【浄罪】お前とこれが見たかったんだ……(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「お前とこれを見たかったんだ……」
 外でははらはらと舞い散る粉雪。
 初雪が降り落ちれば、息は白く高い空気まで登っていく。
 キラキラ光る爪の先。目の奥までしんと澄み通っていくような寒さの季節。
 そう言った精霊の瞳の輝きは、子供のように純粋で。

「はあ、これが?」

 貴方は、目の前の光景を見て、思わずそう答えてしまう。
 それはスーパーの入ってすぐのところに天井まで積み上げられた鍋のスープ各種であった。
 寄せ鍋 キムチチゲ 塩レモン もつ鍋 ごま豆乳 柚子鍋 赤から鍋 水炊き 甘熟トマト チーズカレー鍋 etcetc……。

「凄いだろ!? 定番から聞いた事もないようなのまで何でも揃っているんだぜ!」
「ああうん、そうみたいだね。それでお前はイルミネーションの絶景にでも案内したように何を言っているんだよ」
 思わずそう突っ込んだが、あなたもちょっとは興味を惹かれる。珍妙なのには興味がないけど、とんこつ醤油鍋つゆって普通においしそう。いつもは昆布で出汁取って鍋作っているけれど、たまにはスープの素もいいかな。
「なあなあ、これとか、これとかは? これも食べてみたい!」
 しかし精霊が持ってくるのは、本当に聞いた事もないような鍋のスープばっかりで、あなたはちょっと疲れてしまう。
「どれか一個にしろよ。それとあんまり変なの持ってくるな」
「作ってくれるのか!?」
「そのつもりで連れてきたんだろうが、具材も一緒に買っていくから、お前も手伝え」
 そういう訳で今日はウィンクルムで鍋のスープの素で二人パーティ。
 熱い鍋をつついているうちに、二人の家の外に落ちていた『ギルティ・シード』も砕け散ってしまうだろう。

解説

 スーパーで鍋のスープの素を買ってきて、神人、精霊、あるいは二人で暮らしている家のいずれかで鍋を作って食べ、知らないうちに庭に落ちていた『ギルティ・シード』を砕いてしまうエピソードです。

●鍋のスープの素は、本文中にあるものでも、ないものでも構いません。どこにでもある定番から、架空のぶっ飛んだスープの素でも何でも構いません。(魔法のような効果があるものは避けてください)
●スーパーで鍋の具材も二人で選んで購入して下さい。
●いずれかの家に持ち帰って一緒に鍋を作って食べてください。
●その間、どんな会話、言動をしたかなどをプランに書いてください。
●鍋の材料を買ったので300Jrかかりました。

 二人で鍋を作ってつついて愛のある会話をしているうちに、外で勝手に『ギルティ・シード』は砕けてしまいます。寒い季節にあつあつのプランをお待ちします!



ゲームマスターより

鍋の美味しい季節になったと思いアップです。最近びっくりするようなスープの素が売られていますよね。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)

  白菜豚肉ミルフィーユ 鍋を作るぜ。
先日コレの簡単レシピを店で貰ったからさ。
すげー簡単そうだった。「今日の夕食はオレに任せとけ!」
ラキアと一緒に買い物。
鍋のスープも「だしのもと」でOKな潔さ。いいじゃん。
白菜はラキアに選んでもらってさ。
豚肉は俺が吟味し、最終判断はラキアに委ねる。
「ウマイのを選んでくれよ」
これだけでいいのか。もっと肉増やす?

調理も2人で。白菜洗って、豚バラを広げて、白菜と交互に挟む。のか。
いい感じの大きさに切って、鍋に詰め詰め。
綺麗に詰めるの難しいじゃん。ラキアこういうの上手いな。
後は出汁入れて煮込むだけ。
手軽でたっぷり食べられるから好き。
ラキアと一緒に食べるとより幸せで嬉しい。


信城いつき(ミカ)
  寒いから今日は鍋にしようよ

色々種類があるね。塩レモン鍋……酸っぱいよね、どういう味なんだろ?

やってみようか(ミカに合わせてにやり)
せっかくなら具も変わったのにしようよ

肉団子の代わりに冷凍シューマイいってみよう。作る手間もはぶけるし
レタスならプチトマトもいけるかな
冷蔵庫に残ってたちくわも入れるよ、出汁でるし
(あとは適当に購入)

締め?んん…期待されたら考えないと
酸味があるから酸辣湯麺風にしてみようか

あーおいしかった
今年ももうすぐ終わりだね
そうだミカ、今年も色々お世話になりました!

あ、ミカの返事が去年と少し違う【エピ(ミカ9)】。
少しは俺もミカの役に立ててるのかな、だったら嬉しいな

へへっ、教えない!


シムレス(ロックリーン)
  音楽は騒々しく落ち着かないが中々興味深い場所なのだなスーパーとは
等と感想を抱きつつ鍋スープコーナーの豊富な種類を眺めている
鍋にする?と聞かれたのでそうだなと答え気になった物を選び彼と材料を買い帰宅(ソドリーンの家

ごま豆乳鍋のパッケージ凝視
「スープが白い

材料切り始めた彼を見て
「俺も何かしよう やれる事はあるか
盛大に驚かれたがこれまで言った事が無いので無理も無い
「あんたの日頃の労に報いる一歩だ
迷惑かと問えば首を振られ笑顔を見せるのでほっと

指導を受け初めて包丁で野菜を切ってみる
指も切った
失敗を責めずフォローしてくれる彼に感謝だ

コタツに入り鍋の出来に満足
「祝われる様な事か?
だがくすぐったく嬉しい


咲祈(ティミラ)
  水炊き/鶏肉や野菜など購入/精霊宅
物珍しさで兄にいろいろまずそうな素を見せたりしたが、全て却下され、水炊きで収まった

変な素?
珍しいから。……じゃ駄目なのかい
 にしても。鍋物が美味しい時期、なのは分かるけれど
売り場の鍋の素のタワーはすごかった
 で、鶏肉はどう切れば?
そうかい、分かった(野菜を受け取る
料理は、ほとんどサフィニア任せだったから、慣れてない

鍋って、普通に作れば美味しい、ね
あの子(幼馴染)は余計な物入れるから料理じゃなくなっていた
……? アネモネ(幼馴染の名前)のことだけど
分かるさ?(首傾げ


ルゥ・ラーン(コーディ)
  ふふ…その曰くとやら、もっと聞かせてくれませんか
少ない荷物を整理しながら楽しそうに笑う

ええ お気遣いに感謝しますよ
ではお邪魔させて貰いましょう

まずは買物、と彼に道案内され近くのスーパーへ
鍋スープ売り場に目を留める
これいいですねと手に取ろうとしたら
彼の手が先に伸びそれを取った
ええチゲです
好みが同じで喜ばしい

買物済ませ彼の家へ
オリエンタルを感じさせる部屋の印象…心地よい気です
手伝いつつ手際に感心
踊り子さんは料理もテンポがいい

テーブルに出来上がった鶏肉と白身魚のチゲ鍋とお酒はマッコリ
では、この日よりこの長屋の住人に加わらせて頂きます
不束者ではありますが…
はい、乾杯
ふふと笑顔

曰く話は興味深く聞く


●シムレス(ロックリーン)編

 今日、シムレスと精霊のロックリーンは一緒にスーパーに出かける事になりました。
 ソドリーンは忘年会です。
「僕らだって負けずにご馳走食べよう、シムさん!」
 そこでロックリーンがそう言ったのでした。
 それでロックリーンがスーパーに出かけようとすると、珍しくシムレスが買い物についてきたのです。
(一緒に買い物は嬉しいな)
 ロックリーンは上機嫌でした。
 一方、シムレスの方は店内をじっと観察しています。
(音楽は騒々しく落ち着かないが中々興味深い場所なのだなスーパーとは)
 シムレスはそんな感想を持ちます。
 そうして、天井まで届く鍋のスープを積み上げたコーナーに興味を惹かれ、豊富な種類を眺めて回りました。
「鍋にする?」
 ロックリーンにそう聞かれたので、シムレスは「そうだな」と答えました。
「何に惹かれたの?」
 シムレスが凝視していたのはごま豆乳鍋のパッケージでした。
「スープが白い」
(色が味の想像かきたてるのかな……)
 二人はごま豆乳鍋のスープをかごに入れ、ロックリーンと店内を回って材料を買いそろえました。
 帰宅したのはソドリーンの家です。
 ロックリーンは早速、台所で準備を始めます。
 材料を切り始めた彼を見て、シムレスが近づいてきました。
「俺も何かしよう。やれる事はあるか?」
(シムさんが調理を手伝う!?)
 ロックリーンは心底びっくりしてしまいました。
「あんたの日頃の労に報いる一歩だ」
 シムレスがそう言っても、ロックリーンは固まっているようです。
「迷惑か?」
 シムレスがそう問いかけると、ロックリーンは慌てて首を左右に振り、笑顔を見せました。
(でも思い当たる事が……最近シムさんは僕等二人をとても気遣う言葉を掛けてくれる。大怪我から回復した過程できっと彼に心境の変化があったんだね)
 シムレスはロックリーンに指導を受けながら、初めて包丁で野菜を切ってみました。
 なにぶん、全くの初心者ですから、今日は指も切ってしまいました。
 シムレスは失敗を責めずにフォローしてくれるロックリーンに感謝します。
 ロックリーンはシムレスの切った指に絆創膏を貼ってあげました。
 鍋料理が終わるまでに、絆創膏は三箇所になっていました。
「誰でも通る道だから」
「そうか」
 ロックリーンの言葉に、シムレスは気持ちを持ち直したようです。
 鍋が完成し、ロックリーンは居間のコタツにセッティングしました。
 シムレスの方も、初めて自分が手伝った鍋の出来には満足です。
「さあ食べようか。シムさん白ワイン飲んじゃお」
 ロックリーンが鍋をお椀によそってあげて、ワインも注いであげます。
「シムさん初料理カンパーイ」
「祝われるような事か?」
 ですが、くすぐったくも嬉しいシムレスなのでした。
 精霊が成長する時には神人も成長し、神人が成長する時には精霊も成長します。そうしてお互いに認め合い、高め合う絆が、ウィンクルムなのでしょう。
 二人で作った鍋を食べながら、二人はいつになく温かい充実感も味わって、お互いに酒を酌み交わし語らったのでした。

●ルゥ・ラーン(コーディ)編

 今日、精霊のコーディの長屋に、その神人ルゥ・ラーンが引っ越してきました。
「まさか君がここに住むなんてね」
 長屋の最奥にあるいわくつきの、ずっと誰も住まなかった部屋です。
 コーディが入ったその部屋の玄関で、ぽつりとコーディは言ったのでした。
「ふふ……そのいわくとやら、もっと聞かせてくれませんか」
 ルゥは、少ない荷物を整理しながら、楽しそうに笑っています。
「今日は引越祝いをするつもりだったけど……」
 コーディはルゥの部屋を見回します。
 彼の部屋には、ろくな家財道具も調理道具も、何もないのです。
 それでコーディは必然的に
「うちでやるから来てよ。鍋でいいよね」
「ええ。お気遣いに感謝しますよ。ではお邪魔させてもらいましょう」
 ルゥは微笑を見せました。
 まずは買い物、という訳で、コーディに道案内されて、近くのスーパーへ向かいます。
 ルゥは鍋スープの売り場に目をとめました。
「これいいですね」
「これ」
 ルゥがスープの素を取ろうとした時、コーディが同じものを先に取ってしまいました。
「やっぱりチゲだよね」
 コーディは笑ってしまいます。
「ええチゲです」
 鍋の好みが同じで、コーディはルゥの印象がアップしました。
 買い物をすませて、二人はコーディの家に帰ります。
 オリエンタルを感じさせるコーディの部屋は、ルゥにとって心地よい空気に満ちていました。
(料理は得意じゃないけど、鍋なら問題ない)
 台所に向かう横で、意味深な笑みのルゥにコーディは振り返ります。
「何?」
「いい“気”に満ちてますね」
「気? まあ心地いいなら良かったよ」
 そう言って、コーディはスピーディに野菜をザクザク切っていきました。
 ルゥは手伝いながらその手際に感心します。
(踊り子さんは料理もテンポがいい)
 あっと言う間に鶏肉と白身魚のチゲ鍋と、マッコリのお酒がテーブルの上に並べられました。
「では、この日よりこの長屋の住人に加わらせて頂きます。不束者ではありますが……」
 乾杯を待っていたコーディの前に、ルゥは頭を下げました。
「不束者って……」
 コーディは思わずくすくす笑ってしまいました。
「僕に嫁ぐにはまだ気が早いんじゃない? ようこそ、乾杯」
「はい、乾杯」
 二人は盃を合わせます。
 ルゥはふふ、と意味深な笑顔です。
 食べながら、コーディは最奥の部屋のいわく話を始めました。
 ルゥは楽しそうに興味深く聞いています。
(ただ者じゃない……)
 コーディはそう感じました。
「面白いね君」
「そうですか? ありがとうございます」
 ルゥは食えない笑みでそう返事をしたのでした。
 コーディのルゥに対する印象は最初から良いものでしたが、今日を迎えて好印象が深まっていくようです。
 ルゥが意味深な笑顔の奥で何を考えているのかは、まだ分かりませんが。同じ長屋に住む事になった以上、お互いをよく知り合う事で、絆は深まっていくでしょう。
 素晴らしいウィンクルムになれますように。

●セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)編

 その日、セイリュー・グラシアは精霊のラキア・ジェイドバインと共に、近くのスーパーを訪れました。
「今日の夕食はオレに任せとけ!」
 白菜豚肉ミルフィーユ鍋を作るつもりなのです。
 先日、その鍋の簡単レシピを店でもらったのでした。
 セイリューには凄く簡単そうに思えました。
(珍しくセイリューが料理に超やる気を出すなんて……)
 ラキアも意外な気持ちです。
(でもメニュー聞いて納得。豚肉たっぷり食べられるものね)
 白菜もどっさり食べられるので、ラキアも賛成です。
 ミルフィーユ鍋は美味しいし、調理も簡単です。失敗も少ないから、セイリュー向きの料理だと思えました。
 買い物には勿論、二人で行くのです。
 ラキアと一緒に買い物で、セイリューは見るからに楽しそうです。
 ラキアが売り場の白菜の傷み具合を調べ、新鮮な物を選んでかごに入れます。
 豚肉はセイリューが吟味して、最終判断をラキアに委ねます。
「ウマイのを選んでくれよ」
「はいはい」
 ラキアは笑って豚肉の鮮度を見ています。
「これだけでいいのか。もっと肉増やす?」
「セイリュー、お肉1キロも要らないから」
 ラキアは思わず力説してしまいます。
 それからセイリューが選んだ鍋のスープは「だしのもと」でした。潔いです。
「いいじゃん」
 ラキアは彼らしいと笑っています。
 家に着くと、早速二人で調理を始めます。
 ラキアは白菜を外してセイリューに手渡します。
「はい、洗って」
 セイリューはラキアの指示に従って、肉と交互に挟みます。
「これぐらいの大きさに切ってね」
 セイリューはラキアの言う通り、素直にいい感じの大きさに切っていきます。
 その間にラキアは鍋を用意します。
 最初はセイリューに具材を鍋に詰めて貰いました。
 詰め詰め……。
「綺麗に詰めるの難しいじゃん」
「鍋の縁から詰めていくといいんだよ」
 ラキアが手伝うと、セイリューは要領を掴んで形良く詰め始めました。
「ラキアこういうの上手いな」
 後は出汁を入れて煮込むだけになりました。
 ラキアが出汁に塩とお醤油で味を調えます。
 あとは生姜も少しだけ入れて、煮込んで出来上がりです。
「手軽でたっぷり食べられるから好き」
 セイリューは満足そうです。
 それから二人で鍋をテーブルに運んで、向かい合って座ります。
 セイリューの頑張ったミルフィーユ鍋を二人で舌鼓。
「ラキアと一緒に食べるとより幸せで嬉しい」
「とっても美味しいよ、セイリュー」
 二人の温かな雰囲気が伝わってきたのでしょうか。湯気のほわほわしているテーブルの周囲に、レカーロのユキシロが寄ってきました。湯気と匂いに対して鼻をひくひくしています。すると、それに気がついてクロウリー、トラヴァース、バロン達が寄ってきて二人の足にまとわりつきます。
「ああ、もう……人間の食べ物はお前達には毒なんだよ。分かって」
「はは、少しならいいかな」
「セイリュー!」
 ほかほかした鍋の周囲に、ほかほかとした光景が広がります。ずっとこうしていたいと思えるような、幸せの温度が家中に満たされているのでした。

●咲祈(ティミラ)編
 
 今日、咲祈は精霊のティミラとスーパーに鍋のスープの素を買いに来ました。
「なんでツバキは変な素ばっかり持ってくるんだよ、もう」
 次々に鍋のスープの素を持ってくる咲祈にティミラは困惑顔です。
「変な素? 珍しいから。……じゃ駄目なのかい」
 咲祈は不思議そうにしています。物珍しさで咲祈は兄に色々とまずそうな素ばっかり見せるのです。
「別に駄目なわけじゃないけど……やっぱり、駄目」
 ここで駄目ではないと言えばまた次も妙なものを持ってくるかもしれない、と思い直してティミラはきっぱりと言い渡しました。
 そういう訳で咲祈が持ってきた鍋のスープの素は全て却下され、今夜は水炊きをティミラの家で作る事になりました。
「……にしても、鍋物が美味しい時期、なのは分かるけれど、売り場の鍋の素のタワーはすごかった」
 帰って来てからも咲祈はそう言いました。
 本当に天井に届くほどの高さで鍋のスープの素ばかり、何種類も積み上げられていたのです。
「あのスーパーは気合い入りすぎ」
 ティミラは半ば呆れてそう言いました。
 二人で鍋のスープや具材を抱えてキッチンへと入ってきます。
「で、鶏肉はどう切れば?」
「ん? ああ、良いよ。ツバキ野菜切ってくれる?」
「そうかい、分かった」
 咲祈は平然と野菜を受け取って、まな板の上に置いて、包丁で切ろうとしました。
 人参を切ろうとする手が頼りなく震えているので、ティミラは思わず声をかけてしまいます。
「ツバキ、猫の手猫の手。……こういうのしたことない?」
 ティミラが猫の手の構えをしてみせると、咲祈はキョトンとして、見よう見まねで言われた通りに人参を切って見せました。
「料理は、ほとんどサフィニア任せだったから、慣れてない」
「あ、そっか。サフィニアが作ってるんだ」
 ティミラは思わず納得です。
 ティミラが色々と咲祈に教えてあげながら、何とか水炊きを作り終え、二人でテーブルにセッティングしました。
 二人で鍋をつつきあいます。
「鍋って、普通に作れば美味しい、ね。あの子は余計な物入れるから料理じゃなくなっていた」
 やはり、平然とした顔で咲祈が言いました。
「あの子? ……ツバキ、あの子って、どの子」
 ティミラは少し驚いて、そう問い直します。
「……? アネモネのことだけど」
 アネモネとは、幼なじみの名前です。つまり、あの子とは、幼なじみの事。
「え、分かるの……? 彼女のこと」
「分かるさ?」
 咲祈は不思議そうに首を傾げました。
(自分のことは分からないのに、彼女のことは分かるって……我が弟なのに謎だ……)
 ティミラは本当に驚きましたが、咲祈があんまり平然としているので、そのときは一緒に鍋を食べながら特別問い詰める事はしませんでした。咲祈が覚えている事には何かわけがあるのでしょう。それは聞くべき時が来るまで、待とうと思ったのでした。

●信城いつき(ミカ)編

 ある日、信城いつきが精霊のミカに言いました。
「寒いから今日は鍋にしようよ」
「鍋か」
 ミカが繰り返します。
「そうだな、ちょうど鍋の素も売ってるし家に戻ってすぐできるな。色々種類があるけど、チビは何がいい?」
 そうして二人で近くのスーパーに行くと、鍋の素が天井近くまで積まれているタワーがありました。二人で見て回ります。
「色々種類があるね。塩レモン鍋……酸っぱいよね、どういう味なんだろ?」
「やってみるか?」
 ミカがにやりと笑っていつきを見ました。
「やってみようか」
 いつきもミカに合わせてにやりです。
 二人は塩レモン鍋をかごに入れ、野菜コーナーなどで具材を見る事にしました。
「せっかくなら具も変わったのにしようよ」
 いつきが提案します。
「白菜の代わりにレタスでもいけるんじゃないか」
「肉団子の代わりに冷凍シューマイいってみよう。作る手間もはぶけるし。レタスならプチトマトもいけるかな。冷蔵庫に残ってたちくわも入れるよ、出汁でる」
 他にも色々適当に購入して、二人は自宅に帰りました。
 家に戻って、ミカは鍋の準備をします。
 レタスを手で千切り、鍋の素と具を適当に放り込みました。
 そうして出来上がった鍋をテーブルに運び、二人で賞味します。
「適度な酸味があって食が進むな、具も普通にいける。チビちゃんはどうだ?」
「おいしー!」
「トマト熱いから気をつけ……ほら」
 言っているそばから、いつきはあつあつのプチトマトを食べようとして舌を焼いて大慌てです。
 ミカはさっと水を渡してあげます。
 すると、いつきはふうふうと発しながら何か言おうとしています。
「うまかったのは分かるから落ち着いて話せ」
 いつきはすると笑顔で他愛ない事をしゃべり出しました。
「変わりもの鍋だったんだから、締めもまかせた」
 食べ終わる頃に、ミカはそう言いました。
「締め? んん……期待されたら考えないと。酸味があるから酸辣湯麺風にしてみようか」
 そうして二人は、今日は変わった鍋を心ゆくまで楽しみました。
「あーおいしかった。今年ももうすぐ終わりだね」
「日の経つのは早いな」
 去年の今頃はいつきが不調だった事をミカは思い出します。一年経って元気に笑ってくれるようになった事には、本当にほっとしているのです。
「そうだミカ、今年も色々お世話になりました!」
「はいはい今年はちょっぴりお世話になりました」
 ミカは意地悪っぽい口調でそう言いました。
(あ、ミカの返事が去年と少し違う……少しは俺もミカの役に立ててるのかな。だったら嬉しいな)
 あのときのミカは、『本当にお世話かけられました』と答えていたのです。でも、意地悪を言う割りには、いつきのために特別のピアスを作ってくれたんですが。
「? ……何にやにやしてるんだ?」
 ミカが不思議そうに目を瞬きます。
「へへっ、教えない!」
 いつきはちょっと得意な気分でそう答えました。
 少しずつでもいつきは成長していきます。変化していきます。それはミカも同じでしょう。確実に同じ時を歩む喜びを噛みしめる、素敵な夜でした。



依頼結果:大成功
MVP
名前:シムレス
呼び名:シムさん
  名前:ロックリーン
呼び名:ロック

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月30日
出発日 12月09日 00:00
予定納品日 12月19日

参加者

会議室


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