Hi!廃!ハロウィーン廃病院!(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 大都会タブロス--
 毎年のように盛大に行われるハロウィーンフェスティバル。
 去年から、その中でも異色のイベントが行われています。
 実際に使われていた廃病院にて、仮装パーティイベントが行われるのです!

 ウィンクルムでも一般人でも、誰でも仮装さえしていれば無料で参加出来るハロウィン廃病院パーティ。
 10/31~11/1にかけて、そこでは、芸能人やバンドのライブステージは勿論、個人や団体のワークショップや展示会、仮装コンテスト、音楽教室、絵画教室、プレゼント交換が行われる豪華なディナーパーティ……様々なイベントが行われます。

 ちょっと恐い肝試しの雰囲気があるのですがそれが若者達の感性にあったのか、昨年は大好評。それならば今年も! と主催者一同張り切っていました。
 ところが……。

「私が派手なパーティを毎年開くからでしょうか? オーガから狙われてしまいました」
 A.R.O.A.に呼び出されたウィンクルムであるあなたたちは、依頼人の実業家にそう言われ、キョトンとしてしまった。
 何故に、オーガが人間のハロウィーンパーティを狙うのか?
 すると、実業家はくすっと笑って続きを教えてくれた。
「というのは建前でして……。会場の中には子どものオーガの仮装をしたスタッフが、トリックオアトリートと叫びながら、お客様に冗談ですむイタズラをして歩き、驚かせた後、お菓子や素敵なプレゼントを配ってイベントを盛り上げているんですよ。そのスタッフと、ウィンクルムとして戦うふりをして、イベントを更に盛り上げて欲しいんです」
「何しろ、ハロウィーンの不気味な雰囲気を出すために、廃病院を買い取ってリフォームしてまでのイベントですからね。スタッフの子どものオーガたちも可愛らしくても不気味な雰囲気を出しています。それで、ウィンクルムも最初はコスプレなどを考えていたのですが、ここはいっそ本物にと思いまして……」
 要するにパーティの出し物に一役買って欲しいという事なのですが……。
 どうでしょう? 廃病院を貸し切っての一大ハロウィーンイベント、ウィンクルムにコスプレするウィンクルムとして、参加しますか!?

解説

ハロウィン病院イベントの主立ったもの……

人気バンドGURENライブステージ
病院の広い庭を使って! 若者に人気のロックバンドがハロウィンの仮装をして舞台で熱唱。
11/1 昼13:00~18:00までのイベントです。

アロマワークショップ
元の検査棟を使って、薬品の匂いではなく癒やされるいい香りが……。有名アロマテラピスト、マダムミゼリアと一緒に自分のオリジナルアロマキャンドルを作るワークショップ。癒やされたい女性に大人気。

仮装コンテスト
三階の病室だった部分を工事でつなげて広く使っています。
誰でも気軽に参加出来るコンテストです。
10/31 午後14:00~17:00まで

音楽教室
一階の元のリハビリルームを借りています。声楽家サイモンさんに直々に指導を受けながらクリスマスキャロルを歌います。

絵画教室&展示会
二階の全棟を借り切って! 画家リネットさんの初心者絵画教室。同時に彼女とお弟子さんの絵が何部屋にも飾られています。

プレゼント交換&ディナー
元の食堂を利用し、総勢300名が同時にプレゼント交換するハロウィーンディナー。かぼちゃとかぶを中心に美味しい料理がたっぷり。
10/31 19:00~深夜まで。

以上、お好きなものに参加して下さい。
参加出来るものは3個までとさせていただきます。(1個だけでもOKです)
※個別エピソードになります。
※どのイベントにも自由に参加出来ますが、廃病院ハロウィーンの参加料として、300Jrいただきます。
※オーガのコスプレをした子供達が乱入してトリックオアトリートをします。乱入して欲しい場合は「乱」と記入し、どんな対応をするかプランに書いてください。
※アロマキャンドル、プレゼントなどはコーディネートアイテムで増える事はありません。

ゲームマスターより

不気味な廃病院でハロウィーンイベントをどうぞ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

 
音楽教室に参加

白鳥イメージの白いドレス
白い羽根をリボンと共に髪に編み込む
黒い衣装のシリウスに 白い羽飾りのついたペンダントをかけて
お揃いね 
少し照れたようににっこり

お化けが苦手なので 子どもが飛び出してくると毎回悲鳴
彼の手や背中にしがみ付く
びっくりした…!と笑顔で自分もお菓子を手渡す

音楽教室があるのに気づき目を輝かせ
行ってもいい?
シリウスに尋ねる 返ってきた答えに輝くような笑顔
ありがとう!
真剣に指導を受ける
伴奏に乗せ 歌詞に心を沿わせて澄んだ声を(歌唱スキル使用)
視線を感じ見ると 自分を見つめる彼の姿

星降る夜 天使たちは歌を歌う
光と喜びが あなたの上にあるように

眠ることを恐れる彼の心に届くように 祈りをこめて 


八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
  アスカ君はどこか行きたい場所はある?
私、参加してみたいものがあるの


突然だったのと意外と怖くて驚き
思わずアスカ君の手を握る
その後の彼の強引ながらもスマートな対応に照れ
確かにアスカ君のパートナーだけど、悪戯は駄目だからっ!
でも…今のちょっとかっこよかったかも…

絵画教室
初心者向けなら私も少しは上達するかも
先生の指導を聞いて一生懸命に描く
できた!黒猫の絵を描いてみたよ
ホント?褒められると嬉しい
そういえばアスカ君は何を描いたの?

ディナー
プレゼントはヘアアクセサリーにしてみたの
私には何が当たるかな?
食事はどれも美味しそう
最近寒くなってきたし、温かいお料理が特に美味しい
楽しかったね、本当に来て良かった


桜倉 歌菜(月成 羽純)
 
可愛いオーガさん達に、ウィンクルムの魔法を見せてあげましょう♪
マジシャンズハットから、ワン・ツー・スリーでうさぎ(ぬいぐるみ)を出しプレゼント

仮装コンテスト
折角のハロウィンですし、カウガールのコスプレで参加
羽純くんとおもちゃの銃を構えて格好良くポーズを決めましょう
皆さんの色んなコスプレを見るだけでも楽しい♪

絵画教室&展示会
絵画教室はじめてなんです
今日の想い出に、羽純くんの姿を描いてみたいなって
え?キラキラし過ぎ?
そうかなぁ…私的にはもっとキラキラさせたいんだけど…
やっぱり実物には敵わないなって

プレゼント交換&ディナー
300名で交換って圧巻だよね!
手作りのハロウィンなクッキーをプレゼントに用意


シエル・アンジェローラン(ヴァン・アーカム)
 
よ、よろしくお願いします!こういうデー…いえ、お出かけはしたことがなかったので少しドキドキしてます。
えっと、どこを見て回りますか?ロックバンドのライブですか?
ヴァンさんはロックがお好きなんですね。私はあまり聞いたことがなくて…ひゃ…!音が凄いですね!凄いです!

(オーガ姿の子供に囲まれる)
えーと、お菓子でしたねーどうぞ持っててください。あぁ!沢山ありますから喧嘩しないでください。
ヴァンさんは子供がお好きなんですか?すごくいい笑顔でした!
お兄さん…レーゲンさんは苦手なんですね…なんででしょう。

かぼちゃのスープにかぼちゃのパイにプリン。美味しいです!
それにいろんな方の仮装を見るの楽しい!



● 八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)編
 今日、八神伊万里は精霊のアスカ・ベルウィレッジと廃病院のハロウィーンイベントに参加しています。
「アスカくんはどこか行きたい場所はある? 私、参加してみたいものがあるの」
 伊万里がそう言うと、アスカはにっこり微笑みました。
「俺は最後のディナーに参加できたらいいから、あとは伊万里につきあうよ」

 伊万里が行きたかったのはハロウィーンイベントの絵画教室です。
 廃病院の二階全棟を貸し切って、タブロスでも昔から高名な画家のリネットとその弟子達の絵がセンス良く飾られています。リネットは風景が専門なのですが人物も描きます。今の季節ですから、秋の美しい風景画が展示されており、ところどころに恋人同士が銀杏の並木道を歩いているような絵も見られました。
 その二階の一番大きな部屋で、伊万里とアスカはリネット直々に絵画を教わる事になりました。他にも5~6名程度の客が一緒に参加しています。
「伊万里が行きたかったのってここか」
 アスカは納得しています。そして次の台詞は飲み込みました。
(確かに絵めちゃくちゃ下手だからなぁ……俺としては、ちょっとくらい弱点がある方が可愛いと思うんだけど)
 そんなアスカの前で伊万里は期待に満ちた表情です。
「初心者向けなら私も少しは上達するかも」
 伊万里がキャンバスの前で絵筆を持っていると先生が隣に立って、絵筆の持ち方から絵の具の使い方、そこから全て丁寧に教えてくれました。
 先生の指導を聞いて、伊万里は一生懸命に絵を描きます。
「できた! アスカくん、黒猫の絵を描いてみたよ!」
 出来上がりを見て、アスカはびっくりです。
「すごい……ちゃんと猫に見える……頑張ったな」
 アスカの微笑みを見て、伊万里はますますテンションが上がります。
「ホント? 褒められると嬉しい。そういえば、アスカくんは何を書いたの?」
「俺の絵は……内緒だ」
 そう言ってアスカは自分の絵を隠してしまいました。
 彼が描いたのは、一生懸命頑張っている伊万里の似顔絵です。伊万里は不思議そうにしていますが、アスカの隠したものを無理に見ようとはしませんでした。

 そうして伊万里が無事に絵を描き終えた後の事です。
「トリック・オア・トリート!」
 不気味ながらも可愛らしい、オーガの仮装をした子供達の集団が絵画教室に飛び込んで来ました。
 キャアキャアと子供特有の甲高い声でオーガの真似のような動きをしながら大人達に走り寄ってきます。
 突然の事でしたので意外と恐くて、伊万里は思わずアスカの手を握りました。
 アスカは手を握られて内心ガッツポーズです。
「お菓子をくれなきゃ食べちゃうぞー」
「悪戯しちゃうぞー!」
 恐がっている伊万里にそう言って怪獣のようなポーズを取る子供達。
 アスカは笑いながら、クーヘンバスケットのお菓子を子供達にあげました。
 それから伊万里の肩を抱きます。
「悪いな、伊万里は俺のだから、悪戯していいのは俺だけなんだ」
 アスカは勝ち誇った笑みでそう言います。
 伊万里はそのスマートな対応に照れてしまいます。
「確かにアスカくんのパートナーだけど、悪戯はダメだからっ!」
 伊万里はアスカを叱りましたが、彼は笑って受け流しています。
(でも……今のちょっとかっこよかったかも……)
 照れながらそう思う伊万里なのですが、それは素直に表現することが出来ませんでした。

 それから二人はディナーパーティに参加します。
 プレゼント交換があるので、伊万里とアスカは持ってきたプレゼントを係の人に渡しました。伊万里のプレゼントはヘアアクセサリー、アスカのプレゼントはストラップです。
 丸ごとかぼちゃをくりぬいて皿にしたものにたっぷりの濃厚クリームで作ったかぼちゃのグラタン、かぼちゃのパイ、かぼちゃのサラダ、蜘蛛の巣をかぶったゴーストをクリームで作ったかぼちゃムース、かぼちゃのマフィン、かぼちゃのプリン。その他、かぶ料理もありました。野菜を楽しいお化けの形に切ったかぶときのこのシチューです。正にハロウィーンのディナーです。
「最近、寒くなってきたし、温かいお料理が特においしい」
 食事はどれもおいしくて、伊万里は満足です。
「このデザートのかぼちゃプリンも美味いぞ」
 アスカは自分が食べておいしかったものを伊万里にすすめました。
 やがてプレゼント交換の時間が来ました。
 猫娘に仮装をした係の人が、大きな魔女の籠からプレゼントを取って、一人一人に配り始めます。
「ありがとうございます」
 伊万里は真面目にお礼を言ってプレゼントを受け取りました。
「ん……あれ?」
 伊万里は首を傾げました。そのプレゼントの包装になんだか見覚えがあるのです。
「はい、どうも……あれ?」
 隣でアスカも奇妙な顔をしています。伊万里はアスカの手に持っている包み紙を見て思わず声をあげました。
「アスカくん、それ、私のプレゼント……」
「え? あ、そうだな!」
 アスカは驚いています。それから彼も伊万里の持っているプレゼントを見て驚き、笑いました。
「伊万里、それは、俺のプレゼントじゃないか!」
「ええ!? あ、そうか。アスカくんのだ。だから、見覚えあったんだわ」
 全くの偶然なのでしょうが、二人はお互いのプレゼントを見て顔を見合わせ、やがて笑い出してしまいました。二人でプレゼント交換した方が早かったかもしれませんね。でも、パーティに来られたからこんな楽しみもあったのです。
「アスカくん、そのプレゼント、ヘアアクセサリーなんだけど……」
「伊万里からのプレゼントなら、気にしない。きっと大切にするよ」
 アスカは歯を見せて笑い、ぎゅっとプレゼントを抱きかかえたのでした。
「うん……ありがとう。私もアスカくんのプレゼント、大切に使うね」
 伊万里もプレゼントを胸に抱き締めてそう言いました。
 そんな一幕があった後に、ハロウィーンイベントは盛況のうちに終わりました。
「楽しかったね、本当に来て良かった」
「美味しいものいっぱいだし、伊万里とたくさん遊んだし、ハロウィン最高だな!」
 帰り道に二人はそんな会話をしていました。もう真っ暗の夜中で、寒かったのですが、伊万里の隣はいつだって暖かい。アスカはそう感じています。そして伊万里も、夜道を二人で歩いていると、アスカの存在を本当に頼もしく感じるのでした。

●リチェルカーレ(シリウス)編

 今日、リチェルカーレと精霊のシリウスは、廃病院のハロウィーンイベントに参加します。
 仮装パーティイベントということで、リチェルカーレは白鳥のイメージの白いドレスに着替えました。
 白い羽根をリボンとともに銀青色の長い髪に編み込みました。
 一方、シリウスの方は黒鳥イメージの衣装です。黒い騎士の制服のような感じです。
「少し屈んで?」
 リチェルカーレはシリウスに悪戯っぽい笑顔でそう言いました。
「?」
 シリウスは不思議そうでしたが、言われた通りにしました。
 リチェルカーレは黒騎士のようなシリウスの首に白い羽根飾りのついたペンダントをかけました。
「お揃いね」
 少し照れたようににっこりと笑います。
 ペンダントとその言葉に、シリウスは目を丸くします。
「……俺に白は似合わない」
 そう言いながらも、リチェルカーレの笑顔に彼も小さく微笑を見せたのでした。

 二人は廃病院の中に入ると、様々なイベントを冷やかしに見て回りました。
 病院の白い通路を歩いていると、角からオーガの仮装をした子供達が飛び出てきます。時には病院の部屋のドアをばっと開けて大声を上げてリチェルカーレに飛びついてくるのでした。
 どの子も、不気味だったり恐かったりしながらも、とても可愛らしい仮装です。
 ですが、お化けが大の苦手のリチェルカーレは、ちびオーガ達が飛び出してくると毎回悲鳴を上げて彼の手や背中にしがみつくのでした。
「……向こうも脅かしがいがあるだろうな……」
 そんな彼女にシリウスはそう呟いたのでした。
 悲鳴を上げているリチェルカーレに嬉しそうな子供の顔を見て、思わず苦笑してしまいます。
 それからしがみついてくるリチェルカーレの背中を軽く叩いてなだめるのでした。
「びっくりした……!」
 そう言いながらリチェルカーレは笑顔で自分もお菓子を手渡しました。ちびオーガの子供はますます嬉しそうに笑います。
 一方、シリウスは自分に飛びついてくるちびオーガは何の危なげもなく抱き留めて、
「転ぶなよ」
 そう、静かに床に下ろしてあげるのでした。

 やがて、リチェルカーレは一階の元のリハビリルームで、声楽家のサイモンが音楽教室を開催していることに気がつきました。プロの声楽家から直々に指導を受けながら、クリスマスキャロルを歌うのです。
 リチェルカーレは目を輝かせながらシリウスを振り返りました。
「行ってもいい?」
 シリウスは彼女のきらきらした眼差しに頷きます。
「……ここで待ってる。行ってこい」
 リチェルカーレはシリウスの返答に輝くような笑顔を見せました。シリウスは教室の片隅に、壁に背中を軽くつきながら立って待つ事にしました。
「ありがとう!」
 ちょうど午後の教室が始まるタイミングでした。
 リチェルカーレは真剣に指導を受けます。
 伴奏に乗せ、歌詞に心を沿わせて澄んだ声でキャロルを歌うのでした。
 リチェルカーレの歌唱力は見事なもので、恐らく教室の中で一番、声もよく通り歌も美しいものでした。
 声楽家も目を細めて彼女の歌を聞いています。
 ましてやシリウスには、柔らかく澄んだ彼女の声は、特別な歌声として響いて聞こえてくるのでした。
 青と碧の瞳をきらめかせ歌う姿は、衣装とも相まって、まるで天使のようです。

--星降る夜 天使たちは歌を歌う
--光と喜びが、あなたの上にあるように

 祈りをこめながらリチェルカーレは歌います。
 眠る事を恐れるシリウスの心に届くように。
(光も喜びも、運んでくれるのは……)
 シリウスの視線の先には、ただ、銀青の髪の美しい天使がいて、他に何も見えないのでした。
 そう。A.R.O.A.で初めて出会った時から、シリウスの視線は彼女に向けられていました。
『戸惑いがないと言ったら嘘になりますけど……誰かのためにできることがあるのなら、精一杯やってみたいと思うんです』
 それをなんて甘い考えだと呆れながらも、シリウスは翡翠の目を細めてリチェルカーレを見つめていたのです。
 自分にとってはありえない考えを持つ、小柄で平凡な、優しい少女に対して、内側から輝くような存在感と眩しさを覚えたのでした。
 気がつけば、さしのべられた手を取って握手していました。
 自分の手の中にある折れそうなほど細い手。柔らかい手。
『足手まといにならないようにがんばります、よろしくお願いします……シリウス』
 自分の手に触れて、安堵の笑みを見せたリチェルカーレ。その笑顔の持つ柔らかく温かな雰囲気に、無意識のうちに強く惹かれていたのでしょう。いつも、視線の先には、彼女がいたのです。
 やがてリチェルカーレはシリウスの過去を知り、それでも彼に近づき、理解を与えようとしました。
 オーガに襲われた村。血塗られた惨劇。そのことを幻の出来事とはいえ、全てを知った上で、彼女は彼のために泣いてくれました。溢れる涙を隠しもせずに、シリウスの事を見つめていました。
『シリウス、わたしを見て』
『怖かったね』
『悲しかったね。……もう、大丈夫よ』
 血塗られた記憶を塗り替えていく、彼女の青と碧の瞳の色。
 あれから何度も凄惨な悪夢を繰り返し見るようになったけれど、シリウスの心を安定させてくれるのは、リチェルカーレの持つ温かな輝きと青の双眸なのです。
 惨劇の夢だけれはなく、幸せだった子供の頃の思い出すらも、彼にとっては悪夢でした。それは確実に失われ、粉々に壊されてしまう幸せなのですから。
 掌がぼろぼろになるほど拳を握りしめて耐えてきた苦痛。
 それを癒やしてくれるのが、リチェルカーレの存在。その彼女が天使のような美しさで、クリスマスキャロルを歌っているのです。
 リチェルカーレの歌が終わると、教室中から一斉の拍手が沸き起こりました。
 リチェルカーレは驚いた表情で立ちすくみます。その目が、シリウスを探しています。
 シリウスは柔らかな表情で拍手を続けていました。
 花開くリチェルカーレの笑顔。シリウスはそれを見て、そっと笑うのでした。彼の翡翠の視線が守るのはリチェルカーレ。
 内側から輝くような温かな存在感。痛みの記憶を癒やす銀青色の髪に青と碧の双眸。
 彼女は、シリウスにとってたった一人の天使なのです。

●桜倉 歌菜(月成 羽純)編

 今日は桜倉歌菜は、精霊の月成羽純と一緒に廃病院のハロウィーンイベントにやってきました。
 まずは歌菜は羽純と一緒に仮装コンテストに参加です。
 三階の病室をつなげて作った白くて不気味だけれど、広い空間がコンテスト会場です。誰でも気軽に参加出来るイベントなので、様々な仮装をした参加者達があちこちに固まって笑いさざめいています。
 楽しいハロウィーン気分が盛り上がっているのです。
 歌菜はせっかくのハロウィーンなので、カウガールのコスプレで参加です。
 勿論、羽純の方はカウボーイです。
 二人ともおそろいのテンガロンハットを被り、茶色のベストに赤いスカーフを身につけました。
 歌菜の方は腕を見せた上にミニスカで健康的なお色気を狙っています。
 羽純の方はしっかりとウエスタンジーンズですが。
 そして二人とも、やはりおそろいのウエスタンブーツです。
 壇上に登った歌菜は、おもちゃの銃を構えてかっこうよくポーズを決めます。
「早撃ちが得意なのよ!」
 そう言って観客席に向けて銃の早撃ちをするふりをすると、わっと歓声が沸きました。
 その歌菜に向かって、羽純は投げ縄を放り投げます。
「えっ?」
 歌菜はびっくりして固まってしまい、たちまち羽純の縄に捕まってしまいました。
「狙った獲物は逃がさない……これで歌菜は俺のものだ」
 甘い声に独占欲を滲ませて羽純が言いました。
 歌菜は壇上だという事もあって真っ赤になってしまい、緊張して声が出ません。羽純は歌菜の頬に軽くキスをしました。観客席からは冷やかしの声や口笛が鳴り響きます。
(も、もう、羽純くんったら、いきなりアドリブを入れて……。でも、びっくりしたけど嬉しかった……)
 硬直してしまった歌菜は、どうやって壇上から降りたのかも覚えていません。恐らく、羽純が抱き上げるようにして降ろしたのでしょう。
 歌菜は一人で赤くなったり思い出してわたわたしたりと忙しいです。そうこうしているうちにコンテストの入賞者発表です。
「金賞--桜倉歌菜、月成羽純!」
 なんと歌菜と羽純はトップの金賞を受賞しました。
 またびっくりしている歌菜を羽純が壇上に連れて行き、二人で受賞の記念に金のかぼちゃの置物を授与されました。
「ど、どうして私達が……?」
 カウガールから着替えて、元の席に戻りながら歌菜が呟きます。
「観客の反応を見たら妥当なところだろうな」
「あ、あれは、羽純くんのアドリブが……」
 そんな話をしている歌菜達のところに、ちびオーガの仮装をした子供達がわーっと駆け寄ってきました。
「トリックオアトリート!」
 何しろ、金賞を取ったので目立ったのでしょう。ちびオーガの子供達はそれ行けとばかりに羽純に飛びついたり歌菜に抱きついたりして、悪戯を開始しようとします。
「可愛いオーガさん達に、ウィンクルムの魔法を見せてあげましょう♪」
 歌菜はマジシャンズハットから、ワン・ツー・スリーでうさぎのぬいぐるみを出して子供達にプレゼントをします。
 羽純の方はマジシャンズハットからハトを出してプレゼント。子供達ははしゃいだ声を上げてぬいぐるみを受け取り、また、わらわらと出口の方へ走って行きました。  
コンテストを終えると、羽純と歌菜は今度は絵画教室の方へ向かいました。二階の全棟を使って絵画が展示されていて、その中で一番大きな空間でプロの指導を受けられるのです。
 歌菜は絵画教室は初めてです。
「私、羽純くんが描きたい」
 歌菜がそう言うと、羽純は少し照れて驚いてしまいます。
「それなら、俺は歌菜を描こう」
 そういう訳で、二人はお互いをモデルにして絵を描き始めました。プロが親切丁寧に色々教えてくれます。
 羽純はできかけの歌菜を見て驚きました。
「歌菜……俺が、キラキラしすぎだろ」
「え? キラキラし過ぎ? そうかなぁ……私的にはもっとキラキラさせたいんだけど……やっぱり実物には敵わないなって」
 そう言って、歌菜は歌菜で羽純の絵をのぞき込みました。
「羽純くん! 私を美人に描きすぎだよ!」
「美人に描き過ぎ? 歌菜は自分を過小評価し過ぎだ」
 そう言って羽純が歌菜をデコピンします。……どっちもどっちの二人なのでした。
 やがて描き上がった絵を見て、羽純が言いました。
「交換しないか?」
 歌菜は快く承諾します。そうしたら、羽純の絵が手に入るのですから。羽純は、歌菜の絵を大切に部屋に飾ろうと思いました。
 最後にプレゼント交換とディナーです。
 ディナー会場の受付で羽純と歌菜は持ってきたプレゼントを手渡しました。
 歌菜は、手作りのハロウィンクッキー。それをお手製のラッピングで包んでいます。
 羽純はハロウィンカラーのノンアルコールオリジナルドリンクを華やかな瓶に入れて包装したものです。それを係の人が丁寧に管理してランダムにかごに積んで配って歩くのです。
 ディナーのメニューはハロウィーンらしく、かぼちゃとかぶづくしです。どれもあつあつでおいしそうです。
 羽純はかぼちゃのスイーツ達に目を光らせています。
 しばらくディナーを楽しんでいると、やがてプレゼント交換の時間になりました。可愛らしく仮装した係の人達が、魔女のかごいっぱいに包装されたプレゼントを参加者に配って歩き始めました。
「あれ、これ……?」
 手渡された細長いラッピングに歌菜はびっくりします。
「これ、もしかして歌菜の……?」
 羽純も見覚えのある包装を手渡されてきょとんとしています。
 びっくりすることに、偶然、二人はお互いのプレゼントを係の人から配られてしまいました。歌菜のハロウィンクッキーが羽純に。羽純のオリジナルドリンクが歌菜に渡される形になりました。
 二人は顔を見合わせていましたが、急におかしくなって笑い出してしまいました。
「ハッピーハロウィーン、羽純くん」
「ああ、歌菜も。幸せなハロウィーンになったな」
 ひとしきり笑いあって、歌菜と羽純はお互いに見つめ合いました。色々な楽しいイベントに参加したけれど、それでこんなに幸せな気持ちになれるのは、そこに相手がいるからこそです。歌菜の(羽純の)幸せの源は羽純(歌菜)なのでしょう。それをお互いがよく分かっているから、より大きな幸せが二人に訪れるのでした。

●シエル・アンジェローラン(ヴァン・アーカム)編

 今日、シエル・アンジェローランと精霊のヴァン・アーカムは、廃病院を貸し切ってのハロウィーンイベントにやってきました。
 シエルとヴァンは契約したてのウィンクルムです。
 シエルは、茶色のふわふわのロングヘアーと、エメラルドグリーンの瞳を持つ17歳の女の子です。
 家族に愛されて幸せに育ってきた何の変哲もない少女です。……今のところは。
 特に母方の祖父の溺愛を受けて大事にされてきたシエルは明るくてマイペースの可愛い女の子に育ちました。
 一方、ヴァンは銀髪のショートカットにスカイブルーの瞳の22歳です。シエルよりも5歳年上なのです。
 彼にはレーゲン・アーカムという双子の兄がいます。
 彼と二人で同じ神人と契約したという珍しい経歴の持ち主です。
 ヴァンはレーゲンに一目置いているのですが、性格の不一致のため、小競り合いが絶えません。
 それでいて、ヴァンは、同じ神人に双子で契約したというこの状況を楽しんでいる面もあります。
 明るくあっけらかんとした性格で、ロックが大好きです。
 そんなヴァンは廃病院のハロウィーンイベントにやってくると、早速GURENのロックステージに参加することにしました。
 病院の広い庭を使って、タブロスでも人気絶頂のバンドがハロウィーンのコスプレをしてライブを開催するのです。
 さて、二人は廃病院の前で待ち合わせです。
 ほぼ時間通りに二人は病院前に現れました。
「よ、よろしくお願いします! こういうデー…いえ、お出かけはしたことがなかったので少しドキドキしてます」
 かちこちの笑顔でシエルはそう言いました。
「まぁ緊張しなさんな。別にとって食いやしねぇから。俺の好み的にはもっとこースタイルのいい……いや真剣に聞かなくていい」
 ふむふむと頷きながら真顔でこちらを見ているシエルに対してヴァンは辟易しています。
「たく、とんだ箱入りのお嬢さんだな」
 ヴァンは口の中でそう言いました。なんだか調子が狂ってしまいます。
「えっと、どこを見て回りますか? ロックバンドのライブですか?」
 シエルはまだ緊張の解けない様子でそう訊ねました。
「お? あのロックバンドが来てるのか。当たりだな。なかなかのパフォーマンスをしやがるぜ」
 シエルの持っていたイベントのパンフレットを見て、ヴァンは頷きました。
「ヴァンさんはロックがお好きなんですね。私はあまり聞いたことがなくて……」
「なんだシエルはロックを聞かないのかいいぜ、ロックは。これから聞いてみろよ」
 そういう訳で二人はライブ会場に。
 廃病院はかなりの広さの庭を持っているのですが、そこにはぎっしりと人が詰めかけていて係の人も必死で応対しています。
 二人はウィンクルムとしての招待客として前の方の真ん中辺りに案内されました。
 やがて、吸血鬼、狼男、フランケンシュタイン、ゴーストに仮装した人気ロックバンドGURENが現れ、観客の前でパフォーマンスを始めました。
 慣れていないシエルはぽかんとしていますが、ヴァンは他の観客と一緒に盛り上がっています。
 それから早速流行曲の演奏が始まります。
「ひゃ……! 音が凄いですね! 凄いです!」
 悲鳴を上げるようにシエルは叫びました。
 全くの初体験だったのです。
 曲目は次々と進んで行き、やがて、GURENのメンバー達が一斉に、ハロウィーンのプレゼントということで、かぼちゃクッキーやメンバーの姿をした小さいぬいぐるみを観客席に向かって投げ始めました。
「う、うわ、うわわっ」
 慌てるシエルの横で、ヴァンは華麗にお菓子をキャッチ。
 それから吸血鬼のぬいぐるみもキャッチしてシエルに手渡しました。
「せっかくだから、記念に取っておけよ」
「あ、ありがとうございます……!」
 ヴァンはロックライブを楽しんでいますが、シエルにとってはこちらの方がいい思い出になりました。
 それから二人はハロウィーンイベントのディナー会場へと進みました。
 ディナーはかぼちゃとかぶを中心にハロウィーンらしい料理がたっぷりです。
 かぼちゃのグラタン、スープ、コロッケ、パイ……。ハロウィーンらしいメニューがテーブルに並んでいます。スイーツもかぼちゃのムース、タルト、プリンなどの定番を始めとして色とりどりで何でもあります。
 かぶはサラダもありますが、野菜をゴーストの形に切り抜いたかぶときのこのあつあつのシチューが準備されていました。
「かぼちゃのスープにかぼちゃのパイにプリン。美味しいです! それにいろんな方の仮装を見るの楽しい!」
 シエルは少し興奮気味でした。
 実際に大勢の参加者が魔女や吸血鬼は勿論、あっと驚くようなコスプレをしているのです。
「まさにかぼちゃづくしだな……美味いからいいんだけどよ。仮装にしても食いもんにしても騒ぐほどのもんじゃねーと思うが……あんた変わってるな」
 大喜びしているシエルの隣でヴァンはかぼちゃを頬張りながらそう言いました。
 そこに、ちびオーガの仮装をした子供達の登場です。
「トリック・オア・トリート!」
「お菓子をくれなきゃがおーしちゃうぞー!」
 そんな事を口々に言いながら、不気味なのにとても可愛い仮装のちびオーガ達がシエルとヴァンに飛びついてきました。
「お、菓子か!? やるからまってろ」
「えーと、お菓子でしたねーどうぞ持っててください」
 話は聞いていたシエルとヴァンは早速子供達にお菓子を配りますが、小さい子供達は取り合いになってしまいます。
「あぁ! 沢山ありますから喧嘩しないでください」
「こら喧嘩してねーちゃんこまらすんじゃねぇよ。ほらもってけ」
 慌てて仲裁する二人。お菓子を貰って嬉しそうなちびオーガ達は、二人に手を振って走って帰って行きました。ヴァンは嬉しそうに子供に手を振り替えしています。
「ヴァンさんは子供がお好きなんですか?すごくいい笑顔でした!」
「子供? 俺は嫌いじゃねーよ。俺はな。兄貴は嫌いみたいだけどな」
「お兄さん……レーゲンさんは苦手なんですね…なんででしょう」
 その日はシエルはヴァンから双子の兄のレーゲンの話を色々聞いたのでした。ヴァンの事と同時にレーゲンの事も知る事が出来て、なんだかお得な気持ちです。ウィンクルムとして初体験のハロウィーン。なんだか成功したようです。二人が次のイベントもうまくいくように、優しい死霊達が素敵な魔法をかけてくれますように……!



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ EX
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,500ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月17日
出発日 10月24日 00:00
予定納品日 11月03日

参加者

会議室


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