悪戯南瓜とバラされた秘密(木口アキノ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「任務に失敗した!?」
 A.R.O.A.職員の目の前には、項垂れている数組のウィンクルム。
 とある庭園から、「ジャックオランタン用に植えていたカボチャがオーガ化してしまったので退治して欲しい」との依頼があったのだ。
 オーガ化したとはいえ元がカボチャならばさほど苦戦はしないだろう。そう思っていたが。
 職員は敗因を探るべく、皆に事情を聴取した。

 庭園では、十数個のカボチャがオーガと化していた。
 オーガ化したカボチャは、角の生えたジャックオランタンのような形状になり、下品に喋り、ゲラゲラ笑いながらふわふわと宙を漂っていた。
 ウィンクルムの姿を見止めると、カボチャのくせに口を大きく開け襲いかかってくる。その口の中にはナイフのような牙。
 攻撃をかわすと、カボチャは大きく飛び上がる。見上げると、カボチャの底部は切り取られたように穴が開いており……。
 すぽんっ。
 落下すると同時に精霊の頭にフルフェイスのヘルメットのように被さってしまう。
「な、なんだこれっ」
 頭を覆うカボチャを押さえ慌てる精霊。
「大丈夫?」
 心配して声をかけるパートナーに、
「うっせーなブース!」
 突如暴言を吐き始める。
 それは、彼だけではない。
 他のウィンクルムも、カボチャに取り憑かれた者はパートナーに向かって暴言の嵐。
「こ……これは、オーガの仕業ですね……」
 パートナーの暴言に怒りでプルプルしながらも、冷静にそう判断する。
「皆さんっ、惑わされてはいけません!これは奴らの策略です。こうやってウィンクルムの絆を弱くさせて、トランスの力も弱まらせようという策略です!」
 と、皆に声をかける。そこへ。
「お前10歳までオネショしてたんだっけな」
「……なっ……!」
「そーいえば、最近太ったんだよな」
 カボチャに取り憑かれた精霊が次々とパートナーの秘密を暴露し始めた。
「わーんっ、みんなには秘密って言ったのにーーーっっっ。バカバカバカーーーーーっ!」
 あっという間にトランスの効力は切れ、ウィンクルムたちは撤退を余儀なくされたのだった。

 ふう、と職員はしょうもない敗因にため息をつく。
 依頼を失敗のまま終わらせるわけにはいかない。
 別部隊を現場に向かわせる手配をしなくては。

解説

 というわけで、あなたたちが選ばれた別部隊です。
 カボチャオーガはぶっ叩けば割れますが、非常にすばしっこいです。
 取り憑かれたところをすぱーんと叩くのが一番効果的でしょう。中身も一緒に叩き割ったりしないように力加減をしてください。
 しかし、取り憑かれると思ってもいない暴言を吐いたり、パートナーの秘密を暴露したりしてしまいます。
 それに動揺すると絆の力が弱まりトランスの時間がどんどん短かくなってしまいますのでご注意を。

ゲームマスターより

 大人しいあの人があんな暴言を!?
 あの子にはあんな秘密が!?
 というような事が起きるエピソードです。
 プランには、神人、精霊ともに、カボチャに取り憑かれた場合どんな暴言を言い、どんな秘密をバラしてしまうのか記載してください。
 カボチャに取り憑かれるのは神人なのか精霊なのか、はたまた両方なのか。それはプランや能力により決定しますので、ご了承願います。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

シルキア・スー(クラウス)

  言葉に頷く
庭園に入る直前トランスとハイトランスジェミニ

戦闘
スパーク等で動きの鈍った敵を優先的に攻撃
攻撃の際敵の硬さ覚えておき彼や仲間が取り憑かれたら力を抑え頭を傷つけない様に南瓜割る
彼と離れ過ぎず上から来る敵は傘に避難 飛掛りは躱し彼の光輪に誘う

憑かれた場合
心の声(いやーやめてー
「この間澄ましてカッコイイ事言ってたけど
 その尻尾! 見事に襖に挟まっててマヌケ過ぎ
「カッコワル~ ケラケラ
「お澄ましワンちゃん~

彼の暴言に
「そんな猫虐待な寝言を私が!?
ショックと羞恥 でもそんな場合じゃない
言いたくないと苦悶してる筈 解放してあげたい
「大丈夫分ってるから!

戦後
聞いた皆さんのアレコレは忘れる方向で
彼の顔見て苦笑い


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  トランス
コンフェイト・ドライブ

取り憑かれる前に…!と攻撃
頭上注意で避けたり盾で防ぎながらとにかく数を減らす


取り憑かれたら
近付くんじゃねーよバーッカ!

あなた小さい頃はとっても可愛いくて女の子みたいだったらしいね?

この人私とオーガの中身が入れ替わった時私と分からずに殺しちゃった事あるんだよね
あの時と同じ剣でまた殺しそうでビビってるくせに


精霊が取り憑かれたら
思わぬ言葉に硬直
こんな冷たい言葉初めて
でも…
深呼吸して頭のスイッチを切り替える(メンタルヘルス
真っ直ぐ見る

普段の精霊を思い出す
これはこの人の本心じゃない

その話するのかー…ってなる(EP30
あーうん…別に隠してないからいいけど

力加減をして南瓜を割る


 出来れば、こんな依頼受けたくなかった。
 アラノアはどんよりとした顔でそう思った。
 ちらりと、隣を歩く精霊、ガルヴァン・ヴァールンガルドの見目麗しい横顔を見遣る。
 彼の表情は仏頂面だが、これは彼の平常運転、いつも通り。
 アラノアのようにこの依頼に不安を抱えているわけではないのだ。
(ガルヴァンさんは、なんとも思ってないのかな)
 アラノアは視線を動かし、今回共に依頼に臨むシルキア・スーの様子を伺う。
 彼女もまた、アラノア同様浮かない表情であった。
「暴言だとか、秘密をバラしちゃうだとか……私やっぱり嫌だな」
 沈んだ声のシルキア。
 アラノアもうんうんと頷く。そう、これが、今回の依頼に気が進まない理由。
 クラウスが息をつくと、シルキアの瞳を見据え諭すように言い含める。
「何を言った所で憑物の所為。よいな」
 その言葉にシルキアは表情を引き締めた。
 そうだ。気が進まないにしても、依頼であれば誰かが受けねばならないのだ。
 そうしなければ、オーガの被害は収まることはなく、その被害が拡大する怖れもあるのだから。
 そして引き受けたからには、きっちりと依頼をこなさなければならない。
 瑣末なことに動揺しているわけにはいかないのだ。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
 庭園の管理人が眉尻を下げ頭を下げながら管理人小屋からやってくる。
 本来は季節の花などが楽しめる庭園であるらしいのだが、管理人がハロウィンのためにとメインの庭園から少し距離を置いた所有地の隅にカボチャ畑を作ったのだという。
 なので、多少大立ち回りをしても庭園そのものには被害は及ばないそうだ。
「気になさらないでください」
 アラノアは管理人に微笑み、「でも」と言葉を続ける。
「オーガ討伐が完全に終わるまで、周囲に人を寄せ付けないようにしてください。管理人さんも、小屋から出ないようにお願いします。出来れば、耳栓もつけて待っていてください」
 自分の暴言や秘密なんて、絶対に絶対に!聞かれたくはないのだ。
「盲亀の浮木、優曇華の花」
 人払いをしたところで、アラノアはガルヴァンとトランスする。
 シルキアたちもトランスし、続いてハイトランス・ジェミニを発動させる。
 精霊もカボチャオーガに取り憑かれる可能性が大いにあるのだ、神人も戦力とならねば。
 庭園の隅、カボチャ畑の一角を見れば、ウィンクルムの気配を察したのか、ふわりふわりと10個ほどのカボチャが地面から浮いてきていた。
(何を言った所で憑物の所為)
 シルキアは先ほどのクラウスの言葉を胸の内で反芻し、覚悟を決めた。
 ガルヴァンはアラノアの頭を優しくぽんぽんと撫で、コンフェイト・ドライブを発動させた。
 アラノアの身を纏うオーラが輝きを増す。
 これでしばらくの間はアラノアの能力は増強され、共に前線で戦える。
 4人は視線を交わし頷きあうと、カボチャ畑へと駆けていった。

 カボチャオーガたちはウィンクルムの接近を認めると、空高く舞い上がる。
 そして槍の如き鋭さで落下し遅いかかった。
 が、それを、クラウスの掲げる片手杖ウンブレラ・クックルビダから放たれる眩ゆい光が迎え撃った。
「初っ端っからいきなりシャインスパークとか?ちょっとアナタ、人使い、いや杖使いが荒くない?まー杖っつーかぶっちゃけ傘だけどさ!」
 ウンブレラ・クックルビダの先に付いたカボチャがペラペラ喋りかけてくる。が、クラウスがそれを気に留めることはない。
 先制攻撃を仕掛けようとしていたカボチャオーガたちは逆に不意を突かれ、宙空を右往左往するが、それでも尚且つウィンクルムにその牙を向けてくる。
 クラウスはウンブレラ・クックルビダをぱっと開き、頭上から落下するように襲いかかるカボチャオーガの攻撃を防ぐ。
 ウンブレラ・クックルビダにぶち当たりぼよんと跳ねたカボチャオーガは身を翻して横からシルキアに襲いかかる。
 シルキアはひらりと避け、水剣「ブラッド・シー」で打ち払った。
 刃はオーガの皮を抉る。
「食用のカボチャよりは柔らかいみたいだね」
 元はジャックオランタンを作るためのカボチャのせいか、オーガ化しても硬度はそれほど無いようだ。
「取り憑かれたら暴言を放つか……」
 ガルヴァンはクラウスのシャインスパークで鈍化したカボチャオーガの攻撃を冷静に見極め、避けながら狙いを定めロングソードを叩きつける。
 思い切り振りかぶって一撃目。カボチャオーガは真っ二つに割れた。
 軽くノックをするような力加減で二撃目。
 カボチャオーガは弾き飛ばされるも皮に傷が入っただけで、すぐに体勢を立て直し襲いかかってくる。
「ふむ、このくらいでは割れぬか」
 ガルヴァンは襲いかかってきたカボチャオーガにロングソードの柄をめり込むように叩きつけてパカンと割った。
 カボチャオーガの動きが鈍っている間に、力加減や攻撃方法を変えオーガを割り壊す最低限の力を模索しているのだ。仲間が取り憑かれた時のために。
「取り憑かれる前に……!」
 アラノアも六壬式盤でオーガの殺気を感知しながら、特に頭上からの攻撃に気を付けてそれを避け、隙あらばトランスソードを振るう。
 シャインスパークとコンフェイト・ドライブの効力が続いているうちに、可能な限り敵の数を減らしたい。
 クラウスがさらにシャイニングアローⅡを発動し、自らの周囲に複数の光輪を生み出すと、彼目がけて飛びかかってきたカボチャオーガが3つ、爆ぜるように割れて吹き飛んだ。
 シルキアは、自分に襲いかかってくるカボチャオーガを誘うように、攻撃を躱しながらじりじりとクラウスに近づく。
 それを見てとったクラウスは、シルキアとカボチャオーガとの間に身を滑り込ませ、カボチャオーガの攻撃を受け止める。
 カボチャオーガは光輪に触れ、弾け飛ぶ。
 クラウスの背からそれを見ていたシルキアはホッと息をついた。
 かぽっ。
「!!!」
 一瞬の隙を突かれ、シルキアは後方から飛んできたカボチャオーガに頭部を覆われた。
 拙い、そう思ったと同時に、シルキアのくぐもった声が響く。
「この間澄ましてカッコイイ事言ってたけどその尻尾!見事に襖に挟まっててマヌケ過ぎ〜!」
(いやーやめてー)
 心で叫ぶもシルキアの暴言は止まらない。
「カッコワル~」
「む……」
 クラウスは尻尾をぱさりと振った。襖の感触がまた蘇り、当時の失態をも思い出す。
 ケラケラ笑うシルキアに、アラノアは目が点になる。
「カボチャオーガに取り憑かれたら、あんな風になるんだ……」
 なんて、気を取られている場合ではない。
 ひゅん、とアラノアのすぐ脇をガルヴァンの剣が風を切り、アラノアに跳びかからんとしていたカボチャオーガを宙に弾き飛ばす。
「あ、ありがとうガルヴァンさ……」
 アラノアをカボチャオーガから守ったはいいが、その分、自分の防御が疎かになる。シャインスパークの効果が時間経過と共に弱くなったせいもあるのだろう、ガルヴァンは真上から落ちてきたカボチャオーガに捕らえられる。
「……虫唾が走る、視界から消えろ」
 発されたガルヴァンの言葉に、アラノアは息を飲む。
(こんな冷たい言葉初めて)
 アラノアは身が凍るような思いだった。
 冷たい言葉はオーガの所為。頭ではわかっているけれど。
「俺がいなければ自分の身も守れないくせに」
 今だって、ガルヴァンに助けられ、その代わり、彼がカボチャに取り憑かれてしまった。
 ガルヴァンの言葉に、アラノアは俯きそうになる。
 でも。
 アラノアは頭をぐっと持ち上げ、深呼吸する。
 脳内で、カチリとスイッチが切り替わる瞬間をイメージ。
 少し前までのアラノアなら、自分の弱さを嘆くだけだったかもしれないが、今は違う。
 こうやって自分の精神をコントロールすることだってできる。
(これはこの人の本心じゃない)
 アラノアは普段のガルヴァンの姿を思い出し、取り憑かれたガルヴァンを真っ直ぐに見据える。
「平和ボケした平凡な生活しか知らない一般人が生意気な……」
 尚も言葉を続けるガルヴァンに対し、冷静に剣を掲げる。
 アラノアが動じないのに気づいてか、取り憑かれたガルヴァンは言葉の方向性を変えた。
「初恋相手に告白直前になって手酷く振られて泣いた事があったな」
 くくくっ、と含み笑いがカボチャの下から聞こえる。
(その話するのかー……)
 ガルヴァンの言葉と笑いはアラノアを脱力させたが。
「だから、何?」
 アラノアはくるんと半円を描くように剣を回すと、その柄でカボチャの頰を下から殴りつけた。
 カボチャに穴が空き、そこから亀裂。崩れるように割れ、葡萄色の髪がふわりと広がり、ガルヴァンの顔が露わになる。
「……すまない」
 決まり悪そうに口元を押さえるガルヴァン。アラノアの過去の傷を抉るようなことを言ったと自覚している。
「あーうん……別に隠してないからいいけど」
 過去の事、と割り切ってもいるし、とアラノアは苦笑してみせた。
「そうだ、シルキアさんは?」
 気まずい空気を誤魔化すように、アラノアはガルヴァンから視線を外す。
「お澄ましワンちゃん~」
 シルキアはクラウスを嘲り挑発するような暴言を彼にぶつけていた。
 そして、彼女のオーラの光が徐々に弱まっていった。
 トランスの力が、弱まっているのか。
 ケラケラと笑い暴言を投げつけるその裏で、彼女はそんな自分を嫌悪し、クラウスに申し訳ないと強く思った。
 それが、絆の揺らぎに繋がったのだ。
 こんな傷つけるような言葉を言ってしまうなんて、自分はパートナーとして失格なのではないか、と。
 クラウスはシルキアを目を眇めて見つめる。
 シルキアは、オーラが弱まるほどに、自分の言葉を気に病んでいる。
 ……そんな彼女は、見たくない。払ってやらねば。
 クラウスは、小剣「リーンの棘」をすうっとを掲げる。
「元凶たるはその憑物。斬る」
 きっぱりと言い切ると、カボチャオーガのヘタの横に小剣を2センチほど、突き立てる。
 ペキ、と音を立てカボチャオーガにひびが入り2つに割れた。
 中から泣きそうな顔のシルキアが現れるが、クラウスはシルキアが何かを言う前に、
「まだ戦いは終わっておらぬ」
 と、彼女の背を軽く叩いた。
 発してしまった暴言は気にするな、と、言葉にせずともシルキアに伝わる。シルキアはこくんと頷くと、武器を構え直した。
 カボチャオーガの数は半分近く減ったが、油断はできない。
 シャインスパークの光は徐々に弱くなっていく。
 折を見て再度発動させなければ。
 クラウスがそんなことを考えていたとき。
「きゃあっ」
 アラノアの悲鳴が響く。
 彼女のコンフェイト・ドライブの効力が失われ能力が通常に戻ったところを、カボチャオーガに狙われた。
 咄嗟にガルヴァンがアラノアを庇うが、四方から襲われ、その全てに対処できなかった。
「っ!」
 ガルヴァンの剣を逃れ襲いかかってくるカボチャオーガに、アラノアは自らの片手剣を振るう。刃はカボチャオーガの牙と火花を散らしてぶつかり、カボチャオーガはくるくると回り宙空へ弾かれる。
 弧を描いて落下……すると見せかけ、猛スピードでアラノアの頭部に飛びついてきた。
「アラノア!」
 ガルヴァンが手を差し伸べかけるが。
「近付くんじゃねーよバーッカ!」
 罵られ、その手は止まる。
 想像もしていなかったアラノアの荒い言葉遣いに、ガルヴァンは一瞬呆けてしまった。
 その隙に、取り憑かれたアラノアは矢継ぎ早に言葉を放つ。
「あなた小さい頃はとっても可愛いくて女の子みたいだったらしいね?」
「……覚えていたのかその話……」
 ガルヴァンは額を押さえ、彼が母親似で幼少期は少女に間違えられるほどであったことをアラノアに喋った張本人である父親に、心の中で悪態をついた。
 それが、カボチャオーガには彼に精神的ダメージを与えたと思わせたのか、取り憑かれたアラノアは追い討ちをかける。
「この人私とオーガの中身が入れ替わった時私と分からずに殺しちゃった事あるんだよね」
 残ったカボチャオーガたちと対峙しているシルキアたちにも聞こえるような大声でそう言った。
「……あの時の話はもう解決済だろう」
 表情を硬くするガルヴァンに、アラノアはついと身を寄せ囁いた。
「あの時と同じ剣でまた殺しそうでビビってるくせに」
 ウィンクルムとなってまだ日が浅いころ、敵の術中にはまりアラノアの精神が入ったオーガを斬り伏せたことは、ガルヴァンの心に今も淀んだ澱となって残っている。
「……お前に死の恐怖を味わわせた俺の罪は消えない」
 低い声で囁く。
「だが」
 ガルヴァンは顔を上げ両手剣を掲げると、力を加減しアラノアに取り憑くカボチャを真っ二つに割った。
「今のこの剣はもうお前を傷付けない」
 カボチャから解放され、アラノアは安堵の微笑みを浮かべた。
「……ありがとう、ガルヴァンさん……」
 その様子に、シルキアもほっと息をつく。
 改めて周囲を注意深く見回せば、飛び回っているカボチャの姿はもはやない。
「もしかして、全部やっつけた?」
 歓喜の表情でシルキアはクラウスを振り返る。
「うむ」
「……って、取り憑かれてるよ!クラウス!」
「なんだと!?」
 そこには、頭にカボチャを被った姿のクラウスがいた。
 全滅させたと思いきや、残る一匹にしてやられた。
 クラウスは頭から外そうとカボチャオーガを引っ張ったりペシペシ叩いてみたり。
 そうしながらも、口は勝手に動く。
「この間縁側で昼寝をしていたな」
「う……確かに」
 身に覚えのあるシルキアは、いったいこの先何を言われるのかと、ごくりと喉を上下させる。
「お前は言った『ねこねこー』何だと聞けば『ふんどし猫パーティ、〆は猫鍋~♪』」
 軽快に語られる内容に、シルキアは呻いて頭を抱える。
「狂気じみた寝言だな。それともそんな嗜好があるのか?正気を疑う」
「そんな猫虐待な寝言を私が!?」
 寝言を暴露されるなんて恥ずかしいことこのうえないし、なにより内容がショッキングだ。
 だが、ショックを受けている場合ではない。
 猫鍋〜、ふんどし猫〜、と囃し立てるクラウスに片手剣を向ける。
 剣を振るえばクラウスの頭に取り憑いたカボチャオーガはひょいと避ける。
 だが、そんなカボチャオーガを後ろからガルヴァンが両手で押さえてくれた。
 シルキアはクラウスにまで刃が達しないように、と慎重にカボチャオーガの頭に剣を突き立て、眉間、鼻、口を通って真っ直ぐに切りつける。
 カボチャオーガは2つに割れて、地面に落ちた。
「猫なべ……はっ」
 クラウスがみるみるうちにばつの悪そうな顔になる。
 気まずい雰囲気を払拭するように、シルキアは力強く言う。
「大丈夫分ってるから!」
 クラウスは項垂れながら「すまぬ」と呟いた。

 カボチャオーガを全滅させ、その報告のために管理人小屋を訪れる。
 ノックしてから扉を開けると、管理人はきゅぽんと耳栓を外した。
 どうやらアラノアのお願いをきちんと実行していてくれたようだ。
「いやー、助かりました」
 管理人はカボチャオーガがいなくなったと聞きほっと胸を撫で下ろす。
「お礼といってはなんですが、皆さん、少し一休みして行きませんか?カボチャクッキーと紅茶がありますので」
「………」
 ウィンクルムたちの間に微妙な沈黙が流れると、管理人は慌てて弁明した。
「いや、大丈夫ですよ!クッキーに使ったのは普通のカボチャですから!」
「そういうことなら……」
「ご馳走になろうかな」
 アラノアとシルキアが顔を見合わせたのちに、そう答える。
 ウィンクルムたちは管理人小屋の一角にあるテーブルに案内される。
 庭園の仕事を手伝っているという妖精たちがクッキーと紅茶を運んできてくれた。
 アラノアはサクッとクッキーをひと齧りして微笑む。
「美味しいです」
 和やかなティータイムのひとときが訪れる。
 紅茶で人心地ついたシルキアが、
「ところで」
 と口を開いた。
「聞いた皆さんのアレコレは忘れる方向でいいよね」
 シルキアがクラウスを見遣ると、彼は同意するように頷いた。
 自分たちも忘れて欲しい言葉を随分と口にした。シルキアは苦笑いする。
「もちろんです。私も忘れますから」
 アラノアも深く頷いた。
 シルキアがいったいどんな夢を見てあんな寝言を言ったのか気になるところではあるが、今日聞いたことは全部なかったことに……。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 10月19日
出発日 10月27日 00:00
予定納品日 11月06日

参加者

会議室

  • [7]アラノア

    2016/10/26-22:00 

    こちらもプラン提出済みです。
    いつぞやの任務を思い出す感じですが、無事成功しますように…!

  • [6]シルキア・スー

    2016/10/26-20:38 

    プラン提出しています。
    向うの数がちょっと多いけど頑張りましょう。

    無事乗り切れますように!

  • [5]シルキア・スー

    2016/10/23-21:51 

    >全力で振りかぶったら
    「力加減し頭の南瓜叩き割る」
    とこちらはしていますが、頭ですからね
    こちらももう少し対応の仕方考えてみます。
    引き抜くのは齧られる危険がありますよね。

  • [4]アラノア

    2016/10/23-21:17 

    ガルヴァンだ。
    一応、どの位の力加減で南瓜が壊れるのか最低ラインを見極めようと思っている。
    誰かが取り憑かれた際それに向かって全力で振りかぶったらまずいからな…。

  • [3]シルキア・スー

    2016/10/23-17:47 

    >全員その場にいる
    その認識です。
    なのでパートナーはもちろん味方が取り憑かれたら南瓜割る
    っていう行動入れさせて貰いました。

    支援としてクラウスがシャインスパーク(目くらまし+命中下げ)使用予定です。
    戦後にはサンクチュアリでの回復を入れています。
    使ってくれるか状況次第ですが。

  • [2]アラノア

    2016/10/23-10:42 

    アラノアとシンクロサモナーのガルヴァンさんです。
    よろしくお願いします。

    はい、シルキアさんお久しぶりです。
    ほぼ個別ですが全員その場にいる感じなのでしょうかね…?

    取り憑かれると思ってもない暴言を吐いたりパートナーの秘密を皆の前で暴露したりとかなり大変なことになりますが、お互い頑張りましょう…!

  • [1]シルキア・スー

    2016/10/23-00:35 

    シルキアとLBのクラウスです。
    どうぞよろしくお願いします。
    アラノアさん、お久しぶりですね。

    えーと、ここで聞いた事は忘れる方向ですね!


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