プロローグ
新年あけましておめでとうございます。
あなたは今日、早速、神社に初詣に来ています。精霊も一緒です。
「せっかくだから、去年に貰ったお守りやお札を持ってきたの。おたきあげしてもらうんだ」
「なるほどな~俺も持ってくればよかったかな」
精霊は可愛い晴れ着姿のあなたを見て満足な様子。あなたも、新年早々、精霊とデートですからテンションは上がり気味です。
そうして、おたきあげの火の方へ向かったところ--。
神社の境内の一角で、準備をしていた直衣姿の神職の人間達がすっかり困っている様子。たきあげの周囲を行ったり来たりしながら、何とか火をつけようとしている様子です。その周囲には困惑顔の参詣客。
「??」
「どうしました?」
あなた達は神社の職員に声をかけました。
「ああ! あなた達は、もしかしてウィンクルムの方々!?」
「はい、そうですけれど……」
精霊が驚きながらも返事をします。
「実は、古いお守りや人形の瘴気が強すぎて、清めの火がつかないのです!」
「はあ」
「それで、ウィンクルムの皆様に力を貸していただきたい! この強すぎる瘴気を何とか弱めて欲しいのです!」
「はい。それは力になれるならそうしますけど……具体的にどうすれば?」
「ここで、強い愛のパフォーマンスをしてください!!」
「はあ!?」
「ウィンクルムの愛は浄化の愛! それはこれまでにも様々な事件で証明されてきました。あなたたちの愛が本物ならば、この瘴気も浄化されて、清めの火がつくはずです!!」
無茶苦茶ですが、神社の職員の顔は真剣そのものです。
しかし、初詣の参詣客でごった返す境内の真ん中で愛のパフォーマンスをやれって……。
「何をやればいいんだ? キスとか……? ハグとか……?」
精霊は呆然とそう呟いています。
「手を繋ぐのがせいぜいだよ~~!!」
あなたは顔が真っ赤になってもう涙目。
でも、大勢の人間が困っている様子なのは確かです。瘴気だってウィンクルムとして放っておけないでしょう。
さあ、あなたたちはどうしますか?
解説
おたきあげの火のために、神の前で新年一発の愛のパフォーマンスをしてください。
愛が高まれば、無事に火がつく事でしょう。
愛のパフォーマンスは、具体的にはどんな形でもOKです(公序良俗に反する事は出来ません)
キス、ハグ、頭ぽんぽん、告白、愛を叫ぶ、愛を歌う、愛を踊る、何でもOK。一時的に場所を離れて何かアイテムを持って来たり準備して(例えばプレゼント交換など)愛をパフォーマンスしても構いません。
これぞ自分達の愛の形だ! というものならば公序良俗に反しない限り何でもありです。
基本的に個別エピソードですが、ウィンクルム仲間と愛の連携というような形で、合流しながら行っても構いません。
※おたきあげの依頼料で300Jrかかりました。
ゲームマスターより
新年早々火のように熱いウィンクルム達が見たいです。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)
あ、愛のパフォーマンスですか…!? なんだか前にもこんなことがあったような。 随分昔の事のように感じますね。 あの時はトランスでしたので頬にキスだったのですが…。 今はイヴェさんとの関係も随分変わりました。 イヴェさんはウィンクルムのパートナーとしてだけなく本当に大切な人になった。 この間はいっそ俺の事だけ考えればいいって言ってくれた。 …そんなこと言われたら私…本当に貴方の事だけを考えてしまいますよ? 「イヴェさん」 (背伸びで不意打ちキス) 「今年も…いいえ、これからもよろしくお願いします」 この思いで私は強くなることを誓います。 ふふ、イヴェさんびっくりしてる。自分からはなかなかできなかったけど。今日からは…。 |
Elly Schwarz(Curt)
瘴気とはどのくらい強いものなのでしょうか? 皆さんが困ってしまう程…どのような事で浄化されるのでしょう(悩 ・いつも通りからかわれてしまい、少し悔しくなる ・今回は自分から仕掛けてみようかと勇気を振り絞る ち、近い…で、ですね!? そ、それはそそそうなんですが!! (この笑みは絶対意地悪な時の笑み!ぐう…) ぼ、僕だってからかわれてばかりではないですよ! (そう言って背伸びをしつつ彼の唇へキスをする) ・おたきあげ後 ・ただただ凄く恥ずかしい く、悔しいですが…これが今の僕の精いっぱいです。 クルトさんの事は好き…ですが やはり人前は、ははは、恥ずかしいのです! (いつもサラッとやってしまうクルトさん、本当…凄いです…) |
桜倉 歌菜(月成 羽純)
愛のパフォーマンス(硬直 でも、困ってる皆さんの為にも何とかしないと… は、羽純くん! 名前を呼び彼を見上げて (私にできる事と言ったら…想いを告げるくらいしかないから) 私…羽純くんが…好きです 羽純くんが傍に居てくれるだけで、心が温かくなって…幸せだなぁって思うの 羽純くんの笑顔が好き 優しい声が好き 大きな手も広い背中も… 貴方の全部が…大好き、です 言い終えたら、顔から火が出そうで…思わず俯いて深く息を吐き出して… こ、これで瘴気も浄化されてる…かな? 顔を上げた瞬間、羽純くんの眼差しとその言葉に息も出来ないくらいに… 私も羽純くんに連れ去られたい… 最初はどうしようかと思ったけど…羽純くんに想い伝えられて良かった |
和泉 羽海(セララ)
(逃げたい帰りたい消えたい…! 無理無理無理、こんなこんな大勢の注目浴びるのも嫌だし まして、あ、愛…とか…ぜっっったい無理だから…! なんでこの人こんなやる気なの…?! ………よし、逃げよう な、なにもしなくて良いって…それはそれで怖いけど…… みんな…困ってるし…少しだけなら……がまんがまん…! ぎゅっと目を閉じて構えるも、一瞬で終わってしまって拍子抜け 『…え、それで終わり…?(口パク そ、そっか…… 恥ずかしいけど…内容は…いつも言われてる事だから…慣れてるっていうか… (耳打ちの言葉に)~~~っ!!(赤面して逃走 ……あ、あんなこと…言うとか……信じられない…! お、追いかけてこないで……神さま助けて…! |
ツェリシャ(翠)
へえ、愛で浄化ができるとは ウィンクルムってすごいですね 大丈夫です、わかっていますよ 愛のパフォーマンスをすればいいんですよね 何か案はありますか? それは確かに。翠さん奥手そうですもんね しかし、やらなければ解放されそうもありません 覚悟決めていきましょう。これも人助けです 大丈夫です、目を瞑っている間にすみますから じりじり近寄りがばっと抱きつく 終わったら離れ 翠さん心臓の音すごく早かったですね それにしても細いとは思ってましたが、案外筋肉はあるんですね フード引っ張り顔隠し 今はちょっとこっち見ないでください 大丈夫かなと思ったんですが、意外とあれですね 口調は淀みないが手は離さない お互い無言のまましばし立ち尽くす |
●Elly Schwarz(Curt)編
今日、Elly Schwarzは精霊のCurtとともに、最寄りの神社に初詣に来ています。エリーはおたきあげをするつもりだったのですが、神社の職員から、おたきあげの火がつかないと言われてしまいました。しかも、職員から瘴気を消すために愛のパフォーマンスをして欲しいと頼まれたのです。
「瘴気とはどのくらい強いものなのでしょうか? 皆さんが困ってしまう程……どのような事で浄化されるのでしょう」
エリーは悩んでしまいます。
「ふん……」
精霊のクルトの方は、よく読めない表情になっています。
(妙な事に巻き込まれてしまったが……まぁ、有言実行のチャンスが来たと思えば……俺がエリーをどのくらい思っているか……思い知らせてやれそうだ)
クルトは不敵にそう思うと、エリーの事をからかい始めました。
「余程のラブラブじゃないと火なんてつかないんじゃないか? 真面目過ぎて行方不明になるようなお前には、何が出来るかな。俺は平気だけどな。お前には無理無理」
根底にあるのは愛情であって、いじめてやろうというものではなく、あくまでいじりのレベルではあったのですが、エリーだっていい気持ちはしません。
クルトの言う事は本当だけれど、少し悔しくなってきました。
「瘴気を浄化する為に俺達の愛、見せなきゃだろ?」
クルトはむっとしているエリーを積極的に抱き寄せました。
「ち、近い…で、ですね!? そ、それはそそそうなんですが!!」
(ふ……困ってる困ってる)
エリーの反応に、クルトは笑みをこぼします。
(この笑みは絶対意地悪な時の笑み! ぐう……)
エリーは赤面しつつ悔しさから反撃に出ます。
「ぼ、僕だってからかわれてばかりではないですよ!」
そう宣言すると、エリーは背伸びをしながら、彼の唇へとキスをしました。
クルトはエリーの予想外の行動に固まってしまいます。
勿論触れるだけのキスです。でも、それはエリーの大きな進歩でした!
(いい、今、エリーから??)
クルトは今の出来事に対して半信半疑です。
その二人の行動により、おたきあげの火は無事に点火されました。エリーは持ってきた古いおみくじなどを焚いてもらう事が出来ました。
しかし、そうした行事に参加しながらも、ただただ凄く恥ずかしくて、ずっと真っ赤になって下を向いていました。
「……ふ、やれば出来るんじゃないか。……少し驚いた」
そんなエリーにクルトは話しかけました。驚きはあるものの、彼はいつもの冷静さを既に取り戻していました。微かな笑みも浮かべるほどです。
「く、悔しいですが……これが今の僕の精いっぱいです。クルトさんの事は好き……ですが、やはり人前は、ははは、恥ずかしいのです!」
エリーは顔を抑えるようにしながらそう言いました。
(いつもサラッとやってしまうクルトさん、本当……凄いです……)
その言葉は胸に隠しながら、目を閉じて唇を噛むエリーでした。
(その言い方だと人前じゃなければいつでも……に聞こえてならないが、まぁ……それはあとの楽しみにとっておこうか……)
クルトはエリーからの天然の誘惑に負けそうになりながらも自分を押しとどめます。ただ妖しい笑みを浮かべて彼女を見守り、固まっている手を取って一緒に歩き出しました。
「どこへ?」
「部屋へ行こう。外は寒い」
妖しい笑みでからかうように告げて、クルトはエリーを二人だけの場所に連れて行こうとしています。エリーは戸惑いつつも疑うようなそぶりは見せず、ただ手を引かれてクルトについていくのでした。
自分の気持ちを出していきたい、自分の気持ちを分かって欲しい……。クルトのそうした想いは、少しずつでも表現されていくのかもしれません。そして、エリーも、再び彼と会う事が出来たのだから……彼の気持ちに正直な答えを示していくのでしょう。
●淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)編
今日、淡島 咲は、精霊のイヴェリア・ルーツとともに、最寄りの大きな神社に来ています。古いおみくじや札をおたきあげしてもらう予定だったのですが、神社ではおたきあげの火がつかずにトラブルになっていました。
そこで、神社の職員から咲達は、愛で浄化して欲しいと頼まれてしまいました。
「あ、愛のパフォーマンスですか……!?」
これには咲もびっくりしてしまいます。
(おたきあげの火がつかないか……それは困ったな)
イヴェリアもウィンクルムとして瘴気をなんとかしたいと思います。それとは別に、咲の様子も気になってそわそわしながら彼女の事を見てしまいます。
咲はそんなイヴェリアの方を振り返ります。
「なんだか前にもこんなことがあったような。随分昔の事のように感じますね。あの時はトランスでしたので頬にキスだったのですが……」
「前?」
イヴェリアはちょっと驚いたように目を見開きました。
勿論、忘れた訳ではありません。
かつて、神楽殿の舞台の上で、咲とトランスのために頬にキスをした時の事を。あのとき二人を包んだ蒼い光は、今でもイヴェリアの瞼に焼きついているのです。
(あぁ、あの時はサクに触れられるという事がすごく嬉しかったな。あの頃はまだ俺の片思いだったようなものだし。俺にとっては初めて好きになった人だったからなどんなふうにすれば触れられるのか分からなかったからな。きっかけとしてはありがたかった……)
イヴェリアは胸の中であのときの二人を振り返ります。
それから様々な経験を積み重ねて、二人の心は寄り添い繋がったのだけれど、当時の初々しい自分達の事も懐かしいのです。
「イヴェさん」
そのとき、咲に声をかけられてイヴェリアははっと現実に戻ります。
その途端に、咲の唇がイヴェリアの頬をかすめ、不意打ちのキスをしました。
「…!? サク!」
不意打ちにキスされて驚くイヴェリアです。
「今年も……いいえ、これからもよろしくお願いします」
咲はやや緊張した表情でそう言いました。
(この思いで私は強くなることを誓います)
その言葉は胸の中でだけ告げているのです。
イヴェリアはしばらくぼんやりしていました。
咲からのキスが本当に嬉しかったのです。
思いが通じ合っている事を心から実感しました。
「サクが俺だけを見てくれるなら俺はサクだけを見る。いやもとからサクだけしか見ていなかったが。今年も、来年もその先もよろしく頼む」
そう告げると、イヴェリアは咲の事を腕の中にぎゅっと抱き締めました。
(ふふ、イヴェさんびっくりしてる。自分からはなかなかできなかったけど。今日からは……)
咲もイヴェリアの背中に腕を回して抱き返します。
そんな二人の横でおたきあげの火がボっと点火されました。愛の力で瘴気が浄化されてしまったのです。
それを見て火を待っていた人達からわっと歓声が上がり、咲とイヴェリアは拍手を受けてしまいました。
「え、え……ええと」
咲は慌ててイヴェリアから離れようとします。イヴェリアは惜しそうに咲から手を離しました。
(意識しすぎて失敗する事が多いから、今年こそはと思ったのに……)
照れくさくて目をそらしてしまいながら、咲自身も惜しい気持ちでいます。元々、瘴気の浄化のためとはいえ……イヴェリアの言葉は本気だと分かっていましたから。
「ママ! あのウィンクルム、とても素敵だね!」
そんな咲の耳におたきあげの周りから子どもの声が聞こえてきました。その言葉で思わず口元を綻ばせ、咲とイヴェリアは視線をかわします。
「……意識しすぎないで、俺達は、俺達らしいつながりを育てていこう。サク」
「はい、そうしましょう」
●桜倉 歌菜(月成 羽純)編
今日、桜倉 歌菜は、精霊の月成 羽純とともに、最寄りの大きな神社に来ています。歌菜は古いおみくじやお札を持って、おたきあげで燃やしてもらう予定でした。ですが、肝心の神社のおたきあげの火がついていません。瘴気のせいでトラブルが起こっていたのです。しかも、歌菜と羽純は職員から、瘴気の浄化のために愛のパフォーマンスをしてくれと頼まれてしまったのです。
「愛のパフォーマンス」
歌菜は硬直してしまいました。羽純は固まっている歌菜が可愛らしいと思い、彼女が何をするのか黙って見守る事にしています。
(でも、困ってる皆さんの為にも何とかしないと……)
熱血漢の歌菜はそういう考えに至ります。
「は、羽純くん!」
歌菜はその名を呼んで、彼の事を見上げました。
「私……羽純くんが……好きです」
(私にできる事と言ったら……想いを告げるくらいしかないから)
「羽純くんが傍に居てくれるだけで、心が温かくなって……幸せだなぁって思うの。羽純くんの笑顔が好き。優しい声が好き。大きな手も広い背中も……貴方の全部が……大好き、です」
羽純は歌菜に名を呼ばれて、彼女を見て、心臓が止まるかと思ったのでした。
(歌菜は自分の言葉にどれだけの威力があるのか……自覚がなさすぎる。完全にしてやられた)
羽純はそう実感しました。
そのとき歌菜がうつむきました。羽純は良かったと思いました。これで、自分が赤くなっている事に気づかれずにすんだのです。
瘴気の浄化の事は別にしても、自分も何か言わずにはいられないと思いました。
歌菜は言い終わった途端に、顔から火が出そうで、思わずうつむいて深く息を吐いていました。
「こ、これで、瘴気も浄化されてる……かな?」
「俺も……歌菜が好きだ」
二人の声が重なりました。
歌菜は顔を上げた瞬間、羽純の眼差しとその言葉に息も出来なくなりそうです。
「歌菜の笑顔も声も、優しい手も……何もかもが愛おしい。お前が傍に居てくれるだけで……俺は強くなれる。歌菜と出会うまで知らなかった。俺がこんなに欲深い人間だとは……歌菜のすべてが欲しい」
歌菜は羽純の言葉に現実感をなくしてしまい、まるで夢の世界に踏み込んだように、頭がぐらぐらしてきました。
「俺はお前を……連れ去りたい……」
羽純はそう告げて、歌菜の事を抱き締めました。
歌菜は息が止まってしまいます。
「歌菜の想いを聞けて……俺も嬉しい。得したなんて言うと罰当たりだな……」
羽純の息づかい、羽純の匂いをこれ以上なく近くに感じながら、歌菜はまた目眩に襲われます。
(私も羽純くんに連れ去られたい……最初はどうしようかと思ったけど……羽純くんに想い伝えられて良かった)
本当は口に出してそう伝えたかったのですが、歌菜は幸せな目眩に襲われ、息も止まっているような状態ですから、微かに呻くような声を立てるのみです。
そうこうしているうちに、おたきあげの火はしっかりとつけられました。
瘴気が浄化されて清らかな火が燃え上がり、人々は歓声を上げています。
その声で羽純は我に返り、きつく抱き締めていた腕を緩めました。歌菜も大慌てで羽純から離れ、慌てて真っ赤になった頬を両手で押さえます。
「ありがとうございます。--おかげで火がつきました! ウィンクルムの皆さんの愛の炎には負けますが!」
神職の男性が満面の笑みでそう言い切りました。羽純は上手に言葉を合わせてお礼に返答していますが、歌菜は穴があったら入りたい心地です。
(し、新年早々……羽純くんに気持ちを伝えられたのは嬉しいけれどっ、今年はどんな年になっちゃうの?)
そんな歌菜を羽純は振り返ってくすっと笑います。
「今年も、俺達の愛の力で、オーガを討伐しような。神社の瘴気も払えるんだから、大丈夫だろう」
そう。二人の愛の力なら、出来ない事なんてないのです。
●和泉 羽海(セララ)編
今日、和泉 羽海は精霊のセララとともに神社に初詣に来ています。おたきあげにしてもらうおみくじなどがあったのでした。
(羽海ちゃんの晴れ着姿が見れるなんて…! 超貴重! 超かわいい!!)
セララは羽海の姿を見られただけでもう既に上機嫌でした。
羽海はおたきあげの場所に向かいましたが、瘴気のせいで火はついていませんでした。それどころか、二人は瘴気を浄化するために愛のパフォーマンスをしてくれと頼まれてしまったのです。
「愛を叫ぶならオレに任せて!! オレ達の愛を神様に見せつける時が、ようやく来たよ!」
セララはますますハイテンションです。
(逃げたい帰りたい消えたい……! 無理無理無理、こんなこんな大勢の注目浴びるのも嫌だし、まして、あ、愛……とか……ぜっっったい無理だから……!)
羽海はセララとは正反対に、気分は真っ逆さまで最低です。
(なんでこの人こんなにやる気なの……?)
神様に愛を見せつけるなどと大喜びのセララに、羽海は疑問の瞳を向けます。
(とはいえ、こういうの羽海ちゃん苦手だよね~。顔色真っ青だし……あ、逃げそう)
セララはセララで顔面蒼白になっている羽海の方を振り向きました。
(………よし、逃げよう)
セララと目が合った羽海は、自分の気持ちが全然分かってくれていない事を悟り、そのまま背中を向けて逃げだそうとしました。
「待って待って、逃げないで! 何もしなくていいから、少しの間だけ我慢して!!」
セララは大慌てで羽海の振り袖の袖をつかんで逃げるのを止めます。
(な、なにもしなくて良いって……それはそれで怖いけど……みんな……困ってるし……少しだけなら……がまんがまん……!)
高価な着物の袖が破けてしまっては大事ですから、羽海は仕方なく立ち止まって、顔面蒼白のままその場は耐える事にしました。
その羽海の動きを見届けたセララは、大きく深呼吸をし、息をため、胸を張って最大限の大声で神様に向かって叫びます。
「オレは、羽海ちゃんの事が、大好きです!!!」
ぎゅっと目を閉じて身構えていた羽海は、その一瞬で終わった事に気がついて、拍子抜けしてしまいました。
『……え、それで終わり……?』
羽海は口パクでそう尋ねました。
「え、だって、これがオレの心底正直な気持ちで、一番伝えたいことだよ??」
セララはキョトンとしてそう言いました。
(そ、そっか……恥ずかしいけど……内容は……いつも言われてる事だから……慣れてるっていうか……)
羽海はいくらか安心したのでした。
(キスやハグは二人きりの時にね……?)
そんな羽海の耳元に、セララはこっそりと告げたのでした。
「~~~っ!!」
その耳打ちの言葉に絶句して、羽海は真っ赤になるとその場から逃走してしまいました。
「ねぇ皆見た?! あの照れた顔!! 新年も相変わらず可愛い! やばい!! 鼻血でそう!!!」
そんな羽海を見ると、セララはおたきあげの周辺の人々を振り返ってそう叫んでは大興奮。
「ありがとう神様ー!」
その上、本殿の方に向かってまた大声でそう叫び、羽海の事を追いかけて走り出しました。
ぽかんと見送る人々。
(……あ、あんなこと…言うとか……信じられない……! お、追いかけてこないで……神さま助けて……!)
晴れ着のまま全力疾走をする羽海。勿論、着物が重くてうまく走れません。きっとすぐにセララに追いつかれてしまう事でしょう。
残された人々は呆然としていましたが、神職が試してみるとおたきあげの火はちゃんとつきました。こんな二人ですが、愛は愛として育っている模様です。
●ツェリシャ(翠)編
今日、ツェリシャは精霊の翠とともに、神社の初詣に来ています。ツェリシャはおたきあげをしてもらおうと、古いおみくじなどを持ってきたのですが、瘴気のトラブルでおたきあげの火はついていませんでした。その上、二人は職員に浄化のために愛のパフォーマンスをして欲しいと頼まれたのです。
「へえ、愛で浄化ができるとは、ウィンクルムってすごいですね」
ツェリシャは軽く目を見開いてそう言いました。
「すごい他人事みたいに言ってるけど、ウィンクルムって僕達だからね……?」
翠は今の状況に対しても、ツェリシャの反応に対しても、困惑している様子です。
「大丈夫です、わかっていますよ。愛のパフォーマンスをすればいいんですよね。何か案はありますか?」
状況にうろたえる事もなく、ツェリシャは翠を振り返りました。
「愛、となるとちょっと……連想出来る事はあるけど、僕達でやるとなると、その、恥ずかしいよね」
ツェリシャの方をちらちら見ながら翠は言います。
「人も多いし」
そう言って翠は周囲の人々を見回して、改めてより緊張してしまいます。
「それは確かに。翠さん奥手そうですもんね」
ツェリシャは納得したように頷きました。
「しかし、やらなければ解放されそうもありません。覚悟を決めていきましょう。これも人助けです」
きっぱりと言うツェリシャです。
「覚悟……、やる事なににするか決まった?」
「大丈夫です、目を瞑っている間にすみますから」
ツェリシャは自信を持って頷きます。
その態度から翠は余計に不安を感じました。
「待って、その台詞は何だか不穏なんだけど一体何を……!」
にじり寄ってくるツェリシャから翠はじりじりと後退して警戒します。
ツェリシャはツェリシャでじりじりと翠に近づいていき--がばっと抱きつきました。
抱きつかれて翠は頭が真っ白です。
手が空をさまよったまま硬直しています。
ツェリシャはひとしきり翠を抱き締めると、離れました。
「翠さん心臓の音すごく早かったですね。それにしても細いとは思ってましたが、案外筋肉はあるんですね」
翠は彼女の声をかけられてからはっと気がつきました。
「そりゃ早くもなるよ」
抗議をするように返事をしてツェリシャを見ます。
するとさっと顔を隠されてしまいました。
「あれ?」
ツェリシャはフードを引っ張り顔を隠します。
「今はちょっとこっち見ないでください。大丈夫かなと思ったんですが、意外とあれですね」
翠はツェリシャの顔のフードを引っ張る手が、普段の白さよりもほんのり赤い事に気がつきました。
ツェリシャも恥ずかしかったのだと分かって、余計に余計に恥ずかしくなってしまいました。
彼は彼で顔を赤くしてうつむきます。
「意外とあれですね。悪くはないんですが……」
ツェリシャの口調によどみはないのですが、フードを握り手は離しません。
そのままお互い、無言になって、立ち尽くしてしまいました。
そのとき、神職の男性が試しにおたきあげの火をつけようとすると、ボッという音がして、火は無事に燃え上がりました。
わっと周囲から歓声が上がり、無事に新年に一度のおたきあげが始まります。
「ありがとうございます! ウィンクルムの愛のおかげで火がつきました!」
無言で立ち尽くしている二人にお礼を言う職員の人。
「お礼を言われるほどの事ではありません。大丈夫です大丈夫です」
ツェリシャはそう言ってフードで顔を隠したまま何故だか隅の方に。釣られて翠もツェリシャと一緒に隅の方に。
そのまま、古いおみくじをおたきあげの方に出せたのは、二人のハグを見ていた参詣客が全員いなくなった後で、だいぶ時間も経っていたと言う事です。
新年になり、天邪鬼で鉄面皮のツェリシャの知らない面を知った翠なのでした。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:和泉 羽海 呼び名:羽海ちゃ~ん |
名前:セララ 呼び名:アレ、あの人、セララ |
エピソード情報 |
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マスター | 森静流 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 12月28日 |
出発日 | 01月04日 00:00 |
予定納品日 | 01月14日 |