ジャック・オー・ランタンに口づけを(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●ランタンを作ろう!
 その日、その手芸店ではジャック・オー・ランタンを作りつつ、出来あがったランタンをお供にお茶も飲めるという講習会をやっていた。
 せっかくだから……と精霊と共にやってきた貴方は、黄色、オレンジ、緑色の大小揃った南瓜をみて瞳を輝かせる。
 既に新聞紙はひかれ、ペンやスコップにナイフ、軍手も用意されていた。
 あとは2人が席に座って説明をきけば、すぐにでも作れるということだ!

 書かれた手順はこうだ。
「1・南瓜に好きな顔を描く。(テンプレートもあります)
 2・上部をナイフで切り抜く。
 3・中身をスコップかスプーンでくりぬく(その際、残っていると腐る原因になるのでしっかりと)
 4・顔のパーツを切り取ります。
 5・あとは日光の下で乾かします(これはお家でやってください)」

 不器用だという人用に、目や口元には色んな形のテンプレートがある。
 それをなぞればいい物が出来るだろう。
 それに、スタッフがついて教えてくれるので、例えばナイフが上手くつかえない……という人も安心してやってほしいと言う。
「出来あがったランタンを可愛がってあげてくださいね」
 そうそう、とスタッフが小さく口元を笑みの形にして。
「キスを、ランタンにしてあげると綺麗な光を創り出してくれるそうですよ」
 もしよかったら、してあげるのもいいでしょうね。
 そう言ってさぁ、始めましょう! とスタッフが2人の前に材料を用意するのだった。

解説

 最後のお茶会みたいな所も個別描写になります。


●ランタン作り
 上記に説明をしたので、良く読んで危険のないようにしてください。
 ランタンにキスをすると、愛情が籠り長持ち&綺麗に光を照らしだすそうですよ!

●小さなお茶会
 南瓜のクッキー(でも蝙蝠の形)
 南瓜の紅茶(仄かに甘く、そしてちょっとスパイシー)
 
●jr
 参加費用 100 + 南瓜(小)200 = 300
 参加費用 100 + 南瓜(大)300 = 400
 
 を、お一人様頂きます。
(神人 300 + 精霊 400 = 700 という感じです)

ゲームマスターより

 ランタンを手作りしたいと願い続けて、既に何年目だろう如月修羅です。
ランタン作り、如何でしょうか……!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ひろの(ルシエロ=ザガン)

  オレンジの小さいかぼちゃにする。
目は逆三角でつり上げて、口はギザギザ。
……テンプレ使おう。(線が歪んだ

ナイフは慎重に。(なかなか刺さらない
「え、ルシェのは……」早い。(自分が遅い
集中、しなきゃ。(近さと手の温度で顔が赤い

中は大体スコップでくり抜いて、残りをスプーンで削る。
後は目と口。結構疲れる。
え。
一人じゃまだかかる、し。「お願い、します」
やっぱり恥ずかしい。(顔が赤い

「できた」(小さく笑い、こっそりランタンにキス
「、何?」見て、ないよね。
ルシェがキスするの、なんか。(色気に当てられる
恥ずかしいけど。(ルシェのランタンにキス

ピリッとするけど、おいしい。
「うん。楽しかった」恥ずかしかった、けど。


シャルル・アンデルセン(ノグリエ・オルト)
  オレンジ・小

ハロウィンのランタンづくり楽しみです。
あまり大きいものは作れませんが小さいものならお家に置いておけますし。手作りってやっぱり愛着がわきますしね。
せっかくなのでノグリエさんとは色違いでオレンジのジャックオランタンを作りますね。
顔をかいてナイフで…かぼちゃ、硬いですね。お料理するときはきっと大変ですね。かぼちゃのスープは好きですがこんなに手間がかかるんですね。
…スタッフさんに手伝ってもらって何とかできました。
可愛くできました!
キスをすると綺麗に光ってくれる…素敵ですね。
じゃあ(遠慮がちにちゅっ)
えっ…ランタンがうらましいですか?
(頬にキスされて)わわ、もう…私はランタンじゃないですぉ。


エセル・クレッセン(ラウル・ユーイスト)
  やっぱりハロウィンにはカボチャのランタン、欲しいよな。
なあ、ラルはランタン作ったことあるんだよな?
昔?最近は?ふうん、じゃあ、一緒に作ろう、うん。

南瓜(小)、黄色。

テンプレート、貸してください。
この上向きの蒲鉾型の目のが、ちょっと笑ってるみたいで可愛いかも。
次はナイフで…。うん、手を切らないように気をつけよう…。(本人慎重に切ってるつもり)

…ランタンにキス?
綺麗に光ってくれたら嬉しいなあ。
ラルは?じゃあ、私が代わりにやろう。
ラルの為に綺麗に灯ってやってくれな。(緑色のカボチャにキス)

お茶会
この紅茶って何が入ってるんだろう?
クッキーも美味しいし、作り方練習してみようかなあ。



 足を止めた講習会。
 どこか楽しげなジャック・オー・ランタンの前に足を止めた2人組。
『ランタンを作って行きませんか?』
 そんな呼びかけに答え、頷いたのは少女の方だった。
(シャルル、少し元気になりましたかね)
 ノグリエ・オルトは、隣で蜂蜜色の瞳を瞬かせじっと色とりどり、大小あるカボチャを見つめるシャルル・アンデルセンを見てほっと息を吐く。
 少し元気が出たようだと見守られるシャルルの方といえば、ハロウィンのランタン作りに心を躍らせていた。
 説明を聞き終り、彼女がその白い指先を伸ばそうとしたのは小さいカボチャ。
 あまり大きい物は作れないけれど、これならば家に置いておけるだろう。
(手作りってやっぱり愛着がわきますしね)
「そうだねぇ、大きいものは持って帰るのも大変だし」
 同じくノグリエが伸ばした指先も、小さいカボチャだった。
「出来上がったらボクの作ったのと一緒に玄関にでも置いておこうか」
「それは素敵ですね」
 頷き、視線を落とした先には緑やオレンジのカボチャ。
 ノグリエはどのカボチャにしようかと指先を惑わせる。
 その様子をみて、折角なので……とシャルルが唇を開く。
「ノグリエさんとは色違いしようかと」
「色違いか……」
 惑うように首を傾げるノグリエ。
 オレンジ、緑、黄色……カボチャたちが2人に自分を選んで! とでもいうようにどこか自己主張しているようにも見えた。
 そんな中で、では。とシャルルが手に取ったのは小さなオレンジカボチャ。
「オレンジのジャックオランタンを作りますね」
「じゃあボクは緑のカボチャにしよう」
 緑色の小さなカボチャを手に取る。
 さぁ、ランタン作りを始めよう!


 どことなく真剣な雰囲気が漂う。
 顔を描くまでは心配ではなかったのだけれど、さぁ繰り抜きましょう! という段階になって、心配そうな視線がシャルルの元へ。
「かぼちゃ、硬いですね」
 お料理するときは、きっと大変だろうとナイフをカボチャへと挿しながら思う。
(かぼちゃのスープは好きですがこんなに手間がかかるんですね)
 ちょっと力を込めつつ、少しずつ、少しずつナイフを動かしていく。
「カボチャは固いし手を切らないように気を付けて……」
 硬いカボチャに力を込めた指先がふるふると震えるのを見詰め、キミの手が傷ついたらと思うと不安だと零すノグリエ。
 大丈夫ですよ、と心配そうに見つめるノグリエに言いながらも途中でナイフが動かなくなってしまった。
 スタッフに助けを求めれば、シャルルに寄り添いナイフをカボチャへといれていく。
 少々歪ながらも、無事とれたヘタを机へと置いて、スプーンを手に中身をくりぬきはじめる。
 一生懸命、中をくりぬいていく彼女に、指を怪我することはなさそうだとノグリエは、自分もカボチャへとナイフをいれていく。
 スプーンで中身をくりぬいて、くりぬいて……くりぬいて。
 途方もない時間のようでいて、あっという間に流れていく時間。
 目の前に2人分のカボチャの中身が山となったところで、店員がお疲れ様でした! とクッキーと紅茶を用意しながら伝えるのだった。


 ほかほかと白い湯気が立ち上る紅茶。
 どことなくスパイシーな香りが漂っている。
「ありがとうございます」
 受け取った紅茶とクッキーをそっと置いて、見詰める先には2人が作ったランタンだ。
 出来あがったのは、ちょっとだけヘタの部分がずれているのも愛嬌なオレンジランタン。
 どことなく釣り上がった目元と口元が、悪戯をたくらんでいるように見える。
「可愛くできました!」
 ノグリエさんのは? と視線を向ければ、少々歪に切り取られた目元が、どことなく糸目のようにも見えた。
 にんまりと開けた口元を見ながら、ノグリエが呟く。
「うん……ボクのほうも何とか形になったかな」
「素敵ですね」
 2人の愛嬌のあるランタンを見つめ、シャルルが指先を伸ばす。
 ランタンにキスをすると、綺麗に光ってくれると言うのだ。
(キスをすると綺麗に光ってくれる……素敵ですね)
「じゃあ」
 人ならば丁度おでこにあたるだろうか。
 ヘタ部分に遠慮がちにちゅっと口付ければ、ノグリエの細い瞳がさらに細められた。
「シャルルにキスしてもらったランタンが羨ましいよ」
 もしもランタンが動けたならば、びくっと体を揺らしていたかもしれない。
「えっ……ランタンがうらましいですか?」
 ランタンから身を起こし不思議そうに首を傾げるシャルル。
 彼が体を動かすから、同じようにランタンに口付けるのだと思っていたのだけれど。
「それじゃあボクは……」
 そんなシャルルの頬に触れるのはノグリエの唇。
 自分とは違う体温に、瞳を瞬いたシャルルの頬が赤く染まって行く。
 触れた所が、熱い。
「わわ、もう……私はランタンじゃないですよぉ」
 ふふ、ランタンみたいに赤くなった。
 そう囁き、頬に指先でそっと触れる。
 指先に感じる熱が、シャルルの気持ちだと思えば笑みが浮かぶ。
「本当にカボチャが羨ましかっただけなんだよ」
 蜂蜜色の瞳がじっとノグリエを見つめてくるからその視線から逃れることはせず、囁く。
「ボクが嫉妬深いのは知ってるでしょう?」
 別にからかったわけじゃないんだ。
 そう言われて、シャルルは赤く染まった頬に照れたような笑みを浮かべる。
 せっかくですし、お茶会を楽しみましょう。
 シャルルに言われ、ノグリエは頷き小さなお茶会を楽しむことに。
 そんな2人を、仲良く隣り合ったランタンが見詰めていた……。


 なんだか楽しげなジャック・オー・ランタンの前に足を止めたひろの。
 にこにこ笑う口元が、どうか仲間を作っていって! と呼びかけているようで。
 どうやらランタンを作る講習があるようだと合点して、ルシエロ=ザガンへと視線を向ける。
『いらっしゃいませ、楽しんでいってくださいね』
 そんな2人に気が付いた店員が声をかけ、席へと誘う。
(なるほど……)
 店員の話を聞き終わり、ひろのはオレンジに緑に、黄色な大小あるカボチャたちを見詰める。
 どのカボチャも、私を使って! と訴えかけてくれていて。
 でも、帰りのことを考えれば、大きなカボチャでは大変だと小さいカボチャの方へ視線をやれば、オレンジカボチャが目に入る。
「オレンジの、小さいかぼちゃに、する」
 そっと手に取ったカボチャに視線を落とすひろのの視界に、ルシエロの指先が入った。
 ルシエロはひろのの前に置いてあった、同じオレンジの小さなカボチャを手にとる。
 それにするの? という問いかけに頷きが返って。
「じゃぁ、これ、で」
 お願いします、と伝えればランタンづくりを始めましょう! とペンを渡されるのだった。

 さぁ、どうぞ! と準備万端に用意された中、作業が始まる。
 目は逆三角でつり上げて、口はギザギザ。
 ……というランタンを作ろうとしたのだけれど、描く線はなぜか歪んでいく。
「……」 
 このままだとちょっと大変なことになりそうだとテンプレートを使うことにしたひろのの隣では半月型の目に、牙を大きな口から覗かせたのを描き入れ、ルシエロはすでにナイフを手に注意深くカボチャの上部を切り抜いていた。
(このぐらいか)
 力加減を把握すれば、手際良く進めていく。
「……」
 ある程度形になってきた所で、描き終わった彼女のナイフがなかなかカボチャに入らないのに気が付き、ナイフを置きながら声を掛ける。
「手を貸すか?」
「え、ルシェのは……」
 既に切り抜き終わってるのを見て、早い、と呟くひろのの背中に当たる体温。
 息を飲めば掌に感じる熱に、顔が赤くなっていくのが分かる。
「このぐらいだろう」
 力加減、分かるか? と一緒にナイフを入れれば、こくこくと頷く。
(集中、しなきゃ)
 教えてくれているのに、気がそぞろになってしまうのはしょうがないかもしれない。
 半分程切った所で、離れた体温。
 よかった、と離れた温もりにほっと息をつく。
 ルシエロは席に座ればナイフで中身をくりぬきはじめていて、頑張らないととひろのも教えてもらった力加減で、ナイフで上部を切り取りスコップで繰り抜き始める。
 種部分はともかく、他の部分が硬くて、なかなか入って行かない。
 悪戦苦闘する彼女の隣では、分割して切り抜いた目と口を片付けたルシエロが瞳を細めて見詰めている。
 まだまだ中身も、目も口も残ってる。
 ちょっと疲れた、と手を休めた彼女に、声をかけた。
「二人でやるか?」
 え、と声をあげたひろのは、まだ時間がかかりそうだし……と頷きをひとつ。
「お願い、します」
 分かった、と再度後ろに立つルシエロ。 
 後ろに立った彼が動くたび、自分の肩に温もりをうつす。
 自分とは違う体温。
 耳元にかかる息遣い。
「ああ、任せろ」
 それに自分の掌を包み込む彼の掌が大きいことに気がついて、胸が音をたてた。
(やっぱり恥ずかしい)
 でも、嫌なわけでは勿論ないから。
 集中しなきゃ、と共に手を動かすのだった。


 出来上がったランタンは少々切口が歪だけれど、目元がちょっと下がり、口元がすごく幸せそうに笑っている。
 ルシエロとの共同作業で作り上げたそのランタンに瞳を細め、ひろのが小さく微笑んだ。
「できた」
 そっと見られないようこっそりとランタンに口付けを落とす。
「ヒロノ」
 口元に牙がなんだかとても凛々しく、その所為か、どことなくきりっとした雰囲気を漂わせているルシエロのランタン。
 それを手にした彼に名を呼ばれて、ひろのが視線を彼の方へと向ける。
「、何?」
 まさか見られたわけじゃないよね? と焦る彼女の前で、彼の唇がランタンへとそっと落とされる。
 そんな光景を見せられたら。
 ひろのの頬に熱が集まっていくのが分かる。
(ルシェがキスするの、なんか)
 色気に当てられてしまう、と心の中で呟く。
 彼の唇から洩れた吐息を、先ほど近くで感じていたからか。
 彼の自分の掌を包み込んだ指先を、耳元にかかった吐息を。
 先ほど触れた彼の体温を、思い出してしまう。
「互いのランタンにしないか」
 恥ずかしいけど、でも、勿論キスを。
 ルシエロのランタンの口元に口付けを落とせば、ルシエロもひろのの愛嬌のあるランタンの口元へ口付けを。
 受け取ろうと手を伸ばしてきたひろのの髪にも口付けを落とせば、ぱっと広がる頬の赤。
 照れている様子が愛らしいと瞳を細めている彼らの前に、そっと紅茶とクッキーが運ばれてくる。
「食べ、よ」
 せっかくだから、お茶会を。
 恥ずかしさを誤魔化すようにそう言いながら、紅茶を手にとるひろの。
 ルシエロはクッキーへと手を伸ばす。
 形こそは蝙蝠だけど、味はほんわか甘いカボチャ味。
 南瓜尽くしだな。
 そういって瞳を細めたルシエロの視線の先では、紅茶をゆっくりと飲んでいるひろの。
「ピリッとするけど、美味しい」
「楽しめたか?」
 口元にうっすらと浮かんだ笑みに、目元を赤く染めたひろのはこくりと頷く。
「うん。楽しかった」
 恥ずかしかった、けど。
 そう呟いて紅茶を口に運ぶ姿を、ルシエロは瞳を細めて見守っていた。



 講習会に足を止めて、じっと見つめた先には大小のカボチャと見本のランタン。
「やっぱりハロウィンにはカボチャのランタン、欲しいよな」
 視線は緑とオレンジのランタンの元へ。
「ランタン?」
 立ち止まったエセル・クレッセンを訝しげに見ていたラウル・ユーイストが、ランタンが欲しいという言葉に瞳を細めた。
「なあ、ラルはランタン作ったことあるんだよな?」
「昔、な」
「昔? 最近は?」
 最近はやってない。
 その言葉に銀色の瞳がきらきらと輝きだす。
 どうやら、彼女の頭の中ではならば久しぶりにやってはどうか、という思いがあるようで。
「……」
 自分はいい。
 そんな気持ちをこめて彼女を1人で送り出そうとしたラウルだけれど、彼の胸に湧き起こったのは心配である。
 エセルがぶきっちょな方だとラウルは知っている。
 なのであれば、今回のナイフを使うようなものだと一体どうなるのか。
 眉を寄せたところで次にくる言葉も分かっていた。
「ふうん、じゃあ、一緒に作ろう、うん」
 彼女の強引さも知っている。
 そして、そんな彼女と共に結局は一緒にランタンづくりをすることになる自分がいることも、ラウルはよく分かっていたのだった。


 選んだカボチャは黄色い小さなもの。
 それを自分の前に置いて、エセルは店員へと声を掛ける。
「テンプレート、貸してください」
 はい、どうぞ! と渡されたテンプレートをお礼を言って受け取った。
 こうかな? それともこう?
 テンプレートを動かしている彼女の傍ら、緑色の小さなカボチャを手に取ったラウルも、店員からテンプレートを借りていた。
 標準的な物を……と選んだそれは、三角の切り抜きに、にんまりお口のもの。
 悩んでいるエセルの脇で、ささっと書き入れるラウル。
「ラル、決まったのか」
 自分も負けていられないと視線を落とせば、丁度いい場所にテンプレートが来ていて。
(この上向きの蒲鉾型の目のが、ちょっと笑ってるみたいで可愛いかも)
 漸く満足のいく位置を決めたエセルも描きはじめる。
 テンプレートをなぞって描きこんでいくエセルを見て、ナイフを手に取ったラウルは瞳を細めた。
 今の所、問題はないようだ。
 いや寧ろ、テンプレートを使うだけなのだから、問題があっても困るのだけれど。
 ナイフを器用にカボチャにいれて、すすっと動かしていく。
 前に作ったことがあるからということもあるが、手先も器用だからだろう。
 綺麗に切り取られていくそれは、魔法のようにも見える。
 既にナイフを使っているラウルを見つつ、エセルもナイフを手に取った。
「気をつけろよ」
「うん、手を切らないように気をつけよう……」
 ラウルの言葉に頷いて、慎重にナイフをいれるがやはりカボチャは硬い。
 ぷるぷると震える腕を見て、スタッフも手を貸しゆっくり、ゆっくりと。
 ちょっと歪になってしまった目元は愛嬌というものだろうか。
 そっと落ちたカボチャの皮が散乱する前に片付けつつ、ラウルは青色の瞳を細めて見守る。
「うん、いい感じだ」
 口元もちょっと歪んでいるように見えなくもないが、それこそそれが手作りの醍醐味というものか。
 ラウルは店員に助言を貰い、頷きながら作業をすすめるエセルの邪魔はせぬよう、使い終わった道具も片付けておく。
 エセルがそんなラウルの優しさに気が付くのは、少なくともこの作業が終わった後に違いなかった。


 作り終わったランタンは、流石、前作ったことがあるというラウルのものはとても綺麗だった。
 三角釣り目の緑のカボチャランタン。
 でも、なんだか隣のオレンジランタンの方を心配げにみているような気がしないでもない。
 そのオレンジランタンの方といえば、ちょっと歪んだ目元と口元が、テンプレートで見た時よりも、よりとても楽しそうに笑っているように見えた。
 エセルのわくわくした気持ちが籠っているのだろうか。
「……ランタンにキス?」
 そんな2つのランタンを前にして、店員が是非、綺麗になる魔法をかけてあげて下さいと微笑んだ。
(綺麗に光ってくれたら嬉しいなぁ)
 キスをして、綺麗に光ってくれたらそれはとても嬉しい。
「ラルは?」
 自分のランタンを持ってキスをしてやりながら問いかければ、そんな様子をみてラウルが首を傾げる。
「ランタンにキス? 必要か?」
 別に、粗末にするつもりはない。
 そういうラウルに、今度は緑のカボチャランタンにと手を伸ばす。
「じゃあ、私が代わりにやろう」
 驚いたように見詰めるラウルの前で、緑のカボチャへと唇を落とす前に囁く。
「ラルの為に綺麗に灯ってやってくれな」
 そっと触れた唇に視線を向け、ラウルが眩しい物をみたときのように瞳を細める。
「……」
 これでよし! と渡してくるランタンを受け取ったところで、よかったですね、と店員が持ってきた紅茶とクッキーを受け取って、お茶会が始まった。
「この紅茶って何が入ってるんだろう?」
 クッキーも美味しいし、作り方練習してみようかなあ。
 もぐもぐとクッキーを食べながら言えば、隣で同じようにクッキーを食べていたラウルが唇を開く。
「……クッキーの練習するのはいいが、一人でやるな」
 ……手伝ってやるから。
 その言葉を耳にし、エセルがラウルへと視線を向ける。
 彼は紅茶を飲んでいて、視線を合わせてはくれなかったけれど。
 エセルの口元に笑みが浮かぶ。
 ランタンが寄り添いながら、そんな2人を見守っていた。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 3
報酬 なし
リリース日 10月22日
出発日 10月28日 00:00
予定納品日 11月07日

参加者

会議室

  • [3]エセル・クレッセン

    2016/10/26-01:17 

    私はエセル・クレッセン。パートナーはラウル・ユーイスト。
    どうぞ、よろしく。

    うん、手を切らないように気をつけよう…。

  • [2]ひろの

    2016/10/25-23:44 

    ひろの、です。
    ルシェと一緒に、参加します。
    よろしく、お願いします。(小さくお辞儀

    かぼちゃ……、オレンジのにしようかな。(呟く


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