ヤキモキ?四獣遺跡ツアー(蒼色クレヨン マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

「はーい!到着でーーす!ここが知る人ぞ知る、興味の無い方は全く知らないっ、通称、四獣遺跡となりまーす!」

 大手観光会社・ミラクル・トラベル・カンパニーのツアーコンダクターが、旗を高々と掲げ
四方を大きな遺跡に囲まれた中心部へと一行を案内する。

今ここは、古代ビスチオ王国時代の未だ解明が進んでいないと言われる、遺跡好きならその地をよく知っている遺跡発掘の現場だ。
A.R.O.A.本部にいつもの如くやってきたツアー宣伝案内ポスターに目を留め、興味を持った参加者たちが集まっていた。

「全員揃ってますかーっ?
 各遺跡の名称・説明は、先ほどお配りしたパンフレットを参照下さいませ。
 あ。ちなみにその各々の遺跡名称は、いつの間にか遺跡マニアたちの間で呼ばれている『通称』です。
 まだ研究が進んでいないため、正式名称が決まっていないようですねぇ。念のためお伝えまで。
 
 では、これより自由行動とします!今から二時間!こちらでも召集をかけますが、時間になったら再びこの中央地にお集り下さい」

「そうそう、今日は祝日とあって結構他のツアー観光客もいらっしゃってますので
 遺跡見学中のトラブルにお気を付け下さい。
 遺跡のそばで悶着があったりすると、遺跡に被害が出るかもしれませんっ。
 ご存じのとおり、まだまだ研究の進んでいない遺跡ですので、くれぐれも破損などはさせぬようご注意下さいね!

 あと、各遺跡には募金箱がありますので、どこか一つでいいので……ええ、ご協力下さい。
 遺跡調査費・遺跡保存費用などに主に当てられています」

 パンフレットを片手に、それぞれが次第に散らばっていく。
その様子を見ながら、ツアーコンダクターとアシスタントのスタッフが一帯を見渡して、何やら小声話し出した。

「あの……他のツアーの旗印見ると、結構田舎町から集まってませんか?」
「そうですねぇ。中々知名度が上がってきてる遺跡ですからね。……それが何か?」
「ウィンクルムの皆さん、…… 囲 ま れ ま せ ん か ? 」
「…………囲まれるでしょうね」
「ですよね……タブロス市ではウィンクルムたちが普通に歩いてますけど……
 田舎の方ではまだ珍しがる方、少なくないですよね……」
「土地によってはアイドル扱いされたり、崇められたりもしているようですしねぇ……無事を祈るしかないですね」
「次からは、他のツアーの行程も調べておきます……」

解説

●パンフレット内容、とそこに集まるツアー客

・通称『朱雀の遺跡』(南)
 大きく翼を広げ飛び立とうとしている、雄大な創り。
 四方の遺跡の中で、唯一その背中に乗ることが許可されている(一度に1名のみ。必ず警備員が付いている)
  <ツアー客:小中学生くらいの年代(女の子集団)>

・通称『白虎の遺跡』(西)
 強面に牙を向く割に前足がちょこんと揃っていて、かっこよく可愛い創り。
 その前足に触れると恋愛が成就する、というどこからか出た噂があるとか。
  <ツアー客:噂の為か、女子大生が集まっている>

・通称『玄武の遺跡』(北)
 重厚感のある甲羅にへびの尻尾。台座には5行程の暗号が記されている。まだ解明はされていない。
 別名:長寿の遺跡。
  <ツアー客:50~60代のご年配おばさまに人気>

・通称『青龍の遺跡』(東)
 岩であるにも関わらずその眼光や鱗の精密な細工に、神々しささえ溢れ出ている創り。
  <ツアー客:成人前後の男性客>


●主旨
 どの遺跡に行っても必ず4,5人の観光客に囲まれます。囲まれること前提です。

 性別女性な観光客は精霊に、男性は神人に興味津々に迫ります。
 片方(観光客と同性)は逆に全く迫られないので置いてけぼり感が出るかもしれません。
 観光客たちはウィンクルムが珍しくて、色々質問することでしょう。

 撒く場合、メインの四方の遺跡以外に小さな細々とした遺跡が点在するので、隠れる場所はあるかもしれない。
 無下に扱うのはご注意。ウィンクルム全体の評判に関わる、かも?

 観光客NPCが必ず描写されます(当然メインはウィンクルムの皆様ですが)
 そのあたりご了承下さいますと幸い。

●どこか一か所、募金をお入れ下さい。一律<30Jr>

●休憩所
 遺跡が集う広場の階段を少し下りた位置に、簡素なパラソルの下にテーブルとベンチが数か所。
 近くには自動販売機が設置されている。
 炭酸、コーヒー、果汁100%ジュースなど色々。購入する場合、一律<20Jr>

ゲームマスターより

ご拝読頂き恐縮です!お世話になっております、蒼色クレヨンと申します。
解説がやたら長くてすいませんっ。

コメディが好きなんです。らぶっコメディが好きなんです。

いくつか回ってもいいですが、囲まれること前提なので
一か所に絞って頂いた方が描写密度は増す、と思います(たぶん)
観光客の性格や質問内容は、多少ご指定頂いてプランにして頂いても構いません。
(例:「チャラそうな男性が来ると怯えて精霊の後ろに隠れる」など)

是非 モチヲ ヤイテホシイナ ト

リザルトノベル

◆アクション・プラン

あみ(ヴォルフガング)

  目的の遺跡は『青龍の遺跡』です♪
ヴォルフガングさん、アクセサリー作ってるから精巧な細工の遺跡に行ったら喜んでくれるかな…と思ったんですが…。
なんだか囲まれてしまってます~!あわわ…。知らない人は苦手です…。
でも、皆さん田舎の方みたいだから純朴そうで意外と話が合うかも!動物の話で盛り上がれて嬉しいです!初対面の人でも気軽に話せました~。
…あれ?ヴォルフガングさんの機嫌がいつもより悪いような…。何か怒らせることしちゃったかな…。
ひとまず、観光客の皆さんには謝りつつ時間を気にしてるフリをして、撒いちゃいますっ!人の少ない場所でヴォルフガングさんに謝ってみようと思います。怒られなかったらいいな…。



月野 輝(アルベルト)
  どこも興味あるんだけど、特に行ってみたいのは『玄武の遺跡』かしら
解明されてない暗号ってどんなのか見てみたくない?
万が一解く事ができたりしたら凄いわよね

ここっておばさま多いわね…って、アル?
…囲まれてるわ

アルは見た目は整ってるし、初見の人には愛想いいけど
腹黒眼鏡なんだから!知らないでしょ
…「娘の婿に」って何よ、それ
婿になんてなれる訳ないじゃない
アルは私の…

私の、何なのかしら
そして私はアルにとって何なのかしらね…


あら?考え事してたらいつの間にか移動して…ここ、青龍の…
え、あの?
すみません、私、連れとはぐれて
戻らないといけないので、あの、どいて頂けませんか(汗)
押しのける訳にもいかないし
どうしよう…



手屋 笹(カガヤ・アクショア)
  今回のツアーで、いいところがあればよいのですが…
白虎の遺跡の恋愛成就の噂?

これ…いいですわね。
ウィンクルムには愛の力が大事だというのに、
カガヤは全然気が利きませんし、
これを機にまた少しはウィンクルムらしくなれれば良いのですが…。

白虎の遺跡の前足に触れると恋愛が成就するらしいですわ。
との事なんですけど、
何でカガヤは女子大生に囲まれているんですか!?
あんな楽しそうに…。

「カガヤ!…ちょっとこっちに来てください…」

カガヤの手を掴んで引っ張り、一緒に白虎の前足に手を置きます。

「わたくしみたいな…ちんちくりんより…他の女性が良くてもかまいません…けどわたくしがパートナーなのは忘れないでください…」



ファリエリータ・ディアル(ヴァルフレード・ソルジェ)
  どこにするか迷っちゃうけど、ヴァルと一緒に『青龍の遺跡』に行ってみるわっ。
精密な細工、気になるものっ♪

凄く神々しい像ねー……見に来て良かった! 募金もしなくちゃっ。
でも、何だか男の人が多いわね?
え? 何か囲まれてる? え? え?
ウィンクルムが珍しいのね、理由は分かったけど……
(ううう知らない男の人ばかりで緊張しちゃうー!
でも冷たくも出来ないし、ウィンクルムの評判下げちゃう様な事出来ないし!)
質問とかには、出来るだけにこやかに答えてみるわ。
ヴァルがいるもの、大丈夫、大丈夫……(自分に言い聞かせてる)

解放されたらヴァルと一緒に休憩所で休むわ……ううう気疲れしたぁ。



「わ……本当に遺跡が四獣の形になっているんですね」
「あみたち青龍の遺跡に行かれるんですよね!私たちもです!いい?ヴァル」
「いいも何も行く気満々だろ、ファリエ」

 移動バスの中ですでに自己紹介を終えた一向は、中央地に着けば個々に高揚する気持ちを抑えるように言葉を交わしていた。
あみとヴォルフガングが同じ遺跡を見に行くと聞いて、ファリエリータ・ディアルは嬉しそうに顔を輝かせ。
さぁ行きましょう!と早くも抑えられなくなった心に自然と足が動き出していた。
その横では彼女のパートナーであるヴァルフレード・ソルジェが、口を挟む余地なく行先決定された様子に呆れ顔をするも、特に異を唱える理由もなくファリエリータの後をのんびりと歩いていく。
あみとヴォルフガングも、二人のやり取りに目を合わせてはクスリと小さく笑みを交わし、並んで目的の遺跡へと歩き出すのだった。

「解明されていない暗号がある遺跡、と……あっ、ここね。玄武の遺跡。
 どんな暗号なのかしら?万が一解くことが出来たらすごいわよね」

 パンフレットの遺跡配置図を見ながら、月野 輝は好奇心が表情に現れていた。
そんなパートナーの横顔を見ては楽しそうに目を細めつつ、アルベルトも口を開く。

「暗号を見に行くのですか?いいですね。謎を解くのは割と好きですし
 玄武は知恵の神様でもあるので……」
「なら是非あやかりたいわね」
「輝、ワクワクが隠せないといったその表情、いいですよ」
「え?!ま……またからかって……っ。行くわよ、アル!」

 まさに今赤くなろうとする耳元を隠すように、誤魔化すように、
髪を耳にかけながら足早に移動する輝と、それを大変ご満悦な瞳で見つめながら追いかけるアルベルトがいた。


「あら?皆さんもう行先決まっているんですね。私たちは……どこにしましょう。
 いいところがあればいいんですが……」
「俺は笹ちゃんが行きたいところでいいよ!」
「もう。ちょっとはパンフレット読んで欲しいですわ、カガヤ」

 パンフレットの説明書きを食い入るように見つめていた手屋 笹は、完全にお任せモードの己の精霊、カガヤ・アクショアに溜息をつく。
その落とした視線の先に、一文が目に入った。
(白虎の遺跡の恋愛成就の噂?これ、いいですわね……)
チラリ、と横目でカガヤを覗く。

「……これを機にまた少しはウィンクルムらしくなれれば良いのですが……」
「うん?何か言った?笹ちゃん」
「何でもないですわ。白虎の遺跡にしましょう」
「はいよー!」

 ウィンクルムであるが故に、愛の力を高めようと試みる笹とその(若干順番があべこべな)意図や努力に
未だ気づかないカガヤは、足並みは慣れたようにしっかり揃って白虎の遺跡へと向かうのだった。


●包囲、包囲、包囲

「……」
「ヴォルフガングさん、綺麗な作りですよね。この青龍」
「……ああ」

 真正面から青龍の遺跡に向き合い、その細工の出来栄えにヴォルフガングは感嘆していた。
しかして、その表情からは内面がまだ読み取れず少々不安を覚えるあみが。
(うう……楽しんで、くれてますかね……)
それでもその集中する横顔を見て、お邪魔しない方がいいかしらと少し距離をとったところで、あみは見知らぬ男性観光客から声をかけられた。

「ねぇねぇ!さっきから見てたんだけど、もしかしてウィンクルム?神人?」
「え?は、はい。そうです」
「うわ!俺初めて見た!こんな可愛いコが戦ったりするの?!」
「俺もっ。ねえ、戦う時以外の時間ってウィンクルムの人は普段何してるの?」
「あ、ええと……その……ミニブタさんと、遊んだり……」

(あわわ……どうしましょう……っ)
知らない人間たちが少々苦手なあみは、心中動揺と緊張で体が動かなくなっていた。
この時、ヴォルフガングは視界にあみが映らないことに気付く。
遺跡から視線を外して辺りを見渡すと、不自然な位置に観光客の塊があるのを見つける。その隙間から見覚えのある服がちらちらと垣間見えた。
無意識に急いでそこへ寄っていったところで、ぴたり、とヴォルフガングの足が止まった。
その瞳の中にはほんのりと笑みを漏らすあみの姿。

「え?!動物の飼育とかしてるの?俺んち!農家だから馬とかブタとかいっぱいいるんだよ」
「ブタってその種類によって大きさも模様も違って、可愛いよなー」
「は、はいっ。そうなんです……!可愛くって……っ名前も付けちゃったり」
「あ、分かる!名前呼ぶとどんどん愛着湧くよね!」

(良かった……いい人たちみたいです)
普通に会話が出来ていることに、ホッとしていたあみの、ようやく顔を上げた視界にヴォルフガングが此方を向いて立っている姿が入ってきた。
囲まれていることに気付いてくれている様子に、安堵の色を浮かべるあみだが、その顔色はすぐに僅かに曇っていくことになった。
(……私がここにいるの、気付いてます、よね?……な、なにかいつもと表情が……?)
日頃あまり表情の動かないヴォルフガングだが、あみの目からは何かが違うように思えた。


そんなあみたちがいる青龍の遺跡。その青龍の背中側、鱗を食い入るようにファリエリータとヴァルフレードは見つめていた。
「ヴァル、ヴァル!この細かさ、本当に石?!」
「石も加工すると色々な姿を見せてくれるんだよ。宝石だって元は石だろ?」
「あっそうよね!あぁでもすごい……人の手でこんなのが作れるなんて……私にも出来るようになるかしら」
「ファリエ、基本不器用だよな」
「れ、練習すれば私にだって……!」

 そんな二人の会話を、遠目で見ている観光客がいた。
そしてその中の一人が意を決したようにおそるおそるファリエリータに寄って行く。

「あ、あの……!その手の紋章……、もしかしてウィンクルムさんですか!?」
「え?」

 突然声をかけられ、きょとんと見上げるファリエリータ。ヴァルフレードが全く気にしない風で返す。

「そうだけど」
「うわ!俺たち間近でウィンクルムさん見るの初めてで……!
 あっ、握手!してもらってもいいっスか……!」
「ああ!ずりぃぞ俺も!」

 大変いつも通りな顔で握手をとりあえず良しとしているヴァルフレードと、
まだ何が起こっているか分からず、されるがまま握手しているファリエリータ。

「それにしても彼女可愛いっすね!」
「いや別に彼女では」
「ええ?!ウィンクルムって絶対恋人同士がなるものなんだと思ってた!!」

 ここでファリエリータ、覚醒。
みるみると顔が赤くなっていく様に気付いたヴァルフレードが、こっそりと噴き出す。

「ファリエリータさんっていうんですね!さっきから聞いてたんスけど、石とか宝石、好きなんですかっ?」
「あ、その、ええ!ジュエリーデザイナーになりたいなって……」

 先程までの動揺を挽回するかのように、次々される質問にあくまでにこやかに返すファリエリータ。
しかしその視線はちょくちょくヴァルフレードに注がれる。
(居てね!そこに居てねっ離れないでね!ヴァル……!)
そんな視線の意図を察したヴァルフレードは、肩を震わせながらもハイハイと片手で了解を伝える。
ファリエリータがここまで緊張している様は珍しいと、しばし堪能する姿勢になったヴァルフレードだが……
その浮かべていた笑みは、ファリエリータの肩に男性の手が置かれたあたりから次第に薄れていくことになる。


「どうして……なんでカガヤは女子大生に囲まれているんですか……!?」

 こんなはずでは状態に陥っているのは、白虎の噂のご利益にあやかりに来たはずの笹。
それが今や試練を与えられているかの如く、パートナーであるカガヤは女子大生の観光客数名の輪の中心に居た。

「それにしてもウィンクルムって、一人で観光なんてすることもあるのねぇ。
 良かったら私たちと回らない?」
「いや!一人ってわけじゃないんだけど」
「ね!頬に口付けて、トランス?っていうのになるって本当?」
「うん。本当だよ」
「キャーッ素敵!それ、私やってみたーい!」

 笹の目には、女子大生に囲まれて楽しそうにしているように見えるカガヤが映っていた。
女子大生たちがモデルのように長身ばかりなためか、少し距離があったとはいえカガヤの後ろに居た笹の存在に素で気付いていないようである。

「ねぇ、本当良かったら私たちとこの後回りましょうよ!ウィンクルムのこともっと聞かせてっ」
「そうだね……大勢の方が楽しそうかなー。連れがいるから聞いてみてからでもいい?」
「え~。どこに~?」

ぷちっ
笹の中で何かが切れた音が。
隙間をかいくぐるように意外な素早さでカガヤと女子大生の間に割って入ると、その腕を掴んでぐいぐい引っ張っていく。

「カガヤ!……ちょっとこっちに来てください……」
「あっ、笹ちゃん」
「え?!……もしかしてパートナーのコ?」
「やだ可愛い!!ちょっと待ってー!」

 図太い女子大生たちは、噂の白虎の前まで移動する二人の後をまだ付いてきていた。


「うーん……暗号自体が古代文字……この文字をまず勉強しないと解けないわねぇ」

 玄武の遺跡台座とにらめっこしていた輝は、しばし暗号文字解読に挑んでみたものの溜息をついて顔を上げた。
他の遺跡に比べてあまり人がいないのをいいことに、少々陣取り過ぎていたかもしれない。
輝はいそいそと台座から離れると、先ほどまで一緒に古代文字をにらめっこしていたはずのアルベルトの姿が無いことに気付く。
そしてすぐにそのパートナーは発見できた。玄武の遺跡内で唯一、人だかりの出来ている箇所があったからだ。
(アル?……おばさまに囲まれてるわ……)

「お兄さんったら本当にイケメンの長身ねー!」
「恐れ入ります」
「遺跡にお勉強にきたの?ウィンクルムさんは勤勉なのねぇ。うちのバカ息子にも見習わせたいわーっ」
「いっそうちのコのお婿にこない?!ウィンクルムさんだって結婚出来るんでしょ?」
「私なぞ大事なお嬢さんのお相手になりませんよ」

 一斉に囲んできた年配の集団に、一瞬は困惑したもののすぐに爽やかな好青年を演じているアルベルトを、後方で観察する輝。
最初のうちは、
あぁ……本当のアルのこと知らないで……、腹黒眼鏡なのよ本性はっ、など、
表面上ばかり見ているおばさまたちに自分は同情をしているのかと思っていた。
しかし、その胸の内には次第にもやもやしたものが溢れてきていた。

(婿になんてなれる訳ないじゃない。アルは私の……、……
 私の、何なのかしら……そして私はアルにとって何なのかしらね……)

 考え込むように上の空で、いつの間にかその場を離れていた輝がいた。


●それぞれの思いと想い

(あああ……なんか、絶対あれ怖いオーラです……っ)

 男性観光客と打ち解けて話せているものの、もはや確信に変わりつつある、
自分から見たヴォルフガングの雰囲気に焦り始めたあみ。
それを間近で見た者ならば、怖いどころか相当の殺気にすら思える威圧感を放っているヴォルフガングをこれ以上放っておくことは出来ず。

「申し訳ありません……その、集合時間に遅れますので……そろそろ」
「あ?そうなんだ?残念だけど……またね、あみちゃん!」
「は、はい。失礼します……っ」

 ようやく解放されたあみは、すぐさまヴォルフガングの下へと駆け寄って行った。

「あの……ヴォルフガングさん、少々こちらへ……」
「……」

 あみが戻ってきたことにより、先ほどまでの威圧オーラは解いたものの
やはり明らかにいつも以上に無表情な様子に、急いであみは人の少ない場所へと移動する。
そして着いた途端、がばっとヴォルフガングへ頭を下げた。
あみの唐突な行動に目を丸くするヴォルフガング。

「ご、ごめんなさい!ヴォルフガングさん……。私、何か気にさわることを……」
「あ……いや……」
「ずっと待ってて下さったんですよねっ。それなのに私ったら……」
「……」
「……ヴォルフガング、さん?」
「……少し……その……あみが楽しそうに、知らない男と話をしているから……」

 ようやくその口から紡がれた言葉に、今度はあみが目を丸くする。

「俺が……大人げなかった。すまない……」
「あ……いいえ」
「しかし……何故青龍の遺跡を選んだんだ……?」

 青龍の遺跡以外に行けばきっとこんなことには……、と無自覚にあった思いをつい口にしたヴォルフガング。

「その……ヴォルフガングさん、アクセサリー作ってるから精巧な細工の遺跡に行ったら
 喜んでくれるかな……と思ったんですが……」
「…………そう、だったのか……」

 あみの温かい視線と言葉を受けて、少々居た堪れない表情になるヴォルフガングに、
あみは自然と和らいだ顔になっていく。
それを見たヴォルフガングもまだ気まずい空気を纏っているものの、微かに笑みを返して。
また新しい一面を垣間見れたのかもしれない。そんな嬉しさがお互いの心に刻まれた。


「ねっ。遺跡見学の後どこかでお茶しない?勿論、そっちのパートナーさんも一緒でいいからさ!」
「は……え、ええとぉぉぉ……」

 ここまでどうにか上手く会話をしていたファリエリータだが、調子にのった男性観光客に肩を掴まれ流されかけ始めている。
限界はそろそろだった。
(ヴァ、ヴァル~~~~~……っ)

 心の中で叫ばれた助けの声が届いたかのように、突然それまで傍観を決め込んでいたヴァルフレードがファリエリータの真横に立った。
そして。

「悪いけど、そろそろコイツ返してくれ」
「!!はいっ!すんませんでした……っ!!」

 ファリエリータに見えない角度で、睨みをきかせたヴァルフレードの視線にあっけなく退散する観光客たち。
何が起きたのかとポカンとするファリエリータを引っ張る形で休憩所までやってくれば、
どっと疲れが押し寄せてテーブルに突っ伏すファリエリータ。
その額をヴァルフレードが小突く。

「ううう気疲れしたぁ……っいた!……え??」
「いつまであいつらに時間使わせる気だったんだ?俺と遺跡を見る気がないのか」
「そ、そんなことあるわけ……! ……ヴァル、もしかして助けてくれたの……?」
「さぁね」

 そっぽを向くヴァルフレードをしげしげと眺め。
ファリエリータのその顔にはどこかはにかんだものが浮かべられていた。


 白虎の遺跡前、まだ二人を構いたそうな女子大生を眼中に入れず、カガヤの腕をぐいっと引っ張り上げてその前足に手をのせる笹。
自分の手もそこへとやりながら ぽそり。

「わたくしみたいな……ちんちくりんより……他の女性が良くてもかまいません……けど
 わたくしがパートナーなのは忘れないでください……」

 今にも消え入りそうな、聞いたことがないような声のトーンで言われた言葉に、カガヤはしばし笹を見つめ。
日頃、自分の願望をあまり口にしたことがない笹の口から放たれたそれに、カガヤは思う。
(口にしちゃうほど……俺が他の女の人と話すのが嫌だったのか……?)

掴まれた腕、重ねられた手に視線を移して何かを考え。
そして、うん!とばかりに一人頷くカガヤに、怪訝そうな目を向ける笹。

「笹ちゃん!走るよ!」
「はい?……ええ?!」

 いきなり今度は自分の腕が掴まれ、すごい勢いで引っ張られれば口を開く間もなく連れ去られる形で走り出す笹。
目の前の突然の逃走に、女子大生たちはあっけにとられて追いかける余裕は無かった。

「フーッ。ここまでくれば、平気かな?」
「ハァ……ハァッ……カ、カガヤ……?何ですか突然……」
「え?だって笹ちゃんと二人きりになりたかったから」
「……え?!」
「あのお姉さんたちが居るの、やだったんでしょ?
 笹ちゃん、人見知りなとこあるもんね。ゴメン、俺ばっかり平気で話してて……」
「……」

(気付かなくてゴメン、は そこじゃないです……けど……)

 2人きりになりたかったと、カガヤの口から聞けた。
ちょっと的外れだったとしても、自分を思っていってくれた言葉に変わりはない。
白虎の前足に一緒に置いた、手の温かさを思い出しながら笹はまだ繋がれたままのその手をぎゅっと握り返すのだった。


「あら……いつの間に私こんなところに……」

 考え事をしていて気もそぞろだった輝は、玄武の遺跡から気づけば青龍の遺跡前までやってきていた。

そんな輝を凝視していた男性観光客が、一人二人と寄っていく。

「ねぇ!もしかして君も、ウィンクルム?」
「え、はい。君も……?」
「やっぱり!今日はウィンクルムをよく見かける気がして!
 俺さっきのコには声かけそびれちゃったから!」
「はぁ……」
「ね、ね。手の痣、だっけ?見てもいい?」
「それよりお姉さんどうやって戦うのか教えてよ!すごく頼もしそうだけど、武器とか使うの?」
「え、あの?すみません、私、連れとはぐれて……
 戻らないといけないので、あの、どいて頂けませんか……」

 次第に囲まれていく様に、押しのける訳にもいかず。
ただでさえ考え事をしていてまだ頭が働かない輝は、しどろもどろに押されていく。
どうしよう……
そう思った矢先、ここにいるはずのない声が聞こえてきた。

「輝、何をやってるんですか。いい歳をして迷子ですか?」
「アル……!」

 先程まで玄武の遺跡でおばさま方に囲まれていたアルが、どうしてここに?
そんな輝の思考を読み取ってはニッコリと笑みだけ返し、アルベルトは流れるような動きで輝の手を引いて自身の方へと寄せる。

「あのっ、アル……?!」
「や!もしかしてパートナーの、精霊さん、ですかっ?
 運がいいなー!良かったら2人ご一緒でいいんで!お話聞かせてくださ……、っっ!」

 まだ好奇心で溢れていた男性観光客が、アルベルトにも顔を向けて話し出した途端、ぴしりと固まった。
誰がどう見ても、そのアルベルトの表情は笑っているようで目の奥が冷めていたのである。
「すいません。失礼しますね」
「どうぞーーー!!!」
「あぁ。それと……頼もしく見える女性ほど、可愛らしい一面があるものですよ?」
「!??」
「はははいっ!そうッスよね……!!」

 ニッコリと氷の笑顔を崩さずに、輝の手をとったままその場を去ろうとするアルベルト、さっきの会話を聞いていたらしく
さりげなく一言付け加えて颯爽と踵を返していった。
当然誰も止められる者はいなかった。

 手を繋がれたまま休憩所に来れば、ようやく諸々から解放されすっかり体も顔も火照った輝はよろよろと椅子に腰かける。
その隙にアルベルトは傍の自販機で飲み物を調達すれば、輝の前に果汁100%ジュースを差し出して。
それをたどたどしい手つきで取っては、コーヒーを飲んでいるアルベルトを不思議そうに見上げる輝。

2人の視線が合わさる。どちらからともなく苦笑いを浮かべ。

「私……なんだか、アルがおばさまと喋っているの見ていたら……もやもや、してしまって……」
「……実は私もですよ」

 もやもやの原因はハッキリしないものの、二人が同じ思いを感じ。
そのことがどこかくすぐったく、嬉しくもあった。


●集合

「全員揃いましたかー!はいっ皆様、時間厳守素晴らしいです!」

 待ち合わせ時間には、参加したウィンクルム全員がしっかりと中央地に集まった。
それを確認しつつ、ツアーコンダクターは念のための一声。

「ところで皆様、募金はちゃんとしてもらえましたでしょうかー?」

「「「あ……」」」

 3組のウィンクルムがハモった。
微笑みを向けるツアーコンダクターの胸に痛い視線を受け、慌てて募金をしに駆けだすウィンクルムたち。

「あの、カガヤ?私たちも……」
「俺ちゃんと募金しておいたよ!」
「……いつの間に……」
「笹ちゃん掴んで駆けだす寸前!」
「しっかりしているのか、こういう時だけと呆れるべきか悩みますわね……」
「なんで?!褒めてくれないのっ?」

そんな微笑ましいやり取りがあったとか



依頼結果:大成功
MVP
名前:月野 輝
呼び名:輝
  名前:アルベルト
呼び名:アル

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 津木れいか  )


エピソード情報

マスター 蒼色クレヨン
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 4
報酬 なし
リリース日 05月14日
出発日 05月20日 00:00
予定納品日 05月30日

参加者

会議室

  • [4]手屋 笹

    2014/05/18-15:52 

    手屋 笹と申します。
    精霊はテイルスのカガヤです。
    よろしくお願いしますね。

    あみさんとファリエリータさんは初めまして、よろしくお願いします。

    輝さんは先日のオーガ退治お疲れ様でした。

    さてわたくし達は…どこへ行きましょう(汗
    白虎か朱雀の遺跡かで悩みましたが…

    それでは…白虎の遺跡に向かいます。
    ウィンクルムなので恋愛成就の噂も少し気になりますしね…。

  • [3]あみ

    2014/05/17-20:23 

    皆さん初めましてっ!
    あみと申します~。パートナーはポプルスのヴォルフガングさんです。
    よろしくお願いしますね~。

    私達も青龍の遺跡に行こうかと思います~。
    遺跡楽しみですね♪皆さん、楽しみましょ~!

  • [2]月野 輝

    2014/05/17-08:34 

    こんにちは、あみさんは初めまして。
    ファリエリータさんと笹さんは先日ぶりね。
    月野輝とパートナーでマキナのアルベルトです、よろしくね。

    私達は今のところ、『玄武の遺跡』に行こうかなと思ってるわ。
    暗号に興味あるのよね。
    私達二人とも、ミステリーとか好きなので。

    ただ白虎も朱雀も気になるのよねえ。
    数カ所回ると見学内容(描写)が薄くなりそうだし、
    たぶん玄武だけにするとは思うのだけど。

  • ファリエリータ・ディアルよ、よろしくねっ!
    パートナーはディアボロのヴァルフレードよ。

    私達は『青龍の遺跡』に行ってみようと思ってるわ。
    精密な細工、見てみたいものっ。


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