闊達で男らしい翠雨の、失われた記憶は、心の闇のようなものを思わせて、那音は躊躇ったのでした。
「桜も撮ればいいし、技術も撮ればいい。好きなものを撮ればいいだろう」
那音はそうすすめました。翠雨が興味を示し、笑顔でいられる事が大事だと思いました。失われた記憶の中にいる自分も、彼の事も、いつか時が来たら、話す事が出来るでしょう。
●蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)編
その日、蒼崎 海十と精霊のフィン・ブラーシュは、二人で二時間ほど喫茶店で時間を潰す事になりました。
「偶にはのんびりするのもいいよな」
海十は機嫌が悪い訳でもないようです。
(フィンとじっくり話す良い機会だ……いや、普段から会話してるけど、改めて……そう、フィンの悩みとか共有したい。フィンは何時でも俺の事ばかりだし……けど、何て切り出すか……いきなり聞くと変だよな)
海十はそんなことを考えながらコーヒーを飲んでいます。
「うん、こういう一時もいいね」
フィンの方も、海十とのんびりコーヒーを飲みながら考え事です。
(この所、海十も大学生活の準備とか、ライブとかで忙しそうだったし……久し振りに海十を独り占めって嬉しい。そう思ってたら、海十が何やら思案顔? まさか……何か心配事とか?)
そこでフィンが海十の方に身を乗り出しました。
「海十、大丈夫? 何かあるなら話を聞くよ」
フィンに言われて海十は条件反射です。
「フィン、悩み事とかあれば、聞くぞ」
海十からのまさかの質問返しに、フィンは思わず目を丸くさせます。
「悩み事……そうだなぁ……海十が大学生になったら、色んな出会いがあるだろうし…海十を誰かに盗られないか心配なんだ」
フィンは真顔でした。
「いっその事、海十と一緒に大学通いたいくらいだけど、そうもいかないしなぁ……」
そのまま真剣な顔でフィンは考えこんでしまいます。
「いや、待て、ちょっと待て。俺はそんなフィン以外の誰かとなんて、絶対ないからな……!」
思わず声高に言ってから、海十は店の中だと思い出し、慌てて口元を押さえました。
「……善処する……」
その海十の様子を見て、フィンは頷きます。
「うん、海十の事は信じてる。それでも嫉妬しちゃうから……時々でいいから、ちゃんと海十の気持ちを伝えて欲しいな。言葉と態度で、ね」
海十は、テーブル越しにフィンの手を両手で握りしめました。
「俺だって同じだ。フィンの仕事関係の人とか……信じてるけど、不安になる。だから、時々確認させて欲しい。俺も不安にさせないように頑張る。……好きだからな」
熱い二人にはまるで入り込む隙間などないようです。
「それにしても、時が経つのは早いね……。高校生だった海十が、もう、大学生だもんね」
「そう言われてみればそうだなあ」
「一緒の春も、もう三回目か」
フィンは、それから海十を笑いながら見つめました。
どうやら、今までの春を振り返っているようです。
そして突然、口に手を当てて前に屈んでしまいました。
「? フィン?」
「い、いや、何でもない……」
「何だよ」
「……ちょ、ちょっと去年の春の事を思い出してね」
そう言ってフィンは起き上がりましたが、海十から目をそらしてしまいました。
「あー!」
海十は真っ赤になって声を上げ、そして再び口を手で押さえます。
「フィン。お前。まさか……おっぱいを!」
そう。
ちょうど、去年の今頃、海十はA.R.O.A.で変わった科学者に巻き込まれ、オレンジの香りのビームを放つおっぱいを手に入れ、フィンに半身浴をさせたり膝枕をさせたりと色々頑張ったのでした。
そうです……なかなか、忘れられる記憶ではありませんよね。
「うん、まあ。そうだけど、うん。海十、興奮しないで」
「…………」
羞恥にぷるぷる震える海十でしたが、必死に自分を抑えます。
「あ、ああそうだ。その前の年、一昨年の今頃は――カフェでも、古城カフェに行ったじゃない。タブロス郊外の。ね、海十?」
フィンは慌てて話題を代えてしまいました。
海十は大きく深呼吸をしてから頷きます。
「ああ……覚えているよ。八重桜のスイーツを出したところだろ?」
「うん。そう、海十がいてもたってもいられないって言ってくれて。俺の事を考えてくれるんだなって嬉しかったよ」
フィンがにっこりと笑うと、海十も落ち着いてきたようで、普通に頷きました。
「覚えてるよ。……あのとき、シフォンケーキとクリームブリュレで間接キスになって、俺は意識したのに、フィンは全然気がついてなくて」
「そうだったね。そしてそのあと、二人で半分こにしたんだよね」
海十は八重桜の美しさを思い出して、ため息をつき、完全に落ち着きを取り戻しました。
「また見に行きたいな。本当に綺麗なところだったし、スイーツも美味しかった」
「そうだね。今年か来年か――」
フィンは軽く目を閉じて、八重桜を思い浮かべているようです。
「去年の桜は、桜を摘んで、桜のお茶を飲んで、それから栞作りだったよな」
海十の方が思い出してそう言いました。
「あ、そうそう。桜塩なんてあったんだね」
二人はひとしきり、桜を摘んだ思い出を話し合いました。
桜を傷つけないように丁寧に丁寧に摘んで、桜のお茶を飲んで――本当に優雅で充実した時間だったのです。
「あのときの栞を使って参考書を読んで、大学の合格出来たんだよ」
海十がそう言いました。
あのとき作ったのは星の栞です。勿忘草と薔薇、思い出の桜を配置した栞。
フィンが海十へと作ったのは、ハートの栞。まるで示し合わせたように勿忘草と薔薇、桜を配置したものでした。
「うん。俺も、いつも仕事で使っているよ。海十からもらった栞」
「そうなのか」
海十は安心したように微笑みました。
自分だけが栞を使っているのだったらどうしようと思いましたが、全くそんな心配はなかったようなのです。
「俺は夜桜の方を覚えているかな。夜中に一緒に、ヨミツキを見に行った事。海十がおにぎりとサンドイッチを作ってくれて」
「ああ、そんなこともあったな」
「ヨミツキの怖いぐらいの美しさを眺めながら、二人一緒に、おにぎり食べて、そのあと海十に膝枕してもらって――ああ、幸せだなあって思ったんだよ」
フィンは笑います。
そう。俺は、海十のおかげで、思い出せた感情がたくさんあるから――。
そう言うのでした。
海十はふと、フィンの過去を思い出して、春に似合わない寒さを感じましたが、今彼が笑っていられる事が大事だと思い、自分も笑いました。
「そうだな。サクラウヅキの異変……去年はその調査が大変だった。サクラウヅキでの色々な出来事も忘れられないよ」
「ヨミツキの下でキスしてる恋人見ちゃったりもしたよね」
「!」
海十はまた真っ赤になってしまいます。
大学に行くと言っても、彼はまだまだ純情なところが残っているようですね。
そう、海十は、降りしきるヨミツキの下でキスをしている恋人達にあてられて、自分も、屋外なのにフィンにキスしてしまった事があるのでした。
「し、仕方ないだろ、あれは……からかうなっ」
「別にからかってなんかないよ。俺は、嬉しかったよ」
フィンの方がやはり大人で軽くいなしてしまいました。
「そういえばハルモニアホールが再建されるときに、詩うたいの花なんてのもあったっけ」
二人の思い出の記憶は尽きません。だって二人とも、お互いの事を、よく覚えているのですから。
「ああ、俺が、初夏の詩を詠って、フィンが月影――だったっけ?」
流石に詩全てを覚えている訳ではないようです。
「月影に 独り立つ君……二人なら きっと見つかる 幸せの意味。そういう詩。まるで予言みたいだったね」
フィンは目を伏せ、自信に満ちた穏やかな口調で言いました。
孤独だった二人でしたが、ウィンクルムとしての様々な事件を乗り越え、確かな絆を作って、今ではお互いにかけがえのない存在となり……そして、確実に幸せなのです。
ごく自然に、ふと口を突いて出るように、「幸せだなあ」と言えるように。
そんなフィンの様子を見て海十は微笑みました。じんわりと心が温かくなり、今の幸せに感謝するのです……。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 森静流 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 2 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 03月12日 |
出発日 | 03月23日 00:00 |
予定納品日 | 04月02日 |