バレンタインとちょこっとクイズ(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 その村は、街にチョコを卸すことで冬場生計を立てている村だった。
 2月14日といえばいわずもがななイベントがある。
 その日のためにてんてこ舞いなのだが……。
「バレンタインのチョコの運搬を手伝ってほしい?」
 そう言われたのは、たまたま貴方がたがその村に依頼でやってきたときだった。
「そうなんですよ~! 勿論ただとはいいませんよ? このチョコを下の街まで運んでいただけましたら、チョコをお安く致します!!」
 ちょうどチョコバザーのようになっていて、それを搬入口へ持って行ってほしいというのだ。
 どれを持っていけばいいのかと問いかければ、そこには、籠に入ったチョコが。
 どうやら本来は子どもたちが持っていく予定だったらしいのだが、インフルエンザで人数が足りないのだと言う。
 むしろこれぐらいならばお安い御用だと笑えば、ありがとうと微笑まれる。
「あ、そうでした……街へ戻る道で、ゴブリン一行にあうかもしれません。その時はなぞなぞを出されると思いますので、それに答えてあげると満足して去っていきます」
 戦わないでも大丈夫だし、そのなぞなぞ自体が幼児が思いつく様な簡単なものだという。
 報告書もまとまってあとは帰るところだったしと籠を受け取ると、ゴブリンに注意しながら街へと向かうのだった……。


 暫し歩いた頃。
「オマエラー! クイズヤッテケー!!」
 ざざっと出てきたのは三体のゴブリン。
 なるほど、本当に出た。
「マズハイチモンメ!!」
 そして、此方の都合などなにも考えずにクイズが始まった。
 精霊と顔を見合わせた貴方は、まぁ答えてやるかとクイズを聞くのだった。

解説

 チョコを運搬(クイズ)をしつつ、チョコを選ぼう! という依頼になっております。
 道中は描写する予定はございません。
 クイズをしてる場面 2 と、チョコを選ぶ場面 8 ぐらいの予定です。
 個別描写です。

●一組に付き、クイズは1つのみ。
A・パンはパンでも食べれないパンは?
B・つめたいいすってなに?
C・ねずみが通ってる学校ってどこ?
D・いとをつけてそらにあがってる海のいきものはなに?
E・そらからふってくるあまいおかしってなに?

 どれか選び、答えを書いておいてください。


●チョコ
 皆様が想像するようなチョコならなんでも手に入ります。
 有名なのは薔薇の形のチョコ(立体的で、花束になっております、一束(5本入り)で300jr)
 ちょっと変わった所で、唐辛子チョコ(めちゃくちゃ辛い)などがあります。
 チョコ代としてお一人様 300jr 掛ります。
例:(神人 1つ 300 + 精霊 2つ 600 = 900) 

ゲームマスターより

なんでかクイズまで付随しておもいついてしまったので……。
納品はちょっとずれてしまいましが、かわったバレンタインは如何でしょうか。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

信城いつき(レーゲン)

  B:ア『イス』

……ん?ちょっと待ってレーゲン答え言ってるよ!
これでいいの?えっと気をつけて帰ってね…でいいのかなぁ

チョコ色々あるね
初バイト代はレーゲンの為に使いたかったからとってあるんだ

バイトで色んな人と仲良くなったりしたけど
その上で、誰が好きかって考えたらやっぱりレーゲンなんだ。
ウィンクルムのパートナーだからじゃなくて
レーゲンがレーゲンだから好きなんだって改めて分かったんだ

あ、これ初めてのVDで二人で食べたチョコに似てる。これにしよっと
初心に返って、これからももっともっと仲良く……レーゲンの事好きになりたいなって思って
……もーっ、そんな笑顔で見つめ返さないでよ!照れるよっ!


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  ゴプリン達がノリノリでクイズ出題か。
オレも負けじとノリノリで受けてたつぜ!
Aはハンツだろ。なに違う?
らぶてぃめ的にはパンツが正道じゃんか。
じゃBな。アイスだろ。食べ物ネタなら、オレ、負けないぞ。
お前たちのクイズへの意気込みを、おれは忘れないぜ(キリッ。

有名なチョコならひとつはソレを選びたい。
薔薇のチョコ花束一つ買う。ラキアにプレゼントするんだ。
他に何か面白いチョコないかなーって見て回っていたらさ。
工具を模したチョコがセットになって工具箱っぽいのに入っているのを発見
これ、オレ、自分の分で買う!
レンチとかドライバーとかナットやボルトまでチョコで成形。
うお、これ萌える。
結構リアルで面白いぞ。


ラティオ・ウィーウェレ(ノクス)
  E:答えは雨(飴)さ。

いいね。戦わなくて済むのは実にいい。
僕は元々頭脳派だからね。
そりゃあ、研究する為の頭だからね。戦術戦略は門外漢なのさ。

チョコ選び:
簡単なお使いで手頃な価格でチョコを入手、という訳だね。
適度な糖分は頭脳労働には欠かせないのさ。
まあ、そうなるのかな?
僕はこれにしよう。(酒入りチョコレート

それと今日も一日ありがとう。お礼に一粒。(箱ごと差し出す
顕現した僕の都合に合わせてる形だからね。今までお礼を言っていなかったと思ったのさ。
改めて。
すまないけれども、これからもよろしく頼むよ。(笑顔

薔薇のチョコなんてどうだい?
君は花を食べるのが似合う気がするからね。
何を怒るんだい?(わかってない


ユズリノ(シャーマイン)
  ホントに出たね
クイズB
出くわしたら少し遊んであげようと話していたので目配せ
彼の調子に合わせ
「え~それなら氷で出来たイスかも?」
こっちもポン そうか!


運搬完了
折角だしとチョコを見て回る事に
わあ!可愛いー 芸術だー はわ~ 等目キラキラさせて感嘆の反応
「うん? うん…僕も作ってみたいな なんて」

薔薇チョコ凝視
「花束になってる」
あ シャミィが買った…?

「僕に!? あわわ 感謝なんて僕の方がお世話になってるのに」
花言葉? 売り場に解説があったらしい チョコばかり見て気付かなかった
花言葉聞き言葉にならない そんなの僕の方がきっと何倍も思ってる

受取り嬉しくて泣きそう
「…僕だって同じ想いだよ そうだ」

「…今年は僕もチョコ贈らせて?」



 ばばーん! と並んだ3体のゴブリンを見た後、ちらりとユズリノとシャーマインは本当にでたねと視線を交わしあう。
 クイズだけとは聞いていたけれどと、シャーマインがユズリノの視線に頷きつつ、さりげなく守るように前にと立つ。
「ツメタイイスッテ、ナンダー?」
 ナンダー? と声を揃える3体に、ユズリノがなんだろう? とちょっと大げさに悩む仕草をする。
 道すがら出たら少し遊んであげようと話していたのだ。
「つめたいいす? はてなぁ。冷蔵室でキンキンに冷やされたイスかな~?」
 そんなユズリノと合わせるように、シャーマインも不思議そうに首を傾げつつ呟く。
 2人の様子をみて、ふふん! と得意げなゴブリン。
「え~それなら氷で出来たイスかも?」
 あ、と大げさに掌を叩いたシャーマインがそうか! と後ろに居るユズリノを見た。
 その視線を受けて、あ! とユズリノも掌をうつ。
 言葉を交わさずとも、そのタイミングはばっちりだった。
「「アイスだ!!」」
 2人の息がぴったりと合う。
 ふっと2人が笑みを交わしあえば、ぱぁっとゴブリン達の顔が輝いた。
「アタリ!」
 多分、渾身の出来のクイズだったのだろう。
 ゴブリン同士だとクイズにすらならなかったようで、きちんと対応してくれた2人にアリガトー! お礼まで言ってゴブリン達は満足げに去っていく。
「ありがとうって……」
「本当にクイズが好きなんだろうな」
 お礼を言われるなんてと噴き出したユズリノに微笑みつつ、シャーマインは警戒態勢を解く。
 本当にクイズだけで満足したらしい。
「じゃぁいこうか!」
「そうだな」
 無事守り切ったユズリノと……そしてチョコを手にシャーマインは山を下りていくのだった。


 持ってきたよ! と籠を渡し終えればあとは自由時間。
 甘い甘い香りが漂うその空間は、その香りに皆がうきうきしているようで、歩いているとわくわくしてくる。
 勿論、甘い香りの所為だけではなく、チョコで出来た花や動物や、時には宝石のようなチョコたちが並んでいるのをみればテンションもあがるというもの。
 そういうわけで、ユズリノはとても楽しげだ。
「わあ! 可愛いー」
 芸術だー! とキラキラ翠色の瞳を輝かせて覗き込むユズリノ。
 寧ろあちらこちらと視線を彷徨わせては瞳を輝かせるユズリノの方が可愛いと、口には出さずに瞳を細め見つめるシャーマイン。
「これなんか素敵なデザインだ!」
 あっちも、こっちも……っときらきら瞳を輝かせながらいうユズリノを愛らしいなと思いつつ、シャーマインもユズリノが言うチョコを見ながら問いかける。
「デザインを学んでるのか?」
「うん? うん……僕も作ってみたいな、なんて」
 シャーマインの問いかけに頷きつつ、チェスの形をしたチョコから数歩先のお店で、ぱっと視界に入ってきたものがあった。
 それは一つ一つ丁寧に作られたもの。
「うわぁ、これ!」
 色が茶色、ということをのぞけば今まさに花開こうとしている薔薇だ。
 甘い香りが、私を食べて! というようにユズリノとシャーマインを誘っていた。
「花束になってる」
 ちゃんと包装紙とリボンで飾られたそれは、薔薇の花束のようで。
 凄いねぇとじぃっと見詰めるユズリノ。
「見事だな」
 ゆらりと尻尾を揺らしながら、その花束をじっと見つめるシャーマイン。
 伸ばした指先がその花束を差し、お店の人から受け取って。
(あ、シャミィが買った……?)
 その様子を見ていたユズリノが瞳を瞬けば、薔薇の花束を手にシャーマインがゆるりと歩きだした。
 少し、のんびりと歩いた先で立ち止まる。
「日頃、世話になってる感謝に花言葉を添えて」
「僕に!? あわわ、感謝なんて僕の方がお世話になってるのに」
 でも……花言葉? と首を傾げれば、どうやら解説が店先にあったよう。
 チョコばかり見ていて気がつかなかったと呟くユズリノに、シャーマインが瞳を細めながら囁く。
「5本の薔薇は、『あなたに出会えて心から嬉しい』」
 響くその声音は、心からの愛情と、そして出会えた感謝に満ちていた。
 言葉にならず、ただじっくりとシャーマインからの愛情を噛みしめて。
(そんなの僕の方がきっと何倍も思ってる)
 差し出された甘い香りを放つ花束を受け取って、ユズリノは微笑む。
「……僕だって同じ想いだよ。そうだ」
 思いを込めてそう囁き……ぱっと瞳を輝かせる。
「……今年は僕もチョコ贈らせて?」
 チョコケーキを一緒に焼こう、そしてこの薔薇を飾ろう!
 そういうユズリノの瞳は、きらきらと輝いていた。
(同じ想いの共有……だな)
 ふわりとシャーマインの唇に笑みが浮かんで。
「楽しみにしてる」
 その笑顔がとても甘くて。
 ユズリノは小さく頷くと、一緒に食べようね、と囁くのだった。



「チョットマテー! クイズヤッテケー!」
 ノリノリでクイズ出題か、とセイリュー・グラシアはばばーんと立ち塞がったゴブリン達をみてそう思う。
 此方のことを何一つ考えてくれないゴブリン達は、我先にとノリノリでクイズを出してきた!
「それは中学かな、……待ってね、そっちは飴だと思うよ」
 そんな次々と出される問題を撃破していくのはラキア・ジェイドバインだ。
 おぉ、とそんなラキアを見つつ、食べれないパンはなんだー?! という問いに、セイリューの瞳が光る。
「ちょっとまった、それはパンツだろ?」
 ここならそれが正解だ! と瞳を輝かせるセイリューに、ゴブリンより先にラキアの冷静な突っ込みが入った。
 ここというのは一体どこなのか、それは神のみぞ知ると言ったところだろうか。
「セイリュー、それ違う」
 だって王道だろ? と言うセイリューにそれはとてもメタ的だとちょっと不思議な突っ込みが入るのに、ゴブリン達が首を傾げている。
「えー……」
 えーじゃなくてと苦笑を浮かべた所で、こほんと咳払いしたセイリューは、次の問題は? とゴブリン達に問いかける。
 問われ、ゴブリン達が顔を見合わせた後、我先にと再び問題を声高に出してきた。
「ツメタイイスッテナンダー?」 
「……冷たい椅子はアイスだろ」
 食べ物ネタなら、オレ、負けないぞと笑うセイリューに、アタリー! と答えが返った。
 だがしかし、問題もそろそろ尽きたのか、ゴブリン達が顔を見合わせる。
 確かにあれだけ問題をだしたならばもうそろそろ切れかけてもおかしくない……とそんな彼らにしゃがんで視線を合わせたラキアは、チョコは無理だけど……飴を取り出した。
「甘いもの好きなんでしょ。争い事は駄目だよ」
 飴玉を貰ったゴブリン達は、きらきらと瞳を輝かせてラキア達に手をふって去って行くのを、きりっとした顔で見送るセイリュー。
(お前たちのクイズへの意気込みを、オレは忘れないぜ)
 そうして、2人は無事チョコを届けるのだった。

 甘い甘い香りに包まれながら、有名だというそのお店に向かったセイリューは、薔薇のチョコを一束買い、大切にそっと包み込む。
 これはラキアへのプレゼント。
 甘い香りを放つ薔薇の花束を彼は喜んでくれるだろうか。
 いつ渡そうと思いつつ、他に面白いチョコがないかと見ていれば、工具を模したチョコにと目が留まった。
 他にもネジやらボルトやら、はたまた釘なんていう工具に欠かせないものまである。
 きちんと工具箱を模した箱にいれられたドライバーやレンチ、ナットとボルトでワンセットのそれに、セイリューの瞳がきらきらと輝き始めた。
「これ、オレ、自分の分で買う!」

 ナットやボルトは実際嵌めたりできるようで、ちょっとやってみます? と店員が嵌める実演をしてくれた。
 どうぞ、手にとってみてください、と差し出されるそれを線密なんだなぁと零しつつ手に取るセイリューをラキアは微笑ましく見守る。
 実際にやってみて、余計に購入心がくすぐられたようだ。
 これは萌える! と一箱購入して、仕舞込みつつ此方をみていたラキアへと視線を移す。
「……何かいいの見つかったか?」
 ラキアも何かあったら遠慮なく言ってくれよな、という問いかけに、小さく頷く。
「そうだね、こんなに沢山素敵なものがあるから、何かあるといいんだけど……」
 ラキアがゆるりと辺りを見渡しもう少し探してみたいな、と微笑む。
「OK! じゃぁいこうぜ!」
 ならば、散歩もかねてと再びゆっくりと歩き出す。
 甘いチョコの香りに瞳を細めながら、隣を楽しそうに歩くセイリューに視線をそっと送った先で、これまた不思議なチョコが置いてあった。
 立ち止まるラキアに合わせてセイリューも立ち止まったそこは、どうやらウィンクルムの武器を掌サイズにしたチョコのお店。
 ほかにも武器のようなチョコがあることから、そういうのが好きな店主が作ったのかもしれない。
 おぉー! と感嘆をあげたセイリューがきらきらきらと再び瞳を輝かせて食い入るように見ていた。
「買ってあげるよ」
 ラキアのその言葉に、ぱっと顔をあげてラキアを見詰めたセイリューに、ラキアは優しく瞳を細めた。
「判りやすいねぇ、君」
 え? と首を傾げるセイリューに、だってとても素敵な笑顔だったからね、と心の中で答える。
 その笑みは、セイリューにだって教えられない、ラキアだけのものだ。
「片手剣シリーズな物にしようか」
 色付けされたチョコは、作った人が武器を見ながら頑張って作ったのだろう。
 作り手の気持ちが伝わってきて、感心してしまう。
「凄いね」
「だよな!」
 どんな人が作ったんだろう、なんて話しながら、共に歩みを進めていく。
 さぁ、帰ったら2人で甘いチョコを味わおう。


「オマエラ、クイズヤッテケー!」
 やってけー! とユニゾンでいう3体を見つめラティオ・ウィーウェレは涼やかな瞳を細めた。
 元々研究室で働いたラティオからしたら、戦わなくてすむのは実にいいことだ。
「くいず……?」
 そんな彼の傍ら、尻尾の様な髪をゆらし首を傾げていたノクスは、あぁ、と合点したように頷く。
「謎解きの事か」
 漸くゴブリン達が覗くことを理解したノクスは、隣でどんなクイズだろうかと瞳を輝かせるラティオをみて不思議に思う。
 やけに隣の相棒は楽しげで。
 そんなに戦うのが好きなのだろうか。
「何を浮かれている」 
「僕は元々頭脳派だからね」
 こういう頭を使う方がいいのさ、と口元を緩める彼を見つめ、頭脳派? と訝しげに首を傾げた。
(確かに肉体労働ではないが……)
「そりゃあ、研究する為の頭だからね。戦術戦略は門外漢なのさ」 
「威張る事ではないわ。研究馬鹿め」
「ソロソロイイカー!」
 思った以上に空気を読んでいたゴブリンに、あぁどうぞ。と2人が視線を向ける。
「ソラカラフッテクルアマイオカシハナンダー?」
 ん? とカタカナで分かりづらい言葉に首を傾げるノクスにふふんとゴブリンが得意げだ。
 しかしラティオは違う。
 瞳を輝かせ、それは、と唇を開く。
「答えは雨さ」
 飴、美味しいよねと笑う彼に、ゴブリン達がアッタリー! と楽しげに頷く。
 どうやら満足したらしい、アリガトー! と去っていく彼らを見送って、ラティオとノクスは改めて籠を手に山を降りるのだった。

 
 簡単なお使いで、手頃な価格でチョコが手に入るわけだね、とラティオはきちんと届けた後、ノクスと共にチョコを見て歩いていた。
 その様子はどこかうきうきとしているようで。
 瞳を眇めたノクスは、じぃっとラティオを見る。
「やはり貴様、浮かれてはいないか……?」
 その視線を受けて、ふっと笑うラティオ。
「適度な糖分は頭脳労働には欠かせないのさ」
 さっきも頭を使ったしね? と言うのに、右手を額に添えたノクスがはぁっと溜息を吐いた。
「回りくどい。チョコレートを好んでいると言えば良いだけではないか」
「まぁ、そうなるのかな?」
 首を傾げながらそう言う彼から視線を外し、辺りを見渡す。
 色んなチョコが売られ、そして人々もどこか楽しげで……。
「甘い匂いが充満しているな」
 改めて認識した様子の彼に笑みを浮かべつつ、さぁ、何を買おうかと再び歩きだす。
 あれもいいし、これもいい。
 甘い甘いチョコに視線を奪われながらも、なかなか手を出すまでいかないラティオ。
 そんな彼に付き合いながら、ノクスもちらり、ちらりと視線を彷徨わせる。
 足が止まったのは、少々大人びたチョコが並ぶお店だった。
 ぷぅんと香る匂いはどうやらお酒のようだ。
「僕はこれにしよう」
 そう言ってラティオが買ったのはお酒入りのチョコだ。
 お酒を入れても良いのかという視線を寄こすノクスへ、ラティオがふっと笑みを浮かべる。
「今日も一日ありがとう、お礼に一粒」
 一粒といいながらも箱ごと差し出され、ノクスが瞳を見開く。
「は? 何だ突然」
 じっと見つめた先で、ラティオもノクスを見詰めてくる。
 それはとても真剣な瞳で。
 知らずノクスはすっと背を伸ばした。
「顕現した僕の都合に合わせてる形だからね。今までお礼を言っていなかったと思ったのさ」
「…………」
 何か、と言葉を探すけれど何も言えない。
 視線は逸らさず、けれど言葉も出ず、ただ視線を交わし合っていたけれど。
 そんなノクスに、ラティオが再び唇を開いた。
「すまないけれども、これからもよろしく頼むよ」
 ちゃんと伝えられてほっとしたのだろう。
 ふわりと浮かんだ笑顔に、ノクスは息を飲む。
 こんな表情もするのか、と思いながら……自然と入っていた力を逃すようにふっと息を吐く。
 そうすればいつもの調子も取り戻していて。
「……ふん。言われずとも、貴様は護る。我は、一度決めた事は覆さん」
 一度合わせた視線を逸らしたノクスに首を傾げるラティオ。
 気恥ずかしいのだと気がつかれてはいないよう。
「……折角だ、我もチョコレートを……」
 と視線を彷徨わせれば、あまりにも数が多い。
「種類が多いな」
 眉間に寄った皺と、渋い声になら、とラティオが指差す先。
「薔薇のチョコなんてどうだい? 君は花を食べるのが似合う気がするからね」
 さらりと言われた言葉に、ばっとラティオの方へ視線を戻す。
「ラティオ、貴様な……!」
 それ、口説き文句か何かかと険しい視線を送るけれど、当の本人は首を傾げている。
「何を怒るんだい?」
 きょとんとした彼に再び言葉をなくし、ノクスは天を仰いだ。
(この天然たらしめが!)
 そんな彼の心の叫びを、ラティオが知る日はくるのだろうか?
 それはまだ分からない未来だった。



 現れた3体のゴブリン。
 そんな彼らを目にして、信城いつきは青色の瞳を瞬いた。
 クイズヤッテケー! と叫んだと思ったら、こちらの都合も気にせず問題を出してきたゴブリン達。
 レーゲンはいつきを守るようにゴブリン達の前に立ちながら……とても真剣に考え込んでいた。
「冷たい椅子……アイス、チェアー? コールド……ソファー?」
「……ん?」
 うぅん? とさらりと青い髪を揺らしながら悩む彼に、彼の背中に隠れるようにしていたいつきが、はっと瞳を見開いた。
「なんだろう?」
「ちょっと待ってレーゲン答え言ってるよ!」
 え? と首を傾げたレーゲンの背中から顔をだし、ゴブリン達へ答えを。
「アイスだよね」
「アッタリー!!」
 あ、と口元を押さえるレーゲン。
「……そうか言われるまで気付かなかった」
 そんな彼を可愛いと瞳を細めて見詰めたいつき達へ、しゅばっと手をあげるゴブリン達。
「アリガトー!」
 どうやら満足したらしい。
「これでいいの?」
 バイバーイと去っていくゴブリン達をいつきが瞳を瞬いて見送る。
「えっと気を付けて帰ってね……?」
 で、いいのかなぁと困惑気に呟くいつきと、視線を合わせたレーゲンは、まぁいいんじゃないかな? とさぁ行こうかと促すのだった。
 チョコ色々あるね。
 そう言って辺りを見渡すいつきは、どこか楽しげに買い物をしていく人々を見ながら瞳を細めた。
「初バイト代はレーゲンの為に使いたかったからとってあるんだ」
 だからね、と歩きながらレーゲンにとぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。
 それはバイトで色んな人と仲良くなったっていうお話。
 隣を歩くレーゲンは、その視線をチョコの方ではなくいつきの方へ向け、少々さびしげに瞳を細めていた。
 バイト先まで彼と一緒というわけではないから、自分の知らない知人が出来たり、これからは沢山好きな物だって買ったりできるだろう。
 ひとつ、ひとつ、自分の知らないものが増えていくというのは、いつきの世界が広がっていって嬉しいことだけれど。
(少し寂しくもあるな)
 ふっと息を吐いた所で、でもね、といつきが立ち止まる。
「その上で、誰が好きかって考えたらやっぱりレーゲンなんだ」 
 いつきの真摯な瞳に、レーゲンの瞳が見開かれた。
(……さっきまでの寂しさが一気に吹き飛ぶよね)
 どこまで彼は喜ばせてくれるのか。
 そんなレーゲンに気が付いているのか居ないのか、いつきはふっと口元に笑みを浮かべる。
「ウィンクルムのパートナーだからじゃなくて、レーゲンがレーゲンだから好きなんだって改めて分かったんだ」
 何度も彼は嬉しい驚きを与えてくれる。
 嬉しいな、と微笑むレーゲンにいつきも照れたように微笑んだ。
 2人の間に、どこかふわふわと幸せな時間が訪れる。
 どこかふわふわした気分のまま歩き出したいつきは、ふとその青い瞳に飛び込んでくるものがあった。
「あ、これ……」
 初めてのバレンタインで2人で食べたチョコに似てるね、とそれを買うことに。
 ありがとう、いい時間を過ごしてね。
 そう言って渡されたチョコに頷き、いつきがレーゲンをみた。
「そういえば初めてのバレンタインの時も「仲良くなろう」って言って二人で食べたよね」
 レーゲンもそのチョコに視線を落とし、懐かしむようにそう囁く。
 あの時を思い出しているのだろうか。
 いつきがじっとそんな彼を見つめつつ、そうだったよねと頷く。
「初心に返って、これからももっともっと仲良く……」
 ふっと微笑むいつき。
「……レーゲンの事好きになりたいなって思って」
 それを聞いたレーゲンの口元に笑みが浮かぶ。
(何度も「好き」と言ってくれるけど、いつも新しい「好き」をもらってる気がする)
 そう思うレーゲンのその笑みは、とても幸せそうできらきら輝いて見える。
「……もーっ、そんな笑顔で見つめ返さないでよ!」
「無理だよ、こんなに嬉しい事言われて喜ばない訳ないよ」
「照れるよっ!」
 耳まで真っ赤になって、レーゲンから視線を逸らしたいつきは、帰ろう! と歩き出した。
 そんな彼を追いかけながら、レーゲンが囁く。
「こっちむいて、いつき。私ももっと好きになりたいよ」 
 耳まで赤く染めたいつきは、その言葉に振り返ることはせず、歩いていく。
 そんな耳元を見つめ、可愛いなぁとレーゲンが瞳を細める。
「一緒に食べよう、もっともっと「仲良し」になれるように」
 今日買ったこのチョコも。
 2人で食べればきっともっと仲良しになれるから。
 そう言われ、いつきが振り返った先。
 いつきだけに向けられた甘い笑顔に、いつきも笑みを浮かべるのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月07日
出発日 02月13日 00:00
予定納品日 02月23日

参加者

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