プロローグ
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そこに行くには険しい山道を歩いていかなくてはならない。
赤く美しい宝石を抱く果実を手に入れるために、それでも人々は登り続ける。
その果実は、試練を乗り越えて手に入れられるもののため、それを知る人々には“試練の果実”とも呼ばれている。
「という、まぁ秘境の果実っていうんですか? があるんですよ。
見た目は白い丸い果実なんですが、中を割ると真っ赤なガーネットみたいな種がありまして。
その種は硬くて本当に宝石みたいなんです」
でも、種というからには勿論植えれば育つという。
「ただ、育てるのは非常に難しいみたいですので、皆様持って帰ったらアクセサリーとかに加工しちゃうみたいですね。
ちなみに、果実自体は酸っぱくて食べれたものではないので、お気を付け下さい」
頑張れば食べれるかもしれないが、食べない方がいいだろうとのことだ。
「ちょっと……雪が深かったりしますので、防寒はしていってくださいね。
足首ぐらいまで埋まるとこもあるみたいです」
とはいえ、昔と違ってそこまでの道はある程度整備されているという。
そのため、足首ぐらいまで埋まっても大丈夫なような装備さえすればそこまで大変ではないだろうとのことだった。
「その木は頂上にありますし、せっかくですので、朝日をみるのもいいかもしれませんね~」
そこらへんは自分達の体力とかとご相談くださいと微笑まれる。
「頂上までは一時間半ぐらいでつきますよ。
朝日を見ないにしても、雪が積もった木々は美しいですからそれをみるのも良いと思います。
白い実と一体化してて、それを探しだすのも面白いかもしれませんね」
じゃぁ、頑張って! と送り出すのだった。
解説
個別描写になります。
また、山道部分は描写予定はありませんが、皆様のプレに準じます。
・山道
道は一応整備はされており、道から外れなければ迷う事はありません。
頂上に近づくにつれ足首ぐらいまで埋まる雪があります。
・頂上
試練の実がなる木々があります。
たっぷり雪が積もっており、雪が光に反射してきらきらしています。
また、白い実のため、近くにいかないとぱっとみ、実があるようには見えません。
・試練の実
丸い白い実。
中を割ると真っ赤なガーネットのような種が二つあります。
(親指の爪ぐらいの大きさのが二つ)
硬いため、そのままの形で例えば指輪にしたりピアスの一部につかったりするようです。
・山までくるために300jr使いました。
ゲームマスターより
雪山でのひとときは如何でしょうか……!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
李月(ゼノアス・グールン)
「…それ 途中で僕がギブしてお前におぶられるって意味か ?(半目 今の僕なら登り切れる!なめるなよ!! (気合 ご来光拝むべく夜登山 頂上 ぜーはー サムズアップで応える 「ゼノのサポートのおかげだ達成感最高ー!! 日の出は苦労の分感動 「今年の抱負でも叫ぶか? せーので 「もっとゼノと色んな事をしてゼノを知るぞー! 目を合わせ照れ臭く笑い、すりすり受入れ 完全という言葉はきっと僕のはっきりしない態度に対しての言葉 親友以上の好意を示す相棒に僕はいつまでも親友の態で接する 「答え出すから待っててよ 達成感解放感からなのかついポロリ 試練の実探し 苦労の末ゼノが見つけて2人で分けました |
むつば(めるべ)
頭はニットキャップから、足は膝までの長靴まで装備。 杖を片手に、その雪山を防寒具揃いでただひたすら行く。 それでも秘境の果実なるものがあり、朝日が拝めるとなると身が締まるゆえ。 時々、めるに疲れたかどうか尋ねる。 その度に木々にもたれたり、石等に腰をかけよう。 それ以外は、ひたすら歩くようになるが。 む? 雪が足首まで埋まるようになったのう……頂上が近いのか? (見えるかわからない山頂を眺める) 着いたか、長く感じたのう。 朝日が出ていたら、暫くそれを見ている。 そうでなければ先に、秘境の果実がなるという噂の木に近づき、 地面に実が落ちていないか探そうか。 が、如何なる酸味なのか、やはり気になる。 果実を一口齧ってみた。 |
●
さくさくさく、と雪の上を歩く音がする。
そこを静かに歩くのは、むつばとめるべの小さな姿だ。
長靴を履いた足を、一歩、また一歩と踏み出すその手には、杖があった。
雪で滑らないよう気を付けながらゆっくりと登って行く。
山登りということで、むつばは上はニットキャップに始まり、首元にはマフラー、コートに手袋、そして長靴……と防寒対策はしっかりとしていた。
その隣を歩くめるべも似たりよったりな恰好で、やはり同じようにその手には杖を持っている。
見た目こそ2人は少女と少年だが、年齢が年齢だったりするのだ。
出来るだけゆっくりと、でも間に合うようにと足を進めていく。
「める、疲れてはおらんか」
そう問いかけられためるべは視線を先へやり……白い道が延々と続いているのを瞳に収める。
まだまだ頂上が見えないことに小さく溜息をつく。
先はまだまだ長そうで、少々この身にはつらいきもした。
その様子に気が付いたむつばが視線をあちこちにやれば、少し先に雪を払えば座れそうな石があって。
「あそこで休憩はどうじゃ」
あぁ、それはいい。
2人、まずはそこを目指し歩きだすのだった。
休憩を何度か挟みつつ、2人は着実に足を進めていく。
木々もなんだかその身にまとう雪を増やしていっているようで。
言葉すくなに足を進めるむつばは、それもこれも秘境の果実なるものがあり、朝日が拝めるからこそ頑張れていた。
自分の身が引き締まり、まだまだ頑張れそうだ。
しかし、隣を歩くめるべはちょっと違うようで。
「しかも、お主にここを歩かせるとはのう。まさに秘境の卑怯な果実」
無言で歩くのはつまらない、と時折、辺りを見渡して思いついた駄洒落をむつばへと聞かせていた。
ちなみに、秘境の卑怯な果実、という単語にむつばは視線をちらりと寄こした程度で、これといった感想は伝えていない。
そうなると、むくむくと湧きおこるのは闘志。
「道には未知が秘められしもの」
白い道を見れば、その下に何があるかわからない、だからこその駄洒落なのだが。
答えはさくさくと歩く音のみ。
「山を歩くのも山々じゃ」
視線すら寄こさないむつば。
ぐっと言葉を飲み込み、さて、次は何にしようと辺りを見渡す。
駄洒落の元になりそうなもの……。
「ここを歩く中にある苦」
どやぁっとした彼に、やはりむつばは冷たかった。
いや、駄洒落には反応しなかったけれど、そこには思いやりがある。
「……める、少し休んだらどうじゃ」
上り坂になっていた箇所だ。
上体を起こし、ゆっくりと歩くめるべに気が付いていたむつばは言葉にせずとも案じていたのだ。
視線の先には、寄りかかれそうな木が。
朝日はみたいけれど、まだもう少し時間はありそうだ。
「あとどれくらいかのぅ」
ふっと白い息を吐いた後、木に寄りかかり体を預ける。
「さて? でもこれだけ歩いたんじゃ、そろそろ頂上も見えてくるころじゃろう」
そうじゃな、と頷きあい休憩したのちまた歩き出す。
再度歩きだした2人の歩みが遅くなってきた。
休憩をはさみながらだったから、体はそこまで辛いわけではないのになぜだろうと状況を把握しようと立ち止まる。
「む? 雪が足首まで埋まるようになったのう……」
思ってみれば、長靴が良く見えなくなっている。
ずぼっと足を抜いては踏み出す、そんな状況になったということは。
「……頂上が近いのか?」
じぃっと視線を凝らしてみるものの、残念ながらその先に終わりが見えることはなかった。
でも、確かな実感として、足元の雪は少々深い。
なるほどこのせいだったのだ。
「ふむ、むつ。思ってみれば木の上の雪も多くなったのぅ」
確かに雪をのせている木々は、どこか重そうにも見えて。
杖がとられぬよう、細心の注意を払いながらむつばとめるべは足を踏み出して。
「のぅ、むつ」
ちらりと視線を寄こしたむつばににこりと微笑み、先程思いついた駄洒落をその唇にとのせた。
きらきら輝く瞳。
「頂上は、山の超上段にある」
てくてくてくと歩くむつばはやっぱりなんの反応も示さない。
あともう少しだからといって、めるべは駄洒落をやめるつもりは毛頭なく、あちらこちらと視線を彷徨わせる。
「石の意志に任せる」
ぱさり、と雪の落ちる音が聞こえた。
それがツッコミですよ~といわんばかりで、ぐっとめるべの闘志にもっともっと油を注ぐ。
とはいえ、そろそろネタも山道も終わりに近づいているきがするのだが。
結局、めるべはその場に立ち止まり、不思議そうに此方をみたむつばへとどどーんと渾身の駄洒落を叩きつける!
「むつ、無視できるのは虫までじゃ!」
そう言い放ったのと同時に、むつばがほんのわずかに溜息をついたあと、ついっと視線を改めて道の方へと向ける。
その時になって、あ、とむつばが瞳を見開いた。
どうした? と彼をみたあと、めるべも同じように視線を向ける。
「どうやら頂上のようじゃな」
細い道が開けたようなそんな空間が見えていた。
体に力がみなぎる。
「それに……朝日にも間に合ったようじゃ」
まだ朝日を空は抱いてはいない。
心持ち、足を速めて向かっていく。
頂上は広く、秘境の果実をつけているという木々が出迎えてくれた。
流石にある程度整備されていて、今は雪に埋もれているようだがベンチなどもあるようだ。
朝日が昇っていれば先にそれを見るつもりだったけれどただ待つのも寒いし、せっかくの秘境の果実。
それを見てみたかった。
木の実をつけるという木々へ近寄ってみるが、目を凝らしても雪と同化してしまっているようでよく見えない。
下に落ちている実ならばと下に目を凝らしてみるが、どうやら雪が積もってしまったようだ。
窪みがないかとみてみるけれど、少なくとも、この木の周りにはないよう。
「ふむ……」
むつばが首を傾げれば、さらりと紫の髪が合わせて揺れて。
あちらにも行ってみようとめるべを誘う。
あちらこちらと彷徨って、ぱさりと雪が落ちた音に2人の視線がそちらを向く。
「むつ」
一緒に歩いていけば、今まさに雪の重みで落ちたのだろう、白い果実が目に入った。
さてはて、見つけた果実はとても美しく白く輝いてるようにも見えた。
その実はとても酸っぱいときいていた。
じっと実を見つめ、しばし考え込む。
聞いていたけれど、好奇心というものはそうやすやすと抑えられるものではない。
「…………」
かぷり、とむつばの美しい唇の中へ一口果実が入っていき……。
それを見れば、めるべだって我慢できない。
手に持った白い実へと視線を落とし、いざ!!
「わしもいただくぞ……」
体の中をつっきぬけていく酸味。
暴力的なまでの酸っぱさは、なんだかそれを痛みと誤解する程度には口の中にも流し込んだ喉も、胃にすらも色んな衝撃をあたえてくれた。
尻尾がぴーんとなってしまうのはしょうがないだろう。
「~~~~っっっ!!」
せめて水があれば、そう思ったのはどっちだったか、それとも2人ともか。
無言で肩を叩き合う様は美しい少女と少年が楽しげ(?)に戯れているようにも見えるが、A.R.O.A.職員がみたら、全力でとめていたかもしれない光景だ。
目が覚めるような酸っぱさだったとのちにめるべは語るが、なかなかにその酸味は消えてくれない。
なるほどこれは食べない方がいいと言われるわけだ。
わいわいと騒ぎ合って、その酸っぱさがどうにかこうにか、消えた頃。
はっとめるべが隣のむつばへと声を掛けた。
「むつ、朝日が昇っとる」
「あぁ……」
むつばがほぅっと感嘆の吐息を漏らす。
その視線の先には大きな朝日。
もっとよく見えるようにと視界が開ける場所まで移動して、地平線から上がっていた朝日を存分に視界へと収める。
目の前に広がる雪の白とそして朝日の赤に照らし出される山の木々。
時折飛んでいく鳥たちもどこか嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
どこか凛とした空気を吸いながら、雄大な景色に2人しばし何もしゃべらずただ静かに眺める。
体にじんわりと、力がみなぎってくるようだ。
「雄大な眺めじゃ、生きてる実感がするわい」
ふっとめるべが口元に笑みを浮かべる。
その視線の先には、赤く赤く空を染め上げて行く光。
空を染め上げて力強く昇っていく朝日は、生きているという実感を与えてくれるにふさわしい。
じんわりと暖かな日差しが、体の芯から……そして心までも温めてくれて。
そっと寄り添いあい、そんな光景を暫し2人は眺めるのだった……。
●
木の枝に積もった白い雪とさくさくと音を立てる道の雪は、月と星の下ぼんやりと淡く白く光り輝いてるように見えた。
この分だと、道を失うこともないだろうと安心して、ペース配分に気を付けながら歩いて行く。
さくさく、さくさく。
2人分の足音が雪山に響き、時折ぱさり、と雪の落ちる音と、動物だろうか?
かさこそと音が聴こえた。
防寒具をしっかり着込んだ李月は、そんな音を聞くともなしに聞きながら、同じように防寒具を着こんで隣を歩くゼノアス・グールンを見た。
彼はまだ終わりが見えぬ山道を見つめ、雪に足をとられぬよう歩いていて。
「……?」
李月の視線に気が付いたのか、ゼノアスの黒い瞳がアイスブルーの瞳とかち合う。
どうした? と声をかけられなんでもないと李月は首を振った後、視線を前へと向ける。
ご来光を拝むために日が昇らぬ夜のうちにこうして共に山頂へ向かっているのだがけれど、山頂に近づけば足首ぐらいまで埋まるという雪の量には達していない。
あと、どのくらいだろう……。
李月が空へ視線をやり、明るくなる前につけばいいけれど、と思う。
そんな様子を歩きながら見ていたゼノアスは、ふっと口元を緩めて李月へと話しかける。
「オレがいるんだ安心しろ」
にひひっと笑い声をあげてそういうゼノアスに、李月がじろっと半目で睨みつけた。
その視線からゼノアスは視線を逸らさない。
ちょっとだけ拗ねたような、そんな表情を浮かべる李月が可愛いな、と思うぐらいだ。
「……それ 途中で僕がギブしてお前におぶられるって意味か?」
ちょっと違う方向に心配したゼノアスに、ふつふつと湧き上がる思い。
じっとその黒い瞳から視線を逸らさないアイスブルーの瞳には、闘志が燃えあがっていた。
その闘志の炎を見つけ、ゼノアスの瞳が楽しげに細められる。
「今の僕なら登り切れる! なめるなよ!!」
そう気合を込めた彼に、ぐっと顔を近づけて。
近づく距離に、それでも視線は逸らさない。
李月が見詰める先のゼノアスの瞳にも闘志という名の炎が燃える。
「上等だ!」
ぐっとお互いに気合をいれあえば、まだまだ掛るこの道のりもなんとか頑張れそうで。
がんばるぞー! と足を進める李月をさりげなくサポートしながら、ゼノアスも進んでいく。
「ほら! リツキ」
伸ばした手を掴み坂を登り。
「大丈夫か? ゼノ」
逆に伸ばした指先が雪に足をとられそうな相棒を助ける。
肩で息をしはじめて辛そうな李月は、それでもゼノアスにおぶさることはなかった。
自分の力で頂上を目指す。
そんな彼の想いを受け止めて、ゼノアスも強引に手を貸したりはしない。
手を貸して、貸されての共同作業を重ねて、自分たちの足で頂上を目指していた。
闘志をいれあったお陰だろうか、ペースが大きく乱れることはなく順調に足を進めて行って。
とはいえ、いつになったら終わるのか。
永遠にも感じる時間が過ぎた頃、ゼノアスの足がとまった。
足元の雪はとっくに足首まで埋まるぐらいで、見詰め続けていた李月ははっとして足を止める。
「リツキ、ほら」
永遠とも思える時間が終わったのは、ゼノアスが指差した向こうを李月も確認した時だった。
「…………!!」
ぱっと李月の瞳が輝くのを見て、ゼノアスは瞳を細める。
あと少し……を、無理せず足元に気を付けながら歩いて行き、漸く頂上。
開けた視界の先には一面の銀世界と雪をその身にまとった木々が、どこか神々しく出迎えてくれた。
「やったじゃねぇか!」
ぜーはーと整わぬ息の中、李月がサムズアップを決めた。
ぐっと立てた親指がどこか誇らしげに見えるのは、彼がここまで自力で辿り着いたからだろう。
そんな李月の肩に手を回して引き寄せて、頭をぐりぐりしてやる。
「ゼノのサポートのおかげだ達成感最高ー!!」
それに合わせて前髪も掻き混ぜられて、アイスブルーの瞳がしっかりと見え、凄く嬉しそうに笑う姿もまた、良く見えた。
「オレに頼ってればいいものを、逞しくなりやがって」
そういうゼノアスだったが、その瞳はとても優しい。
優しい輝きを宿すその瞳を見つめ、李月も微笑めば、なんだか僅かに明るくなってきたようで。
2人で、はっと朝日がよく見える場所を探して歩きだす。
「あっちの方、視界が開けてそうだぜ」
ゼノアスが示した方へ足をすすめれば、丁度、木々もなく視界が開けていた。
目の前に広がるのは、雪を被った山々。
時折遠くで聴こえるのは、朝日と共に目覚めた鳥たちだろうか。
ぱぁっと徐々に明るくなっていく空。
「……」
「……」
言葉は、でなかった。
ただただその光景を2人で見詰める。
じんわりと、暖かな赤い光が2人を包みこんでいく。
その日の光は、凛とした朝の空気を
苦労した分、じんわりと心と体に沁みわたって行くようだった。
その感動も全身にいきわたった後。
ふぅっと息を吸って、李月が朝日から視線を外した。
(こんな綺麗なご来光だし)
せっかくだからと、李月がゼノアスを振りかえり、ひとつ提案を。
「今年の抱負でも叫ぶか?」
李月を見て、それはいいな。と頷くゼノアス。
ここで抱負をいえば、なんだか叶うような気がして。
せーのでやろうと、視線を交わし合う。
「「せーの」」
共に過ごした時間が、2人の息をぴったりと合わせてくれて。
「もっとゼノと色んな事をしてゼノを知るぞー!」
「リツキといる生活をオレは大事にするぜー!」
2人の抱負が山々を駆け抜け、そしてそれはエコーとして返ってくる。
ぱっと2人お互いを見たのも同時で、視線が絡みあえば照れ臭くなって李月は頬を寒さの所為だけじゃなく赤くしながら微笑む。
そんな表情が、そして彼の抱負がとても、とても愛おしくて。
「オマエんな事言われたら嬉しいだろコノヤロ」
抱き寄せた李月の頭にすりすりと頬を寄せて、愛情を込めてそう囁く。
李月は解放感からか、されるがままだ。
それもまた嬉しくて、離したくない。
腕の中の温もりに、自然と頬が緩んでしまうのはしょうがないだろう。
「ちくしょう、早く完全にオレのモノになっちまえよリツキ」
頭上で聴こえるその言葉に、瞳を李月はそっと伏せる。
完全と言う言葉は、きっと己のはっきりしない態度に対しての言葉だろう。
親友以上の好意を示し、接してくるゼノアス。
今、後ろから感じる温もりにだって、その声音にだって。
視線にだってそれは感じるのだけれど、それでも李月は親友として、ゼノアスに接していた。
今日も、それは変わらないけれど。
「答え出すから待っててよ」
ここまで一緒に力を合わせて昇ってきて、朝日をみて。
成し遂げた達成感ゆえだろうか。
ぽろりと毀れ出たその言葉に、ゼノアスの瞳が見開かれる。
「リツキ」
それ以外、言葉にならなかった。
でも言葉にしないでも、李月にはゼノアスの痛い程の気持ちが伝わっていただろう。
抱きしめられる腕から逃れることはせずに、しょうがないなと李月は落ちつくまで待つのだった。
抱きしめられた温もりを残したまま、せっかくだからと探すのは試練の実。
それを共に探していく。
さくさくと雪を踏みしめ歩くが白い雪と一体化してしまった木の実はなかなか見つけることは出来なかった。
手を伸ばして探っていけば分かりやすかったかもしれないが、やはり届く範囲というものがあるし。
(あんまり、リツキ無理させたくないし)
帰りのことも思えば、体力は温存しておかないと拙い。
やみくもに伸ばした所で徒労するだけだと思えば、見極めが重要になってくる。
思った以上につもった雪は、動くだけで体力を奪うのだから。
「ゼノ?」
じっと動かないゼノアスの名を呼んだところで、ゼノアスの瞳が輝く。
少しだけ雪がくぼんだところ。
重さに耐えかねて、落ちそうなのかもしれなかった。
そんな場所へ伸ばした指先が硬い実をとらえた。
「リツキ!」
ぱきんと枝から離れる音がして、ゼノアスの白い手に、やはり白く美しい実がのっかっていた。
「これか!!」
ぱっと瞳を輝かせる李月へと手渡し、半分こしてみれば。
白い果実の中に、赤い赤い種が2つ。
「綺麗……」
光があたって、きらきらと輝くのは、確かに試練を超えて手に入れたくなるぐらい、とても美しかった。
「半分こ、だな」
ゼノアスと李月の手の中に、赤い種が転がる。
きっとこの実を見れば、今日と言う日を思い出せるだろう。
「ありがとう、ゼノ」
さぁ、今日からいっぱい2人で過ごして、思い出を作っていこう。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | 如月修羅 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 2 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 12月27日 |
出発日 | 01月02日 00:00 |
予定納品日 | 01月12日 |