お正月を遊ぼう(木口アキノ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「あけましておめでとうございます~」
 新年を迎えて早々のA.R.O.A.本部に、数人のおじいちゃんおばあちゃんたちがやってきた。
「どうもこんにちは!私たちは『昔の遊び保存会』でございます」
 リーダー格らしき老人がででん、と紙芝居を取り出し、にこやかに説明をしてくれる。
 紙芝居には、『昔の遊び保存会』と色とりどりの文字で書かれている。
「その名の通り、昔ながらの遊びを後世に伝えていこうという運動をしております」
 バッと紙芝居を捲ればそこには日の出の絵。
「新年ということで、現在、ハト公園にて昔懐かしいお正月遊びを紹介する催し物をやっております」
 老人は更にもう一枚、紙芝居を捲る。
 今度は、着物を着た幼子たちが思い思いに凧やら独楽やらで遊ぶ様子が描かれていた。
「今日は皆様にそのご案内にやって参りました」
「さてさてまずは、こちら凧揚げ」
 細身の老人が前へ出る。
「昨今はスポーツカイトなる洒落た凧もありますが、お正月の凧と言えばやっぱり和凧」
 手には隈取りが目を引く歌舞伎役者が描かれた四角形の凧。
「丈夫な和紙で作られた凧に自分で好きな絵を描くのもまた楽しいものでございます」
「空が凧なら地面には独楽」
 また別の老人が、独楽を持って横に並ぶ。
「縄を巻きつけて回すのは難しいと思われがちですが、コツさえ掴めば誰でもほら、この通り」
 老人の手から放たれた独楽はカンっと小気味よい音を立て床に着地するとくるくるくると回り始める。
「ウィンクルム様と言えば二人組。二人と言えば、やはりこれ」
 独楽がまだ回り続けている中で、今度は羽子板を持った老女が前に出る。
「羽根つきで、新年最初の勝負はいかが?もちろん、負けたら顔に落書きですよ」
 羽子板でコンコン、と数度羽根を打ち上げて見せる。
「あくちぶな遊びが苦手な方には、こちらがおすすめ」
 人の良さそうな恵比須顔の老人がさらに前に出る。
 あくちぶ、とはおそらく『アクティブ』と言いたかったのだろう。
 恵比須顔の老人は、四つ折りにされた大判の紙をバッと開く。
 そこには、人の輪郭だけの絵が描かれていた。
「ゆっくりじっくり福笑い。出来上がったお顔を見れば、誰もがきっと笑いたくなる」
「皆様のお越し、お待ちしております~」
 最後は皆が声を合わせ、周辺で見ていたウィンクルムたちにビラを配り始めた。
 ビラには、「参加費300jr、甘酒、お汁粉、お雑煮もあります」と書かれていた。
 普段馴染みのないお正月の遊び。
 せっかくだから、楽しんでみませんか?

解説

お正月遊びで楽しもう!というエピソードになります。
参加費は一律300jrです。

凧揚げ……ただ揚げるだけではなく、自分で凧に絵を描くこともできます。
独楽回し……縄を巻きつけて回す昔ながらの独楽回し。長く回すことが出来るでしょうか?
羽根つき……パートナーと勝負しても、お友達と勝負しても可。負けた方の顔に落書きするために墨汁も用意しています。落書きをした方が盛り上がるかもしれませんが、絶対落書きしなきゃいけないというわけではありません。
福笑い……おかめ若しくはひょっとこの顔を完成させましょう。現代風にアニメっぽい顔の福笑いもあるようです。
食べ物……甘酒、お汁粉、お雑煮。好きなものを好きなだけどうぞ。

ゲームマスターより

お正月エピソードです!
のんびり遊んでパートナーとの親交を深めていただければ幸いです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  主に楽しみたいもの「たこあげ」「はねつき」

2人でくらしているから朝、おめでとうの挨拶はするんだ
2人で初日の出を見てさ
今年も宜しくなんて、くすぐったいけど神妙になるよね

それから和服で外出だ
たこあげでのんびりと風邪に吹かれるさまを見て
今年はへいわにまったりいけるかなあなんて
思ったりして
って、え?
いいよ、どっちが高く上げられるかだね
俺もまけるきはないからな(頑張る

ランスは勝負事が好きだからな
きっとハネツキでも挑戦してくるだろう
うん、そう思ってちゃんと用意したよ
ら、すみ(ふふふふふ

ミスったほうが顔にスミを・・(やるき

終わったらゆっくりハグ
二度目か、ま、いいや(ふふふ
初ぽんぽんな(ぽんぽん
ああ、よろしく


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  ここはあくちぶな戦いがいいじゃん?
ラキア、羽根つきで勝負だ!オレは負けないぜ。キリッ。
オレが勝ったら、今年はもっとお肉中心の食事を増やしてくれ!
褒美があるとオレは俄然頑張っちゃうからな。
この勝負には、今年の食生活が掛かっている!負けられん!

バトミントンする要領で、羽子を天高く放りあげ、
勢いよくラキアに打ち込むぜ。
むむっ、意外と反応早いじゃんラキア!
「これを返すとは、さすが我が相棒。相手にとって不足なし!」
羽根おとしたら顔に落書きはするぜ。当然だ。
そして何度でも勝負する!
勝つまでやるは負けないからな。持久力も実力のうちなのだ。
ラキアもオレの苦手な方向や死角に巧く羽根打ちこんできて、楽しいぜ。


俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
  姉貴が四人もいれば甥姪もそれなりの人数になるからな
相手するのも一仕事だし懐は冷えるし…
まあ子供は嫌いじゃないけどな

羽根つきで勝負
冷静に相手の動きを見て隙をうかがう
…!?
ラリーを続けていたが不意討ちで羽根を落とし
お前それ汚ねえぞ!?

次はフェイントや精神攻撃にも気をつけて慎重に
相手のスタミナ切れを察して反撃
ふははは!ウィンクルムに同じ手は二度も通用しない、これはもはや常識!
墨汁で落書き『俺も』と書く
ネカにだけ分かるさっきの答えだ

ひとしきり遊んだら二人で甘酒を飲む
え、俺の実家?
別に構わないけど、お前んちはいいのか?
だったらいいんだけど…

…ネカ…?
なんかちょっと様子が変だな
実家で何かあったのかな…?


ユズリノ(シャーマイン)
  一緒に挨拶
興味津々彼と遊びは一通り和気藹々楽しむ
独楽投げる姿までイケメンだねシャミィ
僕だって!
明後日の方向に飛んでく独楽

羽根突き
気合の「はいっ(カンッ
暫くラリー 打ち損じ
「あきゃぁ~ 負けた…仕方ないね くうう
潔く落書き待ち
くすぐったい
目を開けたら彼が赤い顔してる
覗きこみ「どうしたの?

第2ラウンドまさか勝っちゃった
「はいはーいリベンジターイム!
目を閉じた顔を寄せられこちらもドキリ
キスしたい…って何考えてるの!ドキドキ
綺麗な顔に申し訳ないけど容赦なくハートマーク乱舞書き

鏡見て「これ…えへへ(キス思い出して頬染

福笑い挑戦
この辺~?
囁く声がセクシーで集中難しい
出来上がりに笑いあう

可能なら皆さんと絡み歓迎


セツカ=ノートン(マオ・ローリゼン)
  羽根つきやろうって誘うけど、とてつもなく神妙な顔をしているマオに笑っちゃった
まぁそうだよね、この身長さだもの
凧あげならいいかな
絵を描くのも楽しそうだけど、今日はもうできてるのがいいなぁ
凧を貰って、それで遊ぶよ
マオ、手伝って、もってくれたらきっと高く飛ぶよ!
「高いねぇ…僕も空を飛んでみたいなぁ」
え、肩車?
あはは、ありがとう!うん、是非是非っ
(肩車してもらってご満悦)
あとは……お汁粉一緒に食べよ、体動かしたら甘いもの食べたくなっちゃった。
あ、マオ、ありがと、ほら、あーん?
(一口あげる)
他の人もきてるんだっけ?あったらご挨拶して、一緒に遊べたら遊びたいなぁ



 2人並んで東雲の空を見て。
 初日の出と同時に顔を見合わせ「おめでとう」の挨拶を交わし。
 神妙な面持ちで今年も宜しく、なんて言ってみたり。
 でもその次の瞬間、「新年初はぐーっ」と精霊が抱きついてきていつもの調子に戻る。
 アキ・セイジとヴェルトール・ランスの一年はそんな風に始まった。

 しかし、年越しを共に過ごさぬウィンクルムもいたわけで。
 俊・ブルックスとネカット・グラキエスもそんなひと組。
「シュンは実家に帰ってたんですよね」
 ハト公園に向かう最中にネカットか訊く。
 俊は頷いてから、大きくため息をついた。
「姉貴が四人もいれば甥姪もそれなりの人数になるからな。相手するのも一仕事だし懐は冷えるし……」
「ふふ、そう言いつつもしっかりいい叔父さんしてきたんですね」
 ネカットに褒められ、俊は面映くなる。
「まあ子供は嫌いじゃないけどな」
「今日は童心に戻って思い切り遊びましょう」
 目的地が見えてきて、ネカットはぽんと両手を打った。
 今度は自分たちが子供になる番だ。

「宜しくお願いします!」
 昔の遊び保存会の面々に挨拶をしたユズリノとシャーマインは、続々集まってきた他のウィンクルムたちにも
「こんにちはー!」
 と挨拶をする。
「こんにちは。色々な遊びがあって楽しみだね」
 セツカ=ノートンに笑いかけられ、ユズリノは
「僕たちは一通り楽しむつもりだよ」
 と答えた。
 早速シャーマインは独楽を興味深そうに眺めている。
 独楽係の老人が、慣れた様子で独楽に縄を巻きつけシャーマインに手渡してくれた。
「コツは、投げた後手早く縄を引くことですよ」
「手早く……」
 シャーマインは教えられたコツを反芻すると、腰を落とし低い位置から独楽を投げ出す。
「とうっ」
 初挑戦とは思えないほど、独楽は上手く廻る。
「独楽投げる姿までイケメンだねシャミィ」
 目を輝かせたユズリノ。
「僕だって」
 自分も縄を巻いてもらった独楽を受け取り、えいやっと投げてみる。
 しかし。
「あ〜〜っ」
 独楽は明後日の方向へ。
「難しいね」
 ユズリノとシャーマインは顔を合わせて笑う。

 セイリュー・グラシアの目的は決まっていた。
 ここはあくちぶな戦いがいいじゃん?ということで。
「ラキア、羽根つきで勝負だ!オレは負けないぜ」
 キリッと羽子板を突きつけて宣戦布告である。
 セイリューがそう言い出すだろうことはラキア・ジェイドバインにはお見通し。
「いいよ、受けて立つよ!」
 ラキアもビシッと羽子板を突きつけ返す。
「俺が勝ったら、今年はもっとお野菜を食べること」
 にっこり笑ってそう付け足すと、セイリューの闘争心が掻き立てられた。
「オレが勝ったら、今年はもっとお肉中心の食事を増やしてくれ!」
 ご褒美があると俄然頑張るタイプのセイリューなのである。
「はいはい、セイリューが勝ったら考えてあげるよ」
 ラキアの口調にどこか余裕があるのは、メニューの最終決定権は食事を作っているラキアにあるからだ。
 その傍では、同じくあくちぶ派の俊とネカットも手に馴染む羽子板を選んでいた。羽子板選びからすでに2人の勝負は始まっているのである。
「ねぇマオ、僕たちも羽根つきやろうか」
 彼らの様子を見てセツカもマオ・ローリゼンを誘う。
 途端にマオは神妙な表情に。
「流石に羽根つきは難しいかな……」
 言葉を濁してセツカの頭頂部を見遣るので、何を言わんとしているのか、セツカもわかった。
「まぁそうだよね、この身長差だもの」
 セツカはマオのとてつもなく神妙な表情に、思わず笑ってしまう。そしてすぐに代替え案を出した。
「凧あげならいいかな」
 これなら身長差があっても楽しめそうだ。
「ふふ、わかった、凧あげだね」
「絵を描くのも楽しそうだけど、今日はもうできてるのがいいなぁ」
 だってすぐに遊びたいからね!と、楽しそうに言うセツカにマオは目を細める。軽い足取りのセツカを追いかけて、マオは共に凧揚げのコーナーに向かった。

「凧あげるぞ凧ー!」
 やたらと気合が入っているのはランス。
 その裏には、セイジに手取り足取り教えながらムフフ……という下心があるとかないとか。
 凧の紐を持ちダッシュすれば、ものの数秒で凧が揚がってゆく。流石はスポーツ万能系筋肉ウイザードを自称するだけはある。
「おおおー」
 感嘆の声をあげて凧を見つめるセイジの手に、揚がった凧の紐をバトンタッチ。
「え?これ?どうすればいいんだ」
 ランスは困惑するセイジの後ろに回り込み、後ろから腕を伸ばして彼の手を取る。
「風の動きに合わせてこうやって引いて……」
「む……こうかな?」
「そうそう、上手い上手い」
 コツを掴めばセイジも上手に揚げられるようになる。
 凧が並んで風に吹かれる様を見ていると、なんだかのんびりした気持ちになって。
(今年はへいわにまったりいけるかなあ)
 なんて思ったりする。
 そこへ、セツカとマオもやって来た。
「うわぁ、高く揚がってるねぇ」
 セツカが空を見上げて声をあげると、ランスはへへっと自慢気に笑い、尻尾をぶんぶんと振った。
 セツカは凧揚げ係の老人から手渡された凧を持ち、マオを見上げる。
「マオ、手伝って、もってくれたらきっと高く飛ぶよ!」
 期待の込もった目で見られ、じゃあ……とマオは凧を手に持つ。
「行っくよー!」
 紐を持って走るセツカの後を、凧を高めに持って追いかけるマオ。
 凧が充分に風をはらんだところで手を離す。
「揚がったー!」
 喜ぶセツカにマオは走って追いつき、
「あとは紐の引き具合を調節するんだよ」
 と、適宜アドバイス。
 そのおかげか、セツカの凧はぐんぐん高く揚がっていく。
「高いねぇ…僕も空を飛んでみたいなぁ」
 太陽の眩しさに目を細めながらセツカがそんなことを言う。
「ん?飛びたいの?それは無理だけど、これなら……」
 マオがセツカの前に立ち、彼に背を向けすっとしゃがんだ。
「肩車はどう?」
 顔だけセツカに向けてマオが笑む。
「え、肩車?」
 一瞬ぽかんとするセツカだが、すぐに乗り気になる。
「あはは、ありがとう!うん、是非是非っ」
 流石に凧を揚げながら肩車は難しく、セツカの凧は落ちてしまったが、マオに肩車をしてもらってセツカはご満悦。
「少しは高くなったでしょ?」
 マオの言葉に、セツカは「うんっ」と元気に答える。
 空にはセイジが揚げた凧。それ目掛けてうーんと片手を伸ばすと自分も空の一部になったみたいに心地良かった。
 平和な光景にマオも目を細める。
 肩に乗るのがセツカなら、その重みも全く気にならない。
「いやっほーう」
 シャーマインの声とユズリノの笑い声と共に、空には新たに凧が2つ、加わった。
 セイジがセツカやユズリノ達の様子に、微笑ましいなあ、と思っていると。
「セイジ、勝負しよう!」
「え?」
 セイジの凧の隣にもう1つ凧が並ぶ。
隣を見ると、ランスがにやりと笑いかけてくる。
「どっちが高く揚げられるか、勝負だ!」
 セイジも唇の端を上げた。
「いいよ、俺も負ける気はないからな」
 2人の凧は空高く揚がっていって……一緒に絡まり同時に落ちた。
 この勝負、引き分け。

 次は羽根つきに挑戦しようとユズリノ達が移動すると、そこでは既に、白熱した勝負が繰り広げられていた。
 まずは俊とネカットの勝負に目を向けてみよう。
 2人は何度か慣らしのために打ち合いコツを掴むと、次第に激しいラリーへと移っていった。
 素早さでは俊を上回るネカットは、それを生かして動き回り、俊を振り回す。
 対する俊は冷静にそれを見極め、食らいつきつつ隙を窺う。
 右に打つと見せかけて左、強打すると思わせて緩く打つ、そんなフェイントも交えるネカットに、俊は踏鞴を踏む。
 今だ!とネカットの目が光る。
 振りかぶり、腕に力を溜める。
 叫びと共に、力を放出する。
「シューン!今年も大好きです!」
 ネカットの色々な意味で必殺のスマッシュ。
 必ず殺すと書いて必殺。
「……!?」
 ネカットの不意討ちに羽根を取りこぼす俊。
「お前それ汚ねえぞ!?」
 俊の抗議にネカットは得意気に笑う。
「ふっふっふ、油断大敵ですよ」
 嬉しそうに筆を手に取り俊ににじり寄る。
 負けは負けなので、俊も落書きを受け入れる。
 俊の頰には大きなハートマークが描かれた。
 俊も負けっぱなしではいられない。
「もうひと勝負だ!」
「望むところです!」
 意気揚々と二回戦を受けて立ったネカットだが、動き回り過ぎたせいで、体力は消耗していた。
 前半より動きが鈍っていることを、本人も自覚していた。
(こうなったらもう一度例の作戦を……)
 ネカットはスマッシュの姿勢をとる。
「私はシュンが……あっ」
 叫び終わる前に、ネカットのスタミナ切れを察していた俊にカキーンと打ち返され、それを取り逃がす。
「ふははは!ウィンクルムに同じ手は二度も通用しない、これはもはや常識!」
 勝ち誇った俊は、がっくりと膝をつくネカットに歩み寄ると、健闘を讃え合った握手……ではなく、罰ゲームの落書きを。
 ネカットの頰に『俺も』と書いた。
 他人が見たら、何のことかわからないだろう。
 だが、俊とネカットにはわかる。
 先ほどネカットが俊に描いた大きなハートマークの返事。
 逆転負けしてしまったネカットであったが、羽根つきは楽しかったし俊もノリノリだったので、大満足であった。

 2人の戦いを見ていたセツカが
「羽根つきってこんなに迫力あるスポーツだったんだね」
 と唖然としている。
「いや、これは特別な例だと思うけど」
 とマオは言ったが、そのすぐそばで更に激しい打ち合いが行われているのを目の当たりにして口を閉ざした。
セイリュー達がおかずをめぐる攻防戦を繰り広げていたのだ。

 サーブはセイリューからだった。
 羽根つきで果たしてサーブなんて言い方はするのだろうか。いや、しかしここは敢えてサーブと言わせてもらおう。
 羽根を高く上げ、上体を反らし羽子板を持つ腕をしならせる。
 あれ、なんか想像してた羽根つきと違わない?とラキアが思う間も無く、バゴーンという音と共にカラフルな羽根が空気抵抗を突き破って迫ってくる。
「いやいや、ちょっと待って!?」
 なんとか手を伸ばし、羽根は羽子板の縁に当たった。セイリューに返せはしたものの、大きく打ち上げてしまう。
 しかしラキアが打ち返してくるのは予想外だった。セイリューが思った以上にラキアの反応は早いということだろう。
「これを返すとは、さすが我が相棒。相手にとって不足なし!」
 ゆっくり落ちてくる羽根の下に走り込み、パカーンとバックハンドで打ち返す。
「セイリュー、打ち込みが激しすぎるよ?」
 羽根つきってこんなゲームだったっけ。そんな疑問を持ちつつ、ラキアもなんとか打ち返す。
 勝負となると熱くなるのがセイリューである。このままでは、セイリューに野菜をたっぷり食べてもらえない。
(ここは煽るか)
 ラキアは胸の内でくすっと笑う。
 むしろもっと熱くなってもらって、冷静さを欠かせてしまえばいいのだ。
 またもや速球で返される羽根に、ラキアはなんとか食らいつく。
 実際はギリギリのところで打ち返しているのだが、
「その程度何なく打ち返せるよ」
 と、余裕ぶって笑顔を見せる。
「これならどうだ!」
「まだまだ!」
「むむぅっ」
 ラキアの余裕を崩すには、もっと速い球を……!いや球じゃなくて羽根だけど!
「あっ」
 力み過ぎ、セイリューは見事に空振り。
「く〜〜っ」
「勝負あったね」
 にこやかに言うラキアに、セイリューは男らしく墨のついた筆を差し出す。
「さあ、好きなように描いてくれ。そして、もう1回だ!」
「へ?」
 たじろぐラキアにセイリューは曇りのない笑顔で言い切った。
「たった1回じゃ勝負は決まらないぜ」
「なるほど、それも一理あるね」
 ラキアはセイリューの頰に渦巻き模様を描くと、再び羽子板を手にし距離を取る。
「行くぜ!」
 セイリューから放たれる豪速サーブ。
 ラキアは先ほどと同じ作戦で、余裕を見せてセイリューの死角を狙って打ち返す。
「むむっ」
 少し球筋は乱れるも、セイリューは打ち返す。
 速さのセイリュー。コントロールのラキア。勝負は一進一退。互いの顔に落書きが増えていく。
 しかし、持久力で負けるラキアは、疲労を感じ始める。長いラリーの中、ふと考える。
 別に、肉メインでも良くないかな?
 だって、野菜は刻んだりペーストにしたりしていくらでも肉料理に混ぜ込めるんだから。
 そこに思い至った時、ラキアの集中力も尽きた。羽子板の横を、羽根がすり抜けていった。
 ラキアは膝に手をつき息を整えると、セイリューを見上げる。
「君の勝ちだよ」
 それを聞いて、セイリューはガッツポーズで飛び跳ねた。

 彼らの戦いに触発されたのか、
「よぉし、僕たちもやってみよう」
 と、気合いの握り拳を作るユズリノ。
「落としたら落書きだぞ頑張れ」
 シャーマインは余裕の笑みだ。
 2人は羽子板を持ち、距離をとる。
「はいっ」
 カンっといい音がして、シャーマインの元へ羽根が飛んで行く。
「ほいっ」
 それを軽く打ち返すシャーマイン。
 カン、コン、カン、コンと暫くリズミカルなラリーが続く。
 先に打ち損じたのはユズリノであった。
「あきゃぁ~、負けた……」
 頭を抱えるユズリノに、不敵な笑みを浮かべたシャーマインが筆を掲げて歩み寄る。
「仕方ないね。くうう……」
 ユズリノは目を閉じ顔を上げ、潔く落書きを待つ。
 と、シャーマインの手が、ぴたりと止まる。
 落書きを待つユズリノのこの顔は、キスを待つときに良く似ていて。
(キスしたい……)
 シャーマインはぶるぶると頭を振る。
 クリスマスにキスをしたせいか、最近抑えが効かなくなっている。
 シャーマインはユズリノの顔に3つほどキスマークを描くことで、なんとか気を鎮める。
 ユズリノは筆の擽ったさに耐えて描き終わるのを待ち目を開ける。
 と、そこには真っ赤な顔のシャーマイン。
「どうしたの?」
 顔を覗き込めば、シャーマインは
「2回戦やるぞ!」
 と叫び踵を返し距離をとる。
 動揺の収まらないシャーマイン、2回戦目はあっさりとユズリノに負けてしまう。
 まさかの勝利にユズリノは声を弾ませる。
「はいはーいリベンジターイム!」
 楽しそうに筆を掲げるユズリノだったが。
「……!」
 目を閉じた顔を寄せられて、先ほどシャーマインが掛かったのと同じトラップに引っ掛かる。
(キスしたい……って何考えてるの!)
 けれど鼓動は早くなる一方で。
 ユズリノは、綺麗な顔にごめんなさい、と思いつつも、シャーマインの顔中に、いくつもハートマークを乱舞させた。
 シャーマインが目を開けたとき、ユズリノの顔が赤いのを見て彼は全てを察した。
「これであいこだな」
 と、2人は笑い合う。
 借りた鏡で自分の顔を確かめるとまた、はにかんだ笑顔を交わす。
「これ……えへへ」
 クリスマスのキスを思い出しユズリノが頰を染め、シャーマインも
「リノの愛が溢れてるな。俺は幸せ者だ」
 と、目を細めた。

 凧揚げでは勝負が決まらなかったセイジとランスも、羽根つきに挑戦することにした。
 勝負事が好きなランスのことをよく理解しているセイジは、きっと羽根つきでも勝負を挑んでくるだろうと予想した。
「セイジ、次は羽根つきで勝負だ!」
「うん、そう思ってちゃんと用意したよ」
 羽子板と共に借りてきた墨汁と筆のセットを掲げて見せる。
「ほら、スミ」
 ふふふふふ、と不敵に笑うセイジ。
「おおーっ、スミか!」
 罰ゲームに2人の気分は盛り上がる。
 セイジもなかなか負けず嫌いなところがあるのを、ランスは知っている。
 恋人になってもどこかいつもライバルなところがある。
(それでいいさ)
 とランスは思う。
 毎日刺激があって、影響を与えられる。
 そんな関係で今年も頑張りたい。
「公正な勝負をするために、審判をつけよう」
「それいいな」
 ランスは近くにいたマオに声をかけた。
 マオは快く審判を受け入れてくれた。
 最初こそ対等に打ち合っていたものの、次第に素早さも体力も上回るランスが優勢になってくる。
 それでもセイジは最後まで諦めず健闘したが、結局ランスの勝ち。
 負けても全力を出し切ったせいか、セイジは悔しさよりも清々しさの方を強く感じた。
 セイジとランスは互いの健闘を讃え抱きしめ合う。
「本年2度目のハグ」
 セイジか言うと、ランスは
「そして初ぽんぽん」
 と、セイジの頭をぽんぽん撫でた。
「今年もよろしく」
「ああ、よろしく」
 爽やかな笑顔を交わす。
 とても良いシーンだが……それでも、墨は付けます。セイジの頰にバツ印が描かれた。


 ひと通り遊んだら、休憩時間。
「お汁粉一緒に食べよ、体動かしたら甘いもの食べたくなっちゃった」
 セツカがマオを誘う。
 簡易テーブルに、お汁粉やお雑煮の入ったお椀が並べられていた。
「わかった、お汁粉だね」
 セツカはマオにお汁粉のお椀を取って渡してあげた。
「あ、マオ、ありがと」
(俺はお雑煮にしておこう……?)
 お雑煮のお椀を手に取ろうとしたところで、セツカに声をかけららる。
「ほら、あーん?」
 セツカはよく伸びるお餅を箸で持ち上げて見せる。
 セツカがあーんを!
 マオは嬉しさに満面の笑みを浮かべる。そして内心は満面の笑みどころではなかった。感激の嵐が吹き荒れていた。しかし人の目もある場所だから、満面の笑み程度で済んでいるのだ。
 マオはかぷりと甘いお餅を齧りとる。
 この甘さは、お汁粉のせいだけではないようだ。
「ありがとう、凄く幸せだよ」
 マオが本当に幸せそうな顔をするから、セツカもぽわんと心が温かくなるのだった。

 お汁粉タイムを経てもまだ元気があるユズリノとシャーマインは、休憩もそこそこに福笑いに足を向ける。
 目隠しをするユズリノに、シャーマインは耳元でヒントを囁いて応援する。
 シャーマインの囁く声が色っぽすぎたせいか、ユズリノが仕上げた福笑いは、額に口があり目ははみ出ていて、2人で盛大に大笑いした。

 羽根つきで体力を使い果たした俊とネカットは、甘酒でゆっくり休憩。
 羽根つきでの興奮の反動か、ネカットは静かに何事かを考え込んでいるようだ。
 神妙な顔つきになったネカットに、俊は声をかける。
「……ネカ……?」
 するとネカットは顔をあげ、突然に
「来年はシュンのご実家に一緒に行ってもいいです?」
 なんて言いだす。
「俺の?」
 そう言えばここにくる前、実家の話をしていたっけ。
「はい、シュンのお家に行ってみたいんです」
 ネカットはそう言って笑顔を作っているものの、単に「行ってみたい」という好奇心だけではないように思う。
(実家で何かあったのかな……?)
 しかし俊は深く追求しなかった。
 いずれ時が来れば、ネカット自ら話してくれるだろうから。
 俊はその時を待つことにした。



依頼結果:大成功
MVP
名前:俊・ブルックス
呼び名:シュン
  名前:ネカット・グラキエス
呼び名:ネカ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月31日
出発日 01月06日 00:00
予定納品日 01月16日

参加者

会議室

  • [4]セツカ=ノートン

    2017/01/05-19:28 

    あけましておめでとうございます、皆様、宜しくお願い致しますねっ。わ、是非是非、僕の方も、絡みOKって書いておきます!

  • [3]ユズリノ

    2017/01/05-12:26 

    僕等も、あけおめです!

    羽根つきメインで一通り遊ぶ感じです。
    お汁粉ー♪

    可能なら皆さんと絡み歓迎とプランに入れさせて貰いました。
    絡みがありましたらよろしくお願いします!

  • [2]俊・ブルックス

    2017/01/04-13:42 

    ネカット:

    あけおめーです!ネカさんとシュンですよ。
    せっかくですし、あくちぶな遊びに挑戦してみたいですね。
    それではよろしくお願いします。


PAGE TOP