小さなハロウィンティーパーティー(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ


 並んでいたのは色とりどりのカップケーキ。
 赤や青や緑や紫や黒のアイシングが施された小さなカップケーキたちの上には、おばけや蝙蝠や魔女や猫や箒のクッキーやチョコがのっかっている。
 その中のオレンジ色のカップケーキは、そのものがハロウィン南瓜になっていて、豪快な口元が印象的だ。
 味は至ってシンプルなプレーン味。
 勿論クッキーなどはまた別の味がするようだが、カップケーキ自体はプレーン味である。
「でね?」
 そう言って貴方に渡した友人はちょっとだけ瞳を輝かせる。
「この中にひとつだけ、変わった味のものがあるんだよ!」
 変わった味? と貴方が首を傾げれば、友人も首を傾げる。
 一応、どんな味が入っているのかは分かるらしいのだが、どれがあたるかは分からないという。
「確か、唐辛子味、カレー味、わさび味の三種類らしいんだ」
 まるでそれじゃぁ罰ゲームみたいじゃないかと伝えれば、楽しそうに笑う友人。
「まぁいいじゃないか。確かにちょっとだけ吃驚するけど味自体は凄く美味しいよ」
 それぞれ、ちゃんとカップケーキとして作られており、どの味が当たっても「まずい!」ということにはならないらしい。
 ただ、まぁその味が苦手……という人には本当の罰ゲームになってしまうかもしれないけれど!
「お茶のお供にどうぞ?」
 そう言って差し出された6個のカップケーキ入りの箱。
「あ、こればっかりじゃあんまりだよな。
南瓜を使った紅茶もつけるから、今日はティーパーティーと洒落こんだら?」
 お礼を言って受け取った貴方は、では今日のお茶のお供にしようとそれを持ち帰ったのだった……。


「お帰りー」
 帰ってきた貴方を迎え入れた彼は、貴方が手に持つものを見て首を傾げる。
 それはどうしたの?
 そう問われ、貴方は友人に言われたことを喋ろうとして、はたと言葉をとめる。
 そのまま伝えて、一緒にどれか探すのも楽しいだろうし、逆に内緒にしててびっくりさせるのもいいかもしれない。
 ちょっとした悪戯とちょっとした驚きと。
 そんな時間を過ごすのもいいだろうか……?

解説

 パーティーというほど規模はちっとも大きくないですが、パーティーもどきをお楽しみください。

●カップケーキ
 1箱に6個入っており、味はシンプルなプレーン味。
 以下詳細参照。
 1つ目:赤いアイシングが掛かり、魔女のクッキー(チョコ味)がのったカップケーキ
 2つ目:紫のアイシングが掛かり、猫のチョコレート(ビター)がのったカップケーキ
 3つ目:緑のアイシングが掛かり、箒のクッキー(イチゴ味)がのったカップケーキ
 4つ目:黒のアイシングが掛かり、おばけのチョコレート(甘め)がのったカップケーキ
 5つ目:青のアイシングが掛かり、蝙蝠のチョコレート(ビター)がのったカップケーキ
 6つ目:オレンジのアイシングが掛かり、そのまま大きな口をあけたオレンジ南瓜になっているカップケーキ。

●変わった味
 6個の中に1つだけ、以下の3つのどれかが入っています。
 ★唐辛子:ちょっとピリ辛
 ★カレー:スパイシー
 ★わさび:ちょっとつーんします
 精霊か神人か、どちらか1名だけになります。
 どれを引き当てるか明確にしていただいても、お任せでも構いません。
 ただ、どんな反応になるか記載お願いいたします。


●紅茶
 南瓜が入った紅茶。
 ほっくりした南瓜の甘い味と、ちょっとぴりっとしたスパイシーなお味が美味しい紅茶です。

●jr
 友人にお茶代として300jr支払いました。

ゲームマスターより

 ハロウィン大好き!! な如月修羅です。
というわけで、ちょっとだけ早いですが、ハロウィンは何回楽しんでもいいですものね!
ちょっとしたハロウィンパーティー(のようなもの)をお楽しみください。
ちなみに南瓜の紅茶は、凄く好きだったりします。
一体あの中には何がはいってるというんだ、美味しい……。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セラフィム・ロイス(火山 タイガ)

  部屋はタイガの影響で虎グッズだらけ
■鏡越しに気づき慌てて衣装をクローゼットに隠し

タイガ!今日も元気だね。どうしたの?
・・・僕も(抱き返し

可愛い。もう町もハロウィン一色だもんね。頂くよ、どれにしようかな
美味しい
うん(普通?)魔女に南瓜に去年を思い出すね
タイガは今年の仮装は決めた?
僕は、目星はつけてる
当日まで内緒だよ(しーっと手で照れ笑い

ううん苦手。カレーも中辛以上は味がわからなくくらいで

んん!!?んー!!(涙目で口を覆って
■各自チョイスお任せ

聞いてないよタイガ!

つーんだけは無理…二度とわさびは食べないって決めてたのに・・・!
(でも少しだけ嬉しかった。体験したの初めてだったし。辛いのは嫌だけど)


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  面白いケーキを貰った。これで宝探しゲームしようぜ!
じゃんけんで勝ったら好きなケーキをひとつ取る→食べる、の繰り返しだ。変わった味のケーキが大当たり!
それを引き当てた方の言う事を何でもひとつ聞くってのはどうだ!
超わくわくするじゃん。

じゃんけん初回。
オレの勝ち♪魔女のケーキ。結構ウマいじゃん。もぐもぐ。

2回目、負けるとは。
コウモリチョコのにした。これもビターっぽい?
チョコ部分を少し交換。ウマー。

3回目
当たりの為にオレは勝つ!よし勝利!
かぼちゃの大きな口にオレはかける!もぐもぐもぐ。
む。
ラキアに当たりがいくとは。むむ、ちょっと悔しい。
解った。
今夜はオレが腕をふるってキャンプ風カレーを作るぜ!任せろ!


李月(ゼノアス・グールン)
  貰ったケーキの説明し
引き当てた方が負けのゲームをする事に

負けず嫌い発動
闘志メラ
「じゃいくぞせーの これ!
5差す
相棒睨み気味にケーキぱくり
「もぐもぐ…こっちも旨い
地雷回避の如くの安堵感で紅茶飲み
「次の確率は1/4だ 負けないからな!
紅茶おかわり用意し

二回戦
6差す これも旨かった

ケーキを凝視
相棒の余裕さにイラッ
「ふざけるな! 僕が逃げると思うのか よし決めた!
三回戦
4差す
「ここにきて被った(焦

「か 勝ったー!
4取る
でも本当の勝負はこれから
「1/2…
覚悟決めばくり 味は
「…旨い という事は
相棒見る

「みんな旨い あれ?
言葉にあんぐり
「もう引いてたんかい 僕の緊張返せー!
「どこ情報だよ 違うから 期待の眼差しするな(赤面


カイン・モーントズィッヒェル(橘 雅臣)
  雅臣が手土産手に遊びに来た
紅茶も淹れて、だべるか
イェルは今日遅番だから帰りには間に合わねぇだろうが
ティエンも1個食うか?※6のケーキ渡す

イェルにも1のケーキ残すか。
俺は2・3のケーキを食べるか
ん、猫のケーキはわさびが入ってるな
ツンデレのあいつらそのものだな

相談?
ポーリーの誕生日プレゼントか
俺と契約して1年、付き合い始めて3年だったよな
確かに1年過ごせたのは相手に感謝だな

プレゼントも大事だが、去年と同じ想いってのも一緒に贈ってやれ
そんな俺の勧めは…まずは髪飾りかね
…で、ご希望は?
それで来たんだろ?
契約価格で受けてやるから、彼女にと思うのを言ってみろ

サンストーンね
了解
お前にとって彼女は太陽なんだな


楼城 簾(白王 紅竜)
  紅竜さんが同僚から強制的なお裾分けを貰ったからくれると言うのだけど…流石にこんなに食べるのは無理だし、僕の自宅で食べることにしたよ。
「色々あるね。貰ったのは君だから、君から選ぶといい」
交互に選んで食べていく形にし、味の感想を言い合う。
そうでないと、話が続かず居た堪れない。
でも、紅竜さんと一緒にいるのは落ち着かないが、安心する。
何故だろうね。
僕に利用されない人なのに。
「だから、紅竜さんは魅力的なのだろうけどね」
…紅竜さんが咽た。
あ、山葵か。
「君も案外こういうのには弱いんだね。少し可愛いと思ったよ」
君にはペースを狂わされるからこの位は言わせて貰おうよ。
紅竜さんが微妙に固まってて、何だか面白かった。



 その日、6個のカップケーキが入った箱を手に、火山 タイガはセラフィム・ロイスの家を訪ねた。
 部屋に隣接する木を登り、いつものようにやってきたタイガに鏡越しに気付いたセラフィムは、慌てて虎グッズが飾られた部屋の中を移動し、クローゼットへと衣装をしまい終える。
「セラ! 遊びにきたぞ!」
 しまい終えたのと同時に部屋に入ってきて、お土産をテーブルに置いたタイガは、どうやら何も見ていないようだ。
 少しほっとしつつ首を傾げれば、さらりと青色の髪が揺れる。
「タイガ! 今日も元気だね。どうしたの?」
 そんな様子を眩しそうに瞳を細めつつ近づいたタイガは、ぎゅっと暖かなセラフィムの体を抱きしめた。
「ん~寂しかったからさ」
 胸いっぱいに暖かであまやかな香りを吸い込んだタイガに、セラフィムも瞳を細め頷く。
「……僕も」
 背中に回された腕に、尻尾が揺れる。
 少しぬくもりを確かめ合った後。
 名残惜しくもゆっくりと手を離せば、視線はタイガが持ってきた箱の方へ。
「これ、どうしたの?」
 そう言われ思い出すのはセラフィムの家のくるちょっと前。
『買った! セラが可愛いの好きだしゲームっぽくていい!』
 尻尾をご機嫌に揺らしながら、ばんばん肩を叩き受け取ったその箱。
 ばんばん叩かれ惚気られ、でも、純粋な賞賛にちょっと涙目になりつつもよかったよかったと言ってた友人を思い出す。
 友人のおかげで可愛いセラフィムを見ることが出来そうで、ちょっと楽しみなタイガだった。
「お土産、一緒に食おうぜ!」
 結局細かい説明はせず、そう言えば、セラフィムは疑問に思うことなく頷いた。
 

 箱を開ければ、6個のカップケーキが顔をのぞかせる。
 自然とオレンジカボチャのカップケーキを目があい、セラフィムが可愛いと瞳を細めた。
「もう町もハロウィン一色だもんね」
 むしろそんなセラが一番かわいい、と思いながら、タイガが笑う。
「だろだろ。芸が細かいよな~」
「頂くよ、どれにしようかな」
 結局手に取ったのは猫のチョコレートがのったカップケーキ。
「美味しい」
 ぱっと浮かぶ笑顔を見詰めた後、タイガはじゃぁ俺も、と魔女がのったカップケーキを手にとる。
「普通にうめえ」
(これならロシアンじゃなくても満足できたな)
「うん? ……魔女に南瓜に去年を思い出すね」
 普通? と聴こえた言葉に首を傾げながらも、タイガは今年の仮装は決めた? と問いかければ、首が振られた。
「決定打にかけるからまだ。でもせっかくならやったことない仮装にしてぇな~」
「セラは?」
 ちらりと見た彼はふふっと悪戯っ子のように瞳を輝かせていた。
「僕は、目星はつけてる」
 当日まで内緒だよ? と口元にあてられた白い指先に瞳を奪われつつ、ちぇーっと唇を尖らせる。
 楽しみにしてると言えば、ふふっと微笑まれた。
「セラって辛いの得意だっけ?」
 そういえば……と、手に取った魔女のクッキーを揺らし、問えばセラフィムが首を振る。
「ううん苦手。カレーも中辛以上は味がわからなくくらいで」
「そ、そっか」
(俺がこなして笑わせた方がよさそうか)
 ひやりと背中に冷たい物が流れた瞬間、「その時」が来てしまった。
 セラフィムが次にとったオレンジカボチャのカップケーキ。
 一口齧り取られたそれは。
「んん!!? んー!!」
 先程と違い、鼻を突きぬけていくツーン感。
 同じ物だと思ったのが、違うとなると、その衝撃は計り知れない。
 げほごほと涙目でむせるセラフィムに慌てて差し出されるお茶。
「わー! 吐いていいって、ほら茶」
 じろりと涙目で見詰められれば、たらりとたれる汗。
 あはは、と笑って見るが、視線は外されない。
「……悪りぃハロウィンのどっきりというかさ」
 そんなタイガの言葉を聞きながら、つーんだけは無理、と貰ったお茶で流し込む。
(二度とわさびは食べないって決めてたのに……!)
「聞いてないよタイガ!」
「大当たり~☆」
 なんて、だめ……? とにこっと笑うタイガにもう! と怒りながらも、勿論それは本気じゃない。
 体験したのは初めてだし、辛いのは嫌だけども、少しだけ嬉しく感じる思い。
 それが分かるからこそ、タイガも背中をさすってやりながら、尻尾をどこかご機嫌に揺らす。
 揺れる尻尾が目に入れば、これ以上怒ったふりもしてられない。
「ありがとう」
 え? なにが? と首を傾げたタイガに、今度は自分がちょっとした悪戯が成功したみたいで笑みが浮かぶ。
 幸せを感じる時間をくれてありがとう。
 そう改めて告げるのは、もうちょっとあとでもいいかな、とタイガに身を寄せる。
 そんな彼らを、部屋の虎たちは楽しげに見守っていた……。



 面白いケーキを貰った、とセイリュー・グラシアは友人から貰った箱をラキア・ジェイドバインへの前へと置いた。
「うん、どれも美味しそうなケーキだね?」
 目の前に並ぶ、魔女や猫や箒がポップに置かれたカップケーキを見て、ラキアが微笑みを浮かべる。
「これで宝探しゲームしようぜ!」
 宝探し? と首を傾げれば1個だけ変わった味があるとのことに、なるほどと頷いた。
「じゃんけんで勝ったら好きなケーキをひとつとる、食べるの繰り返しだ」
 きらきら瞳を輝かせるセイリューにそういうゲーム好きだよね。とラキアが笑みを深くする。
「変わった味のケーキが大当たり! で、それを引き当てた方の言う事を何でもひとつ聞くってのはどうだ!」
 超わくわくするじゃん? とラキアを見ればセイリューのわくわくがうつったのか、ラキアも瞳を輝かせる。
 でも、ちょっとまってて? と手に取ったのは紅茶。
「南瓜の紅茶淹れてくるよ」
 待っててね? とまずは台所へ向かうのだった。


 暖かな紅茶が甘い香りを運んでくる。
 ぱかっと開けた箱を前に、2人の真剣勝負が始まった。
 初回を制したのはセイリューだ。
「オレの勝ち♪」
 魔女のケーキを手に取り、もぐりと食べれば程良く甘いシンプルな味。
 シンプルだからこそ美味しい味に、にっと笑みが浮かぶ。
 君の気迫には負けたよ……と言いながら選んだのは箒がのったカップケーキだった。
「君、食べ物が絡むと気合入りすぎ」
 苺味のクッキーを食べつつ、これ好きだな。と呟けばセイリューの青い瞳と視線が絡みあう。
 良かった、というその視線に瞳を細めて頷いた。
「よし、次だ!」
 淹れてもらった紅茶を飲みつつ、次のじゃんけん。
 次は負けないよ? と瞳を細めるラキアに俺だって、と気合を入れたセイリューだったけれど。
「あ……!」
「ほら、勝った」
 負けたと悔しそうに眉を寄せるセイリューに、くすりと口元に笑みを浮かべる。
(セイリューは勝つと次に同じ手を出すからね)
 内緒、と小さく胸の内で呟き、選んだのは猫のだ。
「あ。ビターだ」
 これも好み、と微笑めば、蝙蝠チョコのセイリューもビターだと蝙蝠を差し出す。
「交換?」
 じゃぁ、ちょっとだけ。と交換しあったチョコはビターだけれど、どこか甘く感じて。
「同じビターでも味がちょっと違うんだね」
 工夫だねと呟く傍ら、ウマーと嬉しそうなセイリューに、笑みを深くした。
 もぐもぐ食べ終われば、紅茶はいかが? と新しいものに。
「美味しいな」
 じっと見つめた先のラキアは、紅茶を淹れていて。
 注がれる視線に気が付いたラキアが顔をあげれば、にこっと微笑む。
 さて、次は負けない。
 そんな意味も込められていた。
 というわけで、3回目。
「当たりの為にオレは勝つ!」
 気合を入れ直したセイリューの気迫の前に負けたラキアは、負けたと呟きながらもどこか微笑ましそうに選ぶのを見守る。
 カボチャを選んだのに合わせ、残った最後のひとつ。
 それはおばけのカップケーキだ。
 カボチャの大きな口に当たりをかけたセイリューは、カボチャに負けじとかぶりと噛みつく。
 同じように食べたおばけのカップケーキ。
 あれ? と不思議そうに唇を離した。
「これだけカレー風味? 面白い味だね」
「む。ラキアに当たりがいくとは」
 むむ、ちょっと悔しい。と眉を寄せるセイリュー。
 これが当たり? と首を傾げたラキアに大きく頷く。
「残り物には福が、だね。意外と美味しいよ」
 一口いる? と渡されたカップケーキを食べてみれば、口の中に広がるカレー味。
 さて、勝者になったからには何か一つ、お願い事を。
 それはすでに決まっていた。
「ふふ、今夜は、セイリューの作ってくれるカレーが食べたいな」
 作ってくれる?
 さらりと赤い髪を揺らし問いかけるラキア。
「今夜はオレが腕をふるってキャンプ風カレーを作るぜ!」
 セイリューが任せておけ! と頷けば、ラキアが幸せそうに瞳を細める。
 そんな2人の様子を、楽しげに「家族たち」が見守っていた。
 きっと今日のカレーは、いつも以上に美味しく感じるに違いない。



 カイン・モーントズィッヒェルの家に、友達よりもらったお土産を手に突撃した橘 雅臣。
「イェルは今日遅番だから帰りには間に合わねぇだろうが」
「……イェルクさんはお仕事か、残念」
 そう言われつつ招き入れられた部屋の中、ちょっと残念だと金色の瞳を伏せる。
 そんな雅臣から土産を受け取ったカインは、さて、紅茶でもいれてだべろうかとまずはキッチンへと向かうのだった。
 
 暖かな紅茶と、6個のカップケーキ。
 まずは魔女のクッキーがのったカップケーキはイェルクへ。
 別の皿にのっけて保管しつつ、カインが次に選んだのは箒ののったカップケーキだ。
(紅茶はイェルクさんに淹れて貰えたら絶対美味しいけど、次のお楽しみだね)
 一口飲んだ紅茶にほっと息を吐きつつ、その次に猫を選ぶカインの様子にカインさんの猫好きは相変わらず……と瞳を細めた。
「じゃぁ僕はこれだね」
 おばけと蝙蝠のカップケーキを手に取り、食べ始めればティエンが何食べてるのー? と尻尾を振る。
「ティエンも1個食うか?」
「美味しいと思うよ」
 貰うー! と尻尾を振るティエンに、渡されたのはオレンジカボチャ。
 大きな口をじぃっと見た後、ぱくんと食べ始める。
 貰ったカボチャのカップケーキを食べて満足そうにぺろりと唇を舐めつつ尻尾を振るティエンに、知らず2人に笑みが浮かんだ。
 ご馳走様! と2人にお礼を言うようにもう一度尻尾を振ると、お腹もいっぱいになったのかうとうとと眠り始める。
 その様子を眺めた後、雅臣は本題を切り出した。
「で、ポーリーの誕生日プレゼントの相談に来たんだ」
 相談? と首を傾げたカインがなるほど、と頷く。
「俺と契約して1年、付き合い始めて3年だったよな」
 カインの言葉に頷き、思い人を思い浮かべた雅臣。
 瞳を細めて思い浮かべる様は、幸せそうに、でもちょっとだけ不安そうにも見えた。
「カインさんと契約したでしょ。契約した時、来年も一緒にいたいと思いたいって話したんだ」
 ……不安だったと思うし。
 と呟きつつ、でも、とその声に力が戻り、じっと再び見つめるその瞳にも、強い意志が宿っていた。
「この1年過ごせて、感謝してる。だから、今年は頑張りたいなって」
「確かに1年過ごせたのは相手に感謝だな」
 静かに話を聞いていたカインは、そう言って頷く。
 でも。と、カインは食べる手を止めて雅臣を見つめる。
「プレゼントも大事だが、去年と同じ想いってのも一緒に贈ってやれ」
 贈ると呟いた雅臣は、金の瞳を輝かせた。
「カインさんが言うと含蓄あるね」
 話してみてよかった! と笑顔になる雅臣にカインも口元に笑みを浮かべた。
 カインのお勧めのプレゼントは髪飾りだと言われて、雅臣が頷く。
「で、ご希望は? 契約価格で受けてやるから、彼女にと思うのを言ってみろ」
 それで来たんだろ? といわれ、お願いします。と頭を下げつつ、ぽつりとつぶやいた石の名前。
「サンストーンかな、なんて……」
 彼女の誕生石だと言えばサンストーンね、とカインがオレンジの石を思い浮かべる。
 あの石は名前の通り太陽のように暖かな色合いの石。
「了解。お前にとって彼女は太陽なんだな」
「そうだね、僕の太陽」
 金の瞳を輝かせそういった雅臣は、でもちょっと照れたように瞳を伏せる。
 でも恥ずかしいから内緒にしてね。
 そういう雅臣に、カインが優しい笑みを口元に浮かべる。
 雅臣の思いと願いが籠ったきらきら優しくオレンジが瞬く髪飾りを、きっと彼女はその髪に飾ってくれるだろう……。



 李月はその日、貰ったカップケーキをゼノアス・グールンに見せながら説明していた。
 魔女に猫に、箒に南瓜、蝙蝠とおばけがのっかっている6個のカップケーキの中にひとつだけ、味が違うものが入っている……。
 そんなちょっとした罰ゲームのようなカップケーキを前に、「引き当てた方が負けのゲーム」をすることになったのは自然のことだったに違いない。
 相棒と遊ぶというのならば全力で、とゼノアスの黒い瞳がきらきらと輝く。
 
 席に座りゲームを始める前のどことなく漂う緊張感。
 その雰囲気に、ここで負けてなるものか、と負けず嫌いの李月は気合を入れる。
「じゃ、いくぞ?」
「おう」 
 せーの、と李月の声が部屋に響く。
 走る緊張、そして李月に負けないぐらい闘志を燃やすゼノアスの真剣な瞳。
 2人の指先が、箱に入ったカップケーキへと向かう。
「これ!」
「これだ!」
 李月が指差したのは蝙蝠カップケーキ。
 ゼノアスが差したのは猫のカップケーキ。
 まずは最初ということもあって、カップケーキが被ることはなかった。
 視線を合わせ、というよりは、主に李月が睨んでいたために睨み合いのように視線を絡ませながらもぐりと食べた味。
「旨いぜ」
「……こっちも旨い」
 流石にまだ勝負は1回目。
 地雷回避の如くの安堵感に、紅茶を飲んでほっとしていれば、飲み終わったゼノアスがおかわりを要求していて。
 次の勝負のためにもおかわりを用意して、改めて4個になった箱の中を覗き込む。
「次の確率は1/4だ。負けないからな!」
 それはオレもだとゼノアスも闘志を燃やし、次に指差したのはオレンジカボチャと魔女。
 カボチャが李月の口へ、そして魔女はゼノアスの口へ。
 2人とも旨いと呟けば、どうやら残り2つの中に違うものがあるらしい。
 紅茶を飲みながら、改めて残った2つのカップケーキを見つめる李月。
「確率は1/2だよく選べ」
 真剣な彼の様子を眺め、ゼノアスが唇を開く。
「怖かったらやめてもいーぜ。オレが食ってやるからよ」
 茶々を入れるだけのゼノアスの余裕に、めらめらと湧き起こるのは闘志だ。
「ふざけるな! 僕が逃げると思うのか、よし決めた!」
 そんな彼の返事はゼノアスを喜ばせる物で。
「よーし最終決戦だ!」
 ゼノアスの闘志だって、燃え上がるのだ。

 最後の決戦である。
 そこに漂う緊張感は、先ほどまでの比ではない。
 ここは誰が何といおうと戦場だった。
 これだ!! と指差されたのはおばけのカップケーキ。
「ここに来て被ったか」
 というか、今まで被らなかったのがある意味奇跡だったかもしれない。
 どうしようかとちょっと焦るが、はっと李月はゼノアスをみる。
「なら、ジャンケンだ!」
 よし、とゼノアスも頷き、立ち上がる2人。
 後ろで炎が見える勢いの気合の入ったじゃんけんをすることに。
「か、勝ったー!」
 李月が出したのは、パーで、ゼノアスが出したのはぐーだった。
「うおおっ負けた」
 がくりと席に座るゼノアスの隣に腰を下ろし、改めて手に取るおばけのカップケーキ。
 必然とゼノアスは箒のカップケーキを手に取った。
 でも本当の勝負はこれからである。
「1/2……」
 李月が呟き、ちらりとゼノアスを見る。
 絡み合う視線。
 さて、勝負の女神はどちらに微笑むのか……。
 同じタイミングで口にいれ、食べ始める。
「旨い、という事は」
 勝った?! とゼノアスを見るがゼノアスは首を振る。
「旨いぞ」
 最後の一口を同時に飲み込んで、どんどん怪訝そうになっていく李月。
「みんな旨い」
 あれ? と首を傾げる。
 友人からの話では、どれか1つ、違う味があるはずなのだが。
 自分が食べた物は全部同じ味だった気がするんだけど、と相棒を見ればそこにきて、漸くゼノアスが何かに思い至ったらしい。 
「そういや最初のだけ味違ったな、スパイシーだった」
 衝撃の告白に、李月の瞳が見開かれた。
 2回目とかならまだしも、1番最初という事実。
「もう引いてたんかい、僕の緊張返せー!」
 大騒ぎする李月を可愛いな、と瞳を和ませ見詰めつつ、ゼノアスはそんな李月へと声を掛ける。
 その声音には、どこか悪戯っ子な気持ちが隠れているようで。
「で、ハロウィンてのは勝ったらする側、負けたら悪戯して貰える祭りだったか?」
「どこ情報だよ! 違うから」
 わくわくと瞳を輝かせるゼノアスに、李月の頬に朱が浮かぶ。
「期待の眼差しするな」
 こっちみんな! と瞳を隠そうと手を伸ばしてくる彼から逃げながら、思う。
(さて、何をしてもらえるのかな)
 これだけで終わりということはないだろう? と微笑むのだった。


 依頼主から強制的に貰ったお裾わけのカップケーキを手に、白王 紅竜は表だって見えないが内心どうしようかと悩んでいた。
(今日はA.R.O.A.で簾さんと研修だし、帰りに土産として簾さんに贈るか……)
 そうと決まれば、彼の元へ。
 楼城 簾はやってきた紅竜から受け取った箱を手に、少々困ったように眉を寄せた。
 貰うのが嫌というわけではなく、どう頑張っても1人で食べきれるような量じゃない。
「……こんなに食べるのは無理?」
 だから、僕の自宅で一緒に食べよう。
 そう言われれば、仕方がないと溜息をひとつ。
 それでも簾の部屋へと向かうのだ。

 紅竜は、自分の部屋だというのに簾から漂う緊張感を肌で感じていた。
 無意識に、紅竜という存在を意識している簾。
 だからこそ漂うその微妙な雰囲気に、紅竜は何を言うでもなく勧められるままに席にとついた。
 持ってきた箱はテーブルへと置かれ、2人の前にハロウィンな雰囲気をこれでもかとみせつけてくれている。
「色々あるね。貰ったのは君だから、君から選ぶといい」
 魔女や箒や猫やおばけや蝙蝠やカボチャのカップケーキがなんだか早く食べて! とばかりに輝いて見える。
 結局、交互に選んでいくことにして一口食べては感想を言い合う。
 そうじゃないと話も続かずこの空間に彼と共にいるのはいたたまれなかった。
 でも、と彼へ気づかれないように視線をやった簾。
 じぃっとカップケーキへ視線を落とす彼は、どうやら何か考え事をしているようにも見えて。
 ふと、視線が合いそうになって慌てて自分もカップケーキへと視線を落とす。
「この猫はあまり甘くないね」
 ビターかな。と呟くのに、紅竜の視線が自分に確実に向くのがわかった。
「此方も同じだ」
 え? と視線を改めて紅竜にやれば、彼の蝙蝠も同じくビター味のチョコのようだ。
 同じだね、と微笑めば紅竜の瞳が細めれられた。
(紅竜さんと一緒にいるのは落ち着かないけど、安心する)
 何故だろうと、紅竜を見つめ思う。
(僕に利用されない人なのに)
「だから、紅竜さんは魅力的なのだろうけどね」
 ごほり、と咽たのは山葵味を食べたのと同時だった。
 見た目では分かりづらいが、紅竜の胸の内は天然でとんでもないことをいう簾への思いが広がる。
 この男は、どうしようもないクズだと思う。
(でも、同時にどうしようもなく無防備だ)
 咽たついでに流れてしまった会話は続かず、ただただその身に駆け抜ける衝動に耐える。
 勿論それは山葵のためなんかではないのだけれど。
 しかし簾はそんなことなぞ分かるはずもなく、彼が固まった理由が山葵だと思ってくすりと微笑む。
「君も案外こういうのには弱いんだね。少し可愛いと思ったよ」
 微妙に固まる彼がなんだか可笑しくて、簾は笑みを深くする。
 紅竜にはペースを狂わされているから、これぐらいは言わせてもらおう。
 そんな簾を赤色の瞳でじっと見つめ、紅竜は心の内で呟く。
 自分はあくまでも護衛であって、クライアントに従う存在。
 それ以上でも、それ以下でもないはずなのに。
(何より、お前に利用されるつもりはない)
 なのに、と瞳を伏せる。
(何故心がざわつくのだろうな)
 まだ、どこかぎこちない2人だけれど。
 でも、確かに何かが進んだような気がする。
 もう少しだけ、こんな穏やかな時間を過ごすのも悪くないだろうと思わせる時を過ごすのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月13日
出発日 10月19日 00:00
予定納品日 10月29日

参加者

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