来年も健やかに、育もう(草壁楓 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●思い出の1年を

 ここはとあるタブロスの大きな写真館。
 そこには家族、恋人、友人同士とさまざまな人々が行き交っていた。
 それぞれ店内から出てくると、大きめのデジタルカメラを手に持ち楽しそうに話しをしながら店外へと歩みだす。
 お互いの写真を撮ったり、はたまた風景を撮ったりと人それぞれ。
 その写真館では今カレンダー制作会が行なわれている。
 来年1年をより一層楽しく幸せに過ごせるようにと企画されたものらしい。

 制作できるカレンダーは2種類で、
 1ヶ月ずつのものつまり合計12枚の写真から構成するカレンダー、
 またもう一つは2ヶ月ずつの合計6枚の写真で構成されたカレンダーである。
 今年の思い出を撮るのもよし、はたまた来年のために撮るのもよし。
 それはこの世に1つだけのオリジナルカレンダー。

 そんな様子と店の外に書かれていた張り紙を見ていたあなたは精霊と共に制作しようと決めたのだ。
 彼との距離をより一層近づけるため……デートをしながら。
 彼とのこの1年を振り返る……多くのことがあった1年だった。
 そしてこれからも彼と共に歩んでいく、1年、そしてまた1年と……。
 そして精霊の下へとあなたは向かっていった。
 今までの思い出とこれからの未来を紡ぐために。

解説

【できること】
 ・デートをしながら写真を撮りオリジナルのカレンダーを作る。

【カレンダーと写真について】
 ・カレンダーの種類は2種類で、『1ヶ月ずつの合計12枚の写真から構成するカレンダー』と
  『2ヶ月ずつの合計6枚の写真で構成されたカレンダー』です。
   プランにどちらにするかお書きください。
 ・カメラはデジタルカメラの超高画質のものとなっています。
 ・人物、風景などお好きに撮影してください。
 ・時間帯は朝、昼、夕方、夜と1日を使って自由に撮影できます。
 ・写真を選び、写真館にカメラ返却と共に伝えることで1時間もあればカレンダーは完成します。
 ・写真撮影は自由にどこでも撮りにいってもいいですが、写真館の営業時間がありますのでタブロス市内及び近郊徒歩30分以内とします。
 ・個人で撮るのも可能ですが、2人で撮りたい場合は通行人や、ご一緒に参加された方に頼むこともできます。
 ・参加された方々と合同制作の可能ですので、その際は会議室でお話し合いの上プランにお書きください。
 ・カメラはお1人様一つずつ配布されますのでお1組様2台となります。
 
【プランにお書きいただくもの】
 ・2種類の中からお選びください。表記は『6』か『12』と記載お願いいたします。
 ・個人制作か合同制作か
 ・どのような写真を撮ったのか
 ・行く場所と行った場所での会話(6枚及び12枚分でなくても問題ありません、特に想い入れのある場所のみ記載でも大丈夫です)
 ・カレンダーをどうするか

【注意】
 ・過激な写真や発言、行動など公序良俗に違反する内容は描写できかねますのでご注意ください。
 ・アドリブが入る場合がございますのでご了承くださいませ。不可の方はプランに『×』とお書きください。

※カレンダーを制作しましたので400ジェール消費いたします。

ゲームマスターより

ご閲覧誠にありがとうございます。
草壁楓でございます。

今年もあと少しで終ってしまう今日この頃。
今年も精霊とたくさん愛を育んだと思います。そして来年も育んでいくことと思います。
その1年をカレンダーにしちゃえ!というエピソードです。

 自由度が高いですが、楽しんでいただけたら幸いです。
それではご参加お待ちしております! 

リザルトノベル

◆アクション・プラン

天宮・澪(エクシズ・ロイヤー)

  『6』個人製作

テーマはずばり、お互いの魅力溢れる姿ですよ!
お互いの写真を2枚ずつ撮って、最後は二人でのツーショットを2枚!
ツーショット写真は、カレンダーの一番最初と最後に入れるのですよ!(えへん)

ミオはエクスの写真……1枚は、エクスの貴重な笑顔写真を狙うですよ
ダメなら……むむむ、ならば、眉間に皺寄せてる顔を撮るです
もう1枚は、夕方に撮るです!キラッキラな夕日にエクスの髪がキラッキラしてて、
ミオがいっちばん好きなエクスの姿なんですよ!えへへ、エクスには内緒なのです!
あと、夕方デートって鉄板ですよね?(そわ)
これまでの一年じゃなくこれからの一年への思いを込めて、
出来たカレンダーは飾るのです!



かのん(天藍)
  6、個人
写真何を映しましょう?
デジカメ預かりひとまずお茶しつつ作戦会議
その後散策
なんとなく季節感がある風景だと良いですよね

自宅前
写真を撮るのなら、もう少しきれいに手入れしておけば良かったです…
せめて冬囲いが写らないように家と傍の寄せ植えが中心になるように

店舗のショーウィンドウに飾られたテディベアを見て、もふもふの小熊達を連想
…小熊さん達今は何をしているでしょう?
危険がないところで、また会えたら良いなって思うんです

写真
自宅と庭
ショーウィンドウに飾られたテディベア
観葉植物:新緑イメージ
青空:夏イメージ
夕焼け:秋イメージ
街のイルミネーション:冬イメージ

1つだけのカレンダーですもね、居間に飾りましょう


水田 茉莉花(聖)
  12・全スタジオ撮り

【そういえばこの子って小学校入学後にあたしと出会ったんだよね、だとしたら…】

ねえひーくん、ちゃんとしたお写真って撮ったことある?
それはあたしも見たわ
でもこっそり撮られたところの写真しかなかったじゃない

…なんか言った?
では、今日はひーくんの行事写真を撮ります異論は認めません!
それでは先ずはお正月の写真
さ、和服を着せてもらって撮影するわよ

だーいじょうぶ、3月はあたしもお雛様になるから
4月は入学式っぽく撮るわね

7月は浴衣、8月は…水着になろっか?

11月は…七五三にしましょう
7才も祝う所もあるんだって、だから、これは本物の御祝いだと思って

よーっし、12月のサンタ撮ったら写真選ぼう!


●オレンジ色の笑顔

 ここは通りすがりの公園。
 天宮・澪は写真館で借りてきたカメラを構えている。 
 そのレンズを向けられているのは彼女の精霊のエクシズ・ロイヤー。
「テーマはずばり、お互いの魅力溢れる姿ですよ!」
 数分前に張り切った声でそう宣言し、それ以降彼にレンズが向けられている。
「お互いの写真を2枚ずつ撮って、最後は二人でのツーショットを2枚!」
 彼女が選んだのは6枚から構成されるカレンダー。
「ツーショット写真は、カレンダーの一番最初と最後に入れるのですよ!」
 最初と最後に2人での写真、その間はそれぞれの写真で埋める。
 彼女の頭の中ではすでにカレンダーが出来上がっているようだ。
 得意気に「えへん」と胸を張るようにエクシズに伝える。
 元気一杯の澪とは対照的にエクシズの反応はいまいち……というか不安が渦巻いている。
(ちびすけ……暴走するのでは……)
 そんな心配を余所に、
「笑顔をみせてー、エクス!」
 澪はカメラを構え見ながら要望するのだが……。
 彼の眉間には皺、もちろん笑顔なんてものとは程遠い。
「笑顔なんざ出来きるか、バカちび」
 そんな答えが返ってくる……澪の頬を引っ張りながら。
(ダメなら……激写!!!)
 公園の緑と彼の一枚を撮るだけ。
(むむむ、ならば、眉間に皺寄せてる顔を撮るです)
 その時ふわっと冬の風が微かにそよいだ。
(今!!)
 シャッターチャンスを逃さなかった。
 冬の低い太陽の光で輝く金色の髪にアメジストの瞳を少し細め眩しそうに空を見上げるエクシズ。
(やっぱり綺麗……)
 やはりエクシズは綺麗だと再認識する。
「今度は僕が撮ってあげますね」
 カメラを渡せとエクシズは手を出す。
 エクシズがカメラを構えれば、いつもと違って澪に緊張が走る。
 少々暴走(?)気味なのかポージングはおかしい……。
「自然体で、お願いします」
 少し呆れ顔のエクシズだが、彼に見つめられていると思えばそうなるのは澪にとって至極当然なのかもしれない。

 次にショッピング街に来た2人。
 ウィンドウショッピングの傍ら街でのツーショットを撮りにきた。
 ショッピング街は多くの人で賑わっている。
「ツーショット写真は……これから一年頑張ろうね!の意味を込めて、握手したのが撮りたいのです」
 青く綺麗な澪の瞳は真っ直ぐでエクシズにそう訴えるように真摯的に告げる。
「そうですね」
 エクシズが承諾してくれたことに澪は笑顔になる。
 辺りをキョロキョロと見回しながらショッピング街での撮影場所を小柄な彼女は頑張って探している。
「あ、あそこ!」
 そのショッピング街の中央に小さな噴水を見つけると猛ダッシュで走る澪。
「ちびすけ!!」
 追いかけるようにエクシズは澪を追いかける。
 また暴走が始まってしまう、と。
 今は人通りも多い……人にぶつかっては迷惑をかけてしまうかもしれない。
「ここで撮るのです!」
「……」
 気疲れかエクシズからの返答はない。
 彼の反応が見えていないのか善は急げと澪は道行く老夫婦に声を掛ける。
「すみません、写真お願いします!」
「写真かい?」
「はい!」
 カメラを渡し操作の説明をすると老夫婦は快く承諾してくれた。
「では、エクス、これからも宜しくお願いだよ、です」
「そうですね……」
 すっと出された澪の右手にエクシズも右手を重ねる。
 そして2人は自然と見つめ合う。
 澪の笑顔が咲き誇った瞬間にシャッターが押される。
「どうじゃろうか……」
 老人が確認して欲しいとカメラを渡してくる。
 そこには笑顔の澪とそれを見つめるエクシズの姿があった。
 老夫婦にお礼を告げ、次のツーショットを撮る場所へと移動する。
 次に選んだのは街の喧騒の中にある冬の花が咲き誇る花壇前。
「2枚目は、自撮りみたいにしたいから、しゃがんでしゃがんで!」
 いきなりしゃがめ、なんて言われてもと少し困り顔のエクシズ。
「だめなら、ミオがジャンプした瞬間で撮ろうね!」
「ばーか、何言ってんだ、ちびすけ。ジャンプしてから撮るなんざブレブレだろうが」
 エクシズの身長178cm、対して澪142cm、そんな状態でジャンプをすれば澪は縦ブレをおこし大惨事カレンダーになってしまう。
「だって、抱っこだとエクスバカにしそうだし……」
 しゅんと少し残念そうにしている澪をみて「しょうがない」という風にカメラを澪から取り上げ、腰を掴む。
 丁度エクシズと澪の顔が同じ位置に来るとパシャリ!!
「これでいいですね」
 カメラを渡される澪は写真を確認する。
 そこには少し仏頂面のエクシズにいきなりのことで驚いている澪の顔。
 写真を見て澪の顔が少し赤くなる……彼の行動は少し大胆だったようだ。

 夕暮れ時。
 ショッピング街から離れた展望台を最後の撮影場所に決めた2人。
 天気が良い今日は夕日も綺麗で辺りをオレンジ色に染めている。
 キラッキラな夕日にエクシズの金色の髪がキラッキラと輝く。
(ミオがいっちばん好きなエクスの姿なんですよ!)
 この夕日に照らされ輝くエクシズの姿が澪には一番のお気に入りの姿。
 えへへと笑う彼女はそんな気持ちは彼には内緒だと心にしまう。
 1日の終盤、夕方のデートはカップルにとって鉄板である!なんて考えると美緒はそわそわとしてしまう。
 彼女がそんな気持ちとは知らないエクシズは夕日を眺めている。
 その彼の横顔に見惚れながらもカメラを構える澪。
(エクス……)
 彼は今何を考えているのだろうか……真っ直ぐと夕日を見つめるアメジストの瞳はオレンジと混ざり合い不思議な光を帯びている。
 そんなエクシズを数枚撮る。
 キラキラとオレンジの光に照らされる彼の横顔は現実離れしていて、幻想の世界にいるようだ。
 微かにほんの微かにエクシズの口角が上がったのを見逃さなかった。
 彼の今日唯一の笑んだ顔。
 嬉しさのあまり澪は驚きと共に笑顔になる。
 暫くエクシズを撮っていると、ふと彼は手を前に出し「カメラを」と渡すように促してきた。
「撮るんですよ……ちびすけを」
 最初の公園と同じように澪はまた緊張し始める。
 彼女の緊張を解くようにエクシズは話しながら撮ることを選択する。
「カレンダーどうするんですか?」
「これまでの一年じゃなくこれからの一年への思いを込めて」
 夕日を見ながら澪は言う。
「出来たカレンダーは飾るのです!」
 そう言った彼女の顔は今日1番の笑顔になっていた。

 それから数時間後カレンダーが出来上がった。
 このカレンダーは2人で共に歩めるように、お互いの気持ちを近づけるものになることを願わずにはいられない。
 暴走する澪を追いかけるエクシズ、そんな2人はこれから1年更に強い絆が生まれることだろう。


●思い出のカレンダー

 写真館の近くの喫茶店にかのんと天藍の姿がある。
「写真何を写しましょう?」
 写真館でカメラを借りると作戦会議のためにと喫茶店でブレイクタイムをしている2人。
「最初の写真は、これから2人共に暮らし始める場所が良いだろう」
 天藍はコーヒーを一口飲むと笑顔でかのんを真っ直ぐと見つめる。
「後は、そうだな空はどうだ?」
 かのんが咲かせたい薔薇と同じ青い空。
 今は季節も冬、空も澄んでいて濃い色の青。
「今日は天気も良いから夕焼けもきっと綺麗だ」
「なんとなく季節感がある風景だと良いですよね」
 天藍からポンポンと提案があがることに、かのんは笑みを浮かべていた。
 ティーカップをかのんが取ると紅茶を一口。
「飲み終わったら散策しながら写していきましょう」
 かのんは優しい微笑みを天藍へと向けると、天藍も同じく優しい微笑みを浮かべた。

 ここはかのんの自宅前。
 綺麗に整えられた庭に2人は入っていく。
「写真を撮るのなら、もう少しきれいに手入れしておけば良かったです……」
 写真を撮ることを考え、そしてこれから1年共にするカレンダーを考えれば、とかのんは少し困り顔。
「あえて手入れしなくても、今のままで十二分じゃないか?」
 季節感があっていいじゃないか、なんて笑顔を浮かべる天藍。
「せめて冬囲いが写らないように家と傍の寄せ植えが中心になるように」
 1人でテキパキと動き出すかのんに天藍も一緒になって手伝いをする。
 庭を綺麗に撮れるようにと冬囲いは見えない位置に寄せ植えを集めだす。
「季節毎にいつも綺麗だと、来る度に思ってる」
 手伝いながら天藍は庭を見渡しそう言った。
 「ありがとうございます」とかのんは返しながら手入れの行き届いた寄せ植えを集め終える。
 あとはバランスを試行錯誤。
「こっちのほうが良いでしょうか?」
 と天藍と相談しながら位置を決めていく。
「いいんじゃないか」
 2人で住む家が見えるように、そして花壇のように並べられた寄せ植え。
 一緒にアングルを変えながら写真を何枚も撮っていく。
 時間はまだ昼前、空も少しずつ低くなり青い色が濃くなってきている。
「空も撮ろうか?」
「はい」
 空を2人で見上げると、今は雲一つない。
 その雲一つない空を撮る、そして数分待てば雲が少し現れ違う空の表情も撮っていく。
「薔薇……か」
 雲が風に流され少し薔薇に似た形になっている。
「薔薇ですね」
 そんな偶然の産物に2人は驚きを隠せずにいた。
 シャッターチャンスを逃さずにかのんは撮る。
 庭の写真と空の写真を撮ったところで2人は写真の確認をする。
「これいいですね」
「あぁ」
 2人は多くの写真を見ながら笑顔になる。
 そのまま2人は自宅内にある観葉植物を撮影する。
 もちろん季節感を出すためにと2人はまた試行錯誤して。

 その後2人はタブロスの街を散策していた。
 何か良い被写体はないものかと。
 ふとかのんは足を止め、ショーウィンドウを見つめる。
 足を止めたかのんの隣へと天藍が歩み寄る。
 そこにはカラフルなテディベアが6体飾られていた。
 かのんは少し不安そうにそのテディベアを見つめている。
「……小熊さん達今は何をしているでしょう?」
 思い出されたのは春と秋に会ったカラフルな小熊達。
 『なのぉ~』なんて声が聞こえてきそうで。
「たぶん元気にしてるだろう」
 特に青色の小熊が思い出された。
 甘えん坊で、泣き虫、少しやんちゃで2人によく懐いている。
「小熊達はA.R.O.A.と協力して慰問なんかもしているし、きっとまたどこかで会える」
「危険がないところで、また会えたら良いなって思うんです」
 心配そうに手を胸の前で組み瞳を閉じる。
「……ハロウィンの時みたいに厄介な事に、自分達から巻き込まれていなければ良いけどな」
 秋の時のようにオーガと対峙していないと良いのだが……天藍もまた小熊達が無事なことを祈っている。
「あ!このテディベアどうでしょうか?」
「小熊達みたいだしな」
 2人は顔を見合わせて笑顔で頷く。
 店の中に入り店主に事情を話しテディベアの写真を撮らせてもらえないかと交渉する。
 店主は快諾してくれた。
 テディベアと店の一角を借り撮影する。
「こんな感じか?」
 あの小熊達を連想させるようにテディベアを配置していく。
「青色をもう少し前で、ピンクをその隣に」
 了解!と天藍は笑顔を浮かべながら作業を進める。
「どうだ?」
「いい感じです」
 そしてパシャリ!と撮れば、あの小熊達のようで心が温かくなる。
 『ありがとうなのぉ~』なんて声が今にも聞こえてきそうな1枚になった。

 その後も散策しつつ街を歩く2人。
 時刻は夕暮れ、夕日が綺麗に輝いていた。
「夕日……綺麗ですね」
 少し小高い展望台で2人はそれを眺める。
「今日は天気も良くて撮影日和だ」
「夕日……」
「秋だ」
「はい!」
 少し夕日が沈むところ、微かに夕日が出ているところといろいろな夕日の表情を撮っていく。
 オレンジ色は哀愁よりも暖かな未来への光に見える2人。
「良いものが撮れましたね」
 イメージに合う1枚が撮れたことに2人で笑顔になる。
 そのまま2人は暗くなった街を歩く。
 冬の今時期では街中はイルミネーションで飾られていた。
「最後はここでどうでしょうか?」
 微笑みながら天藍は頷く。
 2人でカメラを覗き込みながらイルミネーションの様々な表情を捉えていく。
 街の明かりとイルミネーションの光が溶け込み華やかな写真が撮られていく。
「ここも綺麗ですね」
 周りの華やかさと恋人達の雰囲気……最後の写真はクリスマスさながら。
「これで全部だな」
「はい、終わりです」
 お疲れ様、と額にキスを落とす天藍。
 突飛な行動にかのんはおでこを押さえつつ驚きを隠せない。
「さて、戻ってカレンダーにしよう」
「ちょっと、天藍?」
 少しの照れを隠すように天藍はかのんの前を歩く。
 この街の雰囲気に負けない2人がいた。

 出来上がったカレンダーを受け取ると自宅へと帰る。
「折角だから居間に飾ろうか」
 その6枚から構成されたカレンダーを飾る場所を提案する。
「1つだけのカレンダーですもんね、居間に飾りましょう」
 かのんも同じ考えだったと笑顔を浮かべた。
 これからも2人は季節を感じ、これからの1年も手を取り合って歩んでいくことだろう。
 永久の愛を誓った2人が離れることはけしてないのだから。


●出来なかった思い出を

 写真館のスタジオ。
 その場には水田 茉莉花と聖の姿がある。
 カレンダーを作成しようとここを訪れていた。
 2人は外へとは出ずにスタジオを借りることにした。
 それは茉莉花の思いからである。
(そういえばこの子って小学校入学後にあたしと出会ったんだよね、だとしたら……)
 そう考えると聖には年間行事の写真がないのでは?と思ったからだ。
 そんな聖は「あっという間にカレンダーができるんですね!」なんて店員のカレンダー制作の説明を聞きながら瞳を輝かせている。
「ねえひーくん、ちゃんとしたお写真って撮ったことある?」
 少し屈み聖の顔を覗き込みながら優しく尋ねる茉莉花。
「ふえ?しゃしんなら、しせつの先生にアルバムもらってますよ?」
「それはあたしも見たわ」
 「うん」と軽く頷きつつ、
「でもこっそり撮られたところの写真しかなかったじゃない」
 尋ねるように優しく聞く。
「そうですけどー」
 なんだか瞳を逸らさずにはいられない聖、それは、
「……しせつの行じはごっこだからおもしろくなかったんだよな」
 茉莉花に聞こえるか聞こえないかでそう呟いた言葉の理由。
 聖にとって施設での行事はどちらかといえば、お付き合いな感じで好ましいものではなかった。
「……なんか言った?」
 呟きはハッキリとは聞こえなかったが、少し不満そうにしているのはわかる。
「ああいえ、何でもないです」
 優しい微笑みの中に何かありそうな気がして聖は背筋をのばしつつそう答える。
「では、今日はひーくんの行事写真を撮ります異論は認めません!」
 茉莉花は屈んでいた上体を起こすと右手で聖を指差し、そう宣言する。
「ママ……って、えーっ」
 その宣言に大いに驚く聖。
 カレンダーを作りに行こう、と誘われて楽しく外出した時にこれは想像していなかった。
 さっきまでこんなに早く出来るなんて!と感心していた矢先の出来事である。
「それでは先ずはお正月の写真」
 そんな様子の聖を余所に茉莉花はどんどん話を進めていく。
「さ、和服を着せてもらって撮影するわよ」
 スタッフさん、お願いしまーす!と茉莉花がお願いすれば女性スタッフが数名聖の下へと駆け寄ってくる。
「じゃあ、いきましょうね」
 と優しく両脇から聖は連行されていく。
「ちょっとまって、スタッフさん何するの、うわーん!」
 そんな悲痛な叫びがスタジオに木霊する、が茉莉花は聖に思い出をと心に決めていたので笑顔で見送る。

「わふくでタコもった後はこれ?」
 先ほど着物をきて凧を持ち正月の雰囲気で撮った直後である。
 今は赤鬼さながらの衣装を身に纏う聖。
 もちろん頭はアフロに角付き。
「オニの変しんふく!はずかしいですよう!」
 本気で恥ずかしがっている。
 顔を真っ赤にして茉莉花に訴える……が、
「だーいじょうぶ、3月はあたしもお雛様になるから」
 軽くウィンクし、ブイサインな茉莉花。
 そんな様子に聖は落胆しつつ苦笑いを浮かべた。
 はいはい、と次々と聖の衣装は変わっていく。
 3月は聖がお内裏様で茉莉花がお雛様。
 きちんとセットも用意され、茉莉花は十二単を纏っている。
「これ……重い」
「ママ、ぼくはおもくても何度もきがえているんです!」
 そんな文句は言うなと言わんばかりに威勢よく聖は横目で見ながら言う。
「ひーくん、ごめん」
「お2人とも笑顔くださーい」
 カメラマンが笑顔笑顔と何度も言っている。
 ニッコリと2人一緒に笑顔。
「4月は入学式っぽく撮るわね」
 3月が終れば4月。
「5月は着るよろいだ……」
(何か、ワクワクする……)
 と鎧武者さながらの出で立ちで聖がセットの前に立つ。
「ひーくんかっこいいよ!」
 茉莉花がそう叫ぶように言えば、聖の顔が自然と笑顔になる。
「6月は前にママとやった雨あそびみたいがいいです!」
 鎧を脱ぎ次は茉莉花と共に雨遊び。
 スタジオに雨を降らせれば楽しそうに遊ぶ2人。
 満面の笑顔の1枚が撮られる。
「7月は浴衣、8月は…水着になろっか?」
 どんどん季節ごとの衣装とセットに変わっていくスタジオ。
「じゃあ、9月はおいもで、10月はハロウィンがいいです!」
 もう9月になる頃には聖もノリノリの状態になりリクエストしてくる。
 ハロウィンにはドラキュラの出で立ちで聖はマントを広げて牙を剥き出しにして1ポーズ。
「11月……11月はどうしよう?」
 11月……11月、と考える茉莉花は手を合わせて閃いた!と笑顔で言う。
「11月は…七五三にしましょう」
 七五三?と聖は首を傾げつつ、
「七五三?ぼくもう終わりましたよ?」
 もう終ったのにと言いながら一応七五三の衣装に着がえてくる。
「7才も祝う所もあるんだって、だから、これは本物の御祝いだと思って」
 七五三の着物を着た聖に言うと、「はい!」と茉莉花に輝く笑顔を見せてくる。
 千歳飴をもって神社の鳥居の前で少し緊張した面持ちでパシャリ。
「よーっし、12月のサンタ撮ったら写真選ぼう!」
 とうとう最後の撮影となる12月。
 最後は聖の希望もあり2人でサンタコスチュームに着がえるとプレゼントの入った袋を持ち、煙突に入ろうとする瞬間を収める。
「サンタさんってたいへんなんですね……」
 煙突はセットなので少し小さめ、ここに入るのは大変だなと聖は溜息混じりにそう言う。
「でもね、サンタさんは良い子にしている子のために頑張ってプレゼントをこうやって運んでくれているのよ」
「そうですよね!」
 来年も良い子にしていようと聖は心でそっと決め、次のクリスマスを楽しみにすることにした。

 全ての撮影が終わり、何十枚もの写真の中から12枚の写真を選ぶ。
 選べば後は待つばかり。
「楽しかったね、ひーくん」
「はい」
 最初は不満そうにしていた聖も最後は大いに楽しんでいたことは茉莉花の目にも明らかで、そのことに茉莉花は喜んでいた。
(少しでも思い出になってくれれば……)
 茉莉花の想いは通じ、今の聖は常に笑顔を浮かべている。
「一番のおきにいりはよろいです」
 どうやら聖は鎧武者の格好が気に入ったらしい。
 その時の心境を一生懸命に茉莉花に伝えている。
 茉莉花も頷きながら優しく微笑む。
 そんなこんなしているうちにカレンダーができあがりスタッフからカレンダーを渡される。
 そのまま帰路を歩く2人はカレンダーを見る。
「鎧のひーくんかっこいいね!」
 照れくさそうに頭を掻きながら聖は満足そうに微笑む。
 もう少しで家に着くところで聖はふと立ち止まる。
「ひーくん?」
 急に立ち止まった聖を振り返るとそこには顔を赤らめた彼がいる。
「ママ……あ、ありがとうございます」
 耳まで赤くした聖は一生懸命今心にある感謝を伝える。
 そっと近寄れば茉莉花は軽く聖を抱き締め、
「こちらこそ」
 と返した。

 2人で撮った思い出の12枚。カレンダーとして残る物となったが、聖の心の中にも永遠に残ることだろう。
 これからもその小さい手で茉莉花を守り、そして聖は成長していく。
 2人のその愛情の絆は切れることはない。



依頼結果:大成功
MVP
名前:水田 茉莉花
呼び名:ママ
  名前:
呼び名:ひーくん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月20日
出発日 12月26日 00:00
予定納品日 01月05日

参加者

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