ふわふわに伝えること(草壁楓 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●ふわふわになる
 少しずつ寒さが厳しくなってきた冬の日の昼下がり、買い物を終え帰路についた。
「ただいまー」
 しかし返事はない……あなたは首を傾げつつ居間に入る。
 そしてその居間で目に留まったのはソファーの上に丁寧に置いてあるぬいぐるみ。
(このぬいぐるみ……うちにあったかな?)
 と少々思案してみるものの、あった記憶はない。
 パートナーが置いていったのかと手に取って抱きかかえてみる。
 よくよく観察していると、なんだかパートナーに似ているようにも見えてくる。
 なんだか可愛くてあなたはぬいぐるみに微笑みを向けた。
 家で一緒に食事をしようと思って買い物をしてきたのだが、居るはずのパートナーの姿はやはりない。
 どこかに出かけたのかな……そう考えながらそのままぬいぐるみを抱き締める。

 その数分前、家で買い物に行ったパートナーを待っていた。
 そう待っていたのだが……少し喉が渇いてきたので昨日試供品として配られていた清流飲料水を飲んだ。
 とても軽率、そう、こんな展開今まであったはずだと誰かにつっこまれてもいいほどに。
 するとやはり突如眠気が襲ってきてほんの少しだけ眠ってしまった。
 ほんの数分だった……起きなければと身を起こそうとしたが、なぜか体がいうことを利かない。
(おかしいな……起きれない?)
 なんだか視界もおかしい気がして辺りを見回そうとしたがそれもできない。
(あれ?)
 回りの風景といえば大きな、それもかなりの大きさの板が前にあること。
 それ、机です。
 それしか見えない。
(えっっっ!!!!)

解説

●状況とできること
  パートナーがぬいぐるみになってしまっています。
  ぬいぐるみになってしまった方はその効果が切れるまで何もできません。
  出来るといえば、考えることや思うことだけです。

  また、なっていない方はそのぬいぐるみを好きに扱ってかまいませんが、破いたり
  どこかのパーツを取るなどの壊す行為は禁止とします。
  人でやったら大惨事どころか大事件の勃発です!!!
  できるだけ丁寧に扱ってあげてくださいませ。
  もちろんパートナーの薬の効果が切れるまで本人だとは気付いていません。

  解けた後も描写致しますので、その後どうなったかも記載してくださいませ。

 ●書いていただきたいこと
  ・どちらがぬいぐるみになったか
  ・ぬいぐるみに何かをしたり話したりするか。
  ・ぬいぐるみになった方はどんなぬいぐるみで、パートナーに何かされたことで何を感じたり思ったり考えるか。
  ・ぬいぐるみの効果が解けた後お互いどうしているかどんな会話をするか等
 
 ●注意
  ・公序良俗に違反する内容は描写できかねますのでご注意ください。
  ・アドリブが入る場合がございます、NGな方はプランに『×』とお書きください。
 
 買い物してきていますので300ジェールいただきます。

ゲームマスターより

 ご閲覧ありがとうございます!
草壁 楓でございます。

 寝てもよし、抱っこするもよし、愚痴吐いてもよしです。
普段話せないことや、お好きなことをしてください。
薬の効果はそのうち消えます!後遺症もありません。
ジャンルはコメディーですが、プラン次第ではコメディーにもなったり切なくもなったり、ラブラブしたりとさまざまになりそうで執筆が楽しみです。
それではご参加お待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  白もふもふのシマエナガのぬいぐるみ

…えっと?
状況がよくわからない
動く事もできず焦りだした頃に抱え上げられ、目の前に天藍に顔
彼の瞳に映る丸い物体に唖然
…これって私ですか?

天藍に抱き締められるというか両腕に抱え込まれ聞こえる小さな呟き
私はここに居ます、天藍にお帰りなさいって言いたかったんです
伝えられない事がもどかしい

我に返ると天藍の膝の上に座っている
あ、戻れました
あっけにとられる天藍に顛末説明

えっと、お帰りなさい
私が遅くなった時は天藍が待っていてくれると思うのも嬉しいですし
前と違って暗い家に帰っても天藍がこの後帰ってくると思うと嬉しいんです
1人だと思いこぼした呟きを聞かれ照れる様子の天藍抱き締める


八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
  家の事務所に置かれたぬいぐるみを発見
アスカ君に似てる?
お父さんの趣味のアンティークにも思えないし誰かの落とし物かな
事務所に置いておくのも何だから、とりあえず私の部屋にでも

持ち上げてみて手触りに驚く
何これ…ふかふか…気持ちいい…!
思わず抱き締めて頬ずり
しばし堪能した後はっと我に返り
こ、こんなことしてる場合じゃなかった…
念のため周囲を見回し確認後、部屋へ

メールで聞いてみたけどお父さんも知らないみたい
持ち主が見つかるまではここに置いておこう
私の部屋、本だらけで散らかってるけど
この子に似合いそうな小物とか揃えた方がいいかな?
ふふ、しばらくの間よろしくね

え?え?アスカ君!?それじゃさっきの全部聞こえて…


シャルル・アンデルセン(ノグリエ・オルト)
  ぬいぐるみ

あれ…いつもと視点が違うような。
…ノグリエさんが来ました…どうやら私はぬいぐるみになってしまっているようですね。

う~ん、確かにどなたかにものを貰うっていうのはあまりありませんねぇ。ノグリエさんが買ってくださるもので事足りますし…。
それ以上のものを頂いたり。
お部屋の備品とかもノグリエさんが準備してくれたものですし。
それに、知らない人からものを貰っちゃダメだってノグリエさんに言われてますし。

わわ、ぎゅってされた。ノグリエさんは私のことぎゅってするのが好きなのかなぁ?私はされるの…好きだけど。自分からはあんまり
そうだ元に戻ったら私がぎゅってしたいな。

(おもいっきりハグ)
えへへ…ぎゅーです。


水田 茉莉花(八月一日 智)
  ほづみさんめぇ…間食買い出してきたら自分だけ逃げたなぁ!
マヌケな顔したこのぬいぐるみが身代りってゆーのかー!(投げる真似)

ふぅムカついてもしょうがない、やることやるか
『チーフ逃げました、Bシフトで作業進めます』っと送信
社内SNSに上げたから後はほづみさん決裁のを後回しにして進めるだけね
煮詰まると脱走する癖、伊東さんに聞いてて良かったわ

書類3つ決裁待ち
ほづみさんの宣伝動画撮影スケジュールは4時に変更
デバッグ作業は居残りしてもらうようにして…
『手が空きました、こっちができそうなことありますか』っと送信
はぁ、つっかれたー(机突っ伏し)

あれ?何だか胸の辺りがやけに苦し…ほづみさん?!
ソコに居たのかぁ!


時杜 一花(ヒンメル・リカード)
  ヒンメルさん?
…あら、こんなぬいぐるみあったかしら

可愛い、と抱き上げまじまじと観察
なんだかヒンメルさんに似ているような…
髪も目も一緒の色ね
ぐるぐる回しながら確認

それにしてもぬいぐるみもふわふわなのね
うさ耳を触りつつ微笑み
前に耳を触らせて貰った時も思ったけど、本当に素敵な感触ね
できればまた触らせて欲しいなって思うけど…
流石に本人にそんな事いえないし…
かわりに触らせてね、と夢中でもふもふ

戻り、しばし呆然とした後慌てて距離を取る
え、ヒンメルさんだったの…?
あの、もしかしてさっきまでの事を覚えていたり…
するわよね!わ、忘れて!

さ、触らない!その、さっきのも間違いというか…
羞恥心から真っ赤になって否定


●ふわふわ、モチモチ

「ほづみさんめぇ……間食買い出してきたら自分だけ逃げたなぁ!」
 水田 茉莉花は会社の中に八月一日 智の姿がないことを確認しながら智のデスクに近付きつつ歩いている。
 今姿の見えない智といえば――
(おれ、頑張るために試供品のエナジードリンク飲んだはずだよな?!)
 実はデスクにいるのである。
(寝ちまった上に気づいたら動けねぇってなんだよこれぇ!)
 智の前には自分の仕事デスク……疲れもあった。
 でも動けないとか……そこまでは……その前に視線もおかしい。
 ズカズカと茉莉花の足音が近付いてくる音がする。 
 智のデスクの椅子にはライオンの少しおとぼけな顔をしたぬいぐるみ。
 それを見て茉莉花は眉間に皺を寄せるとぬいぐるみを持ち上げる、少しイラついているため乱暴に。
(なんだいきなり持ち上げられ……み、みずたまり?)
 少しおとぼけな顔のぬいぐるみ……それは現在の智の姿。
「マヌケな顔したこのぬいぐるみが身代りってゆーのかー!」
 そう言いながら茉莉花は智ライオンを投げようとする。
(うわー、投げんなバカヤロー!)
 天井にまで届くほどに上げられたがそこでピタッと動きは止まった。
 どうやら投げる振りだったようだ。
(……せ、セーフ)
「ふぅムカついてもしょうがない、やることやるか」
 茉莉花は智ライオンを持ったまま自分のデスクへと向かう。
 椅子に腰を落ち着かせると、茉莉花は自分の膝の上に智ライオンを乗せる。
(ありゃ?みずたまりの膝の上?)
 柔らかい膝の感触はぬいぐるみになっても感じられる。
(イヤナンカコノ……地味に幸せなんじゃね?この感覚)
 ふわふわの雲の上にでもいるような感覚だ。
 パソコンのキーボードを打つ音がする。
「『チーフ逃げました、Bシフトで作業進めます』っと送信」
 少し小さい声を出しながら茉莉花はメールの送信ボタンを押す。
 智ライオンは茉莉花の様子をジッとして見ている。
「社内SNSに上げたから後はほづみさん決裁のを後回しにして進めるだけね」
 この後彼が戻ってきてからの仕事の進みを決めていく茉莉花。
「煮詰まると脱走する癖、伊東さんに聞いてて良かったわ」
(脱走する癖って言うな!いい空気を吸いに行くだけだっつーの!)
 茉莉花の発言を大いに否定したい智であるが、できないことが少し歯痒くなってくる。

「ほづみさんの宣伝動画撮影スケジュールは4時に変更」
(みずたまりってキリキリ仕事してたのな)
 それからも茉莉花はテキパキと仕事をこなしていっていた。
 普段では自分の仕事に手一杯で茉莉花をこんな近くで観察したことはなかったから。
(確かにおれの仕事溜まらなくなったし、定時で帰れること多くなったよな)
 茉莉花の手際の良さのお蔭で智は助かっていたことに気付く。
「デバッグ作業は居残りしてもらうようにして……」
(……スマホアプリのデバッグの時は無理だけど)
 この仕事になると徹夜になることも多いが、茉莉花のお蔭でそれも減っているように思う。
「『手が空きました、こっちができそうなことありますか』っと送信」
 テキパキと仕事をしている茉莉花はまたメールを送信。
「はぁ、つっかれたー」
 少し机に突っ伏すと、
(ああ胸の感触気持ちい……)
 智ライオンに胸がフワリと乗っかった。
 フワフワのモチモチの至福を――
 なんて考えてたらボンっという音とともに智ライオンは元の姿に……
「あれ?何だか胸の辺りがやけに苦し……ほづみさん?!」
 デスクの下のような茉莉花の膝の上のような位置に智出現。
「や、ヤァ、ミズタサン」
 どうしたらよいのか分からずとりあえず挨拶する智。
 驚きと共に椅子から立ち上がると智を見下ろす。
「ソコに居たのかぁ!」
「いやおれかくれんぼしてた訳じゃなくて」
 その茉莉花の形相に少しの冷や汗を浮かべつつその場から動けない智である。
 位置的に逃げることは不可能、しかも茉莉花に腕を掴まれた。
「逃がさぁん!!」
「って聞いてますぅ?!」
 その後智は茉莉花に監視されながら仕事をこなしていったのは言うまでもない……話しももちろん聞いてもらえずに。

●香りと理性

 アスカ・ベルウィレッジは困っていた。
 試供品で貰った飲み物を飲んだ途端全く動けなくなってしまったから。
 そんな時外から音がする。
(伊万里が帰ってきた)
 八神 伊万里は実家の探偵事務所に帰ってきたようだ。
「ただいまー」
(おーい!)
 って声が出せないし動けない!
 伊万里はどうやら今は誰もいないようだと部屋の中を進む。アスカは精一杯に声を出しているつもり。
 伊万里は辺りを見回すと椅子の上にちょこんと座っている黒猫のぬいぐるみに目が留まる。
「アスカ君に似てる?」
(似てるじゃなくて本人なんだよ!)
 本当に本人だと声を大にして言いたいのだが……声も出ない、動けない。
「お父さんの趣味のアンティークにも思えないし誰かの落とし物かな」
 まじまじと伊万里は顔を近づけ観察する。
 見れば見るほどにアスカにそっくりな可愛い黒猫のぬいぐるみ。 
(頼むから気付いてくれ!)
 残念ながら気付くことはない。
「事務所に置いておくのも何だから、とりあえず私の部屋にでも」
 ふんわりとやさしくアスカ黒猫を持ち上げる伊万里。
(部屋!?)
 アスカは伊万里が『部屋』と言ったことに驚きを隠せない、いや隠せている。
 同居して3年目経つがまともに伊万里の部屋を訪れたことはないアスカは内心気恥ずかしさが込み上げてくる。
「何これ……ふかふか……気持ちいい……!」
 持ち上げたことにそのアスカ黒猫の触り心地の良さに感動し、そのまま少し強めに抱き締める。
(……ってうわぁっ!?)
 予想していなかった伊万里の行動に焦りつつアスカの心情は尋常ではない。
(うわああなんかいい匂いする)
 その良い香りはアスカ黒猫の鼓動を早くさせる。
 そのまま頬ずりし、伊万里はそのふわふわを堪能する。
(こんな姿でさえなければ……なければ何するつもりだったんだ俺!)
 アスカも男である、ぬいぐるみになったとしても中身は男!
「こ、こんなことしてる場合じゃなかった……」
 自分の行動に伊万里はハッとして周りに誰もいないか念のために確認すると自室へとアスカ黒猫を抱えたまま向かった。

(ここが伊万里の部屋……)
 伊万里の部屋には良い香りが漂っていた。
 アスカ黒猫は視線を変えられないものの、伊万里の部屋をよく観察する。
(シンプルだけど雑然としてて生活感に溢れて……べ、ベッドに置くな!)
 観察しているとそのまま伊万里のベッドの上へと置かれるアスカ黒猫。
(ぬいぐるみで良かった、色々想像しちゃって理性が……)
 アスカの頭の中はいろいろと想像してしまう状態のようだ。
 好きな子の部屋でベッドの上となればしょうがないこと。
「メールで聞いてみたけどお父さんも知らないみたい」
 アスカ黒猫が理性を抑えている間に伊万里は父親にぬいぐるみの確認を行なったがどうやら知らないらしい。
「持ち主が見つかるまではここに置いておこう」
 事務所にあっては違和感もあるし、それに汚れてしまってはとも思いからである。
「この子に似合いそうな小物とか揃えた方がいいかな?」
 見れば見るほどにアスカに似ていて可愛いなと笑顔を向ける。
「ふふ、しばらくの間よろしくね」
 顔を近づけようとした時、ボンっという音と共にアスカ黒猫はアスカへと元に戻る。
「え?え?アスカ君!?それじゃさっきの全部聞こえて……」
 しばし硬直した後に思いっきり後ずさる伊万里。
「全然気づいてなかったな」
 アスカは伊万里を真っ直ぐ見る。
「そんなに恥ずかしいなら誰にも言わないでおくよ」
 少し余裕がありそうにしつつも、
(……俺も色々とギリギリだったのは黙っておこう)
 と理性のいろいろと想像したいろいろは隠す。
「えっと、さっきの黒猫はアスカ君で!?で……」
「だからそうだって」
 伊万里は頭の中が混乱してしまっているようだ。
 それでも今日のことはアスカから伊万里を更に深く知れた良い機会とそして理性への鍛錬にもなったようだ。

●うさ耳ふわふわ

(まさかこんな事になるとは……)
 ヒンメル・リカードは今後の事を思案をしている最中である。
 街で配られていた清涼飲料水を飲んだ、そこまでは良かったのだが……今は動けず視界も違う。
(一花さん気付いてくれないかな)
 思案していても、しょうがない、彼の神人時杜 一花ならば気付いてくれるかもしれないと一縷の望みを託してみる。
「ヒンメルさん?」
 託した途端に一花が現れた。
 居るはずのヒンメルがいないことに疑問符を浮べながら見回すが姿はない。
 その代わりに青いうさぎのぬいぐるみを見つける一花。
「……あら、こんなぬいぐるみあったかしら」
 可愛いと言いながらヒンメル青うさぎを抱きかかえる。
「なんだかヒンメルさんに似ているような……」
(似ているどころか本人だけど)
「髪も目も一緒の色ね」
 その色はどこもかしこもヒンメルと同じ色の青の瞳に青の毛並み。
(まあ、気付かないよね)
 どこもかしかも似ていることに一花は興味津々のようでヒンメルぬいぐるみをぐるぐると回しながらあちこち観察している。
 ヒンメルは目が回りそうで瞳を閉じたいのだが、もちろんできはしない。
(普段は警戒心をまだ感じるのに、ぬいぐるみの時は遠慮ないね)
 一定の距離を取られているように感じていたヒンメル、しかし今回は違う……近すぎる。
「それにしてもぬいぐるみもふわふわなのね」
 言いながら一花はヒンメル青うさぎの耳を優しく触りだす。
 耳を触られたことに一瞬ビクリとしたヒンメル……青うさぎなので動きはしないが。
「前に耳を触らせて貰った時も思ったけど、本当に素敵な感触ね」
 以前に耳に触れたことはあった、その時のふわふわの感触を忘れられず、
「できればまた触らせて欲しいなって思うけど……」
(ああ、たまに視線を感じるような気がしていたけどそういう事か)
 たまに耳に視線を感じていたのだが、これでその視線の意味が理解できたのだ。
「流石に本人にそんな事いえないし……」
(別に減るもんじゃないし、言ってくれれば触っても構わないけど……まあ、一花さんから言ってこないだろうなぁ)
 一花の性格を考えればヒンメル青うさぎには理解できた。
「かわりに触らせてね」
 優しい笑顔をヒンメル青うさぎに向けるとそのまま夢中でもふもふと耳を触りだす。
 
 どれぐらいもふもふが続いていたのだろう……。
 ボンっという音と共に目の前にヒンメルが現れる。
 その状況にしばし唖然とする一花。
「あ、戻った」
 自分の体を見回しながら元の姿に戻ったことに安堵するヒンメル。
「え、ヒンメルさんだったの……?」
 そんな飄々としているヒンメルを少し目を見開きながら一花は見つめている。
「よかった、ずっとこのままなのかと思った」
 ふぅ~と息を吐きつつ一花を見る。
 その表情に少し口角を上げて「僕だよ」と答える。
「あの、もしかしてさっきまでの事を覚えていたり……」
 呆然とし後ずさる一花に一歩近付きつつ、
「うん、ばっちり。僕の耳はどうだった?」
 頷き、自身の耳を触りながら尋ねてみる。それは少しのからかいの口調。
「するわよね!わ、忘れて!」
 明らかに混乱している一花である。
 ぬいぐるみが本人だとは知らずに本音を話していたのだから。
「えー、それは難しい相談だなぁ」
 そんな一花の提案は受け入れられないと両掌を上へと向けニコリと笑顔を向ける。
「耳、触ってみる?」
 なんてさらに意地悪そうに尋ねてみれば、一花は横に大きく首を振る。
「さ、触らない!その、さっきのも間違いというか……」
 拒絶するように今度は両手を顔の前で振るが、
「ぬいぐるみより実物の方がきっといいよ」
 といいながらヒンメルが「ほらほら」と耳を前に出しながら近寄ってくる。
 ふわふわとした耳を見ながら一花は自分の先ほどまでの行動を考えると顔はみるみると赤く染まっていく。
「遠慮しなくていいんだよ」
 ニッコリ、そうかなりなニッコリ。
「遠慮しまーす」
 猛ダッシュでその場からいなくなる一花。
 その後ろ姿を見ながらヒンメルは、機会があればまた耳を触らせようと思ったのだった。

●抱き締めたくて

(……えっと?)
 かのんは状況を把握できないで自宅にいた。
 動くこともはおろか声を発することも、何も出来ずにソファーの上に居る。
(どういうことでしょうか……)
「かのん?」
 そんな状況の時に天藍が帰ってきたようだ。
 部屋の灯りが点いていて暖房も入っていて暖かいのになぜかいない彼女。
 少し前まで人のいた気配もある…なのにいるはずの彼女がいない。
「かのん?」
 数回呼んでみるが返答はなかった。
 天藍は部屋の中を見回すとソファーの上にシマエナガのぬいぐるみを見つける。
 白いシマナガエ、鳥のぬいぐるみでふわふわとした羽がありまあるい体に瞳が愛らしい。
 瞳の色がかのんと同じ紫色で、かのんがそこにいるように感じ天藍は笑みを零す。
(……これって私ですか?)
 天藍の瞳に映る自分を見たかのんは内心驚いていた。
(えっと……確か試供品で飲み物を貰って、少し寝てしまって……)
 今までのことを思い返すとそこまでは覚えている。
 次に目が覚めた時は今の状態だった。
 把握はできたものの現状を受け入れることはできない。
 天藍はそのかのんシマエナガを優しく両腕で抱きかかえソファーへと腰を下ろした。
「……何だか少し寂しいな」
 小さくそっと呟く天藍。
 かのんシマエナガを少し覗き込み寂しそうな笑みを浮かべていた。
 明るい部屋の中で、温かい室内であっても、そこにかのんが居ないだけで1人残されたように感じる。
(私はここに居ます、天藍にお帰りなさいって言いたかったんです)
 かのんは苦しかった。
 今すぐにでもその寂しさを彼から取り除きたくて。
 もどかしいです……天藍……。
「これが暗く寒い部屋だったら……」
 今までかのんはこの家に1人で住んでいた。
 帰れば暗く寒い部屋、彼女は今までずっと今自身が感じているような思いをしていたのかもしれないと。
 少しかのんシマエナガを強めに抱き締める。
「これからの暮らしで、お互いの都合もあるだろうが、なるべくかのんが帰ってくる時に1人にしない」
(天藍……)
 その言葉にかのんは心の中で一筋の涙を流した。

 それから天藍はじっとかのんの帰りを待っていた。
 その手の中にかのんが居ることも知らずに。
 かのんシマエナガを覗き込めばそこにかのんがいるようで、その寂しさは少しは軽減されてはいる。
 そっと優しくかのんシマエナガを撫でると――
「!!??」
 ボンっと音を立て天藍の膝の上にかのんの姿。
「あ、戻れました」
「!!!???」
 かのんが突如現れたことで天藍は唖然としていた。
 そんな様子の天藍にかのんは事の顛末を話し出す。
 説明されたものの非現実的なことに天藍は何度も瞬きをしている。
「えっと、お帰りなさい」
 天藍の膝に乗りながらかのんは笑顔で彼にそう告げる。
 かのんがあの鳥のぬいぐるみ……ということは!!と天藍はハッとする。
「……ぬいぐるみになっていた間の事、覚えているの、か?」
 唖然とした表情を崩さずに今までのことを確認する天藍。
 ニッコリと返答するようにかのんは一つ頷く。
「私が遅くなった時は天藍が待っていてくれると思うのも嬉しいですし」
 今までの独り言に返すようにかのんはそう話しだす。
「前と違って暗い家に帰っても天藍がこの後帰ってくると思うと嬉しいんです」
 天藍の気持ちが嬉しかったからこそ、それにちゃんと返事をしたかった。
 笑顔を向けつつ話すかのんの言葉に天藍の顔は徐々に赤くなる。
 1人を寂しがっていた事を知られたかと思うと少し恥ずかしくて、でもかのんの笑顔から目は離せない。
「一緒にいましょう……天藍」
 かのんはぬいぐるみの時にやさしく抱き締められたいた時のお返しのように優しく天藍を抱き締める。
 今自分の顔が熱くなっていることに自覚のある天藍は、
「あぁ、もちろんだ」
 と言いながらその赤い顔を誤魔化すように抱き返した。
 赤い顔の天藍を可愛いと思いながら、少しの不安と寂しさを持った彼が愛しくてかのんは瞳を閉じた。
 これからも2人はこの温かい家で共に暮らし、そしてその温かい心でお互いを慈しんでいくことだろう。

●ギューっとさせて

(あれ……いつもと視点が違うような)
 シャルル・アンデルセンはいつもの自分の視点とは違うことに戸惑いながらも、状況を把握しようと努めていた。
(……ノグリエさんが来たようですね)
 ノグリエ・オルトの足音が近付いてきていることに気付き、どうにかしてもらえないかと考える。
「おや、こんなところにぬいぐるみが……シャルルが置いて行ったのでしょうか?」
 ノグリエは可愛らしい白い猫のぬいぐるみを見つけた。
(……どうやら私はぬいぐるみになってしまっているようですね)
「しかしこういったぬいぐるみをシャルルが持っているのをみたことはありませんし……誰かからもらった……?」
 自分があげた物でなければシャルルが買ったものではとも思うが、買ったのなら話しにでていても……そうなれば貰い物……誰から?
「……いけませんね…つい癖で。シャルルだって外に出たんです」
 昔と違いシャルルも外に出るようになったのだ。貰い物をしたって……。
(う~ん、確かにどなたかにものを貰うっていうのはあまりありませんねぇ)
 ノグリエの独り言にシャルルも考える。
(ノグリエさんが買ってくださるもので事足りますし……)
 ノグリエはシャルルに必要なものは与えてくれる。
「ボク以外の人間に何かを貰うこともあるでしょうし……こんな可愛らしいぬいぐるみなら……」
 ぬいぐるみをまじまじと見回して。自問自答は続く。心に少し靄が掛かるノグリエ。
(それ以上のものを頂いたり)
 それ以上のもの――それは愛。
 物とは計れないほどに彼から大きな愛情を与えられている。
「いやむしろだからこそ……」
 天井に付くぐらいに掲げられたシャルル白猫。
(お部屋の備品とかもノグリエさんが準備してくれたものですし)
 今いるのはシャルルの部屋、備品や家具全てにおいて用意してくれたもの。
(それに、知らない人からものを貰っちゃダメだってノグリエさんに言われてますし)
 だから今ノグリエが言っている言葉はけしてない事なのだとシャルルは否定したい。でもできない。
「しかしこのぬいぐるみどこかシャルルに似ていますね……可愛らしいのはもちろんですが雰囲気が」
 ノグリエはシャルルの瞳とこのぬいぐるみの瞳が同じ蜂蜜色の金色なことに気付く。
 ニコリと微笑みを浮かべシャルル白猫をそっと優しくその両腕に包み込んでみる。
(わわ、ぎゅってされた。ノグリエさんは私のことぎゅってするのが好きなのかなぁ?)
 ノグリエの行動に内心焦りつつもシャルルは彼の温かさを感じている。
「ふふ、ぬいぐるみを抱いているのにまるで本人を抱いているようですね」
(私はされるの……好きだけど。自分からはあんまり)
「抱き心地がいいところもそっくりです」
 本当にそっくりなぬいぐるみに不思議だと感じながらもそれをやめることはできない。
 抱き締められているシャルルはふと思う。
(そうだ元に戻ったら私がぎゅってしたいな)
 そう心に決めて、元に戻るのを待っていた。

 それからノグリエは抱き締め続けたが、微笑みを残してシャルル白猫をそっと椅子に置くと部屋から出て行った。
 それと同時ぐらいにシャルルはぬいぐるみから元の姿へとボンっと戻る。
「戻れました」
 自分の姿が戻ったことに安堵しつつ体に異変がないことを確認すると部屋を出て行ったノグリエを追った。
 部屋から出ればノグリエの後姿を捉える。
 小走りしたシャルルはその後ろ姿のノグリエを体一杯に抱き締める。
「おや?」
 いきなり抱きつかれたことに少し驚きつつもノグリエは微笑み浮かべる。
「シャルル、キミから抱き付いてくれるなんて嬉しいですね」
「えへへ……ぎゅーです」
 彼女の顔も笑顔に溢れる。
 ぬいぐるみの時のお返しというように。
 愛情溢れた2人はその抱き締めた腕を離すことなく、そして笑顔と微笑みの中で過ごしていくことだろう。



依頼結果:大成功
MVP
名前:かのん
呼び名:かのん
  名前:天藍
呼び名:天藍

 

名前:シャルル・アンデルセン
呼び名:シャルルorお姫様
  名前:ノグリエ・オルト
呼び名:ノグリエさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月27日
出発日 01月03日 00:00
予定納品日 01月13日

参加者

会議室


PAGE TOP