プロローグ
ある日諸用がありあなたがA.R.O.A.本部に出向くと、建物の前で若い女性がビラを配っていた。
「あなたもボディジュエリーを体験してみませんか?」
笑顔で渡されたビラには、背中一面花や蝶などのデザインがキラキラしたラメパウダーやクリアビーズで描かれた女性の写真がいくつも並ぶ。
「素肌に直接ラメパウダーやクリアビーズを貼り付けて絵を描くんです」
その美しい背中の写真に、あなたは俄然興味が湧いた。
「もしよろしければ、パンフレットの撮影にも参加しませんか?その場合、割引料金でボディジュエリーを施させていただきますよ!」
撮影会場は某ホテルのラウンジバー。
クリスマスに向けてラウンジ内はイルミネーションで飾られているという。
その中でボディジュエリーを施した女性たちがパーティを楽しむ様子を撮影し、パンフレットに載せるという。
「あ、エスコート役の男性も来てくれると嬉しいんですけど……」
女性はちらりとあなたの精霊に視線を向ける。あなたと精霊はお互いの意思を確認するように視線を合わせる。行ってみたいな……というあなたの気持ちを精霊は気づいてくれたようだ。
「今回特別なプランで、エスコートしてくれる男性のデザインでボディジュエリーを施すというものもありますので、是非お試しください!」
解説
背中に精霊がデザインしたボディジュエリーを施し、パートナーと共にラウンジパーティを楽しもう!というエピソードです。
神人は背中の大きく開いたカクテルドレスを、精霊はタキシードをレンタルします。色の指定があればプランに記載願います。
ボディジュエリーは、肌に優しい接着のりでラメパウダーやクリアビーズ、パールを着けて背中に絵を描きます。ラメパウダー、クリアビーズは各種カラーを取り揃えています。
精霊のデザインをもとに、ボディジュエリストが施してくれます。
施術は個室で行いますので、その間精霊は別室でタキシードに着替え待っていてもらいます。
ラウンジパーティでは、一般的なカクテルの他、ソフトドリンクも扱っています。バーテンダーにお願いすれば、オリジナルのカクテルも作ってくれるでしょう。
クリームチーズやスモークサーモン、フルーツのカナッペもありますので、ドリンクのお供にどうぞ。
座席はカウンターとボックス席がありますので、お好きな方をお選びください。
ラウンジからは綺麗な夜景も楽しめます。
基本的に個別描写ですが、同じ会場内にいますので他のウィンクルムと顔を合わせることもあるかと思います。
プランには、ボディジュエリーで描く絵のデザインの記載が必須です。
参加費として、500jrいただきます。
ゲームマスターより
最近気になるボディジュエリー。
試してみたいけど、そんな機会も勇気もなく……。
なので、神人の皆様に楽しんでいただくことにしました!
精霊の皆様は大切なパートナーの背にどんなデザインをするのでしょうか。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
リチェルカーレ(シリウス)
写真を見て目を輝かせ ちらりと彼の方を伺う 頷きにぱっと笑顔 ありがとう! 固まった彼に ふふ、と笑う (…苦手そうだものね) 動かない表情 自分には困っているのがわかって それでも「やめる」と言わない彼の優しさを感じ シリウスが考えてくれるなら 何でも嬉しい 水色のドレス 背中が見えるよう髪は編み上げアップに ドレスと同色のリボンをつけて 施術が終わると小走りで彼の所へ シリウス見て!似合うかしら? くるりと回って背中を見せる いつ見てもどきどきする 優しい瞳に頬が赤く …っ!? ふいに唇に落ちた温もりに目をまん丸に 離れていく視線と距離に 思わず彼を捕まえてお返しのキス ー仕返し まっすぐに翡翠の目を捕え告げる 彼の笑顔に自分も満面の笑み |
かのん(天藍)
クリスマスの花ですか? …赤と濃い緑の組合せ 例えばポインセチア、深紅の薔薇と赤い実付けたヒイラギとか 赤くない花ですか? …それならクリスマスローズでしょうか? 天藍に請われいくつかの花を説明 デザインを尋ねると出来上がりのお楽しみだとはぐらかされる 折角ですから、ドレスは天藍のデザインの邪魔をしない色合いが良いです お店の方と相談 褒められるのは嬉しいけれど少し恥ずかしい デザインが気になるので天藍に携帯で背中の撮影をお願い カクテルは詳しくないので天藍にお任せ バーテンダーの様子が見たいという天藍の希望でカウンター席へ グラスの縁に雪が積もったみたいですね、とても綺麗です 天藍も作れますか? はい、楽しみにしています |
出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
ドレス:赤 デザイン確認しレムの意図に何となく気付く 同時に所有の印みたい、とも感じて少し照れ 撮影するならやっぱりカウンターかしら ふふ、レムはこういう所は慣れてない? 普段通りでいいのよ、夜景を見ながら楽しくお喋りしたり お料理やお酒…は飲めないんだったわね ノンアルコールを二つ、お任せで え、いいの?それじゃあ一杯だけ…プルミエフルールをお願い あたしの誕生酒なんですって 酒言葉も素敵なのよ グラスに口をつけて少ししてレムの様子に気付く あら?レム…もしかして酔っちゃった? あなた匂いも苦手だものね、ごめんなさい やっぱり控えておけばよかったかしら ここじゃさすがに無理だけど あたし個人としては構わない…むしろ嬉しいわ |
鬼灯・千翡露(スマラグド)
▼衣装 翡翠色のオーガンジーの膝丈グラデーションドレス 背中が開くので専用のロングビスチェ着用 ▼会場 わあぁ、皆のも綺麗だねえ(他の神人さん達を見て) こういう芸術の形も素敵だなあ あはは、有難うねラグ君 出来上がったの合わせ鏡で見せて貰ったよ 本当に綺麗な花だったなあ わ ラグ君がそんな風に笑ったの、初めて見た 何だか私も嬉しいな ……うん? ラグ君、何か言った? あ、そうだね! 私も喉渇いちゃった ソフトドリンクはあるって言ってたけど ノンアルコールカクテルもあるかなあ ああいうのの色も好きなんだよね 何だかラグ君、本当に今日は凄く楽しそう 今まではいつも眉間に皺を寄せてたのに 雰囲気が柔らかくなった、のかな 心にゆとりが出来た? |
アンジェリカ・リリーホワイト(真神)
髪はいつも通り黒いリボンで結ったツインテール オーガンジーのふわっとしたしたアシメントリ―スカートに、ホルタ―ネックの黒いカクテルドレス …真神さまが選んでくれたのですから、着なければ!です うー…背中丸見えでちょっとはずかしい… 接着のりはちょっとひやっとしますし、くすぐったいですけど、がまんがまん。 描き終わったら真神さまにエスコートしていただきます 流石にお酒はいただけないので、オレンジジュースでもいただきます あ、あとカナッペもいただきましょう、真神さまきっとお酒にも合いますよ えと…他の精霊の方を、お迎えする気はないですよ? だって、真神さま…二人で取り合うみたいで、お嫌でしょう? 私も嫌かなって思って |
ボディジュエリーの写真を見て、リチェルカーレは嘆息した。
「綺麗……!」
きらきらした瞳で隣に立つシリウスの顔をちらりと伺う。
リチェルカーレの瞳には、「行きたい!」という文字が書いてあるかのようで。
まるで散歩をねだる子犬のようなその眼差しに、シリウスは思わず苦笑を漏らす。
「……興味があるなら行ってみるか?」
そう言うと、リチェルカーレはたちまちのうちに花が咲くような笑顔になる。
「ありがとう!」
その笑顔に、シリウスの表情も緩むのだった。
ボディジュエリーの施術はホテルの一室を借りて行われるということであった。
現地に赴き、ボディジュエリストから笑顔で「デザインはお決まりですか?」と問われ、シリウスは目を見開き固まった。
「デザイン……」
小さく口の中で呟く。そう言えば、エスコート役の男性がデザインするだとか、そんなことを説明されていたのを、思い出した。
だが、シリウスは装飾を考えるだとか、そういう方向にはとんと疎い。
(……苦手そうだものね)
固まったままでいるシリウスに、リチェルカーレはふふ、と笑うと、シリウスは僅かに恨めし気な視線をリチェルカーレに送る。
その表情から、シリウスが困っているだろうことがリチェルカーレにはよくわかった。
(それでも「やめる」と言わないのか、シリウスの優しいところね)
「シリウスが考えてくれるなら、何でも嬉しい」
リチェルカーレは助け舟を出すつもりで、微笑んでそう言った。
「……『何でも』という訳にはいかないだろう」
シリウスは小さくため息をつく。
折角ならリチェルカーレに似合うものにしたい。
シリウスはパンフレットを睨みつつ考える。
そして、例として印刷された写真の中から、リチェルカーレのイメージに合うものを選んでいった。
「蒲公英や菫、シロツメクサといった春の花……その花で飾られた翼……それを白や水色といった淡い色合いで」
「素敵ね」
シリウスの言うデザインをイメージし、リチェルカーレは笑顔になる。
「わかりました。それでは、出来上がるまで少々お待ちください」
しばしの後、黒いタキシードに着替えたシリウスが待つ別室に、リチェルカーレが駆け込んできた。
「シリウス見て!似合うかしら?」
リチェルカーレがくるりと回って背中を見せると、水色のドレスの裾がひらりと舞った。
ドレスと同色のリボンを飾った髪は編み上げてアップにし、大きく開いた背中をより美しく引き立たせる。
そこに描かれた輝く翼が彼女を小鳥のようにも、天使のようにも見せ、その美しさにシリウスは息を呑む。
リチェルカーレの顔が感想を求めるようにシリウスを振り返り、花開くように笑う。つられてシリウスの顔にも微笑みが浮かぶ。
「ーーよく、似合う」
シリウスの瞳はいつだってリチェルカーレをどきどきさせる。その瞳がリチェルカーレを見て優しく細められ、リチェルカーレは頰を赤らめた。
恥じらう様子がまた愛しくて、シリウスは堪らずに彼女を引き寄せ口付ける。
「……っ!?」
ふいに唇に落ちた温もりにリチェルカーレは目をまん丸にした。
「……悪い」
自分を抑えきれなかったことに決まり悪そうな顔をし、シリウスは瞳を逸らしリチェルカーレから身を引きかける。
が、リチェルカーレはシリウスの腕を掴んで止めた。
その行動にシリウスが疑問を持つ間も与えず、リチェルカーレは背伸びをしてキスをする。
不意打ちのキスに、唇が離れた後も固まるシリウス。
リチェルカーレはまっすぐに彼の翡翠の目を捕え告げる。
「ーー仕返し」
リチェルカーレに不意打ちされるなんて。
数秒の沈黙の後、シリウスは滅多にない鮮やかな笑顔を見せた。
こんなに愛らしい不意打ちならば、いくらされても許してしまう。
リチェルカーレも自分の行動に頰を染めながらも、満面の笑みを返すのだった。
天藍は悩んでいた。
会場がクリスマスに向けて飾られてるなら、ボディジュエリーもその系統が良いだろうか?
サンタや雪だるまも可愛いだろうが、折角だから綺麗にかのんを飾りたい。
(……彼女に似合う花を)
そう思いつき、天藍はかのんにクリスマスの花について訊ねた。
「クリスマスの花ですか?」
かのんは目をぱちぱちさせ、脳内の知識のページをめくる。
「……赤と濃い緑の組合せ……例えばポインセチア、深紅の薔薇と赤い実付けたヒイラギとかですね」
「赤以外の花はないのか?」
深紅の花も悪くない。だが、かのんには淡い色合いが似合うような気がして、天藍はそう訊いた。
「赤くない花ですか?……それならクリスマスローズでしょうか?」
「なるほど」
天藍はふむふむと頷く。
「どんなデザインを考えているんですか?」
好奇心にかられて問うが、天藍は
「出来上がりのお楽しみだ」
と、にんまり笑って誤魔化すのだった。
そんなわけで、かのんは自分の背に何が描かれるのか知らずに施術を受けることになった。
着用するドレスはボディジュエリストに「天藍のデザインの邪魔をしない色合いに」と相談すると、シンプルな群青色のものを勧められた。シルク特有のとろりとした光沢があるため、シンプルであっても品のあるドレスだ。
施術を終え、タキシードに着替えた天藍の待つ部屋へ。
天藍はかのんの姿を見ると、たちまちのうちに顔を綻ばせる。
彼女の傍に寄るとそっと手を取り、耳元に囁く。
「綺麗だ」
かのんは照れ笑いを浮かべる。
褒められるのは嬉しいけれど、こんなに背中を露出することは滅多にないので、少し恥ずかしい。
「天藍、私の背中を撮影してくれませんか?どんなデザインか気になるので」
かのんが言うと、天藍は自分の携帯電話の写真撮影機能で、かのんの背中を写すと、その画像を得意げに見せた。
かのんはその美しさに瞳を丸くし、次に嬉しそうに両目を細める。
肩側に雪の結晶が施され、下方にクリスマスローズと柊が意匠化してあり、ドレスの色と合わせると、背中にクリスマスの夜が展開されているようだった。
「素敵です」
かのんの笑みに、天藍もこのデザインにして良かったと満足だった。
かのんと言えば薔薇、だったが、実は今回はわざと薔薇のデザインを選ばなかった。
薔薇は以前ボディーアートで自分がかのんに描いた事もあって他人に描かせたくなかったのだ。それは天藍だけの秘密である。
レムレース・エーヴィヒカイトはボディジュエリーで描いて欲しいデザインのラフスケッチを持って出石 香奈とボディジュエリストの元へ赴いた。
「緑とシルバーを基調にして、こんな感じで頼みたい」
と、ラフスケッチを広げる。
(盾のエンブレム……)
描かれたものを見て、香奈はくすぐったい気持ちになる。
盾のデザインだなんて、なんだか、「お前を守る」と宣言されているようで。
実際、レムレースは香奈を守るという意思をもって、この図柄をデザインしたのだ。
香奈は、レムレースの意思を感じ取ると共に、このデザインを(所有のしるしみたい)とも感じて少し照れくさくなった。
「施術をするのは当然女性なのだろうな」
レムレースがいやに真剣な顔でボディジュエリストに訊いている。
香奈の肌を他の男に触らせるなんて、とんでもない。
ボディジュエリストは、レムレースの心の声が聞こえたのか、「施術を担当しますボディジュエリストは全員女性ですから、ご安心ください」と柔らかく微笑んだ。
レムレースは安心して香奈と別れると、自分も黒のタキシードに着替え身なりを整える。
そろそろ施術が終わるかという頃合いで、香奈を迎えに行った。
施術の部屋から出てきた香奈に、レムレースは息を呑む。
赤いドレスで一際艶やかな香奈は、その姿に気後れすることなく、まるで一流のモデルのように歩いてくる。
その堂に入った姿にレムレースは見惚れてしまう。
「似合うかしら?」
悠然と微笑む香奈にレムレースは頷いた。
「撮影映えしそうだし、その……本当に綺麗だ」
照れながら褒めるレムレースに、香奈はまた、くすぐったい気持ちになった。
アンジェリカ・リリーホワイトは、精霊の真神を伴いやってきた。
「あんじぇの背に描く絵か……大きく烏揚羽蝶の翅でも描いてもらうか」
真神は顎に手を当て、思案しつつ言う。
「黒いびーずで全体を描いて、青いらめで模様を描いていく感じかの。後の細かい所は職人に任せよう」
ドレスも真神が指定し、アンジェリカは施術する部屋に通された。
施術用の服に着替え寝台に俯せに身体を横たえる。
ひやりとした接着のりが背に塗られ、その感触にアンジェリカは心の中で小さく悲鳴をあげた。
その後に続く装飾を付けられる感触も、くすぐったくてしかたがなかったが、アンジェリカはぐっと堪える。
ボディジュエリーを施し終わると、ドレスを手渡された。
オーガンジーのふわっとしたアシメントリースカートに、ホルターネックの黒いカクテルドレス。
こんなに背中の開いた服なんて、着たことがないから少し気後れしてしまう。
(……真神さまが選んでくれたのですから、着なければ!です)
気合いを入れて、アンジェリカは着替えた。だが、やはり。
(うー……背中丸見えでちょっとはずかしい……)
居心地の悪さを感じ、もじもじする。
髪はいつも通り黒いリボンで結ったツインテール。この髪型だと背中が丸見えになるのだ。
部屋を出ると、着替えを終えた真神が待っていた。
「あまり我は洋装はせんのだが……まぁよい」
そう言う真神は、黒のタキシードに身を包んでいた。言葉の割に、タキシード姿もなかなか似合っている。
「絵が描き終わったら先導するのだったか」
真神がすっと左手を差し出した。アンジェリカはその意味を察し躊躇する。触れても良いのだろうか、この手に。けど、この状況でそれを拒否するのもおかしな話だ。
アンジェリカは緊張しながらも自分の右手を控えめに乗せると、真神は表情を緩める。そして、彼のエスコートでラウンジバーへと向かうのだった。
鬼灯・千翡露が着ているのは、翡翠色のオーガンジーの膝丈グラデーションドレス。
背中が開いたドレスに合わせ、専用のロングビスチェも着用し、シルエットも美しい。
施術を終えて男性用控室に向かうと、ほぼ黒に近い緑のタキシードに着替えたスマラグドが顔をあげた。
千翡露の仕上がりに、自分の考えたデザインが大成功だったことを認識し、満足げな笑みを浮かべる。
「さ、ラグ君、会場に行こっ」
千翡露は弾んだ声でスマラグドの手を引く。
「ちょっと、ちひろ。エスコートは僕の役目だよ」
「そうだった」
笑う千翡露にスマラグドは、まったくもう、と息をつく。
気を取り直して、スマラグドのエスコートでラウンジバーへと入る。
飾られた色とりどりのイルミネーション。それと同じくらい、千翡露の濃い翡翠の瞳も輝いた。
「わあぁ、皆のも綺麗だねえ」
ラウンジ内を歩きながら、他の皆のボディジュエリーを見て楽しむ。
「こういう芸術の形も素敵だなあ」
「こんばんは」
すれ違ったリチェルカーレが微笑んで通り過ぎると、千翡露はその背中に描かれた美しい翼に魅入る。
「僕は芸術とかよく解んないけど」
あまりに他の人のボディジュエリーを褒めていたせいだろうか、スマラグドがちょっぴり拗ねたように唇を尖らせた。
「ちゃんとちひろのも綺麗になるよう念押ししといたからね!ちひろが一番綺麗だからね!」
「あはは、有難うねラグ君」
真剣な顔で一生懸命に主張するスマラグドに、千翡露は笑う。
「出来上がったの合わせ鏡で見せて貰ったよ。本当に綺麗な花だったなあ」
千翡露は完成直後に鏡ごしに見せてもらったボディジュエリーを思い出しうっとりと微笑む。
緑がかった黄色の花、それを取り巻くように舞うその花弁と葉のデザイン。
「あれは……アルストロメリア。ちひろには、あれが似合うって思ったから」
言いながら照れてしまったのか、少しずつ声が小さくなる。
「……喜んで貰えて嬉しい」
スマラグドはぎこちないながらくしゃりと笑む。
「わ。ラグ君がそんな風に笑ったの、初めて見た。何だか私も嬉しいな」
千翡露は目を細めて笑う。
「そう、そうやって一緒に歩いて行こう。僕らが目指す『未来への憧れ』を、忘れないように――」
呟きほどのスマラグドの言葉は、周囲の喧騒に掻き消されて。
「……うん?ラグ君、何か言った?」
「何でもない」
スマラグドは首を振り、話題を変える。
「そうだ、僕お腹空いたんだよね。ドリンクとカナッペ貰いに行こうよ」
「あ、そうだね!私も喉乾いちゃった」
2人は給仕係のいるテーブルに向かう。
「ソフトドリンクはあるって言ってたけど、ノンアルコールカクテルもあるかなあ。ああいうのの色も好きなんだよね」
千翡露は給仕係の男性に、お勧めのノンアルコールカクテルを訊く。
「ノンアルコールカクテルもあるみたい!」
と言ってスマラグドを振り返る千翡露に、給仕係の男性の視線が注がれる。
スマラグドは何だか誇らしい気持ちになった。
男性の目を惹きつけるほどに魅力的な千翡露に。千翡露をそこまで魅力的にしたのは、自分の功でもあるのだから。
スマラグドは、まだじっと千翡露を見つめている男性に、
「俺のだから、あげないよ!」
と、得意げに囁いた。
(何だかラグ君、本当に今日は凄く楽しそう)
上機嫌なスマラグドに、千翡露は考える。
今までのスマラグドは、いつも眉間に皺を寄せていた、そんな印象があったけれど。
(雰囲気が柔らかくなった、のかな。心にゆとりが出来た?)
どちらにせよ、スマラグドの変化は嬉しかった。
千翡露の視線に気づいたスマラグドが、「何?」と言いたげに見つめると、千翡露は彼に笑顔を返した。
かのんと天藍は、「バーテンダーの様子が見たい」という天藍の希望でカウンター席へ向かった。
天藍はかのんが座りやすいようにカウンターチェアを引いてくれる。
席に着いた天藍が
「コーラルスタイルのカクテルを」
と頼むと、バーテンダーは手際よくカクテルを作り始め、天藍はその様子を興味深く観察している。
シェイカーを振り終わると逆さにしたグラスの縁をシロップに浸し、次にグラニュー糖の中に差し込み、引き上げるとグラスをくるんと半回転し上向きに。そこに、シェイカーから薔薇色のカクテルを注ぐ。
流れるような手際の良さ。
出来上がり目の前に出されたグラスにかのんは瞳を細めた。
「グラスの縁に雪が積もったみたいですね、とても綺麗です」
グラスの縁に付けられたグラニュー糖の雪は、かのんの背のボディジュエリーと共にクリスマスらしさを盛り上げてくれる。
ふと、かのんは訊いてみる。
「天藍も作れますか?」
「本職には敵いそうにもないけどな」
天藍は苦笑しながらも、そう答える。
「良かったら今度家で飲む時はかのんのためだけに作ろうか」
かのんは瞳を輝かせた。
かのんのため「だけ」。その言葉に秘められた特別感が嬉しくて。
「はい、楽しみにしています」
弾む声でそう答えたのだった。
真神がアンジェリカを導いたのは、カウンター席だった。
「折角背に絵を描いてもらったのだからな」
皆にも見てもらえるように、と。
「我は酒を頂こう」
「私は流石にお酒はいただけないですね……」
「あんじぇは果物の絞り汁でも飲んでおけ」
「では、オレンジジュースを。あ、あとカナッペもいただきましょう、真神さま」
「かなっぺ」
それは何だ、と訊きたそうな真神に、アンジェリカは微笑む。
「きっとお酒にも合いますよ」
運ばれてきたカナッペを食べつつドリンクを飲み、2人は当たり障りのない世間話などを楽しむ。と、ふいに真神が呟いた。
「……汝に蝶の絵を描いたのは、我の元から違う精霊の元へ飛んで行きそうだと思うてな」
どこか遠くを見るような目で、真神は言う。
「そうなる前に翅をもいでやろうと思うての……」
口調は静かだが、言葉には強い独占欲が籠もっている。
真神は一口、酒を煽った。喉から胸へと落ちていくアルコールの熱さは、胸を燻らせる想いの熱さにも似ている。
「えと……」
アンジェリカは無意識に膝の上に両手を揃える。
「他の精霊の方を、お迎えする気はないですよ?」
真神は意外なことを聞いたとでも言うような顔でアンジェリカを見返す。
「だって、真神さま……二人で取り合うみたいで、お嫌でしょう?私も嫌かなって思って」
アンジェリカが真神の顔を覗き込む。
「そうか、我のモノであるという自覚はあったか」
真神は楽しそうに双眸を細めた。
「ははっ、ならば精々我を楽しませろ。我が飽きぬ様にな」
そして、アンジェリカの耳元に囁く。
「我は、汝を手放す気はないからな」
香奈は慣れた様子でラウンジの中へと入っていく。
「撮影するならやっぱりカウンターかしら」
パンフレット撮影の写真映りまでも考慮して行動している。
レムレースは香奈に促されるまま共にカウンター席へ。
「ふふ、レムはこういう所は慣れてない?」
居心地悪そうにしているレムレースに香奈は笑う。
「普段通りでいいのよ、夜景を見ながら楽しくお喋りしたり。お料理やお酒……は飲めないんだったわね」
香奈はレムレースに気を遣って、バーテンダーにこう注文する。
「ノンアルコールを二つ、お任せで」
「今日くらいは飲んでもいいんじゃないか?」
レムレースが勧める。せっかく美しい装いで雰囲気の良い場所にいるのだから。
「え、いいの?」
香奈の表情がぱっと明るくなる。
「それじゃあ一杯だけ……プルミエフルールをお願い」
「初めて聞く名前のカクテルだな」
レムレースが不思議そうな顔をする。
「あたしの誕生酒なんですって。酒言葉も素敵なのよ」
「……酒言葉というものがあるのか?」
誕生酒に酒言葉。耳慣れぬ単語ばかりで目を丸くする。
すると、バーテンダーがシェイカーに数種類のリキュールを注ぎながら教えてくれた。
「プルミエフルールには、『決して媚をうらない華麗な女性』という意味がありますよ」
(『決して媚をうらない華麗な女性』……か)
レムレースは教えてもらった酒言葉を反芻する。
(俺といる時の、自然体の香奈のようだ)
ぴったりな酒言葉に、思わず口元が笑む。
やがて、ピンク色のカクテルが注がれたグラスが香奈の前に差し出される。
レムレースは香奈の形の良い唇がグラスの縁に触れ、カクテルを飲み上下する喉をただ黙って見つめていた。
一口飲んだ香奈はレムレースの様子に気づき、グラスを置く。
「あら?レム……もしかして酔っちゃった?あなた匂いも苦手だものね、ごめんなさい。やっぱり控えておけばよかったかしら」
申し訳なさそうに言う香奈に、レムレースはゆっくり首を振る。
「酔ってはいない。今は必死で誘惑に耐えているところだ」
香奈はきょとんとレムレースを見つめ返す。
「……仕方ないだろう。俺の印の入った開いた背中に口付けたいと思ってしまうのは」
身につけた香水「月夜ノ雫」の力もあるかもしれないが、真剣な顔でこんな台詞を囁いてしまうのは、やはり酔っているからなのだろうか。カクテルの甘い匂いに。それだけではなく、香奈の姿に。
「ここじゃさすがに無理だけど」
香奈は照れを誤魔化すようにぱちぱち瞬きして視線を逸らす。
「あたし個人としては構わない……むしろ嬉しいわ」
そう言ってレムレースに視線を戻すと、屈託無く笑った。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:出石 香奈 呼び名:香奈 |
名前:レムレース・エーヴィヒカイト 呼び名:レム |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 木口アキノ |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 10月27日 |
出発日 | 11月02日 00:00 |
予定納品日 | 11月12日 |
参加者
- リチェルカーレ(シリウス)
- かのん(天藍)
- 出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
- 鬼灯・千翡露(スマラグド)
- アンジェリカ・リリーホワイト(真神)
会議室
-
2016/10/30-17:57
こんにちは、かのんとパートナーの天藍です
皆さんのボディジュエリー、拝見するのを楽しみにしています
クリスマスに向けてイルミネーションで飾られたラウンジパーティも素敵ですよね
楽しい時間を過ごせますように、よろしくお願いします -
2016/10/30-11:01
-
2016/10/30-11:01
出石香奈と、パートナーのレムよ。
よろしくね。
ボディジュエリーなんて初めてね。どんな風になるのかしら…
ラウンジバーなんて来るのも久しぶりだから、とても楽しみ。 -
2016/10/30-10:27
リチェルカーレです。パートナーはマキナのシリウス。
皆さん、よろしくお願いします。
ボディジュエリー、初めてなのでとても楽しみです。会場では皆さんのも見られるのでしょうか。
すてきな1日になりますように。 -
2016/10/30-02:11
と、いうわけで鬼灯千翡露とラグ君です。
宜しくね。
ラグ君はもう案決めてるみたいで。どんなのになるのかな?
皆のもどんなのになるのか、今からとっても楽しみ。 -
2016/10/30-02:09
-
2016/10/30-01:17
えと、初めまして…最近ウインクルムになったばかりの、
アンジェリカ・リリーホワイトと、精霊の、真神さま、です。
よろしく、お願いします。