大人への最初の階段(草壁楓 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●成人するって……

 年も明け正月ムードが少し薄れてきた今日この頃。
 正月にのんびりしていたあなたは1冊のアルバムが目に付いた。
「これ……」
 手に取ると懐かしそうにそのアルバムを開く。
「こんなとこにあったのか……」
 あなたのアルバムには羽織袴を着た今より少し若い自分。
 いわゆる成人式なるものをした時に撮ったもの。
「そういえばこいつどうしてんだろなぁ」
 なんて最近会っていない友人たちの写真を見ながら思いふける。
 すると、
「ただいま!」
 とあなたの精霊が帰ってきたようだ。
「お帰り」
 笑顔で迎えると精霊はあなたのアルバムに興味を示したように近寄ってくる。
「それなんだ?」
「これかい?昔の成人式の写真だよ」
 へー、なんてアルバムを凝視する精霊。
「そういえば……お前今年じゃなかったか?」
「なんかそうらしい……ぜ?」
 どうやら精霊の出身地では成人式というものはやっていなかったらしい。
 あなたは丁寧な説明をする。

 成人式……それは大人の年齢になった者を祝福し、パーティーを開いたりとお祝いするイベント。

 それを開催するしないは地方に差はあるようだが、あなたの住んでいるここではどうやら開催しているようだ。
「へぇ~」
 と説明され興味があるのかないのかよくわからない返答。
 それよりもあなたの写真が気になるようだ。
「お前って成人式どんなのだったの?」
「俺?うーん……友達と酒飲みに行ったかな……」
「この格好で?」
「うん」
 羽織袴のあなたを見ながら少し驚く精霊。
「じゃあ君は何をしたい?」
「大人になったら?」
 一つ頷くと「大人ねぇ~」なんて考え出す。

 さて、あなたはどんな成人式を過ごしましたか?
 または、どんな成人式を過ごし、大人になったことでしたいことは?
 はたまたこれから成人する未来どう過ごして、大人になったらやりたいことはなんですか?

解説

●できること
 A……成人式の思い出や大人になったことで始めてしたことを語る。
 B……今日成人式!成人式終ったらパートナーと最初の大人の階段登ってみる!?
 C……まだ成人式には早いけど、どんな成人式にして、大人になったら何をしたいか話す。

 プランにA、B、Cで希望のアルファベットのご記入お願いします。
 神人か精霊どちらでも構いません。もしくは両方でも問題ございません。
 プロローグは一例ですので、始まりは個別に変更されます。

●書いていただきたいこと
 Aの方……成人式の思い出について、そして大人になったことで初めてしたこと
 Bの方……今日成人式にどう出席して、どんな大人の階段登ったか
 Cの方……未来どう成人式に出席するか、そして大人になってしたいこと(Cの方)
 全アルフェベット共通……神人と精霊の会話の内容や行動

 A、B、Cとできることで選んだ記号のもののみご記入お願いします。

●注意
 ・個別描写となります。 
 ・公序良俗に違反する内容は描写できかねますのでご注意ください。
 ・アドリブが入る場合がございます、NGな方はプランに『×』とお書きください。

お話ししながらお菓子を食べたか、成人式の始めての大人の階段を登った費用で300ジェール消費します。

ゲームマスターより

 ご閲覧誠にありがとうございます。
草壁 楓でございます。
旧年は多くの方にご参加いただきまして大変幸せな年となりました。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

もう少しで成人式ですね……お正月の雰囲気も残しつつ。
そんな皆さんはどんな成人式だった?とか今年成人式だよ!とか大人になったらこれがしたい!
というお話をお聞かせくださいませ。
(自身の成人式は……随分昔だな……)

それではご参加お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

李月(ゼノアス・グールン)

  ラーメン屋で食事中テレビで成人式ニュース見て思い出話に

去年10月相棒の帰郷に同行して知った
そこはまるでアラビアンナイトの物語に出てきそうな街並みで
文化もそんな感じの所だった
だから非人道的儀式にツッコむ事も忘れ
冒険物語を聞く気分だ

ええっ
マジか
うはぁ
そんな相槌しつつ気付けば周りの客も聞いてる

嬉々として戦う光景が想像でき話の展開に興奮
倒した所で客と一緒に歓声と拍手
オチがらしくて笑う

子分…そういえば
「お前の知り合い 腰低い人多いと思ってたけどそういう事か(納得

「その鍋絶対美味しいだろうな

ニヤリとする相棒に引き寄せられて「来年挑んでみるか?」と言われ
ゴクリ「き…鍛えとく


僕と出会う前の彼が知れて楽しかった


柳 恭樹(ハーランド)
  A:タブロス市内の喫茶店

上着をボックス席の隣に置き、ブラックコーヒーとショートケーキを注文する。
胡乱な視線を返す。「なんだいきなり」
こいつの笑い方はどうも癇に障る。(落ち着く為に息を吐く

「俺は成人式には出てない」
「お偉いの長話にも、記念品も興味が無かったんだ」
仲の良い奴らも、その辺りは興味が無かったからな。

ケーキはやっぱりこれだな。
「俺より、お前はどうだったんだ」(ふと気が向く
「ハーランド。お前、一体幾つだ」俺より上なのは確かだろうが、見た目と雰囲気が違うというか。(訝し気
そういうのは女だから良いんじゃないのか。こいつにやられてもな。(呆れた視線

軍にいたんだったか。(珈琲を飲む
「……二日酔い」


ルアーク=ライアー(エディット=アギフ)
  暇だし寒いしエディでも構ってやるかなぁ。と、家に呼び出し
なんだよ面白いって…ぷっ、七五三?
「ずいぶんとスーツに着られてるようで」
思ったよりも似合っていたスーツ姿に動揺したことにむかついたら、
笑い飛ばしておくぜ
むくれるエディの頭をつつき
「へいへい、似合ってるよ。かっこいいかっこいい」
棒読み?気のせいだろ(くっと笑い
「それにしても…ネクタイ、曲がってるぜ。ずいぶんと不器用なことで」
ちらりと今日の服装に目をやると、カジュアルながらも緩く結ばれたネクタイに
時間の流れを感じ
「綺麗に結べるのかよ」
自信満々なエディに付き合って、ネクタイの結び方講座を受けるな
って、おっま、近いんだっての!(ぐいっと押しやり


●酒の味

 タブロス市内のとある喫茶店。
 カランコロンと喫茶店のドアのベルが鳴ると同時に柳 恭樹とハーランドが店内へと入ってきた。
 2人の姿を見ると店員が窓際のボックス席へと案内した。
 恭樹は上着を脱ぐと隣の空いている席へと軽く畳んで置く。
「ご注文はいかがされますか?」
 恭樹はメニューに軽く目を通すと一つ頷き、
「俺はブラックコーヒーとショートケーキを」
 と注文。
 ハーランドも共に恭樹とメニューを見ていたため、
「紅茶とガトーショコラだ」
 とすんなりと注文した。
 店員は一礼すると2人の下を去っていく。
 店員が去ったのを確認するとハーランドは窓の外を眺めだす。
 そこには振袖を着た女性や羽織袴を着た男性がちらほらと見られる。
 そんな街の様子にハーランドは口を開いた。
「時に、恭樹は成人式には行ったのか?」
 そんな唐突な質問に恭樹は蜂蜜色の瞳で胡乱気な視線を向ける。
「なんだいきなり」
 そんな質問に、前触れもなくされたものだから恭樹は猫目の瞳を微かに見開く。
 質問したハーランドと言えば、特に意味はないのか微笑を浮かべている。
「暦の上ではそろそろ成人の日だろう。どうだったのかと思ってな」
 そう言ったハーランドの微笑は皮肉めいた笑いへと変化する。
 そんな笑みを見た恭樹は癪に障っていた。
 まだウィンクルムとなって日が浅い2人の距離はそこまでは縮んでいないためか恭樹はこの笑みを見るたびに微かに瞳を細めてしまう。
 しかしこれからも長い付き合いとなるパートナーである、このままではいけない。
 そして落ち着くために一つ息を吐く。
 これをすれば少しは落ち着き会話が再開できる。
「俺は成人式には出てない」
 窓の外に視線を移しつつそう答える。
「大概は出席するものだろうに」
 そんな恭樹の行動を観察しつつ少し意外そうにガーネット色の瞳を恭樹に向ける。
「お偉いの長話にも、記念品も興味が無かったんだ」
 仲の良い奴らも、その辺りは興味が無かったからな――と付け足す。
 長話も記念品もそんなものいらない……時間を有効に使うのが最も重要だと空を見る。
「そういうものか」
 考えは人それぞれか、とハーランドも再び窓の外を見る。

 しばらくすると店員がトレーを持ちながら2人の下へとやってきた。
「お待たせいたしました」
 恭樹の前にはブラックコーヒーとショートケーキ。
 琥珀色したコーヒーからは温かさから湯気が上がり、ショートケーキには大粒の苺が白いホイップクリームの上に鎮座している。
 ケーキはやっぱりこれだな――と恭樹はそのふわふわスポンジのケーキに瞳を輝かせる。
「どうぞ」
 次にハーランドの目の前に紅茶とガトーショコラが置かれる。
 紅茶はダージリンの良い香りを漂よわせつつ湯気を上げ、それと濃厚なチョコレート色のガトーショコラは良い組み合わせである。
 恭樹はショートケーキにフォークを入れると一口食べる。
 口の中にはクリームの甘みと苺の甘酸っぱさが広がる。
 そんな恭樹の様子をハーランドは観察している。
 ショートケーキを口にした途端、睨んでいるように見える目つきの悪さを持つ恭樹の瞳が和らいだことに気付く。
 恭樹のケーキの好みはショートケーキと頭にインプットされたようだ。
「俺より、お前はどうだったんだ」
 恭樹は自分にされた質問をハーランドにもしてみることにした。
 ふと気が向いたようだ。
 質問されるとは思っていなかったハーランドは視線を紅茶から恭樹へと移した。
(少しは私に興味を向ける気にはなってきたか?)
 今まであまりそういう類の質問がなかっただけに恭樹には分からない程度にハーランドの口角が上がる。
「随分前であまり定かではないが」
 天に視線を向けるとハーランドは考え出す。
「ハーランド。お前、一体幾つだ」
 その様子に恭樹は驚きを隠せないのかハーランドに訝しげな瞳を向ける。
(俺より上なのは確かだろうが、見た目と雰囲気が違うというか)
 年齢不詳のハーランドを見るが、そう年を取っている様には見えない。
 しかしそのハーランドの行動は計算されたもの。
(目は口ほどにものを言う、か。解り易くて結構)
 その訝しげな瞳を向けてくる恭樹の仕草や視線の中にある思いを観察しているとハーランドの心は楽しくてたまらない。
 しかしそのまま楽しんでいたとしても会話が進むことはない。
 そしてハーランドは口を開く。
「私が成人を迎えたのは赴任先の砦でな」
(軍にいたんだったか)
 その言葉を聞いた恭樹もコーヒーを口に含む。
 先ほどまで口内に広がっていたクリームの甘さがコーヒーの苦さと相まって良い香りと味のハーモニーが生まれる。
 ハーランドもガトーショコラの甘さと共に紅茶を飲むと程よい甘さへと変換され、鼻から紅茶の香りが抜けると瞳を閉じる。
「祝いの酒を他にも成人を迎えた同期達と飲んで、翌日は全員二日酔いだった」
 当時の事を思い出しているのかハーランドはいつもとは違う微笑みを口に表す。
「……二日酔い」
 そんなに飲んだのか――と感じながら少し穏やかな表情をしているハーランドから視線を逸らすことができはしない。
「酒しか楽しみが無い場所でな」
 瞳を開くと真っ直ぐに恭樹を見る。
 その表情からは皮肉めいた笑みはなかった。
 ハーランドの脳裏には当時一緒に祝い酒を飲んだ者達の顔とその酒の味が思い浮ぶ。
 それ以上は語らないハーランドを察し恭樹はショートケーキへと視線を移し、また一口。 
 その綻ぶ恭樹の顔を眺めつつハーランドはそのまま思い耽ていた。
 大人への最初の階段、それは仲間と共に飲んだ酒の味。

 これからも2人は語り合いお互いをもっと知りながら理解していくことだろう。
 お互いを知ることでウィンクルムとして力となり、そしてこの先にある関係はどうなるのかそれはまだ本人達でさえ誰も知らない未来である。

●ネクタイの結び方

 ルアーク=ライアーは自宅で暇を持て余していた。
 外を見れば北風が吹き寒さを物語っている。軽く窓を開けてみたが……やはり寒い。
 何か面白いことはないかと部屋の中を見ても特に変わり映えのない部屋。
 暫くして考え付いたのは自身の精霊のエディット=アギフのこと。
(暇だし寒いしエディでも構ってやるかなぁ)
 それは彼にとってごく自然な流れである。
 ルアークは構ってやるか、などと思っているが実際エディットが構っているほうになっているのは彼自身気付いていない。
 スマホを手に取りエディットに連絡する。
 数回コールした後にエディットは電話に出た。
 自宅に招待の電話に受話器越しのエディットは一瞬ため息のような息を漏らしたが一つ返事で承諾をする。

 それから数十分後エディットはルアークの自宅を訪れていた。
「あーのーな!オレだって忙しいんだっての」
 部屋の中に招き入れた途端エディットの声が響き渡る。
 そんな言葉を口にしてはいるがエディット自身ルアークの言葉通りにしてしまう自分が悲しいやら。
(家までやってくるんだから、こいつに甘いよなぁ)
 ルアークの少し口角を上げた顔を見つつ自身が彼に甘いことを自覚する。
 彼以外、普段ならこんな唐突な誘いを断ることもあるのだが、どうも彼に言われると嫌とは言えないのだ。
「と、そうそう、面白いもん見つけたから持ってきたぜ」
 そう言って鞄からおもむろに出したのはバーガンディー色のビロード調の表紙がついた一枚の写真。
「なんだよ面白いって」
 それを見つめつつ渡された写真を受け取り開いてみる。
 そこには今よりは幾分か若いエディットが背広を着て少し固い表情で写っている。
「……ぷっ、七五三?」
 ルアークは笑いが込み上げてきてそんなことを言う。
「オレの成人式の時の写真だ!かっこいいだろう!」
 胸を張りながらエディットは得意気に笑顔を浮かべて共に写真を覗き込む。
 少しその写真の中を見つめるルアーク。
 暫く見つめていたことを誤魔化すように、
「ずいぶんとスーツに着られてるようで」
 なんて皮肉めいて言うとエディットに軽く口角を上げてまた笑う。
 しかし正直ルアークは思ったよりもエディットのスーツ姿が格好良かったことに内心動揺していた。
 それを彼に見せることは自分のプライドが許さない。
 ここは一つ笑いながら皮肉を言うことでその苛立ちに似たものを誤魔化す。
 皮肉を言われたエディットは誰から見ても分かるようにむくれている。
 そんなむくれるなよ、とルアークはエディットの頭を右手人差し指で小突いてやる。
「へいへい、似合ってるよ。かっこいいかっこいい」
 小突きながら言ってやるとエディットは「棒読みだろ!」とツッコミをいれる。
「棒読み?気のせいだろ」
 クッと堪えられないように笑えばエディットの顔は更にむくれていくのだ。
 それが面白すぎてルアークはやめることが出来ない。
 そんなやり取りをしているとエディットは口を開く。
「このとき初めてスーツ着たんだぜ」
 写真を眺めながら当時を思い出すように口には自然と微笑みが浮んでいる。
「学生時代の制服は、学ランだったからネクタイ結べなくてなぁ」
 成人式に行く前に何度も結んだネクタイ。
 その難しさから苦戦したことが思い浮ばれる。
「それにしても……ネクタイ、曲がってるぜ。ずいぶんと不器用なことで」
 写真にいるエディットのネクタイを指しながらまたククッと笑うルアーク。
「あ?曲がってる?」
 指された箇所をマジマジとみれば確かにネクタイは右上がり気味。
「しししかたねぇだろ!大人になって初めて結んだんだからさ」
 少し頬を赤らめて反論するその姿がまた面白いとルアークは笑う。
 笑いながら彼はエディットの現在の姿を見る。
 カジュアルな服装ながらも、だらしなくはないほどに緩く結ばれたネクタイ……時間の流れを感じることができる。
「ま、今じゃあちゃーんと結べるんだぜ!なんだったら、ルアークにネクタイ結んでやろうか?」
 そういうやいなや自分の首元にあるネクタイをシュルリと外す。
 その仕草はこの写真の中にいるエディットとは違い大人の男の雰囲気を漂わせている。
「綺麗に結べるのかよ」
 そう返答するルアークは嫌ではないらしい。
 エディットへと向き直ると素直にネクタイが首にかかるのを待つ。
 自信満々に言われれば断るのもとも考えたし、このエディットの屈託の無い笑顔を無碍にもしたくなかった。
「って、うーん?これがこうなって……」
 ネクタイが首にかかるとエディットはルアークに顔を近付ける。
 人にすることはあまりないせいか少し苦戦しているようだ。
「って、動くなってのやりづらい!」
 真剣になればなるほどエディットの顔が近付いてくる。
 近いのだ、2人の距離が、否応なしにルアークはその顔から少し距離を取ろうとするが、その度にエディットに「動くな」と肩を掴まれる。
 温かみのあるオレンジ色の髪がサラと顔にかかると、フワッとエディットの香りがルアークの鼻をくすぐる。
 その男性的な香りにまた時間の流れを感じずにはいられない。
 写真にいたエディットはまだ少し少年の儚さを残した表情で、でも今は男性的で。
 暫くは我慢していたのだが、綺麗に結ぶためにより一層顔の距離が近付いた時だった。
「って、おっま、近いんだっての!」
 さすがに我慢の限界だと少し頬を赤らめたルアークの口からそんな言葉が飛び出し、力いっぱい押しのけようとする。
「我慢しろ!もう少しだ!」
 結んでいる状況なのだが、傍から見たら何をしているのやら……。
 押しては近付きの連続を数回した後である。
「ほら、できたじゃないか!」
 その距離がよかったのかルアークに結ばれたネクタイは綺麗に真っ直ぐと結ばれていた。
「上出来、上出来」
 エディットは満足そうにそのルアークを見る。
 ネクタイを手に取りルアークは綺麗に結んであるネクタイを見る。
 そのネクタイからもエディットの男性的な香りを微かに感じる。
 大人への最初の階段はネクタイを結び少年から男性へと変わっていく様である。
 
 ウィンクルムになったばかりの2人。
 これからも皮肉を言いながらも笑い合い共に歩んで行く事だろう。

●勇敢な戦士と鍋

 李月とゼノアス・グールンはラーメン屋の中へと入っていく。
 今日の昼はラーメンにという話しになり最近評判のお店を訪れたのだ。
 カウンター席しか空いておらず丁度2人並んで座れる席へと促される。
 各々ラーメンを頼むと出来上がりを待つ。
 店内にあるテレビでは成人式のニュースが流れていた。
「ゼノは成人式出たのか?」
 ニュースを見ながらそんな疑問をぶつけてみる。
 つい先日ゼノアスの帰郷に同行したばかり。
 そこはまるで物語にでもなりそうなアラビアンナイトのような街並み。
 もちろん文化もそれと同様な暮らしぶりで、そんな街での成人式はどのようなものか興味があったのだ。
「つまり『成人の儀』だな?」
 問われたことで李月が自分に興味を持ってくれたことに心で歓喜しつつ得意気に話し出そうとしたが、同時にラーメンが2人の下へとやってきた。
「「いただきます」」
 割り箸を割り一口食べれば口の中に小麦の麺の香りと少し豚骨のような香りが広がり、濃厚かと思いきや口には残らないあっさりとしたラーメン。
「うまい!」
 ゼノアスは満足そうにそう言うと少し背中を伸ばして話しだす。
「街外れの谷……そこは深く少し霧掛かっていて普段は誰も近寄らない」
 李月はそう言われ頭の中で想像していく。
「そこにしかない茸『光茸』という少し輝いて見えるそれを採ってくるのがルール」
 そこまで言うとゼノアスはラーメンを啜る。
「だがそこには……獰猛な獣が棲んでいて普段誰も近寄らないのはその獣のせいだ」
 その獰猛な獣を想像するだけで李月はその儀式の大変さを感じている。
「つまり生死を掛けた成人儀式だぜ」
「マジか」
 キリっと顔を正し李月を見るとそこには興味津々な顔をゼノアスに向けている彼がいた。
「そして過去に命を落とす者もいた」
 ラーメンを食べていた李月の手が止まりゼノアスの話しを聞き入っていた。
 前置きを話し終わると李月含め店の中にいる客や店主までもが引き込まれたようで、店内は静まり返っている。
 そこからはゼノアス『成人の儀』劇場の始まりである。

 成人の儀を行なう者達の中にもちろんゼノアスの姿……全員で20名程。
 光茸を見つけるために谷へと降り、ある者は洞窟の中、そしてまたある者は更に深い谷へと歩み進んでいく。
 ゼノアスは岩壁のような場所を数人と歩いていた。
 そこにあの獰猛な獣が現れた。虎のようなイノシシのようなあの獣が。
「ああ……十数体遭遇したが真っ向から立ち向かったぜ」
「うはぁ」
 それを想像すると李月からは驚きの声があがる。
 数は多いがそれを仲間と協力し退治していくが、
「……だがよ 一体やたら強えのがいて……」
 ゼノアスはラーメンを啜りつつ表情はそのままで真面目そのもの。
「ええっ」
 そんな話しをしながらもゼノアスの当時の事を思い出しているのかその表情は嬉々としている。
「それまでの相手とは違うことを皆わかってた……」
 全員が気を引き締めると連携の取れた動きをする。
 しかし相手とてそう簡単にはやられて堪るかと応戦してくる。
 1人は足をやられ、また1人は背中に傷を負う。
「しかしそいつには隙のある場所があった……」
 ゼノアスはそれを仲間たちに伝えると最後の力を振り絞り獣の隙……左足を狙った。
 それは見事に命中しその場の仲間全員を救うことともにその獣を撃退したのだ。
 すると、店内に拍手が響く。
 拍手喝采!!
 その拍手喝采に少し照れを見せながらも話しは続く。
 死闘の末その猛獣を抱え凱旋するゼノアスに街の人々も大きな歓声と拍手で出迎えられ勇者さながらに帰還したのだが……大事なことを忘れていた。
 そうゼノアスのみ光茸を忘れたのだ。
 共に戦った者達はもちろん手に光茸を持っている。
 そんなオチに李月はラーメンを食べる手をやめて笑い出す。
 ゼノらしい、と。
 もちろん戦闘の働きに免じて儀式はクリアしたとのこと。
 そこまで聞いて李月や他の聞き入っていた客たちは満足そうに笑いながらラーメンを食べだす。もちろん店主も作業再開。
「この儀式の真意分るか?」
「真意?」
 真意と言われても、それは成人する者のための試練。
 そう考えると真意としては……。
「最中の働きで自分の立場が決まんのよ」
 得意そうな笑顔を向けてくるゼノアス。
 あの獰猛な獣に対して勇敢に戦い勝利を勝ち取った功績はとても大きいものだ。
「あん時の奴等はほぼ皆子分!」
 そういえば……先日ゼノアスの故郷を訪れた時に知り合いという人々は皆ゼノアスに対してとても腰が低い者ばかりだった。
「お前の知り合い 腰低い人多いと思ってたけどそういう事か」
 これで合点がいったと李月は納得ししたように頷きながらまた笑い出す。
「成人初仕事は茸と獣肉で街の奴らに鍋振る舞ったぜ」
 あれは旨かったとラーメンを啜りつつゼノアスはその鍋を思い出している。
「その鍋絶対美味しいだろうな」
 珍しい茸に勝利を勝ち取ったことによる獣の肉の鍋。
 少し味は想像できそうにもないが、自分達で採ってきたものばかりだ。
 美味しくないわけがない。
「来年挑んでみるか?」
 興味を示してくれたことにゼノアスは喜びつつ、そんな提案をしてみる。
 その提案に李月の箸は止まった。
 そんな猛獣のいる場所に……僕大丈夫だろうか……。
「き……鍛えとく」
 でも行きたいとも思うことからそんな返答が返ってきた。
 その返答にゼノアスの顔は満面の笑みへと変わる。ちゃんと応えてくれた李月の気持ちが嬉しいから。
 それと同時にゼノアスのラーメンのどんぶりはスープも全て飲み干して空になった。
「オヤジ!おかわりだ!」
 どんぶりをカウンターの上へと置き店主におかわりを注文する。
「あいよ!」
 次に出てきたラーメンにはチャーシューが2枚ほどオマケされていた。
 ゼノアスの武勇伝へのお礼の一つのようだ。
 李月はそのラーメンを美味しそうに食べているゼノアスを見ながら心を温めている。
 自分と出会う前のゼノアスのことが知れてよかったし、それに話しも楽しかったと。
 大人への最初の階段、それは勇敢に戦い美味しい鍋となった温かい味。
 
 これからもお互いを親友のようにそしてそれ以上にも想いながら歩んでいく2人。
 いつの日かその獰猛な獣に挑み光茸の鍋を笑顔で食べる日が訪れることだろう。



依頼結果:大成功
MVP
名前:李月
呼び名:リツキ
  名前:ゼノアス・グールン
呼び名:ゼノアス/ゼノ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月07日
出発日 01月13日 00:00
予定納品日 01月23日

参加者

会議室

  • [3]ルアーク=ライアー

    2017/01/12-19:27 

    ルアークだ。
    ま、よろしく頼む。

  • [2]李月

    2017/01/12-18:57 

    李月と相棒ゼノアスです。
    よろしくお願いします。

  • [1]柳 恭樹

    2017/01/10-21:44 

    柳恭樹だ。よろしく頼む。

    成人式か。
    もうそんな時期なのか。


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