夜景を見ながらディナーをどうぞ(龍川 那月 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 タブロスの郊外、街を一望出来る丘の上に、レストランがある。窓際の席から見えるタブロスの街並みは美しく、夜景ともなればそれはもうロマンチックな雰囲気に包まれると一部では評判の隠れた名店である。
 そこでは毎年、ウィンクルム限定のサービスとしてクリスマスディナーが振舞われている。昔、見知らぬウィンクルムに助けてもらった店主がウィンクルム達への感謝と労いを込め行なっているものだ。

 パートナーを誘ってレストランまでやって来た貴女にレストランスタッフが声をかける。
「当レストランへようこそおいで下さいました。初めに1点だけお願いがございます。お客様の素敵なコーディネートに水を差すようで大変恐縮ではございますが、お花を身につけて頂きたいのです。お花はこちらにあるものでしたらどれでもお好きにお取りください」
 その手の先にバラや百合、カーネーションなど様々な花が置いてあった。この中から選べば良いようだ。
「お選び頂きましたら、こちらで身に付けられるように致しますのでお声掛けください。その際、お花代と致しましてお二人でちょうど300Jr頂きます。その他に料金等は頂きませんのでそれについてもご了承頂きますようお願い申し上げます」
 そう、スタッフは丁寧に頭を下げた。

解説

•概要
 窓際の席でタブロスの夜景を見ながらクリスマスディナーをお召し上がりください。
 依頼の性質上、完全個別描写になります。

 料理はフレンチのコースです。メインは肉料理か魚料理からお選び下さい。
 好みはある程度融通してもらえるので苦手なものを別のものに変えてもらったり、これが食べたいというものがあればメニューを差し替えることも可能です。
 プロローグで身につけるお花がウィンクルムである証になっており、パンやドリンクのお代わりを自由に持ってきてもらうことが出来ます。

 料理は何も指定がない場合以下のメニューになります。
<前菜>  たことサーモンのカルパッチョ
<スープ> オニオングラタンスープ
<メイン> 白身魚の香草パン粉焼き or牛頬肉と彩り野菜のグリル
<デザート>いちごのブッシュ・ド・ノエル
<パン>  バケット、ロールパン
<ドリンク>珈琲、紅茶、りんごジュース、オレンジジュース、グレープジュース

•プランについて
 入り口でつけるお花の色や種類、どこに身につけるかはプランに書いて頂ければ幸いです。ない場合、お二人のコーディネートを見てスタッフが似合いそうな花を胸元につける事になります。
 マナーなどはあまり気にしなくて構いませんので、パートナー様とのディナーをお楽しみ下さい。サプライズや持ち込みに関してもスタッフに頼めば大体のことはなんとかしてくれます。

•ジュールについて
 お花代としてお二人で300Jr消費致します。

ゲームマスターより

 初めまして。龍川那月と申します。
 こちらが初めて出させて頂く依頼になります。

 同じ料理を食べて微笑み合う。でも良いですし、パートナー様と違うメニューをお願いして交換するのも良いと思います。
 美味しいものを、すきな人と食べる。そんな幸せな思い出になればと思っております。

 皆様宜しくお願い致します。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)

  こういう機会、一昨年のCLUB『A.R.O.A』以来ですね。
何だかとっても楽しみです。

紺地のストライプシャツとスカートなので……お花は白百合をお願いします。
魚料理に、バケットと紅茶を希望しますね。

食事をしながら、窓の景色を見つめる。
「とても素敵な夜景で……吸い込まれてしまいそうですね」

あの、翡翠さん。お料理、交換してみませんか?
折角ですし、そちらも食べてみたいのですが。

「選べなかったのですよ……」
冗談を言う翡翠さんに、頬を膨らませる。
私、太るかもしれません。
い、いえ!
幸せ太りするんですから、いいじゃないですか!

あっ。
……は、はい。
ほ、本当です。

翡翠さん!
……えっ?
あ、ありがとう……ございます。


リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
  青薔薇装着

アンディーヴのサラダ
コンソメ・ドゥ・ブフ
子羊のコンフィ
上記へ変更
デザートそのまま
バケット
珈琲(ブラック)

この店、よく知ってたな
私も噂なら知ってたが
トリップしていないで料理を楽しめよ?

どれも手が込んでいて勉強になる
私と違い、銀雪は魚料理だな
そちらも美味しそうで何よりだ

下記口外NG
(私が絡むと本当に残念だな
可愛いとは思うし、一応普通に好きだが、私が青薔薇を何の意味で用いてるか知ったら失血死するな)
※夢が叶うで使用

楽しかったかい?
それは何より
私も楽しかった
お前見てると面白い

今日はありがとう※喉鳴らし笑う
そうだな…礼をするか

残念でもお前は可愛いよ…いい子だ※腕を引き寄せ耳元で甘く囁き額にキス


向坂 咲裟(カルラス・エスクリヴァ)
  お花は…この赤いカーネーションにするわ
降ろしていた髪を結い上げ、ゴムの部分に花を付けて髪飾りの様にしたいわ

メインはお魚を
ドリンクはホットミルクをお願いするわ

夜景が素敵ね
そういえばカルラスさんと夜も一緒に過ごすのは初めてね

こういったお料理も美味しいわね
お母さんがお料理上手だから、お父さんが記念日に連れてきてくれる時以外はあまり外食しないのよ
ええ、そうね。美味しくて…あったかいからそれで良いの

でも何時かお母さんより料理が上手になって、カルラスさんに美味しい料理を食べさせてあげるわね
ああ、そうね。ギャレロにも食べさせてあげないと…
サキサカサカサは約束するわ
…牛乳の件は、約束できないと思う、けれど


時杜 一花(ヒンメル・リカード)
  少しお洒落し余所行きの服
ピンクの花を髪に
メインは魚料理

夜景を眺め、素敵ねと微笑み
ちょっと背伸びしすぎたような気もするけど…
この機会を逃したらもう来ないかもだし、ちょっと頑張ってみる事にするわ

フレンチは初めてなんだけど、お姉ちゃん達にマナーは一応教えてもらってきたわ
だから多分大丈夫…、だといいのだけど…
ええ、自慢のお姉ちゃん達なの

あ、そういえばそうね…
由来は一花咲かせられるような子になりますように、だって言ってたわ
…期待には応えられなそう

いつかはこういうお店が似合う大人っぽい女性になれたら、とは思っているの
まだまだ先の話よねと苦笑
叶った時には、また一緒に来てくれる?
あ、迷惑じゃなければ、だけど…


鬼灯・千翡露(スマラグド)
  ▼衣装
ビジュー付ターコイズブルーのワンピース
花は黄色のアルストロメリア、髪の結目に挿す


▼食事
メインは魚で
ドリンクは紅茶

こういうところ初めてだー
スタッフさんが優しそうだから安心したけど
ちょっと緊張するね……

うん、カルパッチョ美味しいね
ラグ君も私も野菜とお魚好きだしね
そうだねー、話が楽しくなるからね
この後も楽しみになってきちゃった

ふふ、期待通りメインも美味しい
お魚が淡泊だからソースはこのくらい濃くて丁度良いんだね
でもしつこくなくて上品で、くどすぎないね
ああ、うん、料理って芸術と似てる気がして

……ラグ君?

何でもないなら良いけど
わ、デザート可愛い、美味しそう!

きっとラグ君もいるから、美味しさも倍増だね


 ●ようこそ
 シックな飾り付けのされたクリスマスツリーやキャンドルの暖かな灯り。
 特別なディナーに相応しくかざりつけされた店内には、時期的なものもありいつもよりカップルの姿が目立つ。その中の一角、タブロスの夜景が最も綺麗に見える席に置かれた『予約席』のプレートがそっと取り除かれ、テーブルの準備が静かに行われた。
 特別なお客様の特別な時間の為に用意された席でどんな思い出が生まれるのか。そう思うと店主の表情は自然と穏やかな笑顔になった。
 
 ●一緒(千翡露&スマラグド 編)
「メインは魚。ドリンクは紅茶」
「僕もメインは魚、ドリンクはグレープジュース」
 恭しく頭を下げスタッフが下がっていく。
「こういうところ初めてだー。スタッフさんが優しそうだから安心したけどちょっと緊張するね」
 去っていくスタッフの背中を見つめながら鬼灯・千翡露が声を漏らす。
「ちひろでも緊張することがあるんだね。普段は表情筋が仕事してないからなんか新鮮」
 向き合えば目に入るのは千翡露のターコイズブルーのワンピースと髪の結び目に挿さっている黄色いアルストロメリア。ワンピースについたビジューは窓の外に広がる夜景に負けない位輝いている。
「……まあ、いっしょにいる人間の特権か」
 微苦笑を浮かべるスマラグドが羽織っている薄手のジャケット。その胸ポケットには 千翡露と同じ花。
「……ん、この前菜美味しい」
「カルパッチョ美味しいね」
「ちひろもそれ好き?」
「うん。ラグ君も私も野菜とお魚好きだしね」
「好きなものが同じっていうのは、思いの外良いね」
「そうだねー、話が楽しくなるからね。この後も楽しみになってきちゃった」
 微笑みながら、ナイフとフォークを動かす千翡露に少しだけスマラグドの口元が上がる。外見だけではわからない、特に感情や考えが表に出にくい千翡露だからこそ、楽しそうな声や言葉は素直に嬉しい。

「ふふ、期待通りメインも美味しい。お魚が淡白だからソースはこのくらい濃くて丁度良いんだね。でも、しつこくなくて上品で、くどすぎないね」
「ちひろ、饒舌だね。まあ、料理好きだからしょうがないか」
 スマラグドの言葉に千翡露が一瞬だけキョトンとする。
「ああ、うん、料理って芸術と似ている気がして」
「ふーん、そういう理由だったんだ。芸術の事となると人が変わるからねちひろは」
 料理の盛り付け、彩り、味、色々なものを楽しんでいる千翡露を見ながらスマラグドの口から言葉がこぼれた。
「……そうだな。こうやってちひろの知らないことを知れるのは嬉しい」
「……ラグ君?」
 声に反応したのか、千翡露がスマラグドを見つめながら首を傾げる。
「なんでもないよ。ほらデザートきた。こういうの好きでしょう」
「わ、デザート可愛い、美味しそう!」
 スマラグドはそんな千翡露を見ながらドリンクのグラスに口をつける。
「きっとラグ君もいるから、美味しさも倍増だね」
 そりゃ、大切な人とのご飯だからね。そんな言葉を飲み込む様にスマラグドはブッシュ・ド・ノエルを口へと運んだ。

 ●約束(咲裟&カルラス 編)
「お花は……この赤いカーネーションにするわ」
「じゃあ、この白いカーネーションでお願いするよ」
「畏まりました。少々お待ち下さい」

「夜景が素敵ね」
 そう言う向坂咲裟の視線の先にはタブロスの夜景が広がっている。
「……そういえば、カルラスさんと夜も一緒に過ごすのは初めてね」
 受付で選んだ赤いカーネーションは咲裟が元々つけていた白いクリスマスローズと共に咲裟の金の髪を結い上げている。
 この季節にぴったりのネックレスやイヤリング、指に光るお揃いのリング、そして少しだけ改まった呼び方、どれもいつもより少しだけ彼女を大人に見せている。
 カルラス・エスクリヴァのタイピンには彼女と対をなす様に選んだ白いカーネーションが咲いている。
「確かに、夜こうやって会うのは初めてだったな。……ご両親の信頼を頂けた、という事か?」
 後半は咲裟には聞こえない程小さな呟き。
 ウィンクルム云々は置いておいてもまだ若い娘が男と二人で夜出歩く。と言うシチュエーションは待ったがかかる事も多い。こうして許しが出ているという事は有難いことだ。カルラスはそう感じていた。
「こう言ったお料理も美味しいわね。お母さんがお料理上手だから、お父さんが記念日に連れて来てくれる時以外はあまり外食しないのよ」
 丁寧な動作で白身魚を口に運ぶ咲裟にスピードを合わせるようにゆっくりとカルラスも肉にナイフを入れる。
「そうか。私はどうしても外で食べがちだな……。しかし、母親の味というものは他人の手による料理に勝るものだ。大事にした方がいい」
「ええ、そうね。美味しくて……あったかいからそれで良いの」
 母親の料理を思い浮かべたのか、嬉しそうに微笑む咲裟にカルラスも微笑み返す。以前、母親に会った時も家にお邪魔した時も思った事だが、彼女の家族は本当に素敵な家族の様だ。それが嬉しくもあり眩しくもある。
「でも、何時かお母さんより料理が上手になって、カルラスさんに美味しい料理を食べさせてあげるわね。」
「それは何か違うんじゃないか?」
「ああ、そうね。ギャレロにも食べさせてあげないと……」
 そう言う意味で言ったのではないが……と出そうになった言葉を飲み込み、少し笑いながらカルラスは頷く。
「はは……そうか、なら楽しみにしておくとするよ。お嬢さん。……ただし牛乳のフルコースだけは勘弁してくれ」
「サキサカサカサは約束するわ。とびっきり美味しい料理を食べさせてあげる……牛乳の件は、約束できないと思う、けれど」
 それは弱ったな。苦笑するカルラスの元へ手違いで珈琲ではなくホットミルクが運ばれて来てしまい結果的に笑いを誘ってしまったのはきっと偶然だろう。



 ●花言葉(リーヴェ&銀雪 編)
「どれも手が込んでいて勉強になる」
 子羊のコンフィを目を閉じ味わっていたリーヴェ・アレクシアが少しだけ口元をほころばせる。
「私と違い銀雪は魚料理だな。そちらも美味しそうで何よりだ」
 口元はそのままにリーヴェの視線が、銀雪・レクアイアの手元へ向けられる。
「リーヴェは奇跡の青薔薇……奇跡そのもの!外見も中身も綺麗で、好きにならない方が変……ごめん、ティッシュ……」
 凛々しく上がった口角、切れ長の金瞳、その身を飾るはずの奇跡の青薔薇も銀雪の目には霞んでしまう。リーヴェはいつだってイルミネーションよりも輝いているんだから。そこまで妄想したところでいつもの様に口元まで流れてきてしまった血をティッシュで抑える。
「紅薔薇の死ぬ程恋い焦がれてるを体現してる場合じゃなかった」
少し語気を弱めながら現実に戻ってくる銀雪と、自分の青薔薇を見ながらリーヴェは心の声でひとりごちる。
(私が絡むと本当に残念だな。可愛いとは思うし、一応普通に好きだが、私が青薔薇を何の意味で用いているか知ったら失血死するな)
 少し想像して十分にあり得るな。とリーヴェは感じた。銀雪上級者の彼女にとってそういった想像は実に容易い事なのだ。
「リーヴェこのお店知ってた?お店の夢があるから知っててもおかしくないけど」
「私も噂なら知っていたがこの店よく知っていたな」
 そうなんだ。と言いながら魚を口へ運んだ銀雪の顔がパァッと明るくなる。
「料理美味しい!来て良かった。後はリーヴェが料理をあーんしてくれたりとか!」
「トリップしていないで料理を楽しめよ?」
 すぐに別の世界へ旅立ってしまう銀雪をリーヴェの声が引き戻す。

 食事も終わり、店を出たところで、
「今日はありがとう。楽しかったかい?」
 ゴージャスなファー付きの手袋をはめながらリーヴェが銀雪に問う。
「楽しかったよ。俺はリーヴェがいればどこでも天国だし」
「それは何より。私も楽しかった。お前を見ていると面白い」
 喉を鳴らし笑うリーヴェ。
「面白がられてるけど、リーヴェが笑った」
 ゴシック調の洗練されたコートに袖を通し帰ろうと歩き出した銀雪の顔はリーヴェの笑いだけで緩みきってしまっていた。
「そうだな……礼をするか」
 少しだけ思案していたリーヴェがおもむろに銀雪の腕を引き寄せる。
 突然のことに、少しだけ慌てる銀雪。
「イイって……あっ」
 つーっと鼻と上唇の間に赤い液体が流れる。
 リーヴェの甘い囁きが銀雪の耳をくすぐり、間髪入れずにやって来た額への温かく柔らかい触感。それがリーヴェの唇だとすぐに理解する。 
『残念でもお前は可愛いよ……いい子だ』
 銀雪の耳にしっかりと残る甘いその言葉は銀雪をトリップさせてしまった。

 ●幸せ(シエテ&翡翠 編)
 店への道を七草・シエテ・イルゴの細く長い足が踊る様に進んでいく。
「今日のシエ、上機嫌だね」
 その様子を見ながら翡翠・フェイツィが微笑んだ。
「何だかとっても楽しみです」
「どうかしたの?」
 予想外の答えに少しだけ声に疑問の色が混じる翡翠の元へシエテが戻ってきてピシッと人差し指を立てる。
「こういう機会、一昨年のCLUB『A.R.O.A』以来ですね」
 主張する様に少しだけいつもより張った声に翡翠は苦笑するしかない。
「そうか、もうそんなに経つんだよね。だってあの時のシエ、ジェンマ様みたいに素敵だったから」
 今思えば初めてのデートがあれだったな。と翡翠は目を細める。あの時の彼女は素敵だった。今もそれに引けを取らないほど素敵なのだけれど。

 前菜やスープを楽しみ、メインを待つ間、シエテの視線は自然と窓の外へ。
「とても素敵な夜景で……吸い込まれてしまいそうですね」
「そうだね、まるで俺達を祝福してくれてるみたいで」
 翡翠の言葉に、もう。とはにかむシエテ。その頬に少しだけ朱がさしているのが分かる。
「恥ずかしがる事ないだろう?まあ、ちょっとはカッコつけたけど」
 夏に擬似結婚式をしたとは言え、まだそういう言葉に気恥ずかしさは残るシエテ。翡翠にはそんな彼女も素敵に見える。
 シエテの前に香草パン粉焼きが、翡翠の前に牛頬肉のグリルが運ばれてくると、両方を見比べてシエテが言いにくそうに口を開く。
「あの、翡翠さん。お料理、交換してみませんか?」
「料理?いいよ。もしかして、本当はそっちを食べたかった?」
 翡翠の言葉にシエテは恥ずかしそうにしながら小さく首を振る。
「折角ですし、そちらも食べてみたいのですが」
「本当に?」
 翡翠は店員に持ってきてもらった取り皿に食べやすい様に盛り分けるとシエテの方へ。シエテも同じ様に翡翠へ取り皿へ盛り分け翡翠へ渡す。肉料理に顔を綻ばせるシエテを見て
「本当のところはお肉が良かったんじゃない?」
 翡翠がからかう様な口調で先程と同じ事を尋ねると、一瞬の沈黙の後、シエテが頬を膨らませる。
「選べなかったのですよ……」
 その前から気にしていたことではあるが、擬似結婚式をしてからシエテは体型のことを以前より気にすることが増えていた。特別な人の前では常に綺麗でいたい。それは女性なら誰しもが大なり小なり思うことだろう。しかし世の中には幸せ太りというものがあるのも事実である。
「私、太るかもしれません」
 拗ねた様な、しょげた様な声。
「今、太ったら痩せられないよ。けど……」
「い、いえ!」
 翡翠の追い討ちをかける様な言葉に、つい挟んだ言葉は少しだけ開き直りとも取れる様なものになってしまった。
「幸せ太りするんですから、いいじゃないですか!」
「俺といる事で幸せを感じられるなら、どんなに太ってもいいよ。シエ、俺といて幸せ?」
 てっきり揶揄われているものだと思っていたシエテは反応出来ない。少しの間を置いて言われた意味を理解し、頬を染めたままシエテは頷く。
「あっ……は、はい」
 本当?と首を傾げる翡翠。
「ほ、本当です」

「よく出来ました」
 全ての料理が終わり、グレー系のコートを羽織ると、シエテの腰に腕を回す翡翠。
 そのままそっと額に口付ける。
「翡翠さん!」
 突然の出来事に真っ赤になりながら周囲の視線を気にするシエテだが、翡翠はそんなことどこ吹く風。
「二人で幸せになろう」
「……えっ?あ、ありがとう……ございます」
 翡翠の腕の中で頷くシエテと一緒に翡翠の梔子とシエテの白百合が揺れ、そっと口づけを交わした。

 ●いつかまた(一花&ヒンメル 編)
 余所行きの服を着て、いつもより少しお洒落をして、受付で選んだピンクの花を髪に飾って。初めてのフレンチだからと姉にマナーを教わり、時杜 一花は気合いは十分だった。
「素敵ね。ちょっと背伸びしすぎたような気もするけど……」
 夜景を眺め微笑む一花。少し自信なさげにも感じる言葉は彼女らしいとも言える。
「花代だけでこの席に座れるとは太っ腹だよね。ここは好意に甘えておこう。一花さんもそこまで気合いれなくても大丈夫そうだよ」
 普段通りの服装に一花とお揃いの花を胸に挿すヒンメル・リカードがクスクスと笑う。その声にも一花は真面目に答える。
「この機会を逃したらもう来ないかもだし、ちょっと頑張ってみる事にするわ」
 頑張らなくても。と苦笑するヒンメルの声はあまり届かない様だ。

 美味しい。と一口毎の笑顔になってはマナーが正しいのか少し思案する一花にヒンメルがどうしたのかと尋ねる。
「フレンチは初めてなんだけど、お姉ちゃん達にマナーは一応教えてもらってきたわ。だからたぶん大丈夫……、だといいのだけど……」
 自信があまりないの。と続ける一花。
「頼りになるお姉さんだね」
「ええ、自慢のお姉ちゃん達なの」
 ヒンメルの言葉に自分のことの様に一花は笑う。
「そういえば、お姉さんがいるのに一花って名前なんだね。長女かと思ってた」
 名前もさることながら、一花の女性らしい言葉遣いも穏やかさもヒンメルに長女だという印象を与えていたのかもしれない。
「あ、そういえばそうね……由来は一花咲かせられるような子になりますように、だって言ってたわ」
「なるほど、そういう由来なんだ」
「……期待には応えられなそう」
 名前の由来を口にした後少しだけ声のトーンが落ちる。
「そんな謙遜しなくても。人生何があるかわからないものだし、夢を見てもいいんじゃない?僕だって今こんなことしてるなんて予想もしてなかったしね」
 本当に人生何があるか分からない。ヒンメルはそう感じていた。用事が終わったらすぐに出て行く予定だった頃の彼には、今こうしてパートナーと食事をしている光景は予想出来なかっただろう。
「いつかはこういうお店が似合う大人っぽい女性になれたら、とは思っているの」
 まだまだ先の話よね。と苦笑する一花に少し目を細めヒンメルも微笑む。
「まあ、年齢的にはね……でもすぐだよ、きっと」
 彼女の髪と彼の胸を飾るピンクの花もこの光景に馴染んでいる。一花がこう言った場所に馴染むような女性になるのもすぐだろう。
「叶った時には、また一緒に来てくれる?あ、迷惑じゃなければ、だけど……」
「その時にまだ僕がここにいたらね」
 真っ直ぐ見つめる青い大きな瞳がいなくなるの?と訊ねる。そっと視線を外してヒンメルは言葉を続ける。
「まあ可能性の話。迷惑じゃないよ。その時を楽しみにしている」



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 龍川 那月
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月15日
出発日 11月21日 00:00
予定納品日 12月01日

参加者

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