レトロ喫茶と城塞パフェと(巴めろ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●ようこそ『喫茶バロン』へ
『喫茶バロン』は、タブロス市内に古くからある昔ながらの喫茶店です。
古い蓄音機から流れるクラシック音楽とコーヒーの香りに満たされた店内には、今日もたくさんのお客さま。
メニューは色々とありますが、特に人気なのはマスターのタンザ老人が淹れる格別に美味しいコーヒーと、タンザの妻メリザが作るバニラビーンズたっぷりの手作りプリンとフレッシュフルーツをふんだんに使ったプリンアラモード。
それから――。

●難攻不落のフォートレスパフェ
「レトロ喫茶に興味がある者はいないか?」
A.R.O.A.職員の男が唐突に言った。一同がまだ事態を飲み込めていないのを察してか、男は言葉を継ぐ。
「『喫茶バロン』という、昔ながらの、雰囲気のいい喫茶店を見つけてな。ここのことを知り合いに話してもいいかとマスターに尋ねたら、是非に、と喜ばれて。まあ、そういう次第だ」
美味しいコーヒーに手作りプリンアラモード。クリームソーダにミルクセーキ、ミックスジュースや、見た目も鮮やかなフルーツサンド。
供される飲食物は、ある世代によっては懐かしく思われ、また別の世代の目には物珍しく新鮮に映るだろう。
それから、と男はにやりと笑う。
「その店には落ち着いた雰囲気に似つかわしくない面白い名物があって。『フォートレスパフェ』というんだが」
『フォートレスパフェ』は、その名の通り城塞のように立派な巨大パフェ。色とりどりの数種類のアイスクリームや大量のフルーツを贅沢に使用し、天辺には特大サイズの手作りプリン。生クリームやジャム、シリアルにふんわりスポンジ生地もたっぷり使って。
「その巨大パフェ、2人組までで挑戦できるらしくてな。食べ切ることができれば、その日の飲食が全て無料になるらしい。今のところ、攻略できた者はいないらしいからな。マスターも、強力なチャレンジャーが現れれば喜ぶだろう」
難攻不落の城塞にパートナーと立ち向かうもよし、勿論、クラシックの流れる店内でゆったりと時間を過ごすもよし。
「と、いうわけで。興味のある者は、パートナーと一緒に楽しんできてもらえればと。料理も、雰囲気もな」
そう言って、男は口元に笑みを乗せた。

解説

●『喫茶バロン』について
タブロス市内に昔からある、古き良き喫茶店です。
マスターのタンザ老人と妻のメリザが二人仲良く営んでいます。

●『フォートレスパフェ』について
ゴージャスで巨大な『喫茶バロン』の名物パフェ。
お値段は1つ120ジェールとお高めですが、おひとり又は2人組で完食することができれば、その日の飲食が全て無料になります。

●その他のメニューについて
食べ物
手作りプリンアラモード・40ジェール
フルーツサンド・40ジェール

飲み物
ホットコーヒー・20ジェール
クリームソーダ・30ジェール
ミルクセーキ・30ジェール
ミックスジュース・30ジェール

●プランについて
公序良俗に反するプランは描写いたしかねますのでご注意ください。
また、白紙プランは描写が極端に薄くなりますので、気をつけていただければと思います。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!

巨大パフェもレトロ喫茶も大好きです。
ゆっくりと時間を過ごしていただくのも巨大パフェへの挑戦も大歓迎!
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  どれも美味しそうね
パフェがとってもとっても気になるけれど
ひとりじゃとても食べきれないから
色鮮やかなクリームソーダを
テーブルに運ばれてきたそれに 顔を輝かせてお礼を言って

流れる音楽に耳をすませる
これは昔 大ヒットした映画の音楽でしょう?
父さんと母さんが 初めてのデートで見たんですって
ヒロインと恋人が この曲に合わせてワルツを踊るの
音楽の邪魔にならないよう 内緒話のように声をひそめて
瞳を伏せて思い出に耽るように

シリウスの視線を感じると 照れたように笑って
甘いアイスを口に含む
シリウスも一口いかが?
弟妹にするように スプーンに取って
「あーん」と差し出す

固まる彼を見て 自分も恥ずかしくなり真っ赤



淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)
  えっとですね…素敵な喫茶店のお話を聞いたのでイヴェさんよかったら一緒に行きませんか?
そのお店はプリンアラモードが美味しいそうですよ。
あと城塞パフェというのが有名です!!
すっごく大きいパフェなんだそうです。私は食べきれないので頼めないですが見ては見たいですね。
イヴェさんは甘いのはお嫌いではなかったですよね?
あ、でもイヴェさんも食べたいものを食べるのが一番ですよね…付き合っていただいてるだけでも申し訳ないですし…。
でも、とっても美味しいと評判ですし。
…そうだ!一口だけでも食べませんか?
私のスプーンでよろしければお貸しますので!ぜひ!




雨宮 沙夜(白影)
  【心情】
パフェ…城塞のようなパフェ…早くお目にかかりたいです…!

【行動】
当日はシロさんを連れて喫茶店に訪れます。席はどこでも、空いてる所へ。
注文は…

「ホットコーヒーをブラックで2つ…それからフォートレスパフェを1つくださいな」

城塞のような超巨大パフェがあると聞いた時から、これが楽しみで仕方なかったのよね!
勿論パフェにはシロさんと2人で挑戦するわ。
特に急く事もないからマイペースに食べ進めて、たまに珈琲を飲んでお口リセットしつつ、しっかりパフェを味わうつもりよ。

「あらシロさん…もうギブアップ?
ほら、あーんしてあげるわよ?」

もし食べきれなかったらご夫婦に謝罪するわ。できたらお残ししたくないけど…



リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
  目的:喫茶店でひと時楽しむ
心情:のんびり過ごすのも悪くないか
手段:
オーダー ホットコーヒー(ブラック)・フルーツサンド※甘いのは嫌いではないが、進んでは食べない

銀雪と出来れば、窓側の奥まった席でのんびり過ごすか
城塞パフェとやらは頼む人がいたら視線を移すが、あまり不躾に見るのもよろしくないな
話題としては、銀雪のことかな
この生活には慣れたかどうか、戸惑うことはないか聞いておこう
あと、味覚についても聞くか
好物は聞いているが、味付けは濃い方が良いか薄い方が良いか…その辺りは確認しておこう
それと、出される料理の話も忘れず
店の雰囲気も良いが、手間のかかった料理を褒めないと
休日を2人で楽しむのも悪くない


ガートルード・フレイム(レオン・フラガラッハ)
  [心情]
新米でいきなりDスケールオーガと二連戦したので…緊張したし、疲れている。
昔ギルティに遭って、よく右目だけで済んだものだ…。
ゆっくりしつつ、普通に話をして相方との理解を深めあいたい。

[行動]
慰労会と称し、互いの労をねぎらいたい。
会議室で「ちゃんと動いてくれるか心配」だの「戦力としては心許ない」だの、地味に酷いことを言ってしまったのを詫びたい。
「結果として二つの依頼とも敵を倒せたし、未熟な相棒をフォローしつつ、よく戦ってくれたよ」と伝えたい。
言えたら「ありがとう」も。
多分、城塞パフェに誘ってくると思うが断るつもり。
甘いものは嫌いではないがあの分量は無理。

注文…コーヒー、プリンアラモード



●レトロ喫茶に行きませんか?
「あの……イヴェさん?」
おずおずといった感じでパートナーの淡島 咲から声をかけられて、イヴェリア・ルーツはそっと首を傾げた。
「どうした、サク」
「えっとですね……素敵な喫茶店のお話を聞いたので、よかったら一緒に行きませんか?」
勇気を振り絞って誘いの言葉を伝え切る咲。ちらとイヴェリアの顔に視線をやれば、彼の金の瞳には驚きの色が浮かんでいた。
「あ、ええと、忙しかったらまた今度でも……」
狼狽する咲に向かって、イヴェリアは照れ臭そうに、けれど柔らかく微笑んで。
「……いや、その、誘ってもらえて嬉しい。一緒にそのお店に行こう」
嬉しい返事に、ぱああと顔を明るくする咲だった。

●貴方と共に過ごす時間は
「たまには、こうしてのんびり過ごすのも悪くないな」
喫茶バロンの一番奥の席にて。リーヴェ・アレクシアはふっと笑みを零し、ブラックのホットコーヒーを口に運んだ。窓の外に目をやれば、広がるのは常と変らぬ日々の営み。まるでここだけ別の時間が流れているようだと、リーヴェは古き良き音楽にゆったりと身を任せる。
(何ていうか……カッコいいよなぁ)
喫茶バロンという一枚の絵にぴたりとはまるリーヴェの立ち居振る舞いに、銀雪・レクアイアは思わず見惚れた。そもそも、コーヒーをブラックで嗜むというところから、銀雪からしてみればカッコいい。自身のコーヒーには、既にミルクと角砂糖を沈めてある銀雪である。
「ところで……折角の機会だ。お前のことを色々と知っておきたいと思う。例えば、料理の味付けは濃い方が良いか薄い方が良いか、とか」
甘さ控えめのフルーツサンドを優雅と言っても差し支えのない動作で口にした後で、リーヴェが問う。プリンアラモードを食べ進める手を止めて、銀雪は「うーん」と唸った。
「どちらかといえば薄味が好き、かな。特に好きなのは、塩系の味付けや素材を生かした味付け」
「成る程。覚えておこう」
リーヴェの口元に、柔らかな笑みが浮かぶ。些細な表情の変化さえカッコいいのだから困ると、銀雪は胸の内でため息をついた。
「どうした? 浮かない顔をして」
「あ、いや、何でもないよ。そうだ、好みの話だけど。例えばこのプリンは、流石手作りっていうか、卵の味がちゃんと生きてて美味しいって思うよ」
「ああ……確かに、この店は雰囲気もいいが、料理も手間がかかっていて良いな。コーヒーも好みの味だったし、フルーツサンドも、甘さ控えめの生クリームが果物の良さを引き立てているように思う」
いい店だ、とリーヴェが笑み零した、その時。
「あ……」
銀雪は思わず声を漏らした。厨房から運ばれてきたフォートレスパフェが視界に入ったのだ。その姿は、城塞の名に恥じない立派さで。
「銀雪」
驚き、パフェに視線を奪われる銀雪をリーヴェが呼んだ。
「気持ちはわかるが、あまり不躾に見るのはよろしくないな」
静かにたしなめられて、銀雪は我に返り顔を赤くしたのだった。

「超デカイパフェがあるとか楽しみだなー、お嬢!」
喫茶バロンへと足を踏み入れるなり、白影はパートナーの雨宮 沙夜へと快活に笑いかけた。そんな彼の胸の内は、
(お嬢と一緒に喫茶店デートだぜ!)
と、何だかちょっとはしゃぎ気味。一方の沙夜はというと。
「パフェ……城塞のようなパフェ……早くお目にかかりたいわ……!」
うっとりと呟いた彼女の顔には、夢見心地の表情が浮かんでいて。常は眠たげにしているその瞳には、キラキラとした輝きが宿っている。
適当な席に2人腰を下ろし、注文を取りにきたマスターに頼むのは勿論、件のパフェだ。
「ホットコーヒーをブラックで2つ……それからフォートレスパフェを1つくださいな」
可憐な少女からフォートレスパフェの名がとび出したことにマスターは寸の間驚くも、楽しげな様子の2人を見てすぐににっこりと笑んだ。
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
マスターが厨房へと消えれば、沙夜は今度は白影へと顔を向け柔らかく微笑んで。
「城塞のような超巨大パフェがあると聞いた時から、楽しみで仕方なかったの。一緒に頑張りましょうね、シロさん」
「おう! 任せとけよ、お嬢!」
沙夜の言葉に、白影はトンと胸を叩いて白い歯を零す。
間もなく、噂のパフェが2人の元へとやってきた。
「お待たせいたしました。ホットコーヒー2つと、当店自慢のフォートレスパフェでございます」
それは、城塞の名に恥じない代物だった。ゆったりと広めのはずのテーブルが、何だかとても狭く感じられる。
「……え? パフェ? え……?? デカすぎねぇ……?」
白影の口から、動揺しきりの言葉が漏れた。
巨大パフェがあるとは聞いていた。沙夜がそれを楽しみにしていたのを知っているし、それは白影だって同じだ。けれど。
「いやいや……これ、デカすぎない?」
ドン引き状態の白影を尻目に、沙夜はそのかんばせに幸せ満開の笑みを浮かべている。
「わぁ……素敵……!」
「なんでお嬢そんなに喜んでんだよ……。これ強敵だぜ……?」
しかし沙夜は怯まない。城塞のごときパフェが沙夜を待っているから……!
「シロさん、食べないの?」
既にスプーンを構えた沙夜が、愛らしく小首を傾げる。その仕草とちょっと寂しげな(ように白影には見えた)表情に負けて、白影も武器(スプーン)を手に取った。
「と、とにかく挑戦だ!」
まずはパフェの上部から崩しにかかる。手作りプリンとアイスクリームを掬って口に運べば……。
「……あ、これ超うめぇ!!!」
「美味しい……! 幸せだわ」
一旦食べ始めてみれば、沙夜だけでなく白影もその美味しさのとりこだ。
こうして、2人の静かな戦いは幕を開けたのだった。

咲とイヴェリアの2人は、連れ立って喫茶バロンへとやってきた。テーブル席に2人向かい合って腰を下ろせば、イヴェリアと同じ時間を共有できる嬉しさに、咲の顔が自然綻ぶ。
「このお店はフォートレスパフェというのが有名だそうですよ。すっごく大きいパフェなんだそうです。私は食べきれないので頼めないですが、見てはみたいですね」
「……サク、あれじゃないか?」
言われてイヴェリアが横目にちらと見た物を視線で追えば、目に入ったのは2人組の男女が挑戦している巨大なパフェ。
「わぁ……!」
と思わず声を漏らしてしまった後で、あんまりじろじろ見るのも失礼かなと咲はそっと視線を外した。恥ずかしさに頬を火照らせながら、慌てて話題を変える。
「そ、そうだ。イヴェさんは甘いのはお嫌いではなかったですよね?」
「ああ」
「このお店、プリンアラモードも美味しいそうです!」
「プリンアラモードか……」
呟いて、イヴェリアは顎に手をやって思案顔。やがて、その口から漏れた言葉は。
「俺はコーヒーでいい」
ごく端的な台詞に、咲は目に見えてしょんぼりとする。
(イヴェさんが食べたいものを食べるのが一番ですよね……。付き合っていただいてるだけでも申し訳ないのに、余計なことを言ってしまったかも……)
イヴェリアと一緒に出かけられたことがあまりにも嬉しかったから、少し浮かれてしまったかもしれない。そんなことを考えて落ち込む咲を見て、イヴェリアも居心地悪げな顔をする。
(サクに申し訳なさそうな顔をさせてしまった……)
咲には笑っていてほしいのに自分の言葉足らずのせいで嫌な思いをさせてしまったかと、イヴェリアは苦い思いを胸に抱く。互いのことを大事に思いながらもその思いをすれ違わせたまま、咲たちはプリンアラモードとコーヒーを注文した。

窓際の席に座り腕を組んで、ガートルード・フレイムはため息を零した。新米ウィンクルムでありながら、いきなりDスケールオーガと2連戦したガートルードとその相棒。戦闘の際には緊張したし、今も心身共に疲れが残っている気がするガートルードである。
(昔ギルティに遭って、よく右目だけで済んだものだ……)
そんな感想も頭を過ぎる。今、彼女は喫茶バロンの2人席にひとりきりだ。パートナーのレオン・フラガラッハとゆっくり時間を過ごし、普通に話をして理解を深め合いたい。そう思ってレオンを喫茶店へと誘ったガートルードだったが。
(レオンめ……遅刻するつもりじゃないだろうな)
腕時計を見やり、ガートルードは眉をひそめた。と、その時。
「早いじゃん、ガーティー。もしかしてだいぶ待った?」
待ち合わせの時間ぴったりに、当のレオンが、ガートルードの席へとやってきた。寸の間、呆気に取られるガートルード。その間に、レオンはガートルードの前の席へと腰を下ろす。
「……何? そんなに見つめられると、俺ってば照れちゃうぜ?」
「いや……」
内心、レオンが待ち合わせの時間を守ってくれたことを嬉しく思いながらも、驚きを隠せないガートルード。
(待て、安心するのはまだ早いぞ。もう慣れたが、隣の席の女の子を口説き出すかもしれないし……)
が、レオンは近くの席に女性が座っているにもかかわらず、そちらへちょっかいをかける素振りはない。
(仕事が忙しいのはわかるが、この穏やかな音楽に負けて眠ってしまうかもしれないし……)
しかし、レオンの青い瞳は真っ直ぐにガートルードに向けられている。
(天然なのか意図してるのか知らないが、いつものように私の話を聞いてくれないかも……)
ガートルードがそこまで考えたところで、レオンが苦笑を漏らした。
「ガーティー、いつまで怖い顔して黙ってるんだよ? 今日は慰労会だって言い出したの、お前だろ?」
「あ、ああ……そう、だな。そうだった。今日は互いの労をねぎらえればと思う」
「そうそう。俺たち、パートナーだもんな」
どうやら、ガートルードの心配は杞憂に終わったようだった。心がふわりと温かくなるのを感じる。が。
「あ、なぁガーティー。あのパフェ頼もうぜ。ほらあれ。あのでっかいやつ」
「却下。あの分量は無理だ」
締めるところはきちんと締めるガートルードなのだった。

リチェルカーレとシリウスも、喫茶バロンを訪れていた。店内の落ち着いた雰囲気にシリウスはふっと息をつき、リチェルカーレはいそいそとメニューを広げる。
「わぁ、どれも美味しそうね」
テーブルに広げたメニューを眺めて、リチェルカーレはふんわりと笑んだ。メニューには良い雰囲気の料理の写真が幾らも載っているけれど、その中でも巨大パフェは一際輝いて見えて。
(パフェがとってもとっても気になるけれど……)
でも、ひとりじゃとても食べ切れないとリチェルカーレは思案顔。そんなリチェルカーレを見やって、シリウスが零すには。
「……どう考えても無理だろう」
俺は手伝えないぞ、とダメ押しの台詞も付け足されて。メニューと睨めっこをしていたリチェルカーレは、顔を上げて子どものようにむうと膨れた。
「見ていただけだもん……!」
愛らしいその表情と呟きに、シリウスは僅か目元を綻ばせるのだった。
注文を済ませ、やがて2人のテーブルに運ばれてきたのは色鮮やかなグリーンのクリームソーダに、香ばしい匂いのホットコーヒー。
ありがとうございますと、リチェルカーレは顔を輝かせた。

●それぞれのセピア色
「さて、銀雪。この生活には慣れたか? 戸惑うことはないか?」
味わい深いコーヒーで口を楽しませて後、リーヴェが尋ねる。
「大丈夫。生活にはまだ戸惑うこともあるけど、随分慣れてきてるよ」
答えて、銀雪はにこりとした。先ほど子どものように注意を受けたばかりだけれど、いやだからこそ(?)、たまにはこちらからリーヴェをリードしてみたい。先ほどの失態を挽回したい。密かにそんなことを思う銀雪である。
「リーヴェは、どう? 俺と一緒で、戸惑うことはない?」
逆に、問う。やや遠慮がちな問い掛けになってしまったのはご愛嬌だ。リーヴェの唇が、笑みの形を作った。
「お前は弟と同じくらいの年齢だからな。別に、戸惑うことはないよ」
「お、弟……」
予想外の返答に、良い切り返しが思いつかない。
(弟と同じようなもの、ってこと?)
銀雪の内心は複雑だ。そんな銀雪の心情を、リーヴェはいとも簡単に見抜く。
「銀雪。そうふてくされるな。悪い意味じゃない」
「べ、別にふてくされてなんか……!」
「ムキになるのが良い証拠だ」
くす、とリーヴェが笑みを漏らす。耳まで真っ赤になって、銀雪は火照る顔を隠すように両手で覆った。
(……敵わない、なぁ)
改めてそう思う銀雪の姿を見やり目を細めながら、リーヴェが言葉を零す。
「あぁ。やはり、休日を2人で過ごすのも、悪くないな」

注文した品がテーブルに届いてからも、咲とイヴェリアのテーブルには相変わらず気まずげな空気が漂っていた。
プリンをぱくりと口にして、咲は思う。
(評判通りとっても美味しい。でも、イヴェさんと一緒に食べられたら、きっともっと美味しいのに……)
一口いかがですかと勧めたくて、でもこの沈黙を破る勇気がなくて。黙々とプリンを食べ進める咲を、イヴェリアはそっと見つめた。
「サク」
イヴェリアの声に、沈黙が破られる。咲ははっとして顔を上げた。
「その……悪かった。味に興味がないというわけではない。一人で食べるのには少し量が多くてな。甘い物は食べれるが、あまり量が多くなると食べれないんだ」
サクにそんな顔をさせたかったわけじゃないと、イヴェリアは言う。ぽつぽつと紡がれる不器用で誠実な言葉が、咲には何より嬉しくて。その顔に、笑みが戻った。
「そうだ! 一口だけでも食べませんか? 私のスプーンでよろしければお貸しますので! ぜひ!」
「しかし、それはサクがすでに口を付けて……」
顔を仄か赤くして呟くイヴェリアを見て、彼の呟きを捉えきれなかった咲が首を傾げる。
「イヴェさん?」
「いや……何でもない。いただこう」
甘い時間は、ゆっくりと過ぎていった。

結局パフェではなくコーヒーとプリンアラモードを注文したガートルードとレオンは、2人きりの時間をゆったりと過ごしていた。
「君に詫びたいことがある。会議の時に、『ちゃんと動いてくれるか心配』だの『戦力としては心許ない』だの酷いことを言ってしまった。今は、すまないと思っている」
真摯に頭を下げるガートルードに、「いいから顔上げろって」とレオンが明るい調子で声をかけた。ガートルードは、真っ直ぐにレオンの瞳を見つめて言葉を紡いでいく。
「結果として2つの依頼とも敵を倒せたし……未熟な相棒をフォローしつつ、よく戦ってくれたよ」
ありがとう、と心からの想いを伝えれば、レオンは気恥ずかしそうに笑みを零して。
「こちらこそ、サンキューな。って、なんか照れ臭いけど」
2人の空間を満たす、和やかな雰囲気。今ならば聞けるかもしれないと、ガートルードは一つの疑問をレオンへとぶつける。
「レオン、一つ聞きたいことがある。『何でも屋』とはどんな仕事なんだ? 何か、怪しい所に出入りしているという噂を聞くが」
問いに、レオンは瞬き一つ悪戯っぽい笑みをガートルードへと向ける。人差し指を自らの唇へと押し当て、紡ぐ言葉は。
「それは、ないしょ。またいずれ、な」
軽くかわされため息を漏らすも、ガートルードはすぐに気持ちを切り替える。今は、2人で過ごすこの時間を、大事にしたいと思ったから。

「素敵なお店、ね」
「ああ、悪くない」
リチェルカーレにふわふわと笑いかけられて、シリウスは静かに応えコーヒーを口に運ぶ。
と、その時。
マスターがレコードを取り換えたのだろう、寸の間店内に静寂が満ち、それから先ほどまでとは別の音楽が流れ出した。その音楽に耳を澄ませるリチェルカーレの目が見開かれ、口元には柔らかな笑みが浮かぶ。
「ね、シリウス。これって昔、 大ヒットした映画の音楽でしょう?」
「そう、なのか?」
「父さんと母さんが 初めてのデートで見たんですって。ヒロインと恋人が 、この曲に合わせてワルツを踊るの」
音楽の邪魔をしないようにと、とっておきの内緒話をする時のようにリチェルカーレは声を潜める。夢見るような瞳を伏せて、美しい思い出の世界に浸るように。
「リチェ」
「なぁに?」
「最後の方、聞き取れなかった。もう一度話してくれるか?」
それは単純にリチェルカーレの声が小さすぎたのかもしれないし、そうでなければ、軽く俯いた彼女の表情が、シリウスの心を捉えたせいかもしれなかった。
ともかくも、リチェルカーレは今度こそ秘密の話がシリウスの耳に届くようにと、軽く身を乗り出してシリウスへとその顔を近づける。彼に、話の続きを耳打ちしようと。
あまりにも無防備なリチェルカーレの行動に、シリウスは僅かその目を見張る。少し驚いたような自分の顔が、リチェルカーレの青と碧の瞳に映っていた。
シリウスの視線とその表情に気づけば、リチェルカーレは照れたようにそっと笑みを漏らし、その身を引いて。
「お話の続きはまた後でね」
ふわり言葉を零して、リチェルカーレはクリームソーダのアイスクリームを口に含む。その表情が、嬉しげにふにゃりととろけた。
「そうだ。シリウスもいかが?」
スプーンでアイスクリームを掬って、まるで弟や妹にするように「あーん」と甘い幸福を彼の口元へと運び、リチェルカーレはにっこりと笑む。無邪気すぎるパートナーの善意の言動に、シリウスの思考は寸の間フリーズした。固まるシリウスを見て、リチェルカーレもやっと自分の行為の意味に気づく。
「あ、わ、その……ご、ごめんなさい……!」
恥ずかしさに真っ赤になるリチェルカーレを見て、シリウスははっと我に返る。ひとり慌てるリチェルカーレを見ていると、何故だか可笑しくなってきてしまって。シリウスは密か噴き出した後、彼女の頭にぽんぽんと軽く触れた。
「良いから食べろ」
ますます真っ赤になって、リチェルカーレがこくこくと頷く。そんなリチェルカーレの様子を見て、シリウスはそっと目元を和らげた。

「き、キツイ……っ!」
グロッキーな声のトーンで白影が呻くように呟く。城塞はそこここから崩され、陥落も間近だ。が、パフェが予想以上に美味しかったため前半とばし過ぎた白影は、もうギブアップ寸前である。対する沙夜は、コーヒーで口の中をリセットしつつゆったりとパフェを味わっていたおかげか、まだまだ余裕の表情だ。
「あらシロさん……もうギブアップ? ほら、あーんしてあげるわよ?」
「え、お嬢食べさせてくれんの?!」
差し出された大きな一口を、白影は躊躇なくぱくりとした。俄然やる気が湧いてくる。
「よーし! お嬢のためにも頑張るぜ!」
にっと笑う白影を見て、沙夜の顔も自然綻ぶ。間もなく2人は、パフェを全て食べ終えた。
「やった! 完食だぜ!」
「ごちそうさまでした。美味しかったわね、シロさん」
「ちょっと量が尋常じゃなかったけどな。でも、お嬢と挑戦できて楽しかったぜ」
「私も楽しかったわ。頑張るシロさん、カッコよかったわよ」
笑みを交わし、2人は互いの健闘を讃え合う。
城塞パフェが攻略されたという情報はあっという間に店中に広まり、あちこちから祝福の拍手が巻き起こる。記念にとマスターが撮った写真には、2人の仲睦まじげな様子と満面の笑みが写っていた。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 巴めろ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 05月12日
出発日 05月23日 00:00
予定納品日 06月02日

参加者

会議室

  • [6]リチェルカーレ

    2014/05/18-22:56 

    こんにちは、皆さん。
    リチェルカーレと言います。マキナのシリウスと一緒に参加させていただきます。
    よろしくお願いします。

    パフェもとっても、とっても美味しそうだけど…食べきれないので、のんびりお茶をしようかと。
    チャレンジする方々はがんばってください。

  • [5]淡島 咲

    2014/05/18-10:14 

    こんにちは、淡島結といいます。
    パートナーはマキナのイヴェさんですよろしくお願いします(ぺこり)

    私達はのんびりレトロな雰囲気を満喫する予定です。

    雨宮さんとシロさんが城塞パフェにチャレンジするとのことで。
    応援してます!頑張ってくださいね!

  • [4]雨宮 沙夜

    2014/05/17-09:42 

    ご挨拶が遅れました…雨宮 沙夜と申します。
    パートナーはテイルスのシロさんです。宜しくお願いしますね。

    私達は折角ですので、城塞パフェに挑戦するつもりです。
    城塞のようなパフェ…あぁ、夢のようです…今からたのしみでなりません…!

  • こんにちは、私は新米ウィンクルムのガートルード。
    連れは傭兵兼何でも屋のレオンだが…もう今回は遅刻せずに来たら「成功」かと思っている…。
    二人で「いきなりのオーガとの連戦お疲れ会」をやっていると思うが、城塞パフェに挑戦する人がいたら陰ながら応援させてもらうよ。

    (※誤字が恥ずかしかったので削除→再投稿させていただきました)

  • リーヴェだ、よろしく。
    私とパートナーの銀雪はパフェには挑戦する予定はないが、楽しめたらと思っているよ。


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