プロローグ
タブロス市内にあるその施設は、小さなお子様からお年寄りまで、四種類のお風呂とサウナが楽しめる憩いの場所でした。
【露天風呂・檜】
名前の通り、檜で出来た源泉風呂。檜の良い香りと開放的なお風呂が人気です。
【露天・寝ころび湯】
浅いぬるめの温泉に横たわり、のんびりリラックスできる源泉風呂です。
【露天・壷湯】
大きな壺に溢れる天然温泉。定員は二名まで。恋人達に人気のお風呂です。
【露天・水風呂】
石造りの広いお風呂。サウナや温泉と組み合わせて使うことをお勧めします。
【サウナ】
外の露天風呂を眺められる大きな窓の付いた、開放的な大きなサウナです。
加熱したサウナストーンにアロマ水をかける『ロウリュ』サービスもあります。
室内にアロマの香りが広がって温度が上昇し、心地よく汗を流せます。
エリアは男女できっちり分かれており、男性も女性もリラックスして温泉を楽しめます。
今日も施設は大人気。
人々は思い思いに温泉に入ったのですが……。
「おっぱいが、生えた……!!!!」
「な、ない……そして、は、生えた……!?」
突然あちこちから悲鳴が上がりました。
従業員達は驚くと同時、自分たちにも異変が起きている事に気付きます。
突然たわわに膨らんだ胸を押さえ、真っ赤になっている男性(今はどう見ても女性です)。
真っ平らになった胸と、違和感のある股間を押さえて震える女性(今はどう考えても男性です)。
ある筈のものがなく、ない筈のものがある──そう、温泉施設に居る人々皆の性別が反転していたのでした!
※
「という訳で、俺らがここに来た訳だ」
幾分控えめに膨らんだ胸を突き出すようにして、仁王立ちした神人を、精霊はうんざりと見つめました。
「どういう訳か全然分かりませんよ?」
はぁと溜息を吐いて俯けば、嫌でも視界にたわわに生えている己の胸が見えます。
「『失敗作のギルティ・シード』を何とかしなければ、この現象は消えない。
俺達、ウィンクルムが何とかするしかないんだ! そう言われたろ?」
「……まあ、それは分かってますけれど……」
股間も何となくスースーとして落ち着きません。精霊はおろおろと周囲を見渡します。
普段なら心躍る温泉も、これからの事を考えると、全く嬉しくありませんでした。
「兎に角、俺達がこの姿で暫く頑張るか、手っとり早く感情を昂らせれば元の姿に戻れる!
温泉を楽しむしかない!」
行くぞ!
神人に手を引かれて、精霊はおろおろと揺れる胸を押さえたのでした。
解説
タブロス市内にある温泉施設で、『失敗作のギルティ・シード』を何とかする為、頑張って頂くエピソードです。
『失敗作のギルティ・シード』とは、近付いたものを性転換させてしまう迷惑な種です。
ウィンクルムが10m以内に入ると、ウィンクルムのみならず、ウィンクルム以外の人間や動物の性別も転換してしまいます。
一度効果を発動すると、叩き割るなどをしても一定時間は効力は消えません。
ウィンクルムの性転換後、一定時間が経過する、もしくはウィンクルムの感情が大きく昂ぶると、元の性別に戻れます。
性別が元に戻ると、『失敗作のギルティ・シード』は効果を失って砂となって消えてしまいます。
大きさは錠剤程度の大きさで、現在は、温泉施設の中央あたりにある【露天風呂・檜】の中にあります。
※PL情報ですが、何もしなくても3時間程で性別は元に戻り、『失敗作のギルティ・シード』は効果を失って砂となります。
公序良俗を保つため、必ず『巻きタオル』か『温泉用水着』を着用して頂きます。
プランに以下を明記して下さい。
・性転換後の外見や体つき(グラマー、スレンダー等など、拘りのある部分は必ず記載をお願いします)
・『巻きタオル』と『温泉用水着』、どちらを着用するか(柄など拘りあれば、記載して下さい)
・性転換から元に戻る為に、何かするか(何もせず、温泉を楽しむだけでもOKです)
・どうやって性転換から元に戻るか。何処で元に戻るか
行ける場所は、プロローグ記載の場所と、脱衣所、休憩所(ドリンク販売、寛げるソファがあります)です。
温泉施設で散財し、『500jr』消費します。
あらかじめご了承下さい。
ゲームマスターより
ゲームマスターを務めさせていただく、『サウナで思い切り癒されたい!』方の雪花菜 凛(きらず りん)です。
性転換と聞いて、出さずにはいられませんでした…!
らぶてぃめっとは全年齢対象なので、その点だけご注意頂けたらと思います。
皆様のおっぱ…げふんげふん、素敵な性転換、楽しみです!
皆様の素敵なアクションをお待ちしております♪
リザルトノベル
◆アクション・プラン
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
女になっちまったもんは仕方ねぇよな。慌てる事でもない。 筋肉しっかり。胸大きめ。本来の胸囲がそれなりにあるからか(喜。 腰は細くなった、尻増えた、太もも増えた! 風呂入る前に体脂肪計乗るぞ。体脂肪率が増えてるっ! あ、うん、温泉入ろうか(ははは。 水着だと元に戻った時ヤバくないか。巻タオルにしようぜ。 おお、胸に見事引っかかる。スゲー(喜。 檜風呂に入ろう。 すげ、皆の胸もデカイ。くっ、何て眼福だ。 思わずラキアを含め他の人のたわわな胸をガン見。 バストサイズは、と頭の中でアレコレ考えていたら、元に戻っちまって。 おいまて。 シードももうちょっと頑張れよ。 オレまだ自分の胸のサイズ精査してねーぞ。 何だよ、モッタイナイ。 |
ルゥ・ラーン(コーディ)
【檜】 「いい湯ですね~」 不機嫌そうな彼に微笑んで とても麗しいですよ あなた と言えば更に不機嫌になった 「折角ですし私は楽しんでます」鼻歌 【寝ころび湯】 (何だかんだ言って温泉は楽しむ構えなんですね)くす 「けしからん? ふふ そそります?」 僕の好みじゃないね と興味なさげ反応に それは良かった 「印象の強いものが反映されているのではないでしょうか?」 以前 付き纏われて難儀したお客様のサイズですね…これ 「いえ…体験した事で巨乳女性の悩みにこれまでよりも寄添えそうです」 しみじみ胸を抱く 【壷湯】 「え キスを?」 てっとり早く高揚する為にキスしてやるよとの提案 驚いて頬が染まり一気に高揚 キス前に解けたけど受入れた 良い思い出に |
柳 大樹(アルベリヒ・V・エーベルハルト)
普通体型。Cカップ。鍛えてない為、腕とかふにふにしてる。 眼帯は外し、左目を覆うようにタオルを巻く。 脱衣所: 「ほんとに女になったや、へえ」(感心して自分の胸を揉む 「弾力はやっぱ個人差なんだね。変な感じ」(バスタオルを体に巻く 「男なら興味持つもんじゃない?」 「あー、そうね。何、先生興奮した?」 露天風呂・檜: 「いい湯だねえ」(口元が緩む 「ところでさ」(外れかけたバスタオルを止め直し 「感情を昂らせるって、何すればいいと思う?」興奮とは違うんだろうし。 「このなりのまま、少女漫画的な?」 「まあ、時間経てば戻るらしいし」別にいいか。(考えるのが面倒 でさ。「先生スタイルいいね」 結構、筋肉質。(アルバの腕を触る |
アーシェン=ドラシア(ルーガル)
かろうじてAスレンダー 巻きタオル 温泉を巡って任務をこなす …温泉に入るのは初めてだから楽しみだ 性別が変わったところで湯に浸かるのに問題はない 寝転び湯から行こう 手で底を探る 匍匐前進で湯にもちゃんと浸かる ぬくい 一通り探し終えてから移動の準備をする ルーガルは…いつまでそうしているんだ ……あんたは、そんなにそれが好きなのか? どうにもモヤモヤして、覆いかぶさるようにルーガルの胸にダイブする 確かに柔らかくて枕にすると良さそうだが、俺は普段の広いあんたの胸の方が好きだぞ あんたにも、普段の俺の方がいいと思ってほしい そう言ったら元に戻った 任務完了、か? …やっぱり、元通りの方がいいな 広い胸に頬を寄せたまま思う |
●1.
「裸の付き合いをするぞ」
ルーガルは思わず目を丸くした。
何とも衝撃的な事を言われた気がするが、思考が付いて行かない。
だから、付いて来いと彼が歩き出すのを止める事も出来なかった。
ギクシャク歩いた先、辿り着いた場所は温泉施設。
ああ、そこまでは……まだ、良かったんだ。
ささやかな膨らみを帯びた胸。
頼りない細い腰の括れに触れて、アーシェン=ドラシアはふむと呟いた。
巻きタオルを纏うと、胸の膨らみは目立たなくなる。
頷いていると、隣で大きく息を吐く気配。
「どうした?」
視線を向ければ、ふっくらとした二つの膨らみが視界に入る。
筋肉質な二の腕と割れた腹筋、女性らしい健康的な括れ──ビキニタイプの水着が映える体つきだった。
アーシェンは思わず自分のものと見比べてから、いつもより少し低い位置にあるルーガルの顔を見上げた──アーシェンも低くなっている分、見上げる角度は同じだけど。
「何か問題があるか?」
「……いや」
問題なら盛沢山だ。ルーガルは言葉を飲み込んだ。説明をするのは拷問だ。
「性別が変わったところで湯に浸かるのに問題はない」
それを額面通りに受け取ったアーシェンは、結い上げた黒髪を揺らして歩き出す。
「温泉に入るのは初めてだから楽しみだ」
アーシェンの後に続きながら、ルーガルは瞬きした。
温泉は初めてなのか。
初めてで、誘ったのか。
ルーガルは口元を掌で覆った。でないと、変な顔をしてしまいそうだ。
「随分と浅いんだな」
まず最初に二人が辿り着いたのは、寝転び湯。
アーシェンは興味深く浴槽を見つめる。
それから、足を踏み入れ膝を折ると、伸ばした手を湯に入れ指先で湯の底を探った。
優しい湯がさらさらと流れている。
心地よい感触に誘われるように、アーシェンはうつ伏せになって湯に身を沈めた。ぬるめの湯が全身を包み、アーシェンの唇から吐息が零れる。
そのまま匍匐前進すると、少し浮き上がった体は面白いくらいスムーズに前に進んだ。
「ぬくい」
『失敗作のギルティ・シード』を探しながら、アーシェンは湯の中をすいすい縦断する。
ルーガルは、ぴょこぴょこ湯の中を移動するアーシェンを少しの間見守ってから、己も湯に身を沈めた。
成程、これは確かにぬくい。
アーシェンに倣ってうつ伏せになり、両肘を前に付き前に進もうとして、ルーガルは静止する。
胸が、引っ掛かる。
たわわな胸が障害物のように押し返してきて、遅々として前進できない。
(胸って、こんなに邪魔になるもんなんだな)
ルーガルは諦めて仰向けに転がった。
ぷかぷかと湯の中に漂えば、これはこれで、気持ちが良いものだ。
しかし──ルーガルは落とした視線の先で主張する、己の胸を見た。俗にいうEカップはあるであろう圧倒的存在感。手を伸ばす。
むに。
柔らかい。そして弾力もある。
ふにふにふに。
両手で感触を確かめて、ルーガルはそっと口元に笑みを浮かべた。
(自分のだから全くありがたみねぇ……)
そんなルーガルを尻目に、アーシェンは端から端まで湯船の中を探索し終えて立ち上がる。
湯を吸った巻きタオルの端をきゅっと絞って、ルーガルに声を掛けようとしたアーシェンはぴたっと止まった。
いつまでそうしているんだと思うと同時、正体不明のもやもやした感情がこみ上げる。
「……あんたは、そんなにそれが好きなのか?」
自分にはないもの。普段彼にはないもの。
──男性である自分は持たざるもの。
アーシェンは気付くと、覆いかぶさるように彼に抱き着いていた。
衝撃にバシャンと湯が跳ねる。
「うぉお!?」
驚いたルーガルが身を捩る。アーシェンは彼の豊満な胸に頬を寄せた。
柔らかくて温かい。彼の鼓動を感じる。
一方、ルーガルは腹に当たる柔らかな感触に目を見開いていた。
(……ぱっと見まな板かと思ったが意外と柔らか……)
「確かに柔らかくて枕にすると良さそうだが、俺は普段の広いあんたの胸の方が好きだぞ」
「……っ!?」
飛び込んできたアーシェンの声に、再びルーガルの肩が大きく跳ねる。
「ななな何言ってんだよ!?」
「前に一緒に寝た時、あんたの広い胸、心地良かった」
「ばッ……一緒に寝たことはあるがあれは不可抗力ってやつで、誤解招く言い方すんなって!」
わたわたと身動ぎする彼の背中に腕を回して、アーシェンは瞳を閉じた。
「あんたにも、普段の俺の方がいいと思ってほしい」
ルーガルはカッと己の頬が熱くなるのを感じる。
鼓動が尋常じゃないくらいに速い。ヤバイ──。
「あ」
「へ?」
二人が気付いたのは同時。
胸の膨らみが、消えた。
「任務完了、か?」
アーシェンがぺたぺたとルーガルの広い胸板を触って確認する。
「……みたいだな」
やっとそれだけ返事を返して、ルーガルは口元を手で覆った。
(本当 こいつ どうしてくれよう……)
取り敢えず、赤いと思われる顔は湯にのぼせたせいにしておこう。
(……やっぱり、元通りの方がいいな)
彼の速い鼓動に耳を当てて、アーシェンは僅か口元に笑みを浮かべたのだった。
●2.
姿見に映る体を、セイリュー・グラシアはまじまじと眺めた。
引き締まった肢体には鍛えられた筋肉、腰もきゅっと締まっている。
一方で、大きく膨らんだ胸に、むっちりとした尻と太腿が美しい曲線を描いていた。
「女になっちまったもんは仕方ねぇよな。慌てる事でもない」
顎に手を当てて言い放ったセイリューに、ラキア・ジェイドバインは眉を下げた。
うん、君はこういう時でも全然焦らないよね。
慌てないセイリューの図太さは、凄いとラキアは思う。
「胸がおっきいのは、本来の胸囲がそれなりにあるからか」
たわわな胸を両手で支えて、セイリューは瞳を輝かせた。
「腰、細い! 尻増えた。太腿増えた!」
ぺたぺたと己の体を触るセイリューに、ラキアは思わず自分の体を見た。
ボンキュッボン──括れるべき所は括れ、膨らむべき所はくっきりと膨らんだ、メリハリの利いた女性の体である。
「この体だと、体脂肪率ってやっぱり増えてるのかな?」
真面目な顔でセイリューが呟いた。
「測ってみよう!」
セイリューは脱衣所に設置されていた体脂肪も測れる体重計に足を乗せる。
(体重計に乗ろうってメンタルどーなの)
ラキアは思わず固唾を飲んで見守った。
「体脂肪率が増えてるっ!」
表示をされた数字を指差して、セイリューはラキアを振り返る。
「色々柔らかくなってるもんな~」
納得顔で頷く様子を見て、ラキアは何とも彼らしい行動の数々に眉を下げた。
「筋肉量と内臓脂肪も──」
「他の数値も計ろうとしないで。ほらセイリュー、温泉入ろ?」
セイリューの手をラキアは慌てて掴む。
「メインは温泉でしょ。ここで時間潰してちゃ勿体ないよ」
ラキアが瞳で訴えると、セイリューは白い歯を見せた。
「あ、うん、温泉入ろうか」
はははと笑い体重計から降りると、脱衣所の片隅に並ぶ水着と巻きタオルを見比べる。
「水着だと元に戻った時にヤバくないか。巻きタオルにしようぜ」
肌触りも良い巻きタオルを手に、セイリューはラキアを見た。
「成程。俺も巻きタオルにしよう」
(着替えなきゃだけど、脱がなきゃいけないよね……)
ラキアは周囲を見渡した。周囲はセイリューを含め、性別転換してしまった男性(=女性)ばかりである。
躊躇している間に、セイリューは豪快に服を脱いで巻きタオルを身に纏った。
「おお、胸に見事引っかかる。スゲー」
タオルがずり落ちない事にセイリューは実に嬉しそうだ。
このままだとセイリューの視線がこちらを向いてしまうかも……。
そう思ったら、ラキアは居ても立っても居られず、セイリューに倣うように急いで服を脱いで巻きタオルに足を通した。
タオル一枚になると、余計に胸の膨らみと下半身の違和感を感じる。
「ラキア、行こうぜ」
セイリューはそんなラキアの手を引くと、脱衣所の外へと出た。
「檜の良い香り!」
「そ、そうだね」
ラキアは頷き、ドキドキ跳ねる胸を押さえて、その柔らかさに頬を染めた。
(ここは温泉に入って落ち着くとこだよね。ゆったり寛げは気分も落ち着くよね)
檜の香りと湯気に誘われて歩くと、眼前に大きな檜風呂が現れる。
総檜の浴槽、天然温泉が加湯されている贅沢な空間に、セイリューとラキアは顔を見合わせた。
「凄くいいな!」「凄くいいね!」
まずは体を綺麗に洗う事にする。
洗い場の椅子に並んで座り、早速シャワーを浴びるセイリューを横目に、ラキアははたっと止まった。
──嫌でも胸が目に入るし。有るべきものがないのも気になるし!
ラキアはぐっと拳を握った。
鼻歌交じりで髪を洗うセイリューに人差し指を突き付ける。
「セイリュー、あっち向いてホイ!」
勢いよく指を振れば、セイリューは条件反射で反対方向へ顔を背ける。
(今だ……!)
ラキアはセイリューの視線が外れた隙に、急いで体を洗いあげた。髪も洗って結い上げ、檜風呂へと入る。
「ん? いつの間に……」
きょとんとするセイリューが見てくるのに、ラキアはひらっと片手を挙げた。
(反射的に反応するから、セイリュー好きだ)
瞳を閉じて、ラキアは檜の香りと湯の温かさを感じた。気分が落ち着く。
セイリューも急いで泡を流してから、ラキアの隣に身を沈めた。
「いい気持ち……」
温泉の心地良さに身を任せてから、セイリューは気付いた。
視界に入るのは──。
(すげ、皆の胸もデカイ。くっ、何て眼福だ)
思わず、隣のラキア、そして周囲の男性(重要)達のたわわな胸をガン見する。
(あれはC、あれはD。更にEに……まさか、アレはGかッ!?)
「セ、セイリュー?」
痛いくらいの視線を感じたラキアが、声を掛けた時だった。
胸の膨らみが消えた。
「戻った……?」
ラキアの呟きが響くと同時、セイリューは立ち上がった。
真っ平らになってしまった胸達を見て、そしてやはり平らな己の胸に触れる。
おいまて。
シードももうちょっと頑張れよ。
オレまだ自分の胸のサイズ精査してねーぞ。
「何だよ、モッタイナイ」
セイリューの心からの呟きは、湯気を揺らして悲しく響いたのだった。
●3.
清々しい木の香りが辺りを包んでいる。
「いい湯ですね~」
ルゥ・ラーンは、檜の大浴槽に身を委ねるとほぅと吐息を吐き出した。
「呑気だね君は」
ルゥの横顔を見て、コーディは深い溜息を吐き出す。
湯に浮かぶ大きな膨らみが二つ。
見慣れた己の体が異質なものへ変化している現状に、コーディは寒気を感じた。
(ウィンクルムのこういった試練?は耳にしてはいたけど……いざ体験すると理不尽な事この上ない)
ルゥは眉間に皺が寄るコーディを眺め、ふふと微笑む。
「とても麗しいですよ、あなた」
確信犯で告げた言葉に、コーディはどんよりと瞳を半眼にした。
「折角ですし、私は楽しんでます」
さらりとそう告げると、ルゥはすらっと伸びた足を高く上げてみせる。鼻歌交じりに柔らかな曲線美を撫でれば、コーディは二度目の溜息を吐いた。
「イライラしてきた。場所変えよう」
問答無用で立ち上がるコーディに、ルゥは頷いて後に続く。
湯煙の中、『寝ころび湯』という看板が見えて、コーディはそちらに足を向けた。
寝転ぶ温泉?
矢印の方向に歩いて見えた光景に、コーディはへぇと瞬きした。
文字通り、体を横たえて入浴する温泉のようで、先客達は浅い湯の中にうつ伏せに寝転んだり仰向けに浮かんだりして、それぞれまったりしている。
早速コーディも湯の中に寝転んで、口元を緩めた。
「これは気持ちいいな」
さらさらしたぬるめの湯が、心地良くて力が抜ける。
(何だかんだ言って温泉は楽しむ構えなんですね)
ぷかぷか湯に浮くコーディを見つめ、ルゥはくすっと小さく笑い、彼の隣に腰を下ろした。
手で湯を掬って感触を確かめてから、ゆっくりうつ伏せ状態で湯に身を沈める。
「お昼寝したいくらい、気持ち良いですね」
「だな」
ルゥの言葉に頷いて、コーディの視線が一点で止まった。
うつ伏せになったルゥの胸元だ。
たわわな実りが強調されて、コーディは思わず口に出していた。
「それにしても何なの? 君のそのけしからんサイズ」
「けしからん?」
はて、と首を傾けるルゥに頷いて、コーディは己の胸を見た。
程よい大きさはCカップというところだろうか。
それに比べてルゥのものは……。
「F?」
こちらも思わず言葉に出ると、ルゥは更に不思議そうに瞬きする。そして、微笑んだ。
「ふふ、そそります?」
両腕を胸に添える。
すっかり巨乳美女と化したルゥの挑発的なポーズに、コーディはバシャンと水飛沫を立てて頬を染めた。
(む 胸を抱くな)
ドキドキと速まる鼓動を感じながら、コーディはなるべく素っ気なく視線を逸らす。
「僕の好みじゃないね」
興味ないと主張する答えに、ルゥはそれは良かったと瞳を細めた。
「サイズって好みが反映される?」
何となく悔しいような気持ちに駆られ、コーディは少しからかうつもりで口を開いた。
が、刹那、ルゥの表情が暗く曇ったのに、目を丸くする。
「印象の強いものが反映されているのではないでしょうか?」
やんわりとそう返して、ルゥは眉を下げた。
(以前 付き纏われて難儀したお客様のサイズですね……これ)
脳裏に浮かぶ余り楽しくない記憶に、ルゥはそっと吐息を吐いた。
コーディは己の発言を少し後悔しながら、頬を掻く。よく分からないが、良い思い出が反映されている訳ではないようだ。
「……占い師も大変なんだね」
「いえ……体験した事で巨乳女性の悩みに、これまでよりも寄添えそうです」
しみじみ呟いて、ルゥは胸を抱くポーズを取った。
(だから、胸を抱くな)
コーディは慌てて視線を逸らす。ここにも長居しない方が良さそうだ。
そんな目線の先に、『壷湯』の看板。
「あっちに行ってみよう」
勢いよく立ち上がり歩き出すコーディに、ルゥは微笑んで後に続いた。
「……壺?」
辿り着いた先に、でーんと構える壺状の浴槽に、コーディは頬が引き攣るのを感じる。
これは失敗した。
こんな狭い空間に一緒に入れなんて、色んな意味で駄目だろうと思う。
さっきから浮かんでは消える危うい気分。
何とかしなければ。
さっさと元に戻ればきっと、こんな変な気持ちは吹き飛ぶ筈。
「温泉を独占できるって贅沢ですね」
壺に身を沈めてルゥが笑う。
「キス、しよう」
コーディはそう告げた。
「え キスを?」
驚いたルゥの瞳に映る己を見ながら、コーディは頷く。
「てっとり早く高揚する為にキスしてやるよ」
そうすれば、このおかしな気分も解ける。
──混乱してる?
否──僕に好意がある相手ならいいんじゃないかって。
名案じゃないか?
ルゥの頬が染まっていくのを見つめながら、コーディは彼の頬に手を添えた。
彼は動かない。
ゆっくりと近づく距離。
驚いてこちらを見てくるルゥが、堪らなく可愛く見えた。
だから、唇を重ねる前に、彼の、己の体が元に戻った事に気付いたけれど──止めなかった。
熱を伝え合う口づけは、甘い。
「元に戻りましたね」
「戻ったな」
ルゥは微笑んだ。今日という日は──良い思い出の日だ。
コーディは視線を逸らした──頭の痛い思い出になってしまった。
●4.
「ほんとに女になったや、へえ」
脱衣所で、柳 大樹は己に生えた柔らかな二つの膨らみに、躊躇なく両手で触れた。
むにむにむに。
揉めば感じるその弾力。
「変な感じ」
「いやいやいや、君」
アルベリヒ・V・エーベルハルトの手が、己の胸を揉む大樹の腕を掴んだ。
「今は見た目が女性なのだから慎みを持ちたまえ」
べりっと大樹の手を胸から剥がすと、露わな大樹の上半身を覆うようにバスタオルを被せる。
一瞬、掴んだ大樹の腕の柔らかさにドキッとしたのは、態度には出さない。
「男なら興味持つもんじゃない?」
「生物として正しいが、私も含め全員男なのだよ?」
真面目な顔でアルベリヒが言えば、大樹は瞬きした。
「あー、そうね。何、先生興奮した?」
「ノーコメントとさせていただくよ」
アルベリヒはひらりと片手を振ると、しっかり己の体にタオルを巻き付けた。
Eカップはあるであろう豊満な胸が、タオルの下でも存在を主張し、腰はきっちり括れている。
何とも格好良い女性の体だ──と大樹は思い、好奇心のまま彼の胸に手を伸ばした。
むにっ。
掌に伝わる感触に、大樹は頷いた。
「弾力はやっぱ個人差なんだね」
「大樹……どうにもマイペースだね、君は」
ぐったり脱力するアルベリヒに、大樹はもうしないと両手を挙げてから、程よく膨らんだ胸を隠すようにタオルを巻き付ける。
体のどこもかしこもふにふにしていて、何とも頼りない。
「変な感じ」
二度目の感想を呟いて、大樹は眼帯を外してから、左目を覆うようにこちらにもタオルを巻いた。
「それじゃ、行こうか」
二人は連れ立って脱衣所を出た。
湯煙が辺りを白く染めている。漂うのは温泉と木の香り。
「広いな……」
大樹は目の前に広がる総檜の浴槽に大きく瞬きした。
「檜風呂だね。香りも良くて風情がある」
二人は頷きあうと、かかり湯をしてから並んで檜風呂に入った。
「いい湯だねえ」
肩まで湯に浸かり、大樹は深く息を吐き出す。口元が緩んだ。
手足を全開で伸ばしても何処にも当たる事はなく、開放感に包まれる。湯の温度も丁度良い。
「体を伸ばして浸かれるのは良いものだね」
アルベリヒも大きく伸びをしながら頷く。
「泳げそうな広さ」
「泳ぐのは駄目なのだよ」
真面目にアルベリヒが言えば、大樹は少し可笑しげに笑った。
「冗談」
アルベリヒはきょとんと大樹の顔を見てから、微笑む。
そして気付いた。いつの間にか、大樹の胸元のタオルが緩んでいる。
思わず凝視しかけて、アルベルトは心の中で首を振った。
(私もまだ若いということかね)
己に苦笑しつつ、大樹に指差して教える。
「タオルが外れかけているのだよ」
「あ、ホントだ。タオルの存在を忘れてた」
大樹は、胸元で外れかけたバスタオルを止め直してから、アルベリヒを見た。
「ところでさ」
「なんだい?」
「感情を昂らせるって、何すればいいと思う?」
興奮とは違うんだろうし。
大樹は顎に手を当てて考える。アルベリヒもふむと大樹に倣うように顎に手を添えた。
「ときめくのが重要、というものではないかね?」
「ときめく……」
アルベリヒの言葉を反芻して、大樹は彼の顔を見た。
いつもの彼より、柔らかい輪郭。
「このなりのまま、少女漫画的な?」
「女性二人では別ジャンルになりそうだね」
想像してしまってから、アルベリヒは笑った。
同じく想像しようとした大樹は、思考が追いつかないのを感じてざぶんと湯に仰向けになった。
「まあ、時間経てば戻るらしいし」
別にいいか。
考えるのが面倒になってしまった大樹は、思考を放棄した。今は、この心地良い温泉を楽しみたいと思う。
「我が神人の仰せのままに」
君がそれで良いのなら。
湯に漂う大樹に微笑んで、アルベリヒは濡れた髪を掻き上げた。
その腕の筋肉の筋が水滴に煌めいて、大樹はじっと見つめる。
ざぶんと湯に浸かり直すと、アルベリヒに近寄った。
「先生スタイルいいね」
腕に触れれば、柔らかい中にも引き締まった筋肉を感じる。
(結構、筋肉質)
「褒め言葉として受け取らせていただくよ」
ぺたぺた触って感触を確かめれば、アルベリヒが擽ったそうに微笑んだ。
「胸も大きいし」
むにっ。
「腰も凄い括れてるし」
さわさわ。
「足も筋肉付いてて……」
なでなで。
「こらこらこらこら、君」
アルベリヒは慌てて大樹を制止した。
「脱衣所でも言ったと思うのだが、慎みというものをだね……」
「今は女同士だし?」
大樹は悪戯っぽくアルベリヒを見上げた。
「俺ばっかりで不公平だし、先生も俺のを触る?」
「は……?」
大樹の手が、アルベリヒの手を取って、自分の胸元へ運ぼうとする。
「い、いやいやいや」
アルベリヒは首を振って手を引こうとした。
ぺたり。
「あ……、あれ?」
「……?」
アルベリヒの手が触れたのは、平坦な感触。
胸の膨らみが、消えている。
「何にもしてないけど、戻ったみたいだね」
大樹はタオルを取り、元通りな体を確認すると頷いた。
「……そうみたいだね」
アルベリヒは何とも複雑な心境で小さく笑ったのだった。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 雪花菜 凛 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | なし |
リリース日 | 03月01日 |
出発日 | 03月06日 00:00 |
予定納品日 | 03月16日 |
参加者
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- ルゥ・ラーン(コーディ)
- 柳 大樹(アルベリヒ・V・エーベルハルト)
- アーシェン=ドラシア(ルーガル)
会議室
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2017/03/05-09:12
柳大樹でーす。
いやあ、まさか俺が女になる日が来るとは思わなかったわ。
でも割りとウィンクルムってそういうの多し。時間の問題だったかも?
ふむ……。(自分の胸をじっと見る -
2017/03/05-01:36
アーシェン・ドラシアとルーガルだ。
よろしく頼む。
ハダカノツキアイというのは人と人の距離を詰めるのに最適らしいな。 -
2017/03/04-14:18
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2017/03/04-11:49
ルゥ・ラーンです。
パートナーのコーディと温泉を楽しみに来ました。
ふふ、おまけつきでより楽しめそうですね。