プロローグ
「今日、来ていただいたのは他でもありません」
A.R.O.A.本部。
真面目な顔をした職員が、取り出したのは、先端にキラキラした星のついた魔法のステッキだった。
見るからに、魔法使いの持つ杖といった雰囲気を出している。
「?」
あなたは、A.R.O.A.の任務と魔法のステッキの関係性が分からなくて首を傾げた。なんだろう。なんだろう。自分は魔法使いではないし、なるつもりはないのに……。
精霊を振り返ると彼も変な顔をしている。
その反応を見て、職員は、コホンと咳払いをして立ち上がって言った。
「百聞は一見にしかずです。ちょっと失礼」
そう言って、魔法のステッキをあなたの方に向けて、テレビアニメに出てきそうな振り付けでくるくる回した。すると魔法のステッキの先端から、星や蝶やハートマークの幻影が飛び散ってかなり華麗な事になる。
その光を浴びたあなたは--ぼんっと煙を飛ばしたかと思うと、黒と紫の妖艶なワンピースにやはり黒の三角帽子、黒の編み上げブーツ、それに昔ながらのブーツまで持った魔女に変身していた。
「ええ!?」
びっくり仰天するとあなたと精霊。
「まあ、ちょっと、鏡を見てください。メイクまでばっちり出来ていますから」
そう促して奥の机からスタンド式の鏡を持ってくる職員。あなたがのぞき込むと、確かに大人っぽくてセクシーなメイクが顔に施されている。
「……」
どういう事か分からなくて硬直するあなた。
「それでは、ご一緒に」
あなたを放っておいて、職員は今度は精霊の方に魔法のステッキをふりかざしてぐるんぐるん。
咄嗟に逃げようとする精霊だったが、間に合わず、光を受けてぼんっと煙を噴き上げる。
すると、精霊の方は、黒マントに深紅のベスト。真っ黒な下半身、口に牙を生やし、蝙蝠の羽根を生やしたバンパイアに変身してしまった。勿論、顔色悪そうなメイクもばっちりである。
「な、なんなんですか、これは!」
思わず声を上げる精霊。
「今度のハロウィーンに向けてのイベントグッズなんですけれどね。この通り、魔法のステッキを使った相手を、”ハロウィーンらしい”格好なら、どんなものにでも自由自在に変身させる事が出来るのです」
「……自由自在に変身って……」
実際にそのとおりの効果をその身に受けたあなたと精霊は、顔を見合わせてお互いの仮装をつくづくと見やる。仮装はスタンダードなものながら完璧なものだった。
「一体、どうしてこんなものを」
「先月までの碑文の影響で、不安感から仲が不安定になったウィンクルムもいるようですので……。そういう方々にはハロウィーンで盛り上がってもらって、愛を高めてもらおうかと……」
確かに本音を吐露した事によって悪影響が出ているウィンクルムもいるかもしれない。だけど、仮装したからといって愛が盛り上がるとは限らないだろう。まあ、何もしないよりはマシかもしれないが。
A.R.O.A.はちょっと微妙なアイテムを作ってしまったようだ。
「この魔法のステッキを300Jrで貸し出します。期限はハロウィーン当日までです。使い方は自由です。まあ無難なところでは、お互いに好きな格好に変身させあって、当日にトリックオアトリートごっこをしてみる、あるいは子供達にお菓子を配ってみる、などのハロウィーンらしいことをしてみるのはいかがでしょうか。勿論、必ずそうしろという訳ではありません」
「なるほど……」
まあ確かに、ハロウィーンの仮装を、頭に思い描いた通りに完璧に出来るというのは面白いかもしれない。その格好でちょっと近所の子供にお菓子をあげたりしたら、喜ばれるかも。
職員はステッキを先程とは逆向きにぐるぐる回転させると、また光が飛び散って、あなたたちは元の姿に戻った。変身を解くのも相手の自由自在らしい。
「まあそんなわけで、ハロウィーンに盛り上がって愛を高めて欲しいのです。相方に好きな格好をさせた上で、お菓子をくれなきゃキスしちゃうぞ、なんていいかもしれませんねえ」
真面目な顔をして凄い事を言うA.R.O.A.職員。あなたはちょっと想像してみて、赤面してしまった。
魔法のステッキの貸し出しは、期限はハロウィーンまで、料金300Jr。どうしようかな。
解説
相方を『ハロウィーンらしい格好なら』どんなものでも、自由自在に思った通りに変身させられる魔法のステッキです。変身を解くのも相手の自由自在です。
・貸し出し期限はハロウィーン当日まで。
・料金は300Jr。
・変身させられる相手は相方限定。
・魔法のステッキを使えるのはこのエピソードのみです。
相方を好きな格好に変身させた後は、何かハロウィーンらしい事を。トリックオアトリートを言い合ったり、お菓子を配ったり配ってもらったりなど、自由です。
A.R.O.A.職員の言うように、お菓子をくれなきゃキス! とねだったりもいいですね。
ゲームマスターより
ハロウィーンといったらコスプレですよね! 相方を好きな格好にコスプレさせちゃう、あるいはさせられちゃう、その上で愛の高まるウィンクルムが見たいです!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)
仮装:セクシー小悪魔 私がステッキを振ったらイヴェさんは吸血鬼の姿になりましたね…その…カッコいいです。 それでイヴェさんがステッキを振ったら…布の面積少ないです!!これは…!セクシー小悪魔!?え、イヴェさんの好みというか欲がでたって?そんな風に言われちゃったら拒否できないですよぉ。 とりえず上着は借りたので…ハロウィン楽しみましょう。 大胆な恰好ですし気分も大胆に。 「トリックオアトリート…お菓子くれなきゃキスしちゃうぞ☆」 な~んて言ってみたり。 えっ?キスでいい、そ、その、わかりました…じゃあほっぺにチュッで…。 調子に乗りすぎたかもしれない。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。 |
桜倉 歌菜(月成 羽純)
魔法のステッキを使って、羽純くんをアラブの王子様系仮装に変身させちゃいます! わ、我ながらなんてナイスなチョイス…! 羽純くんてば、完璧に王子様! 私もアラブのお姫様な仮装に変身♪ うふふ、これでお揃いだねっ それにしても、羽純くんてば似合い過ぎてて…トキメキが止まらない…! 物語に出てくる王子様みたいで… 跪いて、愛を囁いてくれたりしたら…思わず妄想 急に羽純くんにトリック・オア・トリートと言われて… 魔法のステッキでの仮装で頭がいっぱいで何も考えてなかった…! え?トリックを選んだ訳じゃなくて、その… 羽純くんの行動に頭が真っ白 夢を見てるみたい… へ、返事…も、勿論喜んで…! 私、羽純くんには絶対に勝てないよ… 幸せ |
アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
精霊宅 ステッキ持ち ハロウィンかぁ…もう契約して一年になるんだね… というわけで…えいっ 精霊をドラキュラに 懐かしいでしょ? わっ そうだね …えっと、懐かしいついでにタルトも作ってみたんだけど…食べる? あっそうだった… あ、う、うんっ あのお店のタルトには及ばないけど… EP2のイメージで作ったカボチャタルトと紫芋タルトを渡す うっ…あ、あの時は慣れてなくてっ でもどれも美味しそうで…ってああでも別に食い意地張ってたとかじゃなくてっ…!(わたわた あ… こんなに面白そうに笑うの初めて見たかも 思えばあの時はずっと仏頂面で無言だった それが今は… …ガルヴァンさん あなたと出会えて…契約出来て良かった 最後は二人でタルトを食べる |
●アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)編
今日、アラノアは、A.R.O.A.から借りた魔法のステッキを持って精霊のガルヴァン・ヴァールンガルドの自宅にやってきています。
アラノアはリビングでガルヴァンの前に、ステッキを持って立っています。
「ハロウィンかぁ……もう契約して一年になるんだね……」
「ああ……もうそんなに経つのか……」
アラノアはウィンクルムとして初めて出会った頃を思い出して、くすっと笑ってしまいました。ガルヴァンはそんなアラノアを不思議そうに見ています。
初めてガルヴァンに出会った時に、人生初の一目惚れをしてしまいました。それから一年ほど。恋には苦い思い出しかない自分が、ガルヴァンとだけは、恋人ではなくても相棒としてずっとそばにいられる。それがとても不思議で、なんだかおかしかったのです。
「というわけで……えいっ」
そこでアラノアが魔法のステッキをふるうと、光が飛び散りました。
「っ! ……これは?」
光の中から出てきたガルヴァンは、一見ハンサムな紳士のようにも見えるヴァンパイアに変身していました。それは二人が契約をかわした頃、一緒にハロウィンのタルトを作った時の仮装でした。
「懐かしいでしょ?」
アラノアは楽しそうに微笑んでいます。
「ああ……去年の仮装か……それなら」
「わっ」
今度はガルヴァンがステッキを取り上げて、神人をゴーストに変身させました。可愛いおばけの仮装になったアラノアは、自分の格好に驚いています。
「あの時と同じになったな」
「そうだね」
今度は二人でおかしくなって笑いました。
その後、アラノアはリビングのテーブルに向かいました。
「……えっと、懐かしいついでにタルトも作ってみたんだけど……食べる?」
紙箱に入れて持ってきたタルトをガルヴァンの方に見せます。
「例の台詞はいいのか」
「あっそうだった……」
アラノアは慌ててしまいます。今日は年に一度のハロウィーンなのですから。
「全く……トリックオアトリート、菓子寄越せ」
クールで会話に長けた方ではないガルヴァンは、しかめ面に近い表情で、ハロウィーンの定番の台詞を言いました。
「あ、う、うんっ。あのお店のタルトには及ばないけど……」
アラノアは初めて一緒に行った店のタルトに似せたカボチャタルトと紫芋タルトをガルヴァンの方に渡しました。
「……ふむ」
ガルヴァンは興味深そうにタルトを見つめます。
「……今度は盛りすぎていないようだな?」
何しろ、あのときは、アラノアが乗せたい欲が出てきてあれやこれやと盛りつけ過ぎてしまったのです。
「うっ……あ、あのときは慣れて無くてっ。でもどれも美味しそうで……ってああでも別に食い意地張ってたとかじゃなくてっ……!」
わたわたと慌てふためくアラノアを見て、思わずガルヴァンは笑ってしまいました。
「……くっ、ふふっ……冗談だ」
「あ……」
アラノアはガルヴァンのその笑顔に魅入ります。
(こんなに面白そうに笑うの初めて見たかも。思えばあの時はずっと仏頂面で無言だった。それが今は……)
ガルヴァンが素直な感情表現で笑顔を見せてくれるということに、アラノアは控えめな感動を覚えました。
「……ガルヴァンさん。あなたと出会えて……契約出来て良かった」
アラノアが物静かに、感情を抑えながら、自分の心を伝えました。
「ああ……俺もお前と契約出来て良かった」
ガルヴァンはごく自然な笑顔を見せています。愛する気持ちがにじみ出ている笑顔。
「……そう言えばお前も仮装していたな」
そう言って、彼は、アラノアを促しました。
「う、うん。……トリックオアトリート」
アラノアは、躊躇いを隠さないながらも、ガルヴァンに対してその言葉を言いました。
ガルヴァンは笑みを見せて、アラノアから一度は受け取ったカボチャタルトを彼女の方に手渡しました。
二人はテーブルに着くと、紅茶の用意をして、一緒にタルトを食べました。
「……うまい」
アラノアの手作りの紫芋タルトに対して、ガルヴァンはそう告げました。
「え、そ、そう? ……ありがとう」
ぽつり、ぽつりと会話を挟みながら、二人はゆっくりと秋のお茶の時間を過ごします。沈黙は静かな癒やしで、穏やかな空気が流れ、二人は互いの存在を許して、理解を深めていくのです。
お互いに胸のうちに情熱を秘めながら。
その情熱はお互いに向けたもの。
「アラノアは台所仕事はよくやるのか?」
「……普通、だと思うよ」
タルトを賞味しながら、ガルヴァンはじっとアラノアの顔や手の方を見ています。どういう意味だろう、とアラノアは首を傾げてしまいました。
(……結婚するなら、料理が得意でいてくれるのに越した事はないが……)
ガルヴァンはつい彼女のエプロン姿などを想像しているのですが、当然、アラノアはそんなこととは知りません。ガルヴァン自身は、一人暮らししているのなら、ある程度料理は出来るのでしょうかね?
(何でそんなにじっと見つめてくるんだろう。なんだか……ドキドキしてきちゃう)
アラノアはついうつむき加減になりながら、ガルヴァンとの共通の話題を探します。
情熱はうちに秘めたまま。いつか素直に表現出来る日は、近いのでしょうか。
●淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)編
今日、淡島咲は精霊のイヴェリア・ルーツとA.R.O.A.から魔法のステッキを借りてきました。
早速、イヴェリアの部屋で試してみることにします。
咲は、イヴェリアの方に向かってステッキを一振りしました。
たちまち吸血鬼の姿に変身するイヴェリア。
「……その……カッコいいです」
素直に気持ちを表現する咲でした。
「ん、サクの好みの仮装の俺はこれか……カッコいいと言ってもらえるのは嬉しいな。サク好みの吸血鬼でいられるよう、努力しよう」
イヴェリアは突然の変身にも狼狽えずにそう言いました。
それから咲からステッキを受け取ります。
そして一振り。
たちまち咲は布面積の非常に少ないセクシー小悪魔に変身してしまいました。
肩を思い切り露出したミニスカワンピで、体のラインはくっきり出るデザインです。
全体に黒地ですが、胸を強調するように赤いラインが入っています。
頭には赤い角。
足下は黒いハイヒール。
咲はイヴェリアの前で、こんなに肌を露出した事がありません。
思わず両腕を抱き締めて、壁際まで下がってしまいます。
「その……サクのその恰好はすまない……俺の欲がでた……嫌なら止めてもいい。俺も男だからな……」
「え、イヴェさんの好み……っていうか、欲!?」
逃げていた咲はイヴェリアのその言葉を聞いて、目を丸くします。
(そんな風に言われちゃったら拒否できないですよぉ)
そのまま逃げてしまおうかと思っていた咲ですが、拒絶出来なくなりました。かといって、セクシー小悪魔の姿でいるのも落ち着きません。
「とりあえずこの羽織を羽織ってくれ」
イヴェリアは自分のシャツを取り出して咲の肩にかけました。
(とりあえず上着は借りたので……ハロウィーンを楽しみましょう)
咲は剥き出しだった肩をイヴェリアのシャツで隠して彼の方に近づいて行きました。
(大胆な格好ですし、気分も大胆に)
そう思って、イヴェリアに思い切り近づいて上目遣いでセクシーに言います。
「トリックオアトリート! ……お菓子をくれなきゃキスしちゃうぞ☆」
などと言ってみます。
「お菓子をくれなきゃキスするぞ? ……俺はキスがいいな。サクがキスしてくれるか?」
それに対してイヴェリアは至って真顔にそう言い返しました。
咲の方がびっくりしてしまいます。イヴェリアは謙虚な性格なのですが、咲に対する愛情表現は時折こうして思いも寄らない事をするのでした。
「えっ? キスでいい? ……そ、その、分かりました……じゃあ、ほっぺにチュッで……」
咲は耳まで真っ赤になりながら、イヴェリアの顔に顔を近づけていきます。
色白の彼の頬に顔を近づけて、目をぎゅっと閉じて、息を止めて、思い切ってキスをします。触れるだけの一瞬のキスです。
それだけでも咲は、心臓の音が相手に聞こえそうなぐらい鼓動を激しくしていました。
(……可愛い。大胆に攻めてくれるのは嬉しいが……ついいじめたくなるというか。可愛いことを言わないでくれ。本気で困るから。止められないだろ?)
そんな咲の様子に思わず抱き締めたくなる衝動をこらえながら、イヴェリアは咲の真っ赤な顔を見つめています。
(調子に乗りすぎたかもしれない。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい)
咲はキスを終えた後も、目を閉じたまま、うつむいています。
初めてのキスの事を思い出します。
それは、イヴェリアとA.R.O.A.で出会った時の事ですけれど。
咲はまだ、A.R.O.A.に保護されたばかりで、ウィンクルムになる自信なんて何もなくて、不安と緊張でいっぱいだった頃なんですけれど。
『俺は初めて愛しいと思える人に出会った』
A.R.O.A.の一室で、初めて出会った精霊は、一目見るなり咲にそう言ってくれました。
それからそっと咲の手を取って、その場で手の甲でキスをしたのです。
契約のキス。
咲の話も説明も何も聞かずに、一目惚れの純粋な気持ちだけで、彼は契約をしてくれたのでした。
それから一体何回、イヴェリアは咲にキスをしてくれたでしょう。任務の事も考えれば何回ぐらい? 一つ一つの事を思い出すと、なんだかいたたまれないぐらい恥ずかしくて、でも嬉しいのです。
そのうちの一体、何回が、神人である自分からイヴェリアへのキスだったのでしょう。
咲からイヴェリアへのキス。頬に触れるだけのキス。
それがいつか唇を重ね合うようなキスになっていくのでしょうか。来年のハロウィーンには、同じ悪戯をしかけたとしたら、どんなキスをするのでしょう。
それまでイヴェリアは待ってくれるでしょうか。本当に愛しい人とのキスは、どんな時も、どんな場所ででも、心に羽根が生えたかのように、喜びとときめきに満ちているのです。
●桜倉 歌菜(月成 羽純)編
今日、桜倉歌菜は、精霊の月成羽純とA.R.O.A.で魔法のステッキを借りてきました。
二人は歌菜の部屋に帰って、そこで早速ステッキの効力を確かめてみることにしました。
歌菜が魔法のステッキを持って、羽純の方に一振りします。
光が飛び散り、羽純はたちまちアラブの王子様に仮装してしまいました。
真っ白な胴衣のカンドゥーラに、真っ白なスカーフであるグドラを頭に巻き付け、黒い紐イガールで縛っています。その上に、鮮やかな青のベストを重ね着。
儚げな羽純がたちまち精悍なアラブの青年に大変身です。
(わ、我ながらなんてナイスなチョイス……! 羽純くんてば、完璧に王子様!)
いきなり仮装させられて羽純はびっくりしています。
それから羽純は歌菜からステッキを取って、彼女の方へ一振りしました。
すると、歌菜は歌菜でアラブのお姫様に仮装します。
水色の胸だけ覆う上衣は、肩のあたりはふんわりとした透き通ったレースです。臍は出しています。腰から脚はやはり水色のふわっとしたズボンで、やはり水色の半透明のレースの裳を下げています。胸元には金色の装飾。
歌菜は歌菜で異国のセクシーなお姫様そのものでした。
「うふふ、これでおそろいだねっ」
羽純は何とも落ち着かないのですが、歌菜の仮装が可愛くて綺麗なので和んでしまい、文句を言うこともありませんでした。
それに、おそろいとはしゃぐ歌菜の姿がいとおしいのです。
(それにしても、羽純くんてば似合い過ぎてて……トキメキが止まらない……! 物語に出てくる王子様みたいで……跪いて、愛を囁いてくれたりしたら……思わず妄想)
歌菜の事が可愛くて、目を細めて見ていたら、羽純の目の前で両手に頬を添えて不思議な笑顔。
(何か妄想しているな……何を考えているか、想像出来る)
羽純は苦笑いしてしまいます。そうして、だんだん悪戯心が浮かんできたのでした。
歌菜はお菓子らしきものを持っている気配はありません。
(これは……驚かされた仕返しって事で……)
羽純は歌菜の側に近づいて、彼女に正面から言いました。
「トリック・オア・トリート」
羽純の行動に歌菜は固まってしまいます。
(ま、魔法のステッキでの仮装で頭がいっぱいで、何も考えてなかった……!)
歌菜はあたふたと体の前で手を振っています。
羽純はそんな歌菜の前に跪くと、振っている手を取ってしまいました。
それこそ、物語の王子のように。
「姫。私の心は貴方のもの。貴方も私のものになってくれますか?」
(え? トリックを選んだ訳じゃなくて、その)
歌菜は羽純の行動に頭が真っ白になってしまいます。
(夢をみているみたい……へ、返事……)
羽純の事を自然と見下ろしながら、歌菜は驚きと歓喜を顔に表していきます。
「も、勿論、喜んで……!」
羽純は歌菜の手の甲にもう一度キスをしました。
そうして立ち上がり、歌菜に何かを言おうとします。
それより先に、歌菜は羽純の胸に飛びついていきました。
「私、羽純くんには絶対勝てないよ……幸せ」
飛びついてきた興奮気味の歌菜を羽純はなだめるように抱き締めます。
(歌菜は俺に勝てないと言うが、それはこっちの台詞だと思う。こんな行動に言葉は、歌菜にだから出来る事なのだから)
そのあと二人は、カーペットの上に並んで座って、ハロウィーンの思い出を話し合いました。
二年前のハロウィーンでは、歌菜も羽純も舞踏会の衣装に着替えて夢の中に突入したのでした。
その頃は、歌菜は羽純が好きだったけれど、まだ恋人でも何でもなくて。そういうことで気合いが入っていました。
去年のハロウィーンでは、歌菜がゴーストの仮装、羽純がドラキュラの仮装で菓子店の瘴気を払ったり。
歌菜がロープを切る手品をした時の事です。リンゴ飴で間接キスをした時の事。
--私と羽純くんの絆はこんな事では切れないの
何があっても切れない絆。歌菜はそれを信じていたのです。羽純との、絆を。
それから一年の間に、本当に色々な事がありました。
12月の二人の誕生日には羽純から告白を受けました。
バレンタインとホワイトデーはショコランドで。
そして夢想花の咲き乱れる中でのプロポーズ。
今は、歌菜は羽純の婚約者です。
決して切れる事のない絆。それを信じていたから、今の幸せがあるのです。
「羽純くん。私、羽純くんとの絆は絶対に切れることがないって信じられる。例え何回、切れたとしても、絶対に繋がるよ。羽純くんとなら--こんなに愛しているんだもの」
歌菜がそういうと、彼女を抱き締めながら、羽純は頷きました。歌菜がいつのことを思い出しながら言っているのか、分かっている様子でした。
「歌菜の事を信じている。だが、その前に、絆が切れないように俺は努力する。歌菜には勝てないけれど、歌菜への想いは誰にも負けないつもりだ……」
嬉しさに歌菜は羽純の顔を見ていられなくなり、彼のカンドゥーラの胸に顔を埋めてしまいました。
胸がいっぱいになるような幸福の感情がこみあがってきて止まりません。自分をお姫様にしてくれるたった一人の人。そうして、彼女だけのたった一人の王子様。そんな夢が、魔法の中だけとはいえ、かなったのですから。
この幸せが、ずっとずっと続きますように--
依頼結果:大成功
MVP:
名前:淡島 咲 呼び名:サク |
名前:イヴェリア・ルーツ 呼び名:イヴェさん |
エピソード情報 |
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マスター | 森静流 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 10月14日 |
出発日 | 10月20日 00:00 |
予定納品日 | 10月30日 |